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―  ― 115 水田・畑地 飼料作物 地域の農業 者等 家畜飼養管理施設 家畜排 せつ物 家畜排せ つ物 堆肥化施設 化石資源エネル ギーの消費削減 敷料 土づくり 化学肥料の施用低減 消化液 消化液 [ 栃木県におけるバイオガスプラント実証事業について 栃木県畜産酪農研究センター 木下 強 1.はじめに 本県は、北海道に次ぐ生乳生産量全 国第2位の酪農県であり、これまでも 家畜のふん尿を堆肥などとして有効活 用する「資源循環型酪農経営」を推進 して来た。その一環として、家畜のふ ん尿からエネルギーを取り出しつつ環 境への負荷を軽減し、地球温暖化防止 にも貢献できる新しい技術として、バ イオガスプラントの技術実証・技術展 示に取り組むこととした。 図1バイオガスプラントを活用した酪農経営のイメージ 2.実証事業の内容 (1)技術実証試験 ①メタン発酵プラントの有効性や実用性の実証と評価 バイオガス発生量や発電・発熱量など「エネルギー回収効率」、バイオマス処理量やたい肥、 液肥の生産量など「物質収支」、プラントの運転・維持管理コストや生産利用されるエネルギ ー、肥料利用効果など「経済性」及び温室効果ガス低減効果、臭気発生状況等「環境影響」な どについて実証試験を行う。 ②メタン発酵消化液の化学肥料代替利用技術の開発 メタン発酵の残さとして生じる消化液の有効利用を図るため、消化液の肥料特性を解明しト ウモロコシなど飼料作物等への効果的な施用方法について実証試験を行う (2)技術展示 家畜排せつ物を原料とした、県内で唯一のメタン発酵プラントとして、研修会や見学者の受入 を通じて技術展示を行う。 3.バイオガスプラントの概要 湿式の中温メタン発酵の実証プラントとして、栃木県畜産酪農研究センター内のフリーストー ル牛舎に隣接して設置され、2008/4 に稼働を開始した。 (1)プラントの処理能力 当センターのプラントは、80 頭の乳牛から1日に排せつされるふん尿等 4,850kg と食品廃棄 物など地域内で排出される有機質資源 1,000kg から、最大 350kwh/日(家畜排せつ物のみでは 146kwh/日)の電力を取り出すことが出来るよう設計されている。 (2)バイオガスプラントの主な構成施設・機器 プラントは図 2 のとおりであり、牛舎から搬入された家畜排せつ物等から発酵原料を調整す

栃木県におけるバイオガスプラント実証事業について― ―114114 ― ―115 資源循環型酪農経営 飼料作物 水田・畑地 地域の農業 堆肥 者等

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資 源 循 環 型 酪 農 経 営

水田・畑地飼料作物

地域の農業者等堆 肥

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家畜飼養管理施設

家畜排せつ物

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化石資源エネルギーの消費削減

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エネルギ

[

栃木県におけるバイオガスプラント実証事業について

栃木県畜産酪農研究センター 木下 強 1.はじめに 本県は、北海道に次ぐ生乳生産量全

国第2位の酪農県であり、これまでも

家畜のふん尿を堆肥などとして有効活

用する「資源循環型酪農経営」を推進

して来た。その一環として、家畜のふ

ん尿からエネルギーを取り出しつつ環

境への負荷を軽減し、地球温暖化防止

にも貢献できる新しい技術として、バ

イオガスプラントの技術実証・技術展

示に取り組むこととした。 図1バイオガスプラントを活用した酪農経営のイメージ

2.実証事業の内容 (1)技術実証試験 ①メタン発酵プラントの有効性や実用性の実証と評価 バイオガス発生量や発電・発熱量など「エネルギー回収効率」、バイオマス処理量やたい肥、

液肥の生産量など「物質収支」、プラントの運転・維持管理コストや生産利用されるエネルギ

ー、肥料利用効果など「経済性」及び温室効果ガス低減効果、臭気発生状況等「環境影響」な

どについて実証試験を行う。 ②メタン発酵消化液の化学肥料代替利用技術の開発 メタン発酵の残さとして生じる消化液の有効利用を図るため、消化液の肥料特性を解明しト

ウモロコシなど飼料作物等への効果的な施用方法について実証試験を行う (2)技術展示 家畜排せつ物を原料とした、県内で唯一のメタン発酵プラントとして、研修会や見学者の受入

