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01 4 NHK技研 R&D/No.167/2018.1 1.はじめに カラーテレビ放送普及の契機となった1964年の東京オリンピックから56年後となる 2020年に,東京オリンピック・パラリンピックが開催される。NHKでは,次世代放送 システム「8Kスーパーハイビジョン」(以下,8K)の2020年の本格普及を目指して, 研究開発を進めている。8Kは,ハイビジョンの16倍の画素数(7,680×4,320)を持つ究 極の2次元映像システムであり,これまでにない実物感や,あたかもその場にいるかの ような臨場感・没入感を体験することができる 1) 。かつて,アナログテレビ放送からデ ジタル・ハイビジョン放送への進化とともに,家庭用テレビもブラウン管から薄型のフ ラットパネルへと大きな技術革新を遂げ,放送メディアの進展・普及を支えてきた。そ して,いま8Kによる臨場感あふれる放送を気軽に楽しめるような,新しいディスプレー の登場が期待されている。 8Kは,小さい画面から大きい画面まで,視聴環境に応じてさまざまな楽しみ方が想 定されるが,高い臨場感や没入感は70インチ以上の大画面で視聴することで,より発 揮される。しかし,このような大画面ディスプレーを家庭に導入することは,エレベー ターや玄関の高さ・幅などの物理的な制約により,容易ではない。また,重量の増加に 伴う運搬方法の制約や輸送費増による流通コストの上昇が懸念される。そのためディス プレー技術には,これらを克服するブレイクスルーが求められている。 近年,ディスプレーの分野では,これまで使われていたガラスに代わり,柔軟で軽量 なプラスチックフィルム上に作製するフレキシブルディスプレーがトレンドとなり,注 目されている。この変化は単に素材が変わるだけではなく,これまでのディスプレーで は考えられなかった軽量性,柔軟性・曲げやすさ,耐衝撃性,可搬性などの新たな付加 価値に加え,視聴スタイルやディスプレーデザインに変革をもたらすと期待されている。 特に,自発光型の表示デバイスである有機ELデバイスを用いたフレキシブル有機EL ディスプレーは,バックライトを必要としないため,超薄型で柔軟なフレキシブルディ スプレーを実現できる。画質面においても,液晶ディスプレーで見られるバックライト の光漏れが発生しないため,沈んだ黒表示によるコントラストの高い表示が可能であり, フレキシブル有機 EL ディス プレーの研究開発動向 藤崎好英  中田 充 近年,プラスチックフィルム上に作製するフレキシブル有機EL(Electroluminescence: 電界発光)ディスプレーが脚光を浴び,実用化に向けた開発が進んでいる。当所では, 8Kスーパーハイビジョンの家庭視聴に適した大画面フレキシブル有機ELディスプレー の実現を目指して研究を進めている。本稿では,その技術概要と研究開発動向につい て紹介する。

フレキシブル有機ELディス プレーの研究開発動向 - NHK3.2 画素駆動用薄膜トランジスター フレキシブル有機ELディスプレーの画素駆動用TFTの分類を2表に示す。大別して,アモルファスシリコン(a-Si

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    4 5NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    1.はじめにカラーテレビ放送普及の契機となった1964年の東京オリンピックから56年後となる

    2020年に,東京オリンピック・パラリンピックが開催される。NHKでは,次世代放送システム「8Kスーパーハイビジョン」(以下,8K)の2020年の本格普及を目指して,研究開発を進めている。8Kは,ハイビジョンの16倍の画素数(7,680×4,320)を持つ究極の2次元映像システムであり,これまでにない実物感や,あたかもその場にいるかのような臨場感・没入感を体験することができる1)。かつて,アナログテレビ放送からデジタル・ハイビジョン放送への進化とともに,家庭用テレビもブラウン管から薄型のフラットパネルへと大きな技術革新を遂げ,放送メディアの進展・普及を支えてきた。そして,いま8Kによる臨場感あふれる放送を気軽に楽しめるような,新しいディスプレーの登場が期待されている。

    8Kは,小さい画面から大きい画面まで,視聴環境に応じてさまざまな楽しみ方が想定されるが,高い臨場感や没入感は70インチ以上の大画面で視聴することで,より発揮される。しかし,このような大画面ディスプレーを家庭に導入することは,エレベーターや玄関の高さ・幅などの物理的な制約により,容易ではない。また,重量の増加に伴う運搬方法の制約や輸送費増による流通コストの上昇が懸念される。そのためディスプレー技術には,これらを克服するブレイクスルーが求められている。

    近年,ディスプレーの分野では,これまで使われていたガラスに代わり,柔軟で軽量なプラスチックフィルム上に作製するフレキシブルディスプレーがトレンドとなり,注目されている。この変化は単に素材が変わるだけではなく,これまでのディスプレーでは考えられなかった軽量性,柔軟性・曲げやすさ,耐衝撃性,可搬性などの新たな付加価値に加え,視聴スタイルやディスプレーデザインに変革をもたらすと期待されている。

    特に,自発光型の表示デバイスである有機ELデバイスを用いたフレキシブル有機ELディスプレーは,バックライトを必要としないため,超薄型で柔軟なフレキシブルディスプレーを実現できる。画質面においても,液晶ディスプレーで見られるバックライトの光漏れが発生しないため,沈んだ黒表示によるコントラストの高い表示が可能であり,

    フレキシブル有機 EL ディスプレーの研究開発動向藤崎好英  中田 充

    近年,プラスチックフィルム上に作製するフレキシブル有機EL(Electroluminescence:

    電界発光)ディスプレーが脚光を浴び,実用化に向けた開発が進んでいる。当所では,

    8Kスーパーハイビジョンの家庭視聴に適した大画面フレキシブル有機ELディスプレー

    の実現を目指して研究を進めている。本稿では,その技術概要と研究開発動向につい

    て紹介する。

  • 4 5NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    色再現性や応答性,視野角特性なども優れている。既にスマートフォンやタブレットなどの小型携帯端末を中心に開発が進み,一部商品化もされている。

