25
本資料に記載されている内容は、信頼できる情報源に基づき作成されたものですが、弊社はその正確性及び確実性を保証するものではありませ ん。また、本資料を無断で転送・引用・複製することを固く禁じます。 104-8178 東京都中央区銀座 5-15-8 http://www.jiji.com 第0057号 2015年4月21日 ◆巻頭記事◆ 輸出拡大に不可欠な国際標準 『グローバルGAPとは何か』 =日本をガラパゴス化させるな= ◆トピックス 『世界を相手にする農業者集団』 ◆農地バンク情報⑦ ◆JAフォーラム 『高齢社会に対応する都市型農業』 -神奈川県・JA横浜 ◆アグリ討論席 『協同組合的経済から脱却を』 写真提供:GLOBAL G.A.P. 目次 巻頭記事 トップニュース トピックス 政策情報 - 中央官庁だより 農地バンク情報 農と食のコラム JAフォーラム アグリ討論席 週間ニュースファイル - 農林水産行政 - グローカル - 海外アグリ - アグリ・フード産業 アグリ経営塾 マーケット情報 付録

『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

本資料に記載されている内容は、信頼できる情報源に基づき作成されたものですが、弊社はその正確性及び確実性を保証するものではありませ

ん。また、本資料を無断で転送・引用・複製することを固く禁じます。

〒104-8178

東京都中央区銀座 5-15-8

http:/ /www.ji j i .com

第0057号

2015年4月21日

◆巻頭記事◆

輸出拡大に不可欠な国際標準

『グローバルGAPとは何か』

=日本をガラパゴス化させるな=

◆トピックス

『世界を相手にする農業者集団』

◆農地バンク情報⑦

◆JAフォーラム

『高齢社会に対応する都市型農業』

-神奈川県・JA横浜

◆アグリ討論席

『協同組合的経済から脱却を』

写真提供:GLOBAL G.A.P.

目 次

巻頭記事

トップニュース

トピックス

政策情報

- 中央官庁だより

農地バンク情報

農と食のコラム

JAフォーラム

アグリ討論席

週間ニュースファイル

- 農林水産行政

- グローカル

- 海外アグリ

- アグリ・フード産業

アグリ経営塾

マーケット情報

付録

Page 2: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 2

巻頭記事

巻頭記事

輸出拡大に不可欠な国際標準

グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス化させるな=

~グローバルGAP協議会事務局長に聞く~

農業生産工程管理(GAP:

Good Agricultural Practice)

の中でも、政府が2020年までの

目標として掲げる「農林水産物の

輸出額1兆円」を達成するのに欠

かせないとされるのが、「GLOBAL

G.A.P.(グローバルGAP)」だ。

業界関係者でつくるグローバルG

AP協議会は5月に法人化し、

普及を急ぐ。

同協議会の今瀧博文事務局

長(シンジェンタ・ジャパン安全推

進部部長)は「グローバルGAP

は既に欧米ではデファクトスタンダ

ード(事実上の標準)だが、今後ア

ジア太平洋圏における農産物輸

出入の必要条件になるのは明らか。

日本は急がなければ国際競争力

を失うことになる」と危機感を抱く。

今瀧事務局長に話を聞いた。

◇GAPは乱立から調和、

共通化へ

―そもそもGAPはどういう経

緯があってできたのか。

GAPの世界標準であるグロ

ーバルGAPが欧州で誕生したの

は1990年代だ。当時、大手の小

売業者は農家に対して、農薬の

使用基準など農産物の作り方に

ついて個別の条件を求めていた。

肥料・農薬に限らず、環境配慮や

労働福祉も含めてだ。これは農家

側からすれば、出荷先ごとに畑を

分け、栽培の方法も変えて作るこ

とになるので非常に手間がかかる。

一方、小売業界側にしてもアフ

リカや中南米の契約農家にまで自

分たちの要求を伝えて、それが守

られているか訪問して監査するの

は大変なコストがかかる。そこで生

鮮品を生産する工程の管理に関

して、小売業界が共通の規範を

作った。

この時、シ

ンジェンタの

前身である

ノバルティス

など関連す

るステークホ

ルダーが農

家に不利に

ならないよう

サ ポ ー ト に

入った。それ

がグローバル

GAP(当

時はEurep

GAP)。つまりグローバルGAP

を取った農場については持続可能

な農業の最低レベルが達成された

ということだ。

―日本では都道府県や農協、

生協ごとのGAPが乱立している。

これはEurepGAPが構築され

ていく段階に非常に似ているが。

欧州も始まりはそうだった。いず

れ調和、共通化されていくとみてい

る。

◇認証するのは「品質」で

はなく「生産工程管理」

―日本でGAPは正確に理解

されているか。

そうは思えない。日本でGAP

が初めて紹介された時、残念なが

らボタンの掛け違いがあった。本来、

信頼される農業のあり方を規範と

して定めたのがGAPだ。それに

基づいて農業を実践した人たちの

89,830

106,008

114,578

123,115

132,547 139,904

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

2009 2010 2011 2012 2013 2014

(118カ国)

(6月)

世界の認証生産者数の推移

認証生産者の地域別シェア

アフリカ アジア 欧州 北米 南米 オセアニア

6.3% 9.2% 70% 1.8% 11.6% 1.1%

「GLOBALG.A.P.年次報告 2013/2014」より作成

Page 3: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 3

巻頭記事

今瀧 博文(いまたき ひろふみ)

〔主な経歴〕

1955年熊本県生まれ

技術士(農業部門)

東京大学農学部を卒業後、農薬メーカー

(株)エス・ディー・エスバイオテックに研究

員として入社

現在はシンジェンタジャパン(株)で、農

薬の適正使用とコンプライアンスを推進す

るスチュワードシップ部署(安全推進部)

を担当

農薬工業会安全対策委員会副委員

長、同スチュワードシップグループ長を兼務

農場を認証する仕組みは後から

出てきた。でも、日本のGAPは

まず認証するためのものであり、農

薬や肥料の使い方などに関してチ

ェックリストに従ってやればいいと単

純解釈されてしまった。

―GAPを取ることで有利販

売できるといった話もあるが。

それも日本ならではの誤解だ。

GAPが認証するのはあくまでも

「生産工程管理」であって「品質」

ではない。だからGAPを取得し

た農場の商品に認証シールを貼る

のは、本来はおかしい。個々の農

産物の高品質を認証しているわけ

ではないから。グローバルGAPは

あくまでB to B(企業間取引)

のための約束事だ。消費者に高

品質を訴えるといった類のものでは

ない。

◇前提は国際レベルの第

三者認証

もう一つ、日本のGAPの問

題点を挙げれば、グローバルGA

Pが前提としている国際レベルの

第三者認証になっていないこと。

二者間で認め合うだけなどの点で、

国際的な客観性がない。グローバ

ルGAPでは、まずそれを取得し

たい「農場」がある。それからその農

場を審査する「認証機関」がある。

さらに「認定機関」があって認証機

関が農場を認証するだけのレベル

に達しているか常々チェックしている。

認定機関は各国に一つ、二つしか

ない。

世界の認定機関はフォーラムを

つくって、常に目合わせをしている。

ドイツにあるグローバルGAPの運

営団体である「フードプラス」自体

は認証機関でも認定機関でもなく、

基準の詳細をつくり、運用するのが

役割だ。日本のGAPにはこうし

た仕組みがない。

―つまり日本でできたGAPは

国際的には通用しないのか。

残念ながらその通りだ。日本の

GAPは国際標準とは異なった

道を進んでしまった。それは良いと

か悪いとかではなく、ビジネスモデル

が違っているということ。

◇東京五輪で国産食材が

使えない?

―ところでグローバルGAPは

欧州でどれだけ広がっているのか。

全物流量に占める比率は最大

7~8割といったところ。というのもグ

ローバルGAPやそれと同等性を

持つ規格について、その取得を条

件としている大手小売業者が占め

る物流量は全体の7~8割だから

だ。ただこれ以上は増えないだろう。

残り2、3割は大規模かつ広域に

流通しない生鮮品で、例えば地

産地消のマルシェや欧州の有機

認証Bio(ビオ)といった別の

信頼関係で取り引きされているか

らだ。とにかく大半はグローバルG

AP認証の農産物が占めている

わけなので、日本から欧州への輸

出量を増やすならば、その取得は

欠かせない。

―日本ではどのぐらい広がってい

るのか。

国内の小売業者でグローバル

GAPの認証を取得するよう農

家や産地に推奨しているのはイオ

ンやコストコなど一部だけだ。ただ、

グローバルGAPを取得している

農家や産地は200軒ほどなので、

それでは玉が集められない。だから

取得していないところからも仕入れ

ざるを得ないのがジレンマだ。

―日本での普及が遅れていること

で、何か問題は起きているか。

日本のブランドや品種名を無断

利用した中国産の農産物が、グロ

ーバルGAPを取って欧州市場に

広がり始めている。たとえば福岡の

Page 4: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 4

巻頭記事

窪田 新之助(くぼた しんのすけ)

〔主な経歴〕

福岡生まれ。大学卒業後、2004年に株

式会社・日本農業新聞入社、2012年3

月退社

現在、フリーランスで農業問題を取材

「八女茶」やりんごの「ふじ」。いず

れも中国産のお茶やりんごが「八

女茶」や「ふじりんご」のブランドで

欧州に輸出されている。本場の日

本産が対抗しようにも、グローバル

GAPを取っていないので取り引

きできない。

―その点、国はきちんと認識し

ているのか。

農林水産省も経済産業省も

大変な危機感を持っているようだ。

というのも2012年のロンドン五輪

では、選手村で使う食材について

はすべてグローバルGAPやそれと

同等の規格で認証を得た農場の

ものしか使えなかった。20年の東

京五輪でも同じことが要求される

かもしれない。日本でグローバルG

APを取得している農家はごく少

数という現状では、日本での開催

なのに食材を輸入することになりか

ねない。もう時間的余裕はない。

このままでは日本はガラパゴスにな

ってしまう。

―具体的な対策は。

農水省は14年度の事業として

「輸出の拡大などグローバルな『食

市場』の獲得」を打ち出し、15年

度からはグローバルGAPの取得

を促進することを掲げた。政府が

農林水産物の輸出額を2020年

までに1兆円にする目標を掲げて

いるわけだから、農水省としても国

内のGAPからグローバルGAP

やそれと同等性を持つ国際規格に

移行していきたいだろう。グローバ

ルGAPは取るのが難しいとされ

ているが、さほど高いレベルを要求

するものではない。食の安全を確

保し持続可能な農業を実践する

上で最低限のことを求めているだ

けだ。

―日本発のGAPを国際規

格に入れる動きがありますが、どう

思いますか。

そのためにはまず国際的な第三

者認証にしなければならない。ただ、

世界的にグローバルGAPなどの

国際規格は収れんする方向で動

いている。われわれは、今あるグロ

ーバルGAPを日本で使いやすい

ものにして、日本産農産物の輸出

拡大に役立てるのが急務だと思っ

ている。

◇普及に向けて5月に法人化

―グローバルGAPを広めるた

めに何をするか。

グローバルGAP協議会を5

月に法人化し、いよいよ本格的

な普及に取り組むことができるよう

になる。もう一つは4年から5年の

周期で改訂されるグローバルG

APのあり方に、日本を含めたア

ジアモンスーン地帯の農業者の

意見を反映させていく。日本やア

ジアの農家たちが使いやすくなる

よう働き掛けていきたい。(聞き

手=窪田新之助)