を通じて技術展示を行う。 3.バイオガスプラントの概要 湿式の中温メタン発酵の実証プラントとして、栃木県畜産酪農研究センター内のフリーストー

ル牛舎に隣接して設置され、2008/4 に稼働を開始した。 (1)プラントの処理能力 当センターのプラントは、80 頭の乳牛から1日に排せつされるふん尿等 4,850kg と食品廃棄

物など地域内で排出される有機質資源 1,000kg から、最大 350kwh/日(家畜排せつ物のみでは

146kwh/日)の電力を取り出すことが出来るよう設計されている。 (2)バイオガスプラントの主な構成施設・機器 プラントは図 2 のとおりであり、牛舎から搬入された家畜排せつ物等から発酵原料を調整す

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月ごとの有機物換算投入量とガス発生量は図 3 のとおり。 プラント本体(堆肥化施設含む)の電力自給率は 125%であり、ふん尿のみの期間が 106%だったのに対し、食品残渣投入期間は 142%と余剰電力が大幅に増加した(図 4)。 また、事業所(研究センター)全体の電力自給率については、最大の月で 32%、最小は稼

働開始時の 7%であり、平均年間電力自給率は 21%であった。

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4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月

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ガス

発生

量(�3)

発電電力量プラント消費電力量

余剰電力量ガス発生量

図 3 原料投入量及びバイオガス発生量 図 4 電力収支

【熱エネルギー収支】 2008/10~2010/9(2008/4~9 の期間は、落雷により温水流量のデータ欠損が生じたため、

2008/10~2010/9 のデータで代替)の回収熱量は 168,488Mcal となり、回収熱量の 66%相当

はメタン発酵槽の加温に利用され、16%を消化液殺菌槽の加温に利用したが、夏季以外は消化

液殺菌槽の加温に利用する余裕がなかった。特に 12~3 月の期間は、気温低下のためガスエン

ジン発電機の回収熱だけでは、プラントの維持に必要な熱エネルギーが確保できなかったため、

ガスボイラを併用せざるを得なかった。逆に、夏季はガスエンジン発電機から発生する熱エネ

ルギーが余剰となり、大気中に放熱されたため、見かけ上の熱回収率は低くなった。 【エネルギー変換効率】 電力エネルギーについてガスエンジンの積算電力量及び利用ガス量から算出した結果、年間

平均の変換効率は 24.1%(最大月 29.0%~最小月 18.6%)となった。また、ガスエンジン発

電機、ガスボイラを合算した年間平均の熱エネルギー変換効率は 44.4%(最大月 62.6%~最

小月 34.5%)であった(図 6)。

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熱量

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余剰

消化液加温熱量

発酵槽加温熱量

ボイラ回収熱量(LPG)ボイラ回収熱量(BG)GE回収熱量(プラントデータ)

食品残さ投入期間

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熱変換

電力変換

食品残さ投入期間

図 5 熱エネルギー収支 図 6 エネルギー変換効率

るための「受入・前処理設備」、発酵原料からバイオガスを回収する「メタン回収設備」、回収し

たバイオガスをエネルギーに変換する「バイオガス利用設備」から構成される。また、前処理で

発生した固形分は併設されている「堆肥化施設」で堆肥化されている。 表 1 施設の仕様、性能 名 称 仕様、性能 名 称 仕様、性能

発酵槽

形式 鉄筋コンクリート製半地下式 ガス

エンジン

発電機

形式 ガスエンジン発電機

容量 有効容積:211m3 全容積:253m3 単機出力 3-200V 25kW

仕様 内面気密処理、発酵温度 36℃ 仕様 排熱回収付

ガス

ホルダ

形式 ダブルメンブラン方式 温水

ボイラ

形式 多管式貫流ボイラ

容量 80m3 熱出力 60Mcal/時

仕様 圧力調整弁、放圧装置付 仕様 LPガス-バイオガス燃料切替式

消化液

貯留槽

形式 内面防水処理鋼板式 堆肥化

施設

形式 開放直線型ロータリー型攪拌移送機

容量 消化液 150 日分貯留(839.3m3) 容量 槽面積:150m2、槽深さ:0.5m

仕様 内面防水処理 仕様 建屋:鉄骨造ビニールハウス

図 2 バイオガスプラントのフロー図 4.技術実証試験の取組状況

(1)メタン発酵プラントの有効性や実用性の実証と評価 2008/4~9 の 6 ヶ月間と 2009/10~2010/3 までの 6 ヶ月間は家畜ふんのみで実証試験を実施