    本稿では,8K用の大画面フレキシブルディスプレーの利用イメージについて述べた後,フレキシブル有機ELディスプレーの基本構成や主要な要素技術と,最新の開発動向について紹介する。さらに,大画面フレキシブル有機ELディスプレーの実現に向けて,今後のボトルネックとなる課題とその解決に向けたアプローチについて展望する。

    2.スーパーハイビジョン用フレキシブル有機ELディスプレーのイメージ放送の進化とディスプレー技術の発展は密接な関係を持っている。8Kは究極の2次

    元映像であり,そのディスプレーには,高画質に加え,これまで以上に生活環境やリビングに溶け込むような新しいスタイルが求められる。本章では,フレキシブル有機ELディスプレーを使った8K放送の視聴イメージを紹介する。

    8K放送は,視距離や視聴環境に応じて小さい画面から大きい画面まで,さまざまな画面サイズで楽しむことができる。例えば,15 〜 25型程度の中・小型サイズであれば,350 〜 600ppi*1の超高精細な画面密度となり,グラビア印刷を見るのと同程度の高い解像度で,実物に迫るリアリティーのある映像を手軽に楽しむことができる(1図(a))。

    一方で,8K本来の特徴である広い視野角を生かした臨場感や没入感を本格的に味わうには,70 〜 100インチ程度の大画面ディスプレーが望ましい。プラスチックフィルムを使った柔軟で湾曲可能なフレキシブルディスプレーであれば,カーペットのように湾曲させて,一般の住宅やマンションの階段・エレベーター・玄関を通って,100インチ程度の大型ディスプレーでも家庭に気軽に搬入できるようになる。ディスプレーの重量についても,例えば電子デバイス用の汎用プラスチックの比重を基に試算すると,ガラスと比較して1/10以下の軽量化が期待できる。このインパクトは非常に大きく,大型サイズであっても,ポスターや絵画と同じ感覚で容易に持ち運ぶことが可能となり,

    *1pixel per inch:1インチ当たりの画素数。

    (a) 中・小型サイズ

    (c) 壁面への貼り付け

    (b) 大画面ローラブルディスプレー

    1図 8K 用フレキシブルディスプレーのさまざまな視聴イメージ

  • 6 7NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    屋内設置の自由度が飛躍的に向上する。さらに,運送コストも格段に安くなると期待される。将来,プラスチックフィルムやデバイス構造をより薄くして曲率半径を数cm程度まで小さくすることができれば,これまでのディスプレーでは思いも寄らない新たな視聴スタイルが生まれる。例えば,プロジェクタースクリーンがそのままディスプレーになるようなローラブルテレビが現実のものとなる(1図(b))。テレビを見ないときは,ロール状にして筐

    きょう

    体たい

    (ケース)に収納したり,ポスターのように見たいときに壁面に貼り付けて視聴したりするなど(1図(c)),これまでにない新しい視聴スタイルの出現が予想される。このように大画面フレキシブルディスプレーの登場は,高臨場感の8K放送の家庭普及と利便性の向上という2つの波及効果をもたらすと期待される。

    3.フレキシブル有機ELディスプレーの構造と要素技術本章では,フレキシブル有機ELディスプレーの構成および構造について説明した後,

    主な要素技術である,プラスチックフィルム,薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor),有機ELデバイスに焦点を当て,それぞれの概要について説明する。

    3.1 フレキシブル有機ELディスプレーの構造とプラスチック基板フレキシブル有機ELディスプレーの画素回路および断面構造を2図に示す。基本的

    な構成は,従来のガラス基板上に作製される有機ELディスプレーと同一である。2図(a)は,最も基本的な画素回路である。選択用TFTのスイッチング動作により

    保持容量(コンデンサー)に画素データを書き込み,その電圧に応じて駆動用TFTにより有機ELに電流を流し発光させる。この基本回路は,2つのTFTと1つのコンデンサーを有しているため,2T 1C回路とも呼ばれる。実際には,TFTのしきい値電圧の動的変動などを補正するTFTが必要となり,画素回路も複雑になる傾向にある。

    次に,2図(b)に示す断面構造を基に,フレキシブル有機ELディスプレーの構成要素について説明する。プラスチック基板上に,TFT画素回路,画素電極,有機ELデバイスが垂直あるいは並列に形成され,さらに封止膜が形成されている。基板となるプラスチックには,ディスプレー製造プロセスに対応できるさまざまな性能が要求される。具体的には,耐熱性,耐薬品性,表面平滑性,高い水蒸気バリア性に加え,線膨張係数*2 が低く寸法安定性の高いフィルムが求められる。1表に代表的なプラスチックフィルムの特性を示す。線膨張係数が低く高耐熱のプラスチックとして,ポリイミド(PI:Polyimide)が知られている。最近では,500℃以上の耐熱性があるPIフィルムも開発されており,TFTの製造プロセスに十分適応できる。ただし,耐熱性の高いPIフィル

    *2温度上昇によって物体の長さや体積が膨張(熱膨張)する割合を温度当たりで示した係数。

    プラスチック基板

    封止

    選択用TFT

    陰極

    陽極

    画素電極絶縁膜

    (a) 画素回路

    選択用TFT 駆動用TFT

    有機EL

    ゲート線VSCAN

    データ線VDATA

    保持容量

    供給電圧VDD

    陰極電圧Vcath

    駆動用TFT

    (b) 断面構造

    有機EL

    2図 フレキシブル有機 EL ディスプレーの画素回路および断面構造

  • 6 7NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    解説 01

    ムほど着色されているため透過度が低く,後述するボトムエミッション型発光のディスプレーには適さない。一方,PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などは透明性が高く,低コストのプラスチック材料として一般に知られている。しかし,PETやPENは耐熱性が低いため,TFTバックプレーン*3 の製造プロセスへの対応が難しい。今後,耐熱性の高い透明プラスチックの開発に加え,プラスチック基板の選択肢を広げるために,ディスプレー作製プロセスの低温化が望まれる。

