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日本看護研究学会雑誌 Vol.37 No.3  2014 202 141)看護職の専門職間協働における実践力測定尺度開発 の試み ○白崎千恵美 ,上野栄一 福井総合病院, 福井大学医学部看護学科 【目的】 看護職の専門職間協働における実践力測定尺度の開発。 【方法】 本尺度の概念枠組みとして,職場や地域で求められている 社会人基礎力の観点と看護管理者名とのディスカッショ ンからつの構成要因を抽出した。また文献と保健医療福 祉の看護職10名からの自由記述アンケートを参考に,構成 要因に沿った尺度原案を作成した。尺度原案は,尺度開発 経験者名,看護管理者,看護系大学院生の名に内容的 妥当性の検討を依頼し,さらに保健医療福祉の看護職10にパイロットスタディを行って表面的妥当性の確認を行い 最終的には82項目となった。調査対象:北陸県の看護職 773名(保健師237名,助産師226名,看護師310名)。調査 期間:2013日~同年1130日。調査方法:無記名 の自記式質問紙調査法。分析方法:項目分析(正規性の確 G-P 分析 I-T 分析項目間相関の分析),探索的因子分析 (主因子法プロマックス回転)信頼性の検討(Cronbach α係数,再テスト法での再現性の確認:Pearson の積率相 関係数),妥当性の検討(基準関連妥当性の検討:Pearson の積率相関係数)を実施した。外的基準尺度としてイン タープロフェッショナルワーク実践能力評価尺度(以 後,CICS29)を使用した。統計解析ソフトは IBM SPSS ver17.0jWindows 版)を使用した。倫理的配慮:福井大 学医学部倫理審査委員会で承認を受け実施した。 【結果】 有効回答数444部(有効回答率57.4%)であった。項目分 析で正規性が認められなかった項目と,I-T 分析でr= 0.4以下の16項目,項目間相関でr=0.7以上を示し内容を 検討した16項目の合計34項目を削除した。G-P 分析では全 項目が%水準で有意差を認め削除対象となる項目はな かった。項目分析で抽出された48項目を,共通性と因子負 荷量を確認しながら因子分析した結果,因子31項目を採 用した。第因子を「チーム内での役割に進んで取り組 む力」,第因子「専門職との繋がりを太くする力」第因子「チームメンバーとの良好な関係を築く力」第子「専門職のチーム力を発揮させる力」第因子「チーム メンバーの協働を引き出す力」と命名した。尺度の信頼性 は, Cronbach のα係数で第因子0.8120.888を示し, 全体では0.928であった。再テスト法では,r=0.702p0.001)であった。基準関連妥当性は CICS29の下位概念と 因子がr=0.3650.623p0.001)を示し,合 計得点間ではr=0.759p0.001)であった。 【考察】 31項目因子となった本尺度は,Cronbach のα係数でr= 0.7以上,再現性の確認でもr=0.7以上の高い相関を認め 信頼性を確認することができた。また,CICS29との間に r=0.30.6の相関が認められ,本尺度は専門職間協働の 実践力を測定するのに妥当であることが示された。今後は 本尺度を用いて有用性を高める検証が必要であると考え る。

G-P I-T CICS IBM SPSS I-T G-P

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日本看護研究学会雑誌Vol.37 No.3  2014202

141)看護職の専門職間協働における実践力測定尺度開発の試み

○白崎千恵美1,上野栄一2

1福井総合病院,2福井大学医学部看護学科

【目的】看護職の専門職間協働における実践力測定尺度の開発。【方法】本尺度の概念枠組みとして,職場や地域で求められている社会人基礎力の観点と看護管理者6名とのディスカッションから6つの構成要因を抽出した。また文献と保健医療福祉の看護職10名からの自由記述アンケートを参考に,構成要因に沿った尺度原案を作成した。尺度原案は,尺度開発経験者3名,看護管理者,看護系大学院生の5名に内容的妥当性の検討を依頼し,さらに保健医療福祉の看護職10名にパイロットスタディを行って表面的妥当性の確認を行い最終的には82項目となった。調査対象:北陸3県の看護職773名(保健師237名,助産師226名,看護師310名)。調査期間:2013年9月1日~同年11月30日。調査方法:無記名の自記式質問紙調査法。分析方法:項目分析(正規性の確認G-P分析 I-T分析項目間相関の分析),探索的因子分析(主因子法プロマックス回転)信頼性の検討(Cronbachのα係数,再テスト法での再現性の確認:Pearsonの積率相関係数),妥当性の検討(基準関連妥当性の検討:Pearsonの積率相関係数)を実施した。外的基準尺度としてインタープロフェッショナルワーク実践能力評価尺度(以後,CICS29)を使用した。統計解析ソフトは IBM SPSS ver17.0j(Windows版)を使用した。倫理的配慮:福井大学医学部倫理審査委員会で承認を受け実施した。【結果】有効回答数444部(有効回答率57.4%)であった。項目分析で正規性が認められなかった2項目と,I-T分析でr=0.4以下の16項目,項目間相関でr=0.7以上を示し内容を検討した16項目の合計34項目を削除した。G-P分析では全項目が1%水準で有意差を認め削除対象となる項目はなかった。項目分析で抽出された48項目を,共通性と因子負荷量を確認しながら因子分析した結果,5因子31項目を採用した。第1因子を「チーム内での役割に進んで取り組む力」,第2因子「専門職との繋がりを太くする力」第3

因子「チームメンバーとの良好な関係を築く力」第4因子「専門職のチーム力を発揮させる力」第5因子「チームメンバーの協働を引き出す力」と命名した。尺度の信頼性は,Cronbachのα係数で第1~5因子0.812~0.888を示し,全体では0.928であった。再テスト法では,r=0.702(p<0.001)であった。基準関連妥当性はCICS29の下位概念と第1~5因子がr=0.365~0.623(p<0.001)を示し,合計得点間ではr=0.759(p<0.001)であった。【考察】31項目5因子となった本尺度は,Cronbachのα係数でr=0.7以上,再現性の確認でもr=0.7以上の高い相関を認め信頼性を確認することができた。また,CICS29との間にr=0.3~0.6の相関が認められ,本尺度は専門職間協働の実践力を測定するのに妥当であることが示された。今後は本尺度を用いて有用性を高める検証が必要であると考える。