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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告) 失神の診断・治療ガイドライン (2012 年改訂版) Guidelines for Diagnosis and Management of Syncope (JCS 2012) 合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本救急医学会,日本小児循環器学会,日本心臓病学会,日本心電学会, 日本不整脈学会 班 長 井 上   博 富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二 班 員 産業医科大学不整脈先端治療学 尾 辻   豊 産業医科大学第2 内科 昭和大学内科学講座循環器内科学部門 日本大学小児科学系小児科学分野 防衛医科大学校集中治療部 鄭   忠 和 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 循環器呼吸器代謝内科学 順天堂大学医学部附属浦安病院循環器内科 西 横浜南共済病院循環器内科 堀   進 悟 慶應義塾大学救急医学 山口大学大学院医学系研究科器官病 態内科学 三重大学大学院医学系研究科循環器内科学 吉 田   清 川崎医科大学循環器内科 協力員 産業医科大学第2 内科 山口大学大学院医学系研究科保健学科 鈴 木   昌 慶應義塾大学救急医学 順天堂大学医学部附属練馬病院循環器内科 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 循環器呼吸器代謝内科学 川崎医科大学循環器内科 富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二 宮 武   諭 済生会宇都宮病院救急診療科 昭和大学内科学講座循環器内科学部門 外部評価委員 奥 村   謙 弘前大学循環呼吸腎臓内科学 自治医科大学循環器内科 山 口   徹 虎の門病院 山 科   章 東京医科大学第二内科 (構成員の所属は2011 7 月現在) 改訂にあたって…………………………………………………… 2 Ⅰ.総 論………………………………………………………… 3 1.定義 ……………………………………………………… 3 2.原因と病態生理 ………………………………………… 3 3.疫学 ……………………………………………………… 4 4.診断へのアプローチ …………………………………… 7 Ⅱ.各 論………………………………………………………… 9 1.起立性低血圧 …………………………………………… 9 2.反射性失神 ………………………………………………10 3.体位性起立頻脈症候群 …………………………………21 4.不整脈 ……………………………………………………23 5.虚血性心疾 ………………………………………………25 6.心筋症 ……………………………………………………27 7.弁膜症 ……………………………………………………29 8.先天性心疾患 ……………………………………………30 9.その他の心疾患 …………………………………………31 10.大動脈疾患 ……………………………………………32 11.肺塞栓症,肺高血圧症 ………………………………33 12.小児の失神 ……………………………………………35 13.入浴と失神 ……………………………………………37 14.採血と失神 ……………………………………………39 Ⅲ.救急での対応…………………………………………………40 1.救急部門(ED)における一過性意識消失と失神……40 2.救急部門(ED)における失神患者へのアプローチ41 目  次 1

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)

Guidelines for Diagnosis and Management of Syncope (JCS 2012)

合同研究班参加学会: 日本循環器学会,日本救急医学会,日本小児循環器学会,日本心臓病学会,日本心電学会, 日本不整脈学会

班 長 井 上   博 富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二

班 員 安 部 治 彦 産業医科大学不整脈先端治療学

尾 辻   豊 産業医科大学第2内科

小 林 洋 一 昭和大学内科学講座循環器内科学部門

住 友 直 方 日本大学小児科学系小児科学分野

髙 瀬 凡 平 防衛医科大学校集中治療部

鄭   忠 和 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科循環器呼吸器代謝内科学

中 里 祐 二 順天堂大学医学部附属浦安病院循環器内科

西 崎 光 弘 横浜南共済病院循環器内科

堀   進 悟 慶應義塾大学救急医学

松 㟢 益 德 山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学

山 田 典 一 三重大学大学院医学系研究科循環器内科学

吉 田   清 川崎医科大学循環器内科

協力員 河 野 律 子 産業医科大学第2内科

清 水 昭 彦 山口大学大学院医学系研究科保健学科

鈴 木   昌 慶應義塾大学救急医学

住 吉 正 孝 順天堂大学医学部附属練馬病院循環器内科

濱 崎 秀 一 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科循環器呼吸器代謝内科学

林 田 晃 寛 川崎医科大学循環器内科

水 牧 功 一 富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二

宮 武   諭 済生会宇都宮病院救急診療科

渡 辺 則 和 昭和大学内科学講座循環器内科学部門

外部評価委員

奥 村   謙 弘前大学循環呼吸腎臓内科学

島 田 和 幸 自治医科大学循環器内科

山 口   徹 虎の門病院

山 科   章 東京医科大学第二内科

(構成員の所属は2011年7月現在)

改訂にあたって…………………………………………………… 2Ⅰ.総 論………………………………………………………… 31.定義 ……………………………………………………… 32.原因と病態生理 ………………………………………… 33.疫学 ……………………………………………………… 44.診断へのアプローチ …………………………………… 7

Ⅱ.各 論………………………………………………………… 91.起立性低血圧 …………………………………………… 92.反射性失神 ………………………………………………103.体位性起立頻脈症候群 …………………………………214.不整脈 ……………………………………………………235.虚血性心疾 ………………………………………………25

6.心筋症 ……………………………………………………277.弁膜症 ……………………………………………………298.先天性心疾患 ……………………………………………309.その他の心疾患 …………………………………………3110.大動脈疾患 ……………………………………………3211.肺塞栓症,肺高血圧症 ………………………………3312.小児の失神 ……………………………………………3513.入浴と失神 ……………………………………………3714.採血と失神 ……………………………………………39

Ⅲ.救急での対応…………………………………………………401.救急部門(ED)における一過性意識消失と失神 ……402.救急部門(ED)における失神患者へのアプローチ …41

目  次

1

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

 失神は日常診療の場でよく遭遇する病態であり,救急来院例の1~2%を占める1)-3).Framingham研究では26年間の追跡期間中に男性で3%,女性で3.5%が少なくとも1回の失神を経験している4).最近の米国での検討では,失神の罹病率は0.8~0.93/1,000人・年であった5).原因疾患によっては生命に影響しないが,失神時に軽微な外傷ばかりでなく骨折,硬膜下血腫,自動車事故等の合併症を起こし得る.しばしば再発し,ときに精神的な問題を生じることもある6). 診断手技として,不整脈には電気生理検査,反射性(神経調節性)失神にはチルト試験が広く行われ,さらには植込み型のループレコーダーが導入され,失神の原因となる病態生理の理解が進み,不整脈に対する非薬物治療の進歩とあいまって,適切な診療が可能になってきた.本ガイドラインは可能な限り我が国の研究成果を取り入れた.無作為比較試験が少ないことから,エビデンスレベルが必ずしも高くない研究成績も採用し,エビデンス

レベルについての記載は省いた.診断・治療方法の推薦の度合いは以下のクラス分けに従った.①クラスⅠ : 有益であるという根拠があり,適応であ

ることが一般に同意されている.②クラスⅡa :有益であるという意見が多い.③クラスⅡb :有益であるという意見が少ない.④クラスⅢ : 有益でないかまたは有害であり,適応で

ないことが同意されている. 今回の改訂にあたっては,旧版7)で統一されていなかった用語を整理し,検査や治療に関する最新の情報を追加し,我が国の日常診療の現場で失神の診療にあたる医療従事者に,現時点での標準的な診療指針を提供するよう心掛けた.本ガイドラインは唯一絶対の診療方針を提示するものではなく,診療方針は個々の患者の状況に応じて適宜取捨選択されるべきものである. なお,治療法として推奨された薬剤には保険適応外のものも含まれており,使用にあたっては注意のこと.

ACC/AHA/ESC:American College of Cardiology/

American Heart Association /European Society of

Cardiology 米国心臓病学会 /米国心臓協会 /欧州心臓病学会

ARVC:arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy

不整脈原性右室心筋症ASD:atrial septal defect 心房中隔欠損[症]CSM:carotid sinus massage 頸動脈洞マッサージdDAVP:1-Deamino-8-D-arginine Vasopressin デスモプレシン

ECD:endocardial cushion defect 心内膜床欠損[症]ED:emergency department 救急部門ESC: European Society of Cardiology 欧州心臓病学会HCM:hypertrophic cardiomyopathy 肥大型心筋症ICD:implantable cardioverter defibrillator 植込み型除

細動器NET:norepinephrine transporter ノルエピネフリントランスポーター

PCI:percutaneous coronary intervention 経皮的冠[状]動脈インターベンション

PCPS:percutaneous cardiopulmonary support 経皮的心肺補助[法,装置]

PDA:patent ductus arteriosus 動脈管開存[症]PDE:phosphodiesterase ホスホジエステラーゼPOTS:postural (orthostatic) tachycardia syndrome 体位性(起立)頻脈症候群

SNRI:serotonin noradrenaline reuptake inhibitor  セ ロトニン・ノルエピネフリン再吸収阻害薬

SNRT:sinus node recovery time 洞結節回復時間SSRI:selective serotonin reuptake inhibitor 選択的セロ

【略 語】

改訂にあたって

3.救急部門(ED)における失神患者のリスク層別化 …444.外傷予防…………………………………………………445.救急部門(ED)における失神の診療アルゴリズム…44

Ⅳ.自動車運転……………………………………………………44文 献………………………………………………………………47

(無断転載を禁ずる)

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失神の診断・治療ガイドライン

Ⅰ 総 論

1 定義

 失神を表す英語 syncopeの語源はギリシャ語の“syn”(英語ではwith,together)と“koptein”(英語ではcut

off,strike)に由来する(英語の faintは syncopeと同義).失神は「一過性の意識消失の結果,姿勢が保持できなくなり,かつ自然に,また完全に意識の回復が見られること」と定義される.「意識障害」を来たす病態のなかでも,速やかな発症,一過性,速やかかつ自然の回復という特徴を持つ1つの症候群である .前駆症状(浮動感,悪心,発汗,視力障害等)を伴うこともあれば伴わないこともある.失神からの回復後に逆行性健忘をみることがあり,特に高齢者に多い. 失神前状態near-syncope,pre-syncopeは,失神に至る寸前の状況を指す表現として使用されるが,真の失神の前駆状態であることもあれば非特異的な「めまい感」をこのように表現することもある.

