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1 GaussView Gaussian の基本的な使い方 Gaussian のインプットファイルは gjf という拡張子を持ち、テキストで書かれた以下のような ファイルである。 一行目には chk ポイントファイルの場所や名前の指定、 2 行目には計算方法や基底関数、求めた いプロパティに関する記述、 6 行目の 0 1 の数字は電荷やスピン多重度、そして各原子の xyz 標の情報(デフォルトではÅ単位)で記述されている。(最後の数値はなくてもよい) これらのインプットを自分で文字を用いて作成するのは、少しわかりにくい。そこで Gaussview というプログラムで、視覚的にインプットファイルを作成し、Gaussian のプログラムを流す機 能を利用する。計算で得られるアウトプットファイルは、 chk ファイルと log ファイルという拡 張子を持つ。chk には分子軌道の情報(基底関数や分子軌道係数など)が含まれており、log ファ イルにはその他の多くの計算結果や情報が含まれている。 Gaussview プログラムでは、chk ファイルを読み込むことで、分子軌道を簡単に可視化するこ とができる。また log ファイルを読み込むことで、いくつかの重要なデータを視覚的に表示する ことができ便利である。

GaussView とGaussian の基本的な使い方 - Tokyo ......1 GaussView と Gaussian の基本的な使い方 Gaussian のインプットファイルはgjf という拡張子を持ち、テキストで書かれた以下のような

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    GaussView と Gaussian の基本的な使い方 Gaussian のインプットファイルは gjf という拡張子を持ち、テキストで書かれた以下のようなファイルである。

    一行目には chk ポイントファイルの場所や名前の指定、2 行目には計算方法や基底関数、求めたいプロパティに関する記述、6 行目の 0 1 の数字は電荷やスピン多重度、そして各原子の xyz 座標の情報(デフォルトではÅ単位)で記述されている。(最後の数値はなくてもよい) これらのインプットを自分で文字を用いて作成するのは、少しわかりにくい。そこで Gaussviewというプログラムで、視覚的にインプットファイルを作成し、Gaussian のプログラムを流す機能を利用する。計算で得られるアウトプットファイルは、chk ファイルと log ファイルという拡張子を持つ。chk には分子軌道の情報(基底関数や分子軌道係数など)が含まれており、log ファイルにはその他の多くの計算結果や情報が含まれている。 Gaussview プログラムでは、chk ファイルを読み込むことで、分子軌道を簡単に可視化することができる。また log ファイルを読み込むことで、いくつかの重要なデータを視覚的に表示することができ便利である。

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    分子の構築と構造最適化 水(H2O)分子を GaussView で作り、それを Gaussian(Windows 版)で計算する手順を示す。 ○分子の構築 まず、GaussView を立ち上げたら、左上の 6C ボタンを押す。

    すると、下図のように周期表が現れるので、作りたい分子に必要な原子(ここでは酸素)をクリックし、次い

    で、Atom というボタンを押す。※テンプレートの水分子を用いる場合は、一番右(点線の○) を選択する。

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    青い画面上で一度左クリック。すると酸素原子が1つ配置される。

    水分子を作るには、あと水素原子が必要なので、下の図のようにクリックして水素原子を選択する。

    青い画面にクリックするたびに、原子が加わってしまうので注意。間違えてしまったら Ctrl+z でやり直しができる。また Shift を押しながらマウスでドラッグすると分子全体の平行移動が可能。マウスの中心のポチをくるくるすると、拡大縮小ができるので、やり方を覚えるとよい。

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    この状態で、水素原子を下の図のように配置すれば、水分子が完成する。 ※HO 距離が離れすぎると計算が上手くいかない場合があるので、適度な距離(長くても 2Å程度)に置くこと

    ○Gaussian を使って構造最適化計算 分子を作成した青い画面上で右クリック→Calculate メニュー→Gaussian Calculation Setup…を選択。

    すると下図のようなウィンドウが現れる。Job Type タブでは Opt+Freq を選択。(Optimization とは「最適化」という意味)

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    実験テキストに応じて、Method タブ内(計算方法・基底関数)を変更する。Keywords を確認し、Submit...ボタンを押す。

    すると、下のようなウィンドウが表示される。「計算を行う前に、Gaussian 入力ファイルを保存しなければ いけません。いま、入力ファイルを保存しますか?」と聞かれているので、Save(保存)ボタンを押す。

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    すると、Gaussian 入力ファイルのファイル名を入力するよう要請される。ここでは HF/6-31G で水分子を計算するので、「h2o_hf_6-31g」というファイル名にしよう。なお、拡張子は「.gjf」とする。 ※ファイル名には、全角・/・スペースなどは使用しないこと ファイル名を入力したら、Save ボタンを押す。

    すると、下のようなウィンドウが表示される。YES を選択する。

    自動的に Gaussian が立ち上がり、水分子の計算がスタートする。

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    計算が終了すると、下のようなウィンドウが表示される。「はい」を選択する。

