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1 Challenge 2020 Vol. 04

2020.1 Vol. 04

人と人が創る科学の夢Technology and Innovation Center

編集長 ● 東 研一企画・編集 ● 小林 淳(ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター)、株式会社タミワオフィス執筆 ● 民輪めぐみ、江六前一郎、柳本元晴写真撮影 ● 村川荘兵衛、依田佳子、中西一朗デザイン&DTP ● 水田デザイン写真協力 ● 株式会社アフロ、フォトライブラリー印刷所 ● 三松堂株式会社

    社会を変える第一歩としてのダイキンの役割巻頭インタビュー

五神 真 ……01第4次産業革命のいまより良い未来社会をどう築くのかSpecial Interview

ダグラス・ウェバー ……04ウェバー・ワークショップス代表

現代は、合理化ではなくテクノロジーの力で向かうべき本質に近づくことが可能になった時代既存の枠組みやプロセスを変えるような

「面白い」ことをしよう ……08「世界を変える」より、まわりの笑顔が見たい

藤野真人           ×近藤 玲×丸川英也 

特集人類の情報伝達の手段「伝える」 ……13人類はIoTの時代に何を伝えるのだろうか?

C o n t e n t s

物理学者/東京大学総長

特別企画

「Challenge」という英単語から「lle」を抜くと、「Change」という英単語が現れます。「挑戦に次ぐ挑戦から変革を起こす」を意味するこの誌名は、ここTIC(テクノロジー・イノベーションセンター)が目指す姿そのものであり、当社の社風を表すものでもあります。

『Challengeという誌名について』

表紙デザイン/坂川朱音(朱猫堂)撮影/村川荘兵衛

TICでは、「新たな価値」を生み出すための協創相手を求めています。お問い合せ、ご連絡は [email protected] まで。

研究者の群像④

石原隆広 株式会社point 0 代表取締役 ……20空間、場所を再定義する起点になる意味で、

「point 0(ポイントゼロ)」と名付けたダイキンを支える技術④

空調機の性能を決める「圧縮機」 ……24ダイキンの新しい取り組み

「ダイキン情報技術大学」ルポ ……28

最近のおもな社外発表 ……32

Invitation to Web “Challenge”

・ あなたのご意見や感想、問い合わせをお寄せください。

・読者登録を募集しています。  登録後、「Challenge」誌を毎号

お届けします。・イベントのご紹介  TIC見学会、交流会情報などを

お知らせします。

根岸英一

発行日/2018年5月1日 第3号 発行/ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター

〒566-8585 大阪府摂津市西一津屋 1番1号(淀川製作所内) http://www.daikin.co.jp/tic/ ☎ 06-6195-7051(代表)

第3号2018. 5

▼ぜひウェブサイトにアクセスください。https://www.daikin.co.jp/tic/magazine/

フェアリーデバイセズ株式会社 代表取締役

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その他論文の表題 学会誌/講演会名 発表日冬季の室内室温の違いと想像温度の関係に関する人工気候室における実験研究 空気調和・衛生工学会大会 2019 年 9 月パラレル電極型ストリーマ放電における準安定準位N2(A3Σu+)のLIF計測 第43回静電気学会全国大会 2019 年 9 月スクロール圧縮機の油上り設計におけるCFD解析の適用性について 2019年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2019 年 9 月空調機及びIoT技術を用いた自動デマンドレスポンス実証について 第2報‐ポルトガル共和国での自動デマンドレスポンス実証事業の中間報告‐

2019年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2019 年 9 月

ビル用マルチエアコンの冷媒漏洩遠隔監視システムの研究開発 第1報‐漏洩検知システムの概要と漏れ検知検討結果‐

2019年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2019 年 9 月

R32を用いた空調用マイクロチャネル熱交換器に用いる扁平多穴管の伝熱性能 2019年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2019 年 9 月学習効率が向上しても熱環境は潜在的精神負荷を増大させる 日本心理学会第83回大会 2019 年 9 月アジア蒸暑地域のオフィスビルにおける熱環境とエネルギー消費量の実態調査 2019年度 日本建築学会大会 2019 年 9 月個別分散型空調方式の運用実態に関する研究 2019年度 日本建築学会大会 2019 年 9 月ヒューマンファクターを考慮した環境制御に関する研究(その1) 湿度の違いが温熱快適性と皮膚血流量へ与える影響

2019年度 日本建築学会大会(北陸)学術講演会 2019 年 9 月

油による減衰を考慮した油溶性媒質の音響解析 Dynamics and Design Conference 2019(D&D2019) 2019 年 8 月6ステップ駆動を用いた圧縮機向けセンサレス制御による空調機暖房能力向上 回転機/リニアドライブ/家電・民生合同研究会 2019 年 8 月RSSI-based Localization of BLE-attached HVACs by Utilizing Peak Detection DICOMOシンポジウム 2019 年 7 月気温変動に伴う皮膚血流量の個人差について IWEE2019 2019 年 6 月Anti-microbial and Anti-biofilm effect of Underwater Electric Discharge (UED) ASM Microbe 2019(米国微生物学会議) 2019 年 6 月技術者と特許出願 ~自分に“タグ付け”し、仕事の満足度向上を目指して~ NPO法人CAE懇話会 会誌2019年春夏号 2019 年 5 月天井裏における偏光情報を用いた特徴点対応の評価 CVIM2019年5月研究会プログラム(第217回) 2019 年 5 月窒化ホウ素充填フッ素系ポリマー複合材料の熱伝導率および内部構造の評価 第68回高分子学会年次大会 2019 年 5 月マクロ開始剤を用いた多分岐型高分子の合成と撥水性評価 第68回高分子学会年次大会 2019 年 5 月ウェアラブルセンサとサーモグラフィを併用した温熱快適度推定法の検討 モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究

会(第91回MBL研究会)2019 年 5 月

夏季の温度湿度環境がヒトの疲労に与える影響 第15回 日本疲労学会総会・学術集会 2019 年 5 月宮古島産マンゴー果実のCA保蔵について 日本熱帯農業学会第125回講演会 2019 年 3 月Detection of sleep apnea by cyclic variation of pulse rate Life Tech 2019 2019 年 3 月多神教的世界観にもとづく“空気感エージェント”の創成 HAIシンポジウム2018 2019 年 3 月大面積シート型インフラモニタリングシステムの開発 応用物理学会・有機分子・バイオエレクトロニクス分科会

3月研究会(M&BE)(招待講演)、有機分子・バイオエレクトロニクス分科会誌

2019 年 3 月

五感を用いた心に寄り添う“空気感”エージェント”の予備的評価 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会 2019 年 1 月五感を用いた心に寄り添う“空気感”エージェント”の創成 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会 2019 年 1 月ベイズ最適化手法を用いたメッシュモーフィングによる流路の最適化 日本機械学会 流体工学部門 2019 年 1 月オープンソースCFDツールを活用した流体構造連成解析の実践的活用に関する基礎的研究 第32回数値流体力学シンポジウム 2018 年 12 月シミュレーションによる樹脂ガスケットのシール性能評価 「成形加工」 2018年12月頃英国マンチェスターでのヒートポンプ式空調給湯器によるデマンドレスポンス実証 冷凍10月号 2018 年 10 月上吹き室外機向けマイクロチャネル熱交換器の開発 2018年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2018 年 9 月氷蓄熱チラー向け大容量半密閉シングルスクリュー圧縮機の開発 2018年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2018 年 9 月空調機及びIoT技術を用いた自動デマンドレスポンス実証について 第1報‐ポルトガル共和国での自動デマンドレスポンス実証事業の概要報告‐

2018年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2018 年 9 月

非平衡プラズマ中の準安定準位N2(A3Σu+)のレーザ有機蛍光法による観測 平成30年基礎・材料・共通部門大会 2018 年 9 月Felicitas環境の構築-(第1報) Felicitas環境の考え方- 2018年度 日本建築学会大会 2018 年 9 月Felicitas環境の構築-(第2報) 生理人類学に基づく空気環境の「評価」- 2018年度 日本建築学会大会 2018 年 9 月Felicitas環境の構築-(第3報) データ同化法を用いた必要加湿量の推定- 2018年度 日本建築学会大会 2018 年 9 月知的生産性を高める空間を実現する、A I・I oT活用型知的環境制御システムの研究開発(その2)ヒューマンファクターを考慮して環境制御を行うアプローチ

2018年度 日本建築学会大会(東北) 2018 年 9 月

アクティブバッファ付き単相‐三相電力変換器のチョッパ回路に関する検討 平成30年電気学会産業応用部門大会 2018 年 8 月グローバル高調波規制に適合する業務用空調機向け大容量三相‐三相電解コンデンサレスインバータの開発

2019年電気学会産業応用部門大会 2019 年 8 月

ストランドカットペレットの流動性向上のための形状検討 第22回計算工学講演会 2018 年 6 月冬季の室内の温度湿度がヒトの疲労に与える影響:行動学的検討 第14回 日本疲労学会総会・学術集会 2018 年 5 月

国際会議論文の表題 学会誌/講演会名 発表日Formation and high performance of nano oriented crystals (NOCs) of fluoropolymers in elongational crystallization

The 22nd International Symposium on Fluorine Chemistry - Oxford 2018

2018 年 7 月

Optimization of Resin Pellet Shape for Improving Flowability 13th World Congress on Computional Mechanics (WCCM XIII), 2nd Pan American Congress on Computional Mechanics (PANACM II)

2018 年 7 月

Evaluation and Optimization of System Performance using HFO-mix Refrigerants for VRF and Mini-Split Air-Conditioner

17th Refrigeration and Air conditioning conference at Purdue

2018 年 7 月

Simulation of Two-Phase Flow Distribution in Heat Exchanger Header Using Eulerian Multiple Flow Regimes Model

17th International Refrigeration and Air Conditioning Coference at Purdue

2018 年 7 月

Olfactory functional magnetic resonance imaging in the human brain at 7 Tesla Joint Annual Meeting ISMRM-ESMRMB 2018 2018 年 6 月

Development for the refrigerant distribution of header in a micro channel heat exchanger

The 9th Asian Conference on Refrigeration and Air-conditioning

2018 年 6 月

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Interv iew Makoto G

onokam

i変 化 の 感 度 を 上 げ る

Makoto Gonokami物理学者/東京大学総長

1957年、東京生まれ。80年、東京大学理学部物理学科卒業。85年、理学博士(東京大学)。98年、東京大学大学院工学系研究科教授。2010年、同理学系研究科教授。14年、同理学系研究科長・理学部長。15年、東京大学第30代総長、現在に至る。専門分野は光量子物理学。日本学術会議会員、未来投資会議議員、科学技術・学術審議会委員、産業構造審議会委員他。著書に『変革を駆動する大学――社会との連携から協創へ』(2017年、東京大学出版会)、『大学の未来地図――「知識集約型社会」を創る』(2019年、ちくま新書)など。

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2 Challenge 2020 Vol. 04

五 神 真第4次産業革命のいま

より良い未来社会をどう築くのか

Interv iew

東京大学は2年前に創立140周年を迎えました。その140年を前後70年ずつに分けた中頃に第二次世界大戦の終戦があります。明治時代に日本という国家を構築する装置の一つとしてスタートした東京大学は、戦後、平和で民主的な国を作ろうという時にも、再び重要な役割を果たしました。今、東京大学が第三の70年(UTokyo3.0)という新たなフェーズに入るのと同時に、世界もまた大きな転機にさしかかっていると感じています。

私も出席した2019年の世界経済フォーラム(ダボス会議)のテーマは「Globalization 4.0:Creating a Global Architecture in the Age of the Fourth Industrial Revolution(グローバリゼーション4.0 - 第4次産業革命の時代に形成するグローバル・アーキテクチャー)」でした。第4次産業革命によってさまざまなものがインターネットでつながっている社会にあって、グローバル化をどのように構築していけばよいのか議論されました。

半導体エレクトロニクスの技術革新、そしてその発展として登場したコンピューターやインターネットなどの情報通信技術の革新は、私達が存在する実空間に加え、サイバー空間という新たな空間を生み出し、その結果、社会の様相が一変しました。そして今、その変化はいっそう加速しています。最近ではそれを「デジタル革命」

と呼ぶことが多くなりました。実空間で生まれる、様々な情報がデジタル化され、サイバー空間に蓄積され続けています。その膨大なビッグデータを効果的に解析し活用するA I(Artificial Intelligence)や深層学習がこの数年の間に急速に発展しています。そのようなデータ活用の流れが、社会の様々な領域にかつてないスピードで波及し、「スマート化」が進んでいるのです。その中で、長年人類が培ってきた民主主義や資本主義といった社会システムが、ある種のターニングポイントを迎えています。SNSが典型ですが、何百年も培ってきた社会や経済の仕組みとサイバー空間の世界とが、上手く整合しない部分が目立ってきています。デジタル革命の果実を上手く使うことに先んじた一部の人たちに情報が集まり、彼らによって社会や経済の仕組みも影響を受け、国というものの意義や役割も再定義せざるを得なくなっています。

資本主義は、個々の自由な活動の中で、競争もしながら世界が良くなっていくモデルであり、その考え方自体は正しいものですが、その具体的な動かし方に、不都合が生じてきています。市場原理主義がいきすぎると、先に情報を持った人、先にプラットフォームを作った人だけが儲かって、結果として富の再分配が機能しなくなり、極端な格差社会に陥ります。国の単位で見ると、保護主