2 原因と病態生理 8),9)

 失神を来たす病態は様々であるが,共通する病態生理は「脳全体の一過性低灌流」である.表1に失神の原因となる疾患をまとめた8).表2には,意識障害を来たす病態で,失神との鑑別を要するものをまとめた1),8).表2のものを失神に含める立場もある9)が,本ガイドラインは欧州心臓病学会(European Society of Cardiology:ESC)のガイドライン8)に倣い,脳全体の一過性低灌流によるものを失神として扱うこととする. 脳循環が6~8秒間中断されれば完全な意識消失に至り,収縮期血圧が60mmHgまで低下すると失神に至る10).また脳への酸素供給が20%減少しただけでも,意識消失を来たす11).適切な脳循環を維持するために生体には以下の機構が備わっている.

1 脳血管の自動調節機構

 血圧が変動しても脳への血流量を維持する機構で,生理的状態では,収縮期血圧が70~150mmHgの範囲内では脳血流量は一定に保たれる.

2 脳血管局所の代謝性・化学性調節機構 PO2が低下した場合やPCO2が上昇した場合に脳血管の拡張を促す.

トニン再吸収阻害薬TCPC:Total cavopulmonary connection 上下大静脈肺動脈吻合

TOF:tetralogy of Fallot  Fallot 四徴[症]VSD:ventricular septal defect  心室中隔欠損[症]VVR:vasovagal reaction 血管迷走神経反応

3

表1 失神の分類 (文献8より改変引用)1.起立性低血圧による失神 ①原発性自律神経障害    純型自律神経失調症,多系統萎縮,自律神経障害を伴

うParkinson病,レビー小体型認知症 ②続発性自律神経障害   糖尿病,アミロイドーシス,尿毒症,脊髄損傷 ③薬剤性    アルコール,血管拡張薬,利尿薬,フェノチアジン,

抗うつ薬 ④循環血液量減少   出血,下痢,嘔吐等

2.反射性(神経調節性)失神 ①血管迷走神経性失神  (1) 感情ストレス(恐怖,疼痛,侵襲的器具の使用,採

血等)  (2)起立負荷 ②状況失神  (1)咳嗽,くしゃみ  (2)消化器系(嚥下,排便,内臓痛)  (3)排尿(排尿後)  (4)運動後  (5)食後  (6)その他(笑う,金管楽器吹奏,重量挙げ) ③頸動脈洞症候群 ④非定型(明瞭な誘因がない/発症が非定型)

3.心原性(心血管性)失神 ①不整脈(一次的要因として)  (1)徐脈性: 洞機能不全(徐脈頻脈症候群を含む),房

室伝導系障害,ペースメーカ機能不全  (2)頻脈性: 上室性,心室性(特発性,器質的心疾患や

チャネル病に続発)  (3)薬剤誘発性の徐脈,頻脈 ②器質的疾患  (1) 心疾患:弁膜症,急性心筋梗塞/虚血,肥大型心筋症,

心臓腫瘤(心房粘液腫,腫瘍等),心膜疾患(タンポナーデ),先天的冠動脈異常,人工弁機能不全

  (2) その他:肺塞栓症,急性大動脈解離,肺高血圧

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

3 圧受容器反射機構

 動脈圧が低下した際に,交感神経緊張が反射性に亢進し心拍数を増加,心収縮性を増加,末梢血管抵抗を増加させて,動脈圧を維持する.

4 循環血液量調節機構 腎臓,ホルモン等により循環血液量を維持する機構であり,瞬時に動員されるものではないが,この機構が不十分であると失神を生じやすくなる. これらの代償機転にもかかわらず,脳循環の自動調節機構の範囲を超えて血圧が低下し,しかもある一定以上の時間持続した場合に意識消失が生じる.

3 疫学

1 失神の発生率・頻度

① 一般人口における失神の発生率 (population-based study)

  一 般 人 口 に お け る 失 神 の 発 生 率 に つ い て,Framingham研究の1985年の報告では,男性の3.0%,女性の3.5%が少なくとも1回の失神を経験していた4).2002年の報告では,失神の発生率は6.2/1,000人・年,積算発生率は10年間で6%であった.発生率は年齢とともに上昇し,70歳以上で著明な増加を認め,性差はなかった(表3)12).一方,質問票を用いた横断研究では,失神の発生率(1回は失神を経験していた割合)は19~39%であり,有意差をもって女性の発生率が高かった.失神の初発年齢の中央値は14~25歳で,若年に発生のピークを認めた(表4)13)-16).これらを総合すると,失神の発生率は若年者と高齢者にピークを有する二峰性の分布となる8). 我が国には失神に関するpopulation-based studyが存在しないため,一般人口における失神の発生率は不明である. 背 景 と な る 人 種, 人 口 構 成 が 異 な る が,Framingham研究の結果から単純に計算すると年間約79万人(平成22年度の日本の総人口1億2,800万人×6.2/1,000人・年)が失神しており,横断研究の報告を考慮すると発生数はこれより多いと推測される.

4

表3 コホート研究における失神の発生率,原因別頻度と予後

著者名 報告年 国 追跡患者数

平均年齢

追跡期間

失神患者数

失神患者平均年齢

性別(男性) 失神の発生率

Soteriades12) 2002 米国 7,814 51歳 平均17.0年 822 65.8歳 42%

6.2/1,000人年

積算発生率(10年)6.0%

Savage4) 1985 米国 5,209 46歳 26年 172 男52歳,女50歳*2 41%

積算発生率 

男 3.0%,女 3.5%

原因 予後

心原性 血管迷走神経性失神 起立性低血圧 不明 心原性 血管迷走神経性失神

とその他 不明

10% 21% 9% 37%死亡ハザード比*1[95%CI]

2.01[1.48~2.73]

1.08[0.88~1.34]

1.32[1.09~1.60]

84% が isolated syncope*3 isolated syncopeは,失神のない群と比較して死亡リスクの上昇なし

*1 失神のない群との比較で多変量補正後  95%Cl:95%信頼区間*2 初回失神の平均年齢*3 isolated syncopeは疾患の病歴がない失神と定義

表2 失神と鑑別を要する意識障害の原因(文献1, 8より引用)1. 意識消失(完全~不完全)を来すが,脳全体の低灌流を伴わないもの

 ①てんかん ② 代謝性疾患(低血糖,低酸素血症,低二酸化炭素血症を

伴う過呼吸) ③中毒 ④椎骨脳底動脈系の一過性脳虚血発作

2.意識消失を伴わないもの ①脱力発作(cataplexy) ②転倒発作(drop attacks) ③転倒 ④機能性(心因性) ⑤頸動脈起源の一過性脳虚血発作

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失神の診断・治療ガイドライン

② 病院受診者における失神の頻度 (hospital-based study)

 欧米の報告では,救急部門(emergency department:ED)受診者における失神疑いの一過性意識障害患者の頻度は0.9~1.7%で,入院率は36~68%であった(表5)17)-23).Framingham研究では,失神を経験した人のうち医療機関を受診したものは56%であった12).オランダの研究では,一般人口の失神の発生率18.1~39.7/1,000人・年に対して,一般診療の受診が9.3/1,000人・年,ED受診は0.7/1,000人・年と報告されており,EDを受診する失神患者は,一般人口における失神を経験した人の選択された集団といえる23). 我が国の医療統計である厚生労働省「患者調査」では,疾患分類に失神の診断名は存在せず,全国規模での失神患者の統計は存在しない.東京都内の大学病院における救急車搬送患者の主訴を検討した報告では,急病患者のうち一過性意識障害を主訴とする患者は13%で,一過性意識障害の79%が失神であった24).同一施設からの報告であるが,外因を含めたすべての救急車搬送患者のうち,3.5%が失神患者であった25),26).平成21年度の東京消防庁の救急出場件数は約65.6万件あり,概算すると東京都(人口約1,300万人)で年間約2.3万人が失神のため救急搬送されていると推測される.したがって,我が国のEDにおいても失神は頻度の高い症候である.