    3.2 画素駆動用薄膜トランジスターフレキシブル有機ELディスプレーの画素駆動用TFTの分類を2表に示す。大別して,

    アモルファスシリコン(a-Si:Amorphous Silicon)や低温多結晶シリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)などのSi系TFT,In-Ga-Zn-O(IGZO)などの金属酸化物半導体を用いた酸化物TFT,有機半導体を用いた有機TFTに分類される。それぞれ長所・短所があるものの,近年,最も注目されているのが酸化物TFTである。

    有機ELディスプレーでは,有機EL素子に電流を流す駆動用TFTに高い移動度*4 が要求されるのに加え,選択用TFTについても,ディスプレーの大画面・高精細化に伴いスイッチング速度の速い性能が要求される。そのため,これまで液晶ディスプレーで主流となっていたa-Siではこの性能を満足できない。

    LTPSは,100cm2/Vs以上の高移動度を実現できるため,画素回路のみならず周辺ドライバーにも適用できる性能を有している。実際に,LTPS駆動の小型フレキシブルディスプレーが実用化されている。しかし,2表に示すとおり,プロセス温度が高いため,使用できるプラスチックフィルムの選択肢が少ない。また,LTPSではエキシマレーザー*5を用いたシリコン結晶化プロセスが必要となるため,50インチ以上の大型サイズ基板への対応が難しい。そのため,マイクロレンズアレーを用いたレーザー結晶化など,

    *3選択した画素に電圧または電流を印加して個別に動作させるために,TFT駆動回路を各画素の直下に埋め込んだ基板。

    *4電子や正孔の移動のしやすさを表す値。

    *5希ガス(ヘリウムHe,ネオンNe,アルゴンAr,クリプトンKr,キセノンXe,ラドンRnの6種類の元素)などの混合ガスを用いてレーザー光を発生させる装置。

    1表 代表的なプラスチックフィルム

    PETポリエチレンテレフタレート

    PENポリエチレンナフタレート

    PCポリカーボネート

    PESポリエーテルサル

    ホン

    PIポリイミド

    厚み(μm) 100 100 100 100 100

    透過率(%) 90 87 92 89 30 – 60

    ガラス転移温度※

    (℃) 80 150 145 220 300以上

    線膨張係数(ppm/℃) 60 20 75 50 8 – 20

    ※ 高分子材料を加熱して,ガラス状の硬い状態からゴム状に変わる温度。

    2表 画素駆動用 TFT の分類

    a-Si LTPS 酸化物 有機

    移動度(cm2/Vs) 0.5 – 1.5 100以上 10 – 20 1 – 10

    プロセス温度(℃) 350以下 500 300 – 400 150以下

    大面積化 ○ × ○ ○

    プラスチック基板との適合性 ○ △ ○ ◎

    特徴 経時変化あり 特性バラツキ大オフ電流が高い比較的安定

    オフ電流が低い 移動度が低い

  • 8 9NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    LTPSを大画面ディスプレーに適用するためのプロセス技術が検討されている2)。プロセス温度が100 〜 150℃と最も低い有機TFTは,さまざまな低コストのプラス

    チック基板を適用できる魅力がある。近年,低分子有機半導体を中心に材料開発が進み,移動度10cm2/Vs以上もターゲットになりつつあるが 3),特性の信頼性や微細化プロセスなどに関して更なる開発が求められている。

    一方,酸化物TFTは,スパッタ法*6を用いて半導体を形成できるため,大型基板への展開が容易である。プロセス温度も300 〜 400℃程度と比較的低い。性能についても,10cm2/Vs以上とa-Siと比較して一桁以上高い移動度を実現できる4)。また,酸化物TFTはオフ時のリーク電流が10−14 A以下と低く,ディスプレーの低消費電力駆動にも適している。これらの性能要求とプロセス環境を満足する駆動デバイスとして,酸化物TFTが注目されている。

    3.3 有機EL有機ELデバイスは,発光層を中心として,正孔の注入層,輸送層,電子の注入層,

    輸送層を積層し,2つの電極(陽極と陰極)で挟み込んだ薄膜構造となっている。各有機層の厚みは数十nmである。陽極から注入された正孔(ホール)と陰極から注入された電子が発光層において再結合することで発光する。材料や動作原理などの詳細については,本特集号の解説「有機ELの研究動向」を参照していただきたい。

    有機ELディスプレーには,発光の取り出し方法によりボトムエミッションとトップエミッションの2つの構造がある。3図(a)に示すボトムエミッション方式では,基板の下部に向けて光を放射する。この方式では画素回路と有機ELを平面的に配置するため,発光の開口率(画素面積に対する発光面積の割合)を高くできず,輝度を上げにくいという短所がある。

    これに対し,3図(b)に示すトップエミッション方式では,基板の上部に向けて光を放射する。この方式では画素回路と有機ELを上下に配置するため,開口率を高くでき,高精細のディスプレーに向いている。しかし,大画面化した場合に,上部透明電極の導

    *6加速したイオンを成膜材料に衝突させ,はじき出された材料を基板に付着させる成膜方法。

    プラスチック基板

    (a) ボトムエミッション方式

    プラスチック基板

    TFT

    共通電極

    有機EL

    (b) トップエミッション方式

    画素電極

    R G B

    R G B

    3図 有機 EL ディスプレーの発光の取り出し方法

  • 8 9NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    解説 01

    電性が低いために大きな電圧勾配を生じ,その結果,シェーディングによる輝度むらを生じてしまうという課題がある。そこで,ITOなどの透明な金属酸化物を上部電極として成膜することで導電性を向上させることや,補助電極を形成することなどが検討されている。