<表紙・目次へもどる>

GLOBAL G.A.P.の小売・食品サービス企業会員

「GLOBALG.A.P.年次報告 2013/2014」より引用

Page 5: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 5

トップニュース

トップニュース (4月13日~19日)

◎コメ・自動車、20日に集

中討議=日米閣僚協議始

まる-TPP(15/04/19)

環太平洋連携協定(TP

P)交渉をめぐり、甘利明TP

P担当相とフロマン米通商代表

部(USTR)代表による閣僚

協議が19日、東京都内で始まっ

た。同日はこれまでの実務者協議

の成果を確認。20日の協議で、

懸案の米国産のコメの輸入拡大

と日本製の自動車・部品の関税

の扱いについて集中的に議論する。

28日の日米首脳会談を前に、閣

僚レベルで課題解決へどこまで歩

み寄りを図れるかが焦点となる。

甘利、フロマン両氏の直接協議

は昨年10月のオーストラリア・シド

ニーでの会談以来、約半年ぶり。

甘利担当相は約1時間半に及

んだ19日夜の協議終了後、記者

団に「事務レベル協議の前進を確

認した。残されている課題を整理

し、協議を進める道筋を付けた」と

説明。併せて「完全決着するとい

うところまではなかなか時間的に難

しい」と慎重な見通しを改めて示し

た。フロマン代表は「有意義な議

論ができた」と語った。

日米間のこれまでの実務者協

議では、米国産牛・豚肉に対する

日本の関税引き下げやセーフガー

ド(緊急輸入制限)の条件に関

して大筋で着地点を見いだしつつ

ある。

一方、最大の懸念であるコメは、

日本の関税維持を認める代わりに

米国産のコメに特別輸入枠を設

ける方向で調整している。ただ、日

本が特別枠を主食用で年5万ト

ン規模に抑えたいのに対し、米側

は主食用で年17万5000トンの

輸入枠を要求。米国は別に加工

用なども年4万トンの輸入増を求

め、平行線が続いている。

◎日本食品の輸入規制、

農水省が台湾当局に撤回

申し入れ(15/04/17)

【台北時事】農林水産省の桜

庭英悦食料産業局長は17日、

台湾・台北市内の対日交流窓口

機関、亜東関係協会、衛生福利

部(厚生労働省に相当)、経済

部(経済産業省に相当)などを

訪れ、日本食品に対する輸入規

制強化策の撤回を申し入れた。

台湾の食品薬物管理署は16

日に放射性物質の検査証明書の

添付を義務付ける食品リストを公

表した。宮城、東京の水産物、静

岡のお茶などが対象となっている。

全食品に対する産地証明書の添

付義務とともに、5月15日からの

実施を予定している。

台湾は香港、米国に次ぐ日本

の農産物・食品の輸出先。新たな

規制強化は日本企業のコスト増

や、日台間の貿易の停滞を招く恐

れがある。

◎貿易促進法案、米議会

に提出=TPP妥結へ、大

統領権限強化(15/04/17)

【ワシントン時事】米議会超党

派議員は16日、大統領に通商

権限を一任する「大統領貿易促

進権限(TPA)」法案を上下

両院に提出した。法案は環太平

洋連携協定(TPP)交渉妥

結の前提とされ、米議会の法案

審議が最終局面に入ったTPP

交渉の成否を左右する。28日の

日米首脳会談を前に、交渉妥結

に向けた機運が高まる可能性があ

る。

TPAは、大統領が外国と合

意した通商協定について、議会に

修正を認めず採決のみを促す権

限。法案には米輸出産業のドル

高への不満を受け、相手国の為

替操作を監視などによって妨げる

環太平洋連携協定(TPP)交渉をめ

ぐる日米閣僚協議の冒頭、握手する甘利

明TPP担当相(右)とフロマン米通商

代表部(USTR)代表=19日夜、東

京・永田町(代表撮影)

Page 6: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 6

トップニュース

ことを交渉目的に盛り込んだ。議

会の監視措置や政府の情報開

示の抜本的な強化策も導入。

上院財政委員会のハッチ委員

長(共和党)とワイデン議員

(民主党)、下院歳入委員会

のライアン委員長(共和党)が

提出した。オバマ大統領は16日、

「将来の機会をつかみとる法案だ」

と表明、与野党に早期の可決を

促した。

最短で5月中の法案可決を期

待する声があり、日米などは可決

直後のTPP交渉の大筋合意を

視野に入れ協議を進める。ただ、

米国では民主党の支持基盤の労

組などが雇用への影響を懸念して

TPPに反対。2016年の大統

領選挙戦が本格化する今年後半

までに法案が可決されるかは不透

明だ。

大統領がTPAを持たないま

まTPP交渉に合意しても議会

が納得せず、再交渉を迫る恐れが

あるため、他の交渉国は「交渉妥

結に極めて重要だ」(甘利明T

PP担当相)と指摘していた。

TPAはブッシュ政権下の07

年7月に失効。与野党はTPP

交渉の進展に合わせ、昨年1月に

法案を提出したが、審議が見送ら

れ、昨年11月の中間選挙後、オ

バマ大統領が改めて議会に権限

の承認を要請していた。

◎米有機農家数、前年比

5%増=12年間で2.5倍

-農務省(15/04/16)

【シカゴ時事】米農務省は15日、

同省が認定した米国の有機農家

数は2014年末で1万9474戸と

なり、前年同時点比5%増えたと

発表した。調査を始めた02年以

降の12年間で25倍に拡大した。

米国外の農家を含めると2万

7814戸に上り、日本の農家も

137戸が含まれた。

ビルサック農務長官は「有機製

品の需要は急増しており、さらに多

くの農家が有機市場に参入するだ

ろう」と分析。さらに、有機農業は

特に小規模農家とって有益との見

方を示した。

同省に有機農家として認定さ

れれば、有機農産物であることを

示すマークをつけて米国内で販売

できる。

◎米国の有機食品販売、

昨年は11%増=17年前

の10倍超(15/04/16)

【シカゴ時事】米有機取引協会

(OTA)は15日、2014年の

米国での有機食品の販売額が

359億ドルとなり、前年比11%増

えたと発表した。全食品の売り上

げのほぼ5%に相当する。調査を

始めた1997年以降、17年間で

10倍超に拡大しており、健康志

向の高まりで急速に人気が高まっ

ていることが裏付けられた。

有機食品について、農薬や化

学肥料、遺伝子組み換え品種を

使わずに生産するなどの基準を米

農務省が策定。この基準を満たす

と、同省の認定マークをつけて販

売される。

販売の内訳をみると、果物・野

菜が12%増の130億ドルと最も

多く、全ての果物と野菜に占める

割合は12%に達した。乳製品は

11%増の54億6000万ドル。繊

維など非食品は14%増の32億ド

ルとなり、食品と非食品を合わせた

有機製品全体の売り上げは11%

増の391万ドルとなった。

調査は、2月10日から今月3

日にかけ、200以上の企業を対

象に行われた。

◎日本食品の輸入規制強

化=新たに産地証明要求

-台湾(15/04/14)

【台北時事】台湾の食品衛生

当局は14日までに、日本から輸

入する全食品に都道府県ごとの

産地証明を求め、乳幼児用向け

など一部食品については放射性

物質の検査証明書の添付を義務

付ける方針を決めた。5月中旬に

も実施する見通し。

台湾当局は現在、東京電力

福島第1原発事故を受け、福島、

茨城、群馬、栃木、千葉の5県の

食品を輸入禁止にしているほか、

果物や水産物などについては輸入

時の放射能検査を実施している。

日本は5県の輸入禁止措置の

解除を求めていたが、3月に台湾

で5県の食品が生産地を偽装して

流通していたことが発覚。消費者

団体などからは規制強化を求める

声が上がっていた。

<表紙・目次へもどる>

Page 7: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 7

トピックス

トピックス

世界を相手にする農業者集団 =グローバルGAPを「通行手形」に=

―農業ジャーナリスト・窪田新之助―

株式会社ファーム・アライアンス・マ

ネジメント

代表取締役:松本 武

所在地:〒102-0074

東京都千代田区九段南3丁目4番5

号 番町ビル3階A

設立:2012年3月

資本金:9375万2500円

これから担い手が急速に減るこ

とが予想される中、日本農業が世

界で戦える力を身につけるにはどう

すればいいのか。熊本県益城町に

ある松本農園の元取締役、松本

武さんはその答えを「農業のフラン

チャイズ・チェーンの展開」に見出し

た。その実現のため(株)ファー

ム・アライアンス・マネジメント(東

京)を創業。実力ある農業者を

束ね、農業の新しいビジネスモデル

を構築している。

◇大量に放出される農地を

誰が担うのか

松本さんは20年前に脱サラした

後、実家の松本農園で就農して、

現社長の兄とともに露地で野菜を

作ってきた。経営基盤を築いた後

にそこを離れ、3年前にファーム社

を起こしたのは、日本農業に強い

危機感を抱いたからだ。農水省が

5年ごとに調査する農林業センサ

スを独自に分析したところ、2015

年には農家の平均年齢はほぼ70

歳となり、かつてないほど多くの人た

ちがリタイアすることが予想できた。

(3月3日号P5参照)その時に

引っ掛かったのが、離農した農家

が放出する大量の農地を誰が担う

のかということだった。

「政府がテコ入れする新規就農

者は一人前になるまでに10年は

かかる。それならば既存の若手農

家に規模を拡大してもらうよりほか

はない。その際に必要なのはインセ

ンティブだ。出口からの評価と出口

がきちんと買ってくれること。フランチ

ャイズならこれを両立できるのでは

ないかと思った」

◇「アライアンス」という緩

やかな連合体

一般にフランチャイズというビジネ

スを構成するのは、フランチャイザー

(本部)とフランチャイジー(加盟店)

