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超臨界流体中での電界紡糸によるナノファイバーの作製 (熊大院自 1 ・京都工繊大 2 ・熊大バイオエレクトリクス研 3 ) ○村上香菜子 1 , Wahyudiono 1 ,水口靖教 2 , 奥林里子 2 , 佐々木満 1 , キタインアルマンド 1 , 後藤元信 3 * 本研究は, 熊本大学G-COEプログラム「衝撃エネルギー工学グローバル先導拠点」の協力を得て遂行しました。ここに, 感謝の意を表します。また, SCFテクノリンクの福里隆一先生, 京都工芸繊維大学の小滝雅也先生, 奥林里子先生, ならびにドイツErlangen大学のWolfgang Arlt先生, Dr. Detlef.Freitag氏には大変お世話になりました。重ねて御礼申し上げます。 謝辞: 〈 超臨界二酸化炭素中でのエレクトロスピニングのメリット〉 有機溶媒の大気中への揮発を防止できる 多孔・中空ファイバーをワンステップで作製できる 超臨界二酸化炭素中でしか製造し得ない形態の発現が期待 1000総表面積 50nm 25μm 50μm 表面積の比較 通常のミクロファイバー ナノファイバーからなる ミクロファイバー ナノファイバーからなる ミクロファイバー 通す 通さない 微粒子 微生物など 空孔の比較 通常のミクロファイバー ナノファイバーは, 大きな比表面積を持つ事から , 固有の効果がうまれる Fig.1. Schematic diagram of the electrospinning system 8 4 6 7 5 3 9 CO2 T 10 (5) Nozzle (6) Polymer jet/fiber (7) Collector (4) High voltage source (11) Back pressure regulator (12) Trap (13) Wet flow meter (9) Heater (2) Syringe Pump (1) Polymer solution (3) CO 2 cylinder (8) Spinning-Autoclave (PEEK) (10) Temperature sensor 2 1 12 11 13 Sample PVP (polyvinyl pyrrolidone) PLLA (poly-L-lactic acid) Solvent DCM, Ethanol DCM Chemical Structure M.W. 360,000 325,000 - 460,000 Concentration (wt%) 4, 6 2, 4, 6 CO 2 Pressure (MPa) 2.0 - 8.0 8.0 Temperature ( o C) 27 - 40 25 - 40 poly-L-lactic acid Applied voltage : 10 - 17 kV, Nozzle-to-collector distance : 8 cm, Feed rate : 0.05 mL/min, Nozzle inner diameter : 0.75 mm Polyvinylpyrrolidone 設計仕様 設計圧力 : 10 MPa 設計温度 : 80 o C 3.0 MPa では, ビーズは発生せずソリッドなファイバーが得られた 5.0 MPa では, 中空ファイバーが得られた 8.0 MPa では, ファイバー形態が大きく変化した 圧力増加 CO 2 への DCMの溶 解度が 増加 CO 2 による溶媒抽出が促進 CO 2 への溶媒の溶解力 cut CO 2 により溶媒が置換され, 減圧後に 多孔or 中空構造が形成 ファイバー形成初期にCO 2 によって溶媒が 迅速に抽出されスキン層が形成 ファイバー断面 Electrospunfiber 超臨界二酸化炭素 臨界点が比較的低く , 取り扱いが容易 ( 臨界点 : 31.1 o C, 7.38 MPa) Electrospinning ScCO 2 High Voltage High Pressure High Temperature Several interesting fiber morphologies Solvent CO2 Polymer Fiber Fiber formation CO 2 + Solvent out 高圧二酸化炭素中でのエレクトロスピニングにより紡糸を行った結果, 中 空構造や粒子構造など, 様々な形態を有するファイバーが得られた。 