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旧ユーゴスラビアの(家電)名門企
業Eiは,今なお健在でベオグラー
ドに本社をおき,NIS(ニシュと読む)
という田舎町に大きな工場を持ち,
ブラウン管,受信管及びその応用製
品,つまりテレビや家電を扱ってい
る.EI(logoはEi)はELEKTRON-
SKAINDUSTRIJAの頭文字か
ら来ている.
旧ユーゴスラビアは分裂して5つ
に分かれだが,両都市とも,セルビ
アモンテネグロ共和国に屈してい
る.
筆者は1970年代後半に,この会
社から電子レンジ用のマグネトロン
に関する技術供与の要請を受けて,
チトー元帥統治下の旧ユーゴスラビ
アに何度か足を運んでいる.首都ベ
オグラードから3時間弱,オリエン
ト急行のファンタステックな旅のあ
とラドン温泉のある町 ニシュに着
く.あと50km少々で国境で,次の
停車駅はブルガリアのソフィアと教
わったが;ジプシー達が沢山いて,
JAN.2004
ダニュープIIiに合流する,ドリーナ
用の砂洲で見た強烈な踊りは印象的
であった.紛争のあったコソボは自
治州になったのかどうかは知らない
が,地理的にはこの共和国内の南に
下がったところにある.
だから十時,工場が戦争で破壊さ
れたとも伝えられたが,旧友のコネ
で調べてもらったとこiろ,誤報とわ
かると同時に最新の会社資料が入手
でき,ブラウン管や受信管の写真を
見て安堵したのであった.資料には
KT90,12BH7,ECCxxその他の
写真も掲載されていた.Eiの電子管
技術は,設計艶材料に至るまで,
当時は全てオランダのPHILIPS
から移転されたものであり,該社の
製造中止後は,かなりの規模で生
産・供給を引き受けていたようであ
る.クマは頭から排気する,、ご存知
のPHILIPS,(松下)方式のそれで
あるが,分厚いガラス,板厚の霹極,
ごつい作りの物が多い.
12BH7やKT90その他が輸入
販売されてい/るようですが,
PHILIPSの技術に満ち満ちている
クマが,何であんなに安く?売ら
れる(ネバならぬ)のか,GECや
MULLARDの抜きダマの高値な
んて才力シイではないかとかイラッ
ク昨今である.
AMTRANS社で,懐かしいEi
マークのカートンを見うげ,中身が
KT90と聞き,衝動的に3ペアーを
入手,こっそり我が自慢の6BL8-6
GB8PP50Wアンプにて,Eclの
みで,iアイド)明誠を合わせただけ
の調整をして聴いてみたところ,グ
グーツと来たのです.
“オヌシ出来る/
只者ではない”
40W目→杯食わせて,真っ暗闇
で見てもグローめいた感じもせず,
陽極の‘‘色つぎゃ片焼けする気配
もない.技術資料から“50W大丈
夫’’が売り物とみたので,そっと食
わせてやって見てもOKなのであ
る〟
137
6BL8/6UB
<回胎図・1>
KT90/6GB8
5k01°- 教書▼= 革ヽ;回国SS
Zp=5k0.5
Ecll
Ec12
0.5 100k
l
5k
bb
TANGO
XE-100-5
(KNF未使用)
Ki読言Bb‾個pplOOWアンプ試作回給(参考) 大容iの試験用電源を使用
一般には高周波用の4(5)瞳ビーム
管が,それにあたります.
6146,5894とかの上は
PENTODEなどもありますが
EIMACの4極管に跳ね上がる送
信管の系列がそれです.G2は,ビー
ム特性の支配要因以外に,出力と入
力回路の高周波シールドとして重要
な役目を担っています.一般的には,
高インピーダンス負荷動作のため限
られたクマしかオーディオに向かな
い(好まれない)といってよいと思
います.
