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裸地土中の水分・温度長期変動予測
斎藤広隆1), Jiri Šimůnek2), 取出伸夫3)
1) 東京農工大学共生科学技術院2) カリフォルニア大学リバーサイド校環境科学科
3) 三重大学大学院生物資源学研究科
-近似した気象データによる地表面境界条件の設定-
H19.10.14 第46回土壌物理研究部会研究集会@九州大学西新プラザ
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
土中水分・温度変動予測
• 乾燥地・半乾燥地のみならず,限られた水資源の有効利用のためには,土中水分量の数ヶ月から1年あるいはそれ以上の中期から長期間の変動の把握が必要– 数値計算
• 気温の日変化が激しい乾燥地・半乾燥地では,地表付近の水分は,蒸発散や降雨のみならず,熱の移動やそれに伴う水蒸気移動にも強く影響される– 等温・非等温プロセス相互依存– 地表面境界(水・エネルギー収支)
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
水蒸気移動の影響
2
1.6
1.2
0.8
0.4
0D
epth
, -z
(cm
)
0.05 0.06 0.07 0.08
Water content, θ (cm3 cm-3)
without vaporwith vapor
20 d
E=0.05 cm d-1
乾燥前線
( ) ( )( )0
1 0
(0)
Az
A
hK h E h hz
h h=
⎧ ∂⎛ ⎞− + = >⎪ ⎜ ⎟∂⎝ ⎠⎨⎪ =⎩
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
地表面境界条件
• 水分移動
– 降雨・灌漑(独立型境界条件)
– 蒸発散(系依存型境界条件)
• 熱移動
– 太陽放射↓(独立型)・熱放射↑(系依存型)
– 蒸発散(系依存型)
• 水・エネルギー収支
– 土の状態だけでなく,大気(気温・湿度・風速)や地表面の状態(植生・粗度)にも依存
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
裸地表面エネルギー収支
Rn = H + LE + G純放射, Rn
地表面熱フラックス, G
潜熱フラックス, LE
顕熱フラックス, H
境界条件
( ) ( )↑↓ −+−=+=
luldst
nlnsn
RRSa
RRR
ε1
H
asa r
TTCH
−=
sv
vavs
rrE
+−
=ρρ 36014.79
31.3716 7.9249510
310
aa
TT
va ha
eH
Tρ
−− − ⋅
−
⎛ ⎞⎜ ⎟=⎜ ⎟⎜ ⎟⎝ ⎠
i
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
Temperature [K]
Em
issi
vity
[-]
275 280 285 290 295 300 305 310 3150.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
Brunt (1932)Chung & Horton (1987)Brutsaert (1975)Brutsaert 2 (1975)Idso (1981)Idso 2 (1981)Satterlund (1979)Idso & Jackson (1969)Swinbank (1969)
大気の射出率εa
相対湿度=90%
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
気象データ
• 近傍気象観測所,簡易気象観測装置– 必要な時間間隔で,必要な精度で得られるとは限らない
• 1年間の計算を行う場合,各項目ごとに– 日データ:365– 時間データ:8760– 1時間以下の短い間隔:10000以上
• データの整理・加工および入力の手間が増え,計算負荷が大きい。– 信頼のおける限られた情報を補間式を用いて連続データにする
など,計算結果に大きな影響の出ない範囲で,不必要な手間を軽減することが可能
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
目的
• 灌漑計画などに必要な数ヶ月から1年程度の
中期間あるいは長期間の裸地土中の水分および地温の変動を,液状水・水蒸気・熱同時移動計算により予測する。
– エネルギー収支式による境界条件の設定
– 一日ごとに観測された気象データを使って,連続的な値を近似して用いた
– 計算は修正版HYDRUS-1Dを用いる
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
土中液状水・水蒸気フラックス
( ) ( ) ( )Liquid Lh LT Lh Lh LT
h Tq q q K h K h K T
z z∂ ∂
= + = − − −∂ ∂
等温液状水フラックス 非等温液状水フラックス
zT
TKzh
hKqqq vTvhvTvhvapor ∂∂
−∂∂
−=+= )()(
等温水蒸気フラックス 非等温水蒸気フラックス
Lh Lh LT vh vT
h T h TK K K K K S
t t z z z zθ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂⎡ ⎤= + + + + −⎢ ⎥∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂⎣ ⎦
修正リチャーズ式(Philip and de Vries, 1957)
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
透水係数
非等温透水係数等温透水係数
非等温水蒸気拡散係数等温水蒸気拡散係数
( )[ ]2/111)(mm
eleSLh SSKhK −−=
rvsw
vh HRTMgD
K ρρ
=dTd
HD
K vsr
wvT
ρηρ
=
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛=
dTd
hGhKTK wTLhLT
γγ 0
1)()(