2 失神の原因別頻度 失神の原因は多岐にわたり,その分類方法は報告により幅があるが,予後の比較という観点からは,心原性,非心原性〔主に反射性(神経調節性)失神,起立性低血圧〕,原因不明の分類が用いられることが多い.Framingham研究における失神の原因別頻度は,心原性が10%,非心原性のうち血管迷走神経性が21%,起立性低血圧が9%,原因不明が37%であった(表3)12).欧

米のhospital-based studyの報告は,主にEDを受診した失神疑いの一過性意識障害患者を対象としており,原因別頻度は心原性失神が5~37%,反射性(神経調節性)失神が35~65%,起立性低血圧が3~24%,原因不明が5~41%であった.また,この中には,3~20%の割合で非失神の病態による一過性意識障害が含まれていた(表5)17)-23),27).以上をまとめると,研究間の差が大きいが,反射性(神経調節性)失神の頻度が最も高く,心原性失神がそれに次ぐ.原因不明が占める割合も少なくなく,失神の原因を確定することの限界が示唆される. 年齢別に原因別頻度を検討した報告28)-31)を表6に示す.若年者では反射性(神経調節性)失神の頻度が高く,高齢者では心原性失神,起立性低血圧の頻度が高くなる傾向を認める.また,高齢者では失神の原因が複数存在する割合も高くなる15). 我が国の報告をみると,EDに救急搬送された患者を対象とした研究26),神経内科を紹介受診した患者を対象とした研究31)では,原因別頻度は欧米の報告とほぼ同様であった.一方,循環器病棟の入院患者を対象とした研究では心原性失神が最多であったが32),これは診療部門の特性(患者の選択バイアス)によるものと考えられる(表5).

3 失神の予後

①失神発症後の死亡および有害事象のリスク

 Framingham研究からの報告では,心原性失神を起こした人は,失神を経験しなかった人と比較して死亡のハザード比が2倍となり,心血管系イベントのハザード比は2倍以上であった.一方,血管迷走神経性失神を起こした人は,死亡,心血管系イベントのハザード比ともに失神を経験しなかった人と同等であり予後良好であった(表3)12). 欧米のhospital-based studyでも,心原性失神患者の累

5

表4 横断研究(質問票)における失神の発生率,初発年齢と複数回の失神を経験した割合

著者名 報告年 国 調査数年齢(歳)平均or中央値

発生率(1回は失神を経験した割合),%

失神の初発年齢(中央値),歳 複数回の失神を

経験した割合,%全体 男性 女性 全体 男性 女性

Ganzeboom13) 2003 オランダ 394 21 39 24 47* 15 15 15 62

Ganzeboom14) 2006 オランダ 549 48 35 28 41* 18 20 17 64

Chen15) 2006 米国 1,925 62 19 15 22* 25 33 22 47

Serletis16) 2006 カナダ 290 39 32 25 40* 14

*女性>男性 有意差あり

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

6

表5 Hospital-based studyにおける失神疑いの一過性意識障害患者のED受診者に占める割合,入院率と原因別頻度

著者名 報告年 国 患者数年齢(歳)平均or中央値

性別(男性),%

診療部門

ED受診者に占める割合,%

入院率,%

原因,%

心原性失神

反射性(神経調節性)失神

起立性低血圧

非失神の病態 不明

欧米の報告

Ammirati17) 2000 イタリア 195 63 44 ED 68 21 35 6 20 18

Sarasin18) 2001 スイス 650 60 48 ED 1.1 11 38 24 8 14

Crane19) 2002 イギリス 210 55 39 ED 1.7 36 7 38 3 11 41

Blanc20) 2002 フランス 454 57 43 ED 1.2 63 10 48 4 12 24

Disertori21) 2003 イタリア 980 60 47 ED 1 46 11 45 6 16 19

Blanc1) 2005 フランス 524 58 41 ED 1.3 47 7 46 12 5 28

Brignole22) 2006 イタリア 745 66 50 ED 0.9 39 13 65 10 6 5

Olde Nordkamp23) 2009 オランダ 672 46 49 ED+

循環器科 0.9 5 39 5 17 33

Chen27) 2003 米国 987 58 56 循環器科 37 56 6 3 20

欧米の報告の頻度の幅 0.9~1.7

36~68 5~37 35~

65 3~24 3~20 5~41

日本の報告

Suzuki26) 2004 日本 715 58 55 ED 3.5 10 37 21 32

藤沼 31) 2009 日本 103 53 55 神経内科(外来) 15 22 7 14 43

Tanimoto32) 2004 日本 118 66 64 循環器科(入院) 52 17 25

ED:救急部門

表6 各年齢群における失神の原因別頻度

著者名 報告年 国 診療部門 年齢群(歳) 患者数

性別(男性),

%

原因,%

心原性失神

反射性(神経調節性)失神

起立性低血圧

非失神の病態 不明

Romme28) 2008 オランダED +

循環器科,神経内科,内科

<40 158 39 1 73 3 11 12

40~59 175 66 6 63 7 11 13

≧60 170 61 20 45 17 6 12

Del Rosso29) 2005 イタリア 循環器科<65 224 50 12 69 1 20

≧65 261 58 34 52 3 11

Ungar30) 2006 イタリア 老年科65~74 71 42 11 62 4 14

≧75 160 43 16 36 31 9

藤沼 31) 2009 日本 神経内科<60 55 45 9 31 0 22 38

≧60 48 67 21 12 15 4 48

ED:救急部門

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失神の診断・治療ガイドライン

積死亡率および突然死の発生率は,非心原性失神や原因不明の失神患者と比較して高く,心原性失神は予後不良であることが示されている18),33)-35).我が国の救急車搬送患者を対象とした研究でも,心原性失神の患者は非心原性失神の患者と比較して死亡率が有意に高く,欧米の報告と同様の結果であった26).一方,進行した心不全患者においては,失神はその原因によらず突然死と関連のあることが報告されている36).したがって,失神後に発生する死亡や有害事象の多くは,失神の背景にある疾患の重症度と関連していると推測される8).

②失神の再発リスク

 Framingham研究では,失神の再発率は22~28%であった4),12).また,質問票による横断研究では複数回の失神を経験している割合は47~64%と高値であった(表4)13)-15).失神の再発を予測する最も強い因子はこれまでに経験した失神の回数であり,経験した失神の回数が多いほど再発のリスクが高くなる37).失神の再発自体は,必ずしも死亡や突然死との関連を認めていないが,繰り返す失神は他の慢性疾患と同様に生活の質を低下させ日常生活に深刻な影響を及ぼす38),39).

③失神による外傷合併のリスク

 失神では立位保持ができなくなった際に,受け身をとれずに転倒することが多く,外傷合併のリスクがある.我が国の報告では,救急搬送された失神患者の17%が外傷を合併していた25).ED受診者を対象とした欧米の報告では,外傷の合併率は26~31%,うち骨折等の重症外傷が5~10%,打撲や血腫等の軽症外傷が21~25%であった21),22),40).失神の原因と外傷の合併率には明らかな関連性は認められなかった40).

4 診断へのアプローチ

 失神患者を診る場合の基本的な診断方法を表7および診断フローチャートにまとめた(図1).初期評価として主に病歴聴取・身体所見・心電図検査が含まれるが,何よりも病歴聴取が重要で,それぞれの病態に特徴的な前駆症状,随伴症状の有無を確認する.例えば,長時間の立位時に悪心・嘔吐を伴う場合は反射性(神経調節性)失神が疑われる.一方,運動時に動悸あるいは胸痛が先行すれば器質的心疾患に伴う不整脈が疑われる.降圧薬服用の有無,突然死の家族歴の有無等も診断の参考になる.身体所見では,器質的心疾患を示唆する所見,血管雑音,血圧の左右差,自律神経失調を伴う神経疾患に特

徴的な所見,外傷の有無等に注意する. 病歴聴取・身体所見(血圧測定も含む)・心電図検査による初期評価に加え,状況に応じて頸動脈洞マッサージ,心エコーを行う.不整脈性失神が疑われる場合には心電図モニターを,反射性(神経調節性)失神や起立性失神では臥位・立位の血圧測定あるいはチルト試験を,非失神性の一過性意識消失発作が疑われれば神経学的検査や血液検査を施行する.これらの初期評価では,失神であるか否かをまず確定すること,その時点で失神の原因診断がつけば,必要に応じて治療を開始する.初期評価後も失神の原因診断が不明な場合には,まずリスクの階層化を行い(表8),ハイリスク所見の有無をチェックする.ハイリスク所見を有すれば基礎心疾患や心機能等を考慮しながら運動負荷心電図,ホルター心電図,さらには必要に応じて心臓電気生理検査,心臓カテーテル検査,冠動脈造影等を包括的に行った上で早期に原因診断を確定する必要がある.失神の頻度にもよるが,週に1回以上の頻度で失神あるいは失神前駆症状があればホルター心電図が有用である.失神の発生間隔が4週間以内に繰り返している場合には,体外式イベントレコーダ

