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46 December 2018  Volume 25  Number 10 NSCA JAPAN Volume 25, Number 10, pages 46-55 クレアチンモノハイドレートのサプリメント 補給:アスリートの認知能力に関する留意点 Creatine Monohydrate Supplementation: Considerations for Cognitive Performance in Athletes Steven B. Machek, B.S.  James R. Bagley, Ph.D. Department of Kinesiology, College of Health and Social Sciences, San Francisco State University, San Francisco, California 性および/または高強度エクササイズ 中は、ホスファゲン系(すなわちATP クレアチンリン酸機構[略してATP CPr/CP])が主に活性化する。先行研 究のメタ分析によると、サプリメント の補給は、持続時間が 30 秒以下の活動 に有意な効果があることが報告された (16)。クレアチンキナーゼ酵素により、 高エネルギーのリン酸がアデノシン二 リン酸(ADP)へと運ばれ、リン酸化さ れてATPとなり、細胞のエネルギー要 求を満たす。スプリントやウエイトリ フティングなどの高強度活動は筋収縮 を引き起こし、エネルギーのホメオス タシスを維持するためにATPCPr機 構に高い要求を課す。最新の研究も従 来の研究もこの点を支持している(9)。 クレアチンモノハイドレートの補給か ら得られる利益は、無酸素性運動や短 い休息時間を挟んだ高強度エクササイ ズの反復において最も顕著に観察され るからである。 体内クレアチン全体の 95%は骨格 要約 クレアチンモノハイドレートの 補給により、アデノシン三リン酸の 再合成に必要な総クレアチンとク レアチンリン酸の貯蔵を増大させ ることができる。先行研究の大部分 は、筋力や身体組成の向上に対する クレアチンの効果を調査したもの であるが、クレアチンはまた、脳内 エネルギーのホメオスタシスを促 進し、認知的パラメータを改善する ことも示されている。運動により身 体的にも精神的にも消耗するため、 認知的パラメータの改善は、おそら くパフォーマンス増強のもうひと つのメカニズムであると思われる。 本稿の目的は、 (A)アスリートにお けるクレアチン補給の有効性を強 調すること、 (B)向知性薬としての クレアチンの役割を紹介すること、 そして(C)エルゴジェニックエイド (パフォーマンス増強物質)として のクレアチンの(身体的利益と認知 はじめに クレアチンモノハイドレートの補 給は、細胞の「エネルギー通貨(energy currency)」と い わ れ る ア デ ノ シ ン 三 リン酸(ATP)の再合成に必要なク レアチンとクレアチンリン酸の総貯 蔵 量 を 増 大 さ せ る(9,50,69)。Michel Eugene Chevreulによるクレアチンの 発見( 1832 年)以来、何千もの査読論 文やレビューおよびメタ分析が、身体 パフォーマンスの向上を目的としたク レアチンの使用を提唱し支持してきた (7,8,16,35–37,51,62)。ク レ ア チ ン モ ノ ハイドレートの補給は細胞内のクレア チンリン酸と遊離クレアチンの飽和状 態をもたらし、クレアチンの約 95%は 骨格筋で発見される (46)。エネルギー 産生の永久的な活動機構では、無酸素 Key Words【エルゴジェニックエイド(パフォーマンス増強物質):ergogenic aids、レジスタンストレーニング:resistance training、 認知能力の向上:cognitive enhancement、精神的疲労:mental fatigue、身体パフォーマンス:athletic performance、   向知性薬:nootropics】 的利益を合わせた)総合的な効果に 関して、将来の研究の必要性を立証 することである。

クレアチンモノハイドレートのサプリメント 補給: …46 December 2018 Volume 25 Number 10 CNSCA JAPAN Volume 25, Number 10, pages 46-55 クレアチンモノハイドレートのサプリメント

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46 December 2018  Volume 25  Number 10

CNSCA JAPANVolume 25, Number 10, pages 46-55

クレアチンモノハイドレートのサプリメント補給:アスリートの認知能力に関する留意点Creatine Monohydrate Supplementation: Considerations for Cognitive Performance in Athletes

Steven B. Machek, B.S.  James R. Bagley, Ph.D.Department of Kinesiology, College of Health and Social Sciences, San Francisco State University, San Francisco, California

性および/または高強度エクササイズ中は、ホスファゲン系(すなわちATP-クレアチンリン酸機構[略してATP-CPr/CP])が主に活性化する。先行研究のメタ分析によると、サプリメントの補給は、持続時間が 30 秒以下の活動に有意な効果があることが報告された