超臨界二酸化炭素中でのエレクトロスピニングでの特異なファイバー形成 のポイントとしては, ポリマーの固化スピード,および高圧二酸化炭素による 有機溶媒の抽出速度のバランスが重要であると考えられる。 Electrospinning Nozzle Syringe High Voltage Collector ビーズが発生 良好なファイバー ファイバーのナノ化に影響する因子 印加電圧 溶液濃度および粘度 ポリマーの分子量 電極間距離 etc… 新素材として注目を集めるナノファイバー ナノファイバー製造技術 ⇒ エレクトロスピニング × 大気中への有機溶媒の揮発 × 中空ファイバー作製には複数の 工程が必要であり , 操作が煩雑 有機溶媒に対する良溶媒である 超臨界二酸化炭素 を用いることで, 既存法の問題解決へ 既存法の 問題点 圧力変化の影響 超臨界二酸化炭素中でのエレクトロスピニング 特長 わずかな圧力変化で, 密度が大幅に変化する 溶解度を制御できる 減圧操作で分離可能 溶媒残留の課題を解決できる まとめ 実験装置 超臨界二酸化炭素中でのエレクトロスピニングによる中空等の特異な形態 を有するファイバー作製の検討 本研究の指針 新規材料として の用途開発 ファイバー作 製条件の策定 ファイバー径の制御 100 nm以下を目指す 繊維強度 , 中空率の評価 START 装置設計 および導入 GOAL ・現段階 量産化 への課題 目的 実験および結果 新規な形態の発現 中空粒子 8.0 MPa での紡糸においては, 粒子が連なった数珠状のファイバー が形成された ( 常温・常圧紡糸では見られない構造) 7MPa 以上で粒子の発生がみられる DCM が抽出されるスピードが早すぎるのではないかと推察した 粒子の内部は中空構造を有しているのではないかと考えられる ファイバー形態の変化のポイント 溶媒がScCO 2 抽出されるスピード ポリマーが固化 するスピード バランスが重要 ファイバー形成のポイント 溶媒を変える 高圧二酸化炭素に対する溶解性が DCM よりも低い溶媒を添加すると効果 があるのでは?ジメチルスルホキシド (DMSO) など ポリマーの分子量・濃度を高くする ポリマーの固化を助ける 今後の課題 二酸化炭素に対する溶解性が異なる溶媒を用いての検討を行う。 ポリマーの固化を促進するために, 溶液濃度を高くする , またはポリマーの 分子量を大きくして紡糸を行う予定である。 粒子の内部構造を確認し、新規材料としての可能性を検討する。 繊維強度, 中空率や比表面積の評価を行い , 新規材料としての用途開発も 含めた量産化への課題にアプローチしていく必要がある。 再生医療工学, ドラッグデリバリー 防衛&セキュリティー, 複合材料 の強化材, 対バイオテロ攻撃 生体分子の精製, 汚染水質の浄化を目的とした アフィニティ膜, センサー ポリマーバッテリー, 色素増感太陽電池, 高分子膜燃料電池 ヘルスケア バイオテクノロジーヘルスケア , 環 境工学 防衛 , セキュリティー エネルギー 新技術の確立 を目指す! 4 wt% PVP/DCM, 17 kV 3.0 MPa, 37 o C 5.0 MPa, 44 o C 8.0 MPa, 45 o C 超臨界二酸化炭素によってファイバー の表面構造が変化した 4 wt% PLLA/DCM, 15 kV, 8 cm, 0.05 mL/min, 0.75 mm PLLA in Air in ScCO 2 without CO 2 , 25 o C(room temp.), 8.0 MPa, 36 o C 4 wt% PVP/DCM, 15 kV, 8 cm, 0.05 mL/min, 0.75 mm, 36-33 o C, 8.0 MPa Entangled fiber particles