7

表7 診断へのアプローチ1.基本的検査 1)病歴 2)身体所見 3)起立時の血圧測定 4)心電図 5)胸部X線写真2.特定の疾患が疑われた場合 1)反射性(神経調節性)失神および類縁疾患  ①チルト試験  ②頸動脈洞マッサージ  ③ 長時間心電図(ホルター心電図,体外式イベントレコ

ーダー,植込み型ループレコーダー) 2)心疾患  ①心エコー図  ②長時間心電図(反射性失神に準じる)  ③運動負荷試験  ④電気生理検査  ⑤心臓カテーテル検査,冠動脈造影 3)大血管疾患(肺血管を含む)  ①MRI  ②造影CT  ③肺血流スキャン  ④血管造影 4)神経系疾患  ①神経内科,脳外科へのコンサルテーション  ②頭部画像検査:CT,MRI等3. 失神以外の意識障害が疑われた場合 1) 血液検査:血糖値,動脈血ガス分析,薬物血中濃度等 2)頭部CT,MRI,MRA等 3)頸動脈エコー 4)脳波 5)精神・心理的アプローチ 6)その他,病態に応じた検査

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

ーも有用と考えられる.また,植込み型心電計(植込み型ループレコーダー:implantable loop recorder)の使用は,発生頻度が少ないかあるいは不定期に繰り返す場合には考慮される.リスクの階層化において,ハイリスク所見はないが短期間に繰り返す再発性失神の場合,反射性(神経調節性)失神が疑われればチルト試験等を行い,必要に応じて心原性失神も考慮の上精査を行う.この際,植込み型ループレコーダーの使用は非常に有益であり,し

かも評価の初期段階での使用が勧められる41).ただしハイリスク所見がない再発性失神患者には,最初から植込み型ループレコーダーを考慮すべきではなく,心原性以外の原因が否定的な場合に評価の初期段階ではじめて考慮すべきものである.ハイリスク所見もなく,失神発作が初回かあるいはまれな場合には,さらなる精査は必要なく評価をこの時点で終了する.失神と鑑別を要する非失神性意識障害の鑑別を要する場合には,脳波,頭部の画像検査(CT,MRI),頸動脈エコー,血液検査が必要になる.患者の訴えによっては精神・心理的アプローチが必要な例もあるが,生命に関わる器質的疾患がないことを確認しておく. 表7の検査をすべて行う必要があるわけではなく,示唆される病態に応じて選択する.

植込み型ループレコーダーの適応

クラスⅠ1. ハイリスク所見はないが,心原性以外の原因が否定的で,デバイスの電池寿命内に再発が予想される原因不明の再発性失神患者の初期段階での評価

2. ハイリスク所見を有するが包括的な評価でも失神原因を特定できず,あるいは特定の治療法を決定できなかった場合

クラスⅡa

1. 頻回に再発あるいは外傷を伴う失神歴がある反射性

8

表8 失神患者の高リスク基準1.重度の器質的心疾患あるいは冠動脈疾患:心不全,左室駆出分画低下,心筋梗塞歴

2.臨床上あるいは心電図の特徴から不整脈性失神が示唆されるもの

 ①労作中あるいは仰臥時の失神 ②失神時の動悸 ③心臓突然死の家族歴 ④非持続性心室頻拍 ⑤ 二束ブロック(左脚ブロック,右脚ブロック+左脚前枝

or 左脚後枝ブロック),QRS≧120ms のその他の心室内伝導異常

 ⑥ 陰性変時性作用薬や身体トレーニングのない不適切な洞徐脈(<50/分) ,洞房ブロック

 ⑦早期興奮症候群 ⑧QT 延長 or 短縮 ⑨Brugada パターン ⑩ 不整脈原性右室心筋症を示唆する右前胸部誘導の陰性T

波,イプシロン波,心室遅延電位

3.その他:重度の貧血,電解質異常等

図1 診断のフローチャート

失 神

一過性意識消失(失神の疑い)

初期評価

非失神

特定の検査,専門医の診断による確定

治 療

リスク階層化

低リスク再発性失神

低リスク1回 or まれ

評価終了

適宜,循環器系や反射性失神の検査

心電図記録に基づいて遅れて開始される治療

高リスク

早期評価,治 療

診断未確定確定診断

治 療

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失神の診断・治療ガイドライン

(神経調節性)失神の疑いを含む患者で,徐脈に対するペースメーカ治療が考慮される場合

 我が国では平成21年10月より保険償還されている.本機器は皮下に植込む心電計で,約3年間の電池寿命を有し,失神症状出現時の心電図所見をとらえることができるため失神の原因診断に極めて有用な手段である.症状出現時に患者自身あるいは他者によりイベント記録を行うことにより,数分前にさかのぼって心電図が保存される.また,あらかじめ設定された心拍異常(徐脈,心停止,頻脈等)が発生した場合には心電図が自動的に保存される.種々の検査を施行した後でも失神の原因が同定されなかった患者506名に対して植込み型ループレコーダーを用いて調べた結果,失神時の心電図が得られた患者は176名(35%)にのぼった37).その内訳は,56%に心停止,11%に頻脈が記録され,残り33%には不整脈は認めなかった.つまり,あらゆる検査を施行しても原因不明の失神患者の約2/3は植込み型ループレコーダーによりさらに診断可能となったことになる.一方これまでの研究で,失神前駆症状と不整脈との関連性は比較的薄いことが示されているため,失神前駆症状のみの患者に植込み型ループレコーダーを用いることは現時点では推奨されていない8). 植込み型ループレコーダーの有用性に関しては,(1)抗てんかん薬治療抵抗性のてんかん疑い患者,(2)治療後にも自然発作を繰り返す再発性血管迷走神経性失神が疑われる患者,(3)心臓電気生理検査で陰性であるにもかかわらず発作性房室ブロックが疑われる脚ブロック患者,(4)心臓電気生理検査で陰性であるが,失神の原因として心室頻拍が疑われる基礎心疾患を有する非持続性心室頻拍患者,(5)原因不明の転倒を繰り返す患者,等で検討が進められており,今後の結果が待たれる.

Ⅱ 各 論

1 起立性低血圧

1 病態生理 人が仰臥位から立位になると,約500~800mLの血液が胸腔内から下肢や腹部内臓系へ移動し,心臓への還流血液量が約30%減少する.このため心拍出量は減少

し,体血圧は低下する.この循環動態の変化に対し,生体は圧受容器反射系の賦活により対処する.圧受容器反射系は,(1)頸動脈・大動脈弓部・心肺・大静脈に存在する圧受容器(伸展受容器),(2)迷走神経(求心路),延髄にある血管運動中枢(延髄孤束核,頭側延髄腹外側野),交感神経(遠心路)および(3)末梢血管・心臓(効果器)からなる.圧受容器反射系の賦活の結果,心拍数増加,心収縮力増加,末梢血管抵抗増加,末梢静脈の収縮を生じる.健常者では,この圧受容器反射系が適切に機能して血圧の過剰な低下を抑制しているが,圧受容器反射系のいずれかの部分に異常を来たすか循環血液量が異常に低下した状態では,起立時に高度の血圧低下を来たす42).

2 診断と原因疾患 これまでの本学会の失神ガイドライン7)では,起立性低血圧については,主にいわゆる古典的起立性低血圧(classical orthostatic hypotension)の診断・原因疾患を述べてきた.しかし,臨床的には起立性低血圧による失神は,起立不耐症(Ⅱ─3. 体位性起立頻脈症候群の項参照)を伴う反射性(神経調節性)失神とその症状・病態が共通することが多い.このことは表9のごとく,ESC

2009のガイドライン8)で強調されている.古典的起立性低血圧は,仰臥位または坐位から立位への体位変換に伴い,起立3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下するか,または収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下,あるいは拡張期血圧の10mmHg以上の低下が認められた際に診断される43).失神の原因疾患としての起立性低血 圧 に は, 初 期 起 立 性 低 血 圧(Initial orthostatic

hypotension)44),遅延性(進行性)起立性低血圧[delayed

(progressive)orthostatic hypotension]45)-47),体位性起立 頻 脈 症 候 群[postural(orthostatic)tachycardia

syndrome:POTS]48)も含まれている(表9). 一般に,起立性低血圧の診断には能動的立位5分間が推奨されているが49),約3分間の起立で起立性低血圧の約90%が診断可能である50). 起立性低血圧に伴う失神の症状は,朝起床時,食後,運動後にしばしば悪化する.食後に惹起される失神は殊に高齢者に多く,食後の腸管への血流再分布が原因とされる. 起立性低血圧の原因疾患(表10)51)の中で,体液量減少や血管拡張作用を有する薬剤に起因するものが最も多い52).特に高齢者では圧受容器反射機能低下等のために,薬剤による血圧低下作用が生じやすい53).自律神経障害の重症のものに起立性低血圧が高頻度に合併する54).

