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GIS GIS GIS GIS を用いた大分市における地価形成要因分析 を用いた大分市における地価形成要因分析 を用いた大分市における地価形成要因分析 を用いた大分市における地価形成要因分析 平成 平成 平成 平成11 11 11 11年度 年度 年度 年度 卒業論文 卒業論文 卒業論文 卒業論文 0736056 0736056 0736056 0736056 黒木勇人 黒木勇人 黒木勇人 黒木勇人

GIS を用いた大分市における地価形成要因分析 - …1.3 研究のフロー 本研究は大きく分けて4段階の構成に分けられる。全体の作業に関するフローチャート

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GISGISGISGIS を用いた大分市における地価形成要因分析を用いた大分市における地価形成要因分析を用いた大分市における地価形成要因分析を用いた大分市における地価形成要因分析

平成平成平成平成11111111年度年度年度年度 卒業論文卒業論文卒業論文卒業論文

0736056073605607360560736056 黒木勇人黒木勇人黒木勇人黒木勇人

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目目目目 次次次次

第1章第1章第1章第1章 はじめにはじめにはじめにはじめに

1.11.11.11.1 研究の目的研究の目的研究の目的研究の目的

1.21.21.21.2 本研究の対象地域本研究の対象地域本研究の対象地域本研究の対象地域

1.31.31.31.3 研究のフロー研究のフロー研究のフロー研究のフロー

1.41.41.41.4 地理情報システム(地理情報システム(地理情報システム(地理情報システム(GISGISGISGIS)について)について)について)について

第2章第2章第2章第2章 データ作成データ作成データ作成データ作成

2.12.12.12.1 本研究で使用したデータについて本研究で使用したデータについて本研究で使用したデータについて本研究で使用したデータについて

2.22.22.22.2 計測方法計測方法計測方法計測方法

第3章第3章第3章第3章 本研究で作成したデータ及び本研究で作成したデータ及び本研究で作成したデータ及び本研究で作成したデータ及び GISGISGISGIS 上で見る大分市の現況把握上で見る大分市の現況把握上で見る大分市の現況把握上で見る大分市の現況把握

3.13.13.13.1 大分市の住宅地地価動向大分市の住宅地地価動向大分市の住宅地地価動向大分市の住宅地地価動向

3.23.23.23.2 大分市の大分市の大分市の大分市の人口人口人口人口及び及び及び及び面積面積面積面積

3.33.33.33.3 家屋の立地状況とインフラ整備状況家屋の立地状況とインフラ整備状況家屋の立地状況とインフラ整備状況家屋の立地状況とインフラ整備状況

第4章第4章第4章第4章 計測・分析計測・分析計測・分析計測・分析

4.14.14.14.1 地価形成要因の取得地価形成要因の取得地価形成要因の取得地価形成要因の取得

4.24.24.24.2 重回帰分析の適用重回帰分析の適用重回帰分析の適用重回帰分析の適用

4.34.34.34.3 数量化数量化数量化数量化理論第Ⅰ類の適用理論第Ⅰ類の適用理論第Ⅰ類の適用理論第Ⅰ類の適用

第5章第5章第5章第5章 シミュレーションシミュレーションシミュレーションシミュレーション

5.15.15.15.1 研究対象地域におけるシミュレーション研究対象地域におけるシミュレーション研究対象地域におけるシミュレーション研究対象地域におけるシミュレーション

第6章第6章第6章第6章 総括総括総括総括

6.16.16.16.1 研究結果を見て研究結果を見て研究結果を見て研究結果を見て

第7章第7章第7章第7章 おわりにおわりにおわりにおわりに

7.17.17.17.1 参考文献参考文献参考文献参考文献

7.27.27.27.2 謝辞謝辞謝辞謝辞

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第第第第 1111 章章章章 はじめにはじめにはじめにはじめに

1.11.11.11.1 研究の目的研究の目的研究の目的研究の目的

1990年年代初頭のバブル崩壊後、下落傾向を見せていた地価もようやく落ち着きを見

せはじめている。そもそも地価は、その土地の立地するポイントの持つ自然的・社会的・経

済的及び行政的なポテンシャルを価格という尺度で表現したものであるが、経済的な分野

からのアプローチによる研究は多く見られるものの、意外にも都市計画的な分野からのア

プローチによる研究は少ない。また、既存の研究においても、大都市を対象としたものやマ

クロ的な視点からの研究は見受けられるものの、地方都市を対象としたものやミクロ的な

視点からの研究は少ない。

地価は、競争市場経済において土地の用途を決定付ける大きな要因になるとともに、都

市計画決定は土地の用途をコントロールするものであることから、都市計画決定案策定に

当たっては土地の価格を形成する要因(以下、地価形成要因と略)について無視すること

は出来ないと思われる。さらに、地価形成要因を分析・把握することで土地価格をベースと

して都市構造を明らかにすることも可能であると思われる。

現在では、高性能なパソコンが安価に入手可能であるとともに、地理情報システム

(Geographic Information System:以下、GIS)の普及により、広範な地域を対象としつつもミ

クロ的な視点による地価形成要因の分析が可能となっている。

そこで本研究では、地理情報システムを用いて、地方都市である大分市を対象としたミク

ロ的な視点による地価形成要因の分析を行うこととする。

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1.21.21.21.2 本研究の対象地域本研究の対象地域本研究の対象地域本研究の対象地域

本研究の対象地域には大分市を採用した。その中でも、なかなか入手が困難な地価の

データを比較的豊富に(計 161 ポイント)収集することが可能であった都市計画区域内のい

わゆる住居系用途地域(第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域・第1種中高

層住居専用地域・第2種中高層住居専用地域・第1種住居地域・第2種住居地域・準住居

地域)に対象を絞って分析を行った。図1-1における着色部が研究対象地域であり、図1

-2に収集した価格ポイントを示す。

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図図図図1-11-11-11-1 研究対象地域研究対象地域研究対象地域研究対象地域