    最近の有機ELディスプレーの開発動向としては,小型高精細ディスプレーでは開口率を大きくできるトップエミッション方式が,大型ディスプレーではプロセス行程が比較的簡易なボトムエミッション方式が採用される傾向にある。しかし将来的には,高輝度・高効率の表示が可能なトップエミッション方式の大画面ディスプレーが望まれており,プロセス技術の開発が進んでいる。

    一方,有機ELディスプレーのカラー化方式についても,4図(a)に示すRGB塗り分け方式(赤,緑,青に塗り分ける方式)と,4図(b)に示すカラーフィルター方式

    (白色有機ELとCF(Color Filter:カラーフィルター)を組み合わせた方式)の2つのアプローチがある。RGB塗り分け方式では,マスク蒸着を使った発光材料の微細パターニングが高いハードルとなっており,特に大画面ディスプレーでの塗り分け技術はいまだに確立されていない。インクジェット印刷を使った有機EL塗り分け技術の開発も進んでいるが,同じく大型基板に対応したプロセスはいまだに確立されていない。一方,カラーフィルター方式は,プロセス工程が簡単で量産に向いている。ただし,フィルターでの光吸収により損失する光が多く,高輝度・高効率の発光を得ることが課題となっている。そのため,より高い輝度を得やすいRGBW構造(1画素を赤,緑,青の3色ではなく,赤,緑,青,白の4つのサブピクセルで構成)のカラーフィルターも提案されている5)。

    4.フレキシブル有機ELディスプレーの開発動向フレキシブル有機ELディスプレーの研究開発は2002年頃から活発に行われるよう

    になり,国内外の研究機関から先駆的な成果が報告されている6)7)。当所においても,2006年以降,フレキシブル有機ELパネルの試作に成功している8)9)。しかし,当時は基材となるプラスチックフィルムの耐熱性が低く,プロセス技術も未成熟だったため,有機TFTを駆動素子に用いた画素数の少ない小型有機ELパネルの開発が進んだ。その後,材料・デバイス性能の向上,プロセス技術の目まぐるしい発達に伴い,実用化に向けた開発が急ピッチで進んでいる。

    最近のフレキシブル有機ELディスプレーの開発例の一部を3表に示す。3表の開発状況は,2016 〜 2017年にアメリカで開催されたディスプレー業界で最大の国際会議

    白色有機EL

    (a) RGB塗り分け方式 (b)カラーフィルター方式(白色+CF(カラーフィルター))

    画素電極

    CF

    有機EL画素電極R G B

    4図 有機 EL ディスプレーのカラー化方式

  • 10 11NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    SID(Society for Information Display)で報告または展示されたフレキシブル有機ELディスプレーを中心にまとめたものである。画面サイズは10インチ前後の小型が中心で,VGA(Video Graphics Array)*7をはじめ,さまざまな画素数・精細度のディスプレーが開発されている10)〜 14)。画素の形状や配置を工夫することで,1,000ppiを超える超高精細のフレキシブル8Kディスプレーも報告されている11)。エミッション方式に関しては,高精細化に有利なトップエミッションを採用しているケースが多い。また,カラー化方式に関しては,シャードマスクを介した蒸着法によりR,G,Bの画素を塗り分けしているケースが多い。3表の12.2インチのフレキシブルディスプレーは,小型サイズであるが,インクジェットを使った塗り分けを行っている12)。また,3表の18インチのフレキシブルディスプレーは,中型サイズとして開発され,曲率半径30mmに湾曲することが可能であり,丸めて収納可能なテレビの実現に向けた先駆的な開発例と言える13)。TFTの半導体には,酸化物半導体であるIGZOやIn-Sn-Zn-O(ITZO),あるいはLTPSが主に用いられている。当所においても,大気中での劣化が少ない逆構造有機ELデバイスと,高移動度酸化物半導体ITZOを用いたTFTを組み合わせ,8インチのフレキシブルディスプレーの試作に成功している10)。

    その他の開発例として,折り曲げ可能なフォルダブルタイプ,タッチセンサー機能などの新たなユーザーインターフェースを意識した機能性の高い小型フレキシブル有機ELディスプレー,収縮性基板を用いたストレッチャブルディスプレー(伸び縮み可能なディスプレー)なども報告されている14)。フレキシブルディスプレーの実用化においては,湾曲時にかかる応力(物体内部に生じる力)や外部からの衝撃からディスプレーを守ることが主要課題の1つと言えるが,これらを克服し得る収縮性基板を利用できれば,より壊れにくいフレキシブルディスプレーを実現できる可能性がある。

    以上のように,パネルメーカーを中心に,フレキシブルディスプレーの研究・開発が活発に進められている。現時点では,スマートフォンやタブレットへの応用を見据えた中小型ディスプレーの開発が中心となっている。一方,テレビ向けの大型サイズの有機ELディスプレーについては,ガラスベースのディスプレー開発が先行し,55 〜 77インチの4K解像度の有機ELディスプレーが既に商品化されている15)。しかし,大型のフレキシブルディスプレーの実現には,まだ技術的課題が多く,開発途上にあると言える。

    *7ディスプレーの規格の1つで,画素数は640×480。

    3表 フレキシブル有機 EL ディスプレーの最近の開発例

    NHK技研半導体

    エネルギー研究所

    ジャパンディスプレイ JOLED

    LG Display BOE AUO

    サムソン Display

    発表時期 2015年5月10) 2017年5月11) 2017年5月 2017年3月12) 2015年5月13) 2017年5月 2017年5月 2017年5月14)

    画面サイズ(インチ) 8 8.34 5.5 12.2 18 5.5 5 9.1

    画素数(横×縦) 640×480

    7,680×4,320

    1,920×1,080

    1,920×1,080

    1,200×810

    2,560×1,440

    1,280×720 (未公表)

    精細度(ppi) 100 1,058 401 (未公表) (未公表) 538 295 (未公表)