(16)。クレアチンキナーゼ酵素により、高エネルギーのリン酸がアデノシン二リン酸(ADP)へと運ばれ、リン酸化されてATPとなり、細胞のエネルギー要求を満たす。スプリントやウエイトリフティングなどの高強度活動は筋収縮を引き起こし、エネルギーのホメオスタシスを維持するためにATP-CPr機構に高い要求を課す。最新の研究も従来の研究もこの点を支持している(9)。クレアチンモノハイドレートの補給から得られる利益は、無酸素性運動や短い休息時間を挟んだ高強度エクササイズの反復において最も顕著に観察されるからである。 体内クレアチン全体の 95%は骨格

要約 クレアチンモノハイドレートの補給により、アデノシン三リン酸の再合成に必要な総クレアチンとクレアチンリン酸の貯蔵を増大させることができる。先行研究の大部分は、筋力や身体組成の向上に対するクレアチンの効果を調査したものであるが、クレアチンはまた、脳内エネルギーのホメオスタシスを促進し、認知的パラメータを改善することも示されている。運動により身体的にも精神的にも消耗するため、認知的パラメータの改善は、おそらくパフォーマンス増強のもうひとつのメカニズムであると思われる。本稿の目的は、(A)アスリートにおけるクレアチン補給の有効性を強調すること、(B)向知性薬としてのクレアチンの役割を紹介すること、そして(C)エルゴジェニックエイド(パフォーマンス増強物質)としてのクレアチンの(身体的利益と認知

はじめに クレアチンモノハイドレートの補給は、細胞の「エネルギー通貨(energy currency)」といわれるアデノシン三リ ン 酸(ATP)の 再 合 成 に 必 要 な クレアチンとクレアチンリン酸の総貯蔵 量 を 増 大 さ せ る(9,50,69)。Michel Eugene Chevreulによるクレアチンの発見( 1832 年)以来、何千もの査読論文やレビューおよびメタ分析が、身体パフォーマンスの向上を目的としたクレアチンの使用を提唱し支持してきた

(7,8,16,35–37,51,62)。クレアチンモノハイドレートの補給は細胞内のクレアチンリン酸と遊離クレアチンの飽和状態をもたらし、クレアチンの約 95%は骨格筋で発見される (46)。エネルギー産生の永久的な活動機構では、無酸素

Key Words【エルゴジェニックエイド(パフォーマンス増強物質):ergogenic aids、レジスタンストレーニング:resistance training、認知能力の向上:cognitive enhancement、精神的疲労:mental fatigue、身体パフォーマンス:athletic performance、  向知性薬:nootropics】

的利益を合わせた)総合的な効果に関して、将来の研究の必要性を立証することである。

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する組織の炎症を示唆するマーカーの上昇、さらに全身の疲労状態の悪化が明らかにされた。 運動は身体的にも、また認知機能の観点からも、アスリートを消耗させる可能性がある(19,20)。そしてそれらの状態を相互に排他的な状態とみなさないことが重要である。クレアチンモノハイドレートは身体的努力と認知能力の強化に対し信頼性の高い効果が証明されているため、研究者は、クレアチンがパフォーマンスにおける集中力の低下や反応時間における損失を減弱できるかを見極めることが必要である。被験者は中強度(≦ 65%最大心拍数)のエクササイズに参加し、5 gのクレアチンモノハイドレート( 1 日 4 回 7 日間)を補給することにより、クレアチンの補給を行なわなかったコントロール群に比べ、言語の短期記憶の測定としての乱数生成テストのパフォーマンスにおいて、有意な線形の向上が裏付けられた。しかし、選択反応時間のテストでは、クレアチンの補給に有意な効果は認められなかった(41)。対照的に、McMorrisらによる別の研究(42)では、≦ 40%最大心拍数で運動を行なう被験者において、平均選択反応時間が同一のプラゼボ補給プロトコルよりも有意に優れていたことが明らかになった。これらの相反する知見から、クレアチンモノハイドレートの補給と精神的疲労、および身体的疲労との真の関係を探るためのさらなる調査が必要である。 レジスタンストレーニングとクレアチンモノハイドレートの補給を組み合わせることは多いが、認知能力の改善との関係に関する研究は少ない。精神的疲労はアスリートに悪影響を及ぼす。しかし、運動により誘発される注意力と反応力の低下の影響は、レジス

筋で見い出されるが、残りの 5%は代謝要求の高い組織、特に脳に存在する

(46)。骨格筋と同様、クレアチンモノハイドレートの補給は脳内で、ATP/アデノシン二リン酸の比率を高め、脳内細胞エネルギーのホメオスタシスを促進することが明らかになっている