図1-2図1-2図1-2図1-2 地価ポイントの分布地価ポイントの分布地価ポイントの分布地価ポイントの分布

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1.31.31.31.3 研究のフロー研究のフロー研究のフロー研究のフロー

本研究は大きく分けて4段階の構成に分けられる。全体の作業に関するフローチャート

は図1-3のとおりである。以下、それぞれの作業について簡単に記述する。

まず第1段階として、土地の価格に影響を与えうる多様な要因を計測・解析するために、

大分市全域に渡り行政的情報・環境的情報・インフラに関する情報等を、位置を持った図

形情報とそれぞれの図形に付与された属性情報とで構成される地理情報システム上のデ

ータとして作成した。

次に第2段階として、第1段階で作成されたデータを利用し、Informatix 社の GIS ソフト

SIS 上で SIS の持つ基本機能及び Microsoft 社の Visual Basic で作成したカスタマイズプ

ログラムを利用して、各種の土地の価格に影響を及ぼすと考えられる要因を計測、解析し、

地価データベースを構築した。

第3段階では、上記で構築した地価データベース内のデータを SPSS 社の SPSS 及び

Microsoft社の Excelにて重回帰分析・数量化理論第Ⅰ類を適用することにより大分市にお

ける地価構造を表す地価モデルを導出した。

そして第4段階として、本研究の対象となった地域に以上の地価モデルを当てはめ、シミ

ュレーションを行った。

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図1-1 研究のフローチャート

図1-3図1-3図1-3図1-3 フローチャートフローチャートフローチャートフローチャート

地図データの作成

GIS ソフト SIS にゼンリン社の

Z-Map TownⅡを読み込み、こ

れをベースマップとして地図デ

ータを作成する

属性データの作成

地図データ上の各ポリゴン・ポ

イント・ラインデータにそれぞれ

に関する属性情報を付与

地価データベースの構築

SIS の基本機能(図形間の位相関係を利用した空間解析機能やテーブル操作等)及

び Visual Basic によるカスタマイズプログラムにより計測・解析作業を行い、得たデー

タを収集した価格データの位置に作成した家屋形状ポリゴンにリンクされたテーブル

に格納

地価モデルの導出

上記のデータに対して重回帰分析・数量化理論第Ⅰ類を適用し、地価を予測する式を

算出

シミュレーション

算出された地価モデルを研究対象地域内に存在する各家屋形状ポリゴンに適用する

ことで大分市の広範囲にわたりシミュレーションを実施

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1.41.41.41.4 地理情報システム(地理情報システム(地理情報システム(地理情報システム(GISGISGISGIS)について)について)について)について

地理情報システムとは、土地利用、資源、環境、交通、都市施設、マーケティング等といっ

たものの意思決定を支援する目的で、位置情報をもったポイント・ライン・ポリゴン等の図形

情報に対して属性情報が付与されるとともに、それらがリンクしているという地理的な空間

データの入力、格納、検索、計測、分析及び出力を行う情報システムのことをいう。

GIS を構成するものは、コンピュータシステム・地理空間データ・それらの利用者であり、

利用者がこれらのデータ、システムを用いて入力、計測、分析、出力といった作業を通じて

利用目的に合った意思決定支援のために必要な情報を抽出する。

本研究では、多様な情報を大分市全域に渡って構築したのであるが、それらは先述のと

おりGISソフトであるSISを用いて地理空間情報として位置情報を取るとともに、属性情報を

付与し、計測・管理を行っている。作業画面を図1-4に示す。

GIS で構築される地理空間データには大きく分けて、ポイント、ライン、ポリゴンの図形3要

素があり、それらはいずれも形や大きさ、位置と方向、位相関係を持っており、ラスターデー

タとベクトルデータのいずれかの形式で表現される。

ラスターデータは2次元平面を必要な大きさのメッシュに分割し、それら1つ1つのメッシュ

に対して属性を付与するもので、いわゆるメッシュデータである。画像データもこの中に含ま

れ、広範に渡る分析などが行いやすい等のメリットがあるが、データ量が大きくなりやすい

といったデメリットもある。一方、ベクトルデータは、地理空間を点(ポイント)、線(ライン)、

面(ポリゴン)で表現し、高い精度でデータの構築が可能であるというメリットともにデータの

構築が容易でないというデメリットもある。これらのデータ形式は利用目的によって選別、併

用すべきであり、それぞれのメリット、デメリットを考慮する必要がある。本研究では、計測

の作業がメインとなるためベクトルデータでデータ構築を行った。

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図図図図1-41-41-41-4 作業画面作業画面作業画面作業画面

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第2章第2章第2章第2章 データ作成データ作成データ作成データ作成

2.12.12.12.1 本研究で使用したデータについて本研究で使用したデータについて本研究で使用したデータについて本研究で使用したデータについて

本研究では市販の地図データをベースマップとし、そこに作成したデータ、入手したデ

ータを重ね合わせて管理、分析を行った。

地図データは、大分市を対象とした詳細な市販データはほとんど整備されていない中、

ほぼ唯一大分市をカバーしているといってよい(平成 11 年現在)ゼンリンの電子地図

Z-Map TownⅡをベースマップとした。この Z-Map TownⅡは、ベクトルデータを主とした

もので、位置精度は約 1500 分の 1 である。多様なレイヤで構成されており、計測作業

を伴う本研究のベースマップとするに十分であると考える。Z-Map TownⅡでは、行政

界が紙面のゼンリン住宅地図と同じ区割りでポリゴン化されており、それぞれに県、市

町村、大字、町丁目、街区毎にユニークなコード番号が属性情報として付与され、管理

されている。

この Z-Map TownⅡをベースマップとしつつ、大分市の都市計画図、都市ガスの供給

区域図をスキャニングし、SIS 上でトレース及び幾何補正をした後、データを重ね合わ

せた。

また、人口データとして平成 7 年度国勢調査のデータを当該データの位置座標に基

づき重ね合わせるとともに、地価データとして、平成 11 年度地価公示価格及び同年度

の都道府県地価調査価格のデータを用いた。地価データは 2 種類のデータが混在して

いるが、これらの価格は同様の手法にて算定されているとともに、都道府県地価調査

が地価公示価格のタイムラグを埋める意味合いも持っていることに照らし問題ないと思

われる。

本研究で使用したデータの一覧及びレイヤ構成は次の図 2-1、表 2-1のとおりであ

る。なお、全レイヤごとの各図形に ID が付与され、名称があるものにはそれぞれに名

称を付与してある。

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建物ポリゴン

用途地域ポリゴン

都市ガス供給地区ポリゴン

行政界ポリゴン(大字単位)