という二種類のプレイヤーだ。本部

は契約を結んだ加盟店に対し、①

商号や商標の使用権の認可②

開発した商品やサービス、情報と

いった経営ノウハウの提供③継続

的な指導や援助―といった支援を

する。その見返りとして加盟店はロ

イヤリティを支払う。

ファーム社のビジネスモデルも基

本構造は変わりらない。同社が本

部となり、加盟店に当たる農家を

募集。会員となった農家はファーム

社から営農指導を受け、同社が

開拓する取引先に同社のブランド

で販売できる。その見返りとして支

払うロイヤリティは品目ごとに設定

している。

ただ、がちがちのフランチャイズで

はない。会員農家はファーム社の

ブランドを絶対的に使う義務はなく、

自分たちのブランドで販売してもい

い。会員農家が以前から使ってい

たブランドを望む昔馴染みの取引

先もいるからだ。

顧客の求めに応じて互いに協

調できることはする、それ以外では

会員個々は自由に経営する。い

わば「フランチャイズ」でありながら、

複数の企業が相互の利益に協力

する「アライアンス」の要素も取り入

れた緩やかな連合体なのだ。現在、

北海道から沖縄まで23の農業者

が加盟している。

◇国際化を視野に入れた

グローバルGAP

フランチャイズ型の農業を展開

するグループは最近増えている。

(3月24日号巻頭記事参照)

そのほとんどは会員が同じ品目を

Page 8: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 8

トピックス

同じ栽培法で生産する。だが、ファ

ーム社は違う。作る品目も栽培法

も会員ごとにまちまちだ。ただ一つ、

会員に求めるのは農業生産工程

管理(GAP)の導入である。

GAPとは農業の生産活動をす

るに当たり、関係法令に則って継

続的に作業や記録、点検などをす

ること。生産段階での安全管理の

ルールを標準化することで、取引

先にファーム社の農産物を安心し

て買ってもらえるようにしている。

ただしファーム社が採用している

のは日本国内で生まれたGAP

ではない。というのも日本国内の

GAPは国際規格の対象外だか

らだ。松本さんは「国際舞台で通

用しないGAPは今後の農業の

国際競合においては全く意味がな

い」と考えている。

代わりに導入したのは、世界

118カ国で約14万件の取得者

(2014年 6月末現在 )を持つ

「GLOBAL G.A.P.(グローバル

GAP)」だ。(今号の巻頭記

事参照)松本さんはその理由をこ

う説明する。

「欧米の量販店の売り上げラン

キングトップ10を見ると、生鮮食料

品を扱う全社がグローバルGAP

など国際的な評価スキーム

の認証を取得した農産物を

優先的に扱うようになってい

る。これからこの動きは加速

する。つまり、グローバルG

APを取れば世界の小売

りと取り引きできる」

グローバル化によって食の

供給網が世界に広がる中、食品

関連業者にとって厄介なのは、食

品事故を防ぐための安全規格が

国ごとに違うこと。それを標準化す

るのがグローバルGAPだ。だから

欧米の食品関連業者は国を超え

た農産物の取り引きを円滑化する

ため、グローバルGAPのような農

産物の国際規格を「通行手形」に

している。

日本の農業者も「私は輸出し

ないから無関係」と言っていられな

くなりつつある。西友はウォルマート

の子会社だし、メトロ(ドイツ)も

コストコ(アメリカ)も日本に進出

している。また国内の大手小売業

も国際規格の導入を要求し始め

ているからだ

◇グローバルGAP取得の

簡略化

ファーム社は自社のフランチャイ

ズに加盟する農業者を対象に、グ

ローバルGAPが手早く取れるよ

う独自の手法で指導をしている。

中でも秀逸なのは、面倒な生

産工程の記録や点検といった事

務作業も簡単にこなせるように開

発したクラウドコンピューティングによ

る生産情報管理システム「ファーム

レコーズ」である。この最大の特徴

は入力に使うのがタッチパネル式の

タブレットであること。従業員は農

薬の散布や施肥といった作業を終

えるたびに、このタブレットでどの圃

場で何をしたかを記録する。1作

業当たりの入力時間はわずか30

秒である。

このクラウドシステムはグローバル

GAPの審査にも対応し、すでに

14戸の会員がこのシステムで認証

を取得している。それに各国とも農

業生産の工程はほぼ同じだから世

界で使えるシステムになっている。

ファーム社のフランチャイズ・チェーン

は国際展開に即応できるというわ

けだ。この功績が評価され、2012

年にスペインで開催されたグローバ

ルGAPサミットで「第1回グロー

バルGAPアワード」を受賞した。

ファーム社が目指すのは会員農

家の「大規模化、中規模化」だ。

というのもサプライチェーンでは安定

供給が求められ、小売業者は大

規模農家を相手にする傾向になり

つつあるからだ。それに小規模農

家をたくさん束ねるというビジネスモ

デルでは、個々の農家を管理する

コストが余計にかかる。頭数が多く

なる分だけ非効率に陥るという。

松本さんは「私たちは個々の農

家を大きくして、少なくとも海外を

含めた競合に対応したい。そして

将来国内の担い手が減少する中

でも、安定的に消費者に農産物

を供給することを目指したい」と話

している。

<表紙・目次へもどる>

Page 9: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 9

政策情報

政策情報

中央官庁だより = 2015年4月20日配信 =

◇長澤まさみさんにあやか

って

農 林 水 産 省

林業の新規就業者の研修費

用を支援する「緑の雇用」事業は、

2015年度の募集が本格化してい

る。03年に開始した同事業につい

て林野庁の幹部は「当初は雇用

対策の側面が強く、研修に参加す

る新規就業者に若者は多くなかっ

た」と振り返るが、近年は若者の比

率が上昇。林業従事者の若返り

に貢献しているとみられる。さらに

14年には、同事業に参加する若

者をモデルにした映画「WOOD

JOB!(ウッジョブ)」が公開さ

れたこともあってか、先の幹部は「1

月に行った説明会では、例年にな

い参加者数でびっくりした」と思わ

ぬ追い風ににんまり。映画の中で

は、主人公の男性が女優の長澤

まさみさんの写った募集ポスターを

見て研修への参加を決意すること

から、農水省は映画を意識し、15

年度の募集ポスターで、「ミス日本

のみどりの女神」が作業服姿で大

きく写ったデザインに。同庁の別の

幹部は「山にこんな人がいるかどう

かは分からないが、ポスターを見て

『研修に参加してみよう』と思う人

が増えれば」と期待していた。

◇安全な職場に

農 林 水 産 省

13年に発生した農作業中の死

亡事故の調査結果がまとまった。

事故の件数は350件と、過去10

年間で最も少なかった前年と同じ

水準にとどまったが、生産局の幹

部は「実数が同じでも、農業者人

口が減っているので、事故率では

上がってしまっている」と渋い顔だ。

事故原因の中で大きな割合を占

める、トラクターやコンバインといった

農業機械での作業に伴う事故は、

安全対策が進み約1割減少。そ

の一方で、圃場(ほじょう)や道

路からの転落による死亡事故が

12件から23件に増加した。実際

にけがをした農家に担当者が聞き

取り調査に行くと、「あんな場所で

つまずいてけがをするとは思わなか

った。年を取ったとつくづく感じた」と

いう声が聞かれたという。担当者は

「農業に従事する人の高齢化が

進み、体が思うように動かなくなっ

ている人が増えている一方で、『俺

はずっとこれでやってきた』と危ない

作業方法を改善しない人もいる」

と悩む。農業は家族経営が多く、

企業の対策が進んでいる建設業

より死亡事故率が高くなっている。

冒頭の幹部は「農業の現場がプロ

向きになり過ぎているのかもしれな

い。新規農業者や女性の進出を

増やすためにも、安全性についても

っと考えないといけない」と意識改

革の必要性を強調していた。

◇「種まき理論」で普及期待

国 土 交 通 省

下水処理の過程で生じる汚泥

で栽培した野菜の調理事例集が

完成。下水汚泥などを活用した農

水産物づくりの普及に向けた戦略

「種まき理論」(下水道部)を紹

介してPRした。種まき理論は5

段階のステップを踏む。首長ら地

域のリーダーが地元のニーズを見

極めて取り組みのビジョン「種」をま

き、住民と一緒に「芽」を育て、地

域活性化という「花」を咲かせる。

その後、地元レストランで活用して

もらうことなどで地域ブランドとして

「収穫」、さらに他都市や海外にも

知られる地域産業にまで成長させ

る「流通」の段階を目指すという戦

略だ。下水道部中堅は「何かを広

めようとするとき事例紹介だけして

も、なかなか広まらない。このため1

年間かけて理論を編み出した」と

語る。5段階の中でとりわけ大事な

のが第1段階だとし、「基本は『種』。

何か始めるときに大きなことから着

手する例もよく見掛けるが、それで

は成功は難しい。地元のリーダー

やキーパーソンの存在が大事。良

い種をまき、だんだん広げていって

ほしい」と、ステップを踏んだ普及に

期待を高めている。

<表紙・目次へもどる>

Page 10: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 10

農地バンク情報

農地バンク情報⑦

◇九州農政局管内及び沖縄の農地集積状況 (4月17日までのAgrio編集部調べ)

◇農地中間管理機構 リンク集

<表紙・目次へもどる>

青森

秋田

山形

栃木

埼玉

東京

神奈川

岩手

宮城

福島

茨城

千葉

新潟

富山

群馬

山梨

静岡

石川

長野

岐阜

愛知

三重

福井

滋賀

奈良

和歌山

京都

大阪

兵庫

岡山

鳥取

広島

島根

山口

香川

徳島

愛媛

高知

大分

宮崎

熊本

福岡 佐賀

長崎

沖縄

北海道

鹿児島

※都道府県名をクリックすると各機構のホームページが開きます

延べ 実数 延べ 実数 延べ 実数 延べ 実数 うち法人

6/1 ~ 6/30 187 45 3 1,451.8

11/4 ~ 12/4 239 63 2 2,437.4

1/14 ~ 2/12 67 15 3 470.7

493 123 8 4,359.9 357.0 1,500

~ 7/31 258 188 31 18 8 4 955.5 652.9 113.2

11/1 ~ 12/5 145 102 18 6 11 4 647.9 347.8 77.5

403 290 49 24 19 8 1603.4 1000.7 190.7 36.3 400

5/1 ~ 5/30 81 138.8

8/1 ~ 8/30 1,108 1,927.1

12/1 ~ 1/9 386 682.4

1,575 84 31 2,748.3 554.5 940

4/1 ~ 5/3 12 12 3 6.0 6.0

5/1 ~ 5/30 394 256 66 5 2,001.5 1091.0

9/1 ~ 9/30 524 382 46 5 1,947.4 1677.0

1/5 ~ 2/3 357 259 24 2 1,343.2 1201.0

1,287 909 139 12 5,298.1 3975.0 精査中 2,000

7/16 ~ 8/15 217 197 1,278.0 1,149.4

8/20 ~ 9/19 117 47 553.7 331.3

10/10 ~ 11/10 44 41 204.0 190.9

1/21 ~ 2/20 104 102 426.7 421.1

482 387 2,462.4 2,092.7 132.2 1,890

7/1 ~ 7/30 101 101 13 13 693 534.3

10/1 ~ 11/10 840 684 149 78 28 3,208.4 1609.0

12/10 ~ 1/8 202 176 14 9 1 519.0 207.0

1,143 961 176 100 29 4,420.8 2,350.3 374.0 2,265

~ 10/31

11/1 ~ 12/25

256 1688.0 147.8 未回答

6/26 ~ 7/25 313 243 37 31 363.5 321.3 147.5

9/30 ~ 10/31 208 188 20 43 377.5 350.2 168.1

521 431 57 74 741.0 671.5 315.6 11.1 1,310

※「2014年度借り受け計画」は2014年3月17日~31日に時事通信が各都道府県に行ったアンケート結果による

沖縄

借り受け希望面積(ha)