(EIMACでは全て4-XXXと命
名されるので“DASHダマ”とも言
いますし,日本名では5F23とか4
F21となり“ドグマとも言われま
す)
【グループ3】
テレビの水平偏向用途に開発され
た超大ピーク陽極電流,趨低Ec2
動作のダークホース,6KD6とか,
6JS6などがその例です.頭の数字
は鼠を示していますが,50 00等
はトランスレス・テレビ用です.ニ
ーポイントがニーどころか 断崖絶
壁に見えるのが特徴です.これはグ
ループ2の延長の様でもあります
が,高周波的な設計の配慮が全く無
い点が違います.
オーディオ機器用としての使用例
も,OTLなどに散見されます.大層
JAN.2004
流管だからといっても,低内部抵抗
管とはいえませんが,使い方の宜し
きを得て,特徴を出すことが出来ま
す.
やはり,どう見てもKT88は素
性や検証が完璧で,由緒正しいよう
です.したがってこれをREFER-
ENCEに撞いて6GB8やKT90
での100W試作をしてみようかと
思い立ったのです,
アンプは,おおよそ3,4台もあ
れば自宅では事足ります.
最近では作るもの,殆ど全てがお
蔵入りか,さもなく一泡子に出され
て帰って来ません.
これも,多分はそうだろ
うなと思いながら,暴挙?
に挑んだわけです.
ペースは前出6BL8-6
GB8PPの50Wアンプ
ですが,電源外付きで作ら
れていましたので耐圧の
見直しをして,これを踏み
台にしました.
く技術的要点〉
●電源
最大800V定格のタマですが,オ
クタルソケットでの電極引出し配置
をみると,隣がH(ヒーター)です
ので耐圧と言う見地からは薄気味が
悪い.まずこれを600Vに“渋々’’
ながら抑えることにします.
●出力トランス
Ec2はあとで決めるとして,必要
なピーク軍流と負荷インピーダンス
の押し引きや動作線の決定は,100
Wという,かなりクリチカルなレベ
ルでの話しですから,クマ個別に吟
味した上で最適条件を決めないと,
比較するには公平を欠くと思いま
●KT90(左)と6GB8(右)の外観を比較する
139
1 2 A X 7 擁 「 1 2 A U 7 K T 9 0
L l L 」 N FB
“
ム 0・2 120p A 0・2 1k
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W o 毒+ 大容量の髄 舶 瀬を使
:i_8 <回路図・2>
K T90 U L接続アンプ試作回路 (
IbIc2特陸のシッカリしたものが
是非とも必要です.
KT88では100,150,200,300V
が
KT90では100,150,200,250,300,
350,400Vが
それぞれ入手できますがEbによ
る(あるいはug2-pの)影響をガ映
せねばならぬことや,発表資料のチ
グハクを修正しながら,納得の行く
動作曲線を固める作業がまず必要の
ようです.
特性曲線図1:コンセプトを示す
EcIvsIbを固める.
Ec2がパラメータ
Ebが規定してある場合は,より
正確です
特性曲線図1-1
KT90の例(KT88を重畳)
特性曲線図2:コンセプトを示す
EbvsIb
Eclをパラメータにして必要な
ステップに分解する
特性曲線図2-1
KT90の例
(Ec2=225Vの例のみが発表されて
いるが,特性曲線図1-1によって細
JAN.2004
かく作成することが出来る)
常陸曲線というものは,カープト
レーサーで綺麗に収録したとして
も,印刷に至るまでの‘‘紆余曲折”
により,実際は相当程度ずれ込むも
のなのです.
例えば 3極管接続(3綜)での
特性曲線でEh300V,Ecl二一10
Vというポイントは,Ec2=300V
の4極管でEb=300V Ecl=
ー10Vのそれと一致し
ているはずが,KT88も
KT90もピタリにはな
っていない.
常陸曲線図3:3極間
ニ園参照160 ましてやKT90な
80 ど,どう言うつもりなの40
か,Ec2=225Vなどの
曲線を掲載したり,
KT88ではEc2=100
Vが記載されているが,
このクマをEc2=100
Vで使う向きなど,いる
のだろうかとさえ思う.
まあ,そんなものだと
思って,まず曲線の整理,
修正,適正化をやることである.
く考 証〉
UL接続方式は,れっきとした考
案者がおり,アタロ(ACRO)プロ
ダク ツ社のHAFLER と
KEROESの両氏とざれ,オリジナ
ルの回路図はAUDIO ENGI-
NEERING誌1951年の11月号に
出ているから,メチャ古い諸である.