地価データポイント

銀行ポイント

郵便局ポイント

小学校ポイント

公園ポイント

駅ポイント

バス停ポイント

市役所(都心の位置を示す)ポイント

市役所の支局(副都心の位置を示す)ポイント

高速道路 IC ポイント

国勢調査ポイント

道路ラインデータ

図図図図 2222----1111 レイヤ構成レイヤ構成レイヤ構成レイヤ構成

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表表表表 2222----1111 レイヤ構成と属性情報レイヤ構成と属性情報レイヤ構成と属性情報レイヤ構成と属性情報

レイヤレイヤレイヤレイヤ 属性属性属性属性 アイテムアイテムアイテムアイテム 建物ポリゴン 大字名 217260

用途地域ポリゴン 用途地域名 容積率(%) 建蔽率(%) 1都市ガス供給地区ポリゴン 都市ガス供給の有無 1

行政界ポリゴン 大字名 面積(㎡) 276地価データポイント 価格種別 価格(\/㎡) 大字名 161

銀行ポイント 銀行名 140郵便局ポイント 郵便局名 64小学校ポイント 学校名 51公園ポイント 公園名 452駅ポイント 駅名 15

バス停ポイント バス停名 1354市役所ポイント 市役所名 1

市役所の支所ポイント 支局名 6高速道路 IC ポイント IC 名 5国勢調査ポイント 人口(人) 世帯数(戸) 6139

道路ラインデータ ID ???

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2.22.22.22.2 計測方法計測方法計測方法計測方法

各図形に付与された属性及び本研究で行った計測に関しては、Visual Basic によるカスタ

マイズプログラムを SIS 上で動作させることで行っているが、面積の計測については通常考

えられるとおりであり、包含関係については、面と点、面と面いずれの場合も基準図形に対

して対象図形の原点が含まれるか否かで判定した。また、距離の計測に関しては、より現

実に近い計測を行うため、位相関係を持ったトポロジーデータとして道路データを構築し、

道路に沿ったネットワーク距離を計測した。

ネットワーク距離の計測について本研究での方法を図 2-2 に簡単に図示しておく。

なお、計測の前提条件として、以下の4点を以下に箇条書きにしておく。

前提条件

① 小学校の距離の計測に関しては、学区が変動的であるとともに未確定な地域も現存す

るため、あくまでも 近隣のものという前提で計測した。

② バス停に関しては複数の路線で複数のバス停が存在する場合、もしくは上りと下りで道

路の両側に存在する場合には、そのすべてをプロットしており、いずれか近い方の距離

を計測した。

③ 公園については、あらゆる公園を抽出してあり、 近隣のものを計測した。

④ 駅については、大分市には駅に複数の入口を持つものがないことから、駅の実際の入

口を考慮して計測する。

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図図図図 2222----2222 ネットワーク距離の計測ネットワーク距離の計測ネットワーク距離の計測ネットワーク距離の計測

距離の計測距離の計測距離の計測距離の計測(本研究では 短距離のみを計測)

①①①① 基準図形から も近いリンクを探す基準図形から も近いリンクを探す基準図形から も近いリンクを探す基準図形から も近いリンクを探す

②②②② そのリンク上の途中の点からが始点となるそのリンク上の途中の点からが始点となるそのリンク上の途中の点からが始点となるそのリンク上の途中の点からが始点となる

③③③③ 対象図形の も近いリンクを探す対象図形の も近いリンクを探す対象図形の も近いリンクを探す対象図形の も近いリンクを探す

④④④④ そのリンク上の途中の点が終点となるそのリンク上の途中の点が終点となるそのリンク上の途中の点が終点となるそのリンク上の途中の点が終点となる

⑤ 始点から終点に向かってリンク上沿いにノードを伝って計測する始点から終点に向かってリンク上沿いにノードを伝って計測する始点から終点に向かってリンク上沿いにノードを伝って計測する始点から終点に向かってリンク上沿いにノードを伝って計測する

このようにすることで高架道路、鉄道、橋等を考慮した計測が可能になる

ノード無し

ノード有り

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第3章第3章第3章第3章 本研究で使用したデータ及び本研究で使用したデータ及び本研究で使用したデータ及び本研究で使用したデータ及び GISGISGISGIS 上で見る大分市の現況把握上で見る大分市の現況把握上で見る大分市の現況把握上で見る大分市の現況把握

3.13.13.13.1 大分市の住宅地地価動向大分市の住宅地地価動向大分市の住宅地地価動向大分市の住宅地地価動向

バブル崩壊後、全国的に急激な下落傾向を見せていた地価であるが、大分市においても

例外ではなく、少々のタイムラグを見せるものの同様の傾向をたどっていた。その下落傾向

も大都市圏では下落傾向の拡大が少々見られるものの、大きな変動はあまり見られない。

ここ 3 年間の大分市の住宅地地価動向(表3-1)を見てみると、平均としてはほぼ横ば

いあるいはやや下落といった傾向を見せている。しかし、 高価格、 低価格ともに大きな

変化が見られないことから概ね安定傾向にあるといえる。

1997 年度 1998 年度 1999 年度

平均 75,696 76,490 76,926

高価格(\/㎡) 200,000 200,000 199,000

低価格(\/㎡) 27,900 27,900 27,900

対前年度比 △ 1.04 △ 0.57

表3-1表3-1表3-1表3-1 過去過去過去過去 3333 年間の住宅地地価推移年間の住宅地地価推移年間の住宅地地価推移年間の住宅地地価推移

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3.23.23.23.2 大分市の人口及び大分市の人口及び大分市の人口及び大分市の人口及び面積面積面積面積