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義的になり、世界の分断が進んでしまうことになります。仮に、本来国が担うべき役割まで移すなど地方分権を

極端にして権限の大部分が地方にある状態にすると、県ごとの競争が起こり、県境では軋轢が絶えなくなり、国全体が立ちゆかなくなっていきます。それに似たことが国家間レベルで起きており、国連などの力が目立って落ちてきています。それをどう乗り越えるのかを考えたとき、自由な発想の研究を基本とし、それが憲法でも守られている大学の存在は極めて重要です。何億年という長い時間スケールから非常に短い瞬時の現象の研究まで、あるいはミクロからマクロ、宇宙全体までを見るような、スケールを飛び越えた発想を喚起するのは、大学の自由でユニークな研究です。こうした研究にこそ、世界全体の新たな道筋の発見をリードする可能性が秘められているのです。

日本は世界の標準からずれている その独自のモデルの良さを普遍化しよう

21世紀に入って、なぜ日本はこんなにたくさんノーベル賞を取れるようになったのでしょうか? 英語圏以外の国で日本語のような母国語を使って高等教育をきちんと行い、研究でも世界をリードしている国はほとんどありません。鎖国していた江戸時代末の識字率は70%を超えていたとも言われ、学問を大事にする国民性も相まって、日本の学問的なレベルは非常に高いものでした。そこに、開国により西洋の社会システムを取り入れました。西洋文化を取り入れ学びながらも、単純に言語を英語に切り替えることなく、日本語を使い、日本語で思考しながら新しい学術文化を創ってきました。この日本独自の文化が、今日のノーベル賞受賞につながっていると思います。

今、高度経済成長期のように、均一的なモデルで生産性を上げていく資本集約型社会のやり方はもう機能しないと世界が気づいています。多様性を生かしながら、高みを目指して成功している国は多くないのです。そんな中で、世界における日本の立ち位置には価値があります。日本という存在が、世界全体の標準からずれているという意味で、世界全体の多様性を支えているとも言えるからです。もちろん、ムラ社会的で均質的な日本国内のあり方を変革して、多様性を尊重する努力は必要です。その努力は、多様性を必要とする世界でいっそう意味のあるものになるはずです。日本という独自のモデルの良さを、いかに普遍化するか。グローバルな視点で、相対的に日本の立ち位置を理解する必要があると思います。

イノベーションには創造性が不可欠 「人間とは何か」を理解しなくてはならない

ダイキン工業と東京大学は2018年12月に「産学協創協定」を締結し、ダイキン工業から10年間で100億円規模の資金を投資していただくことが決まりました。東京大学は、地球と人類社会の未来への貢献に向けた協創を効果的に推進するため、未来社会協創推進本部(FSI:Future Society Initiative)を設置し、学内の「知」を集積し、学内外との連携を深め、グローバルな課題解決をリードしていこうとしています。

一方、ダイキン工業は、空調ビジネスの未来を見据えた新技術やサービス・ソリューションを開発し、新たなビジネスモデルの構築を急ぎ、オープンイノベーションを掲げ、積極的な産学連携を行っていました。本協定は、両組織のトップ同士が深く共感し、「空気の価値化」をキーワードに実現したものです。「空気の価値化」は、科学技術のイノベーションだけで実現できるものではありません。社会システムの変革と、費用を誰がどのように負担するかという経済メカニズムの発明と、三位一体で進めていく必要があります。ダイキン工業の井上礼之会長は、東京大学との連携の価値について「10年で100億円は高くない」と言ってくださいました。社会に滞留している資金を動かし、新たな経済メカニズムを稼働させるには、こうした期待に対して、資金が流れる仕組みを作らなければなりません。社会を変える第一歩として、ダイキン工業とインパクトのある連携をスタートさせられたのは、極めて意義のあることだと思います。

私の総長としての目標は東大を「社会変革を駆動する大学」にすることです。価値の中心がモノにあり、製造業が付加価値創出の中心だった資本集約型社会は、今大きな転換期を迎えています。デジタル革命により、付加価値の源泉は、モノから知識や情報、サービスにシフトし、知識集約型社会へのパラダイムシフトが起きているのです。このパラダイムシフトにより、より良い未来社会、持続可能でインクルーシブな社会、すなわちSociety5.0が実現する大きな可能性が生まれています。さらに科学技術、社会システム、経済メカニズムのイノベーションを実現するためには、高い創造性とともに、人文知が不可欠です。つまり、文化的・歴史的背景、地域の特性などを正しく理解することが重要になります。

「人間とは何か」を深いところで理解しなければ、真の創造性は生まれないと思います。

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4 Challenge 2020 Vol. 04

ウェバー・ワークショップス代表

ダグラス・ウェバー現代は、合理化ではなくテクノロジーの力で向かうべき本質に近づくことが可能になった時代

Specia l Interv iew

2014年に独立し、自身のブランド『カマキリワークショップ』と、コーヒーに関わる製品を作って販売する事業を始めた。

「この村のことは20年ほど前から知っていたんです。九州大学に1年間留学していたときで、ここに焼き物の窯を持っている方が、自由に使わせてくださったんです。日本の親父みたいな人です。7年ほど前に土地を買ったんですが、当時は一面が竹藪。整地することから始めて、家を建てたのは2年ほど前です」

福岡県の山奥で製造するコーヒーミルが世界から注目を集めている

「福岡県西端の山奥」と言ってもいい住民60人の村にあって、そのウェバーさんが作っている最先端のコーヒーミルが、世界のコーヒー業界の注目を集めている。

世界最高峰とも称されるフラットバー式電動コーヒーミルEG-1 v2――。航空宇宙分野の精密部品を製造する工場に切削加工を依頼し、ミクロン単位でコーヒーの挽き目を制御できる。強力な磁石によって、道具なしでカバーを外すことができるので、毎回のメンテナンスをたった数十秒でこなせる。エスプレッソからドリップ・コーヒーまで対応できるのは、ダイアル式の目盛りで正確にミルをコントロールできるからだ。また、コーヒー豆の挽き残りが一切ないので、ブレンドされた豆でも、シングルのオリジナルコーヒー豆でも、一つのグライン

福岡空港からJR筑肥線直通に乗って西へ約40分。筑前前原は、『魏志倭人伝』に登場する「伊都国」の地とされる糸島市の玄関口だ。うらうらとのどかな駅前から車で30分。ダグラス・ウェバーさんの工房は、田を抜け、いくつかの峠を越えてたどり着いた、昔ながらの里山の麓の集落にあった。細い上り坂道の最奥。集落が切れるかと思った丘の上に、周辺の民家とは異なる2階建てのウッディハウスが姿を現した。前庭替わりの自家菜園。その一段上に立つ自宅の1階は工房になっており、工具や機材があふれるガレージ状態だった。ウェバーさんはロサンゼルス出身のアメリカ人。米アップル社で、プロダクトデザイン・エンジニアとしてiPodやiPhoneの開発に関わり、2007年、アジア圏のプロダクトデザイン・リーダーとして日本に赴任した。

5

Douglas Weber

カルバー(刃)だが、ウェバーさんオリジナルの精密設計で、他社の業務用のものより正確に刃のアラインメント

(同芯性、同面性)ができる。刃の手入れにもプロ向けと同様に道具は不要。掃除も数秒以内で簡単にできる。プロ並み以上のコーヒーを淹れたいと望む愛好家や、一杯一杯を丁寧に挽いて淹れたい人を満足させる一生モノだ。もちろんこの手動ミルも、エスプレッソからドリップまで幅広く挽き目を変えられる。別売のベースマット

(レザー製)を併用することで、使い勝手とバランスはさらに向上する。「既存の工場と組まなかったので、大変と言えば大変でした。だけど、だからこそモノ自体をゼロから作り上げられた。以前からコーヒーミルを作っている工場に持っていっても、既成概念に沿ったものしか出来ないし、本当に作りたいものは作れないと思っています。それに僕の新しい考え方や特許にしない技術・ノウハウをわざわざ教えるつもりもない。そもそも他ができないところを、こちらで発明し、開発しなければ面白くないでしょう」

電動コーヒーミル

ダーで挽くことができる。回転数も可変でき、500RPMから1800RPMまで自在に調整できる。頑丈なCNC削り出し筐体なので振動も少なく、静かに作動するのも好まれる理由のひとつだ。

コーヒーミルを製造している工場は世界にいくつもあるのだが、既存の工場と組んで

「改善」することには全く興味がなかったという。自分がベストと思えるマシーンを、ゼロから創りたかった。一つの課題に対する解決策がたくさん存在する時代なので、最適な答えを市場に求めるのではなく、信じる答えを市場に問わなければならない。「マーケティングはカスタマーをハッピーにしていない」が、ウェバーさんの信念でもある。

手動ミルHG-1に搭載しているのは、通常は数十万円もする業務用ミルに入っているのと同じ83mmのコニ

EG-1 v2は、世界最高峰といわれるフラットバー式電動コーヒーミル。エスプレッソからドリップまで淹れられる。航空宇宙分野の精密部品を製造する工場に切削加工を依頼。ミクロン単位でコーヒーの挽き目を制御できるうえ、強力な磁石で組み立てられているため、メンテナンスはカバーを外して数十秒でこなせる。

アメリカ・ロサンゼルス出身。スタンフォード大学在学中に京都大学、九州大学に留学。2002年、米アップル社に。「アイポッド」や「アイフォン」などの開発にプロダクトデザイン・エンジニアとして参加。2007年、アジア圏のプロダクトデザイン・リーダーとして日本に。2014年に独立。

HG-1は、通常は数十万円もする業務用ミルに入っているのと同じ83mmのコニカルバー

(刃)を搭載した手動ミル。他社の業務用のものより正確に刃のアラインメント(同芯性、同面性)を実現。刃の手入れも、電動と同様に道具は不要で、掃除は部分的に取り外すことによって、数秒以内で簡単にできる。

手動ミル

マーケティングはカスタマーをハッピーにしていない

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6 Challenge 2020 Vol. 04

じつは、コーヒーマシーンの業界は、業界として50年から60年間大きな展開がなく、停滞していた。「業界自体が一応それ

で満足しているというか、そういうものだと思いながらやってきた」という。

コーヒーを淹れる職業「バリスタ」が注目されるようになり、コーヒー業界は活性化しているように見える。ところが、機械がそれに追いついてきていない。おまけに、世界的にその認識がない、という現状なのだ。「刃はミルの命。刃は精密に作られているものがないではないが、これを司る機械、載ってるモーターなんかがすごく雑だったりする。高性能な機械で高性能なものを作っていても、大量生産で鋳造するダイキャストだったり、すごく精度が悪い部品を載せたりして」

微調整しようとすると再現性がなかったり、豆の粉が中に付着して、入れた量だけ出てこない。掃除もできない。「問題だらけ。もっといい道具があれば、もっと色んなことができると、みんなに証明してあげたい」

では、メーカーの人間が見失っているものは何なのか?「見失ってるだけじゃなくて、自分たちの惰性に気づいていない。たとえばボイラーはこういうものだ、ボイラーはマニュファクチャリングで変わってくるものだと思い込んでいる。そうではなくて、そもそもボイラーの役割は何か、というところを自問自答していない。思っていても、結局大きな会社の中の一人だから、そんなに影響を及ぼせない。惰性をくつがえす力がない、と思ってしまう」

ウェバーさんは1980年代に、ロサンゼルス郊外で育ったが、その当時は日本からの駐在員家族が多く住んでいた。一番仲が良かった親友も日本人で、日本語はその母親から教わった。親友一家が帰国したあとも、日本

への関心は強く、スタンフォード大学3年のときには京都大学に交換留学した。卒業の際にアップル社の採用が決まりかけたが、実社会に出る前にもう少し学びたい、と九州大学に留学した。陶芸に熱中したのはそのころのことだ。

2002年に帰国してアップルに声をかけると、採用が決まって入社した。「でも、そのころアップルはどん底状態でした」

株価も1ドル台で低迷していた。しかしその状態を、ダグラスさんは「だからこそ、何でもできそう」ととらえた。その考え通り、入社するとすぐに「iPod nano」チームの初期メンバーに抜擢された。どう組み立てれば、携帯オーディオをもっと薄くできるのか――設計から素材の選択まで、日々追求し続けた。「アップルで学んだのは、既成の発想や技術を安易に真似るのではなく、必要な素材も技術も世界中を調査して、まず最高峰のそれを知ること。そこから実用化の具体策を模索して行けばよい、というモノづくりの基本でした」

素材も加工技法も、展示会やカタログなどを見て気になった企業には全て電話をかけまくり、メールではなく、ここぞと思えば世界中の工場を実際に訪ね歩いた。「まず現場に行って自分自身の目で確認し、感じ、コミュニケートしないと、相手からは信頼されないし、ビジネスもできない」

いまも使われている、ディスプレイに指紋を付きにくくする技術の開発などは、こうして実現したのだ。

惰性の中でモノ作りの本質を見失っている

アクセサリー

「いくら食材が良くても、包丁がさびていたら美味い料理はできないでしょ。コーヒーも同じです」とウェバーさん。ミルは、刃が命。もともと「超」コーヒー好きで、コーヒー用機器を買い集めて分解し、改造するのが趣味だった。「欲しいのに世の中にまだないコーヒー道具を作り出したかった」という。

