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1 No.18-009 2018.10.26 InterRisk Thai News <2018 No.02> タイの地震リスク タイにおいても去に地震や津波による被害が発生していますが、日本やインドネシアと比較する とその頻度や深刻度は低く、それゆえ、地震がなぜ発生するのか、どのような被害が生じるのか、ま た地震にどう対処すべきか、についてタイでは一般的にあまり知られていないと考えられます。 地震は、地殻(地球の外側を構成する固体の表層分)に蓄積した歪み(ひずみ)エネルギーが突 然解放されることで発生する自然現象です。歪みエネルギーが地殻内の岩石に亀裂を生じさせること で、地殻はバランスを保っています。いったん亀裂が拡がった箇所は、「断層」と呼ばれます。この断 層が突然動くとき、地震が発生します。 1. プレートテクトニクス プレートテクトニクスは、最もよく認識されている地質学的理論の一つです。この理論は、アルフ レート・ロータル・ヴェーゲナー(Alfred Lothar Wegener)が提唱した「大陸移動説」を発展させたも のであり、地球内における熱の対流活動によって、地殻を構成するプレートの大規模な移動が生じ ると説明するものです(図 1)。 地球のコアからマントル層(地殻と外側のコアの間に位置する溶融層)へ伝わる熱がマントル層内 に質を創り出しまた循環させ、上層の地殻がプレートとして分割する要因となっています。図 2 示すように、プレート同士の境界面では収束、発散、変形が生じています。このプレート動の結果、 地震や山動、火山噴火など多くの自然現象が発生します。 1 地球内の熱流の循環 (マントル対流) 2 断層のタイプ https://sites.google.com/site/nawasripong/home/unit1 プレートの収束 プレートの発散 プレートの変形

InterRisk Thai News 18-02 -タイの地震リスク1 No. 18-009 2018.10.26 InterRisk Thai News <2018 No.02> タイの地震リスク タイにおいても遃去に地震や津波による被害が発生していますが、日本やインドネシアと比較する

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No.18-009

2018.10.26

InterRisk Thai News <2018 No.02>

タイの地震リスク

タイにおいても過去に地震や津波による被害が発生していますが、日本やインドネシアと比較する

とその頻度や深刻度は低く、それゆえ、地震がなぜ発生するのか、どのような被害が生じるのか、ま

た地震にどう対処すべきか、についてタイでは一般的にあまり知られていないと考えられます。

地震は、地殻(地球の外側を構成する固体の表層部分)に蓄積した歪み(ひずみ)エネルギーが突

然解放されることで発生する自然現象です。歪みエネルギーが地殻内の岩石に亀裂を生じさせること

で、地殻はバランスを保っています。いったん亀裂が拡がった箇所は、「断層」と呼ばれます。この断

層が突然動くとき、地震が発生します。

1. プレートテクトニクス

プレートテクトニクスは、最もよく認識されている地質学的理論の一つです。この理論は、アルフ

レート・ロータル・ヴェーゲナー(Alfred Lothar Wegener)が提唱した「大陸移動説」を発展させたも

のであり、地球内部における熱の対流活動によって、地殻を構成するプレートの大規模な移動が生じ

ると説明するものです(図 1)。

地球のコアからマントル層(地殻と外側のコアの間に位置する溶融層)へ伝わる熱がマントル層内

に物質を創り出しまた循環させ、上層の地殻がプレートとして分割する要因となっています。図 2 に

示すように、プレート同士の境界面では収束、発散、変形が生じています。このプレート運動の結果、

地震や造山運動、火山噴火など多くの自然現象が発生します。

図 1 地球内部の熱流の循環

(マントル対流) 図 2 断層のタイプ

https://sites.google.com/site/nawasripong/home/unit1

プレートの収束 プレートの発散 プレートの変形

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地殻は、地球の最も外側を構成する薄くもろい固体の岩層であり、地球表面から約 50 キロメートル