大分市は平成7年度国勢調査によると、総人口 426979 人、総世帯数1158310 戸、総面

積 360.76k ㎡で構成されている。人口40万を超える中核都市であり、大分県における産業

経済の中心を担う市である。

本研究では、上記の平成7年度国勢調査に基づいて人口や世帯に関するデータを大字

単位で構築している。なお、Z-Map TownⅡ上で確認された大分市における全大字数は 276

であり、平均面積約 1.92k ㎡であった。

また、大分市の都市計画決定に基づく用途地域について、本研究では25000分の1都市

計画図をスキャニングし、デジタル化したものを幾何補正にかけ SIS 上でトレースしたベクト

ルデータとして使用しているが、このデータを用いて計測した結果を図3-1及び表3-2に

示すとともに、先にあげた国勢調査データ、Z-Map TownⅡを使用した大分市における人口

密度分布図、世帯密度分布図を図3-2、3-3に示す。

これらの図を見比べるとわかるが、大分市の人口は用途地域の区分図とほぼ重なるよう

にして高密な地区が分布しており、その中でもやはり大分市街中心部から明野、鶴崎、大

在、坂ノ市といった、大分市街中心部を都心部と呼ぶなら副都心部ともいえる地域にかけ

て帯状に特に高密な分布が見られる。また、やや郊外のほうへ目を向けると、緑ヶ丘、寒田

等といった大規模な宅地開発が行われた所にも点在的に人口の集中が見られる。

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図3-1図3-1図3-1図3-1 大分市の用途地域区分図大分市の用途地域区分図大分市の用途地域区分図大分市の用途地域区分図

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表3-2表3-2表3-2表3-2 用途地域区分毎の面積用途地域区分毎の面積用途地域区分毎の面積用途地域区分毎の面積

用途地域区分用途地域区分用途地域区分用途地域区分 面積面積面積面積((((kkkk ㎡㎡㎡㎡))))

第 1種低層住居専用地域 21.92

第 2 種低層住居専用地域 0.23

第 1種中高層住居専用地域 3.63

第 2 種中高層住居専用地域 1.07

第 1種住居地域 1.72

第 2 種住居地域 0.08

準住居地域 0.24

近隣商業地域 0.85

商業地域 3.41

準工業地域 2.47

工業地域 0.13

工業専用地域 11.47

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図3-2図3-2図3-2図3-2 大字単位の人口密度分布大字単位の人口密度分布大字単位の人口密度分布大字単位の人口密度分布

1ドットにつき 10 人/k ㎡

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図3-3図3-3図3-3図3-3 大字単位の世帯密度大字単位の世帯密度大字単位の世帯密度大字単位の世帯密度

1 ドットにつき 1戸/k ㎡

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3.33.33.33.3 家屋の立地状況とインフラ整備状況家屋の立地状況とインフラ整備状況家屋の立地状況とインフラ整備状況家屋の立地状況とインフラ整備状況

大分市におけるインフラ整備状況を示すものとして、都市ガスの供給区域を示すポリゴン

データ(大分地区中圧導管図を参照)、ネットワーク距離を計測するための道路トポロジー

データを作成した。なお、都市ガスの供給区域を示すポリゴンデータ(以下、都市ガス供給

区域ポリゴンと略す)は、用途地域区分図同様スキャニングしたものを SIS 上で幾何補正、

トレースすることで得た。

また、家屋のポリゴンについては Z-Map TownⅡのレイヤから学校や大規模店舗等から

なる目標建物形状ポリゴン及び通常の住宅等からなる一般建物形状ポリゴンをそれぞれ

抽出して使用した。この中から研究対象となるのは宅地であることから、一般建物形状がこ

れにあたる。これら一般建物形状を表示させたものを図3-4に示すとともに、大分市にお

ける家屋の立地状況を見る。

大分市の家屋の立地状況は、大分市中心部及び郊外の宅地開発された個所に集中的

に見られる他、大分川、大野川沿いに多く立地が見られるのが特徴であるといえる。

道路トポロジーデータは、Z-Map TownⅡ上のレイヤに存在するおよそ2m 以上の幅員を

持つ道路についてはすべて網羅した。ただし、高速道路については日常の交通手段として

高速道路を頻繁に利用することは考えにくいので、トポロジーデータとは位相関係は持って

おらず、単なるラインデータとして構築してある。

まず、大分市における都市ガスの供給状況であるが、供給対象地区としては図3-5に

示すとおりである。供給区域の総面積は約 75.2k㎡であり、大分市全域の約 20.3%をカバー

している。先の用途区域区分図及び人口、世帯密度の分布図とかなりの部分で重複が見

られ、その地域の発展度が伺える。ただ、若干異なるのは、郊外の人口集積が見られた宅

地開発地にはその供給区域が至っていないことである。

一方、道路については、その総延長距離が 6514.3 ㎞であり、山間部を除いて大分市のほ

ぼ全域を網羅しているが、大分市はその市域が大分市街地中心部から見て東部、南部が

川に分断されるという地形をとっており、郊外の住宅地からのアクセスには橋が重要なキー

ポイントとなっている。また、大分市は都市部に比較すると電車やバスの利便性が低いこと

から、日常的な交通手段として自動車によることが多いと考えられ、より一層都心部とのア

クセイシビリティが地価形成にも影響してくることが予想される。道路トポロジーデータにつ

いては図3-6に図示してある。

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図3-4図3-4図3-4図3-4 家屋の立地状況家屋の立地状況家屋の立地状況家屋の立地状況