9

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

3 治療

クラスⅠ1.急激な起立の回避2.誘因の回避:脱水,過食,飲酒等3. 誘因となる薬剤の中止・減量:降圧薬,前立腺疾患治療薬としてのα遮断薬,硝酸薬,利尿薬等

4. 適切な水分・塩分摂取(高血圧症がなければ,水分2~3L/日および塩分10g/日)

クラスⅡa

1. 循環血漿量の増加:食塩補給,鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾン 0.02~0.1mg/日 分2~3),エリスロポエチン

2.腹帯・弾性ストッキング3.上半身を高くした睡眠(10度の頭部挙上)4.α刺激薬: 塩酸ミドドリン 4mg/日 分2 塩酸エチレフリン 15~30mg/日 分3

 起立性低血圧自体が危険であることはまれであるが,血圧低下に伴う脳虚血等の危険な合併症が問題である.失神を含む症状の重症度も考慮した治療が必要である(表11)55)-63).

4 予後

 起立性低血圧の予後は,心疾患等の基礎疾患の有無に依存する.特発性自律神経障害症例の予後は必ずしも悪くないが,その他の自律神経障害症例の予後は良好とはいえない.加齢とともに低血圧に伴う虚血性臓器障害が出現しやすくなり,起立性低血圧症例では死亡率が増加する64).脳卒中発症率の増加や虚血性心疾患発症率の増加65)も報告されている.

2 反射性失神

 本改訂版では,失神の発生に自律神経反射が密接に関係している血管迷走神経性失神(vasovagal syncope),頸動脈洞症候群,状況失神(situational syncope)を反射性失神(神経調節性失神)と総称する66).

1 血管迷走神経性失神

①概念

 血管迷走神経性失神は,様々な要因により交感神経抑制による血管拡張と迷走神経緊張による徐脈が,様々なバランスをもって生じる結果,失神に至る.

10

表9.失神を惹起する可能性のある起立不耐症症候群(文献8より)

分類 診断試験 立位 -症状発現時間 病態生理 最も頻度の高い症状 臨床像

初期起立性低血圧

立位試験時の心拍毎の収縮期血圧測定

0~30秒 心拍出量と末梢血管抵抗の不一致

立位直後の頭重感,めまい,視力障害(失神はまれ)

若年虚弱体質,老年,薬剤(血管拡張薬),頸動脈洞症候群

古典的起立性低血圧

立位試験またはチルト試験 30秒~3分

自律神経活動不全による末梢血管抵抗増加不全または代償反射不全

めまい,失神前駆症状,倦怠,動悸,視力・聴力障害(失神はまれ)

老年者,薬剤(血管作動性および利尿薬)

遅延性(進行性)起立性低血圧

立位試験またはチルト試験 3~10分

心拍出量低下,末梢血管抵抗増加不全に起因する進行性の下肢静脈還流・前負荷低下

遷延する前駆症状(めまい,倦怠,動悸,視力・聴力障害,多汗,背部・頸部・胸部痛)後の突然の失神

老年者,自律神経不全,薬剤(血管作動性及び利尿薬),他の合併症

遅延性(進行性)起立性低血圧と反射性失神の合併

チルト試験 3~45分迷走神経活動に起因する進行性の下肢静脈貯留

遷延する前駆症状(めまい,倦怠,動悸,視力・聴力障害,多汗,背部・頸部・胸部痛)後の突然の失神

老年者,自律神経不全,薬剤(血管作動性および利尿薬),他の合併症

立位誘発性反射性失神 チルト試験 3~45分

初期代償性反射に続く急激な静脈還流低下・迷走神経活動増加

反射性失神に典型的前駆症状・誘因後の失神 若年健常者,女性に多い

体位性起立頻脈症候群(POTS) チルト試験 症例により

異なる

静脈還流の不適切な不全状態および過剰な末梢静脈血液貯留

有症候性洞性頻脈および不安定血圧(失神はまれ)

若年女性

POTS;Postural tachycardia syndrome,立位試験(Active standing)

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失神の診断・治療ガイドライン

②臨床的特徴

 血管迷走神経性失神は,(1)一過性徐脈により失神発作に至る心抑制型(cardioinhibitory type),(2)徐脈を伴わず,一過性の血圧低下のみにより失神発作に至る血管抑制型(vasodepressor type),(3)徐脈と血圧低下の両者を伴う混合型(mixed type)に分類される.患者の多くは,程度の差はあれ発作直前に前駆症状として頭重感や頭痛・複視,嘔気・嘔吐,腹痛,眼前暗黒感等の何らかの前兆を自覚している.失神の原因となる徐脈には洞徐脈や洞停止が多いが,房室ブロックもまれではない.我が国では血管抑制型や混合型による発作頻度が比較的高いが,欧米ではむしろ心抑制型の発生頻度が高い. 血管迷走神経性失神は,長時間の立位あるいは坐位姿勢,痛み刺激,不眠・疲労・恐怖等の精神的・肉体的ストレス,さらには人混みの中や閉鎖空間等の環境要因が誘因となって発症し,自律神経調節の関与が発症に関わっている67),68).血管迷走神経性失神は体動時に発生することは少なく,立位あるいは坐位で同一姿勢を維持しているときに発生しやすい.失神発作は,日中,特に午前中に発生することが多く69),失神の持続時間は比較的短く(1分以内),転倒による外傷以外には特に後遺症を残さず,生命予後は良好である12).

③病態生理

 立位により末梢静脈のうっ帯が起こり,心臓への静脈還流量が減少するため心拍出量が低下し,これによる動脈圧低下に対して,頸動脈洞や大動脈での高圧系圧受容器反射により交感神経系緊張と迷走神経系抑制が生じる.そのため心拍数,心収縮力,末梢血管抵抗が増加し,立位時の血圧低下を代償する.さらに立位姿勢を継続することにより,容積の減少した左室の収縮力増強は左室の機械受容器を刺激し,C線維を介して脳幹部(延髄孤束核)に至り,ここからの線維により血管運動中枢を抑制,迷走神経心臓抑制中枢を興奮させ,それぞれ遠心性線維を介して血管拡張と心拍数減少を来たすと考えられている(図2)70),71). 上述の機序のみでは説明困難な場合が存在し,他に,(1)脳循環,(2)心肺圧受容器反射,(3)心理的要因等も血管迷走神経性失神の発症に関与している.

1)脳循環の関与 失神発症時の中大脳動脈血流速度をドップラーエコーで観察した研究では,失神が起こっているにもかかわらず中大脳動脈の平均血流速度は低下し,脳血管抵抗が上

11

表10 起立性低血圧の原因(文献8,42,51〜53より改変)(1) 特発性自律神経障害  ①純粋自律神経失調(Bradbury-Eggleston症候群)  ②多系統萎縮(Shy-Drager症候群)  ③自律神経障害を伴うParkinson病(2) 二次性自律神経障害  ①加齢  ②自己免疫疾患    Guillain-Barre症候群,混合性結合組織病,関節リウマ

チ,Eaton-Lambert症候群,全身性エリテマトーデス  ③腫瘍性自律神経ニューロパチー   ④中枢神経系疾患    多発性硬化症,Wernicke脳症,視床下部や中脳の血管

病変,腫瘍  ⑤Dopamine beta-hydroxylase欠乏症   ⑥家族性高ブラジキニン症  ⑦全身性疾患   糖尿病,アミロイドーシス,アルコール中毒,腎不全  ⑧遺伝性感覚性ニューロパチー  ⑨神経系感染症   HIV感染症,Chagas病,ボツリヌス中毒,梅毒  ⑩代謝性疾患    ビタミンB12欠乏症,ポルフィリン症,Fabry病,

Tangier病  ⑪脊髄病変(3) 薬剤性および脱水症性  ①利尿薬   ②α遮断薬  ③中枢性α2受容体刺激薬   ④ACE阻害薬  ⑤抗うつ薬:三環系抗うつ薬,セロトニン阻害薬   ⑥アルコール  ⑦節遮断薬  ⑧ 精神神経作用薬:ハロペリドール,レボメプラマジン,

クロルプロマジン等  ⑨硝酸薬   ⑩β遮断薬   ⑪Ca拮抗薬   ⑫その他(パパベリン等)

表11 起立性低血圧の治療(文献55〜63より改変)1.原因,誘因の除去  ①活動時の降圧薬中止  ②利尿薬中止   ③α遮断薬(前立腺肥大治療)中止  ④過食予防2.非薬物療法  ①水分補給,塩分摂取増加  ②腹帯・弾性ストッキング装着  ③上半身を高くしたセミファウラー位での睡眠  ④前駆症状出現時の回避法(足くみ , 蹲踞姿勢等)  ⑤急な起立の回避  ⑥昼間の臥位を避ける3.体液量の増加  ①貧血の治療(エリスロポエチン)   ②フルドロコルチゾン4.短時間作用型昇圧薬   ミドドリン,エチレフリン5.その他   オクトレオチド