の距離を占めています。地殻には海洋地殻と大陸地殻のタイプがあり、主に 13 の大きなプレートで構

成されています。これら 13 のプレートは、北アメリカプレート、南米プレート、ユーラシアプレート、

アフリカプレート、太平洋プレート、南極プレート、フィリピンプレート、アラビアプレート、スコ

シアプレート、ココスプレート、カリブプレート、オーストラリアプレート、ナスカプレートと呼ば

れています(図 3)。

2. 地震の原因

地震には大きく分けて 2 つの発生原因があります。

(1) 人的な要因による地震

・ダムや大型貯水池の建設:水量や水圧の増加から解放されるエネルギーが、その周辺の圧力変化を

引き起こします。ダムの下の岩石層には多くの歪みが蓄積し、地震の原因となります。しかし、地

震の頻度や大きさはやがて減少し正常の状態に戻っていきます。このタイプの地震の震源深さは、

通常は 5-10 キロメートル程度です。

・鉱山採掘時の爆破作業:地震活動を引き起こす可能性があります。

・地下水の利用、油・天然ガスの採掘:支持層の運動を引き起こします。

・核実験:核実験によって生じる揺れは、地殻内側の層にも伝播する可能性があります。

(2) 自然現象による地震(広く受け入れられている以下 2 つの理論があります。)

・断層地震説:地殻が突然ひび割れることにより地震が発生すると説明される理論です。突然放出さ

れたエネルギーは、地震という現象となって地表に揺れをもたらします。

・弾性反発説:地下の歪みから生じる弾性変形(ゴムのような変形)によって地震が発生すると説明

される理論です。歪みにより断層に弾性変形が起き、ある地点まで変形したときに最

終的に別方向に裂けることで、その破壊エネルギーが地震波の形で放出されます。そ

の後、断層は元の状態に戻っていきます(図 4)。

https://sites.google.com/site/nawasripong/home/unit1

図 3 大陸プレート・海洋プレート

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これらの理論は、地震が活動的な断層から生じ、地殻の形状変化(プレートテクトニクス)に関連

しているという考えを支持するものです。

前述の 13 個のプレートはその全てが常に移動しており、ゆっくりと変形しています。変形運動はプ

レートによって異なっており、発散したり、収束したり、断層間で変形したりする場所があります。2

枚のプレートの間に蓄積する応力の解放による地震(プレート間地震)は頻繁に発生しており、とき

に巨大地震となります。一方、地殻プレートの内部で発生する地震(プレート内地震)は多くの場合

プレート間地震ほど大きい規模ではなく、頻度も高くありません(図 5)。

UGA Geology Department web page - University of Georgia-rebound.html

図 5 プレート間地震とプレート内地震

図 4 弾性反発説

http://earthquakesplates.blogspot.com/2011/08/elastic-re

プレート間地震 プレート内地震

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3. マグニチュードと震度

マグニチュードと震度はどちらも地震の強さを表す用語ですが、よく混同して使用されています。

(1) マグニチュード:マグニチュードは、

「震源」と呼ばれる地震の発生地点から

放出された地震エネルギーの総量を示

す指標です。放出されるエネルギーは、

地震波として認識されます。地震波の大

きさは、地震計によって観測される波形

の振幅から計測されます。

マグニチュードにはいくつかの種類

がありますが、一般的によく用いられる

リヒタースケール(ローカルマグニチュ

ード / ML)は、1935 年にアメリカの地

震学者チャールズ・F・リヒター(Charles

F. Richter)が提唱した指標です。リヒタ

ーは、運動エネルギーが高いほど振幅が

大きく、それらの関係は対数を用いた数

式で関係づけられることを発見しまし

た。一定の震源距離(震源から地震計までの距離)において観測される指標はリヒタースケールと呼

ばれ、マグニチュードとして認識されています(下表)。

リヒタースケールは、値が 1 つ増えると振幅が約 10 倍、エネルギーが約 30 倍大きくなります。し

たがって、スケールが 3 つ大きい場合、振幅は約 1,000 倍、エネルギーは約 27,000 倍になります。他

の方法よりも早く算出できることがリヒタースケールのメリットです。ただし、その精度は地震計の

震源距離が 600-1,000km を超えない場合またはマグニチュード 7 以下の地震に対して有効と認識され

ています。

表 1 地震マグニチュードのスケール(USGS)