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図3-5図3-5図3-5図3-5 大分市における都市ガス供給区域大分市における都市ガス供給区域大分市における都市ガス供給区域大分市における都市ガス供給区域

図3-6図3-6図3-6図3-6 大分市の道路網大分市の道路網大分市の道路網大分市の道路網

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第4章第4章第4章第4章 計測・分析計測・分析計測・分析計測・分析

4.14.14.14.1 地価形成要因の取得地価形成要因の取得地価形成要因の取得地価形成要因の取得

前章までのでデータを加工するとともに、Visual Basic によるカスタマイズプログラムを作

成することにより、GIS 上で取得しうる地価形成要因を取得するべく計測、分析を行った。

まず、データの加工として国勢調査のポイントデータを人口、世帯数それぞれについて大

字単位に集計を行うとともに、一般建物形状ポリゴンの数、面積についても同様に集計をし、

人口密度(人/k㎡))、世帯密度(戸/k㎡)、一般建物占有面積(%)を各大字のポリゴンに属

性として付与した。人口密度、世帯密度それぞれ関連のありそうなものを両方とも集計した

のは、他地域に比べて人口密度に対する世帯数の割合が高い地域が出てくるのではない

かと予想されるからである。このような地域は1世帯あたりの人口が多いということになり、

家族の形態を多くがとっているため、その土地利用もいわゆる一戸建て住宅の様相を示し

ているのではないかと考えられるからである。このような地域とマンション等が多く建ち、土

地の高度利用が進んでいる地域とでは価格帯が異なるのではないかと予想される。

また、一般建物占有率とは、その地域(大字)の面積に対してどの程度の割合一般建物

形状ポリゴンが占めているかというものをあらわすものであり、該当する大字に含まれる一

般建物形状ポリゴンの合計面積を当該大字面積で除することにより求めた。これは、

Z-Map TownⅡの特性を生かして求めようと考えた指標である。GIS 上で敷地形状、面積を

対象とするには通常、500分の1程度もしくは1000分の1程度の精度が必要とされるとい

われるが、このような地図は市販されておらず、また、作成されていても対象とするのは限

られた範囲に関してだけである。しかし、その地域にどの程度密に建物が建っているかとい

うのはその地域の熟成の度合いとの関係があることが考えられる。Z-Map TownⅡは、航

空写真をベースに家屋形状をトレースして作成されているものであるため、敷地形状の代

用としてこの家屋形状ポリゴンの面積を計測したのである。さらに、Z-Map TownⅡでは、居

住者情報が各家屋形状に付与されており、学校等の目標となる建物と住宅等の一般の建

物がレイヤ分けされているので都合がよい。

このようにして属性を付与した大字界のポリゴン(以下、行政界ポリゴンという)、当該地

域の容積率(%)、建蔽率(%)を属性として付与した用途地域ポリゴン、都市ガス供給区域ポ

リゴンを重ね合わせ、これらとの包含関係で地価ポイントデータに用途地域、容積率、建蔽

率、都市ガスの有無、人口密度、世帯密度、一般建物占有率を地価形成要因として取得さ

せ、ポイント毎に GIS 上で管理した。

次に、道路トポロジーデータを利用した距離の計測を行った。計測の基準は先述したとお

りであるが、精度を高めるため、各ノード間を20m 以下になるよう分割した。

地価ポイントデータからの距離計測の対象となったのは、都心部、副都心部、小学校、公

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園、駅、バス停、銀行、郵便局である。それぞれについて、道路網に基づくネットワーク 短

距離を計測した。なお、都心への距離は都市中枢機能を代表するポイントとして大分市役

所の位置を基準とし、副都心に関しては、明野、鶴崎、大在、大南、坂ノ市、稙田それぞれ

大分を区分分けする際によく用いられる地区を副都心と想定し、その位置は、大分市役所

の支所もしくは出張所で計測した。

計測、分析を行った地価形成要因について次の表4-1にまとめる。

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表表表表4-14-14-14-1 地価形成要因一覧地価形成要因一覧地価形成要因一覧地価形成要因一覧

取得した地価形成要因一覧取得した地価形成要因一覧取得した地価形成要因一覧取得した地価形成要因一覧

中枢機能へのアクセシビリティ中枢機能へのアクセシビリティ中枢機能へのアクセシビリティ中枢機能へのアクセシビリティ

・ 都心への距離(都心への距離(都心への距離(都心への距離(mmmm))))

・ 副都心への距離(副都心への距離(副都心への距離(副都心への距離(mmmm))))

サービス機能へのアクセシビリティ

・ 郵便局までの距離(郵便局までの距離(郵便局までの距離(郵便局までの距離(mmmm))))

・ 銀行までの距離(銀行までの距離(銀行までの距離(銀行までの距離(mmmm))))

オープンスペースへのアクセシビリティオープンスペースへのアクセシビリティオープンスペースへのアクセシビリティオープンスペースへのアクセシビリティ

・ 公園への距離(公園への距離(公園への距離(公園への距離(mmmm))))

・ 小学校への距離(小学校への距離(小学校への距離(小学校への距離(mmmm))))

交通の利便性交通の利便性交通の利便性交通の利便性

・ 駅への駅への駅への駅への距離(距離(距離(距離(mmmm))))

・ バス停への距離バス停への距離バス停への距離バス停への距離

地域の熟成度地域の熟成度地域の熟成度地域の熟成度

・ 人口密度人口密度人口密度人口密度((((人人人人/k/k/k/k ㎡㎡㎡㎡))))

・ 世帯密度世帯密度世帯密度世帯密度((((戸戸戸戸/k/k/k/k ㎡㎡㎡㎡))))

・ 一般建物面占有率一般建物面占有率一般建物面占有率一般建物面占有率((((%%%%))))

・ 都市ガス供給の有無(ダミー変数)都市ガス供給の有無(ダミー変数)都市ガス供給の有無(ダミー変数)都市ガス供給の有無(ダミー変数)