    TFT ITZO IGZO LTPS 酸化物 IGZO LTPS LTPS LTPS

    カラー化方式逆構造ELRGB蒸着塗り分け

    白色有機EL+CF RGB塗り分け

    RGB印刷塗りわけ

    RGB蒸着塗り分け (未公表)

    RGB蒸着塗り分け (未公表)

    エミッション方式 ボトム トップ (未公表) (未公表) トップ (未公表) トップ トップ

  • 10 11NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    解説 01

    5.大画面フレキシブルディスプレーの実現に向けた要素技術と課題前章で述べたように,10 〜 20型程度の小型サイズを中心にフレキシブル有機ELディ

    スプレーの開発が進んでいる。しかし,大画面フレキシブルディスプレーの実用化に向けては,長寿命で高効率の有機EL,高性能なTFTなど,材料・デバイスから駆動技術までさまざまな要素技術の開発が必要である。本章では,主要な要素技術と課題について,当所における研究アプローチを交えながら説明する。

    5.1 長寿命・高効率の有機EL大画面フレキシブルディスプレーの実用化において最も大きな課題となるのが,有機

    ELの長寿命化である。プラスチックフィルムはガラスに比べ酸素や水蒸気を透過しやすいため,有機ELデバイスが著しく劣化する。一般に,有機ELを実用化する上では,水蒸気透過率10−6 g/m2/day以下のバリア膜が要求されると言われている。このため,現在開発が進んでいる小型の有機ELパネルでは,ハイバリア膜と呼ばれる無機・有機膜を積層した多層構造のバリア膜を形成して有機ELの劣化を抑制するアプローチが一般的に採用されている。しかし,バリア膜の導入には複雑でコストの高いプロセスが必要となるため,フレキシブルディスプレーの実用化に向けたボトルネックとなっている。仮に,多層バリア膜を形成するとしても,大画面ディスプレー上にピンホールや欠陥の少ないバリア性能の高い膜を均一に形成することは極めて困難と考えられる。そのため,簡易的なバリア膜でも長寿命化が可能な大気安定性の高い有機ELデバイスの実現が望まれている。

    当所では,陰極材料として大気中で不安定なアルミやアルカリ金属などを使わない逆構造型の有機ELデバイスの研究を進めている16)。5図に,逆構造有機ELデバイスの断面構造を通常構造と比較して示す。5図(b)では,通常の有機ELデバイスと電極積層構造が逆(陽極と陰極が上下に逆配置)となっており,有機発光層より先に陰極・電子注入層を形成するのが特徴である。先に形成する陰極・電子注入層に,有機層にダメージを与えやすい成膜手法を用いることができるため,陰極に金属酸化物など大気中で安定な電極材料を用いることができるとともに,電子注入層に不活性な材料を適用することができ,素子全体の寿命劣化を抑制することができる。当所において,量産が容易なバリアフィルム(水蒸気透過率10−4 g/m2/day)を用いた大気安定性の比較評価を行った結果,通常の有機EL素子では15日経過時点から顕著な輝度劣化やダークスポットの発生が観察されたのに対し,逆構造デバイスでは250日以上劣化が見られず安定した発光状態を示した16)。大気中で安定な有

    陰極

    陽極

    電子輸送層

    発光層

    正孔輸送層

    陽極

    陰極

    正孔輸送層

    発光層

    電子輸送層

    電子注入層

    正孔注入層

    正孔注入層

    電子注入層

    (a) 通常構造の有機EL (b) 逆構造の有機EL

    基板 基板

    5図 有機 EL デバイスの構造

  • 12 13NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    機ELデバイスは,フレキシブルディスプレーの大画面化に向けて最も重要な技術の1つと考えられる。

    5.2 高移動度TFT大画面ディスプレー実現に向けた課題として,画素数および駆動周波数の増大に伴い

    データ書き込み時間が短くなることが挙げられる。また,多画素化に伴うTFTおよび配線間に生じる寄生容量の増加,および大画面化に伴う配線抵抗の増大に起因した信号遅延も大きな問題となる。これらの課題の解決には,TFTの短チャネル化(チャネル長の微細化),寄生容量の低減,高移動度化が有効であり,性能改善を目指してさまざまなデバイス構造や移動度の高い半導体材料の開発が進んでいる。

    代表的な酸化物TFTの構造と特徴を6図に示す。エッチストップ構造は,ソース・ドレイン(S/D)電極の加工に使用されるエッチング*8 液から半導体を保護するためのエッチストップ層を有する構造である。

    バックチャネルエッチ(BCE:Back Channel Etch)構造は,エッチストップ層を省いた構造であり,エッチストップ構造と比較して短チャネル化・低寄生容量化が可能で,TFTの高速動作に有効である。しかし,半導体膜上で直接S/D電極をエッチング加工するため,エッチング液に耐性のある半導体材料が必要となる。

    トップゲート型セルフアライン構造は,ゲート電極をマスクとしてS/D電極をパターニングする構造である。ゲートとS/D間のオーバーラップを最小限にでき,寄生容量を大幅に低減できることから,大画面・高精細ディスプレー向けの駆動素子として近年注目されている。

    さらに,高移動度TFTとしては,半導体膜の上下に2つのゲート電極を形成したダブルゲート構造17)など,新規のデバイス構造が提案されている。

    高移動度の酸化物半導体材料の開発も進んでいる。当所では,ITZO18),In-W-Zn-O 19),Zn-O-N 20)などの高移動度酸化物半導体材料の開発,およびこれらの材料を用いたバックチャネルエッチ構造12)やセルフアライン*9 構造21)の酸化物TFTの研究開発を進めている。

    今後,高フレームレート映像に対応するための倍速駆動や,補償回路を用いたディ

    *8化学処理を利用した表面加工の一種。

    *9既に形成した素子のパターンをマスクとして,その上に形成する素子のパターニング(パターン形成)を行う成膜方法。パターンの位置合わせが容易になるとともに,素子作製時のマスク数を減らすことができる。