福岡

佐賀

合計

募集期間応募経営体数 うち法人 うち新規参入

合計

長崎

合計

合計

合計

合計

宮崎

配分計画

決定面積

(ha)

2014年度

借り受け

計画(ha)※

熊本

大分

鹿児島

合計

合計

Page 11: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

高木 賢(たかぎ まさる)

〔主な経歴〕

1967年 東京大学法学部卒業、同年4

月農林省入省、農産園芸局長、官房

長、食糧庁長官を経て、2001年 退官

02年 弁護士登録(第二東京弁護士

会)、03年 インテージ社社外監査役、

11年4月 高崎経済大学理事長

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 11

農と食のコラム

農と食のコラム

「条件」と「因果関係」 =全中改革と農業所得増加の関係は?=

―弁護士・高木賢―

人間社会の成立とともに、一方

では紛争も生じた。その際、暴力

的に解決される場合もあっただろう

が、話し合いなどによる理性的解

決の方法も行われ、解決のための

基準も徐々に発展した。国家機

構が整うにつれて、それは裁判規

範として確立されるようになった。そ

の発展の現在の姿が、民事・刑事

にわたる訴訟法であり、民法・刑

法などの基本的法律である。これ

らには、数千年にわたる人類の英

知が詰まっている。

例えば、刑事訴訟法では、伝

聞証拠の禁止や自白を唯一の証

拠としてはならないなどの証拠原

則があり、判断の合理性を担保す

るには不可欠の原則だ。また、民

事訴訟法では、あることを主張す

る側が主張を裏付ける立証を、反

論する側が反論を裏付ける立証

をそれぞれしなければならないとい

う「挙証責任の原則」があり、当事

者間の公平を担保するには不可

欠の原則だ。

こうした基本原則について、報

道機関、評論家なども体得してい

れば、物事の正確な報道や合理

的な論議方法がとれるのにと思う

ことは少なからずある。

最近の農政改革論議において

も、同様の感を抱く。

それは、「条件」と「因果関係」

の違いについて意識的ないし無意

識的に無視した論法がとられてい

るからである。

刑事責任の追及において、「そ

の行為がなかったらばその結果は

生じなかったであろうという関係が

あれば、その行為について責任を

問う」という、いわば結果に対して

「条件」となったものがあればそのす

べてにつき責任を追及するという考

え方(条件説と言われる)がある。

わかりやすい例で言えば、何年

か前、秋葉原で歩行者天国にな

っていた場所に車で突っ込み無差

別殺人をしたという事件があったが、

歩行者天国が実施されていなけ

れば事件は起きなかったので、「歩

行者天国を開設した者」について

も殺人事件の責任があるというの

が条件説の考えである。しかし、こ

れは犯罪行為の実行者と条件を

つくったにすぎない者を同列に扱う

不適切な考えとして排斥され、行

為と結果との間に客観的な「相当

因果関係」がある場合にのみ、そ

の行為者の責任を問うべきいう考

えが主流になったのである。

ひるがえって考えるに、全国農

業協同組合中央会(JA全

中)中が社団法人になることと農

業所得が増加することとの間にい

かなる因果関係があるのか。改革

積極論者は、JA全中の改革が

農業所得の増加に寄与することを

立証しなければならないのだが、そ

れに成功しているとは言い難い。そ

れもそのはずである。そもそも、J

A全中と農業所得の間に何らか

の関係があるということそれ自体を

見出すのが困難だからである。

巡り巡って影響するという程度

の話なら、それは精一杯好意的に

みても「条件」の一つにすぎない。

条件の一つにすぎないことを重視

する人をからかうには、昔からの言

葉を伝えれば十分である。曰く、

「風が吹けば桶屋が儲かる」。

<表紙・目次へもどる>

Page 12: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 12

JAフォーラム

JAフォーラム

高齢社会に対応する都市型農業 =アグリサポート事業で営農支援=

―神奈川県・JA横浜―

全国の市町村で最多の人口

371万人を抱える横浜市。首都

圏の洗練された港町というイメージ

が強いが、農業の振興に力を入れ

る「都市型農業」の先進地という

側面も持ち合わせている。

横浜市は、実は全国でも例を

見ない農地と住宅地が混在した

都市でもある。以前に比べると大

幅に減少しているとはいえ、農地

面積は神奈川県内第1位で、市

の面積の6~7%、約3000ヘクタ

ールあるとされる。

そんな大消費地と農業が共存

する横浜市をエリアとするのがJA

横浜だ。2003年、市内の五つの

農協が合併して誕生した。正組

合員、准組合員合わせて約6万

人を擁し、貯金残高約1兆5000

億円、貸出金残高約6000億円

と全国有数の規模を誇るが、忍び

寄る高齢化、農業離れと無縁で

はない。

◇アグリサポート事業

遊休・荒廃農地を減らし、農業

労働力確保に向けて11年度から

本格的に取り組み始めたのが「ア

グリサポート事業」だ。取り組みは

①アグリサポートデスクによる相談

②営農ヘルパー制度(農作業受

委託事業)③援農ボランティア-

が三本柱となる。

アグリサポートデスクは、遊休農

地や荒廃農地に対する抜本的な

対策として、各支店の担当者が窓

口となり、「農地を貸したい、売りた

い」「農地を借りたい、買いたい」

「人手が欲しい」「相続・契約に関

する相談」など、11年2月から14

年12月までに227件の相談を受

け、個々の事情に応じたきめ細か

な対応を行っている。

◇農機活用の営農ヘルパー

営農ヘルパー制度は、12年4

月からスタート。農家によって耕作

面積や農業機械の所有状況はさ

まざま。そこで、農機を使っての作

業を農家からJA横浜が有償で

受託、実際の作業を事前に登録

したオペレーターに依頼する仕組み

だ。「トラクターを持っていないので

代わりに耕運してほしい」「畑の水

はけが悪いので改善したいが、機

械を持っていない」など、依頼してく

るのは現役ばりばりの農家ではなく、

兼業や小規模で農地の管理に困

っている人がほとんどだという。

小雪が舞う肌寒い一日となった

2月、作業を見学させてもらった。

依頼者は金子スエさん(85)。

夫とともに長らく農業を営み、トマ

ト、キュウリ、サツマイモ、ジャガイモ

などを作ってきたが、13年に夫を亡

くし、現在は一人暮らし。近所に

住む義理の息子(62)が仕事

休みの日など、たまに手伝ってくれ

ていたが、畑はここ1年ほど荒れ放

題だ。金子さんによると、この制度

をJAで知り、「草が生えるままに

しておけない」と依頼したという。

オペレーターとして、所有する耕

運機を車に積んでやってきたのは

皆川嘉昭さん(42)。自ら農業

を営むかたわら、「一人でも多くの

人に農業を理解してもらいたい」と

農業指導などの活動を行ってい

る。

さっそく作業を始めたが、枯れた

草が畑をびっしりと覆い、耕運機の

刃に絡んだ草を取り除くため、作

業はたびたび中断。約10アールの

畑を耕すのに4時間近くかかった。

JA横浜の規定により、料金

は10アールで1万7000円。面積

が基本で、傾斜の具合などによっ

て料金は若干変わるという。

営農ヘルパーは自分が所有す

る農機のほか、JAが横浜市の

「みどりアップ計画事業」の補助金

耕運機で作業しながら、依頼者の義理の息

子(右)と談笑する営農ヘルパーの皆川嘉

昭さん

Page 13: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 13

JAフォーラム

〔基本情報=2015年3月末現在〕

名称:横浜農業協同組合

設立:2003年4月

出資金:123億円

貯金残高:1兆4933億1200万円

貸出金残高:5993億0400万円

長期共済保有高:3兆1284億2800万円

販売品取扱高:29億8800万円

正組合員数:11681人

准組合員数:49875人

職員数:1429人

単体自己資本比率:17.00%

を活用して導入した機械などを使

って作業することもある。JA横浜

営農部によると、ヘルパーに登録し

ている農家は現在26人。「本業に

忙しい人でも、関心を持ってくれる。

横浜の農業に不安を抱いているの

かも。人数ももう少し増やして、ヘ

ルパーの地域的な片寄りをなくした

い」と担当者は言う。

◇援農ボランティアで人材

育成

アグリサポート事業でもう一つ重

要な取り組みが、人手不足に悩む

農家をサポートする援農ボランティ

アだ。「准組合員は農家の応援団。

相互扶助で正組合員を支えよう」

という発想のもと、准組合員を対

象に12年5月に始まった農業体

験講座がその土台となっている。

講座には約40人が参加し、草

刈り、種まき、収穫の手伝いなど

農作業の基本を習得しながら半

年かかってサツマイモ、落花生をつ

くった。卒業生の中から18人がボ

ランティアに登録し、現在、その数

は約40人にまで増えた。有償の

営農ヘルパーとは異なり、こちらは

交通費も出ない完全に無償の世

界だ。

実際の作業風景を見るべく、2

月某日、佐藤克徳さん(54)の

畑を訪問した。佐藤さんは計27

枚の田畑を持ち、合計面積は約

3.7ヘクタールになるという。

この日集まったボランティアは男

女計3人。時間の融通がきく関係

で登録者は8割以上が60代と聞

いていたが、平井智さん(55)は

現役の証券マンだ。もともと土いじ

りが好きで、「成果がはっきり出るの

がいい」と休暇を取ってボランティア

活動を行っているそうだ。

ボランティア3人に佐藤さんが雇

っているアルバイトの高齢男性と佐

藤さん本人を含め、計5人でダイコ

ンの種まき作業が始まった。地面

を覆う黒いビニール製の資材に等

間隔に開けられた穴に指先で種を

差し込むように植えていき、それを

終えると合成樹脂製のポールの両

端を地面に差してアーチ状にし、そ

の上からビニールで覆うという内容

だが、作業は効率よく進み、2時

間ほどで終わった。

普段はアルバイトの男性と2人

で作業しているという佐藤さんは

「忙しいピークの時に来てもらえると、

本当にありがたい。やっぱり農業は

人手がないとやっていけない」と訴

える。佐藤さん自身、営農ヘルパ

ーとしても登録しており、「直前に

依頼があったりするが、それはお互

いさまだし、できる時はやっている」

と話す。

JA横浜によると、ボランティア

制度には、農家の人手不足を補

うのはもちろんだが、准組合員から

人材を確保・養成し、新たな担い

手である農業サポーターとして位

置付ける狙いも込められているそう

だ。

◇合併でさらに基盤強固に

JA横浜は4月1日、事業の

効率化などを目指してJA田奈と

正式に合併した。JA田奈は横

浜市緑区と青葉区の一部を営業

地区としており、組合員数は単純

合計で約6万2000人となる。名

称は「横浜農業協同組合」を引き

継ぐ。「横浜はひとつ、JAもひと

つ」をスローガンに行った今回の合

併により、横浜市一円をカバーす

るJA横浜の基盤はさらに強固な

ものになろうとしている。(横浜総

局・沢田昌樹)