    「入力ファイル h2o_hf_6-31g.gjf に対する Gaussian の計算は終了しました。以下の、計算結果に関するファイルを開くことができます。」と表示されるので、.log のファイルを選択し、Open ボタンを押す。

    ※違う方法でのファイルの開き方 File から Open…を選択する。ファイルを保存した場所を開き、ファイルの種類を Gaussian Output Files にする。ここでは、入力ファイルが「h2o_hf_6-31g.gjf」だったので、「H2O_HF_6-31G.LOG」を選択する。

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    すると、「最適化された」水分子のウィンドウが現れる。 ※Read Intermediate Geometries にチェックを入れると、点線○の箇所が表示される。 1 番目の構造は初期構造で、最後の番号(この場合 8 番目)の構造が最適化後の構造となる。

    最適化後の全エネルギー・電気双極子モーメントの値

    最適化後の構造(8 番目の構造)を選択し、右クリック→Results→Summary...を選択すると、計算条件、全エネルギー[a.u.]、双極子モーメント[Debye]などが表示される。

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    最適化前後の分子構造:結合長、結合角、二面角 分子内の原子間距離や結合角度を調べるためには、まずメニュー内の下のアイコンをクリックする。

    例えば原子間距離なら、原子間距離のアイコンをクリックし、調べたい2つの原子を順にクリックする(下図

    のように色が変わり、番号がふられる)と、その距離が示されたウィンドウが現れる。 ※以下の図では、8 番目が選択されているため、最適化”後”の結合長を確認している。

    結合角度を調べる時も、同様に結合角のアイコンをクリック後、結合角をなす3つの原子を順に(H→O→H)クリックすればよい。

    原子間距離 結合角 二面角

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    構造最適化プロセスにおける全エネルギーの移り変わり(log ファイル) Read Intermediate Geometries にチェックを入れて log ファイルを開いたときのみ、表示が可能となる。 右クリック→Results→Optimization…を選択する。すると、縦軸が全エネルギー・横軸が最適化の step 数の図が表示される。適度な大きさにして、右クリック→Save picture…を選択し、.jpg で保存する。 分子振動と赤外スペクトルの表示(log ファイル) 右クリック→Results→Vibrations...を選択する。下図のように、分子振動の振動数が表示される。Spectra...を選択すると、赤外スペクトルも表示させることができる。

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    標準状態におけるエントロピーと自由エネルギー(log ファイル) 右クリック→Results→View/Edit File を選択。文字列「Thermochemistry」を検索する。ここから、自由エネルギーやエントロピーの値を読みとり、必要に応じて単位の変換を行う。

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    各原子の atomic charge・電気双極子モーメント[Debye]とその向き(log ファイル) 右クリック→Results→Charge Distribution…を選択する。すると、下のようなウィンドウが表示される。Atomic Charges の Show Numbers にチェックを入れると、それぞれの原子に電荷が表示される。Dipole Moment の Show Vector にチェックを入れると、電気双極子モーメントの向きが表示される。

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    分子軌道の表示(chk ファイル) ※linux で流した場合は fchk ファイル 分子軌道を見る際には、「チェックポイントファイル」と呼ばれる、「.chk」拡張子で終わるファイルを開く必要がある。ここでは、入力ファイルが「h2o_hf_6-31g.gjf」だったので、「h2o_hf_6-31g.chk」を選択する。

    chk ファイルを開いた後、右クリック→Tools→MOs…を選択すると、分子軌道の情報を表すウィンドウが現れる。

    各分子軌道は、エネルギー順にソートされ、その軌道エネルギーは原子単位(Hartree 単位)で表示される。また矢印の表されている軌道は占有軌道、それ以外の軌道は非占有軌道を表している。

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    分子軌道の形状を表示するには、Visualize タブをクリックし、表示させたい分子軌道をクリックしていく。(ここでは 1~7 番目までの軌道を選択する) 選択された軌道は図のようにハイライト表示されるので、Add List:の部分が「1a-7a」となっていることを確認し、Update...ボタンをクリックする。

    すると、下図のように分子軌道の形状が表示される。このままでは見難いので、分子軌道の形状表示を変更す

    る。分子軌道の絵を右クリック→View→Display Format...を選択する。

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    新しく現れたウィンドウの Surface タブをクリックし、Format:メニューから Mesh を選択すると、分子軌道が網目状になり、見やすくなる。レポートには、この形状の絵を貼り付けて作成すること。 軌道図の保存は、右クリック→File→Save Image File…を選択。ファイルの種類を.jpg にして保存する。 ※背景を白色にするため、Background Color として白色を選択する。 出来るだけ同じ角度から保存すること。軌道が重なってしまう場合は、少しずらすして保存する。

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    Diagram タブの Save Data…を押しそのままテキストで保存すると、以下のようにエネルギー値が保存される。レポートのエネルギーダイアグラムを書く際に使用する。

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    ○H2O+分子の計算 テンプレートの水分子を選択する。 H2O+分子の場合は、Charge を 1 に変更する。