Ks: 飽和透水係数, Se: 有効飽和度, GwT: ゲインファクタ, γ: 土中水の表面張力, D: 水蒸気拡散係数, ρvs: 飽和水蒸気密度, M: 水1モルの質量, g: 重力加速度, R: 気体定数, Hr: 相対湿度, η: 促進係数
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平成19年度土壌物理研究部会研究集会
土中熱移動
(1) 伝導による顕熱輸送(2) 液状水による顕熱輸送(3) 水蒸気による顕熱輸送(4) 水蒸気による潜熱輸送
vvvLwh qLTqCTqCzT
q 0)( +++∂∂
−= θλ
(1) (2) (3) (4)
( )0 0p v L v v
w v w
C T q T q q TL C L C C ST
t t z z z z zθ λ θ
∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂⎡ ⎤+ = − − − −⎢ ⎥∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂⎣ ⎦
熱移動の基礎方程式
λ: 見かけ熱伝導率, Cw: 水の体積熱容量, Cv: 水蒸気の体積熱容量, L0: 水の蒸発潜熱, Cp: 土の体積熱容量, S: 根の吸水などのよる熱損失
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平成19年度土壌物理研究部会研究集会
修正版HYDRUS 1D
エネルギー収支・水収支
液状水・水蒸気移動計算
熱移動計算
反復 > 1いいえ
気象データ
どのモデル?
パラメータ
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
純放射
DOY
Ra
dia
tion
[MJ/
m2/d
ay]
310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320-10
0
10
20
30
40
MeasuredNet RadiationShort RadLong.Rad.
( ) ( )441 ssaastnlnsn TTSaRRR σεσεε −+−=+=
a: アルベド, St: 全天放射, εS: 土の射出率, εa: 大気の射出率, Rps: 純短波放射, Rnl: 純長波放射,Ta: 大気温,Ts: 地表面温度
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平成19年度土壌物理研究部会研究集会
Flux [cm/day]
De
pth
[cm
]
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2-25
-20
-15
-10
-5
0
Isotherm liquidThermal liquidIsothermal vaporThermal vapor
DOY=329.5 (noon)
Flux [cm/day]
De
pth
[cm
]
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2-25
-20
-15
-10
-5
0DOY=330.0 (midnight)
液状水・水蒸気フラックス
Temperature [oC]
De
pth
[cm
]
10 15 20 25 30-50
-40
-30
-20
-10
0
Water Content [-]
De
pth
[cm
]
0 0.05 0.1 0.15-25
-20
-15
-10
-5
0
DOY 329.5DOY 330
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
Flux [cm/day]
De
pth
[cm
]
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2-25
-20
-15
-10
-5
0DOY=334.75
灌漑直後
Flux [cm/day]
De
pth
[cm
]
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2-25
-20
-15
-10
-5
0
Isotherm liquidThermal liquidIsothermal vaporThermal vapor
DOY=335.4
Water Content [m3m-3]
De
pth
[cm
]
0 0.05 0.1 0.15 0.2-25
-20
-15
-10
-5
0
DOY 334.75DOY 335.4
Temperature [oC]
De
pth
[cm
]
0 10 20 30-50
-40
-30
-20
-10
0
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
適用事例
• アメリカ合衆国テキサス州西部Chihuahua Desert(Scanlon et al., 2002)– 低レベル放射性廃棄物処理候補地に設置された,6層からなる厚さ3.05mの遮水工(カバー)
• 測定:1997年10月1日(DOY274)~1998年9月30日(DOY639)– 表層から0.15,0.3,0.6,0.9,1.2,1.5,2.0mの計7地点で,土中水分量および地温を1時間ごとに測定
– 気象データ:日データおよび時間データ
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平成19年度土壌物理研究部会研究集会
遮水工
1.7740.0500.000.38587Sand0.156
1.72210.950.000.51159840Gravel0.35
1.1880.0070.000.1410Muddy gravel0.34
1.4640.0200.000.40639Sand loam0.33
1.1670.0100.000.3520Sandy clay loam1.72
1.2760.0270.000.4541Sandy clay loam0.31
nα(cm-1)
θrθs透水係数(cm/day)
土性厚さ(m)
層
α, n: van Genuchten model parameters
キャピラリーバリア
(Scanlon et al., 2005)
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
気象データ
5cos 2