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

昇していた72)-74).意識消失発作は一過性徐脈や血圧低下の発生する前に既に出現している場合がある.さらに,前兆出現時に既に左右差を認める可逆性の脳波異常を認めている75).以上から,本症の失神発作では,むしろ脳血管抵抗上昇の存在下に一過性徐脈や一過性血圧低下が加味されて急激な脳血流低下を来たしている可能性もある76).このことは,心臓ペーシング(60~70/分)を行っても血管迷走神経性失神発作が予防できないことからも明らかである77),78). 血管迷走神経性失神の前兆は偏頭痛の前兆とも非常によく似ている.血管迷走神経性失神の自然発作時やチルト試験時の心電図からも明らかなように,患者が前兆を自覚する最中には,一過性の心拍数増加や血圧上昇を来たしている.一方で,偏頭痛患者も同様に症状出現時に著明な徐脈を呈することがある.このことは,脳循環異常によっても二次的に徐脈や血圧低下を引き起こすことがあることの証明でもあり,血管迷走神経性失神患者の病態生理が単純に上述の反射経路(図2)のみではない可能性を示唆する. 血管迷走神経性失神の発症機序には心臓と脳幹部の反射経路以外に,脳循環異常の存在の関与も疑われている72)-76),79)-81)が,脳の自動調節機構は健常者と同様に

保たれているとの報告もある82).

2)心肺圧受容器反射の関与 血管迷走神経性失神患者では,立位負荷時の過剰な心肺圧受容器反応がみられる83),84).さらに,立位負荷時の中心静脈圧の低下が著しく,そのため心肺圧受容器反射の亢進により過度の交感神経機能亢進を認め,これが迷走神経の過度の亢進をもたらす83).

3)心理的要因の関与 血管迷走神経性失神患者のチルト試験陽性群は陰性群に比べ,明らかにうつの程度が高く,特に比較的若年者と女性においてその傾向が大きい85).失神の再発も精神的異常を有する患者群において高い傾向がある86).

④診断

チルト試験(head-up tilt test)の適応クラスⅠ1. ハイリスク例(例えば外傷の危険性が高い,職業上問題がある場合)の単回の失神と,器質的心疾患を有しないかもしくは器質的心疾患を有していても,諸検査で他の失神の原因が除外された場合の再発性

12

図2 チルト試験で誘発される反射性失神の機序

心拍数↓血圧↓

心臓中枢

血管運動中枢 抑制

左室機械受容器

左室収縮性↑心拍数 ↑

血圧↓

心拍出量↓

左室容量↓静脈還流↓

チルト試験

中心静脈圧(右房圧)↓

低圧系圧受容器(右房,上大静脈)

延髄(心臓血管中枢)

交感神経活動↑迷走神経活動↓

細動脈収縮

高圧系圧受容器(頸動脈洞,大動脈弓)

求心性迷走神経枝(無髄性C線維)

延髄

孤束核

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失神の診断・治療ガイドライン

失神に対するチルト試験2. 血管迷走神経性失神の起こしやすさを明らかにすることが臨床的に有用である場合のチルト試験

クラスⅡa

1. 血管迷走神経性失神と起立性低血圧の鑑別2. 明らかな原因(心停止,房室ブロック)等が同定されているが,血管迷走神経性失神も起こしやすく治療方針への影響が考えられる例

3. 運動誘発性あるいは運動に関係する失神の評価クラスⅡb

1. てんかん発作と痙攣を伴う失神の鑑別2. 再発性の原因不明の意識消失の評価3. 精神疾患を有する頻回の失神発作例の評価

 血管迷走神経性失神を疑う臨床的に有用な所見には,(1)前兆としての腹部不快感,(2)失神の初発から最後の発作の期間が4年以上,(3)意識回復後の悪心や発汗,(4)顔面蒼白,(5)前失神状態の既往がある87),88).このような失神発作時の状況から血管迷走神経性失神を疑うことができるが,この失神の診断と治療効果の判定にはチルト試験が有力である.

1)チルト試験(head-up tilt test)①方法と感度・特異度 チルト試験の方法は施設により相違がみられ,統一されたプロトコールはない.検査結果を左右する因子として,(1)傾斜角度,(2)負荷時間,(3)薬物負荷の有無と薬物の種類,(4)判定基準の差が挙げられる.チルト試験は傾斜角度が急峻なほど,負荷時間が長いほど静脈還流量が減少し失神の誘発率(感度)が高くなるが,特異度は低下する.原因不明の失神例に施行されたチルト試験の陽性率は,60~80度の傾斜でチルト単独負荷では時間が10~20分間で6~42%と低く10),71),89)-92),負荷時間を30~60分と延長しても24~75%にとどま

る93)-95).イソプロテレノールは,心収縮力の増強(β1刺激)との血管拡張(β2刺激)による静脈還流量の減少が反射性失神を誘発しやすくする10),71),90),95),96).イソプロテレノール負荷を併用した場合に陽性率が60~87%と高くなるが,偽陽性率も高くなり特異度は45~100%とばらつきが大きい71),90),95).ニトログリセリン負荷チルト試験の感度は49~70%,特異度は90~96%である91),92),94).その他には硫酸イソソルビド97),98),エドロフォニウム99),アデノシン100),101)が用いられる. 具体的方法は表128)を参考にする.②評価(チルト試験に対する反応様式) チルト試験の判定は,血管迷走神経神経反射による悪心,嘔吐,眼前暗黒感,めまい等の失神の前駆症状や失神を伴う血圧低下と徐脈を認めた場合に陽性とする.陽性基準としては収縮期血圧60~80mmHg未満や収縮期血圧あるいは平均血圧の低下が20~30mmHg以上としているが,一定の基準はない. ESCガイドライン20098)では,器質的心疾患を有しない例において,反射性の低血圧・徐脈が誘発され失神が再現される場合に血管迷走神経性失神と診断し(クラスⅠ),器質的心疾患を有する例においても反射性の低血圧・徐脈が誘発され失神が再現される場合は血管迷走神経性失神と診断する(クラスⅡa).ただし器質的心疾患を有する例においては,チルト試験の陽性所見により診断する前に不整脈や他の心血管系失神の原因の除外が必要である(クラスⅡa).低血圧や徐脈を伴わない意識消失が誘発された場合は,精神疾患による“偽失神”の診断を考慮する(クラスⅡa)ことが推奨されている8). チルト試験で誘発される血管迷走神経性失神は心拍数と血圧の反応から3つの病型に分類される(表13)102).③再現性 チルト試験は日内の再現性は良好であるが103),日差変動がある104),105).しかしチルト試験陽性例が無治療での経過観察中に,再検査での陽性率は低下する106),107).

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表12 チルト試験の方法についての勧告(ESCガイドライン2009)(文献8より改変引用)チルト試験の方法 クラス エビデンスレベル

・ チルト開始前の安静臥床は静脈カニュレーションがなければ最低5分間,静脈カニュレーションがなされていれば最低20分間必要 Ⅰ C

・チルトの角度:60~70度を推奨 Ⅰ B・ 薬物負荷のないチルト試験は最短20分,最長45分間施行 Ⅰ B・ ニトログリセリン負荷はチルトを継続したまま300~400μgのニトログリセリンを舌下投与する* Ⅰ B

・ イソプロテレノール負荷は,負荷前より約20~25%の平均心拍数の増加を目標に,1μg/分より3μg/分まで徐々に負荷量を増加させる

Ⅰ B

*我が国ではニトログリセリン錠剤0.3mgの舌下投与またはスプレー噴霧0.3mgを使用する.

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したがって,血管迷走神経性失神の治療薬の効果判定にチルト試験を用いる場合には,日差変動が問題となる.④適応 ESCの「失神の診断と診療のガイドライン2009」8)の勧告によるチルト試験の適応は冒頭に挙げたとおりである. 血管迷走神経性失神のみならず,様々な原因による起立性低血圧,体位性起立頻脈症候群108)等起立不耐症(orthostatic intolerance)を伴う自律神経機能異常109)にチルト試験の適応がある.一方,外傷を伴わず,その他のリスクが高くない単回の失神発作で,血管迷走神経性失神の特徴が明らかなもの,他の特別な失神の原因が明らかで血管迷走神経性失神の起こしやすさが治療方針に影響しないものには適応となり難い.ESCガイドライン2009では,血管迷走神経性失神の治療効果の評価にチルト試験は推奨されていない(クラスⅢ)8).⑤合併症 チルト試験の安全性は高く合併症は非常に少ない.チルト試験で長い心停止を伴う心抑制型反応が誘発されることがある110),111)が,これは合併症ではない.速やかに臥位に戻すことにより心停止や失神は遷延せず,短時間でも蘇生術を施行することは少ない.虚血性心疾患や洞不全症候群の症例にイソプロテレノール負荷を施行して重篤な不整脈が誘発されることがある112),113)が,ニトログリセリン負荷では合併症の報告はない.ESCガイドライン2009では,イソプロテレノール負荷チルト試験は虚血性疾患症例には禁忌(クラスⅢ)とされ,コントロールされていない高血圧例や左室流出路狭窄例,有意な大動脈弁狭窄例へのイソプロテレノール負荷も禁忌である8).血管迷走神経反射に伴い心房細動が誘発されることがあるが,通常自然に停止する114).