<表紙・目次へもどる>

ダイコンの種をまいたあと、ビニールをトンネル

状にかぶせる。中央の男性は畑を所有する佐

藤克徳さん

援農ボランティアの人たちも動員してのダイコン

の種まき作業

Page 14: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 14

アグリ討論席

アグリ討論席

協同組合的経済から脱却を =農業は工業と違うのか=

~川島博之氏、山下範久氏対談~

環太平洋連携協定(TP

P)交渉の漂流が続く一方で、

農協改革はひとまず決着した。た

だ、今回の改革議論では日本の

農業、農村、そして社会にとって農

協(JA)とは何かという本質的

議論はほとんどなかったともいえる。

今後、農協改革の第2幕はあるの

か。日本の農業問題を考える手が

かりを探るため、3月17日号の巻

頭対談に登場いただいた川島博

之・東京大学大学院准教授と、

現代帝国論などで知られる社会・

歴史学者、山下範久・立命館大

学国際関係学部教授に、日本の

経済・社会における農業・農村の

価値について討論してもらった。

(司会=編集長・増田篤)

◇グローバリゼーションと

農業

増田 まず前回の対談の続編

という意味で、グローバリゼーション

と農業について山下さんの考えを

お伺いしたい。

山下 グローバリゼーションとは

人とモノの情報のフローがフラットに

質的、量的に拡大していくプロセス

と考えれば、人類史の全部がグロ

ーバリゼーションと言えなくもない。

今のグローバリゼーションは、今の

技術水準における資本主義経済

のフロンティアの枯渇とセットだ。次

の技術水準を考えた時に拡張す

る先がどれぐらいあるかが問題だ。

グローバリゼーションの危機を説

く時の古典の一つにカール・ポラン

ニーという経済学者がいて、グロー

バルな市場経済においては、「労

働力」「土地」「貨幣」は商品とし

て流通するという擬制商品論を言

っている。労働力の本体は人間、

土地の本体は自然、貨幣の本体

は信用だから、人間や自然、信用

を売るために作れますかと問いかけ

る。市場の需給をスムーズに調整

するということはすなわち人間・自

然・社会の破壊につながる。それ

はできない。そこにグローバル化の

限界があり、この限界に突き当た

ると、市場経済は逆回転始めると

いうのがポランニーの議論だ。彼は

これを大転換と呼んだ。

今起こっている技術革新により、

この三つは今よりもスケールアップし、

柔軟な供給が可能になるかもしれ

ない。生命技術が進歩すれば、人

間の増産、人間の生産の最適化、

自然の増産だってできるかもしれな

い。アベノミクスの金融政策、リフレ

政策は信用の増産だ。情報技術

の進展に伴う経済学や生命技術

の進行は、ポランニー的なグローバ

ル化の限界を突き破ってしまうかも

と考える人たちが出てきている。

川島 グローバリゼーションとは

人間が生まれた時から起きていた。

特に20世紀になって、通信、ヒト、

モノの移動が楽になって、世界が

一つになる現象が起きた。冷戦の

崩壊が大きく、社会主義と資本主

義が約50年間争っていて、1980

年台の終わりに社会主義が負け、

市場主義と民主主義の組み合わ

せが永遠で、人類の発展の最終

段階だというフランシス・フクヤマの

議論が出てきた。

市場も人間が生まれた時から

永遠にある。市場、プラス民主主

義、プラス土着の文化みたいな中

で動いている。日本の農業界が一

番言っているのは、市場と民主主

義はいいが、日本人の魂、固有の

文化も重視してくれということ。わ

れわれは十分にグローバル化にお

付き合いをしていて、モノも輸入し

ているのだから、これ以上、TPP

などでルールを米国に近づけていく

というのは日本文化を米国文化に

近づけることではないかと。昭和期

の「コメは一粒たりとも入れない」と

いう日本の保守主義とレゾナンス

(共鳴)してしまった。

Page 15: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 15

アグリ討論席

◇市場経済と地産地消

増田 農業と市場経済、自由

貿易について議論すると、すぐ地

産地消という話が出てくるが。

山下 市場の本質的機能は需

要者と供給者のマッチングにある。

歴史上さまざまなマ

ッチングの制度はあ

ったが、結局市場に

収斂してきたのが近

代だ。ただ、情報技

術がどんどん発達し

てくると、19~20世

紀に制度化された

市場とは違う形の需給のマッチング

が出てきている。「ウーバー」(スマ

ートフォンを利用したタクシーの配

車サービス)みたいなものも一種

の市場で、これまでのような価格に

よる需給調整というより、評判のす

り合わせだったりする。

環境負荷、鮮度、文化の問題

などあるが、「農業は本質的に工

業と違うのか?」という気持ちの方

が強い。例えば、移動の限界を言

うのなら農業に限った話ではない。

川島 地産地消と言っているの

は、私の知る限りイタリアと日本だ。

中近東の国は食料を輸入しないと

生きていけない。地産地消をしな

ければいけないというのはイデオロ

ギーだ。議論をする前に世界はこう

あるべきだと決めてしまっているから、

妙な議論になる。シンプルにデータ

を見る必要がある。

ただイタリアは微妙だ。ローマ帝

国時代から小麦は作ってきたが、

フランスほどは多くはできない。山が

ちというのは日本と同じ。スローフー

ドとかはイタリアから出てきている。

増田 遺伝子組み換え(G

M)作物では欧州、米国、日本

で価値観の違いが大きいと思う

が。

山下 米国と欧州の対

立は、欧州が米国的な経

済ルールの押し付けに対抗

するために、自分たちでル

ール作りをして、欧州内に

ある種の規制を導入したも

のだ。環境や人権といった

普遍的な合理性を主張した上で

自分たちの市場を守ろうとしている。

米国系の農業化学企業のヘゲモ

ニーを一定程度食い止めたいとい

う戦略性があってやっていると思う。

日本にはそういう戦略性はない。

◇農業の成長産業化と輸出

増田 農業の成長産業化につ

いてはどう考えるか。

川島 農業を成長

産業にと言っても、人

口が増えない限り需

要は増えない。農業

を成長産業にというの

は規模拡大ということ

だろう。

コメの需要量は500万トンぐら

いに減る。今、玄米ベースで1ヘク

タール当たり5トン収穫できる。そう

すると、日本では100万ヘクタール

あればいい。日本では江戸時代か

ら昭和の前期ぐらいまでは水田の

面積は300万ヘクタールあった。そ

の3分の1ぐらいでいいということ。

以前は一家総出でやって、1ヘ

クタールだったから、300万戸の水

田農家があった。100万ヘクタール

でよくなって、規模拡大で少なくと

も1戸10ヘクタールといったら10万

戸で済む。江戸時代の30分の1ぐ

らいでできてしまう。一方、米国は

1戸200~300ヘクタール、欧州

もフランスでは100ヘクタール近く。

日本でも100ヘクタールということ

になったら、1万戸で済んでしまう。

アルバイトを雇っても、農民が数万

人いればできる。

増田 そこで農産物の輸出とい

う話も出てくるが。

川島 実感として日本食は高

所得階層の女性に受けている。ヘ

ルシーだから。例えばベトナムの日

本食レストランでも入っているのは

若い女の子たちだ。ベトナム社会

から見た時の日本へのあこがれは

ある。日本人がパリを見た時のあこ

がれがあり、フランス料理を食べた

いというのと同じ。そういう

需要層でしかない。毎日、

日本の食材を家庭で料理

するようになるとは思わな

い。

ニューヨークや欧州のス

ノッブな人たちの間でもファ

ッションとして、日本食レス

トランははやっている。しかし、フラン

スで日本食レストランを経営しても、

材料費は売上高の10~20%に

すぎない。日本食レストランがはや

り、それを起爆剤にして日本の農

業をと言っても、その程度のもの。

Page 16: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 16

アグリ討論席

山下 範久(やました のりひさ)

〔主な経歴〕

立命館大学国際関係学部教授

東京大学大学院総合文化研究科博士

課程修了

NY州立大学ビンガムトン校でI・ウォーラー

ステインに師事。北海道大学大学院文学

研究科助教授を経て現職

〔主な著書〕

「現代帝国論」(NHK出版)「ワインで考

えるグローバリゼーション」(NTT出版)な

ど、訳書にA・G・フランク「リオリエント」I・ウォ

ーラーステイン「入門世界システム分析」

(ともに藤原書店)など

川島 博之(かわしま ひろゆき)