24r r HtH H A π
⎛ ⎞−⎛ ⎞= + ⋅ ⎜ ⎟⎜ ⎟⎝ ⎠⎝ ⎠
DOY
Te
mp
era
ture
[oC
]
300 400 500 600-10
0
10
20
30
40
Observed
DOY
Win
dsp
ee
d[m
/s]
300 400 500 6000
5
10Observed
DOY
Re
laitv
eh
um
idity
[%]
300 400 500 6000
20
40
60
80
100
Observed
⎟⎠
⎞⎜⎝
⎛⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ −
⋅+=24
132cos
tATT taa π
13cos 2
24UtU U A π
⎛ ⎞−⎛ ⎞= + ⋅ ⎜ ⎟⎜ ⎟⎝ ⎠⎝ ⎠
気温
湿度
風速
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
DOY
Te
mp
era
ture
[oC
]
280 290 300 310 320-10
0
10
20
30
40
ObservedGenerated
気温データ近似
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
DOY
Win
dsp
ee
d[m
/s]
300 350 400 4500
5
10ObservedGenerated
DOY
Win
dsp
ee
d[m
/s]
280 290 300 310 3200
5
10ObservedGenerated
風速・湿度データ近似
DOY
Re
laitv
eh
um
idity
[%]
300 350 400 4500
20
40
60
80
100
ObservedGenerated
DOY
Re
laitv
eh
um
idity
[%]
280 290 300 310 3200
20
40
60
80
100
ObservedGenerated
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
DOY
Ne
tra
dia
tion
[MJ/
m2/d
]
280 300 320 340 360-20
0
20
40
60CalculatedObserved
DOY
Ne
tra
dia
tion
[MJ/
m2/d
]
500 505 510 515 520-20
0
20
40
60
80
純放射
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
地表面熱フラックス成分
DOY
He
at
Flu
x[M
J/m
2/d
ay]
300 305 310 315 320
-20
0
20
40
60 Net RadiationSensible HeatLatent HeatSurface Heat
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
地温変動予測
DOY
Te
mp
era
ture
[oC
]
300 400 500 6000
10
20
30
40
Depth=0.6 m
DOY
Te
mp
era
ture
[oC
]
300 400 500 6000
10
20
30
40
Depth=1.2 m
DOY
Te
mp
era
ture
[oC
]
300 400 500 6000
10
20
30
40
PredictedObserved
Depth=0.15 m
パラメータのキャリブレーションなし
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
DOY350-DOY375
DOY
Te
mp
era
ture
[oC
]
350 355 360 365 370 375-5
0
5
10
15
20
Predicted (0.15m)Observed (0.6m)Predicted (0.6m)Observed (0.6m)Predicted (1.2m)Observed (1.2m)
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
DOY600-DOY625
DOY
Te
mp
era
ture
[oC
]
600 605 610 615 620 62515
20
25
30
Predicted (0.15m)Observed (0.6m)Predicted (0.6m)Observed (0.6m)Predicted (1.2m)Observed (1.2m)
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
水分量変動予測
DOY
Vo
lum
etr
icW
ate
rC
on
ten
t[c
m3
cm-3
]
300 400 500 6000
0.1
0.2
0.3
0.4
0.15 m0.6 m1.2 m2.0 m
DOY
Ra
infa
llin
ten
sity
[cm
/d]
300 350 400 450 500 550 6000
10
20
30
40
50
60
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
土中温度・水分変動予測
• 深度に関係なく,2mくらいまでであれば,土中の水分量や温度の中期あるいは長期にわたる変化は,標準的な日気象データが手に入れば,連続的な変化を近似して用いることで,予測可能であることを示した。– 地温の予測を大きく改善するために,単純に一部の気象データ
の精度を高めたり,また時間的に密に測定してデータ数を増やすことが必ずしも効果的でないのではないか。
– 一部の気象データの精度を高めるだけでなく,すべての要素を釣り合いの取れた精度で求めることも同様に重要である。
• エネルギー収支式内のパラメータを求めるためにはどのモデルを使うか?
東京農工大学 斎藤広隆
平成19年度土壌物理研究部会研究集会
HYDRUS 1D
• パブリックドメイン• 使いやすいインターフェース
• 地表面境界で水収支式・エネルギー収支式を解き,境界条件を設定
• 日データ・時間データ様々な気象データを入力可能
• 裸地のみならず,植生のある場合についても対応
修正版(未公開)
自分のデータを解析してみたいという方は,[email protected]まで連絡を!