    エッチストップ構造 バックチャネルエッチ構造 トップゲート型セルフアライン構造 ダブルゲート構造

    断面図

    特徴

    半導体

    半導体

    ドレインソースドレイン

    半導体

    エッチストップ層ソース ドレインソース

    半導体

    ドレインソース

    ソース領域

    ドレイン領域

    ソース領域

    ドレイン領域GI

    基板ゲート

    ゲートGIゲート絶縁膜(GI)

    基板ゲート

    基板

    ゲートGI

    基板ゲートGI

    ・エッチストップ層で半導体を保護・チャネル長,寄生容量が大きいことが課題

    ・エッチストップ層がないので,短チャネル化,低寄生容量化が可能

    ・寄生容量を大幅に低減可能

    ・大電流化が可能

    6図 酸化物 TFT の構造と特徴

  • 12 13NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    解説 01

    スプレーの高画質化に加え,フレキシブルディスプレーの柔軟性を増すために表示エリア周辺部のプラスチックフィルム上に駆動ドライバーを直接形成するGOP(Gate on Panel)開発への要望も高まることが予想され,より高性能な酸化物TFTの開発が重要となる。

    5.3 高画質駆動技術有機ELデバイスの応答速度は液晶と比較すると格段に速いため,動画表示に適して

    いる。しかし,アクティブマトリクス駆動*10 の有機ELディスプレーは,1フレーム内で発光が持続するホールド型表示を行っているため,動画ぼやけが視認されてしまう22)23)。特に,ディスプレーサイズが大きくなると視線の追従距離が長くなり,動画ぼやけの視認がより顕著になる。動画ぼやけの改善手法として,1フレーム時間内の発光時間を短くする方法が有効で,倍速駆動や黒挿入などの手法が知られている。しかし,例えばフレーム内の発光時間を半分にした場合,1フレーム時間を通して発光した場合と同じ明るさで映像を表示するためには2倍の発光強度が必要となり,有機ELの寿命が加速度的に劣化することが懸念される。そこで,当所においては,動画質と寿命を両立するための時間アパーチャー適応制御駆動技術の開発に取り組んでいる24)。詳細については,本特集号の報告「適応的時間アパーチャー制御を用いた有機 EL の動画質改善」を参照していただきたい。

    ディスプレーの多画素化や大画面化は,TFTの閾値電圧のばらつきの増加を招き,これに伴う有機ELの輝度むらの抑制も大きな課題となる。これらの課題に対し,従来は,画素回路にTFT特性のばらつきや動的変動を補正する回路を内蔵させる手法が開発されてきたが,最近ではセンシング回路を用いた外部補償技術が知られるようになってきた25)26)。

    ディスプレーの大画面化に伴う消費電力の増大も大きな課題であり,有機ELデバイスの発光効率改善と併せて,表示映像シーンの平均輝度レベルに応じてピーク輝度を抑制して消費電力を制御する方法も取られている。ピーク輝度の抑制には,階調特性を劣化させない制御手法の開発が今後重要となる27)。

    以上で述べてきたように,今後,大画面で高画質なフレキシブル有機ELディスプレーを実現するためには,高性能なデバイス技術,プロセス技術に加えて,駆動・信号処理技術の開発も重要となる。

    6.大画面ディスプレー作製を目指した塗布型デバイス近年,フレキシブルディスプレーなどのフレキシブルエレクトロニクスと並び,プリ

    ンテッドエレクトロニクスが注目されている。ディスプレー作製技術に,塗布や印刷プロセスを適用できれば,大面積のディスプレーをより簡易に,そして環境負荷の少ない手法を用いて作製できると期待される(7図)。塗布・印刷プロセスのもう1つの特徴として,必要な材料を必要な場所に直接パターニング形成することが可能であり,材料の利用効率が飛躍的に高まると予想される。これらの観点から,当所では塗布型TFTと塗布形成可能な発光デバイスとして量子ドットデバイスの研究を進めている。

    塗布型TFTは,主として有機半導体材料を用いた有機TFTと酸化物TFTに分類される。どちらも,半導体材料を有機溶剤などの溶媒中に溶解させ,塗布形成する点で共通

    *10画素ごとにトランジスターを設け,このトランジスターにより各画素の発光を個別に制御する駆動方法。

  • 14 15NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    している。当所では,これまでに低分子有機半導体を用いた有機TFTデバイスにより,a-Siを超える高い性能を実現している28)。また,IGZOなどの金属酸化物を溶液化した塗布型酸化物TFTの研究にも取り組んでいる。塗布型酸化物TFTは,潜在能力としては真空プロセス(スパッタ形成)TFTと同等の高い性能が見込まれるが,半導体膜中の不純物除去や,熱活性化処理*11 の低温化など,高性能化に向けた検討が進められている。8図に,塗布型酸化物TFTの代表的なデバイス構造と半導体溶液の一例を示す。当所では,大気中で安定な水系溶媒を用いた半導体溶液の作製,水素導入と酸化処理を組み合わせた活性化処理や,半導体への異元素ドーピングなどの独自技術を開発し,これまでに300℃の比較的低温のプロセスで移動度7cm2/Vs以上の高い性能を実現している29)。

    一方,量子ドット発光デバイスは,表面が配位子*12 で覆われた直径数ナノメートルの無機半導体微粒子で(9図),粒径に応じて発光色が変化する。量子ドットは,有機溶剤に可溶なため塗布形成できると同時に,急峻なピーク波長を持つ発光が特徴であり,広色域の発光デバイスとしても期待されている30)。これまでに,カドミウム系の量子ドット素子では,既に有機ELに匹敵する外部量子効率*13 20%の発光が報告されているが31),現在カドミウムなどを含まない低毒性量子ドット素子の研究開発が進んでいる。