ミルだけでなく、自分が理想とするコーヒーアクセサリーも独自に設計。ローストした豆の酸化を抑え、一杯ごとに計量できるこのセラーは、蓋にシリコンの弁が埋め込まれており、焙煎したての豆が発する二酸化炭素で酸素を押し出す。一杯分の豆を入れておけば、酸素に触れさせる事なく貯蔵でき、ミルで挽くことができる。

別売しているレザー製のベースマットを併用することで、使い勝手とバランスはいっそう向上する。

刃が命

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プロダクトデザイン・エンジニアとしての仕事に没頭して5年ほど経ったころ、「日本」への思いが再燃する。

「もう一度、日本で働きたい」その思いを実現するため、ウェバーさんは、「モノづ

くり大国・日本の中小企業に眠っている技術を掘り起こして、アップル製品の開発に役立てたい」と会社に提案する。その発言の裏には、「日本語で技術が語れるのは自分だけ」という自負もあった。

モノづくりの核心を学び、デザインの力にインスパイアされながらも、ウェバーさんの中には、アップルに対する疑問も生まれていた。07年に「iPhone」が発売されたのだが、会社の規模が大きくなりすぎて、自分が情熱を注いできた会社とは別の顔になった。株価は100倍にもなっていた。中国の工場では、数年前のスマートフォンを、まるで最初から不要な製品ででもあったかのように、山のように廃棄していた。「数年で寿命がなくなるものではなく、一生使える製品作りに情熱を傾けたい、と痛烈に思いました」

そして2014年。ウェバーさんは独立して今の事業を立ち上げた。もともとコーヒーが大好きで、コーヒー用の機械を買い集めては分解して改造するのが趣味だったのだ。「欲しいのに世の中にまだないコーヒー道具を作り出そう」

ウェバーさんは、当時共鳴していたロサンゼルスの友人に販売を依頼しながら、24時間体制でデザインと開発に取り組み始めた。

2016年にネットで発売すると、従来にない性能の高さと機能美が愛好家の心をつかみ、10万円以上する手動グラインダーも、約35万円の電動タイプも、世界中から注文が殺到しているという。

製品を手にとって見られるよう、2月に福岡市の薬院にカフェを開いた。2号店も準備中だ。自分が抱いている夢に比して、少しスピードが遅いかなとは思う。「周りから見ると速いのかもしれないけれど、自分の手は2つしかないから、いろんな人の力を貸してもらっています。でも追いつかない」

だからスタッフをふやし、もっとさまざまなことを実現できるように、飛び回っている。オフィスも2回引っ越した。機械は全部、新しいオフィスに移動した。「今度は海から歩いて2分くらいのところで、300坪くらい。周りの景色も本当に素敵。恰好いいし」

数年で廃棄されるモノではなく一生愛されるモノを作りたい

Specia l Interv iew

現代とは、機械と材料の発展がモノの本質に近づくことを可能にした時代だ。「たぶん僕がやろうとしているのは、価値ある技術とは何なのかを見極めて、本質に近づこうとすること。コストのためにやってるわけじゃなく、合理化のためでもなく、あるべき姿に近づこうとする。究極のものになろうと挑戦しているんだと思う」

二人目の子どもを得て、私生活もますます充実した。ウェバーさんは福岡の小さな村で、モノづくりの核心を見据えながら、現代に挑戦する。

福岡市薬院、東映ホテルの1階にKAMAKIRI COFFEEをオープン。コーヒー好きに愛されている。最近、西鉄平尾駅に2号店をオープンした。パリで育ったフランス人と日本人のハーフの妻との間にできた2人の子どもも、ダグラスさんの宝物だ。

もう一つの宝物

「今、一番注力しているのはエスプレッソマシーンです。でも、マシーンを開発するだけじゃどうにもならないと思うから、台湾の協力会社と組んで、生産ラインを構築しています。安全確認とか、対費用効果の検討とか」

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8 Challenge 2020 Vol. 04

「世界を変える」より、まわりの笑顔が見たい

既存の枠組みやプロセスを変えるような「面白い」ことをしよう

フェアリーデバイセズ株式会社は、東京大学関連ベンチャー企業だ。その藤野真人代表取締役と協創を進めるのは、テクノロジー・イノベーション戦略室の近藤玲、丸川英也。3人は、何を変えようとしているのか。

Symposium座談会

右から藤野代表取締役、近藤課長、丸川。対談は、8月末にダイキン本社で行われた。

ダイキンと協創することに よって、最終顧客に届けたい

東 2019年11月にリリースを控えている新しいデバイスはどのようなものになりますか?藤野(以下、藤) 人が得意なことは人に。AIが得意なことはAIに、という考え方を基本にしながら、それをいかに「人間とつなぐか」という部分を工夫のポイントにしています。しかし、リリース前なので、具体的に言えない部分

もあり、申し訳ありません。近藤(以下、近) 藤野さんとダイキンが目指す協創を、少し話すと、藤野さんがリリースするデバイスは、あらゆる世代を超えたコミュニケーションの繋がりと、国境を越えた、文化を超えたつながりを、おそろしく強化できるようなテーマになるはずです。 ダイキンとしては、そのデバイスを活用するテーマで協創させてもらっています。東 藤野さんは、なぜダイキンと

の協創を決められたんですか?藤 我々が作るものは、いわゆるソフトウェアとクラウドシステムなんです。だから、我々の製品単独では、最終の顧客に認知してもらえないんです。しかし本来は、製品がどういうシーンで役立てるのか、そこまで作っていかないと意味がないですよね。近 ダイキンは空調メーカーなので、サービス全般を見ると顧客とのつながりがものすごくある。さらにグローバルな広がりもある。

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テクノロジー・イノベーションセンターChallenge 編集長東 研一

Navigator座談会の

1981年生まれ。2005年東京大学農学部生物情報工学研究室卒業、2007年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻退学。同年「使う人の心を温かくする一助となる技術開発」をテーマに、フェアリーデバイセズ株式会社を設立。

ルールやプロセスを   根本から変える「面白さ」

東 藤野さんと近藤さんが出会われたのは、2018年6月末だったそうですね。藤 はい。ダイキンさんの本社でお会いしたんですが、まず「お友だちになってください」と、近藤さんにお願いされました(笑)。近 そうなんです。 もともとは、TICセンター長の米田(裕二)から「面白い人がいる」と紹介されたのがきっかけです。 私は、2018年5月1日付の辞令で、東京大学連携のブリッジパーソンとして東大に勤務することになりました。もともとインバーターやモータの電気系のゴリゴリの技術者だった。だからベンチャー企業とはどんな文化で、どんな方々が働いているのかも分かりませんでした。東大関連のベンチャー企業の社長としてお会いしたのは藤野さんが初めて。だから、素直に

「まったく文化が分からないのでお友だちがほしいです」と言ったんです。藤 横のつながりが少ないのが日本のベンチャー企業の弱さだ、と言われています。たしかに、僕もいろいろなベンチャーの集まりに行くけれど、あまり面白くない。

「集まって面白いことはできないのかね」という話を、ちょうど僕の周りでしていたタイミングで、

「ダイキンという大企業が接触してきたぞ、みんな集合!(笑)」みたいな感じでしたね。近 藤野さんに声をかけていただいた4社くらいのベンチャーさんと、ある事務所に集まって、コンビニで買ってきたお酒で乾杯しま

した(笑)。東 何度か「面白い」という言葉が出てきています。藤野さんが考える「面白い」とは、どういうことでしょうか?藤 それは比較的明確で、既存の仕組み、ルールもしくはプロセスを根本的に変えることができるようなことです。「ちょっと改善します」くらいだと、僕にとってはあまり面白くない。近 それは僕も同じです。藤 パソコンがこの世に登場しましたとか、iPadなどのタブレットが生まれて仕事で使うようになりましたとか、新しい技術が先に生まれて、その技術によって仕組みが変わる。もっと言えば、政治制度のような国のあり方も、テクノロジーが発明されてそれによって仕組み、制度が変わってきますよね。我々が今やろうとしていることも、そういうことであって、パソコンやタブレットが、新しい仕組みを創造していくような、そんな面白い仕組みができればと思っています。

チームにはモチベーションとゴールの設計が必要

丸川(以下、丸) 僕は、2年前にダイキンに中途入社しました。前職はドローンのベンチャー企業でした。それまでのしがらみがないので、社内の垣根を超えて、どんどん色々な人のところにいって話を聞いてきました。近 TICのTであるテクノロジーは強いですよね。肝心なのはIのイノベーション。Iは色々な出会いも含めてやらないと面白くならないように思います。たくさんの出会いをもとに、考えも変わり、

テクノロジー・イノベーションセンターテクノロジー・イノベーション戦略室丸川英也1984年生まれ。 2009年オムロン株式会社入社。2013年ドローン世界シェアNo.1企業DJIのDJI JAPAN初期メンバーとして立ち上げから参画。2017年ダイキン入社。ベンチャー業を担当する傍らドローン普及活動を行う。

テクノロジー・イノベーションセンターテクノロジー・イノベーション戦略室担当課長近藤 玲1983年生まれ。2008年大学院修士課程修了。同年ダイキン入社。入社後は、インバータエアコンの電磁ノイズ、電装品の放熱、モーターの振動対策に関する研究開発を担当。2018年より東京大学に駐在。

A Iは、決して「打ち出の小槌」ではありませんが、創造力を高めるために、最大限に活用すべき強力な道具だと実感しています。

フェアリーデバイセズ株式会社代表取締役藤野真人

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10 Challenge 2020 Vol. 04

Symposium座談会

藤野社長は、「使う人の心を温かくする一助となる技術開発」をテーマに音声認識技術の研究や、mimi®

といったソフトウェアやFairy I/O®といったハードウェアの開発を手掛ける。

持てる技術の幅や枝が増えていくと思います。その点でも、TIC内の垣根を超えて丸川がそれを促進してくれました。丸 販売している人の話を聞きたいと思ったら聞きに行く。開発の人が多かったら、どういう人がその職についているのか、極力聞くようにしました。本社に行って、経営企画の人とつながったことで、各部署のキーマンを紹介してもらったりしました。藤 少し前だったら、企業でも1人の人間の力でできた時代だったのかな、と思います。しかし、これだけ情報がグルングルン流通しちゃって、自分が考えたことは世界の100人は考えているような時代になると、1人の独走によって何かを生むのはとても厳しい。だからこそ人と会って、その人の持っているものや考えていることを聞いて、頭の中をかきまわされて、というようなことが必要ですよね。ググって検索して出てきた情報は、ただ単にインプットされるだけだけれど、人に会って話すと新しいアイディアが検出される。あれはなんでしょうね。「情報に触れる」というのも同じ。人と話している時って、ググっているのとは別の何かが刺激されているような気がします。近 実際、藤野さんと関わったうちのメンバーは、みんな目が輝いていきます。東 なぜなんでしょう。近 社会的変化が起きそうな、強いインパクトが起きそうなものに触れると、自分がやりたい、と思うんでしょうね。「やらされた感」ではなく、「自分はこれをやりたいんだ」と主体的になる。そして

その先にある変化も具体的に見えてくるんだと思うんです。東 面白いと思えればモチベーションが上がる。ゴールが想像できて、その価値が分かる。藤 その2つを実際にやり慣れてくると、自分で推進していく力になっていくんだと思います。今、ダイキンさんと一緒にやらせてもらっているものも、まだ世の中にない概念。まだ世の中にはないデバイス。それは、AIやIoTのデバイスの世界では、枝葉ではなく幹の方に行っている自負はあるんです。幹の方で、まだない新しい概念って、基本はアメリカで生まれることが多い。だからある意味、うちの会社にもリスクがあることではある。しかし、先ほどの2つのポイントで、一緒に仕事をしていただいていること自体が、自分のなかでは非常にありがたいし、面白いし、奇跡的だと思っています。

スタートアップの一番の 醍醐味は人との出会い

丸 3つ目のポイントかもしれないですが、僕たちって新しいことを起こす、時代を切り拓いていく自負みたいなものはなくて、人が楽しくなるような技術を開発した

い、と思っていますよね。近 人の笑顔が見たいだけ、とか。藤 役に立ってくれているのは一番嬉しいですよね。丸 昔携わっていた開発工数削減の技術テーマも、同期の人間がただ笑顔で家に帰れるようになってほしいと思って進めていました。藤 欲望に根差した話かもしれないね。ベンチャー企業のスタートアップの一番の醍醐味はなんですか? と聞かれたら、人との出会い。一番の辛さは人との別れ。 たとえば5人の組織で、6人目にすごい天才が入ってきたら、たとえば1億円の売り上げが、1人の成果で10億円になるかもしれない。そんな世界ですから、この1人と出会えたら会社は生き残るし、出会えなかったら死ぬ。そう思って働いていれば、出会った瞬間の喜びは単純にすごい。反対に会社が嫌いだからやめると言われたらすごく悲しい。だからベンチャーといわれる人たちには自然と、「みんなの幸せが自分の幸せ」という感覚が出てくるんでしょう。近 たとえば、故大山技師長は「世界のモータ効率が1%上がれば原発が1基なくなる」と話されていました。単に電気代が安くなるの