した。また、2008/10~2009/9 の 12 ヶ月間は、バイオガスの発酵原料として家畜ふん尿と併せ

て食品残渣の投入試験を実施した。 2010/4 以降は、家畜ふん尿のみで実証試験を継続中。 ①エネルギー回収効率等 【ガス発生量及び電力収支】 2008/4~2010/3 に家畜ふん尿(平均 49 頭)等は 4,201t、食品残渣は 77t を原料としてプラ

ントに投入し、発生したバイオガス 74,530Nm3から 105,414kWh を発電した。

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月ごとの有機物換算投入量とガス発生量は図 3 のとおり。 プラント本体(堆肥化施設含む)の電力自給率は 125%であり、ふん尿のみの期間が 106%だったのに対し、食品残渣投入期間は 142%と余剰電力が大幅に増加した(図 4)。 また、事業所(研究センター)全体の電力自給率については、最大の月で 32%、最小は稼

働開始時の 7%であり、平均年間電力自給率は 21%であった。

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発電電力量プラント消費電力量

余剰電力量ガス発生量

図 3 原料投入量及びバイオガス発生量 図 4 電力収支

【熱エネルギー収支】 2008/10~2010/9(2008/4~9 の期間は、落雷により温水流量のデータ欠損が生じたため、

2008/10~2010/9 のデータで代替)の回収熱量は 168,488Mcal となり、回収熱量の 66%相当

はメタン発酵槽の加温に利用され、16%を消化液殺菌槽の加温に利用したが、夏季以外は消化

液殺菌槽の加温に利用する余裕がなかった。特に 12~3 月の期間は、気温低下のためガスエン

ジン発電機の回収熱だけでは、プラントの維持に必要な熱エネルギーが確保できなかったため、

ガスボイラを併用せざるを得なかった。逆に、夏季はガスエンジン発電機から発生する熱エネ

ルギーが余剰となり、大気中に放熱されたため、見かけ上の熱回収率は低くなった。 【エネルギー変換効率】 電力エネルギーについてガスエンジンの積算電力量及び利用ガス量から算出した結果、年間

平均の変換効率は 24.1%(最大月 29.0%~最小月 18.6%)となった。また、ガスエンジン発

電機、ガスボイラを合算した年間平均の熱エネルギー変換効率は 44.4%(最大月 62.6%~最

小月 34.5%)であった(図 6)。

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熱量

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余剰

消化液加温熱量

発酵槽加温熱量

ボイラ回収熱量(LPG)ボイラ回収熱量(BG)GE回収熱量(プラントデータ)

食品残さ投入期間

0%

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4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月

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図 5 熱エネルギー収支 図 6 エネルギー変換効率

るための「受入・前処理設備」、発酵原料からバイオガスを回収する「メタン回収設備」、回収し

たバイオガスをエネルギーに変換する「バイオガス利用設備」から構成される。また、前処理で

発生した固形分は併設されている「堆肥化施設」で堆肥化されている。 表 1 施設の仕様、性能 名 称 仕様、性能 名 称 仕様、性能

発酵槽

形式 鉄筋コンクリート製半地下式 ガス

エンジン

発電機

形式 ガスエンジン発電機

容量 有効容積:211m3 全容積:253m3 単機出力 3-200V 25kW

仕様 内面気密処理、発酵温度 36℃ 仕様 排熱回収付

ガス

ホルダ

形式 ダブルメンブラン方式 温水

ボイラ

形式 多管式貫流ボイラ

容量 80m3 熱出力 60Mcal/時

仕様 圧力調整弁、放圧装置付 仕様 LPガス-バイオガス燃料切替式

消化液

貯留槽

形式 内面防水処理鋼板式 堆肥化

施設

形式 開放直線型ロータリー型攪拌移送機

容量 消化液 150 日分貯留(839.3m3) 容量 槽面積:150m2、槽深さ:0.5m

仕様 内面防水処理 仕様 建屋:鉄骨造ビニールハウス

図 2 バイオガスプラントのフロー図 4.技術実証試験の取組状況

(1)メタン発酵プラントの有効性や実用性の実証と評価 2008/4~9 の 6 ヶ月間と 2009/10~2010/3 までの 6 ヶ月間は家畜ふんのみで実証試験を実施

した。また、2008/10~2009/9 の 12 ヶ月間は、バイオガスの発酵原料として家畜ふん尿と併せ

て食品残渣の投入試験を実施した。 2010/4 以降は、家畜ふん尿のみで実証試験を継続中。 ①エネルギー回収効率等 【ガス発生量及び電力収支】 2008/4~2010/3 に家畜ふん尿(平均 49 頭)等は 4,201t、食品残渣は 77t を原料としてプラ

