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フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP) 第1回 食の安全・信頼に関する新たな知見の蓄積勉強会 ~ゲノム編集により生まれる新たな食品の安全と信頼~ 「ゲノム編集応用食品の食品衛生法上の取り扱い」 日時:令和1614日(金) 場所:本省第一会議室 農研機構 企画戦略本部 新技術対策室 室長 田部井 豊

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フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)第1回 食の安全・信頼に関する新たな知見の蓄積勉強会 ~ゲノム編集により生まれる新たな食品の安全と信頼~

「ゲノム編集応用食品の食品衛生法上の取り扱い」

日時:令和1年6月14日(金)

場所:本省第一会議室

農研機構 企画戦略本部

新技術対策室 室長 田部井 豊

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本日のトピックス 1.ゲノム編集技術とは

2.海外の規制

米国、アルゼンチン、豪州、ニュージーランド、EU

2.日本のゲノム編集生物の規制

1)カルタヘナ法における扱い

2)食品衛生法における扱い

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突然変異を利用した育種

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変異が起こる場所によって、 生物の性質が変わることがある。 これが突然変異の基になる。 その確率は10万~100万分の1

様々な理由でDNAが切れることは頻繁に起こっている。 生物は切れても元通りにするが、たまに修復ミスが起こる。

まれに修復ミスがおこると

DNAに変異がおこる

その他、細胞分裂時にDNAのコピーミスが起こり、 突然変異が起こることもある。

くらしとバイオプラザ21の資料より

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SpCas9

5’ 3’ I I I I I I I I I I I I I

20bp

NGG NCC

3’

5’

5’

3’

Cas9 Marker sgRNA

RB LB

目的配列によって、この20bpは変更される

sgRNA

Scaffold

化膿連鎖球菌由来のCas9 (SpCas9)

PAM配列

CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集

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標的遺伝子の切断

ゲノム編集とは

切断部位に欠失・挿入・塩基置換が導入できる

①標的変異お手本を使わないDNA修復

非相同末端結合(NHEJ) 欠失

挿入 塩基置換

遺伝子の望むべき部位に欠失・挿入・ 塩基置換・モチーフ交換が誘導できる

②標的組換え(ジーンターゲッティング) お手本を使うDNA修復

5’

3’

3’

5’ *

* *

相同組換え(HR)

* *

* *

SDN-1 (数塩基の欠失・挿入)

SDN-2 (数塩基の置換)

SDN-3 相同組換えに よる遺伝子導入

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統合イノベーション戦略

ⅱ)得られた成果の早期社会実装のための制度面の対応等の推進

○ 得られた成果を早期に社会実装するための制度面の対応、バイオベンチャーの活躍支援、国民理解の促進等を行う。 【科技、消費、厚、農、経、環】

<制度面の対応等>

・ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の取扱い及び同技術の利用により得られた農産物や水産物等の食品衛生法上の取扱いについて、2018 年度中を目途に明確化、国際調和に向けた取組の推進

平成3 0 年6 月1 5 日 閣議決定

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ゲノム編集応用食品の検討

【調査会開催実績】 平成30 年 9月19 日 調査会(第1回) 平成 30 年 10 月 15 日 調査会(第2回) 平成30 年11 月19 日 調査会(第3回)※関係者団体へのヒアリング 平成30 年12 月 5日 調査会(第4回) 【部会開催】 平成 30 年 12 月 18 日 部会(第1回) 平成30 年12 月27 日 部会(第2回)※関係者団体へのヒアリング 平成31 年 1月17 日 部会(第3回) 平成31 年3月27日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調

査部会報告書

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ゲノム編集生物のカルタヘナ法上の取扱い

平成30 年7月 「中央環境審議会自然環境部会遺伝子組換え生物 平成30 年9月 「カルタヘナ法におけるゲノム編集技術等検討会で検討 平成30 年9月20 日~平成30 年10 月19 日 パブリックコメント 平成31年1月21日 中央環境審議会自然環境部会に取扱方針を取りまと

めを報告 平成31年2月28日 「ゲノム編集技術の利用により得られた生物であってカ

ルタヘナ法に規定された「遺伝子組換え生物等」に該当しない生物の取扱いについて」をプレスリリース

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人工制限酵素をコードするDNAをゲノムに挿入し、

ゲノム編集が達成された後代で外来遺伝子が抜けた個体を選抜する。

ヌルセグリガント

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手法としては 遺伝子組換え

もしオフターゲットが入っても・・・

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オフターゲットとは

CRISPRなどの人工制限酵素が,本来の標的DNA配列以外の類似配列を認識して切断することによって生じるDNA変異のこと.(薬学用語集、日本薬学会より)

分子標的薬などで本来の標的(on-target)とは異なる別の分子(off-target)を阻害,あるいは活性化してしまう効果. 通常は好ましくない副作用の原因となるが,予期しない新たな薬理作用や創薬標的の発見につながることもある.(実験医学online 羊土社より)