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ではなく、社会的インパクトで表現されたビジョナリーなひと言だと思います。ほかの見方では、省エネ効率が上がれば、電力不足の地域で、多くの人が電力の恩恵を受けられるなどもあります。社会的変化が起こると発想して、その目標に向かって働いている人との違いですね。東 使う人がうれしいからやるという考え方は、大きな企業でも大事ですね。近 確かに大きな企業の中で働いていると、あまりそういう見方で話さないんですが、外で、どちらかというとインパクトのあることをやろう、面白いことをやろうと思っている人たちには、そういう話し方をする人が多いように思います。

インターネット上の仮想部署「アベンチャーズ」

東 ところで近藤さん、「アベンチャーズ」ってなんですか?近 え、突然!(笑)。web上で情報を共有するチームを作っていて、それを映画の「アベンジャーズ」と「ベンチャー」で造語して「アベンチャーズ」と呼んでいます。メンバーはそろそろ50人くらいになっていると思います。

丸 それはTICだけじゃなくて、営業とか経営企画とか、事業戦略室とか、色んなところの人がメンバーに入っていて、1人では得ることのできない情報が集まってきています。近 バーチャルで情報共有しているので、場所も関係ない。東京で話したことをwebに上げて大阪から反応がくる、ということがリアルタイムで行われています。東 部署を超えたインターネット上のつながりなわけですね。藤 しかも、緩い横のつながり。近 やりたいとか、面白いことをしたいという人が集まっているので、緩いけれど強いんです。藤 そこに参加している動機が強いということですよね。東 それは誰でも参加できるんですか?近 はい。東 技術屋さんでも?近 もちろん。だって、僕が元々技術屋ですから(笑)。やりたいことがあれば、ちゃんとできます。技術屋さんは、たぶん僕と比べると超まじめ。嘘じゃなくて、ホラを吹けないと思う人。だから理想を言えない。でも本当は、妄想や理想を追求するのは、絶対うまい。

幸せの範囲を何度も   計算しながら、一歩踏み出す

東 「アベンチャーズ」がダイキンを変えてくれそうですね。近 はい。ただ、仲間が増えてくれるといいな、と思ってはいますが、会社を変えようと思ってやっているわけではない。自分の過去の経験からも、何かを変えようとすると、たいてい問題が起きる。藤 アベンチャーズの働き方って、完全にベンチャー企業の働きかたそのものですよね。一人ひとりが優秀だったら、「我々はこういうものだ」という文化を示して、文化的管理とタスク管理でなんとかなる。行動管理は必要ない。しかし、行動管理が必要になると、それこそ大企業みたいになっちゃう。ミニ大企業ですよね。それは、100人手前くらいになると起きる。僕の周りのベンチャーも、現にそういうところがあります。東 妄想を膨らまして、やりたいからやるんだ、というのは、会社を変えていくと思いますよ。丸 確かに、入社してすぐの頃は会社に文句を言っていた人が、「アベンチャーズ」に入って、自分の意思で動くようになって、「最近

全員が30代で年齢が近いこともあり、座談会は笑い声に満ち、終始和やかな雰囲気で進んだ。

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12 Challenge 2020 Vol. 04

Symposium座談会

めっちゃ会社が好きです」と言っている人もいますよ。藤 さっきも丸川さんが言ってましたけど、隣の同僚を早く帰れるようにしてあげたいとか、身の周りを変えるというのは、モチベーションになる。きっと、その存在が近ければ近いほど、モチベーションになるんじゃないかな。近 身近なことですから、現実として見えてくる。世界はそのあと勝手に変わったらいい(笑)。藤 ただ、ある程度の社会的インパクトがあることを見越した上で、一歩目は踏み出します。 

後輩によく言うことなんですが、あなたの考えているその計画は、120%妄想通りに成功したとしてどれくらいのインパクトがあるんですか、と。年商10 億ですと言われると、それに自分の時間を費やす価値はありますかという質問になっちゃう。近 最低3000億円でしたっけ?藤 だって120%ですよ。120%の妄想なら3000億円くらいいってもいいじゃないですか。絶対120%成功なんてしないですから。

「変えてよかった、みんな幸せになってくれた」という、幸せの

範囲の計算を、僕は何度もしている。だから、後輩にもそう言うんです。それは自分に対しての戒めでもあるから。

会社を利用するような  新しい会社員の働き方

藤 ダイキンさんはオープンイノベーションについて積極的ですよね、と誰に会ってもみなさんおっしゃっています。それは本当にその通りだと思っていて、今まで我々がお付き合いしたお客さまも含めて、こんなことはない。CVC

ンの中で、個人の社員がある程度自由裁量をもたされて動いていますから。実際にどういう風に問題を解決するかは、それぞれに任されている。 だからこそ、そこに個性が現れるわけで、それがまさに近藤さんの個性ですよね。進め方というのが、僕の勝手な予想ですけれど、当初会社が想定していたような、期待していたようなものを大幅に超えてしまった。ある意味、あらゆる方面で壊してしまって、違うベクトルで進み始めた。丸 たしかに、アベンチャーズも、みんな自分から手を挙げてきた人ばっかりですからね。藤 それは、すごく面白い話ですよね。近 ただし、手を挙げたにもかかわらず、指示待ちみたいなのはうまくいかない。だから、やりたいことをとにかくやっていくこと。本当にやりたいことを持ってやってきた人たちが、何かを創るのだと思います。藤 会社に利用される社員ではなくて、会社を活用する社員になれ、ということかもしれません。これって、本当に「言うは易し」ですけれどね(笑)。丸 自分たちがやりたいことを、認めてもらう。そのことを通すためには、いろいろと戦略も練っていかないといけない。近 一方では、ダイキンという、グローバルに体力のある日本の企業だからやれることだと思っています。ある意味、ベンチャー企業ではできないことができる。絶好のいいタイミングのなかでやらせてもらっているので、本当に感謝しています。

「とくに大事にしているのはワクワク。誰よりも楽しく働くこと。新しいことをやろう、今までの価値とは絶対違うことをやろうと話しています」と藤野社長。

をお持ちの会社さんにしても、近藤さんみたいに、百何十社に積極的に会いに行っている人なんて、大企業にはなかなかいない。企業の社会的責任としてではなく、本当にイノベーションを起こそうとしているのが、確実に伝わっていると思います。近 私自身、ベンチャー企業の社長の方々にお会いできて、お話できるのは、ダイキン工業というバックボーンがあるからだと思っています。藤 それはそう。会社のミッショ

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情報を「遠くに」「速く」「たくさん」伝えることを目指した人類は

IoTの時代に何を伝えるのだろうか?

表情や言語によるコミュニケーションから始まった人類の「伝える」手段は、より遠くへ速く、を目指した。「叫び」や「狼

の ろ し

煙」「絵」に拠っていた伝達量は、文字や紙が発明されることによって、飛躍的に増大した。郵便制度が確立され、流通システムは「世界」に広がった。

産業革命後には、時間と空間を超え、リアルタイムでお互いの情報を伝えあう「電話」が普及。人類のライフスタイルは一変した。

そしていよいよ「インターネット」が登場。情報は瞬時に地球を駆ける。高度な情報化社会になった現代、情報伝達手段をどう活用していくのかが問われている。

人類の情報伝達の手段

伝える特集

ヨハネス・フェルメール《手紙を書く婦人と召使い》(アイルランド・ナショナル・ギャラリー蔵)

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14 Challenge 2020 Vol. 04

情報を「運んで」「伝える」

コミュニティが誕生し情報を速く正確に「伝える」重要性に目覚めた

人類は言語を発明し絵から文字を生んだ

後期旧石器時代(5~1万年前)の壁画から、人類は、この頃には絵で情報を伝えていたことがわかる。その後、絵は文字に変化。古代の文字の代表格はエジプトのヒエログリフ。

星名定雄『情報と通信の文化史』(法政大学出版局)によると、トロイア戦争を描いたアイスキュロスの悲劇『オレステイア』のなかで、トロイア陥落の報は、いくつかの山や高原を狼煙リレーによって伝えられ、一晩のうちに届いたとされている。

トロイア戦争の結果を伝えた「狼煙」

視覚伝達の代表は「狼煙」だが、その最高技術はフランスで考案された「腕木通信」といえるだろう。塔に建てた支柱の先端に3つの支点をもつ腕木をつけて、それを操作して遠方と通信。19世紀にはフランス全土を結んだ。

フランスで発達しナポレオンも重要視した腕木通信

コミュニケーションとしての「伝達」の起源は、人類の誕生までさかのぼることができるだろう。およそ400万年前にアフリカで生まれた初期の人類アウストラロピテクスも、お互いの意思を伝えあうことで、集団で狩りをして

とされ、それは、紀元前5世紀、アケメネス朝ペルシア帝国の大王ダレイオス1世の「王の道」整備に継承されていく。大王は、広大な帝国を制する生命線は、迅速な交通と通信、情報伝達だと知っていたのである。

いたとされる。顔の表情や身振り手振りのコミュニケーションから、やがて言語が生まれ、伝達できる情報量は飛躍的に増えた。今回は、情報を運んで伝える「情報伝達技術」の変遷について考えてみたい。

古代ギリシア神話にも  登場する「狼煙」

もっとも古い情報伝達技といえば、遠くに向けた呼び声や口笛など、人間の声がその役目を果たした。古代ペルシアでは、大声で伝言リレーをして情報を伝えていた

トロイ

ミケーネ エーゲ海

イダ山

ヘルメアン山アトス山

マキストス高原メッサピオン山キタエロンアエギプランクトスアラクナエウス

トロイの勝利を伝えた狼煙ルート(前13世紀)

出典:星名定雄『情報と通信の文化史』(法政大学出版局)

《古代の通信「エジプトの飛脚」》(郵政博物館蔵)

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出来る限り早く受け取れ。利益の機会は短いラテン語の格言

また、紀元前6世紀頃の人とされるホメロスの英雄叙事詩『イーリアス』、『オデュッセイア』にも登場するトロイア(現在のトルコ北西部)戦争の勝利の報は、あらかじめ準備されていた狼煙の伝達リレーによって、エーゲ海を渡り、550㎞ほど離れたギリシアのミケーネ王宮に伝えられたとされている。トロイア戦争がフィクションでないとすれば、紀元前13世紀頃には、狼煙は高度にシステム化され、人類の通信技術として確立されていた可能性を物語る。その後、視覚による情報伝達術は、ナポレオン1世が重要視した腕木通信ネットワークに引き継がれていく。18世紀、フランス革命の最中に開発された「機械式の手旗信号」ともいえるの腕木通信網は、電信通信が登場するまでの60年間、音速の3倍以上の速さでフランス各地を結んだのだ。

文字が発明され、より正確に「伝える」ことが可能に

狼煙は、できるだけ速く遠くへ

情報を伝達しようと望む人類の知恵ではあったが、情報量は極度に少なかった。一方で、より正確な情報を詳細に伝達するために、人類は、言語を、絵を、そして文字を生み出してもいた。文字は保存できるため、情報は時間と空間を超越することになった。文字による詳細情報にいつでも、どこででもアクセス可能になったのだ。記号から進化したエジプトのヒエログリフやシュメールの原楔形文字、クレタ文字などはじつに紀元前3000年以前から読み書きされていたと推測される。古代の中央集権国家は文字と、それを運び伝える使者や伝令を活用することによって、領内の情報をいち早く収集し、問題を解決し、国家を治めることに成功したのだ。

市井の人々が郵便の恩恵を受けるようになったのは17世紀になってから。「手紙」は、オランダ黄金時代の画家フェルメールの重要なテーマの一つだったが、王侯貴族や教会、大商人が独占していた「文書による伝達」は、均一料金が設定され、近代郵便制度が確立されることによって、大衆のメディアになったのである。

古代日本の長距離通信も「狼煙」だった。弥生時代にすでに使われていた跡も見つかっている。大陸との往来が盛んになると、手紙や親書が船や馬を使って届けられた。当時の国内の通信インフラとしては、早馬による駅制が挙げられ、大化の改新以降、本格的に整備された。鎌倉時代には京都と鎌倉の間を、伝馬を使って書状を届ける「六波羅飛脚」(上図)が走った。

日本における情報通信手段の歴史

人類の情報伝達の手段伝える特集

中村洗石《早馬の図》(郵政博物館蔵)

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16 Challenge 2020 Vol. 04

空間と時間を超えた情報伝達手段

電信からインターネットへ「通信革命」がライフスタイルを変えた

究極の通信手段「電話」の誕生

ベルが電話機を発明した2年後、アメリカのボストン近郊のニューヘヴンで、電話サービスが始まった。やがて、家と家の距離が離れている農村地帯を中心に重宝されるようになる。当初は、電信同様に緊急時の通信手段だった。

世界初の電信は「神が造り給うたもの」

モールス(右上写真)が最初に送った電信は聖書の一節「What hath God wrought (神が造り給うたもの)」だった。右は、モールスが発明した電信機。日本初の電信機は松代藩の佐久間象山が1849年に作ったものとされる。

インターネットの起源は一般的に、アメリカの4つの研究施設を繋ぎ1969年に始まったパケット通信コンピュータネットワークARPANET(アーパネット、右写真)とされている。1990年代に一般に広がると、電話に次ぐ情報通信革命を起こした。