リヒタースケ

ール(ML) レベル 地震の強さと被害の関係

3.0 未満 Micro 微小地震。たまに揺れを感じる、或いは多くの人が揺れを感じない。一

部の人に頭痛を引き起こす。

3.0-3.9 Minor 通過する列車のような微小な振動を建物内でも感じることがある。

4.0-4.9 Light 自宅や外にいる人が揺れを感じ、ぶら下がっている物などが揺れる。

5.0-5.9 Moderate 強い揺れを感じ、物が動いて落ちることがある。

6.0-6.9 Strong 建築物が損傷して破壊されるほど、強い揺れに見舞われる。

7.0-7.9 Major 多くの建物や構造物などに深刻な被害が発生する。物の落下や損傷のほ

か地割れを引き起こすことがある。

8.0 以上 Great とても強い揺れにより、人工の構造物の多くは破壊され、死者が発生し、

広範囲に被害をもたらす。

モーメントマグニチュード/ Mw 法も多くの国で使用されており、断層運動から直接地震エネルギー

を測定する方法です。この方法の欠点は、計算が比較的複雑なことです。しかし、より正確な値を求

めることができるため、大きな地震でも使用することができます。

図 6 地震と地震波の起源

https://chanaview.wordpress.com/2011/04/25/2001/

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(2) 震度:震度は揺れの大きさを示すもので、人々が地表で感じる揺れの強さや建物被害に基づいてい

ます。震源からの距離が遠くなるほど地震被害は小さくなる傾向にあります。また、人口の多い都市

で発生する損害は森林などの損害よりも大きくなります。震度にもいくつかの種類がありますが、タ

イにおいてはメルカリ震度階(Mercalli Scale)が使用されています。メルカリ震度階は合計 12 のレベ

ルに分けられており、最も大きな震度(メルカリ震度 12)は壊滅的な被害をもたらします(表 2)。

強度 地震による影響 強度 地震による影響

I 特に有利な条件の

下ではごくわずか

しか感じられない。

VII Very strong

家の壁に亀裂が生

じ、天井が落下す

る。

II Weak

特に建物の上層階

にいる少数の人だ

けが感じる。

VIII Severe

車の運転が困難と

なり、建物や煙突

にひび割れが生じ

る。

III Weak

静止している人は

床が振動している

ように感じる。

IX Violent

地割れに沿って住

宅の亀裂や、水

道・ガスのパイプ

が破裂する。

IV Light 動きのある人は振

動を感じる。

X Disaster

地割れが拡大し、

建物の崩壊や鉄道

の脱線、山崩れ などが生じる。

V Moderate

眠っている人は、揺

れにより目を覚ま

すことができる。

XI Extreme Disaster

建物や橋の崩壊、

鉄道路線、水道管、

電気ケーブルの破

損、地滑りや堤防

決壊による洪水が

発生する。

VI Strong

木や家屋が振動し、

構造物が損傷する。

XII Catastrophe

地上のすべての構

造物は完全に破壊

され、地球上が波

のように動く。

表 2 メルカリ震度による強度レベル

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4. タイの地震リスク

タイは、図 7 に示すとおりユーラシア

プレートに位置しています。タイの直下

にはプレート境界がなく、地震リスクは

比較的低い国と言えます。タイ周辺のプ

レート境界はミャンマー、アンダマン海

(タイ西部の海)、スマトラ島東部にあ

り、タイの国境からは 350km 程度以上離

れています。しかしながら、タイにもプ

レート内地震の震源となる断層が主に

北部と西部に位置しており、過去には国

内で地震による被害が発生しています。

現在、タイ国内では 14 の活断層が確

認されています。下表に活断層の一覧、

次ページに活断層の位置図を示します。

No. 断層名 位置(県名) 断層の種類 直近の地震

発生日

マグニチュード (リヒタースケ

ール)