ントに投入し、発生したバイオガス 74,530Nm3から 105,414kWh を発電した。

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(内訳) (差引料金)

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(内訳) (差引料金)

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料金

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分)

図 9 再生可能エネルギーの固定価格買取制度を利用した場合の支払電力料金試算

④環境影響 【臭気低減効果】 バイオガスプラント及び堆肥化施設から発生する臭気(いずれも攪拌時)は、主に原料受入

槽投入口(開口部)や堆肥発酵ハウス内において、アンモニアや硫黄化合物等の臭気が検出さ

れた。しかし、バイオガスプラントから 5m 以上離れた地点では、季節を通して臭気成分は検

出されなかった。また、堆肥化施設でもハウス外において臭気成分は検出されなかった。

表 2 メタン発酵消化液散布時における臭気の発生状況

6月 9月 11月 1月 6月 9月 11月 1月 6月 9月 11月 1月 6月 9月 11月 1月 6月 9月 11月 1月

投入口上部10cm 2.4 2.4 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 2.7 5.0 5.0 N.D. 1.1 N.D. N.D. N.D. 2.4 N.D. N.D. N.D. N.D.

投入口槽内30cm N.D. 3.2 2.4 2.4 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 5.0 5.0 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

建物外部3m N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 4.0 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

建物外部5m N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

殺菌槽 蓋解放上部 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 1.1 N.D. 5.0 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

消化液貯留槽 上部 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 3.6 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

攪拌部上部10cm 3.5 4.1 1.9 2.9 N.D. 3.8 N.D. N.D. 2.7 1.3 N.D. N.D. N.D. 3.0 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

換気窓外50cm N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

※調査日は2009/6/2、2008/9/10、2009/11/27、2009/1/22に実施した。

※アンモニアはガス検知管、硫黄化合物はガスクロマトグラフで濃度を測定し、次式により臭気強度(0~5)に換算した。

    アンモニア Y=1.67logX+2.38  硫化水素 Y=0.950logX+4.14  メチルメルカプタン Y=1.25logX+5.99

    硫化メチル Y=0.78logX+4.06  二硫化メチル Y=0.985logX+4.51  

堆肥化施設

アンモニア(臭気強度) メチルメルカプタン(臭気強度) 硫化水素(臭気強度) 二硫化メチル(臭気強度)

バイオガスプラント

受入槽(撹拌時)

臭気測定箇所硫化メチル(臭気強度)

【CO2削減効果】 一般的なロータリー撹拌装置を備えた強制発酵施設を従前の方法(4 戸、成牛 29~69 頭の

平均)とし、この強制発酵施設を稼働するために必要な外部投入化石エネルギーから、バイオ

ガスプラントの稼働に必要な投入化石エネルギーを差し引いた数字を CO2の削減量とした。そ

の結果、食品残渣投入の有無にかかわらず、従前のふん尿処理施設と較べ、化石エネルギーベ

ースの CO2の発生量は低く抑えられていた。 さらに、表には示していないが、現在、食品残渣の焼却処理時に発生する CO2の大幅な削減

も期待できる(表 3)。

②物質収支 【投入原料の収支】 平均 49 頭の乳用牛由来の家畜ふん尿等 4,201t(うち 61t は廃棄乳)は固液分離機により 503t(11.7%)の固分と 3,375t(78.9%)の液分に分離された。また、食品残渣 77t は圧縮分別機

により 67t(1.6%)の圧縮分離液が得られた(図 7)。 【肥料の生産量】 2 年間(2008/4~2010/3)の消化液生産量は 3,110t、堆肥生産量は 195t であった。季節に

より、搾乳牛の飼養頭数増減や雨水流入等の影響により、消化液の生産量に増減があるが、年

間合計では大きな差はなかった(図 8)。

家畜ふん尿等 4,201t (98.2%)

食品残渣 77t (1.8%)

圧縮分離液 67t (1.6%)

圧縮分離固分 10t (0.2%)

固液分離液分 3,375t (78.9%)

固液分離固分 503t (11.7%)

消化液 3,110t (72.7%)

堆肥 195t (4.6%)

廃棄物 10t (0.2%)

各槽沈殿残渣等 323t (7.6%)

図 7 投入原料の収支 図 8 肥料生産量

③経済性 2 年間(2008/4~2010/3)の実証データをもとに飼養頭数で補正して試算した結果、50~80頭規模の酪農家単独で運営するためには、支出の大部分を占める減価償却費の低減が必要であ