行政的規制行政的規制行政的規制行政的規制

・ 容積率容積率容積率容積率((((%%%%))))

・ 建蔽率(建蔽率(建蔽率(建蔽率(%%%%))))

・ 用途地域区分(ダミー変数)用途地域区分(ダミー変数)用途地域区分(ダミー変数)用途地域区分(ダミー変数)

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4.24.24.24.2 重回帰分析の適用重回帰分析の適用重回帰分析の適用重回帰分析の適用

4.1で取得した地価形成要因をもとに、本項では大分市の地価特性を明らかにするとと

もに都市計画案策定支援に役立つ地価モデルを導出するため、重回帰分析を行った。

分析にあたって、人口密度と世帯密度に高い相関関係が見られたため、共線性の問題を

避けるため、両変量に関しては選択的に適用することで地価モデルを導出した。また、容積

率、建蔽率はほぼ用途地域区分により決定付けられることから、容積率、建蔽率、用途地

域区分のダミー変数についても選択的に適用した。共線性の問題を避けつつ、地価への影

響の程度が過度に低い変量について考慮した導出された結果は表4-2に示すとおりであ

る。

寄与率R、重相関係数R₂、自由度調整済み重相関係数係数いずれも高い値を示しており、

導出された地価モデルの当てはまりの良さを表している。

Y=89464.203-4.502X₁+9.396X₂+8328.747X₃-3.337X₄+84.785X₅-12.392X₆-2.761X₇-4.953X₈

-0.744X₉という地価モデルが得られたわけだが、先の寄与率、自由度調整済み重相関係数

のみからだけではなく、非常に現実的な大分の地価形成の特性を表していると思われる。以

下に導出された地価モデルについて考察をしていくことにする。

まず、一番大きな影響力を持っているのは標準化係数を見てもわかるとおり都心への距

離である。大分市は市役所近辺を中心とする中央町、府内町、大手町、荷揚町といった地

区に行政、金融、商業等の都市中枢機能が集中しており、他にこれを完全に代替しうるほ

どの地区は存在しないのが現状であり、いわゆる一極集中型の都市形勢を見せている。従

って、都心部の持つ求心性が非常に強いと思われ、このような結果が出たと想像がつく。ま

た、本研究では距離の計測を直線距離ではなく道路ネットワーク距離で計測したことも、こ

のような大分市の地価形成の特性を反映した結果をもたらしたと思われる。前章までで述

べたとおり、大都市圏に比較して鉄道、バス等といった交通手段の利便性が低いため自動

車が交通の中心となっている大分市においては、市場原理が働き地価の形成がなされて

いく過程で都心部へのアクセスを通常人が考慮する場合、移動コストを考えるのが現実で

あり、道路ネットワーク距離はこの移動コストを直接的に表すものであるからである。従って、

ミクロ的に現実の都心からの距離による地価の分布を見ると、きれいな同心円を形成する

のではなく、都心部からの等時線に近い分布をするはずである。そういう意味ではこの地価

モデルはより現実的であるといえる。

次に世帯密度が大きな影響を及ぼしているが、住宅地においてある程度の人口の集積な

くして地価の上昇はあり得ないことから、世帯密度の上昇に対して地価が正の相関を示す

ことはうなずける結果である。また、本研究の地価モデル導出過程で人口密度を採用した

場合より世帯密度を採用した場合のほうが寄与率、自由度調整済み重相関係数が上昇す

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るということが見られたが、これに関しては思うに、市場において住宅地の需要主体となる

のは人一人の単位ではなく世帯が一つの単位であることからこのような結果が生じたもの

と思われる。

都市ガスの有無が3番目に大きな影響をもっているが、都市ガスの普及の程度を考える

にこのような結果が生じたものと思われる。

副都心への距離についていえば、先の都心への距離の影響の大きさを鑑みるに、必ずし

も副都心としての機能を果たしているとはいいがたいものの、ある程度はその機能を有して

いることが、あくまで地価ベースの話ではあるがこの地価モデルからいえる。また、明野、

鶴崎、大在、坂ノ市、稙田、大南地区といった地区分けを大分市ではなされることが多いが、

このことをよく反映していると思われる。

容積率は、土地への建築可能性を決定付ける大きな要因であり、高度利用が可能な土

地ほど高い地価が形成されることが地価との正の相関関係及びその影響力から見てとれ

る。

その他の 寄の公園までの距離、 寄駅までの距離、 寄の小学校までの距離、 寄

のバス停までの距離については影響の程度は小さいまでも、地価と負の相関が見られるこ

とから、それらへの距離が遠くなる程地価の逓減が生じることが地価モデルとして反映され

る結果が出ている。意外だったのは、鉄道よりもバスの利用が大分市では盛んであろうと

予想していたためバス停までの距離が 寄駅間での距離よりも影響が少なくなったことで

ある。しかし、これについても、駅前には商店街が形成されることを考えれば納得のいくこと

である。

そして何より特筆すべきことは、この地価モデルが通常考えられる地価形成を如実に反

映していることである。常識的に考えると、通常人が不動産市場に参加した場合、行政、業

務、商業等の中枢機能を有した都心部への移動コスト、それを代替する地区へのアクセス

の良さ、その土地にどれだけの建物が建築可能であるか、その土地はインフラの整備がな

されているか、といった大分類から大まかな地価を想定し、住宅地ではそこからプラスアル

ファとして近隣にオープンスペースは確保されているか、交通利便性はどうかといったこと

が考慮されると思われる。本研究の地価モデルは、その各変量の影響の程度、その地価と

の相関関係からいって、この地価形成のフローに基づいたものが導出されているといえる。

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4.34.34.34.3 数量化理論第Ⅰ類の適用数量化理論第Ⅰ類の適用数量化理論第Ⅰ類の適用数量化理論第Ⅰ類の適用