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●調整中のパワー・アンプ∴蒔瀬関連は後方にある
14g
(<賃)qO糖餌⊥-上へ
IO
的
iQ
iO
00
00
00
0
c22
itU L 特性曲線図l i
iK T90 -実線(細い実線はE c2-225V オリシカレ資料,参考まで)KT 88,・一・点線 (オリジナル資料の軽写)
嘆 母 - //
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5
V
__5V
-25V 一一一一-
-30V:‾‾10V
5 鵠 ∴ 畿 子 謹上 :鵠 v E b豊 2 0
プレート電圧Eb(V)
[特性出潮乳4]KT90(KT88は転写)
用巻線(電田地10%くらいか?)を
これに見立てて(流用)した例も見
られる.この場合の計算は,先の(4)
式でカッコ内のEbbをEc2に置
き換えて同様の過程を踏めばよい
が,ともかく条件を振ったら,たち
まち,やり直しと相成ること覚唇し
て掛からねはなりません.
UL接続動作はEbb(Ecc2)の決
定から始まると言えるのです.Ecl
=0のライン上に,例の(P点)を
求めるという手法は動作級によら
ず概ね共通であるから計算に必要
な曲線は,陽極特性で Ecl=0で
のibをプロットしたものが1本あ
ればそれでも間に合います,
常陸曲線図2-1 にKT90のEbb
=425V,400V,350Vの3例が書
き入れてあります.この曲線上卑P
点を求めることになります.
また(ABl級での)動作基点近隣は
144
(くら)等【媒餌也トへー尽
0 0
0 -hJ
3極管特性のような“姿,顔”をし
ているが,(Q点)においてはEbbと
同じEc2が印加されているのであ
るから,当然バイアスは,かなり深
いほうにずれ込むし,従って励振電
圧はその分,大きく必要になる.
だからUL接続は,初めからEb
=Ec2のノーマル接続で働いてい
るタマ,あるいは回路のつなぎ変え
なら,Eclは変えなくとも出力激減
でのUL動作は実現する.
しかしながら,KT90クラスだ
と,Ec2=350Vで100W動作で
あるから,(KT88の例を横にらみ
ずれを鴻Ec2=425VのUL接続で
は,バイアスで20Vは深く,したが
って励振電圧もピークで40Vは増
加の必要があるから,コンパチビリ
ティ【互換性】は取れないといって
よい.はじめから別物と思って掛か
る必要がある.
勿論,今回の最初の供試機器での
6BL81本(段)などではとても押
し切れずせいぜい20Wが良いと
こで結局は,作り直し12AXT12
AU7(pp)(第2図)でシツカリと
ドライブして,漸く60Wくらいま
でが,何とか良い常陸で得られたの
が実状です.
く3極管接続〉
また然りである.こちらは負荷イ
ンピーダンスに敏感であるから5
Knr本やりでは簡単に行かない.
推奨に足る動作例ではないが,
KT88の技術資料には折角の特性
曲線が記載されているので暫定条
件で試験してみたが 出力が出ない
ことおびただしい.ウシサリして止
めてしまったのが実状です.30W
定格の打ち出しが精一杯でしょう.
3極接続と,4極管接続の切り替
え方式という曲芸マニアックなアン
プも実在するようですから一概には
言えないが,陽画損失には充分な余
裕を持った設計が必要です.
その意味ではKT90の存在価値
はあるように思います.
第3表に3鯖とUL接続での動
作例を暫定的なものですが,示して
おきました.KFやDFがきわ立っ
て優れているという印象がなかった
のは,詰めが甘いせいいだと反省し
ております.
く真空度の件〉
が残りました.出来上がったクマ
で定量化するのは難しく,また絶対
値で何パスかレというには,専門の
計測器や回路,電源が泌要です.
相対的に様子を見る匠は,-Icl,
つまりGlに流入するイオン電流
をチェックするのが良いようです.
第3回の接続で,Icl馬流を求め
タマ同士の比較や経年変化を見てい
ラ ジオ技術