    これらの塗布型デバイスは,個々の性能が短期間で大きく進展してきており,今後,デバイス性能の更なる向上に加え,各デバイスの長所を組み合わせた大面積ディスプレー作製に適したプロセス技術の開発が望まれる。

    7.おわりにディスプレーは我々の生活空間・環境に溶け込み,欠くことのできない存在となって

    *11熱を加えて酸化反応を促進させる処理。

    *12量子ドットに結合したひげ状に伸びた有機物。量子ドットの表面を保護し,溶媒への分散性を高め,凝集を防ぐ効果がある。

    *13発光層に注入されたキャリヤー数に対して,発光素子の外部に放射される光子数の割合。

    TFT配線

    ノズル

    塗布材料

    プラスチックフィルム

    発光素子

    7図 塗布プロセスのイメージ

    ドレインソース

    (a) デバイス構造 (b) 酸化物半導体溶液

    ゲート絶縁膜

    基板:プラスチックフィルム

    ゲート電極

    酸化物半導体膜

    8図 塗布型酸化物 TFT の構造

  • 14 15NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    解説 01

    いる。2018年に始まる4K・8K本放送により,これまでにない高臨場感のある放送を家庭でいつでも楽しめる時代が到来する。この時代にふさわしい新しい視聴スタイルを提供できるよう,その可能性を秘めた大画面フレキシブル有機ELディスプレーの早期実現を目指して,今後も研究開発を進めていく。

    無機半導体微粒子

    配位子

    数ナノメートル

    陰極

    陽極

    電子輸送層

    発光層

    正孔輸送層

    (a) 量子ドットの構造 (b) 量子ドットEL素子の構造

    基板

    9図 量子ドットと量子ドットEL 素子の構造

  • 16 17NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    参考文献1) NHK技研R&D:スーパーハイビジョン映像技術 特集号,No.137(2013)

    2) S. Utsugi, N. Nodera, T. Matsumoto, K. Kobayashi and T. Oketani:“Novel LTPS Technology for Large Substrate,”SID 2016 DIGEST,pp.915-918(2016)

    3) H. Iino, T. Usui and J. Hanna:“Liquid Crystals for Organic Thin-film Transistors,”Nat. Commun. 6:6828 doi: 10.1038/ncomms7828(2015)

    4) H. Yabuta, M. Sano, K. Abe, T. Aiba, T. Den, H. Kumomi, K. Nomura, T. Kamiya and H. Hosono:“High-mobility Thin-film Transistor with Amorphous InGaZnO4 Channel Fabricated by Room Temperature Rf-magnetron Sputtering,”Appl. Phys. Lett.,Vol.89,pp.112123-1-112123-3(2006)

    5) H.-J. Shin, S. Takasugi, H. D. Choi, C.-K. Ha, J.-M. Kim, H.-S. Kim and C.-H. Oh:“Advanced OLED Display Technologies for Large-Size UHD TV,”Proc. of IDW16,AMD3-1,pp.277-280(2016)

    6) L. Zhou, A. Wanga, S. Wu, J. Sun, S. Park, T. N Jackson:“All-organic Active Matrix Flexible Display,”Appl. Phys. Lett. 88, 083502(2006)

    7) I. Yagi, N. Hirai, M. Noda, A. Imaoka, Y. Miyamoto, N. Yoneya, K. Nomoto, J. Kasahara, A. Yumoto and T. Urabe:“A Full-Color, Top-Emission AM-OLED Display Driven by OTFTs,”SID 07 DIGEST,63-2,pp.1753-1757(2007)

    8) M. Mizukami, N. Hirohata, T. Iseki, K. Ohtawara, T. Tada, S. Yagyu, T. Abe, T. Suzuki, Y. Fujisaki, Y. Inoue and S. Tokito:“Flexible AM OLED Panel Driven by Bottom-contact OTFTs,”IEEE Electron. Dev. Lett,Vol.27,pp.249-251(2006)

    9) Y. Nakajima, T. Takei, Y. Fujisaki, H. Fukagawa, M. Suzuki, G. Motomura, H. Sato, T. Yamamoto and S. Tokito:“Improvement in Image Quality of a 5.8-in. OTFT-Driven Flexible AMOLED Display,”Journal of the SID,Vol.19,pp.94-99(2011)

    10) M. Nakata, G. Motomura, Y. Nakajima, T. Takei, H. Tsuji, H. Fukagawa, T. Shimizu, T. Tsuzuki, Y. Fujisaki and T. Yamamoto:“Development of Flexible Displays Using Back-channel-etched In–Sn–Zn–O Thin-film Transistors and Air-stable Inverted Organic Light-emitting Diodes,”Journal of the SID,Vol.24/1,pp.3-11(2016)

    11) T. Aoyama, I. Yamazaki, M. Shiokawa, K. Toyotaka, T. Nagata, Y. Jimbo, H. Shishido, K. Yokoyama, H. Ikeda, S. Eguchi, S. Yamazaki, C. Misawa, M. Dobashi, T. Shiraishi and M. Nakada:“An 8.34-inch 1058-ppi 8K x 4K Flexible OLED Display,”SID 2017 DIGEST,24.3,pp.338-341(2017)

    12) https://www.j-oled.com/technology/joled_tec_fixdisplay/

    13) J. Yoon, H. Kwon, M. Lee, Y. Yu, N. Cheong, S. Min, J. Choi, H. Im, K. Lee, J. Jo, H. Kim, H. Choi, Y. Lee, C. Yoo, S. Kuk, M. Cho, S. Kwon, W. Park, S. Yoon, I. Kang and S. Yeo:

    “World 1st Large Size 18-inch Flexible OLED Display and the Key Technologies,”SID 2015 DIGEST,65.1,pp.962-965(2015)

    14) J. Hong, J. Shin, G. Kim, H. Joo, G. Park, I. Hwang, M. Kim, W. Park, H. Chu and S. Kim:“The First 9.1-inch Stretchable AMOLED Display Based on LTPS Technology,”SID 2017 DIGEST,5.5,pp.47-50(2017)