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    ○TDDFT 法による電子励起状態の計算 まずは、いったん高い対称性(C2v)で分子軌道を作成するために、テンプレートから H2O 分子を作成し、hf/6-31g で改めて構造最適化を行う。(Gaussian では初期構造の対称性を保持して計算が行われるため、初期構造で 2 つの HO 距離が異なる場合、低い対称性のまま計算が進んでしまう) 励起状態の計算(TDDFT)では、得られた対称性の高いアウトプットを用いて、右クリック→Calculate→Gaussian Calculation Setup...を選択。Job Type は Energy のままで、Method タブにおいて下のように設定する。Keywords 欄をしっかり確認後、Submit して計算を行う。 計算結果は、log ファイルで Results→UV-Vis...で表示出来るほか、Results→View/Edit File でも、結果の詳細を見ることができる。なお、f の値は振動子強度(Oscillator Strength)を表している。

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    各分子軌道の既約表現は log ファイルに表示されている。先の演習で得られた分子軌道の図と照らし合わせて、既約表現が一致しているか確認すること。なお C2vの指標表は以下のとおりである。

    さらに、遷移双極子近似において、対称性的に許容な遷移が起こっているかを確認すること。許容でない遷移

    では振動子強度fの値が非常に小さいか 0 になるはずである。 ヒント (基底状態の既約表現)×(x、y、z の既約表現)×(励起状態の既約表現)が全対称 A1にならないと遷移双極子モーメントは 0 になってしまい、遷移が起こりにくい。

    C2v E C2 σv σv’ A1 1 1 1 1 z A2 1 1 -1 -1 B1 1 -1 1 -1 x B2 1 -1 -1 1 y

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    ○ノルボルネンの Diels-Alder 反応における遷移状態を求める計算 遷移状態(TS)は反応系と生成系の反応経路中にある最もエネルギーの高い状態である。反応系と遷移状態のエネルギー差は活性化エネルギーとなり、反応速度を決定するのに重要である。遷移状態は反応座標系にお

    いてエネルギーが極大点になることから、振動解析を行うと一つだけ虚の振動モード(Gaussian では負の振動数)を持つ。したがって、遷移状態かどうか確認するために、振動解析(freq)も併せて行う。 1. TS 構造を求めるための事前の計算 今回取り扱う Diels-Alder 反応の TS 構造においては、新たに生じる C-C 結合長が約 2.1Åになることを利用して、TS 状態に近い安定構造を事前に求める。このとき、新たに生じる C-C 結合の長さを 2.1Åに固定したまま、構造最適化を行う。(opt=modredundant)以下にその概要をまとめる。(動画を参考にすること) まず生成物(今回は exo 体を例にする)の opt 構造をコピーし、あらかじめ立ち上げてある新たな青い画面をクリックして構造をペーストしておく(左図)。上の左図で示してある 4 つの炭素の縦の結合を 2 本、結合を変化させるボタンで None を選んで切っておく。(右図)

    再度1つの CC 結合を選び、Atom1,Atom2 とも Translate groupになっていることを確認して、結合

    長を 2.1Åに変化させて OK を押す。

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    Tools から Redundant Coordinates…を選び、

    Status の下の Add をクリックする。下のタブから Bond を選び、2つの原子を分子中でクリックする

    と、構造を固定したい結合長が選

    択 で き る 。 さ ら に Freeze Coordinate を選ぶ。再度 Add を押し、2 本目の方の炭素-炭素結合を指定することで、2 つの結合長を凍結した構造最適化が可能とな

    る。OK を押す。

    計算詳細設定は左図の通り。結合長を固定した構造最適化を行

    う。今回は低いレベルの計算方法(hf/3-21g)でよい。 Retain を押して名前を付けて Save し、Linux で計算を流す。

    2.実際の TS 構造の計算 上記1の計算で得られた分子の構造を初期構造に用いて、今度は TS の計算を行う。 TS 計算の設定は以下の通り。Job Type で Opt+Freq を選び、下線の個所に注意して指定すること。Methodタブでは基底関数や方法を正しく選択すること。Additional keywords に opt=noeig を追加すること。

    得られた計算結果に関しては、構造最適化がうまくい

    ったか YES が 4 つあるか確認し、負の振動数が一つあるかどうかも確認すること。GaussView で log ファイルを開き、Results の Vibrations…で負の振動数のモードに対応する分子の動きを確認せよ。この動き

    が反応の方向に対応しているか確認する。

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    3.反応座標 IRC 計算 上記 2 の計算で得られた分子の TS 構造をもとに、IRC(Intrinsic Reaction Coordinate)計算を行い、反応物と生成物がきちんと繋がっているかを確認する。Job Type を以下のように変更することで計算可能である。Link0 を適宜変更し、Chem で流す。結果の見方は動画を参考にすること。

    化学専門実験 量子化化学 資料 □水の実験データ

    結合長 R(O-H) 0.958Å 結合角 A(H-O-H) 104.45° 双極子モーメント 1.87 Debye 基本振動数 1597, 3657, 3756 cm-1 イオン化エネルギー 12.62 eV