(56)。パーキンソン病など、臨床的に診断された神経疾患は、細胞代謝の崩壊をもたらすミトコンドリアの機能障害に根本の原因がある (5)。他の神経学的な関連病態(5,31)に加えて、このパーキンソン病の症状に、クレアチンの補給が影響を及ぼすことが知られている。同様の傾向として、適切な食事から十分なクレアチンを摂取していない人 (々菜食主義者、高齢者集団など)は、クレアチンモノハイドレートの補給を通じて認知機能の向上を経験することも知られている(6)。総合的な認知補助薬としてのクレアチンモノハイドレートの補給は、記憶力、集中力、注意力などを含む認知能力に関連する様々なパラメータを高める効果があることがすでに明らかになっている

(6,38,41–43)。 従来の研究から、精神的な疲労刺激に曝されたアスリートは、主観的な疲労感がより強く、客観的にも、自分の競技に関連のある課題の遂行能力が低下することが示されている。Smithら

(57)およびMashikoら(40)は、それぞれサッカー選手とラグビー選手において、主観的な評価と競技特異的なパラメータに関して、運動により身体的疲労と精神的疲労の両方が増大することを明らかにした。研究結果から、ラグビー選手では、主観的な怒り、混乱、うつ、疲労、および気力不足や総合的な気分障害の測定値が有意に上昇したことが示された。さらに血液化学検査でも、代謝酵素の増加および運動に起因

タンストレーニングの経験者においてまだ明らかにされていない(40,57)。したがって、本稿のレビューの目的は、

(a)身体パフォーマンス向上のためのクレアチンの補給を支持する先行研究を補強し、(b)認知補助薬としてのクレアチンの役割を例証し、さらに(c)アスリート集団においてクレアチンが認知的疲労の減少に果たす役割を検証し、その上で最終的に、疲労の予防手段としても、またエルゴジェニックエイドとしても将来どちらにも役立つクレアチンの利用法を裏付ける研究の必要性を立証することである。

身体パフォーマンス クレアチンの補給に関する調査が様々な集団を対象に行なわれている

(表 1 )。多くの包括的レビュー論文やポジションステイトメントが多くの著名な査読論文誌に掲載され、パフォーマンスに対するクレアチンモノハイドレートの特性を次々と提示している(7,9,16,18,35–37,51,62)。様々な年齢層とトレーニング経験におけるエルゴジェニックエイドとして、クレアチンの補給は体力テストの結果を改善し、身体組成を最適化するだけなく、炎症指数の低下や乳酸の減少など、より望ましい血液マーカーをもたらした(15,25,35,54,61,66)。一流選手の集団でさえも、パワーリフティング、ボート、水泳、レスリング、ラグビーおよびサッカーを含む様々なスポーツにわたり望ましい結果が観察された(3,10–12,14,23,29,32,44,47,53,57,71)。無酸素性持久力、最大発揮パワー、仕事量、除脂肪量、ジャンプパフォーマンスおよびスプリントパフォーマンスなどもクレアチンの補給により有意に増大させることができる(3,10–12,14,23,29,32,44,47,53,57,60,71)。男女の

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表 1 各種集団におけるクレアチンの補給と身体パフォーマンスへの効果論文 被験者 介入 有意な結果

Cookら(14)10 名の健康で負傷していないプロラグビー男子選手(バックス)

睡眠制限後のスキル実行テストクレアチンモノハイドレート( 50 / 100 mg /体重1 kg)またはカフェイン( 1 / 5 mg /体重 1 kg)

カフェインとクレアチンの摂取により、スキル実行能力がプラセボに比べ↑

McNaughtonら(44)

16 名の上級スキー/急流カヤックの男子選手

90、150、300 秒間のカヤックエルゴメーターテストクレアチンモノハイドレート( 4 回/日×6 gのクレアチン)を 5 日間

すべての試験で体重と仕事量がプラセボに比べ↑

Juhaszら(29)16 名の若くて健康な男子競泳選手

Boscoテストを用いた動的筋力および無酸素性能力100 mを最大努力で泳ぐタイムクレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)を 5 日間

体重および平均パワーがプラセボに比べ↑100 m水泳タイムはプラセボに比べ↓

Kocak&Karli(32)

20 名の上級男子レスリング選手

30 秒ウィンゲート無酸素性テストで測定した平均パワークレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)を 5 日間

平均パワー、ピークパワー、体重がプラセボに比べ↑

Chwalbinska-Moneta (11)

16 名の男子一流ボート選手(ボランティア参加者)

ロウイングエルゴメーターで行なう 7 日間の高強度持久力トレーニングの前後クレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)を 5 日間

ロウイング持久力がプラセボに比べ↑

Rossouwら(53)