インターネットが誕生文化やビジネスは激変した

記録・情報を運ぶ速度は、人間の走る速度や、乗り物の速度によっていた。古代エジプトの使者から郵便船まで、本質的な変化はない。情報伝達技術の分野で、画期的なイノベーションは、長い間起こらなかったといっていい。

電信の誕生で情報伝達手段の近代化が進んだ

そんななか、情報伝達技術におけるブレイクスルーになったのが、電信の登場である。アメリカ人のサミュエル・モールスが、ワシントンとボルティモア間のおよそ60㎞に電信線を通し、1844年5月に電気と磁気を利用した通信

に成功している。これに「電話」の登場が続いた。

スコットランド出身のアレクサンダー・グラハム・ベルが、1876年3月、「ワトソン君、こっちに来てくれ」と、電話で助手に伝えたのだ。

しかし電話は、電信とは違い記録に残らない。そのため、発明当時は電信に劣るとされた。ところが、電話網が一定程度整備され、一般家庭にまで浸透すると、このインタラクティブなコミュニケー

事業をスタートさせたのである。通信には、アルファベットを短

点と長点を組み合わせてコード化したモールス信号が採用された。1895年にはイタリア人のグリエルモ・マルコーニが無線通信実験

《モールス電信機》(郵政博物館蔵)

《アレキサンダー・グラハム・ベル氏発明の電話機》(郵政博物館蔵)

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「エアネットサービスシステム」は、ビル用マルチエアコンを対象に、電話回線を使ったダイキン独自の遠隔管理システムで、1994年に発売された。運転状況を、サービスセンターが24時間遠隔監視するもので、万が一故障が発生した場合、サービスエンジニアが夜間・休日を問わず2時間以内に到着するサービスが多くの顧客に支持された。このサービスは、接続相手とそれによる通信情報も飛躍的に増加させ、単体の動作制御から連携制御、さらには状態監視や故障予知にまで、通信による機能が拡張されていった。

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空調システムの「伝える」仕組み

空調のコンディションをベストに保ち省エネ化、機器の長寿命化を実現する

「エアネットサービスシステム」機器の異常を

人類の情報伝達の手段伝える特集

エアネットサービスシステムでは、およそ25年におよぶ大量のデータを分析。軽微な不調を早期に検出し、修理するほか、故障予知も行う。これによって修理費用がかかる重故障のリスクを低減できる。また故障予知や、修理は必要なくとも、予防保全や運用改善を、単なる経年数での判断ではなく、遠隔監視で得られた実際の機器稼働データをもとに、ユーザーのニーズにあった方法で提案できる。

A

B

伝える

空調機の「伝える」は、空調機内の通信(室内機/室外機間)と、室内機の情報通信(リモコンで運転/停止や設定温度などの変更)からスタートした。右は、無線リモコンの「トビコン」が付いた家庭用のインバーターエアコン。やがて複数のエアコンを1つのリモコンで管理する集中リモコン通信へと進んでいく。

エアコンの「伝える」は一方向のみの情報伝達だった

情報をもとに機器の検査・修理へ

❶ 熱交換器の汚れ❷ エアフィルターの汚れ❸ 送風機の異常❹ 圧縮機の異常❺ 熱交換器の汚れ

ションツールは、人々のライフスタイルそのものを変えた。

インターネットの登場  IoTの時代に何を伝えるか

インターネットも当初は電話回線を使う通信伝達手段として1960年代に開発された。現在は、通信技術の進歩で情報を送る速さと量が格段に高まり、音声のみならず、音声と動画がリアルタイムで伝えられるビデオチャットも誕生。時間と空間をほぼ完全に超越することになった。いよいよ、すべてのモノがインターネットで常に繋がるIoTの時代を迎えたのだ。

ダイキンはおよそ25年前から「エアネット」サービスでユーザーと直接つながる仕組みを作ってきた。それ以来、通信インフラの情報量や通信速度は、25年の間に

加速度的に高まった。インターネットを通じたユーザーとの繋がり。そこでは、何を伝え合い、どんな新しい価値の創造に取り組もうとしているのか。

室内機

室外機

❷ ❸

❹❺

故障予知 室外機故障予知項目の一例

「エアネットサービスシステム」は、ネットワーク通信の時代の到来を告げるものだった。

※予知項目は代表例です。

ローカルコントローラ(LC)

データを選別•編集し、定時発報データとして1日1回エアネットセンターのホストコンピュータに送ります。(現地で取り付けます。)

異常発生後2時間以内にサービスエンジニアが到着

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18 Challenge 2020 Vol. 04

機動力のある顧客価値提案のためには遊び場が必要

空調システムの潜在ニーズを掘り起こしていく

熊田が考える「ソフトウェアのオープン化による遊び場づくり」のモデルの1つはファミコン。任天堂は「ハードもソフトも独占することができたが、ソフトやインターフェイスを他社に作らせて、人気を広げた」と分析する。

ファミコンには、ソフトをみんなでつくる「遊び場」がある

1981年生まれ。2006年にダイキン入社。2012年からDENV(ダイキンヨーロッパ)へ。コントローラ等の I T 商材のマーケティング・商品企画などを担当する。2018年にTICへ。

「情報伝達技術が進化する中で、伝わる情報の量や問題解決の方法が、格段に増えてきました。その結果、お客さまが持っていらっしゃるハードウェアへの課題意識は希薄になるのではないかと思っています」と話すのは、情報通信TICグループリーダーの熊田俊昭

しかし、同様の他のシステムも登場し、エアネット自体のサービスの追加、機能のアップなど、革新的な進化の余地が少なくなってきているのも事実だ。空調機の省エネ対策も10年間でユーザーに広く浸透。省エネは付加価値ではなくなってきている。「これまでも、空調機を届けた後にどんな付加価値を足していけるかを考えてきましたが、それ自体、全く新しい考え方で挑まなければならない。IoTの技術が進化し、通信インフラが整備され、コストがものすごく下がってきた。だからこそ、それを活用して、お客さまとの接点を増やしていく必要があると思っています」

買い替えまで、業務用であれば15年。成熟市場である空調機マーケットにあって、「次もダイキンに」と思ってもらえるようなユーザー体験をデザインし、繋がり続けていかなければならない。「『課題だとは思っていないけれど、やってくれたら嬉しいな』ということ、お客さまがもっとハッピーに暮らせる付加価値を、データを分析して見つけ出して、伝え

主任技師だ。

問題意識が希少化する現代何でユーザーとつながるか

ダイキンの「エアネットサービス」は、空調機と中央センターが繋がった先鋭的な修理派遣システムとして、25年の歴史を有する。

コミュニケーションでもっとも大事なことは、言葉にされないことに耳を傾けることだ。Peter Druckerピーター・ドラッカー

オーストリア・ウィーン出身、20世紀の経営学者・社会学者。経営学やマネジメントに関する世界的な権威である。

テクノロジー・イノベーションセンター情報通信グループリーダー 主任技師熊田俊昭

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「伝える」の Navigatorテクノロジー・イノベーションセンターChallenge 企画・編集担当小林 淳

「伝える」技術の発展は製品の枠を飛び出して、開発のあり方まで変えようとしています。そこにどんな未来が描けるか、一緒に考えてみませんか。

参考文献/星名定雄『情報と通信の文化史』(2006年、法政大学出版局)

ていく時代に突入しています」

"秘伝のタレ"を     誰でも使えるように

ユーザーから「伝わってきた」情報を、今後どう活用していくか。熊田は、ユーザーにより近いソフトウェアについては、思い切って標準化し、「遊び場」を作る必要があると考えている。「たとえばグローバルな市場で、クラウド型のスマートスピーカーと、ダイキンのクラウドサービスを連携させたり、ベンチャー企業の技術を取り入れたいときに、『日本でないと開発できません』ではいけない。市場のお客さまは待ってくれない。それでは各国、各地で繋がり続けていくことはできないでしょう」サービスをどう組み合わせるのか、顧客のニーズも市場も、国や

地域ごとに異なる。その地域ごとの文化や考え方をふまえたり、顧客の利用情報に入り込んだ価値を提供することが重要な時代になっている。「たとえば、まるで老舗の "秘伝のタレ" のように、ブラックボックスになっていたソフトウェアの開発環境を、世界のどこででも使えるようにする。これは喫緊の課題だと思います」生きた情報がもっとも集まる現場で、ニーズに合わせたソフトウェア開発やモノづくりを、瞬発力をもって行えるようにする。そんな自由闊達な「遊び場」を作ることができれば、グローバルなスケールでの協創も加速するのではないか、と熊田は考える。「情報を集める基盤をクラウド上に作る基本方針や設計指針は日本で行う。一方、お客さまから伝え

られてきた情報から、問題を発見し、発掘できるのは、現場です。これからは、現場で蓄積してきたデータを活用しながら問題を発掘し、最適なタイミングで提案、解決することが大切。そのための『遊び場づくり』をすることが、使命の一つだと思っています」

人類の情報伝達の手段伝える特集

ダイキンが開発を進めるクラウドシステム

試行錯誤で付加価値がうまれる「遊び場」を作る!

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20 Challenge 2020 Vol. 04

研究者の群像シリーズ❹

株式会社point 0 代表取締役ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター 戦略室

石原隆広Takahiro Ishihara

空間、場所を再定義する起点になる意味で、「point 0(ポイントゼロ)」と名付けた

空間データの協創プラットフォーム「クレスネクト」の 第一弾がプロジェクトである「point 0 marunouchi」

2019年、ダイキン工業は、標榜する空間データの協創プラットフォーム「CRESNECT(クレスネクト)」の第一弾プロジェクトとして7月に、会員型コワーキングスペース「point 0 marunouchi」を東京・丸の内に開設した。「CRESNECT(クレスネクト)」とは、アサヒビール株式会社、株式会社オカムラ、ダイキン工業株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、TOA株式会社、TOTO株式会社、パナソニック株式会社、株式会社My City、ライオン株式会社(以上50音順)が共同発表した、空間データの協創プラットフォーム。「未来のオフィス空間」づくりを目指すプロジェクトで、参画した各社が保有する最新の技術やデータ、ノウハウを融合して、A IやIoTを活用して作り出した空間コンテンツを利用者に体験してもらい、健康で快適に働けるオフィス空間づくりのための実証を行うというものだ。

たとえば、「音声に基づく感情分析」と「空間への香り噴霧」を組み合わせることで議論をスムーズに進められる会議室の設定や、空調・照明・セキュリティーなどが自動制御される快適性向上のサービスなど、さまざま

なオフィスシーンに合わせたコンテンツが準備されるなど、空間コンテンツの高度化を図り、新しい価値やサービスの創出が期待されている。

その「point 0 marunouchi」をはじめとするプロジェクトの運営を円滑化するため設立された会社が「株式会社point 0」。その代表取締役に抜擢されたのが石原隆広だ。

石原は1987年生まれの弱冠32歳。大学(経済学部)を卒業後、国内大手ERPベンチャーに入社。2013年にFintechベンチャーを立ち上げ5年間経営したのち、2017年12月にダイキン工業に入社し、「CRESNECT」に従事。2019年2月に、株式会社point 0を設立し、代表取締役に就任した。

一般的な感覚で言うなら「大抜擢」と言って間違いないだろう。

もともと「フィンテック系のベンチャーをやっていた」という石原は、「空調の業界用語は全く分からない」状態で、中途採用に応募したのだという。「大企業の中で実際にどこまでやれるのか」という気持ちもあったと、振り返る。

しかし、実際にやってみると、「ダイキンの持つ、新しいことに対する許容度はかなり広い」と感じている。

入社後は、IAQ(インドア・エア・クオリティ)グルー

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ダイキンのパーソナル快適空間制御ソリューションは、オープンな空間にあえて温度ムラを作って複数の温度環境を存在させるなど、快適な空間づくりに取り組んでいる。

未来を作るオフィスづくり。自分たちが、価値があると思っているものを、ここに全部入れています。その中でほしいものを選択してください。

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22 Challenge 2020 Vol. 04

研究者の群像 シリーズ❹

プに配属され、複数のプロジェクトにアサインされた。その一つが今回の「point 0」のきっかけになるプロジェクトであった「CRESNECT」だった。しかし、そのプロジェクトも難航しており、一度は、「抜けさせてください」と言ったのだが、一方で「思う存分やらせてもらえるなら、使命だと思ってやります」とも。会社は、その石原が口にした "使命" を託した。

そうと決まったら、動くのは早かった。「創造こそが仕事、となる明日へ」とビジョンを掲げ、走り出した。

石原自身、ダイキンの「空気で答えを出す会社」というキャッチコピーに惹かれて入社を希望したという経緯もある。"ダイキンの一員"としては「空調、空間イノベーション」をテーマに掲げたかった。しかし、参画する9社で取り組むべきテーマではない。そこで、集まった9社に対して、「ダイキンは空気を変えます」と宣言することで、「空気」と「空間」を挙げた。この2つをキーワードにして新しいソリューションをダイキンが作るために立ち上がった。「その中で、それぞれの専門家の立場で意見を出して、例えば、ダイキンは空調の専門メーカーなので、ここはこういう空調にしたほうがいい」と意見を出した。各社がソリューションを持ち寄って、強みとかノウハウを活かしながら出来上がったものが、「point 0 marunouchi」として形となって動き出した。