Highgoto/pdf/electrospinning.pdfElectrospinning Nozzle Syringe High Voltage Collector ビーズが発生 良好なファイバー ファイバーのナノ化に影響する因子 ¾印加電圧

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Page 1: Highgoto/pdf/electrospinning.pdfElectrospinning Nozzle Syringe High Voltage Collector ビーズが発生 良好なファイバー ファイバーのナノ化に影響する因子 ¾印加電圧

超臨界流体中での電界紡糸によるナノファイバーの作製 (熊大院自1・京都工繊大2・熊大バイオエレクトリクス研3) ○村上香菜子1, Wahyudiono1,水口靖教2, 奥林里子2, 佐々木満1, キタインアルマンド1, 後藤元信3*

本研究は, 熊本大学G-COEプログラム「衝撃エネルギー工学グローバル先導拠点」の協力を得て遂行しました。ここに, 感謝の意を表します。また, SCFテクノリンクの福里隆一先生, 京都工芸繊維大学の小滝雅也先生, 奥林里子先生, ならびにドイツErlangen大学のWolfgang Arlt先生,

Dr. Detlef.Freitag氏には大変お世話になりました。重ねて御礼申し上げます。 謝辞:

〈超臨界二酸化炭素中でのエレクトロスピニングのメリット〉有機溶媒の大気中への揮発を防止できる多孔・中空ファイバーをワンステップで作製できる超臨界二酸化炭素中でしか製造し得ない形態の発現が期待

1000倍総表面積

50nm25μm50μm

表面積の比較

通常のミクロファイバー ナノファイバーからなるミクロファイバー

ナノファイバーからなるミクロファイバー

通す 通さない

微粒子微生物など

空孔の比較

通常のミクロファイバー

ナノファイバーは, 大きな比表面積を持つ事から, 固有の効果がうまれる

Fig.1. Schematic diagram of the electrospinning system

8

4

67

5

39

CO2

T

10

(5) Nozzle

(6) Polymer jet/fiber

(7) Collector

(4) High voltage source

(11) Back pressure

regulator

(12) Trap

(13) Wet flow meter

(9) Heater

(2) Syringe Pump

(1) Polymer solution

(3) CO 2 cylinder

(8) Spinning-Autoclave

(PEEK)

(10) Temperature sensor

2

1

12

1113

PVP(ポリビニルピロリドン)

分子量 : 360,000

SamplePVP

(polyvinyl pyrrolidone)

PLLA

(poly-L-lactic acid)

Solvent DCM, Ethanol DCM

Chemical

Structure

M.W. 360,000 325,000 - 460,000

Concentration

(wt%)4, 6 2, 4, 6

CO2 Pressure

(MPa)2.0 - 8.0 8.0

Temperature

(oC)27 - 40 25 - 40

poly-L-lactic acid

Applied voltage : 10 - 17 kV, Nozzle-to-collector distance : 8 cm,

Feed rate : 0.05 mL/min, Nozzle inner diameter : 0.75 mm

Polyvinylpyrrolidone

設計仕様設計圧力 : 10 MPa設計温度 : 80 oC

3.0 MPaでは, ビーズは発生せずソリッドなファイバーが得られた5.0 MPaでは, 中空ファイバーが得られた8.0 MPaでは, ファイバー形態が大きく変化した

圧力増加 ⇒ CO2へのDCMの溶解度が増加⇒ CO2による溶媒抽出が促進

CO2への溶媒の溶解力小 大

cut

CO2 により溶媒が置換され, 減圧後に多孔or中空構造が形成

ファイバー形成初期にCO2 によって溶媒が迅速に抽出されスキン層が形成

ファイバー断面Electrospun fiber

超臨界二酸化炭素 臨界点が比較的低く, 取り扱いが容易(臨界点 : 31.1 oC, 7.38 MPa)

Electrospinning

ScCO2

High

Voltage

High Pressure

High Temperature

Several interesting

fiber morphologies

Solvent

CO2

Polymer

Fiber

Fiber formation

CO2 + Solvent out

高圧二酸化炭素中でのエレクトロスピニングにより紡糸を行った結果, 中空構造や粒子構造など, 様々な形態を有するファイバーが得られた。

超臨界二酸化炭素中でのエレクトロスピニングでの特異なファイバー形成のポイントとしては, ポリマーの固化スピード,および高圧二酸化炭素による有機溶媒の抽出速度のバランスが重要であると考えられる。