ると考えられた。 また、実証試験を通して落雷(修理 3 回)による被害が多く、被雷した場合は金銭面のみな

らずシステムの停止など深刻なトラブルとなることから、保険の加入や設置場所の検討等、対

策が必要であると考えられた。 参考までに現状のセンター電力料金をベースに 146kWh/月発電したとして固定買取価格制

度を利用した場合の支払電力料金について試算した。その結果、仮に全量買取が適用可能であ

れば差引支払電力料は減額となるが、余剰電力買取となった場合は、買取時の電力単価が高額

となったとしても、基本料金(契約電力量の上昇)の増額分で相殺され、現状よりも支払電力

料金が高くなってしまう結果となった。

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▲ 3,000,000

▲ 2,000,000

▲ 1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

現状

(内訳) (差引料金)

全量買取

(内訳) (差引料金)

余剰買取

(内訳) (差引料金)

電�

料金

(�

/�)

差引

売電収益

基本料金

従量料金(加算

分)

図 9 再生可能エネルギーの固定価格買取制度を利用した場合の支払電力料金試算

④環境影響 【臭気低減効果】 バイオガスプラント及び堆肥化施設から発生する臭気(いずれも攪拌時)は、主に原料受入

槽投入口(開口部)や堆肥発酵ハウス内において、アンモニアや硫黄化合物等の臭気が検出さ

れた。しかし、バイオガスプラントから 5m 以上離れた地点では、季節を通して臭気成分は検

出されなかった。また、堆肥化施設でもハウス外において臭気成分は検出されなかった。

表 2 メタン発酵消化液散布時における臭気の発生状況

6月 9月 11月 1月 6月 9月 11月 1月 6月 9月 11月 1月 6月 9月 11月 1月 6月 9月 11月 1月

投入口上部10cm 2.4 2.4 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 2.7 5.0 5.0 N.D. 1.1 N.D. N.D. N.D. 2.4 N.D. N.D. N.D. N.D.

投入口槽内30cm N.D. 3.2 2.4 2.4 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 5.0 5.0 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

建物外部3m N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 4.0 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

建物外部5m N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

殺菌槽 蓋解放上部 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 1.1 N.D. 5.0 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

消化液貯留槽 上部 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 3.6 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

攪拌部上部10cm 3.5 4.1 1.9 2.9 N.D. 3.8 N.D. N.D. 2.7 1.3 N.D. N.D. N.D. 3.0 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

換気窓外50cm N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.

※調査日は2009/6/2、2008/9/10、2009/11/27、2009/1/22に実施した。

※アンモニアはガス検知管、硫黄化合物はガスクロマトグラフで濃度を測定し、次式により臭気強度(0~5)に換算した。

    アンモニア Y=1.67logX+2.38  硫化水素 Y=0.950logX+4.14  メチルメルカプタン Y=1.25logX+5.99

    硫化メチル Y=0.78logX+4.06  二硫化メチル Y=0.985logX+4.51  

堆肥化施設

アンモニア(臭気強度) メチルメルカプタン(臭気強度) 硫化水素(臭気強度) 二硫化メチル(臭気強度)

バイオガスプラント

受入槽(撹拌時)

臭気測定箇所硫化メチル(臭気強度)

【CO2削減効果】 一般的なロータリー撹拌装置を備えた強制発酵施設を従前の方法(4 戸、成牛 29~69 頭の

平均)とし、この強制発酵施設を稼働するために必要な外部投入化石エネルギーから、バイオ

ガスプラントの稼働に必要な投入化石エネルギーを差し引いた数字を CO2の削減量とした。そ

の結果、食品残渣投入の有無にかかわらず、従前のふん尿処理施設と較べ、化石エネルギーベ

ースの CO2の発生量は低く抑えられていた。 さらに、表には示していないが、現在、食品残渣の焼却処理時に発生する CO2の大幅な削減

も期待できる(表 3)。

②物質収支 【投入原料の収支】 平均 49 頭の乳用牛由来の家畜ふん尿等 4,201t(うち 61t は廃棄乳)は固液分離機により 503t(11.7%)の固分と 3,375t(78.9%)の液分に分離された。また、食品残渣 77t は圧縮分別機

により 67t(1.6%)の圧縮分離液が得られた(図 7)。 【肥料の生産量】 2 年間(2008/4~2010/3)の消化液生産量は 3,110t、堆肥生産量は 195t であった。季節に