石原は言う。「正直自分で思っていた以上に素晴らしいものになったと思う。素敵な実証実験の空間になりま

した」

空調機データの活用。参加社を募り、他社のデータとかけ合わせることで新しい価値創造を生み出したい

石原にやりたいことは何か、と聞いてみた。「一言でいうと、空間を再定義したい。自分自身で変えていける空間を生み出したい。オープンエリアには、普通のカフェっぽい席もあれば、ハイデスク、ハイチェアの場所もある。それは、それぞれ、働く場所を選んでくださいという意思表示でもあって、その人に合わせたチョイスができるようになっている。その中で、年齢的なくくり、性別、あるいは職種でくくってみると、働きやすい場所は異なるのかも知れない。そういうデータを集めて、外部に売るということも考えられる」と石原の考えは広がっていく。「この場所ができるまでは、point 0の石原だった。できてからは具体的に各社と協創してソリューションを作っている立場。だから、ダイキンとしてどういうことをやっていけば全体が回りやすいか、という観点になる。つまり、"ダイキンの石原"の部分が増えて行くのだろうと思っています」

そう言いながらも基本は「ニュートラル」。「やっぱり全体が幸せになってほしい。その中でダイキンをどうしたいのか、という話だと思っている」と力を込めた。

大きなプロジェクトを担う32歳。その本気度に大きな期待が寄せられている。

■緑をふんだんに 採り入れるオープンスペースには緑が採り入れられ、特に窓際には多くの緑が並んでいる。

■オフィス用のバーカウンターアサヒビールでは、オフィス用のバーカウンターを設置し、ひらめき、活性化などの効果を実証実験している。

■カラーライティング瞑想ルームではパナソニックのカラーライティングを活用。色を組み合わせてリラックスできる空間を作る。

■好みに合わせてコントロールオープンスペースや会議室は、好みに合わせて、空調・照明・香りをコントロールできる。

point 0マップ

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年齢や性別、経験で仕事を任せるのではなく、その人の可能性に賭ける!

空気とか空間ソリューションを考えていくうえで、ここ(point 0 marunouchi)は、いわば実証実験の場。その運営は、たとえ若くても石原さんに託したいと思っています。技術的な実証をする場ではなく、ビジネスモデルを検証する場なので。それをきちんとコーディネートできる人はTICには少ないと感じています。TICはまだ価値づくりは苦手。技術のことはよくわかっていても、ビジネスモデルを作ろうと思ったとき、経営のこと、販売のこと、顧客や市場などなど、技術以外のことをしっかりと分かった上で戦略を作れないとダメ。そういったものの全部が必要です。他社の知恵や力も借りて進めなければならないところはたくさんあると思っています。

石原さんをそこに起用したのは、彼がもともとベンチャーの社長をやっていたこともあって、行動力や情熱を持っていると思ったこと。従来のイノベーションセンターにはないような彼の行動力が魅力だと思っています。また彼はベンチャーの社長をやっていた経験から、挫折みたいなものも知っている。それが強みになっていると思います。期待しているのはそこですね。

我々はこれまで空調機のものづくりで成功してきました。ものづくりには経験がいる。30代や20代でも経験が足りないということで、苦労している人は多いと思うけれど、こういう価値づくりやビジネスモデルは、行動力や実行力があれば、むしろ、若い人のほうが自由に、柔軟な発想でどんどん切り拓いていけるんじゃないかと、思っています。

彼に言っているのは、実証実験倒れになるな、ということです。期限を決めるぞ、ということで2〜3年を目処にすると。短いと思われるかもしれないですが、2年

やろうが3年やろうが、素早く事業の可能性判断をしていくことが大切。期限を切って追い込むことも必要と考えた。

ダイキン自体が、前向きな失敗は咎めない。それによって、降格や左遷などはない。だから、思い切って挑戦することが出来、また安心して働ける。チャレンジできる環境、風土は十分にあると思います。だからこそ、思い切ってやってほしい。

TICが腹をくくってやっていることなので、co-work(協創)やteam-work(メンバー間の助け合い)、hard-work(困難に突き進む力)が欠かせません。石原さん本人の頑張りだけでなく、チームの他の皆さんの協力関係や信頼関係がないと進みません。だから会社として、TICとして、もちろん私としても、バックアップは全面的にやるつもりです。

TICセンター長である米田裕二執行役員は、「オンとオフの境界をあいまいにすることで、働きやすい空間を提供したい。空調機そのものが空間のデータを集めることが出来るハブになれると考えて、新しいビジネスモデルを構築していく」と語った。

石原氏の行動力に期待。部門を挙げてバックアップする

集中ブースでは、ダイキンの空調やパナソニックの照明により適度な覚醒度を保つソリューションなどを追求。

ダイキン工業株式会社 執行役員テクノロジー・イノベーションセンター長

米田裕二Yuj i Yoneda

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24 Challenge 2020 Vol. 04

ダイキンを支える技術 ❹

高性能・高信頼性の新型圧縮機の製造に取り組み続ける

冷媒を循環させる心臓の役割

空調機の性能を決める圧縮機室外機に組み込まれ、空調機の血液ともいえる冷媒を循環させる心臓の役割を務めるのが圧縮機だ。消費電力や音など、空調機の性能や商品として重要な価値を生み出す基幹となる部品である。

などが頭に浮かぶ。それらと同じくらいに商品とし

ての価値を決めるのは、実は「消費電力」だといわれる。

平たく分かりやすく言うと、例えば夏の部屋の温度を10℃下げるためにどれくらいの電力を使うか。つまり電気代をいかに安く、部屋を涼しくすることができるか、これこそがエアコンという商品の性能や価値を決めているといっても過言ではない。

エアコンの性能の評価項目は?と聞かれると、何と答えるだろうか。

部屋が夏に涼しくならない、あるいは冬に温まらないのでは、そもそも商品として成り立たない。その上で部屋を冷やす、あるいは温める速度や能力、細やかな運転

エアコンの消費電力の 80%を圧縮機が消費

店舗用のエアコンを例にとって説明すると、屋外に置かれている室外機の中に、エアコンを動かすためのモータ、インバータなどと一緒に圧縮機が組み込まれている。

エアコンは冷媒の圧力を変えることで冷媒を気化/液化させ、その時の熱の移動を利用して室温調節を行う。この時の圧力変化と冷媒の循環を担うのが圧縮機である。すなわち圧縮機はエアコンにとって「血液」ともいえる冷媒を、エアコン内で循環させるための

「心臓」の働きをしているのである。エアコン・空調機の大きさに

よって、圧縮機の形式も変わる。家庭用エアコンでは主として「スイング圧縮機」が使用され、ビル用では「スクロール圧縮機」が使われている。構造は異なるが、いずれも圧縮機内の吸入室に吸い込んだ冷媒を、ピストンやスクロールの揺動や旋回運動によって徐々に部屋を小さくすることで断熱圧縮し、冷媒の圧力を高めてゆく。

TIC 圧縮機技術グループリーダー主席技師松浦秀樹1993年4月入社。大阪府出身。圧縮機技術グループを指揮するリーダー。世界でNo.1の圧縮機技術者集団にすると目標は高い。ダイキンならではの、他社にない製品づくりにプライドを持って挑み続けている。

圧縮機は室外機の中、この位置に収められている

室外機

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ターボ圧縮機はスクリュー圧縮機と同様、大型業務用のチラーに搭載される。インペラという羽根車の遠心力によって冷媒に速度エネルギーを与えて、圧力変換して冷媒を圧縮する。

ダイキンのスイング圧縮機は他社のロータリー圧縮機とは異なり、ローラとベーンが一体型になっており、冷媒ガスの"漏れ"や、潤滑によるロスが少なくできる。

●圧縮機の形式

スイング圧縮機 スクロール圧縮機

スクリュー圧縮機

ターボ圧縮機

スクリュー圧縮機は主に大型の業務用のチラーに搭載される圧縮機で、スクリューロータという回転体と樹脂製のゲートロータによって冷媒を圧縮する。

●スイング圧縮機

スイング圧縮機 断面図

アキュームレータ

モータ部

メカ部

ガス吐出

ガス吸入

凝縮圧力 + バネ圧

ベーン 反力差圧

ローラ

クランクシャフト

圧縮室 吸入室

差圧

圧縮室 吸入室

クランクシャフト

ピストン

スイングブッシュ

ピストンシリンダ

他社 ロータリー圧縮機 ダイキン スイング圧縮機

松浦リーダーは、スイング圧縮機のメカ部を手に持ち説明をする。ローラとベーンの一体型については、他社との開発競争の中で議論はあったものの、チャレンジを認めるダイキンの社風こそが、この新構造圧縮機の開発、製品化につながったと振り返る。

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26 Challenge 2020 Vol. 04

ダイキンを支える技術❹

決して大げさでなく、日本国内すべての空調機の圧縮効率を2%向上させるだけで、大型火力発電所1基分の電力に相当するということだ。TICの圧縮機技術グループは、その技術・商品開発を鋭意進めている。圧縮機技術グループのリーダーを務める松浦秀樹主席技師は、「空

この冷媒の圧縮作業を効率よく、少量の電力でできるかどうかが、エアコンの省エネ性能を左右することになる。実は、エアコンの電力消費は、圧縮機が80%を占める。見方を変えれば、この圧縮機の効率を高め、消費電力を抑えることができれば、すなわちそのエアコンは「性能がいい」エアコンだと言える。

調機の価値を決めるのが圧縮機であるというプライドをもって仕事をやっています」と力を込める。

ローラとベーンの一体化で ロスを減らし、他社をリード

その家庭用エアコンで使われている圧縮機で、ダイキンは「スイング圧縮機」という独自の技術開発を成功させた。

●スクロール圧縮機機能の発現は、1/1000mmといった極小の領域で起こる。それを分析・評価するためには、そういったミクロの視点で、金属表面やその微小な変形にも対象を広げ、「見える化」する技術を彼らは作っている。

●ダイキン スクロール圧縮機の特徴 〜ハイメカスラスト構造〜

油圧をかけることで、メカニカルによるロスを約20%低減させることに成功。結果、圧縮効率を2%向上させた。

固定スクロールと可動スクロール

ガス吐出

ガス吸入

固定スクロール可動スクロール

スクロール圧縮機 断面図

固定スクロール固定スクロール 圧縮ガス荷重

可動スクロール

高圧ドーム圧力

スラスト力(合力)

溝 溝

メカニカルロスを約20%低減

油圧によりスラスト荷重を低減

可動スクロール

クランクシャフト

ハウジング

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圧縮機技術グループ内の解析技術高度化チームに所属する3氏(右から川畑、出口、居初、松浦リーダー)。図面、部品を見ながら、ちょっとしたひらめきもその都度共有しながら、議論を重ねていく。より良いものを作ろうとする努力に終わりはない。「協創」の2文字をバックボーンとしてその姿勢を貫く。

他社の家庭用エアコンで主に使われている「ロータリー圧縮機」と異なるポイントは、回転するローラに押し当てて高圧側と低圧側を仕切っている板状の「ベーン」を、ローラと一体化させたことだ。その効果によって、ロータリー圧縮機ではベーンの先端、ローラとの接点で起きていた「潤滑ロス」や「ガス漏れ」が起きなくなった。作動する中で生じるメカニカル

ロスを比較すると、ロータリー圧縮機では全体の12.5%生じていた「ベーン/ローラ」のロスがスイング圧縮機ではなくなっている。さらに容積効率を比較すると低速時でロータリー圧縮機と比較して4ポイント向上している。更には業界ナンバー・ワンの低速回転を可能にすることで、他社の製品に比べて大きくアドバンテージを得ている。低速運転を可能にするということは、低能力域での能力制御が可能になるということであり、結果として、快適性の向上と省エネが実現できるのである。

あくなき技術開発 研究者のプライド

スクロール圧縮機では、固定されたスクロールに、可動スクロールをかみ合わせることで、冷媒を圧縮する。設計、製造、品質管理のメンバーが試行錯誤を繰り返し、手にした新構造のスクロール圧縮機はスクロールを、いかにロスなく噛み合わせられるかがポイント。別々に作られた固定スクロールと可動スクロールが、ガスが漏れることなく稼働する新構造にたどり着き、メカニカルロスを

約20%も低減させることを可能にしたのだ。「ダイキンが持っている他社にない技術を受け継ぎながら、さらに社内外との協創を強化し、他社に勝ち続けるための新しい技術の開発を続けていくこと」松浦は現在、自らが率いている圧縮機グループにそれらのミッションを掲げる。その実現が、顧客にとっての価値を高めるのだという意識をグループ内で共有し、技術開発に臨んでいる。実は圧縮機を他社から調達する企業は多い。ダイキンにあっても、他から手に入れる部品もある。しかし「肝(きも)となる部品は、外から購入すると、当然、商品に差をつけることが難しくなる。やはり肝となる部分は自社でということが、ダイキンの基本姿勢であり、それこそが強みでもある」と松浦は明言する。技術開発の道には終わりはない。さらにより良い製品を生み出すために、今もなお続けられている。一口に圧縮機といっても、そこにはダイキンの高度な技術とノウハウが盛り込まれている。それがダイキンの製品の価値を高めていくのだ。