Electrospinning

Nozzle

Syringe

High

Voltage

Collector

ビーズが発生

良好なファイバー

ファイバーのナノ化に影響する因子

印加電圧

溶液濃度および粘度

ポリマーの分子量

電極間距離 etc…

新素材として注目を集めるナノファイバー

ナノファイバー製造技術 ⇒ エレクトロスピニング

×大気中への有機溶媒の揮発

×中空ファイバー作製には複数の工程が必要であり, 操作が煩雑

有機溶媒に対する良溶媒である超臨界二酸化炭素を用いることで, 既存法の問題解決へ

既存法の問題点

圧力変化の影響

超臨界二酸化炭素中でのエレクトロスピニング

特長わずかな圧力変化で, 密度が大幅に変化する ⇒溶解度を制御できる

減圧操作で分離可能 ⇒ 溶媒残留の課題を解決できる

まとめ

実験装置

超臨界二酸化炭素中でのエレクトロスピニングによる中空等の特異な形態を有するファイバー作製の検討

本研究の指針

新規材料としての用途開発

ファイバー作製条件の策定

ファイバー径の制御⇒100 nm以下を目指す

繊維強度,

中空率の評価START

装置設計および導入

GOAL

・現段階 量産化への課題

目的

実験および結果

新規な形態の発現

中空粒子

8.0 MPaでの紡糸においては, 粒子が連なった数珠状のファイバーが形成された (常温・常圧紡糸では見られない構造) 7MPa以上で粒子の発生がみられる⇒DCMが抽出されるスピードが早すぎるのではないかと推察した粒子の内部は中空構造を有しているのではないかと考えられる

ファイバー形態の変化のポイント

溶媒がScCO2に抽出されるスピード

ポリマーが固化するスピード

バランスが重要

ファイバー形成のポイント 溶媒を変える

⇒高圧二酸化炭素に対する溶解性がDCMよりも低い溶媒を添加すると効果があるのでは?ジメチルスルホキシド(DMSO)などポリマーの分子量・濃度を高くする⇒ポリマーの固化を助ける

今後の課題

二酸化炭素に対する溶解性が異なる溶媒を用いての検討を行う。

ポリマーの固化を促進するために, 溶液濃度を高くする, またはポリマーの分子量を大きくして紡糸を行う予定である。

粒子の内部構造を確認し、新規材料としての可能性を検討する。

繊維強度, 中空率や比表面積の評価を行い, 新規材料としての用途開発も含めた量産化への課題にアプローチしていく必要がある。

再生医療工学, ドラッグデリバリー

防衛&セキュリティー, 複合材料の強化材, 対バイオテロ攻撃

生体分子の精製, 汚染水質の浄化を目的としたアフィニティ膜, センサー

ポリマーバッテリー, 色素増感太陽電池, 高分子膜燃料電池

ヘルスケア バイオテクノロジーヘルスケア , 環境工学

防衛 , セキ ュリティー エネルギー

新技術の確立を目指す!

4 wt% PVP/DCM, 17 kV

3.0 MPa, 37 oC 5.0 MPa, 44 oC 8.0 MPa, 45 oC

solubility of solvent into CO2Low High

超臨界二酸化炭素によってファイバーの表面構造が変化した

4 wt% PLLA/DCM, 15 kV, 8 cm, 0.05 mL/min, 0.75 mmPLLA

in Air in ScCO2

without CO2, 25oC(room temp.), 8.0 MPa, 36 oC

4 wt% PVP/DCM, 15 kV, 8 cm, 0.05 mL/min, 0.75 mm, 36-33 oC, 8.0 MPa

Entangled fiber particles

At this condition, entangled fiber particles were also

obtained.

The structure inside the particles is suspected to be

hollow as shown in the picture at the right.

These morphology could not obtain at the ambient condition.

Hollow fiber particle