〔主な経歴〕

1983年3月東京大学大学院博士課程

修了(工学博士)、98年12月東京大

学大学院農学生命科学研究科准教授

〔主な著書〕

「食糧危機をあおってはいけない」(文藝

春秋)「食料自給率の罠」(朝日新聞出

版)「作りすぎが日本農業をダメにする」

(日本経済新聞出版)「データで読み解

く中国経済」(東洋経済新報社)など

◇農業協同組合と日本社会

増田 農協は改革議論で、相

互扶助組織だと主張しているが。

山下 協同組合も利益を追求

しないということではない。労働者

が直接経営に参加することが協同

組合の意味で、経営感覚がなくて

いいわけではない。株式会社では、

株主に責任を負う取締役会が経

営戦略を決める。協同組合の場

合はそれを直接、労働者が経営

戦略を担う。協同組合だから株式

会社と競争しないというのは通らな

い。農本主義的、村社会的な性

格は協同組合そのものの本質で

はない。

川島 日本人は、欧州人とも、

米国人ともすごく違って、特殊だ。

それは、コメを年1作しかできない

北限で作ってきた農業の歴史に由

来する。規則正しくやらなければい

けないから日本人が世界で一番

規則正しい。あと欧州でアルプス

以北に住む人々、そこから移住し

た米国も同様で、規則正しい農

業をやる癖がついた。

実は日本は、コメは適作ではな

い。降雨量が少ないからだ。例え

ばタイには「天水田」というのがあっ

て、雨が降ると水がたまって、それ

を使うとすごく楽だ。日本は必ずど

こかから水を引いてこなければなら

ず、過去二千数百年かけて、地

形を変えてきた。共同作業をしな

いと水を田んぼに引けなかった。隣

の人と仲良くしなければという協調

性が生まれた。そして非常に勤勉

に働かなければならない。水を管

理するために人と協調するのが日

本人の特徴だ。

一方、欧州は遊牧民。一部が

米国に行って西部開拓をやった。

アングロサクソンが中心。遊牧民の

物の考え方は、強いやつの全部取

りだ。米国型資本主義は、欧州

型資本主義以上に弱肉強食がひ

どくなっている。それに対し、日本型

資本主義は、世界の中で一番、

「協同組合的」資本主義だ。隣と

協調しなければいけないので、協

同組合志向が強く、平等志向で、

競争、格差を嫌う。

山下 私は農業と他の産業を

区別して考えることに賛成ではな

い。20世紀前半に農業が工業化

し、20世紀後半に工業が情報化

した。情報化した工業というのは農

業も含んでいるので、農業は情報

産業だと思う。しかし、日本は農

業が工業化したこと、情報化した

ことを認めない。いよいよ立ちいか

なくなって、うわべだけ情報化した

ようなことを言っているのが、成長

産業化だと思う。ただ、個別に成

功している事例はある。

農業に限らず、日本経済が苦

境に陥っているのは、「結果平等

社会主義」で、それが協同組合に

重ねあわされたからだ。江戸時代

から生産者が事実上、経営権を

握っており、「カイゼン経営」そのも

のだ。当時、米国人は日本人の

経営者は多文化経営が得意だと

言っていた。米国では、ホワイトカラ

ーとブルーカラーは別文化に属して

おり、話し合うことなど考えられなか

ったからだ。日本では農村的村社

会がそのまま工場、モノ作りの現場

で、カイゼン経営という形で、自然

に全員参加のコミュニケーションが

実現していた。

しかし今の日本は、そこからさら

に「ソト」へひらく多文化コミュニケー

ションができていない。既存のメンバ

ーだけでやろうとしている。その場合、

農本主義的・村社会的で自衛的

なものにならざるを得ない。このマイ

ンドが変わらないと、情報化した農

業を担うことはできないだろう。

<表紙・目次へもどる>

Page 17: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 17

週間ニュースファイル

週間ニュースファイル (4月13日~19日)

<農林水産行政>

◎TPPに危機感=養豚農

家が都内で街頭活動

(15/04/19)

環太平洋連携協定(TP

P)交渉の日米協議が大詰めを

迎える中、全国の養豚農家らが

19日、東京都千代田区のJR

有楽町駅前で、豚肉関税の大幅

引き下げなどに反対する街頭活動

を行った。北海道から鹿児島県ま

で約40の農家が参加。通行人に

ビラを配り、「国内養豚が壊滅する

恐れがある」などと訴えた。

街頭活動を主催した日本養豚

協会の志沢勝会長は、「50円に

なれば再生産は不可能で、若者

は養豚に夢を持てなくなる」と主張。

千葉県旭市で養豚を営む米本孝

之さん(34)は「今より(豚肉

の)相場が下がるのは確実で、農

家数もかなり減る」と危機感をあら

わにし、「できるだけコストを下げ、

品質の良さなどをアピールするしか

ない」と話していた。

◎機能表示食品、8件受理

=6月から販売可能に-消

費者庁(15/04/17)

健康への効能を事業者の責任

で表示する新たな保健機能食品

「機能性表示食品」について、消

費者庁は17日、事業者からの届

け出のうち8件を受理したことを明

らかにした。機能性表示食品は販

売60日前までの届け出が必要で、

早ければ6月にも店頭に並ぶ可能

性がある。

同庁によると、受理したのはサプ

リメント状の加工食品が6件、ノン

アルコールビールなどの清涼飲料

水が2件。「血糖値の上昇をおだ

やかにする」「肌の潤いに役立つ」

などと表示して販売される見通し。

◎宮城の水産物も要検査

証明=台湾の輸入規制強

化策(15/04/16)

【台北時事】台湾の食品薬物

管理署は16日、5月15日から実

施を予定している日本食品に対

する輸入規制強化策で、放射性

物質の検査証明書の添付義務

対象となる食品リストを公表した。

日本側は「科学的な根拠に基づ

かない措置」として新規制の撤廃

を求めている。

対象となる食品は、(1)宮城、

岩手、東京、愛媛の水産物(2)

東京、静岡、愛知、大阪の茶類

(3)宮城、埼玉、東京の乳製品、

乳幼児向け食品、ビスケット、あめ、

シリアルなどの穀物加工品-の3

分野。またこれとは別に、輸入する

全食品に都道府県別の産地証

明書の添付を求める。

台湾に対する日本の農産物・

食品の輸出額は2013年実績で

約735億円で、香港、米国に次ぐ

規模。

◎ウナギ稚魚養殖16%減

=周辺国不漁で輸入低迷

-水産庁(15/04/16)

水産庁は16日、国内でのニホ

ンウナギの稚魚シラスウナギの養殖

量をまとめた。昨年11月から今年

3月末までにシラスウナギを池で養

殖する「池入れ量」は16.9トンと、

好調だった前年の同期に比べ約

16%の減少となった。稚魚の国内

漁獲量は堅調だったが、台湾や中

国、韓国など周辺国・地域が不

漁で輸入が低迷した。

◎会長選出馬、明言避ける

=飛田JA全中副会長

(15/04/16)

全国農業協同組合中央会

(JA全中)の飛田稔章副会

長(JA北海道中央会会長)

は16日、札幌市内で記者会見し、

万歳章JA全中会長の辞任に

豚肉関税の大幅引き下げが議論されるTP

P交渉への危機感を訴える養豚農家ら=

19日午前、東京都千代田区(時事)

Page 18: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 18

週間ニュースファイル

伴う次期会長選への出馬について、

「(立候補の)権限がないと言え

ばうそになるが、私の去就はどうな

るか分からない」と明言を避けた。

万歳会長の辞任表明については

「私も(事前に)知らなかった。

非常に残念」と述べた。

JA全中は今後、立候補受け

付けなどの手続きを経て、8月の

臨時総会で新会長を選任する方

針。飛田副会長も有力候補の1

人と目されている。

◎日本の新捕鯨計画「不

十分」=IWC専門家会合

が指摘(15/04/13)

国際捕鯨委員会(IWC)

科学委員会は13日、日本政府

が策定した新たな南極海調査捕

鯨計画に関し、専門家会合の報

告書をホームページ上で公表した。

報告書では、捕獲を伴う調査の

必要性の立証が不十分と指摘し、

29項目で追加作業を行うよう勧

告した。

これを受け、記者会見した森下

丈二IWC日本政府代表は「誠

意をもって対応し、必要ならば調

査計画を修正する」と表明。その

一方で、あくまでも今年度からの調

査捕鯨再開を目指す方針を強調

した。

<グローカル>

◎来月に訪台、解除働き掛

け―宮城知事=水産物の

輸入規制で(15/04/17)

宮城県の村井嘉浩知事は17

日、台湾が宮城の水産物も輸入

規制の対象に加えたことについて、

「寝耳に水であり、大変遺憾であ

る」と語り、来月に台湾を訪れ、現

地の経済団体トップに会い、輸入

規制の解除を要請する考えを示し

た。県庁で報道陣の取材に応じ

た。

◎モモ輸出拡大へ産地間

連携=サミットを初開催―

山梨県笛吹市(15/04/17)

モモの産地間連携の促進と輸

出拡大などを目的とした初の「全

国桃サミット」が17日、全国有数

の産地である山梨県笛吹市で開

かれた。山梨県や福島市などの自

治体のほか、モモ農家などが参加

した。発起人の倉嶋清次笛吹市

長は「世界に誇るモモを地球の

隅々に届けてはどうだろうかというこ

とがサミットの趣旨。そのためにも世

界の果物の動向を勉強していこ

う」とあいさつした。

◎食品見本市への出展者

募集=8月に香港で開催

-神奈川県(15/04/15)

神奈川県は15日、香港で8月

に開かれる国際食品見本市「F

OODEXPO2015」の県のブ

ースに出展する事業者を募集する

と発表した。応募は22日まで。出

展料は無料だが、現地派遣費用

などは自己負担となる。

県のブースは日本貿易振興機

構(ジェトロ)のジャパンパビリオン

の一部として設置される。見本市

は8月13日から17日まで開かれ、

このうちジャパンパビリオンが設置さ

れるのは13~15日の3日間。

◎地方創生交付金で給食

材料費補助=奈良県

(15/04/15)

奈良県は、地方創生交付金の

「地域消費喚起・生活支援型」を

活用し、小中学校の学校給食材

料費を補助する。材料費は保護

者負担が基本で、牛乳に限り国

が補助するが、一般的に県の補

助はない。2015年度の関連事

業費は総額3500万円。

具体的には、年に6回までの

「奈良県産農産物の地産地消デ

ー」を設け、その日に提供する給

食の材料費のうち、小学校なら1

食50円、中学校なら1食60円を

補助。対象は市町村立の小中学

校だけではなく、私立や国立の小

中学校も含む。今年9月に始まる

2学期以降、実際に補助を受けた

給食が提供される。

県産食材か県が定める県内特

産品を提供する場合に限り補助。

通常の原材料費にプラスして必要

になる額が対象となり、通常の原

材料費を補うためには使えない。

県内特産品を利用するときは、そ

の原材料が県外産であっても補助

の対象となる。

◎衛生技術開発で東芝と

協定=農産物の高付加価

値化目指す―鹿児島県

(15/04/14)

鹿児島県は、農産物の流通技

術を高めるため、東芝と日本食農

Page 19: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 19

週間ニュースファイル

連携機構と農業分野での技術革

新等に関する連携協定を締結し

た。農業のさらなる発展に向けて

流通技術を革新し、県農産物の

販路拡大や高付加価値化につな

げたい考えだ。

締結は3月31日付。4月に開

設した大隅加工技術研究センタ

ーで、東芝の技術である電解機

能水を用いた殺菌作用や光触媒

を活用した除菌消臭などの衛生

関連技術を流通段階で生かす方

法を研究、実証する。

◎翌日配送、東南アジアま

で拡大=青森県

(15/04/14)