13 名(男性 11 名、女性 2 名)の競技パワーリフティング選手でトレーニング熟練者

3 セットの最大等尺性ダイナモメーター・一側性ニーエクステンションとそれに続くデッドリフトの筋力9 gのクレアチン/日を 5 日間

デッドリフトの量がプラセボに比べ↑3 回の連続試行のトルクと最初の5 レップの総仕事量および平均パワーがプラセボに比べ↑

Claudinoら(12)

14 名の上級ブラジルサッカーの男子選手 

レジスタンストレーニングとサッカーのトレーニングにおけるRPEに基づく負荷の増加( 4 回/日×5 gのクレアチン)を 1 週間、続いて維持量として 5 gを 6 週間

ジャンプパフォーマンスの低下を経験した被験者の割合がプラセボに比べ↑

Azizi(2) 20 名の女子競泳選手 

実験の前後のベンチプレスの 1 RM、垂直跳び、60 ヤード(約 55 m)ダッシュ、および水泳における 25 mと 50 mのタイムクレアチンモノハイドレート 5 gを 6 日間

クレアチン群のベンチプレス、垂直跳び、無酸素性パワーが↑

Gouttebargeら(23)

16 名のオランダのプロリーグに所属する非菜食主義のサッカー選手

最大パワーを測定するための垂直跳びクレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)ローディングプロトコル

体重とピークパワーの絶対値がプラセボに比べ↑被験者は体重が増加したにもかかわらず、テスト前と同じ高さでジャンプできた

Tanopolsky& MacLennan(61)

24 名(男性 12 名、女性 12名)の若く健康なボランティアの参加者で、レクリエーションレベルのトレーニングを積んだ非菜食主義者/菜食主義者

無酸素性自転車、背屈テスト、 前腕虚血握力テスト、アイソメトリックニーエクステンション、および血中乳酸クレアチンモノハイドレート(4 回/日×5 g)を4 日間

クレアチン群は、無酸素性自転車のピークおよび相対的ピークパワー、背屈MVCトルクおよび乳酸が↑

Urbanskiら(66)

10 名の健康で、レクリエーションレベルでは活動的だが、主要なトレーニング経験のない男性

ニーエクステンションとハンドグリップを用いる 4 種目のエクササイズ5 gのクレアチンモノハイドレート+3 gの炭水化物の粉末を 5 日間

クレアチン群はニーエクステンションの最大トルク 、最大下のアイソメトリックニーエクステンション中の疲労までの時間が↑

Volekら(68)

14 名の健康なレジスタンストレーニング鍛錬者の男性

エクササイズプロトコルにはベンチプレスを失敗するまで 5 セットと 5×10 ジャンプスクワットを含む25 g /日のクレアチンモノハイドレート、6 日ごとに 3 回の試技

クレアチン群は 5 セット中 2 セットのレップ数と 5 セット目のピークパワーが↑

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間では、クレアチンの補給における差異はほとんど観察されなかったが、少数ではあるが顕著な相違も認められた。例えば、クレアチンの補給による身体組成とパフォーマンスに対する先行研究のメタ分析では、女性は内因性筋クレアチン濃度が男性よりも高い可能性が指摘された(8)。 クレアチンモノハイドレートの補給方法は、一般にローディングプロトコルに従って行なう。最初に骨格筋と脳内に多量のクレアチンを補給することにより、飽和状態を促進する。被験者集団のローディングプロトコルは様々に異なるが、クレアチンの飽和度を最大にするという共通の目標は変わらない。Hultmanら(27)は、骨格筋内のクレアチンの最適飽和状態を作り出すための様々なローディングおよびメンテナンスプロトコルを調査した(脳内クレアチンの飽和に関しては「認知能力」の節を参照)。様々な量のクレアチンモノハイドレートを補給された 4 つの群では、クレアチンを 3 g /日の割合で最低 4 週間摂取すると、20 g /日ずつ 6 日間摂取する一般的なローディングプロトコルと同程度効率的に、ク

表 1 各種集団におけるクレアチンの補給と身体パフォーマンスへの効果(つづき)論文 被験者 介入 有意な結果

Cookeら(15)

20 名の「見たところ健康そうな」男性( 55歳~ 70歳)

45°レッグプレスとベンチプレスを使って測定した下半身と上半身の筋力( 1 RM)漸進的過負荷を含む 12 週間の監督下のプログラムクレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)を 7 日間、続いて 0.1 gのクレアチンを 7 日間

プラセボ群の脂肪量が↑

Antonio&Ciccone(1)

19 名の健康なレクリエーションレベルのボディービルダー

除脂肪体重とベンチプレスの 1 RMを測定5 gのクレアチンをトレーニングの前または後にランダムに補給

トレーニング後の摂取群は、除脂肪体重とベンチプレスの 1 RMがプラセボに比べて↑

Gordonら(22)