次に、先に求めた地価モデルを参考にして、対象地域に対してシミュレーションを行うため

のモデルとして数量化理論第Ⅰ類を適用した地価モデルを導出する。

重回帰分析の適用により導出された地価モデルは、道路ネットワーク距離が連続変量で

あることをきちんと反映したより細かい精度で地価を算定できるものであるが、広範囲に渡

ってそれを適用することは、その計算量の多さから言ってあまり現実的ではない。従って、

広範囲に渡って地価構造を把握するモデルを導出することを目的として、数量化理論第Ⅰ

類を地価データに適用した。

まず、先のモデルから影響の少ない 寄の小学校への距離と 寄のバス停への距離を

はずした7個をアイテムとして採用した。そして、できるだけ簡便なモデルとするためそれぞ

れのアイテムはカテゴリ-を2つに限定した。

道路ネットワーク距離、世帯密度は連続変量であるが、それらを2つのカテゴリーに分け

るのには、道路ネットワーク距離 100m単位、世帯密度100 戸/k ㎡で平均以上の地価デー

タの出現率をとり、それが著しく変化を見せる所を基準にした。Y 軸を地価、それぞれの変

量を X 軸にとった散布図に地価の平均を当てはめたものを図4-1に示す。この図を見ると、

都心への距離 6000m。副都心への距離 3000m、公園までの距離 400m、駅への距離 2000

m、世帯密度 2000 戸/k ㎡近辺で平均地価以上の地価データの出現に大きな変化が見ら

れる。なお、容積率についてはその分布に連続性は見られないが、同様にして散布図を見

ると 150%がカテゴリー分けの基準となることがわかる。また、都市ガスの有無については当

初からダミー変数としていたのでそのまま採用した。

以上の基準により、地価データベースをアイテム、カテゴリー変量にしたデータマトリック

スに対し数量化理論第Ⅰ類を適用した結果は表4-3に示すとおりである。

重相関係数が 0.833 と非常に高く、当てはまりが良い事が言える。ただし、この地価モデ

ルはあくまで簡便的に地価を算出するものであり、そこから出てくる地価にそれほどの意味

を持たせることを意図していない。というのも、実際の地価は非常に細かく連続する数量と

して表現されるものであり、このようにあまりにカテゴリーを単純化するべきではない。きち

んとした精度で地価を算出することを目的とするならば、重回帰分析の適用による地価モ

デルを採用するべきである。その方が細かい説明変数の変化を弾力的に反映した結果を

得られるからである。従って、本項において導出された地価モデルは地価算出を目的とす

るものではなく、7アイテム、2カテゴリーであることから 大128パターンの地価帯による広

域的な把握を目的とするものである。

この地価モデルに関して、アイテムのレンジを見ることで各アイテムの地価への影響の大

きさを知ることができるが、その影響の度合いの順序が先の地価モデルとほぼ同様の結果

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となったことが特徴といえる。また、各カテゴリーのカテゴリー数量を見ると、都心への距離、

副都心への距離、 寄の公園への距離、 寄駅への距離については距離に対して負の相

関が、容積率、世帯密度に対しては正の相関が重回帰分析に基づく地価モデル同様見ら

れ、現実に照らして妥当なモデルであるといえる。

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導出された地価モデル

説明変数 非標準化偏回帰係数 標準化偏回帰係数 t-値

都心までの距離(m) △ 4.502 △ 0.482 △ 9.105

世帯密度(戸/k ㎡) 9.396 0.352 6.762

都市ガスの有無(ダミー変数) 8328.747 0.120 2.611

副都心までの距離(m) △ 3.337 △ 0.118 △ 2.911

容積率(%) 84.785 0.107 2.519

寄の公園までの距離(m) △ 12.392 △ 0.090 △ 2.314

寄駅までの距離(m) △ 2.761 △ 0.075 △ 1.874

寄のバス停までの距離(m) △ 4.953 △ 0.022 △ 0.559

寄の小学校への距離(m) △ 0.744 △ 0.009 △ 0.233

定数項 89464.203

重相関係数 0.794

自由度調整済み重相関係数 0.782

寄与率 0.891

F-値 62.324

有意確率 0.000

目的変数:地価(円/㎡)

X₁:都心までの距離 X₂:世帯密度 X₃:都市ガスの有無 X₄:副都心までの距離

X₅:容積率 X₆: 寄の公園までの距離 X₇: 寄駅までの距離

X₈: 寄のバス停までの距離 X₉: 寄の小学校までの距離

表4-2表4-2表4-2表4-2 重回帰分析による地価モデル重回帰分析による地価モデル重回帰分析による地価モデル重回帰分析による地価モデル

地価モデル式地価モデル式地価モデル式地価モデル式

Y=Y=Y=Y=89464.20389464.20389464.20389464.203----4.5024.5024.5024.502XXXX₁₁₁₁+9.396+9.396+9.396+9.396XXXX₂₂₂₂+8328.747+8328.747+8328.747+8328.747XXXX₃₃₃₃----3.3373.3373.3373.337XXXX₄₄₄₄

+84.785+84.785+84.785+84.785XXXX₅₅₅₅----12.39212.39212.39212.392XXXX₆₆₆₆----2.7612.7612.7612.761XXXX₇₇₇₇----4.953X4.953X4.953X4.953X₈₈₈₈----0.7440.7440.7440.744XXXX₉₉₉₉

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図4-1図4-1図4-1図4-1 地価と地価形成要因との散布図地価と地価形成要因との散布図地価と地価形成要因との散布図地価と地価形成要因との散布図 その1その1その1その1

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図4-1図4-1図4-1図4-1 地価と地価形成要因との散布図地価と地価形成要因との散布図地価と地価形成要因との散布図地価と地価形成要因との散布図 その2その2その2その2

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図4-1図4-1図4-1図4-1 地価と地価形成要因との散布図地価と地価形成要因との散布図地価と地価形成要因との散布図地価と地価形成要因との散布図 その3その3その3その3