青森県は、ヤマト運輸(東

京)と共同で、西日本への翌日

午前配達や東南アジアへの最短

翌日配送が可能となる事業者向

けの新たな輸送サービス「A!P

remium」を27日から開始

する。スピード輸送と保冷一貫輸

送により、鮮度を保持した付加価

値の高い生鮮品を国内外に届け、

1次産品の販路拡大を目指す。

新サービスでは、ヤマト運輸が

青森―仙台間に新たな陸送ルー

トを設定。この結果、東北地方な

どに限られていた翌日午前中まで

に配達できる範囲が、本州・四国

の全域や福岡県まで広がり、人口

カバー率は7.5%から84.7%に上

昇する。

24時間運営されている全日本

空輸(ANA)の沖縄国際物

流ハブを活用すれば、シンガポール

など東南アジアへの最短翌日配送

も可能になる。

◎「いただきます条例」で特

産品づくり=茨城県守谷市

(15/04/13)

守谷市は4月から、食に関わる

まちづくりの理念を定めた「守谷市

いただきます条例」を施行した。地

元での農畜産物の生産、加工、

販売などの各過程で市民、生産

者、事業者が連携し、地産地消

を推進。地元特産品づくりにつな

げる。同市の産業の柱は農畜産

業だが、特産品と言えるものは見

当たらないのが現状。

<海外アグリ>

◎鳥インフル猛威、七面鳥

に打撃=ニワトリにも感染

拡大-米(15/04/18)

【シカゴ時事】世界最大の鳥肉

生産国である米国で高病原性鳥

インフルエンザが急拡大している。

米国でよく食べられる七面鳥の主

産地の中西部で猛威を振るい、

深刻な影響が出ているほか、ニワ

トリにも感染が広がり始めた。米政

府は封じ込めに必死だが、収束の

兆しは見えず、日本など輸入国は

禁輸措置を強化している。

米農務省は17日、ミネソタなど

中西部3州の六つの七面鳥農場

で鳥インフルエンザが新たに確認さ

れたと発表した。米国では2014

年12月に初めて感染が報告され

て以降、被害は13州に拡大。米

メディアによると、殺処分を含め約

240万羽が死んだとされる。

◎ブラジルで外資の土地

取得制限見直し求める訴

訟(15/04/17)

【サンパウロ時事】ブラジルの大

中規模農家による業界団体は16

日、外国企業による農地取得制

限の見直しを求め、最高裁に訴

訟を起こした。規制は外国からの

投資受け入れの弊害になっている

ほか、農業だけでなく、鉱山や不

動産、自動車メーカーの土地取

得にも悪影響を与えているとした。

業界団体は、農地取得規制が

ビジネスの環境を不安定にさせ、

農業分野などへの長期的な外国

投資を遠ざけていると訴えている。

中国の急激な経済成長を背景

とした世界的な食糧需要の高まり

を受け、ブラジルでは2000年代

後半、中国や米国企業による農

地の買い占めが活発化した。

◎米の有機農産物貿易は

大幅赤字=業界団体が初

調査(15/04/16)

【シカゴ時事】米有機取引協会

(OTA)は15日、米国の有

機農産物貿易に関する調査結果

を初めて公表した。それによると、

米国の農場で飼われる七面鳥=2014

年11月、米メリーランド州フルトン(AF

P=時事)

Page 20: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 20

週間ニュースファイル

2014年の輸入は13億ドルに達し

たのに対し、輸出は5億5000万ド

ルにとどまり、大幅な赤字となった。

急増する国内需要に米農家の生

産が追い付いていないことが明らか

となり、OTAは有機農業の拡大

を促している。

輸入が最も多かったのはコーヒー

の3億ドルで、大豆、オリーブ油、

バナナ、ワインと続いた。米国は世

界最大の大豆生産国だが、9割

以上が遺伝子組み換え品種であ

ることが敬遠されたとみられる。トウ

モロコシの生産も世界最大だが、

輸入も10位と多かった。有機栽

培の大豆とトウモロコシは国産品

の3倍程度で売れているという。

輸出では、リンゴが最も多く、前

年比40%増えた。2位以下はレタ

ス、ブドウ、ホウレンソウ、イチゴの

順だった。

<アグリ・フード産業>

◎ホクト・マレーシア、今夏

から工場見学開始

(15/04/17)

【クアラルンプール時事】ホクトの

マレーシア子会社ホクト・マレーシ

アは、ブナシメジとホワイトシメジ

(ブナピー)を生産しているヌグリ

スンビラン州の工場で、今夏から

一般見学を開始する方針だ。生

産工程を見てもらうことで品質の

良さや安全性を理解してもらい、

販売増加につなげる考え。「食育」

の観点からも低カロリーなど健康的

なシメジを普及させ、マレーシア人

の食生活改善や健康増進に貢献

したい考えだ。

工場は、昨年11月にブナシメジ

とホワイトシメジの生産を開始。2

月から収穫、出荷が順次始まった。

年間650トンのシメジを生産する

計画。

◎カゴメ、米食品会社PBI

を連結子会社化=野菜飲

料販売も検討(15/04/15)

カゴメは15日、米コネティカット

州のエスニック食品会社「プリファー

ド・ブランズ・インターナショナル(P

BI)」の株式の70%を取得し、

5月15日付で連結子会社化する

と発表した。取得金額は8020万

ドル(約96億円)。

PBIは、オーガニック原料を

使ったインドやアジア系エスニック料

理の電子レンジ対応食品などを全

米で販売。インドで業務用冷凍

野菜パイやトマトケチャップの販売

も手掛ける。

カゴメは2008年に米国の野菜

飲料事業から撤退しており、PB

Iの子会社化で米国の消費者向

け食品事業に再参入する。

◎一正蒲鉾、インドネシア

で合弁設立(15/04/14)

【ジャカルタ時事】一正蒲鉾

(本社新潟市東区)はこのほど、

インドネシアの西ジャワ州ボゴール

市で水産練り製品の製造・販売

を行う合弁会社を設立すると発表

した。合弁会社の設立は6月、事

業開始は7月を予定している。合

弁会社の商号は「KMLイチマ

サ・フーズ」。

◎ミツカングループの新博

物館、展示決定=酢運ぶ

大型木造船を再現

(15/04/14)

ミツカングループ(愛知県半田

市)は14日、本社の隣に建設中

の体験型博物館「MIZKAN

MUSEUM(ミツカンミュージア

ム、愛称MIM)」の展示内容

を発表した。同社の酢造りの歴史

が主なテーマで、江戸時代にミツカ

ンの酢を半田市から江戸へ運んだ

大型木造船「弁才船(べざいせ

ん)」を館内に再現するほか、当

時船が通った運河の情景を写真

や音で体感する空間など、五つの

見学ゾーンを設ける。11月にオー

プン予定。

◎昭和電工、ハナム省で植

物工場着工へ=ベトナム

(15/04/13)

昭和電工中国室大メコン圏

(GMS)担当の村上大憲室

長代行(前ベトナム法人社長)

はこのほど、ベトナム北部ハナム省

でマイ・ティエン・ズン共産党省書

記らと会談し、発光ダイオード(L

ED)利用の屋内野菜工場をド

ンバン2工業団地内に建設する計

画について経過報告を行った。村

上氏によると、2016年1月に投

資額100万ドル、面積約600平

方メートルの植物工場実証プラン

トを着工。昭和電工が特許を持

つLED利用の屋内野菜栽培

技術を導入する。(ハノイ時事)

<表紙・目次へもどる>

Page 21: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

仲野 真人(なかの まさと)

〔主な経歴〕

2005年 立教大学経済学部卒業、

野村證券株式会社入社、10年 野村

アグリプランニング&アドバイザリー株式

会社に出向、現在に至る

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 21

アグリ経営塾

アグリ経営塾

農家レストランの成功ポイント =共感生むストーリー、地域特性、おもてなし=

―野村アグリプランニング&アドバイザリー

調査部 上級研究員 仲野真人―

6次産業化によって地域を活性

化するために地域にお客さまを呼

び込む方法として、Agrio38号

(2014年12月2日)で取り上

げた店舗販売の形態の他に農家

レストランという形態がある。全国

には決して交通の便が良いとは言

えない場所でも多くのお客さまが訪

れる農家レストランが数多くある。

一体なぜ、お客さまはわざわざ遠

いところまで足を運ぶのだろうか。

今回、農家レストランの成功ポ

イントとして、①共感を生むストーリ

ー性②地域の特性を活かした料

理形式③心あたたまるおもてなし

―の3点を挙げたい。

◇共感を生むストーリー性

お客さまにわざわざ遠くから自社

の農家レストランに足を運んでいた

だくためには、その地域ならではの

共感できるストーリー性でお客さま

を魅了することが大切である。

三重県多気郡多気町 で

(有)せいわの里が運営している

農家レストラン「まめや」は、名古

屋から電車とバスで2時間以上か

かる中山間地域にある。しかし、こ

の「まめや」に土日祝日には約

170人、平日でも100人が来店

している。「まめや」で提供する料

理の材料の一つである山菜(ふき

のとう、つくし、わらび、よもぎ等)