16 名のうっ血性心不全患者( 59±3 歳)

シングルレッグニーエクステンション、ダブルレッグサイクルエルゴメーター、および一側性短縮性ニーエクステンション20 g /日のクレアチンモノハイドレートを 10 日間

両脚と片脚のピークトルクがプレセボに比べ↑ピークトルクと片脚のパフォーマンスがどちらも骨格筋のPCrと比例して↑

上の表は、身体パフォーマンスを高めるエルゴジェニックエイドとしてのクレアチンモノハイドレートの効果を裏付ける研究をすべて網羅したリストではない。1 RM=最大挙上重量、MVC=随意最大収縮、PCr=クレアチンリン酸、RPE=主観的運動強度

レアチンの総貯蔵量を十分に増大させることが示された(27)。この方法に代わり、個人別の推奨プロトコルとしては、体重 1 kg当たり 0.3 gを 5 ~ 6 日間摂取し(ローディング量)、その後体重 1 kg当たり 0.03 gの摂取を続ける(維持量)ことが推奨される。先行研究においては、炭水化物および/またはタンパク質と同時に摂取することが、吸収速度および/または筋クレアチンの総量を増大させる可能性があることが示された(16,58)。このメカニズムは筋ナトリウム・カリウムポンプ活動を増大させるインスリンの上方制御によるものと思われる(16,24)。4 ~ 5 日間、1 日 20 gのクレアチンモノハイドレートを補給すると、クレアチンの総貯蔵量が 20%上昇することがエビデンスにより示されている(26)。カフェインはクレアチンの利益の補助として消費されるもうひとつの一般的なエルゴジェニックエイドである(63)。しかし、カフェインとクレアチンは筋の弛緩時間とカルシウム除去率に逆の影響を及ぼし、長期にわたるカフェインの摂取下ではクレアチンローディングの効果が低下することが示されている。した

がって、カフェインを同時摂取すると、クレアチンの利益が鈍化する可能性がある(63)。クレアチンの補給に関してはあまりにも多くの個人的な方法や方針が存在するが、総論としては、一般的なローディングプロトコルと維持量は総クレアチンの飽和状態まで高めるために十分であると思われる。

認知能力 クレアチンは脳の生体エネルギーの継続的なホメオスタシスにとって重要な化合物である。肝臓でクレアチンの合成を担う酵素であるグアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼの遺伝子欠失は、神経的な発達を損なうが、そのことは適切な内因性クレアチン調節の重要性を示している(50,59)。様々な状況により低下または最適以下の認知機能に苦しむ複数の被験者集団が、クレアチンの補給から利益を得ることが明らかになっている。低酸素によって誘発された、実行機能と複雑性注意力の測定値の低下は、クレアチン補給群ではコントロール群に比べ減少した

(21,64)。クレアチンの補給は、脳虚血とそれに続く脳の酸素不足に対して

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知見とは相反するが、 Cookら(14)は、クレアチンとカフェインの組み合わせは、プラセボと比較して、睡眠を制限されたラグビー選手のパフォーマンスの向上に効果的であったと明らかにした。 同様に、クレアチンの補給はアスリートの脱水を予防する働きがあり、温度調節により細胞内水を増加させる

(30,36,63,65)。Vagnozziら(67)は、 脳震盪を起こしたアスリートは、脳内クレアチンが減少することにより脳のエネルギーレベルが低下していることを見出した。総合的に、クレアチンの補給は、より信頼性の高いパフォーマンスをもたらし、アスリートの間でよくみられる多くの危険な健康上の懸念を予防できる。身体的疲労は運動によって誘発された精神的疲労によりさらに増幅されるが(40,50,56)、(低強度から中強度のエクササイズとともに)クレアチンを補給すると、競技特異的なパフォーマンスの低下と神経認知疲労の不利益が軽減される(41,42)。しかし、特に反応時間に関連する課題では、研究結果に一貫性はなかった(41,42)。身体パフォーマンスと精神的疲労に及ぼすクレアチンの補給効果の相互作用については、さらに詳細な説明が望まれる。クレアチンモノハイドレートがレジスタンストレーニングにおけるエルゴジェニックエイドとしてよく知られていることを考慮すると、将来の研究では、標準的な筋力および筋肥大スタイルのトレーニングを検討し、挙上者の集中力や反応時間の改善に対するこの化合物の効力を解明する必要がある。さらに、高強度活動に関する調査はまだ行なわれていないため、この分野の研究は、研究の隙間を埋めることになるだろう(表 3 )。この種のエクササイズは、認知処理機能の低下とも心理的に関連している(19,28)。この点で、