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アイテム カテゴリー カテゴリー数量 レンジ

6000m 未満 14328.570都心までの距離

6000m 以上 △ 17512.70031841.270

2000 戸/k ㎡以上 12509.320世帯密度

2000 戸/k ㎡未満 △ 7914.06020423.380

有り 10392.830都市ガスの有無

無し △ 8720.42519113.255

150%以上 3167.484容積率

それ未満 △ 9502.45612669.940

3000m 未満 2550.166副都心への距離

3000m 以上 △ 5296.4997846.665

400m 未満 1397.675寄の公園までの距離

400m 以上 △ 2821.7204219.395

2000m 未満 7.959寄駅までの距離

2000m 以上 △ 22.36330.322

定数項

78948.130

重相関係数 0.833

外的基準変数:地価(円/㎡)

表4-3表4-3表4-3表4-3 数量化理論第Ⅰ類による地価モデル数量化理論第Ⅰ類による地価モデル数量化理論第Ⅰ類による地価モデル数量化理論第Ⅰ類による地価モデル

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第5章第5章第5章第5章 シミュレーションシミュレーションシミュレーションシミュレーション

5.15.15.15.1 研究対象地域におけるシミュレーション研究対象地域におけるシミュレーション研究対象地域におけるシミュレーション研究対象地域におけるシミュレーション

本章では、前章までに導出した数量化理論第Ⅰ類による地価モデルを研究対象地域に

適用することを通じてシミュレーションを行うことにより、地価モデルの妥当性の検討及び大

分市の地価構造を明らかにする。

シミュレーションを行うにあたって、数量化理論第Ⅰ類による地価モデルに基づいた地価

算定プログラムを Visual Basic により作成した。本プログラムは、選択した任意の家屋形状

ポリゴンに対して、アイテム変量を自動的に取得し、カテゴリー判別後地価モデルに基づい

て自動的に地価を算出するものである。

今回は、研究対象地域内全ての家屋形状ポリゴンに対してシミュレーションを行うことは

時間の都合上出来なかった為、地価モデルのカテゴリーが地価に対して全てプラスの方向

に働く家屋形状ポリゴン、つまり、導出された地価モデルによる大分市の 高地価を示す

家屋形状ポリゴンの導出を行った。( 高地価 123300 \/㎡ 十円以下四捨五入)

シミュレーションの結果は、図5-1に示すとおりであるが、この結果について考察してみ

ると、大分市における平成 11 年度地価公示価格・都道府県地価調査価格における住宅地

価格123000円以上のポイントはすべて網羅されており、シミュレーションの結果は良好だと

思われる。

また、下郡、明野といった地区が 高価格のポイントとして抽出されているが、これらの

地区は現在ここまでの価格には至っていない。しかし、導出された地価モデルは、大分市

の都市構造・地価形成特性に基づいたいわばその土地の立地条件からなるポテンシャル

を価格という尺度で表現しているものといえることから、これらの地区は今後 高価格程度

まで上昇する可能性を潜在的に持っていることを示唆するものとして捉えることができる。

実際にこれらの地区は、住宅地としての解発の歴史は他の地区に比べて浅く、未だ住宅

地として発展途中であるとともに価格も上昇過程にある。

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図5-1図5-1図5-1図5-1 シミュレーション結果シミュレーション結果シミュレーション結果シミュレーション結果

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第6章第6章第6章第6章 総括総括総括総括

6.16.16.16.1 研究結果を見て研究結果を見て研究結果を見て研究結果を見て

5章までの本研究の結果を見て、地価モデルを通じて大分市の地価形成要因を明らかに

するに足りる結果が得られたと思う。ただし、土地の価格はその時々の経済状態にも大き

な影響を受けるものであり、今回の地価モデルで全て説明できるものではない。しかし、大

分の住宅地の立地傾向や都市構造の一端をきちんと反映したモデルであるとはいえる。従

って、これらの地価モデルを都市計画決定案策定に当たって地価を考慮する場合のモデ

ルとして提供することが出来る。

また、今回使用した地価データは単年のデータであるため、時系列的な変化に対応する

ことが出来るモデルではない。これについては、今後この研究をしていく場合の検討事項で

あると思われる。ただし、経年変化を追い求めると、経済問題や他の代替資産との資産選

択の問題等に帰着することが予想されるため、都市構造の把握等に役立つモデルの提示

は難しいだろう。

後に、商業、業務地を対象に入れられなかったこと、データ量と時間との制約から対象

地域全域に渡るシミュレーションを行えなかったのは少々残念であったが、モデルの提示

が出来ていれば後はハード面での問題だけなので、今回のシミュレーションでも検証として

は十分であったのではないだろうか。

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第7章第7章第7章第7章 おわりにおわりにおわりにおわりに

7.17.17.17.1 参考文献参考文献参考文献参考文献

本研究を行う上で参考にさせていただいた書籍、論文、資料等を以下に掲載する。

1) 地理情報システム-入門&マスター- 町田 聡著 山海堂

2) 固定資産税のシステム評価-その理論と実務のすべて-

(株)日本不動産研究所 編 ぎょうせい

3) 平成7年度国勢調査報告大分県 総理府統計局

4) 平成11年度地価公示 国土庁土地鑑定委員会

5) 平成11年度地価調査基準地の標準価格等一覧 大分県

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7.27.27.27.2 謝辞謝辞謝辞謝辞

本研究を行うにあたり、多くの方々にご協力いただき感謝いたします。特に大分大学工学

部建設工学科教授 佐藤誠治先生、同助手 小林祐二先生には多大なご指導を賜り深く

感謝いたします。さらに、研究に関して助言、ご指導を頂きました都市計画研究室の博士前

期課程及び後期課程の諸先輩方々、並びに同輩の皆様に深く感謝の意を表する次第であ

ります。

また、市販されていないデータの作成には、大分市役所都市計画課、同下水道管理課、

また、大分ガスの方々の温かいご支援があり成し得た次第であります。この場を借りて感

謝の意を表します。