圧縮機で使用されるパーツを広げ、一つ一つ説明をする松浦グループリーダー。「できたものに満足せず、これで終わりと思わず、さらに効率的な部品づくり、発想に勤しむ。みんなでやっていくことが大事」と力説した。

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28 Challenge 2020 Vol. 04

ダイキンの新しい取り組み( )Technology and Innovation Center

2017年にダイキンは、「A I活用」「A I技術開発」「システム開発」の3分野の人材の社内育成を主題として、「ダイキン情報技術大学」を設立した。ダイキングループにおけるあらゆる部門で活用が期待される重要な技術であるA I、I oTの推進・活用を第一の目標とし、それを推進するための人材の育成を急ピッチで進めているのだ。

「どちらかというと、新入社員を見る親の感覚に近いと思います。私自身が特にA Iに詳しかったわけではないので、一緒に勉強をしているという感じでしょうか」と板谷課長。優しい目で戸惑いの多い新入社員たちを見守っている。

ダイキンの新しい試みである。社内大学「情報技術大学」がスタートしたのは2017年12月。その情報技術大学設立の目的は明確だ。A Iデータ分析技術は、ダイキングループにおいて、あらゆる部門での活用が期待される重要な技術。その分野において「推進役となれる人材を育成することを喫緊の課題」とした。

具体的には「3分野の人材育成」があげられている。① A I 活用人材(ビジネス提案力を有する人材)② A I 技術開発人材(AIでの問題解決力を有する人材)③ システム開発人材(A I の具現化力を有する人材)ダイキン情報技術大学設立が準備されている段階では、②のA I技術開発の人材は、極めて少なく、早期の育成が求められていたのだという。あわせて、①と③の質量ともに不足気味。こちらも、②と同様に早い段階での強化と育成が必要だった。それらの課題を抱えたうえで、2017年12月にスタートを切ったのだ。

新入社員から毎年100人、既存社員を加えて3年間に全部で1000人の"卒業生"を予定

今回の情報技術大学の設立でもっともクローズアップされるのは、新入社員の育成教育である。2018年度の新入社員から各年100人の社員は2年間にわたって情報技術を学ぶ。1年目は主として座学、2年目に入るとダイキン社内の部門における実践がカリキュラムに加わり、そちらが主となる。

ダイキン情報技術大学事務局担当課長板谷修司 (44歳)

ダイキン情報技術大学ルポ

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TIC report

高田、板谷課長、西川(左から)。ダイキンにとって新しい取り組みは、彼らにとっても新しい試み。新しいダイキンの担い手育成が託されているわけで、その期待と責任の重さをひしひしと感じている。

一方で、育成については新入社員だけが対象ではなく、既存社員からも、期間は異なるが、やはり「座学・演習」、そして各部門における実践(PBL)が繰り返される。

これに基幹職(部課長クラス)の社員にも受講・研修が行われるのを加えると、2021年度終了までに、トータルで1000名の社員が講義を受講することになるのだ。

情報技術大学で何に取り組むのか。A I・I oT で取り組んでほしいこととして、挙げられた

3項目を以下に紹介しよう。(1) ビジネス・イノベーション(新ビジネス、新サー

ビス、新商品) A I・I oT を活用したソリューション業のビジネスモデルの仮説立案〜実証〜本格展開することや、ビッグデータをA I で分析し、差別化コンテンツを生み出していくこと、さらにはA I・I oTを活用して核となる機器を革新することが挙げられた。

(2)プロセス・イノベーション(業務改革、業務改善)さらなる効率化を図り、生産性の向上、そして次世代のスマート工場を実現すること。I oT を活用したソリューション事業モデル、そしてそのコンテンツを実現するために必要な基盤を作るこ

と。間接部門の業務改革、業務改善への取り組みが求められている。

(3)経営の意思決定の支援生産、販売、サービスといった会社を俯瞰するビッグデータをA I・I oT を用いて分析。新たな事業、経営戦略の立案に対する支援への取り組みも重要な要素となる。

社内各部署から集められた10人の事務局。道を拓くリーダーとしての期待を。

情報技術大学の運営を任されているのは、社内の各部門から集められた10人。年齢もさまざまで、各部門のエキスパート社員から、転職を経てダイキンに入社しまだ数年という社員まで、事務局の人材もまたバラエティーに富んでいた。その10人で講義のプログラム作成に始まり、講演者との折衝、さらには受講者、特に新入

「私自身、入社35年目を迎えたときに、今回の情報技術大学の担当を言われたのは、まさに青天の霹靂だった。一方で、若い彼らの将来を左右する仕事をするということで、責任の重さも強く感じている」と高田は力強い口調で言った。

ダイキン情報技術大学が求める3分野の人材

ダイキン情報技術大学事務局高田 康 (57歳)

①AI活用人材

ビジネス提案力を有する人材

②AI技術開発人材

AIでの問題解決力を有する人材

③システム開発人材AIの具現化力を

有する人材

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30 Challenge 2020 Vol. 04

TIC report

社員のサポートにも力を注ぐ。全体で行われる講義のほかに、平均5人ごとに小グ

ループを結成し、それぞれのグループ単位で演習を行う事が多い。事務局の10人はそれぞれ、様々な場面で受講生と交流し、悩みや質問に答えてきたのだという。

課長の板谷は、「新入社員は右も左もわからないまま、ダイキンの新しい取り組みに入ったわけで、正直なところ、不安も大きかったと思う。また、まだ業務の経験がないため、各事業部に配属された新入社員と比較して、甘さを感じることもありました。そういうことに一つひとつ相談に乗っていたら、公私にわたって付き合いが深くなったところもある。そんなこともあって、仲の良い新入社員ごとに行われた忘年会にも、たくさん呼んでもらいました」と笑う。

試行錯誤の繰り返し。新入社員の受講生にとって初め

てなら、実は事務局の社員にとっても、初めての取り組み。生産や営業、サービスの現場で30年以上働いてきた高田は、「最初はなぜ自分が事務局に行くのか、戸惑いました。机の上の勉強だけでなく、各部門での現場との橋渡しをいかにスムーズにしていくのかを考えたときに、現場に長くいた人間が求められているんだ、と。受講生に自分の経験をしっかりと伝えたいと思っています」と、口にした。

転職組の一人である西川はまだ30歳を超えたばかりで若い。「会社にとっても新しい試みなので、社員、受講生のケアなど、いろいろ求められていることは多く、やりがいを感じています」

ダイキンの"これから"を担う人材の育成に、自分がどう力になれるのか、考えているという。

ダイキン情報技術大学の講座全体像

新入社員向けカリキュラム

1 年目基礎教育として、ダイキンにおける事業・ビジョンの理解を深め、業務における技術知識を学び、さらには、I oT・A I の専門知識や導入教育、コンピュータのシステムなどベースとなる知識を吸収していく時間。

2 年目 営業、開発、製造、間接など各部門の複数現場を4カ月ごとに経験する。部門横断し、全社的な視点から課題を解決できる人材を育成する。

①基幹職層向けAI活用講座●AI・IoTを用いた事業や業務改善の立案・推進を担う人材 【対象】基幹職:400名

指導、サポート

1.AI活用人材育成

2.AI技術開発人材育成②AI技術開発講座

●AI技術開発を担う人材 【対象】技術者および企画人材:150名

3.システム開発人材育成③システム開発講座

●AI・IoT実装におけるシステム化を担う人材 【対象】情報技術人材:150名

指導、サポート

④新入社員向けAI・IoT人材育成講座(AI+システム)●当社のコア技術を理解したダイキン独自のAI・IoT人材 【対象】技術系新入社員:300名

⑤全従業員向けeラーニング●全従業員のA Iリテラシーを向上させる 【対象】全従業員

4.全従業員向け啓発

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TIC report

全般に息づく「協創」の精神。サポート体制にも、情報技術大学の成功への強い意志が見える。

新入社員という立場から、この情報技術大学の受講生になった数人にも話を聞いた。2年目で、すでに1年目の基礎教育を終えて、部門での応用教育に取り組んでいるという一人は、「最初は不安でしかなかった。新しい取り組みと聞かされて、ダイキンを志望したときには、その存在、目的すらも知らなかったわけで、何が始まるんだろうという、漠然とした不安がありました」という。そこは指導する側の事務局としても同様で、板谷課長は、「だからこそ、積極的にコミュニケーションをとるように心がけた。1期生たちのちょっとした食事会や飲み会まで、生徒たちの悩みや不安をできるだけ解消できるよう、積極的に顔を出しました」と振り返って言う。1年の経験を経て、現場に出るようになった他の1期生のなかにも当然不安はあった。「初めての現場で不安があるのは当たり前。僕らのような現場を知らない、会社に入ってやっと1年の"若造"に対して、社の先輩のみなさんが、どのように対応してくれるか不安があった。実際、A I活用を理解してもらうのは容易ではなかったが、徐々に話を聞いてもらえる様になって来ました。さらにはそれが自信にもつながり、もっともっと会社の役に立てる提案をし、頼られる存在になりたいと思った」という。2期生たちは、「1期の方々が実際にやっておられることは見本、手本にはなっています。不安があっても、ああやればいいんだというのを見せてもらっているので、本当にありがたいです」という。一方で2年間の授業を受けて、本当にそういうレベルまで到達できるの

か、という不安もあるようだ。「将来、自分がA Iを主導する立場になって、うまくできるかという不安は、正直なところ、あります。実際に学習して、それをお金にする、手にした専門知識を活かすということが本当にできるのか。」「たくさん勉強し、いろいろ考えていても、既視感のあるアイディアしか出てこない。せっかく勉強しているのに、ユニークなアイディアが出ない」と不安を口にする者もいた。しかし彼等は口々に「不安は間違いなく小さくなっています」と語っていた。情報技術大学は2021年度までに既存の社員、新入社員などを合わせて1000人の受講者を生み、A I・I oTを充分に活用できる人材を生み出すことを目標にしている。成功するか否かの判断には、まだ数年の時間が必要とされるが、新入社員の胸中にある不安が自信に変わるのも、そう遠くはないはずだ。

2年目になる「1期生」の一人が、「2期生」らを前に経験談を踏まえた講習を開いたこの日。板谷課長を筆頭に事務局員や同期生たちは彼の成長を感じ、後輩の2期生たちは、頼もしい先輩の姿に自分の将来を重ねた。

「新入社員の情報技術大学への受け入れが始まった2018年に転職してダイキンに入社しました。その意味では、受講生の彼らとは同期ということになります。彼ら一人ひとりと向き合って、力になれるよう頑張っています」と西川。

ダイキン情報技術大学事務局西川良太 (32歳)

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32 Challenge 2020 Vol. 04

国際会議論文の表題 学会誌/講演会名 発表日Nano-oriented crystals of fluorocarbon polymer formed International Discussion Meeting On Polymer

Crystallization 20192019 年 10 月

DYNAMIC FACIAL EXPRESSION RECOGNITION International Conference on Image Processing 2019 年 9 月Optimization of Resin Pellet Shape for High Performance LAN Cable Manufacturing in the IoT Era

15th US National Congress on Computational Mechanics (USNCCM)

2019 年 7 月

Can we recognize atmosphere as an agent? -pilot study- HCI international2019 2019 年 7 月Neural generative model for minimal biological motion patterns evoking emotional impressions

HCI international2019 2019 年 7 月

Generation of atmosphere with haptic impressions by using surrounding visual stimuli HCI international2019 2019 年 7 月High Voltage Sensitivity of Organic Pyroelectric Infrared Sensors Fabricated by Vacuum Evaporation under Electric Field

The International Conference on Molecular Electronics and Bioelectronics (M&BE10)

2019 年 6 月

Modeling BLE Propagation above the Ceiling for Smart HVAC Systems The 15th International Conference on Intelligent Environments (IE’19)

2019 年 6 月

Long-term Reliability Evaluation of Fluororesin Gasket for Electrode of Automotive Lithium-ion Battery Using Simulation

VIII International Conference on Coupled Problems in Science and Engineering

2019 年 6 月

LISCOOL – Smart air-conditioning with cold storage as flexibility provider for automated demand response and virtual power plant supported by cloud based system

CLIMA2019 2019 年 5 月

“Experimental investigation of radiated EMI caused by an air-conditioner piping-Modal analysis based on current distribution measurement-”

10th International Conference on Power Electronics - ECCE Asia

2019 年 5 月

Electrostatic properties of fluorinated alcohol evaluated by density functional theory simulation

International Conference on Fluorine Chemistry 2019 Himeji

2019 年 5 月

STUDY ON BRITTLE MODIFICATION OF PMMA BY BLENDING WITH FLUORINE RESIN フッ素化学国際会議 2019姫路 2019 年 5 月HYPERVALENT IODINE-PROMOTED FLUORINATION OF FUNCTIONALIZED AROMATIC OLEFINS

フッ素化学国際会議 2019姫路 2019 年 5 月

Biocompatible/anti-biofouling copolymer based on fluoroolefin/hydrophilic monomer フッ素化学国際会議 2019姫路 2019 年 5 月Precise Analysis of Phase Separation and Crystal Growth Processes for PMMA and Fluorinated Polymer Blends