⑤治療

クラスⅠ1.病態の説明2. 誘因を避ける:脱水,長時間の立位,飲酒,塩分制限等

3. 誘因となる薬剤の中止・減量:α遮断薬,硝酸薬,利尿薬等

4.前駆症状出現時の失神回避法クラスⅡa

1. 循環血漿量の増加:食塩補給,鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾン0.02~0.1mg/日,分2~3)

2.弾性ストッキング3.起立調節訓練法(チルト訓練)4.上半身を高くしたセミファウラー位での睡眠5.α刺激薬(ミドドリン 4mg/日 分2)6. 心抑制型の自然発作が心電図で確認された,治療抵抗性の再発性失神患者(40歳以上)に対するペースメーカ(DDD,DDI)*1

クラスⅡb

1.β遮断薬*2

プロプラノロール30~60mg/日 分3 メトプロロール60~120mg/日 分3 等2.ジソピラミド 200~300mg/日 分2~33. チルト試験で心抑制型が誘発された,治療抵抗性の再発性失神患者(40歳以上)に対するペースメーカ(DDD,DDI)*1

 失神発作の頻度,重症度等に応じて,生活指導,増悪因子の是正,薬物治療,非薬物治療を適宜組み合わせる.患者にこの疾患の病態を理解させ,増悪因子(脱水,長時間の立位,アルコール多飲等)をなるべく避けるようにし,めまい,悪心,眼前暗黒感等の失神前駆症状が出現したら速やかに臥位をとるように指導する.チルト試

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β遮断薬,ジソピラミドは,本病態への保険適応は承認されていない.

*1 ペースメーカの推奨度は,本学会の「不整脈に対する非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」とは異なっている.非薬物治療ガイドラインではそれぞれ1ランク上の推奨度となっている.しかし,ペースメーカの有効性に関する前向き比較試験の結果は必ずしも一致してはいないため(本文参照),クラス分けの基準に従い,本ガイドラインではそれぞれⅡaとⅡbに分類した.

*2 β遮断薬は心抑制型失神では症状を増悪させる.このためESCのガイドライン8)ではβ遮断薬をクラスⅢに分類している.

表13 チルト試験で誘発される血管迷走神経性失神の病型Type 1: 混合型 (mixed type) ・ 心拍数は増加した後減少するが40/分以下にはならないか,40/分以下でも10秒未満あるいは心停止3秒未満

 ・血圧は上昇した後,心拍数が減少する前に低下Type 2 : 心抑制型 (cardioinhibitory type) ・ 心拍数は増加した後減少し,40/分以下が10秒以上あるいは心停止3秒以上

 ・2A:血圧は上昇した後,心拍が低下する前に低下 ・2B:血圧は心停止時あるいは直後に80mmHg以下に低下Type 3 : 血管抑制型 (vasodepressor type) ・心拍は増加した後不変のまま血圧低下 ・心拍は低下しても10%未満

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験により血管迷走神経性失神と診断され病態についての理解が深まると,患者の精神的ストレスが減少し,失神を回避する行動をとることが可能となる.これにより無投薬でも失神の再発を減らすことができる.起立時の血圧低下の原因となる硝酸薬,利尿薬,α遮断薬,Ca拮抗薬は失神発作を助長するため可能な限り減量,中止する. これらの患者指導,増悪因子の除去によっても失神発作を繰り返す例や,心抑制型や高齢者等前駆症状が乏しく突然失神し外傷の危険性が高い例には,まず薬物治療を考慮する.

1)薬物療法 生活指導および増悪因子を除去した後にも頻回の発作を起こす症例や,外傷の危険が高い高齢者に対しては薬物治療が必要である.徐脈,血圧低下を予防するために陰性変力作用,血管収縮作用,循環血液量増加作用,徐脈予防作用のある薬剤が使用される.以下に述べる薬物は決定的な薬効は証明されていない.これは,各々の症例で原因因子の関与の度合いが異なるためと考えられる.各々の症例の主となる原因を同定し,それに合った治療法を選択する必要がある.①β遮断薬 チルト試験で血管迷走神経性失神が誘発される時には,エピネフリン血中濃度の著明な増加がみられること,増加の少ない症例では誘発にイソプロテレノール負荷が必要であること等,血管迷走神経性失神にはカテコラミンの増加が誘因として考えられる115).そのため発作の予防にβ遮断薬が用いられている.チルト試験で誘発された失神発作の予防にメトプロロール静注はプラセボに比べ有効である116).プロプラノロール静注が有効であった症例では,β遮断薬経口投与は94%の例で失神の発生を抑制できた117).しかしβ遮断薬治療群と無治療群で失神の再発率に有意な差を認めなかったという報告118)や二重盲検試験でアテノロール群とプラセボ群で失神の再発率に有意差を認めなかったという報告119)もある.このようにβ遮断薬の薬効に関して成績は一致していないが,プロプラノロール静注の効果をチルト試験で検討した報告では,β遮断薬の有効例は,投与前の立位15秒で血圧や末梢血管抵抗が上昇し,心拍数の過度の上昇はみられなかった.一方,無効例では,血圧上昇や末梢血管抵抗上昇が不良であった120).この結果からは,起立性低血圧傾向のある対象には効果がないと考えられ,薬物導入時には考慮する必要がある.ACE阻害薬の長期間の投与で交感神経系を抑制し失神の発生を抑

制したという報告121)もあり,β遮断薬が使用できない例では検討する余地がある. なお,心抑制型の例ではβ遮断薬は症状を増悪させ得る.②ジソピラミド 陰性変力作用と抗コリン作用による血管収縮作用・抗徐脈作用により失神予防に効果を発揮する(保険適応外).ジソピラミドは,チルト試験時に失神が生じるまでの時間を延長し,少数例の検討では失神の再発を抑制した122),123).しかし相反する報告もあり,cross over試験によるジソピラミド静注後の誘発率はプラセボと差はなく,また経口投与においても失神の再発率はプラセボと差がなかった124).ジソピラミド有効例は,仰臥位で薬物投与後に末梢血管抵抗と拡張期血圧が上昇したとする報告120)があり,薬効を予測するのに有効かもしれない. ピルメノールはジソピラミドと同様に発作予防に効果が期待される(保険適応外)125),126).③抗コリン薬 血管収縮作用・徐脈予防にアトロピン等の抗コリン薬が有効と考えられるが,実際に有効性を支持する報告はみられない.④交感神経刺激薬(α刺激薬) 末梢血管を収縮させ静脈還流減少を予防し,反射性血管拡張に拮抗して血圧低下を予防する.ミドドリンが有効とする報告が多い.血管迷走神経性失神12例に対しプラセボとミドドリン5mgを内服させた cross over試験127)では,チルト試験による失神誘発率はプラセボ群12例中8例(67%)に比べミドドリン群では12例中2例(17%)と低率であった.この報告では,ミドドリンの単回経口投与後1時間で有意に失神が減少しており,pill-in-the pocketの有用性も期待できる. チルト試験陽性の血管迷走神経性失神41例に対しミドドリン2.5~5.0mgを内服させた報告では,39例(95%)でチルト試験は陰性となった128).その後ミドドリン経口投与により平均19か月の経過観察期間中97%が無症状であった.⑤鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾン) 循環血液量を増加させ静脈還流の減少を予防する他,α受容体の感受性を高める129).⑥�セロトニン再吸収阻害薬(パロキセチン,ミルナシプラン) セロトニンは血圧を調節するための重要な伝達物質である.チルト試験陽性が陰性となった症例はプラセボの38.2%に比べ,セロトニン再吸収阻害薬では61.8%と有意に多かった130).他剤が無効の血管迷走神経性失神に

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対しセロトニン再吸収阻害薬を使用し53%に有効であったとの報告131)があるが,セロトニン再吸収阻害薬は圧受容器反射を抑制できないとの報告132)もある.保険適応はない.