    15) H.-J. Shin, K.-M. Park, S. Takasugi, S.-H Choi, Y.-S. Jeong, H.-D. Choi, I.-J. Kim, H.-S. Kim, H.-W. Lee and C.-H. Oh:“Advanced OLED Display Technologies for Large-Size Semi-Flexible TVs,”SID 2017 DIGEST,45.2,pp.609-612(2016)

    16) H. Fukagawa, K. Morii, M. Hasegawa, Y. Arimoto, T. Kamada, T. Shimizu and T. Yamamoto:“Highly Efficient and Air-Stable Inverted Organic Light-Emitting Diode Composed of Inert Materials,”Appl. Phys. Express,Vol.7,pp.082104-1-082104-4(2014)

    17) K.-S. Son, J.-S. Jung, K.-H. Lee, T.-S. Kim, J.-S. Park, Y.-H. Choi, K. Park, J.-Y. Kwon, B. Koo and S.-Y. Lee:“Characteristics of Double-Gate Ga–In–Zn–O Thin-Film Transistor,”IEEE Electron Device Lett.,Vol.31,pp.219-221(2010)

  • 16 17NHK技研 R&D/No.167/2018.1 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

    解説 01

    中な か

    田た

    充みつる

    2010年入局。同年から放送技術研究所において,酸化物薄膜トランジスター,フレキシブルディスプレーの研究に従事。現在,放送技術研究所新機能デバイス研究部に所属。博士(工学)。

    藤ふ じ

    崎さ き

    好よ し

    英ひ で

    1998年入局。京都放送局を経て,2001年から放送技術研究所において,薄膜トランジスター,駆動技術やフレキシブルディスプレーの研究に従事。現在,放送技術研究所新機能デバイス研究部上級研究員。博士(工学)。

    18) M. Nakata, C. Zhao and J. Kanicki:“DC Sputtered Amorphous In–Sn–Zn–O Thin-film Transistors: Electrical Properties and Stability,”Solid-State Electronics,Vol.116,pp.22-29(2016)

    19) H. Tsuji, M. Nakata, Y. Nakajima, T. Takei, Y. Fujisaki, N. Shimidzu and T. Yamamoto:“Development of Back-Channel Etched In-W-Zn-O Thin-Film Transistors,”J. Disp. Technol.,Vol.12,pp.228-231(2016)

    20) H. Tsuji, T. Takei, M. Nakata, M. Miyakawa, Y. Fujisaki and T. Yamamoto:“Improvement in Switching Characteristics and Long-term Stability of Zn-O-N Thin-film Transistors by Silicon Doping,”AIP Adv.,Vol.7,pp.065120-1-065120-6(2017)

    21) M. Nakata, H. Tsuji, Y. Fujisaki, H. Sato, Y. Nakajima, T. Takei, T. Yamamoto and T. Kurita:“Fabrication Method for Self-aligned Bottom-gate Oxide Thin-film transistors by Utilizing Backside Excimer-laser Irradiation Through Substrate,”Appl. Phys. Lett.,Vol.103,pp.142111-1-142111-4(2013)

    22) 下平,平野,福家:“ホールド型画像表示における動きぼやけ妨害,”信学論,Vol.J68-B,No12,pp.1397-1404(1985)

    23) T. Kurita, A. Saito and I. Yuyama:“Consideration on Perceived MTF of Hold Type Display for Moving Images,”Proc. IDW’98 3D3-4,pp.823-826(1998)

    24) T. Usui, Y. Takano and T. Yamamoto:“Development of OLED Display Using Adaptive Temporal Aperture Control Driving Method with Transition Area Insertion,”IDW’16, DES2-2, 1289-1292(2016)

    25) R. Tani, J.-S. Yoon, S.-I. Yun, W.-J. Nam, S. Takasugi, J.-M. Kim, J.-K. Park, S.-Y. Kim, C.-H. Oh and B.-C. Ahn:“Panel and Circuit Designs for the World’s First 65-inch UHD OLED TV,”SID 2015 DIGEST,64-2,pp.950-953(2015)

    26) S. Takasugi, H.-J. Shin, M.-K. Chang, S.-M. Ko, H.-J. Park, J.-P. Lee, H.-S. Kim and C.-H. Oh:“Advanced Compensation Technologies for Large-Size UHD OLED TVs,”IDW’15,AMD5-3,pp.235-238(2015)

    27) T. Yamamoto, T. Okada, T. Usui, Y. Fujisaki and T. Onoye: “Picture Level Control Method for Super Large-Area Display,” IDW’17, VHF6–1, pp.1028-1031(2017)

    28) Y. Fujisaki,H. Ito,Y. Nakajima,M. Nakata,H. Tsuji,T. Yamamoto,H. Furue,T. Kurita and N. Shimizu:“Direct Patterning of Solution-Processed Organic Thin-Film Transistor by Selective Control of Solution Wettability of Polymer Gate Dielectric,”Appl. Phys. Lett.,Vol.102,pp.153305.1-153305.5(2013)

    29) M. Miyakawa, M. Nakata, H. Tsuji, Y. Fujisaki and T. Yamamoto:“Application of Hydrogen Injection and Oxidation to Low Temperature Solution-processed Oxide Semiconductors,”AIP Adv.,Vol.6,No.8,pp.085016-1-085016-7(2016)

    30) Y. Shirasaki, G. J. Supran, M. G. Bawendi and V. Bulovic:“Emergence of Colloidal Quantum-dot Light-emitting Technologies,”Nature Photon.,Vol.7,pp.13-23(2013)

    31) X. Dai, Z. Zhang, Y. Jin, Y. Niu, H. Cao, X. Liang, L. Chen, J. Wang and X. Peng:“Solution-processed, High-performance Light-emitting Diodes Based on Quantum Dots,”Nature,Vol.515,pp.96-99(2014)