れた(43)。認知機能の改善のためには、7 日間( 1 日体重 1 kg当たり 0.3 g)のクレアチンローディングプロトコルを実施し、その後は維持量( 1 日体重 1 kg当たり 0.03 g)を 7 日間摂取することにより脳内クレアチンを 9.2%増大させた

(64)。さらに、ローディング期や維持期を無視し、1 日 20 gを 4 週間摂取すると、脳内の総クレアチンが 8.7%増加した(17)。結局のところ、神経疾患や食事の選択または年齢によりクレアチン/クレアチンリン酸が不足している人たちは、クレアチンの補給から利益が得られるだろう。 クレアチンの補給が神経認知機能にもたらす利益は、通常の食事パターンの健康な集団にとっても同様に重要である。研究結果によると、健康な男女混合の被験者群において、クレアチンの補給により、脳エネルギーのより最適なホメオスタシスを示唆するマーカーが増加することが示された(45)。最終的に、クレアチンモノハイドレートは、認知機能の改善を目的に用いる化合物、すなわち一般的な「向知性薬

(nootropic)」とみなすことができ、被験者の間で、記憶力、集中力および/または注意力などの認知能力試験の改善が示されている。健康な人への補給は、プラセボと比較すると、計算課題の結果の向上、精神的疲労の関連マーカーの改善が認められた(70)。最新のエビデンスに基づくと、クレアチンの補給は、既存の精神機能の最適化を求める集団にも役立つ可能性がある

(表 2 )。

総合的なエルゴジェニックエイド クレアチンは、脱水症と睡眠不足などの症状に続いて副次的な疲労が存在する際の身体パフォーマンスの向上に効果がある(14,30,36,41,42,65)。前述の

神経を保護することが示されている(33,67)。これらの知見は、クレアチン濃度が脳内の総合的なエネルギー状態と関連があるとの見解を裏付けている。興味深いことに、クレアチンの補給がうつ状態を軽減できるというエビデンスも増加している。精神的な健康状態の自覚的改善に関連して(34,52)、クレアチンの補給は選択的セロトニン再取り込み阻害薬と併用することにより、うつ病の治療効果を高めることができる(34,39)。逆に、認知能力が損なわれていない集団であっても、菜食主義者および/または完全菜食主義者は、クレアチンの補給と仮説的な神経認識効果の一時的利益との関連が認められる集団である。これらの集団は、定義上、クレアチンが多量に含まれる動物性食品をほとんど、あるいは全く食べない。食事性クレアチンの最大の供給源は骨格筋であるが、菜食主義者および/または完全菜食主義者は筋内クレアチン濃度が混合食者よりも低いことが確定している(49)。クレアチンモノハイドレートの補給は、プラセボと比較すると、短期記憶や言語作業記憶の機能だけでなく、時間的プレッシャーの下での知能測定値を増大させることが明らかになっている

(49)。認知的な利益は菜食主義者と菜食主義者以外の被験者の間で同様に認められるが、しかし菜食主義者のほうが記憶のより優れた改善結果を示した

(6)。最後に、高齢者集団の認知機能の促進に対する要求は明らかであるが、クレアチンモノハイドレートを補うと、より良好な精神的機能が観察される。McMorrisら(43)は、クレアチンモノハイドレートまたはプラセボを 5 g補給した健康な高齢者(~ 76 歳)において、数字の逆唱記憶がコントロール群よりも有意に優れていたことが示さ

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51C National Strength and Conditioning Association Japan

表 2 各種集団におけるクレアチンの補給と身体パフォーマンスへの効果論文 被験者 介入 有意な結果

Pan&Takahashi(45)

12 名(男性 7 名、女性 5名)の健康なボランティア参加者

NAAとクレアチンの比率PCr / ATP率クレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)を7 日間

NAAは↓、内側側頭葉と線条体のPCr /ATP↑深部灰白質構造のPCr / ATP↑

Benton&Donohoe(6)

121 名の学部女子大生(肉を食べる者 51 名、菜食主義者 70 名)

覚醒テスト、発話流ちょう性、言語記憶回想テストおよび反応時間テストクレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)を 5日間

菜食主義者群の記憶力スコアがコントロール群に比べ↑

McMorrisら(43)

32 名の健康な高齢者(平均年齢 76.4 歳、男性 16名、女性 16 名)

乱数生成テスト、言語と部分的短期記憶テスト、および長期記憶テストクレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)を7 日間

数字順唱および長期記憶課題のスコアがプラセボに比べ↑

Raeら(49)33 名の女性(完全菜食主義者/菜食主義者 18 名を含む)