より、搾乳牛の飼養頭数増減や雨水流入等の影響により、消化液の生産量に増減があるが、年

間合計では大きな差はなかった(図 8)。

家畜ふん尿等 4,201t (98.2%)

食品残渣 77t (1.8%)

圧縮分離液 67t (1.6%)

圧縮分離固分 10t (0.2%)

固液分離液分 3,375t (78.9%)

固液分離固分 503t (11.7%)

消化液 3,110t (72.7%)

堆肥 195t (4.6%)

廃棄物 10t (0.2%)

各槽沈殿残渣等 323t (7.6%)

図 7 投入原料の収支 図 8 肥料生産量

③経済性 2 年間(2008/4~2010/3)の実証データをもとに飼養頭数で補正して試算した結果、50~80頭規模の酪農家単独で運営するためには、支出の大部分を占める減価償却費の低減が必要であ

ると考えられた。 また、実証試験を通して落雷(修理 3 回)による被害が多く、被雷した場合は金銭面のみな

らずシステムの停止など深刻なトラブルとなることから、保険の加入や設置場所の検討等、対

策が必要であると考えられた。 参考までに現状のセンター電力料金をベースに 146kWh/月発電したとして固定買取価格制

度を利用した場合の支払電力料金について試算した。その結果、仮に全量買取が適用可能であ

れば差引支払電力料は減額となるが、余剰電力買取となった場合は、買取時の電力単価が高額

となったとしても、基本料金(契約電力量の上昇)の増額分で相殺され、現状よりも支払電力

料金が高くなってしまう結果となった。

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月

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堆肥

消化液

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の短縮も期待できることを実証した。 ③食用米 農業試験場においてコシヒカリの栽培試験を実施したところ、化学肥料と同等のアンモニア

態窒素を含む消化液を施肥することにより、化学肥料とほぼ同等の収量を確保することが出来、

玄米品質も保持することが出来た。 水口流入施肥では、ほ場内の生育にややばらつきが見られるものの全体では肥効試験と同等

の収量を確保することができた。 ④畑作物(ネギ、レタス、二条大麦、大豆) 農業試験場において栽培試験を実施したところ、いずれの作物についても、化学肥料と同等

のアンモニア態窒素を含む消化液を施用した場合、消化液は化学肥料と同等の収量が得られた。 ⑤その他 栽培試験の結果から、従来の化学肥料の代替肥料として遜色なく利用できることが実証され

ているが、全体の 97%前後が水分と堆肥と比べて可搬性が悪く、耕種農家が保有する機械(ス

プレーヤー等)で散布するには粘性も高いなど、利用用途を拡大していくためには、取扱性の

向上が必要であると考えられる。そこで、(財)畜産環境整備機構畜産環境技術研究所と共同で、

消化液の濃縮・改質技術について試験を実施中。 5.課題と今後の展望 バイオガスプラントを単なる発電施設として見た場合、太陽光や風力発電同様、設置後はほと

んど物材費がかからないシステムであり、CO2 の削減効果も期待できるが、建設及び保守管理に

はまだまだ多額な費用がかかるなど、解決すべき課題は多い。 また、家畜ふん尿処理施設として見た場合、悪臭の発生が抑制され、ふん尿に含まれる肥料成

分の揮散も少ないなど、通常のふん尿処理施設にはないメリットもある。 バイオガスプラントは家畜ふん尿処理ばかりでなく、食品残渣などの廃棄物の処理も含め、環

境保全や資源循環の面で重要な技術であることから、今後は、様々な政策や分野とうまく連携す

ることによりメリットを最大限に生かす方法を模索していくことが必要であると考えられる。

表 3 従来のふん尿処理方法との CO2発生量の比較

比較対象 食品無 食品有 備  考

数値 購入電力(kWh) 32,843 32,843 ①

CO2換算 購入電力(kg-CO2) 11,725 11,725 ②=①×0.357kg/kWh

購入電力(kWh) ▲ 2,441 ▲ 18,938 ③=④-⑤

  使用電力(kWh) 38,619 45,416 ④

  発電電力(kWh) 41,060 64,354 ⑤

購入LPG(m3) 1,036 80 ⑥

購入電力(kg-CO2) ▲ 872 ▲ 6,761 ⑦=③×0.357kg/kWh

購入LPG(kg-CO2) 6,836 525 ⑧=⑥×6.6kg/m3

CO2削減量(A-B) 5,761 17,960 ②-(⑦+⑧)

※従来の処理方法は、4戸の農家(ロータリー撹拌施設)からの聞き取り調査の平均値

CO2削減係数(発電) 0.357 kg/kwh

CO2削減係数(灯油) 2.51 kg/?