1 Mae Chan fault Chiang Rai and Chiang Mai 左横ずれ断層 2018/5/14 ML1.6

2 Mae Tha fault Chiang Mai, Lamphoon, and Chiang Rai

正断層、右横ずれ断層、

左横ずれ断層 2017/9/11 ML1.3

3 Thoen fault Lampang and Phrae 左横ずれ断層 2013/3/2 ML3.4

4 Mae Ing fault Chiang Rai 左横ずれ断層 - - 5 Pua fault Nan 正断層 2017/1/21 ML2.6 6 Uttaradit fault Uttaradit 左横ずれ断層 2017/4/22 ML3.9

7 Phayao fault Phayao, Chaing Rai and Lampang 正断層、左横ずれ断層 2014/5/5 ML6.3

8 Mae Hong Son fault

Mae Hong Son and Tak 正断層 2017/2/13 ML3.1

9 Moei fault Tak and Khampaengpetch 正断層、右横ずれ断層 1975/2/23 ML5.6

10 Si Sawat fault

Kanchanaburi, Suphanburi, Uthaithani and Tak

正断層、右横ずれ断層、

左横ずれ断層 2016/10/19-20

*5 回発生 ML2.1-3.6

11 Three Pagoda fault

Kanchanaburi 右横ずれ断層、左横ず

れ断層 2015/8/20 ML4.5

12 Ranong fault Ranong, Prachuabkirikhan and Phangnga

左横ずれ断層 2012/6/4 ML4.0

13 Khlong Marui fault

Surat Thani, Krabi and Phangnga 左横ずれ断層、正断層 2015/5/6 ML4.6

14 Phetchabun fault

Petchabun 正断層 -

図 7 大陸プレート・海洋プレート

https://www.worldatlas.com/articles/major-tectonic-plates-on-earth.html

表 3 タイの活断層

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図 8 タイの活断層図

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断層では断続的にエネルギーが放出されており、小・中規模の地震が繰り返し発生しています。こ