IPOMY 2019 年 1 月

A Study of Radiated EMI Generated by Power Electronics Equipment S2PC-2018 JINJU KOREA 2018 年 11 月Demonstration Project on Automated Demand Response in the City of Lisbon IRED 2018 (8th International Conference on Integration

of Renewables and Distributed Energy Resources)2018 年 10 月

FABRICATION OF POLYMER MOLD WITH RELEASE-AGENT-FREE USING EB GRAFTING FOR NANOIMPRINT LITHOGRAPHY

13th Symposium on Ionizing Radiation and Polymers, IRaP 2018

2018 年 8 月

Characteristics of Heat Transfer on a Microchannel Flat Tube applied to Air-to- Refrigerant Heat Exchangers of Air onditioners using R32

The 25th IIR International congress of refrigeration 2019 年 8 月

Novel Fluorination Reagents: IF5-pyridine-HF and BrF3-KHF2 The 22nd International Symposium on Fluorine Chemistry - Oxford 2018

2018 年 7 月

学術論文論文の表題 学会誌/講演会名 発表日パッケージエアコンの熱負荷シミュレーションにおける再現性の検証及び必要精度の検討 2019年度 空気調和・衛生工学会大会 2019 年 9 月Computational Fluid Dynamics Analyses of Multiphase Refrigerant Flow in Microchannel Heat Exchanger Design

7th Asian Symposium on Computational Heat Transfer and Fluid Flow

2019 年 9 月

Integrative Design of Product Architecture and Assembly Process Plan The ASME 2019 International Design Engineering Technical Conferences & Computers and Information in Engineering Conference (IDETC/CIE 2019)

2019 年 8 月

A Design Study of Microchannel Heat Exchanger Header Using Computational Fluid Dynamics

9th International Conference on Compressor and Refrigeration

2019 年 7 月

Application of deep reinforcement learning in residential preconditioning for radiation temperature

7th International Conference on Smart Computing and Artificial Intelligence

2019 年 7 月

Improvement of Product Shipment Forecast based on LSTM Incorporating On-Site Knowledge as Residual Connection

2019年度 人工知能学会全国大会 2019 年 6 月

Pain Evaluation During Colonoscopy by the Erythema Index of the Facial Image Yonago Acta Medica 2019 年 4 月パッケージエアコンの熱負荷シミュレーションにおける予測精度検証 第53回空気調和・冷凍連合講演会 2019 年 4 月Augmeted taste of wine by artificial climate room Influence of temperature and humidity on taste evaluation

AH 2019 : Augmented Human 201910th Augmented Human International Conference

2019 年 3 月

ベイズ推定を用いた年間熱負荷推定法における観測対象と未知パラメータのグループ分けに関する研究

平成30年度 空気調和・衛生工学会大会 2018 年 9 月

低GWP冷媒を用いたビル用マルチエアコンの性能評価 日本冷凍空調学会論文集 2018 年 9 月The Improved Synthesis of Asymmetric Carbonate Derivatives with Calcium Salts Organic Process Research & Development 2018 年 3 月

社内の部門を超え、会社の枠を超え、相互に作用しあうことによってイノベーションを起こそうと挑戦する。TICで2018年5月から2019年9月に発表された研究の一部を紹介する。これからも新たな技術開発のテーマの "協創" を目指すために。

最近のおもな社外発表

1 Challenge 2020 Vol. 04

2020.1 Vol. 04

人と人が創る科学の夢Technology and Innovation Center

編集長 ● 東 研一企画・編集 ● 小林 淳(ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター)、株式会社タミワオフィス執筆 ● 民輪めぐみ、江六前一郎、柳本元晴写真撮影 ● 村川荘兵衛、依田佳子、中西一朗デザイン&DTP ● 水田デザイン写真協力 ● 株式会社アフロ、フォトライブラリー印刷所 ● 三松堂株式会社

    社会を変える第一歩としてのダイキンの役割巻頭インタビュー

五神 真 ……01第4次産業革命のいまより良い未来社会をどう築くのかSpecial Interview

ダグラス・ウェバー ……04ウェバー・ワークショップス代表

現代は、合理化ではなくテクノロジーの力で向かうべき本質に近づくことが可能になった時代既存の枠組みやプロセスを変えるような

「面白い」ことをしよう ……08「世界を変える」より、まわりの笑顔が見たい

藤野真人           ×近藤 玲×丸川英也 

特集人類の情報伝達の手段「伝える」 ……13人類はIoTの時代に何を伝えるのだろうか?

C o n t e n t s

物理学者/東京大学総長

特別企画

「Challenge」という英単語から「lle」を抜くと、「Change」という英単語が現れます。「挑戦に次ぐ挑戦から変革を起こす」を意味するこの誌名は、ここTIC(テクノロジー・イノベーションセンター)が目指す姿そのものであり、当社の社風を表すものでもあります。

『Challengeという誌名について』

表紙デザイン/坂川朱音(朱猫堂)撮影/村川荘兵衛

TICでは、「新たな価値」を生み出すための協創相手を求めています。お問い合せ、ご連絡は [email protected] まで。

研究者の群像④

石原隆広 株式会社point 0 代表取締役 ……20空間、場所を再定義する起点になる意味で、

「point 0(ポイントゼロ)」と名付けたダイキンを支える技術④

空調機の性能を決める「圧縮機」 ……24ダイキンの新しい取り組み

「ダイキン情報技術大学」ルポ ……28

最近のおもな社外発表 ……32

Invitation to Web “Challenge”

・ あなたのご意見や感想、問い合わせをお寄せください。

・読者登録を募集しています。  登録後、「Challenge」誌を毎号

お届けします。・イベントのご紹介  TIC見学会、交流会情報などを

お知らせします。

根岸英一

発行日/2018年5月1日 第3号 発行/ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター

〒566-8585 大阪府摂津市西一津屋 1番1号(淀川製作所内) http://www.daikin.co.jp/tic/ ☎ 06-6195-7051(代表)

第3号2018. 5

▼ぜひウェブサイトにアクセスください。https://www.daikin.co.jp/tic/magazine/

フェアリーデバイセズ株式会社 代表取締役

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その他論文の表題 学会誌/講演会名 発表日冬季の室内室温の違いと想像温度の関係に関する人工気候室における実験研究 空気調和・衛生工学会大会 2019 年 9 月パラレル電極型ストリーマ放電における準安定準位N2(A3Σu+)のLIF計測 第43回静電気学会全国大会 2019 年 9 月スクロール圧縮機の油上り設計におけるCFD解析の適用性について 2019年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2019 年 9 月空調機及びIoT技術を用いた自動デマンドレスポンス実証について 第2報‐ポルトガル共和国での自動デマンドレスポンス実証事業の中間報告‐

2019年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2019 年 9 月

ビル用マルチエアコンの冷媒漏洩遠隔監視システムの研究開発 第1報‐漏洩検知システムの概要と漏れ検知検討結果‐

2019年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2019 年 9 月

R32を用いた空調用マイクロチャネル熱交換器に用いる扁平多穴管の伝熱性能 2019年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2019 年 9 月学習効率が向上しても熱環境は潜在的精神負荷を増大させる 日本心理学会第83回大会 2019 年 9 月アジア蒸暑地域のオフィスビルにおける熱環境とエネルギー消費量の実態調査 2019年度 日本建築学会大会 2019 年 9 月個別分散型空調方式の運用実態に関する研究 2019年度 日本建築学会大会 2019 年 9 月ヒューマンファクターを考慮した環境制御に関する研究(その1) 湿度の違いが温熱快適性と皮膚血流量へ与える影響

2019年度 日本建築学会大会(北陸)学術講演会 2019 年 9 月

油による減衰を考慮した油溶性媒質の音響解析 Dynamics and Design Conference 2019(D&D2019) 2019 年 8 月6ステップ駆動を用いた圧縮機向けセンサレス制御による空調機暖房能力向上 回転機/リニアドライブ/家電・民生合同研究会 2019 年 8 月RSSI-based Localization of BLE-attached HVACs by Utilizing Peak Detection DICOMOシンポジウム 2019 年 7 月気温変動に伴う皮膚血流量の個人差について IWEE2019 2019 年 6 月Anti-microbial and Anti-biofilm effect of Underwater Electric Discharge (UED) ASM Microbe 2019(米国微生物学会議) 2019 年 6 月技術者と特許出願 ~自分に“タグ付け”し、仕事の満足度向上を目指して~ NPO法人CAE懇話会 会誌2019年春夏号 2019 年 5 月天井裏における偏光情報を用いた特徴点対応の評価 CVIM2019年5月研究会プログラム(第217回) 2019 年 5 月窒化ホウ素充填フッ素系ポリマー複合材料の熱伝導率および内部構造の評価 第68回高分子学会年次大会 2019 年 5 月マクロ開始剤を用いた多分岐型高分子の合成と撥水性評価 第68回高分子学会年次大会 2019 年 5 月ウェアラブルセンサとサーモグラフィを併用した温熱快適度推定法の検討 モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究

会(第91回MBL研究会)2019 年 5 月

夏季の温度湿度環境がヒトの疲労に与える影響 第15回 日本疲労学会総会・学術集会 2019 年 5 月宮古島産マンゴー果実のCA保蔵について 日本熱帯農業学会第125回講演会 2019 年 3 月Detection of sleep apnea by cyclic variation of pulse rate Life Tech 2019 2019 年 3 月多神教的世界観にもとづく“空気感エージェント”の創成 HAIシンポジウム2018 2019 年 3 月大面積シート型インフラモニタリングシステムの開発 応用物理学会・有機分子・バイオエレクトロニクス分科会

3月研究会(M&BE)(招待講演)、有機分子・バイオエレクトロニクス分科会誌

2019 年 3 月

五感を用いた心に寄り添う“空気感”エージェント”の予備的評価 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会 2019 年 1 月五感を用いた心に寄り添う“空気感”エージェント”の創成 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会 2019 年 1 月ベイズ最適化手法を用いたメッシュモーフィングによる流路の最適化 日本機械学会 流体工学部門 2019 年 1 月オープンソースCFDツールを活用した流体構造連成解析の実践的活用に関する基礎的研究 第32回数値流体力学シンポジウム 2018 年 12 月シミュレーションによる樹脂ガスケットのシール性能評価 「成形加工」 2018年12月頃英国マンチェスターでのヒートポンプ式空調給湯器によるデマンドレスポンス実証 冷凍10月号 2018 年 10 月上吹き室外機向けマイクロチャネル熱交換器の開発 2018年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2018 年 9 月氷蓄熱チラー向け大容量半密閉シングルスクリュー圧縮機の開発 2018年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2018 年 9 月空調機及びIoT技術を用いた自動デマンドレスポンス実証について 第1報‐ポルトガル共和国での自動デマンドレスポンス実証事業の概要報告‐

2018年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2018 年 9 月

非平衡プラズマ中の準安定準位N2(A3Σu+)のレーザ有機蛍光法による観測 平成30年基礎・材料・共通部門大会 2018 年 9 月Felicitas環境の構築-(第1報) Felicitas環境の考え方- 2018年度 日本建築学会大会 2018 年 9 月Felicitas環境の構築-(第2報) 生理人類学に基づく空気環境の「評価」- 2018年度 日本建築学会大会 2018 年 9 月Felicitas環境の構築-(第3報) データ同化法を用いた必要加湿量の推定- 2018年度 日本建築学会大会 2018 年 9 月知的生産性を高める空間を実現する、A I・I oT活用型知的環境制御システムの研究開発(その2)ヒューマンファクターを考慮して環境制御を行うアプローチ

2018年度 日本建築学会大会(東北) 2018 年 9 月

アクティブバッファ付き単相‐三相電力変換器のチョッパ回路に関する検討 平成30年電気学会産業応用部門大会 2018 年 8 月グローバル高調波規制に適合する業務用空調機向け大容量三相‐三相電解コンデンサレスインバータの開発

2019年電気学会産業応用部門大会 2019 年 8 月

ストランドカットペレットの流動性向上のための形状検討 第22回計算工学講演会 2018 年 6 月冬季の室内の温度湿度がヒトの疲労に与える影響:行動学的検討 第14回 日本疲労学会総会・学術集会 2018 年 5 月

国際会議論文の表題 学会誌/講演会名 発表日Formation and high performance of nano oriented crystals (NOCs) of fluoropolymers in elongational crystallization

The 22nd International Symposium on Fluorine Chemistry - Oxford 2018

2018 年 7 月

Optimization of Resin Pellet Shape for Improving Flowability 13th World Congress on Computional Mechanics (WCCM XIII), 2nd Pan American Congress on Computional Mechanics (PANACM II)

2018 年 7 月

Evaluation and Optimization of System Performance using HFO-mix Refrigerants for VRF and Mini-Split Air-Conditioner

17th Refrigeration and Air conditioning conference at Purdue

2018 年 7 月

Simulation of Two-Phase Flow Distribution in Heat Exchanger Header Using Eulerian Multiple Flow Regimes Model

17th International Refrigeration and Air Conditioning Coference at Purdue

2018 年 7 月

Olfactory functional magnetic resonance imaging in the human brain at 7 Tesla Joint Annual Meeting ISMRM-ESMRMB 2018 2018 年 6 月

Development for the refrigerant distribution of header in a micro channel heat exchanger

The 9th Asian Conference on Refrigeration and Air-conditioning

2018 年 6 月

1414162_Challenge_ 第 4号 _日本語版 _H2-3_CMYK