CO2削減係数(LPG) 6.6 kg/m3

灯油熱量 8767 kcal/?

項   目

従前の処理方法によるCO2排出量(A)

当該施設におけるCO2排出量(B)

数値

CO2換算

⑤主なトラブル等 プラントの運転中に発生した主なトラブルは表 4 のとおり。

表 4 主なトラブルと対策

区   分 № 現象 対策

1 牛舎からの異物(首輪など)混入 金属網を設置した。

2 ふん尿投入時の周辺汚染が著しい 転落防止を兼ね、汚染防止柵を設置した。

3 ガスホルダレベル計計測不良 レベル計を交換し、再調整した。

4 受入槽移送ポンプ過負荷による停止 カッター部分を取り外し、定期的に清掃することとした。

5 発酵槽攪拌ポンプの絶縁抵抗値が低下 電源ケーブルの劣化防止対策として保護チューブを追加した。

6 殺菌槽攪拌機の異常音 ベアリングにグリスアップできるよう注入口を新設した。

7 落雷により電装系統が破損し、運転不能(複数回) 機器の交換修理及び、避雷器の追加工事、地絡対策を実施した。

8 大雨により、機械棟が水没 機械棟周辺に排水溝を増設した。

9 ガスエンジン発電機の熱交換機が腐食し、漏水が発生 熱交換機を腐食性ガス腐食防止塗装品に交換した。

10 制御盤内の基盤等が腐食し、運転不能 基盤を交換し、再発防止対策として、機械室に換気扇を設置した。

11 発酵槽からの戻り管内が閉塞し、消化液が殺菌槽に戻らず 戻り管を清掃すると共に、分解清掃できるように改造した。

初期トラブル

自然災害

経年劣化等

(2)メタン発酵消化液の化学肥料代替利用技術の開発 メタン発酵残さとして生じる消化液は従来のスラリー(ふん尿混合物)に比べ悪臭が少なく、

取扱い性にも優れるため、その有効利用を図るため、飼料作物をはじめ水稲、畑作物等への効果

的な施肥方法について検討した。 ①飼料用トウモロコシ 場内で栽培試験を実施した結果、飼料用トウモロコシの栽培において、消化液は収量、土壌

への影響等で化成肥料と同等であり、代替肥料として十分利用可能であるといえる。 ただし、利用に当たっては、消化液中のアンモニア態窒素含量(肥効 1.0)で散布量を設定

した場合、慣行区と比較して約 90%程度の収量となることを念頭に施肥設計する必要がある。 ②飼料用稲(稲 WCS、飼料用米) 水田の水口から消化液と用水を混合して省力的に施肥する方法について試験を実施した結

果、メタン発酵消化液を飼料イネ栽培における化学肥料の代替資材と利用することにより、化

学肥料の購入に要する経費を節減でき、水口から施用することにより、施肥に要する労働時間

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の短縮も期待できることを実証した。 ③食用米 農業試験場においてコシヒカリの栽培試験を実施したところ、化学肥料と同等のアンモニア

態窒素を含む消化液を施肥することにより、化学肥料とほぼ同等の収量を確保することが出来、

玄米品質も保持することが出来た。 水口流入施肥では、ほ場内の生育にややばらつきが見られるものの全体では肥効試験と同等

の収量を確保することができた。 ④畑作物(ネギ、レタス、二条大麦、大豆) 農業試験場において栽培試験を実施したところ、いずれの作物についても、化学肥料と同等

のアンモニア態窒素を含む消化液を施用した場合、消化液は化学肥料と同等の収量が得られた。 ⑤その他 栽培試験の結果から、従来の化学肥料の代替肥料として遜色なく利用できることが実証され