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日本:カルタヘナ法の規制対象生物

(定義) 第2条 この法律において「生物」とは、一の細胞(細胞群を構成しているものを除く。)又は細胞群であって核酸を移転し又は複製する能力を有するものとして主務省令で定めるもの、ウイルス及びウイロイドをいう。

2 この法律において「遺伝子組換え生物等」とは、次に掲げる技術の利用により得られた核酸又はその複製物を有する生物をいう。

一 細胞外において核酸を加工する技術であって主務省令で定めるもの

二 異なる分類学上の科に属する生物の細胞を融合する技術であって主務省令で定めるもの

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ア 得られた生物に細胞外で加工した核酸が含まれない場合(SDN-1 など)(ア)人工ヌクレアーゼ等を直接細胞に移入する場合タンパク質のみで構成される人工ヌクレアーゼを直接細胞に移入した場合、

細胞外で加工した核酸を移入していないことから、「遺伝子組換え生物等」には該当しない。また、タンパク質とRNA(核酸)で構成される人工ヌクレアーゼや、人工ヌクレアーゼのmRNA(核酸)を直接細胞へ移入する場合であっても、移入したRNA(核酸)等が宿主のゲノム中に移転又は複製されない場合は「遺伝子組換え生物等」には該当しない。

(イ)人工ヌクレアーゼ遺伝子(核酸)を細胞内に移入して一過性に発現させる場合一過性にその機能を発現させることを期待して、人工ヌクレアーゼ遺伝子をベ

クターに組み込む等により細胞内に移入する場合、細胞外で核酸を加工する技術を利用しているものの、人工ヌクレアーゼ遺伝子を含むベクター等が宿主のゲノム中に移転又は複製されない場合は、「遺伝子組換え生物等」には該当しない。

カルタヘナ法上のゲノム編集生物の取扱い

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ウ)宿主のゲノムに人工ヌクレアーゼ遺伝子を組み込む場合 細胞外で加工した核酸が宿主のゲノムに組み込まれている生物は「遺伝子組換え生物等」に該当する。ただし、従来品種との戻し交配等によって、組み込まれた遺伝子を除去した場合(null segregant)、最終的に得られた生物は、細胞外で加工した核酸又はその複製物を有していないことから、「遺伝子組換え生物等」には該当しない。 なお、いずれの場合も、作製の過程において細胞外で加工した核酸を移入するものについては、得られた生物に当該核酸が残存していないことが確認されるまでの間は、「遺伝子組換え生物等」として取扱い、カルタヘナ法に基づく適切な措置を講ずる必要がある。

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カルタヘナ法上のゲノム編集生物の取扱い

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(3)法律上の整理イ 得られた生物に細胞外で加工した核酸が含まれる場合(SDN-2及びSDN-3等) 細胞外で加工した核酸を移入して、当該核酸又はその複製物が宿主のゲノムに組み込まれていることから、得られた生物は、カルタヘナ法の「遺伝子組換え生物等」に該当する。

ウ その他今後新たに開発され得る技術の利用によって得られた生物につ

いても、可能な限り、上記ア及びイの基本的な考え方に従って整理する。

宿主と同一の分類学上の種に属する生物の核酸のみを用いた場合(いわゆるセルフクローニング)、自然条件において宿主の属する分類学上の種との間で核酸を交換する種に属する生物(ウイルス及びウイロイドを含む)の核酸のみを用いた場合(いわゆるナチュラルオカレンス)については、施行規則第2条第1号(イ、ロ)及び第2号に該当するため、「遺伝子組換え生物等」に該当しない。 15

カルタヘナ法上のゲノム編集生物の取扱い

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「生物の多様性に関する条約」及び「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」の趣旨、目的を踏まえ、1においてカルタヘナ法の対象外と整理された生物については、ゲノム編集技術により得られた生物に関する知見を収集するとともに、作出経緯等を把握できる状況にしておくことが必要である。

2 ゲノム編集技術の利用により得られた生物のうち、カルタヘナ法の対象外とされた生物の取扱いについて

【情報提供する項目】 (a) カルタヘナ法に規定される細胞外で加工した核酸又はその複製物が残存していないことが確認された生物であること(その根拠を含む)(b) 改変した生物の分類学上の種(c) 改変に利用したゲノム編集の方法(d) 改変した遺伝子及び当該遺伝子の機能(e) 当該改変により生じた形質の変化(f) (e)以外に生じた形質の変化の有無(ある場合はその内容)(g) 当該生物の用途(h) 当該生物を使用した場合に生物多様性影響が生ずる可能性に関する考察*

* 例えば、遺伝子組換え生物等の第一種使用等による生物多様性影響評価実施要領(平成15 年財務・文部科学・厚生労働・農林水産・経済産業・環境省告示第2号)別表第二の下欄に掲げる評価の項目等を参照。

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環境省における検討のまとめ

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