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<内 容>
(1)研究の目的
(2)調査の概要
(1)教員の働き方の実態
① 労働時間
② 育児・介護
③ ストレス・健康不安
④ 学ぶ時間の不足
⑤ 「やりがい」は感じるが、若い人には勧めたくない
(2)働き方に関する意識
⑥ 時間外業務に対する意識
⑦ 時間外業務を減らすことへの「罪悪感」や「ためらい」
⑧ 「減らせる」と思う時間
⑨ 「教員がやらなくてもよい」と思う仕事
(3)これからの教職員の働き方について考えていくために
⑩ 業務改善に関する意識
⑪ 「先輩」の影響
⑫ 「時間外」であることの意識
⑪ 「先輩」の影響
⑫ 教員の「意識」×「実態」
横浜市教育委員会・東京大学中原淳研究室 共同研究(平成 29年度)
~教員の「働き方」や「意識」に関する質問紙調査の結果から~
2 調査結果から見えてきたこと
1 研究の目的・調査の概要
3 今後の取組
平成 30年5月 14日
教職員育成課
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(1)研究の目的
本市では、平成25年度に「横浜市立学校 教職員の業務実態に関する調査」を実施し、その結
果、約9割の教職員が「多忙だ」と感じているなどの実態が明らかになりました。この調査以降、
本市では「ICTの活用や専門スタッフの配置による業務改善」、「夏季休業期間中の学校閉庁日の
実施」などの取組によって教職員の多忙化解消を図ってきましたが、抜本的な解決には至ってい
ません。
そこで、教職員育成課では東京大学の中原淳研究室との共同研究により、教職員の長時間労働
につながる要因を明らかにするために、「働き方」と「人の意識」の関連性に着目した実態調査
を実施し、その結果を次のような取組に生かすことによって、「長時間労働の是正」と「魅力あ
る学校教育の実現」を同時に目指すことにしました。
(2)調査の概要
【調査対象者】横浜市立小中学校の教員、校長、副校長
【標本抽出法】有意抽出法(地域分布や学校規模等を考慮して抽出)
【調査実施法】自記式質問紙によるWeb調査
【回 答 期 間】平成 29年 11~12月
【調 査 項 目】勤務実態、働き方に関する意識等
【対 象 者 数】教員949(小学校:610、中学校:339)
校長30(小学校:20、中学校:10)
副校長30(小学校:20、中学校:10)
【回 収 数】教員522(小学校:319、中学校:203)
校長28(小学校:18、中学校:10)
副校長27(小学校:17、中学校:10)
【有効回答数】教員521(小学校:318、中学校:203)
校長28(小学校:18、中学校:10)
副校長27(小学校:17、中学校:10)
【有効回答率】教員54.9%(小学校:52.1%、中学校:59.9%)
校長93.3%(小学校:90.0%、中学校:100%)
副校長90.0%(小学校:85.0%、中学校:100%)
1 研究の目的・調査の概要
・実態調査の結果をもとにして、「働き方」へのアプローチを目指した研修を開発する。
・教職員のキャリアステージに応じた人材育成指標に「働き方改革」の視点を組み込み、体系
的な研修の中で実践化を図る。
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(1)教員の働き方の実態
① 労働時間
教員の労働時間は、直近 3日間の平均で 1日当たり 11時間 42分でした。また、1日当たりの
労働時間が 12時間以上の教員は、全体の 42.0%でした。
② 育児・介護
教員の中で約 2割(22.3%)が未就学児の子育てをしています。また、約 1割(9.8%)の教員
が介護をしていることが分かりました。
2 調査結果から見えてきたこと
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③ ストレス・健康不安
現在、仕事を行う上でストレスを感じている人の割合は 78.7%となっており、約 8 割の教員が
ストレスを感じながら仕事をしている状況です。また、健康に不安のある教員の割合は 51.1%で、
約半数の教員が健康に不安を抱えていることが分かりました。
こうした結果と長時間労働との関係を見ていくと、長時間労働をしている教員ほどストレスを感
じたり、健康に不安を抱えたりしていることも分かりました(下の帯グラフは、「労働時間」と「健
康の不安」との関係を示したもの)。
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④ 学ぶ時間の不足
「教材研究の時間が足りていない」と感じている教員が7割を超えて(75.7%)います。また、
「新学習指導要領について理解するための時間が確保できていない」と感じている教員の割合は
65.5%となっています。
未来を担う子供たちの学びを充実させるためにも、教員の多忙を解消することが急務です。
⑤ 「やりがい」は感じるが、若い人には勧めたくない
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「仕事にやりがいを感じている」という教員は 78.2%いますが、その一方で「教員を志す若い人
にこの仕事を勧めたい」と考えている教員は 34.0%に留まっています。やりがいは感じながらも、
現在の仕事や働き方について課題意識をもっている教員が多いことが伺えます。
「若い人には勧めたくない」と考える要因については、今後のインタビュー調査などを通じて明
らかにしていく予定です。
(2)働き方に関する意識
こうした働き方の実態の中、教員はどのように感じたり、考えたりしながら日々の教育活動や業
務に取り組んでいるのでしょうか。
⑥ 時間外業務に対する意識
<教員> <校長>
「時間外業務を減らしたい」と思っている割合は、教員では 82.9%、 校長では 79.3%でした。
全体では、約 8割が時間外業務を減らしたいと思っていることが分かりました。
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⑦ 時間外業務を減らすことへの「罪悪感」や「ためらい」
<教員> <校長>
時間外業務を減らすことに罪悪感やためらいを感じている割合は、教員が36.6%、校長が 28.5%