ているが、全体の 97%前後が水分と堆肥と比べて可搬性が悪く、耕種農家が保有する機械(ス

プレーヤー等)で散布するには粘性も高いなど、利用用途を拡大していくためには、取扱性の

向上が必要であると考えられる。そこで、(財)畜産環境整備機構畜産環境技術研究所と共同で、

消化液の濃縮・改質技術について試験を実施中。 5.課題と今後の展望 バイオガスプラントを単なる発電施設として見た場合、太陽光や風力発電同様、設置後はほと

んど物材費がかからないシステムであり、CO2 の削減効果も期待できるが、建設及び保守管理に

はまだまだ多額な費用がかかるなど、解決すべき課題は多い。 また、家畜ふん尿処理施設として見た場合、悪臭の発生が抑制され、ふん尿に含まれる肥料成

分の揮散も少ないなど、通常のふん尿処理施設にはないメリットもある。 バイオガスプラントは家畜ふん尿処理ばかりでなく、食品残渣などの廃棄物の処理も含め、環

境保全や資源循環の面で重要な技術であることから、今後は、様々な政策や分野とうまく連携す

ることによりメリットを最大限に生かす方法を模索していくことが必要であると考えられる。

表 3 従来のふん尿処理方法との CO2発生量の比較

比較対象 食品無 食品有 備  考

数値 購入電力(kWh) 32,843 32,843 ①

CO2換算 購入電力(kg-CO2) 11,725 11,725 ②=①×0.357kg/kWh

購入電力(kWh) ▲ 2,441 ▲ 18,938 ③=④-⑤

  使用電力(kWh) 38,619 45,416 ④

  発電電力(kWh) 41,060 64,354 ⑤

購入LPG(m3) 1,036 80 ⑥

購入電力(kg-CO2) ▲ 872 ▲ 6,761 ⑦=③×0.357kg/kWh

購入LPG(kg-CO2) 6,836 525 ⑧=⑥×6.6kg/m3

CO2削減量(A-B) 5,761 17,960 ②-(⑦+⑧)

※従来の処理方法は、4戸の農家(ロータリー撹拌施設)からの聞き取り調査の平均値

CO2削減係数(発電) 0.357 kg/kwh

CO2削減係数(灯油) 2.51 kg/?

CO2削減係数(LPG) 6.6 kg/m3

灯油熱量 8767 kcal/?

項   目

従前の処理方法によるCO2排出量(A)

当該施設におけるCO2排出量(B)

数値

CO2換算

⑤主なトラブル等 プラントの運転中に発生した主なトラブルは表 4 のとおり。

表 4 主なトラブルと対策

区   分 № 現象 対策

1 牛舎からの異物(首輪など)混入 金属網を設置した。

2 ふん尿投入時の周辺汚染が著しい 転落防止を兼ね、汚染防止柵を設置した。

3 ガスホルダレベル計計測不良 レベル計を交換し、再調整した。

4 受入槽移送ポンプ過負荷による停止 カッター部分を取り外し、定期的に清掃することとした。

5 発酵槽攪拌ポンプの絶縁抵抗値が低下 電源ケーブルの劣化防止対策として保護チューブを追加した。

6 殺菌槽攪拌機の異常音 ベアリングにグリスアップできるよう注入口を新設した。

7 落雷により電装系統が破損し、運転不能(複数回) 機器の交換修理及び、避雷器の追加工事、地絡対策を実施した。

8 大雨により、機械棟が水没 機械棟周辺に排水溝を増設した。

9 ガスエンジン発電機の熱交換機が腐食し、漏水が発生 熱交換機を腐食性ガス腐食防止塗装品に交換した。

10 制御盤内の基盤等が腐食し、運転不能 基盤を交換し、再発防止対策として、機械室に換気扇を設置した。

11 発酵槽からの戻り管内が閉塞し、消化液が殺菌槽に戻らず 戻り管を清掃すると共に、分解清掃できるように改造した。

初期トラブル

自然災害

経年劣化等

(2)メタン発酵消化液の化学肥料代替利用技術の開発 メタン発酵残さとして生じる消化液は従来のスラリー(ふん尿混合物)に比べ悪臭が少なく、

取扱い性にも優れるため、その有効利用を図るため、飼料作物をはじめ水稲、畑作物等への効果

的な施肥方法について検討した。 ①飼料用トウモロコシ 場内で栽培試験を実施した結果、飼料用トウモロコシの栽培において、消化液は収量、土壌

への影響等で化成肥料と同等であり、代替肥料として十分利用可能であるといえる。 ただし、利用に当たっては、消化液中のアンモニア態窒素含量(肥効 1.0)で散布量を設定

した場合、慣行区と比較して約 90%程度の収量となることを念頭に施肥設計する必要がある。 ②飼料用稲(稲 WCS、飼料用米) 水田の水口から消化液と用水を混合して省力的に施肥する方法について試験を実施した結

果、メタン発酵消化液を飼料イネ栽培における化学肥料の代替資材と利用することにより、化

学肥料の購入に要する経費を節減でき、水口から施用することにより、施肥に要する労働時間