れは地殻が動き続けていることを表しています。各活断層の活動度は歪みが蓄積する速度、量に依存

し、地震の発生間隔は断層ごとに異なります。地震の発生時期は過去の地震の発生間隔や断層の種類

によって予測されており、一般的に再現期間が長いとされる中・大規模の地震が発生する可能性が高

いのは Mae Chan fault、Ranong fault、Khlong Marui fault とされています。

1,000 年前の記録によれば、Chiang Rai 県および Chiang Mai 県に位置する Mae Chan fault で大規模な

地震が発生しています。同断層帯では地震発生によるエネルギーの解放後も次の地震の原因となる歪

みが蓄積されています。さらに、地質調査の結果、Ranong fault、Khlong Marui fault においてマグニチ

ュード(リヒタースケール)6 から 7 の地震がそれぞれ 2,000 年前、4,000 年前に発生したものと推測

されており、大規模地震が再度発生する時期が近づいている可能性があります。

5. タイの地震観測所

タイには地震観測所が 67 箇所に設置されてお

り、それぞれの観測所は王立灌漑局、発電公社、

気象局、鉱物資源局が以下の目的で運用、管理

しています。

1. 王立灌漑局:地震によるダムへの影響を調査

するため、中・大規模ダムの半径 150km 以内に

観測所を設置し、地表面最大加速度を計測。

2. 発電公社:地震によるダムへの影響を調査す

るため、地表面最大加速度を計測。

3. 気象局:大都市の近くに観測所を設置し、地

表面最大加速度を含む日報を公表。

4. 鉱物資源局:活断層で発生する地震の報告義

務を有する。

図 9 タイの地震観測所

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6. タイ国内で過去に発生した主な地震

過去にタイ国内で発生したマグニチュード 5 以上の主な地震を下表にまとめます。

7. タイに影響を与えた国外の主な地震

タイ国外で発生した地震もタイに大きな影響を及ぼすことがあります。タイに影響を及ぼしたマグ

ニチュード 6 を上回る国外の大規模な地震は、ミャンマーおよびラオスとの国境付近、アンダマン海、

スマトラ島周辺で発生しています(下表および図 10 参照)。

発生日 震源 マグニチュード 主な被害

2013/6/2 スマトラ島沖 6.0 Phuket、Phangnga およびバンコクの高層

ビルで揺れが発生。

2012/11/11 ミャンマー 6.6 Chiang Mai、Nonthaburi、バンコクで揺れ

が発生。 2012/6/23 スマトラ島沖 6.3 Phuket、Songkla の高層ビルで揺れが発生。

2012/4/11 スマトラ島沖 8.6 タイ南部、中部で揺れが発生。30cm-80cmの津波が Miang Island、Phangna に襲来。

2011/9/6 スマトラ島沖 6.7 Phuket、Songkla で揺れが発生。

発生日 発生場所 断層 マグニチュード 主な被害

2014/11/5 Chiang Mai Province

7. Phayao fault 6.3

震源周辺の道路、建物、住宅が深

刻な被害を受け、1 人が死亡。 Chiang Rai、Prae、Maehongsorn、 Uttaradit、Phitsunulok、Chiang Mai およびバンコクの高層ビルでも

揺れが発生。

2006/12/13 Chiang Mai Province

2. Mae Tha fault 5.1 Chiang Mai の多くの場所で揺れお

よび家屋のひび割れが発生。

1995/12/21 Chiang Mai Province

2. Mae Tha fault 5.2

Chiang Mai、Chiang Rai、Phayao、Lampang、Lampoon、Mae Hongsornで揺れが発生。Chiang Mai で 1名

が転倒、頭を強打して死亡。物的

被害は軽微。

1995/12/9 Prae Province Mae Yom fault 5.1

Chiang Mai 、 Chiang Rai 、

Lamphoon、Lampang、Phayao、Prae、Uttaradit、Nan で揺れが発生。被

害は軽微。

1989/9/29 Burma-Thailand

1. Mae Chan fault 5.4 タイ北部全域で揺れが発生。

1983/4/22 Kanchanaburi Province

10. Si Sawat fault 5.2 タイ中央部、北部で揺れが発生。

バンコクの建物で軽微な被害。

1983/4/15 Kanchanaburi Province

10. Si Sawat fault 5.5 バンコクで揺れが発生。

表 4 タイで発生した地震

表 5 タイに影響を与えた国外の主な地震

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タイ国外で発生した地震でタイに最も大きな被害をもたらしたのは 2004/12/26 に発生したスマトラ

島沖地震です。インド洋のプレート境界で発生したマグニチュード 9.1~9.3(モーメントマグニチュー

ド)の巨大地震により高さ 30m の津波が発生し、周辺の沿岸部に襲来しました。タイでも図 12 に示す

南部の 6 県(Phuket、Phangna、Ranong、Krabi、Trang、Satun)に津波が到達し、5,400 名が死亡、8,000

名が負傷する大きな被害となりました。

図 11 2004 年スマトラ島沖地震による津波の影響を受けた地域

http://www.somethingjam.com/firstphuket_en

図 10 タイ周辺の断層位置図と震源位置(1912 年~2006 年)