RAPMによる知能検査短期および言語ワーキングメモリーの両方に関するウェクスラー聴覚BDS課題を完了クレアチンモノハイドレート( 5 g /日)を 6 週間

クレアチン群はプラセボ群に比べ、BDSとRAPMが↑

Watanabeら(70)

24 名の健康なボランティア参加者(男性 18 名、女性 5 名)

1 gのクレアチン錠剤としてクレアチンモノハイドレート 4 回/日を5 日間精神的疲労に関する内田クレペリン検査脳内ヘモグロビン酸化

計算課題の平均能力↑クレアチンの補給により課題前半の平均酸素ヘモグロビン↓

Lyooら(39)

52 名の大うつ病の女性患者

エスシタロプラム(SSRI)10 mg /日を最初の週と 20 mg /日を次の 7 週間摂取。同時に、クレアチンモノハイドレート3 g /日を最初の7日、5 g /日を次の 7 週間摂取。HAM-DのスコアとMADRSをベースライン、第 1、2、4、8週に検査。

うつ病の症状↓クレアチン補給により寛解↑、治療に対する初期反応↑

Kondoら(34)

28 名のSSRIに抵抗性のある大うつ病の女性患者

1 日に 2、4 または 10 gのエスシタロプラム(SSRI)の補強を目的として、参加者をプラセボ群かクレアチンモノハイドレート群にランダムに振り分けた亜リン酸-31 MRSをPCr、B-NTP、ATP、Piに関して測定

クレアチンの補給が頭葉のPCr↑を伴うこれはうつ病の重症度↓に関連する2 gの投与量にランダムに振り分けられた参加者がうつの重症度が最もしっかり↓

Roitmanら(52)

7 名(男性 5 名、女性 2 名)の抗うつ薬および/または精神安定剤に抵抗性があるうつ病患者

クレアチンモノハイドレート 3 g /日を 1 週目、5 g /日を次の 3 週間HAM-DとCGIのスコアをベースラインと 1、2、3、4 週目に測定

4 週目にHAM-Dスコア↓およびCGIスコア↓最少有意差の事後検査により、各測定結果のベースラインに基づく有意な改善が1 週目に明らかになった

Turnerら(64)

15 名(男性 10 名、女性 5 名)

クレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)を 7 日間、その後 5 週間のウォッシュアウト期間を経て交差実験10%酸素の吸入により誘発された 90 分間の低酸素状態認知機能を複数のテストで検査。複合記憶、言語的記憶、視覚的記憶、処理速度、実行機能、精神運動速度、反応時間、複雑性注意力、認知的柔軟性などの基本領域および神経認知力指標のスコア経頭蓋磁気刺激と末梢神経刺激を用いて皮質脊髄路興奮性レベルを評価

クレアチンの補給により注意力を要する複雑課題が↑実行機能、認知的柔軟性および神経認知指標の↑傾向が観察されたプラセボでは皮質脊髄路興奮性が↓、しかしクレアチン補給による影響は認められなかった

上の表は、クレアチンモノハイドレートの認知能力向上薬としての効果を裏付ける研究をすべて網羅したリストではない。ATP =アデノシン三リン酸、BDS=数字逆唱、B-NTP= ベータ核種三リン酸 CGI=臨床全般印象度、HAM-D=ハミルトンうつ病評価尺度、MADRS=モンゴメリー・アスバーグうつ病評価尺度、NAA=Nアセチルアスパラギン酸、PCr=クレアチンリン酸、Pi=無機リン酸、RAPM=レーヴン漸進的マトリックス検査、SSRI=選択的セロトニン再取り込み阻害薬

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52 December 2018  Volume 25  Number 10

クレアチンの補給が、認知機能の低下をいずれもたらす精神的ストレスを減らすことにおいて役割を果たす可能性がある。最後に、男性と女性は運動介入による認知力テストに異なる反応をするため、将来の研究では、認知能力の低下を食い止めるクレアチンの効果を男女別に調査する必要がある(13)。

おわりに クレアチンは、ATP-CPr機構に燃料を供給する基本的な目的を別としても、多くの役割を果たすことができる

(図 1 )。エルゴジェニックエイドとして、クレアチンモノハイドレートは、幅広い層の人々にとって、筋力や筋持久力そして総合的な運動能力の向上のために、容易に入手可能で最も効果的なサプリメントのひとつであることが

示された。さらに、広範な被験者の間でクレアチンの補給による精神作用の改善がもたらされ、クレアチンが認知能力や脳エネルギーのホメオスタシスにおいても中心的役割を果たすことが明らかにされた(表 2 )。クレアチンは潜在的に、身体的および認知的な増強の一体化においてさえ、さらに素晴らしい役割を果たす可能性がある。睡眠不足や脱水などの状態によって誘発される疲労の有害な影響も、クレアチンの補給下では軽減される(9,14,41,42)。しかし、クレアチンの補給と精神的疲労との相互作用を調査するためにはさらに研究が必要である。欠けている