となっています。「時間外業務を減らしたい」と思う一方で、このようなジレンマを抱えている人が、
約 3割いることが分かりました。
今後は、罪悪感やためらいを感じる要因をインタビュー調査などを通じて明らかにしていく予定
です。
⑧ 「減らせる」と思う時間
<教員> <校長>
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1か月当たりの時間外業務のうち、「減らせる」と思う時間について聞いたところ、「0時間」と
回答した割合が、教員では 32.2% 校長では 27.3%でした。時間外業務を減らしたいと思う一方
で、「減らせそうもない」と考えている人が約 3割いることが分かりました。
このことについても、今後のインタビュー調査などを通じて要因を明らかにしていく予定です。
⑨「教員がやらなくてもよい」と思う仕事
<教員> <校長>
「教員以外の人が担ってもよい」と感じる仕事の中で特に多かったのは、教員では、
○パソコンやシステムの管理
○学校外からのチラシの配布
○校外の見回り活動
校長では、
○運動会・体育祭等での会場の見回りなどの安全管理に関すること
○来校者のインターフォンの対応
○学校外からのチラシの配布
という結果でした。
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(3)これからの教職員の働き方について考えていくために
⑩ 業務改善に関する意識
<教員> <校長>
「業務改善を行っていきたい」という意識については、教員、校長ともに高く、特に校長の「積
極的にやっていきたい」という回答の割合は 48.3%でした。その一方で、「必要性は感じるが、あ
きらめている」と回答した割合は、教員で 18.3%、校長で 3.4%となっています。
「あきらめている」という回答の要因を分析するとともに、業務改善に効果がある取組について、
今後の研修などを通じて周知を図っていきたいと考えています。
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⑪ 「先輩」の影響
働き方(業務の進め方・取組)について「最も影響を受けた時期」は、「初任~3年目」と答え
た教員が約5割(51.3%)となっています。また、「最も影響を与えた人物」については、「先輩」
が8割を超える(87.8%)結果となりました。初任期に身近にいた先輩がロールモデルになってい
るケースが多いことが分かります。
そして、それらの先輩に対して「児童生徒のためにできることは、時間がかかっても徹底的に取
り組んでいた」と感じている教員が 87.4%にのぼりました。「子供のためならば時間を惜しまない」
という先輩の姿が、次の世代へと受け継がれている可能性が伺えます。
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⑫ 「時間外」であることの意識
「あなたは、勤務時間以外に業務を行う場合に、それが時間外業務だと意識していますか」とい
う問いに対して、「意識していない」という回答が 32.5%と 3割を超えています。
時間外業務であることの意識の有無と、実際の働き方との相関関係等については、今後のインタ
ビュー調査などを通じて明らかにしていく予定です。
※今回掲載した内容は、調査結果の一部です。冊子では紹介できなかった「副校長」のデータも含
めて、全体の調査結果については、「横浜市教育センター」のWebページに掲載をする予定です。
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教職員育成課では、今回の調査研究の結果を生かし、引き続き中原研究室との共同研究で教職員
の働き方に資する研修を開発、実施していきます。その際には、次の二つのことを重視します。
研修の開発に当たっては、今回の調査結果に加えて、過去の調査結果や他業種との比較等をする
とともに、数値だけでは表しきれない「仕事や働き方に関する意識」などを把握するために、教員
以外の職種の方も含めて、一部の教職員の方へのインタビュー調査を実施したいと考えています。
その際には、ご理解とご協力をよろしくお願いします。
※ 東京大学 中原 淳 准教授(平成 29年度)について
中原准教授は、人材育成を研究領域としており、『職場学習論』『経営学習論』(ともに東京大
学出版会)をはじめ、その専門分野に関する著書が多数あります。また、研修の開発に関する研究
にも取り組んでおり、その普及啓発に向けた各種セミナーを開催しています。特に、調査に基づく
「サーベイフィードバックの手法を取り入れた研修(※)」「ケースメソッド研修」などの先駆的
な研修を専門としており、現在、多くの企業等が人材育成のために採用しています。
横浜市教育委員会とは、平成 23~25 年度の3年間にわたって共同研究を行い、初任者や経験
10年の教員を対象とした調査を実施しました。その結果に基づいて「サーベイフィードバック研修」
を開発し、現在でも各キャリアステージでの研修に活用しています。また、平成 27 年度には中原
准教授の監修により『横浜型 育ち続ける学校 校内人材育成の鍵 ガイド編 第2版』を発行しまし
たが、この中でも紹介している「背伸びの経験」と「内省」の重要性については、教職員育成課が
実施する各種研修や校内 OJTを推進する上での支柱となっています。
中原准教授は平成 30 年3月 31 日付で東京大学を退職し、同4月1日付で立教大学経営学部の
教授に就任しました。これまでに東京大学の中原淳研究室が推進してきた各種プロジェクト等は、
立教大学の同研究室に引き継がれます。教職員育成課との研究も、今後は立教大学・中原淳研究室
と共同で継続していきます。
※【サーベイフィードバックとは】
インタビュー調査や各種のサーベイなどのツールによって組織の健全性を調査し、その分析結果
を回答者にフィードバックすることをきっかけとして対話などを行い、協働的な問題の解決に当た
るという組織開発の手法。 (中原淳 2015「HRDとOD」日本労働研究雑誌/
中村和彦 2013「組織開発の特徴とその必要性」関西生産性本部)
3 今後の取組
・調査研究のデータから有用な情報を抽出して示すことにより、教職員一人ひとりの「気付き」
を大切にしていく。
・各学校が培ってきた風土や文化、教職員一人ひとりのライフスタイルや考え方を尊重しながら、
学校や教職員が自らの働き方を改善していくように提案をしていく。