Ref. Geology of Thailand, Department of Mineral Resources 2550

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8. タイの地震ハザードマップ

鉱物資源局は、活断層の位置、地形・地層

の状況、過去に発生した地震の情報などを基

に、タイ国内で想定される地震による揺れの

強さを 5 段階で評価しマッピングした地震

ハザードマップ(図 12)を作成、公表して

います。

地震による揺れの強さは、同じマグニチュ

ードの地震でも震源からの距離によって異

なります。一般的に震源から遠い場所は地震

による揺れが減衰し小さくなります。また、

強い揺れが発生しても、例えば森林地域であ

れば被害は少なく、それほど強い揺れでなく

とも都市部では大きな被害が発生する可能

性があります。

さらに、バンコクは「バンコク粘土層(図

13)」と呼ばれる軟らかい地層にあり、地震

による揺れが増幅しやすい傾向にあります。

特に遠方で発生した巨大地震による揺れは

長周期成分が増幅しやすく、固有周期が長い

高層ビルは共振により大きく揺れることが

あります。

Chao Phraya River

http://www.bhumisiamandconditech.com/%E0%B8%9A%E0%B8%97%E0%B8%

84%E0%B8%A7%E0%B8%B2%E0%B8%A1%E0%B9%81%E0%B8%99%E0%図 13 バンコクの地層

図 12 タイの地震ハザードマップ

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9. 結論

タイは地震リスクが高くない国ですが、活断層は存在しており北部、西部に集中しています。過去

にタイ国内で発生した地震は中・小規模であり、被害も大きくありません。タイ国内に影響を及ぼす

規模の大きな地震は、ミャンマーおよびラオスとの国境付近、アンダマン海、スマトラ島周辺で発生

しています。

バンコクや河川のデルタ地帯など、軟らかい地層からなる地域は地震による揺れが増幅するため、

遠方で発生した地震でも被害が生じる可能性があります。一方、タイ北東部の山岳地帯のような硬い

地盤からなる地域は、揺れの増幅が小さいため地震による影響も小さくなる傾向にあります。

以上

図出典

Figure 1: Wikipedia

Figure 2, 3: https://sites.google.com/site/nawasripong/home/unit1

Figure 4: http://earthquakesplates.blogspot.com/2011/08/elastic-

Figure 5: UGA Geology Department web page - University of

Georgia-rebound.html

Figure 6: https://chanaview.wordpress.com/2011/04/25/2001/

Figure 7,11: Geology of Thailand. Department of Mineral

Resources 2550

Figure 8:

https://www.worldatlas.com/articles/major-tectonic-plates-on-eart

h.html

Figure 9: Department of Mineral Resources, October 2549

Figure 10: Department of Mineral Resources, March 2558

Figure 12: http://www.somethingjam.com/firstphuket_en

Figure 13: Department of Mineral Resources, October 2556

Figure 14:

http://www.bhumisiamandconditech.com/%E0%B8%9A%E0%B

8%97%E0%B8%84%E0

参照

Geology of Thailand. Department of Mineral Resources

2550

http://www.scimath.org/lesson-physics/item/7287-earthqu

ake-earthquake

http://www.dmr.go.th/main.php?filename=case_eq

https://sites.google.com/site/phaythrrmchatiniprathesthiy/h

lak-kar-laea-thvsti-thi-keiywkhxng/phay-thrrmchati-keid-k

hun-ni-prathesthiy/phaen-din-hiw-earthquakes

https://sites.google.com/site/s5620210544/khnad-khxng-p

haen-din-hiw

http://kanchanapisek.or.th/kp6/sub/book/book.php?book=3

3&chap=6&page=t33-6-infodetail06.html

https://guru.sanook.com/27120/

https://www.tmd.go.th/info/info.php?FileID=77

http://www.mmtc.ac.th/km/index.php?option=com_conten

t&view=article&id=41:2010-03-10-08-29-57&catid=16:2

009-12-24-08-50-51&Itemid=22

https://hilight.kapook.com/view/101733

http://www.earthquake.tmd.go.th/stations.html

https://www.thairath.co.th/content/554344

https://pantip.com/topic/32681252

https://sites.google.com/a/padad.ac.th/502---7/kar-khanwn

-kar-keid-phaen-din-hiw

Page 13: InterRisk Thai News 18-02 -タイの地震リスク1 No. 18-009 2018.10.26 InterRisk Thai News <2018 No.02> タイの地震リスク タイにおいても遃去に地震や津波による被害が発生していますが、日本やインドネシアと比較する

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2018.10.26

MS&AD インターリスク総研株式会社は、MS&AD インシュアランスグループに属する、リスク

マネジメントに関する調査研究およびコンサルティングを行う専門会社です。タイ進出企業さま向

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