「パズルの 1 ピース」は、このサプリメントの身体的向上と認知的向上の両方を合わせた研究である。表 3 は、この相互作用に関する既存の情報を示して

いる。特に高強度エクササイズの介入において研究の不足は明らかである。研究が時には一貫性がなく、不足していて、矛盾があることを考えると、将来の調査は、特にレジスタンストレーニングを積んだ集団のサポートに役立ち、精神的疲労の提言に果たすクレアチンモノハイドレートの役割を解明する必要がある。結論として、専門職もアスリートも、クレアチンを、単なる身体パフォーマンスまたは認知能力の向上のための化合物と見なすことは避けるべきである。むしろ疲労に対する予防薬としてのクレアチンの潜在的効果も考慮する必要がある。クレアチンが運動能力をどの程度改善できるかを明らかにすることは科学者の義務である。科学界は、適切に用いる限りクレアチンの補給に害はないとすでに結論

表 3 エクササイズ介入時のクレアチン補給が認知能力に及ぼす効果論文 被験者 介入 有意な結果

McMorrisら(42)

男性 17 名、女性 3 名スポーツ科学および教育学専攻の学生で有償のボランティア参加者

睡眠制限サイクルエルゴメーター上での 40%最大心拍数での低強度エクササイズ認知力テスト:RMGにより測定したワーキングメモリー能力反復頻度%としてのADJ言語的および空間的短期記憶テスト (順唱と逆唱)精神運動検査は 4 択の視覚的反応時間テスト気分状態はPOMSを用いて調査クレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)を 7 日間

ADJスコアの変化↑プラセボに対し、修正のふれ幅が↓クレアチン群は気分状態尺度の疲労と活力スコアが↑

McMorrisら(41)

20 名のスポーツ科学専攻の男子学生でボランティア参加者 

睡眠制限ステアクライミング、3 分の休息を挟んで 2×5 のステップアップおよび 65%心拍数で 15 分間のウォーキング認知テストはRNG指標とBaddeleyら(4)の数字記憶テストを用いたRED言語的短期記憶力選択反応時間テストは古典的な 4 択視覚的反応時間精神運動試験は動的バランステスト気分状態はPOMSを用いて測定クレアチンモノハイドレート( 4 回/日×5 gのクレアチン)を 7 日間

クレアチン群はプラセボに対しRNGのパフォーマンスが線形に↑

Cookら(14)

10 名の健康で負傷していない男子プロラグビー選手

睡眠制限クレアチンモノハイドレート( 50 mgまたは 100 mg /体重 1 kg)またはカフェイン( 1 mgまたは 5 mg /体重 1 kg)またはプラセボ( 5 mg /体重 1 kgのスクロース)をテスト日に投与睡眠制限状態でのラグビーのパスのスキルテストを 10 週間に 10 回、別々の機会に反復実施

クレアチンとカフェインのすべての投与量において、スキル実行能力がコントロール群に比べ↑

上の表は、身体的また認知的能力向上剤としてのクレアチンモノハイドレートの効果を裏付ける研究すべてを網羅したリストではない。ADJ =隣接スコア、POMS=気分状態のプロフィール、RED=冗長性、RMG=ランダム運動生成、RNG= 乱数生成

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53C National Strength and Conditioning Association Japan

づけているが、なおさらに多くの研究を行なう必要がある。また、補給がすべての被験者に同じ影響を及ぼすわけではないことに言及することも現実的かつ有益である。応答しない被験者、効果の現れない補給量、補給プロトコルのばらつき、またはすべての因子の集合により、有意な結果が得られない場合がある(3,48)。それにもかかわらず、既存のデータの中には、クレアチンの効果を裏付ける実質的なエビデンスがある。したがって、コーチやトレーナーや栄養士は、クレアチンを指導中のアスリートに供給すべき最も重要なサプリメントにひとつと考えるべきである。◆

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図 1 クレアチンモノハイドレートの筋と脳における利益(1,6,9,16,22,35,51,68,70)

筋でみられる改善1 )筋力2 )筋持久力3 )身体組成

脳でみられる改善1 )精神的疲労2 )想起能力3 )注意力/集中力の維持

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Steven B. Machek:Sa n   F r a n c i s c o   S t a t e Universityの大学院生で、認定パーソナルトレーナーとして活躍中。

James R. Bagley:Sa n   F r a n c i s c o   S t a t e Universityの運動生理学部筋生理学研究室の助教。

著者紹介