は地元の子供たちが採ってきたも

のを買い取り提供している。

買い取る際には、例えばつくしの

場合はその鞘(はかま)を取って

くることを条件にしている。その結果、

子供たちは自分の家でおじいさん、

おばあさんから鞘の取り方を教わり

ながら一緒に作業をすることで会

話が生まれ、伝統が引き継がれる

ようにしている。「まめや」ではお客

さまに子供たちが収穫してきた山

菜を見せて説明し、喜んでもらって

おり、また、お客さまが喜んでいるこ

とを子供達に伝えることで子供たち

も地元を誇りに思うようになってい

る。このような地域での取り組みそ

のものが魅力ある「ストーリー性」と

なり、遠方からでもお客さまが訪れ

る付加価値となっている。

◇地域の特性を活かした

料理形式

農家レストランのメニューとして、

有名な肉牛の産地だったり、海が

近く魚介類が豊富に手に入るとこ

ろだったりすれば、それらを目玉商

品に利用することで集客することも

できるが、全ての農家レストランが

そのような恵まれた場所に立地し

ているわけではない。年間を通じて

原材料の安定調達が難しい地域

であっても、それを逆手にとって地

元で手に入る材料にこだわって工

夫をした料理を提供することで、お

客さまがそこでしか味わえない食事

を提供することが可能である。

福岡県の福岡市と北九州市の

中間に位置する遠賀郡岡垣町に

(株)グラノ24Kが運営している

「ぶどうの樹」という健康ビュッフェレ

ストランがある。岡垣町は多種多

様な農産物が収穫できるが、これ

といった特産品がない場所であった。

しかし、グラノ24Kはこの特性を逆

手にとり、減農薬で栽培し、見た

目は悪いが新鮮で味はおいしい野

菜を地元生産者から買い取り、新

鮮な魚介類と一緒にビュッフェ形

式で提供。特に新メニューの開発

Page 22: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 22

アグリ経営塾

においては、定期的に新商品の品

評会を開催している。新商品のレ

シピは、社員であれば担当職務に

かかわらず誰でもエントリーできる

仕組みにしており、品評会では社

員をはじめ取引先の業者や食材

を提供している生産者も試食し、

アンケート結果上位の料理が新メ

ニューとして採用されている。

◇心温まるおもてなし

農家レストランはお客さまを接

客するサービス業(3次産業)で

ある。どんなに素材が新鮮で料理

がおいしくても、店員が無愛想であ

ったり、店内の雰囲気が悪かったり

すればお客さまは気分を害し、再

度来店する可能性は低くなる。そ

のため、お客さまに笑顔で真摯に

接客し、快適に過ごしていただける

ように工夫をすることで、また来店

したいと思ってもらえるようなおもて

なしをすることが大切である。

鳥取県八頭郡八頭町に、鳥取

県内で唯一の平飼養鶏を行って

いる(有)ひよこカンパニーが運

営し、平飼い卵を活かした牧場ス

イーツを提供している「ココガーデ

ン」がある。店内は、2012年11

月にリニューアルし、オープンキッチ

ンでゆったりと席が配置された開放

的な空間となっており、平日の昼

間でも多くの女性が来店している。

また、ハロウィーン等、季節ごとのイ

ベントに合わせて店内を装飾し、

店員もイベントに合わせた衣装や

メークで接客して、お客さまを楽し

ませている。さらに、「ココガーデン」

にはテラス席も用意されており、ペ

ット同伴の来店も可能だ。現代の

家族構成を踏まえて、ペットを含め

た家族みんなで来店しやすい環境

を整えることで地域のふれあいの場

となっている。

◇農家レストランを成功に

導くために

農家レストランというと、古民家

を改装したようなレストランで古くか

らその地元で親しまれている料理

を食べるイメージやビュッフェスタイル

のイメージを持っている人も多いと

思う。しかし、自分が生産している

農産物やその地域性、また誰をメ

―ンのターゲットにするかによって農

家レストランの外観や料理の内容

は全く異なってくる。今回、紹介し

た三つのポイントを活かし、お客さ

まに何度も来店していただけるよう

な「その地域ならでは」の農家レス

トランを展開することが重要であ

る。

◇最後に

これまで、6次産業化の主なビ

ジネスモデルの中から、①農産物

加工②企業との直接取引③店舗

販売④通信販売⑤農家レストラ

ン―を取り上げ、ビジネスモデルご

との「成功ポイント」について、具体

的な事例を交えて紹介してきた。

しかし、6次産業化とはあくまで地

域活性化の手段であり、その取り

組み方法も固定化できるものでは

ない。

多様化している6次産業化の実

行に向けたステップとして、①ビジョ

ンの設定②事業コンセプトの設計

③顧客ニーズ・競合動向の分析

④経営資源の棚卸し⑤基本戦

略の策定・経営課題の抽出⑥実

行計画の作成―を進めていく必

要がある。また、地域の特性を再

認識し、6次産業化によって実現

したい将来の目標・ビジョンに向か

って突き進む実行力が必要であ

る。

<表紙・目次へもどる>

表 農家レストランの成功ポイント

項 目 概  要

共感を生む

ストーリー性

農家レストランの経営にあたっては、アクセスが悪い中で

もお客さまに足を運んでいただく必要がある。わざわざ遠

方からでも来店いただくためには、地域ならではの共感で

きるストーリー性によってお客さまを魅了することが大切

である。

地域の特性を活かした

料理形式

全ての地域が有名な肉牛の産地や魚介類が豊富に手に入る

ところとは限らない中で、地元で手に入る材料にこだわり

工夫をした料理を提供することで、そこでしか味わえない

料理を提供することが大切である。

心あたたまる

おもてなし

どんなに素材が新鮮で料理がおいしくても、店員が無愛想

であったり、雰囲気が悪ければお客さまは再度来店するこ

とはない。お客さまに笑顔で真摯に接客し、快適に過ごし

てもらえるためのおもてなしをすることが大切である。

(出所)野村アグリプランニング&アドバイザリー(株)作成

Page 23: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 23

マーケット情報

マーケット情報

◇東京コメ市況◇

◎〔東京コメ市況〕関東、福島産コシが上昇=注目は15年産米に(4月17日)

スポット市場は、関東および福島産のコシヒカリが上昇。茨城と栃木コシがともに前週末比200円高、福島中

通りコシが100円高となった。

コシヒカリについては、新潟魚沼産、新潟一般など、スポット価格が全国農業協同組合連合会(JA全

農)の相対価格と同水準、またはこれを上回るものが出てきた。関東産コシはもう少し売り物があるほか、価格

的にも相対に比べれば安いため引き合いが強まったとみられる。ただ、上値追いの様子はなく、取引は活発とは言

えないとの声が出ている。

天候の影響で2014年産米の作柄がよくなかった西日本ではコシが少なく、当面コシの騰勢に変わりはないと

見込まれる。しかし、価格水準が上がってきているだけに、量販店でのセール需要が一服してくる可能性がある。

関東産の価格がもう一段上昇すれば、一般家庭用では、やや出遅れ気味の宮城ひとめぼれ、秋田あきたこまち

をはじめとする東北産への銘柄シフトが起こる可能性がある。

ゴールデンウイークの中・外食需要は注目されるが、「関係者の目は2015年産米に向いている。主要産地の

田植えが終われば、天候などを見ながら思惑が広がりやすくなる」(業界関係者)とみられる。

【堂島東京コメ標準品銘柄の現物、先物価格】(カッコ内は前週末比、先物は前日終値)

茨城コシ1万1200円(200円高)▽栃木コシ1万1350円(200円高)▽千葉コシ出来ず(出来ず)

東京当ぎり 8510円/東京先ぎり 8790円

◎東京コメ相場(消費税外出しの仲間渡し、玄米、60キロ/円=4月17日)

※「未検」は未検査米、「---」は出来ず、「#」は置き場渡し

〔2014年産〕

産地 銘柄 等級 中心値 産地 銘柄 等級 中心値

福島(中通り) コシヒカリ 1 10250 北海道 ゆめぴりか 1 13750

茨城 コシヒカリ 1 11200 北海道 ななつぼし 1 11650

栃木 コシヒカリ 1 11350 北海道 きらら397 1 11150

千葉 コシヒカリ 1 --- 青森 つがるロマン 1 9200

新潟(一般) コシヒカリ 1 14850 青森 まっしぐら 1 8900

新潟(魚沼) コシヒカリ 1 19750 岩手 ひとめぼれ 1 10550

富山 コシヒカリ 1 13050 宮城 ひとめぼれ 1 10450

石川 コシヒカリ 1 12750 福島(中通り) ひとめぼれ 1 9600

岩手 あきたこまち 1 --- 山形 つや姫 1 ---

秋田 あきたこまち 1 10700 山形 はえぬき 1 10450

茨城 あきたこまち 1 --- 千葉 ふさおとめ 1 ---

千葉 あきたこまち 1 --- 千葉 ふさこがね 1 ---

群馬 あさひの夢 1 --- 埼玉 彩のかがやき 1 ---

栃木 あさひの夢 1 9250 新潟 こしいぶき 1 ---

Page 24: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

マーケット情報

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 24

Ⓒ時事通信社 ご購読に関するお問い合わせ(業務局) [email protected]

誌面内容に関するお問い合わせ(編集部) [email protected] ●毎週火曜日発行(但し祝日等を除く)●購読料金:月額税抜き 4,000円

---お知らせ---

5月5日(火)は祝日のため休

信します。

◇日農INDEX=日本農業新聞提供◇

◎日農平均価格(4月17日午後5時発表)

価格 前日比 前年比 5年比

野菜(主要 14品目) 212 ▼ 4 △58 △45

果実(主要 12品目) 499 ▼58 ▼21 △14

※価格は円、全国7地区主要卸の当日データを基に野菜と果実の総平均の1キロ当たりの価格を日本農業

新聞が算出、5年比は過去5年平均比

◎NOPIX(日農市況指数=4月17日午後5時発表)

指数 前日比

青果物 109 ▼46

野菜 132 ▼44

果実 73 ▼48

※2000~01年の1日当たり平均販売額を100として日本農業新聞が算出 ◎NOPIXチャート

<表紙・目次へもどる>

<編集後記>

4月21日号の巻頭記事は、農業生産工程管理(GAP)

のうち、世界で普及するグローバルGAPについて専門家に話を

聞きました。日本のGAP制度とは、その基本的な考え方や第

三者認証の有無など相違も大きいとのことで、グローバルGAP

対応を急がなければ、東京五輪で日本食材が使えなくなる可能

性すらあるとの注意喚起には少なくとも耳を傾けるべきでしょう。

トピックスでは、グローバルGAPを導入し、農業フランチャ

イズを展開する松本武氏の先端的ビジネスを紹介。アグリ討

論席は川島博之氏の対談の第2弾で、川島氏は年1作の

コメ作りが現代日本社会の世界における特異性の基底にある

と指摘。山下範久氏も日本では農村的村社会がそのままモノ

作りの現場で、カイゼン経営という形で、全員参加のコミュニケ

ーションが実現したと表現しています。(編集長・増田篤)

Page 25: 『グローバルGAPとは何か』 · PDF fileAgrio 0057 号 (2015/04/21) 2 巻頭記事 巻頭記事 輸出拡大に不可欠な国際標準 グローバルGAPとは何か =日本をガラパゴス

Agrio 0057 号 (2015/04/21) 25

付録

【付録】

要請一覧『農水省3階』

(4月13日~19日通知分)

<予定日、要請者、対応者、要請内容の順>

【16日】

大村 秀章 愛知県知事ほか/林大臣/次世代施設園芸導入加速化支援事業について

【17日】

河野 俊嗣 宮崎県知事ほか/中川政務官/TPP協定交渉に関する要請

尾崎 正道 高知県知事ほか/林大臣/地方創生に向けた攻めの農業への展開、国産材の需要拡大を図

るCLTの推進、漁業の担い手対策の強化ほか

<表紙・目次へもどる>