2)非薬物治療①失神回避方法 反射性(神経調節性)失神の前兆を自覚した場合には,その場でしゃがみ込んだり横になったりすることが最も効果的である.それ以外に,(1)立ったまま足を動かす,(2)足を交差させて組ませる,(3)お腹を曲げてしゃがみ込ませる,(4)両腕を組み引っぱり合う,等の体位あるいは等尺性運動によって数秒から1分以内に血圧を上昇させ,失神発作を回避あるいは遅らせ,転倒による事故や外傷を予防することができる133).②失神の予防治療i)ペースメーカ治療 心抑制型に対するペーシングの効果については1990年代初頭から検討されているが77),78),生理的ペースメーカによる通常の設定レート(60~70ppm)では血圧低下を予防できない.1990年代後半になって,心抑制型の再発性血管迷走神経性失神に対して比較的速いペーシングレート(>100bpm)でペーシング治療を行うと,失神発作が予防されることが明らかになった134)-137).徐脈発生時に比較的速いレートのペーシングを行うペース メ ー カ 機 能(Rate Drop Response機 能,Search

Hysteresis機能,Sudden Bradycardia Response機能等)の治療効果については,非植込み患者群との比較試験 が多施設共同でなされている135)-137).これらの結果では,ペースメーカ治療群はペースメーカ以外の治療群より再発予防は明らかに優れていた135)-137).しかしペースメーカ植込み治療そのものによるプラセボ効果の影響を除外し得ない.最近,血管迷走神経性失神患者100例にペースメーカ植込み手術を行い,半数ずつペーシング機能をONにした群とOFFにした群での治療効果が検討され,ペーシング治療ON群とOFF群で失神再発予防効果に差を認めなかった138).現時点では,ペースメーカ治療による失神の再発予防効果は,ペースメーカ植込みによるプラセボ効果と考えられる138),139).ただし,心抑制型の例には効果が期待されることもあること,植込み型ループレコーダーにより自然発作時の長い心停止を来たす心電図記録がとらえられる機会が増加していることから,治療抵抗性で40歳以上の再発性失神患者ではペースメーカ治療も考慮され得る8).起立調節訓練法等によっても十分な効果が得られなかった例に対して考慮すべ

きである.ii)起立調節訓練法(チルト訓練) Ectorが初めて本治療法の有効性を報告し,チルト訓練と命名した140).チルト台を使用せず自宅等の壁を利用して自分で起立訓練を行う起立調節訓練法としても報告されている141).本治療法は薬物治療の必要性がなく,また自宅や職場でも自分で安全にいつでも行うことができる68).現在まで,本治療法の有効性に関するコントロール試験142),薬物治療との比較試験143),悪性血管迷走神経性失神に対する本治療法の効果144),長期フォローアップ成績145),薬物抵抗性あるいは難治性血管迷走神経性失神患者に対する有効性146),147)が報告されており,本治療法は従来の薬物治療に比べ優れた成績をおさめている. 起立調節訓練法は,両足を壁の前方15~20cmに出し,臀部,背中,頭部で後ろの壁に寄りかかる姿勢を30分継続するものである.これを1日に1~2回,毎日繰り返す.多くの失神患者は,トレーニング開始直後は壁に寄りかかる姿勢で30分間起立することはできないが,毎日これを繰り返すことにより起立持続時間は徐々に延長し,トレーニング開始後2~3週間で30分間立てるようになる141).起立調節訓練中は下半身を決して動かしてはいけないことを患者に伝えておく.筋肉収縮が働き静脈還流が増加するからである.いったん30分間の立位維持姿勢が可能となると,その後は1日1回30分間の起立調節訓練を毎日継続させることで失神発作の再発は長期にわたって予防される.1日1回のトレーニングが有効性と継続性の面から血管迷走神経性失神の治療手段としてふさわしい148).この治療法が有効であるのは,立位負荷直後の交感神経機能の亢進がトレーニングによって有意に抑制されるためと考えられる149).一方で,トレーニング効果が見出せなかったとする報告もある150).本治療法は,継続性等患者のコンプライアンスが低いことが問題である.

⑥予後

1)生命予後 器質的心疾患が否定された血管迷走神経性失神の予後は比較的良好で151),平均30か月の経過観察で1例も死亡例を認めなかった152).Framingham研究においても26年の経過観察で孤立性失神は死亡率に影響しなかった4).チルト試験で失神が誘発されても,その後失神の再発がなく,再度のチルト試験において失神が誘発されなくなる自然治癒例も多い106),107). しかし,血管迷走神経性失神は直接死亡原因にならな

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いが,交通事故や外傷等重大な事故の原因になる可能性がある38).また,長い心停止のため痙攣が生じた症例は,重篤であり突然死の可能性があるためペースメーカ植込みによる心停止予防が必要とする報告もある153).

2)再発率 一度チルト試験で失神が誘発されても,その後失神発作が出現せず,再試験を行っても失神が誘発されなくなる例も多い.約3年の経過観察中,チルト試験で陽性と診断された54例のうち28%で再発したとする報告154)がある.その他,7% /1年~15% /21か月106),33% /23か月155),30.2% /30.4か月152),35% /3年156)という再発率が報告されている.

2 状況失神

①病態生理

 状況失神(situational syncope)はある特定の状況または日常動作で誘発される失神で157),反射性失神に含まれる病態である66).急激な迷走神経活動の亢進,交感神経活動の低下および心臓の前負荷減少により,徐脈・心停止もしくは血圧低下を来たし失神する157).排尿(micturition),排便(defecation),嚥下(swallowing),

咳嗽(cough),息こらえ(Valsalva手技),嘔吐(vomiting)等に起因する失神発作が含まれる.図3に想定される神経反射経路を示す.

1)排尿失神 立位で排尿する男性に多く発症し中高年に比較的多いが,20~30代の若年者にも発症する158)-161).長時間の臥床後や夜間就寝後の排尿中から直後に起こり159),160),飲酒160)や利尿薬の服用が誘因となる.特に飲酒との関係が深く,過半数が飲酒後に発症し160),162),若年から中年の男性でその傾向が強い161).発症はほとんどが夜間から明け方である(91%が午後6時~午前6時に発症)162).比較的若年者(55歳未満)では夕方から夜中の飲酒中や飲酒直後の発症が多く,中高齢者(55歳以上)では夜中から明け方・早朝の発症が多い161). 排尿による迷走神経刺激が静脈還流の減少(排尿時のいきみ,立位による)に加わって血圧低下や徐脈・心停止を来たすとされるが,就寝中の末梢血管抵抗減少,飲酒,利尿薬・血管拡張薬服用の影響により低血圧が助長される158).

2)排便失神 排便失神は比較的高齢(50~ 70代)の女性に多

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図3 状況失神の神経反射経路 (文献 158より引用)血管迷走神経性失神

Emotional syncope(情動失神)

大脳皮質

左室の機械受容器

徐脈・心停止

迷走神経核

孤束核

血管運動中枢

延髄

迷走神経刺激

心臓(抑制)

交感神経抑制

末梢血管(拡張)

血圧低下膀胱の機械受容器

腸管の機械受容器

食道の受容器

気道の受容器

頸動脈洞受容器Carotid sinus syncope(頸動脈洞失神)

Cough syncope(咳嗽失神)

状況失神

胸腔内圧上昇脳脊髄圧上昇

静脈還流減少

脳血流低下

心拍出量低下

頸動脈洞失神

Swallowing syncope(嚥下性失神)

Defecation syncope(排便失神)

Micturition syncope(排尿失神)

Post-exertional syncope(運動直後の失神)

Postural / Gravitational syncope(長時間の立位・坐位,Head-up tilt など)

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く158),163)-165),切迫した排便や腹痛等消化管症状を伴う場合が多い158),163),165).排尿失神と異なり飲酒の関与は少ない165).失神前は睡眠中もしくは臥位で休息中の例が多く,発症は夜間から明け方に多いとの報告163)もあるが,好発時間帯は排尿失神のように明らかではない161). 排便失神は,臥位による末梢血管抵抗減少があり,排便時のいきみによる静脈還流の減少,腸管の機械受容器を介した迷走神経反射が加わって血圧低下や徐脈・心停止を来たす158),163).排便失神では高齢者で循環器系等に基礎疾患を有しているためか,他の原因による失神の再発や死亡が多い163).

3)嚥下性失神 嚥下性失神は比較的まれであるが,これまでに60例以上の症例報告がある158).平均年齢は57歳(15~85歳)で40~70代の中高年に多く,男性が67%と多い.誘因は固形物が最も多く,炭酸飲料,温水,冷水でも誘発される.食道バルーンによっても徐脈性不整脈が誘発される158).食道疾患の合併が42%に認められ,食道ヘルニア,食道スパスム,憩室,癌,アカラジア等が報告されている158),166).基礎心疾患としては心筋梗塞後が最も多く,特に下壁梗塞後に嚥下性房室ブロックの発症が多い167). 食道圧受容器の感受性亢進による迷走神経反射が原因で166),硫酸アトロピンの投与により発作は抑制される. 嘔吐失神(vomiting syncope)も数例の報告があるが,嚥下性失神と同様,食道拡張に対する圧受容器の感受性亢進に起因する168).

4)咳嗽失神 咳嗽失神は中年(30~50代)の男性に多く,肥満または頑強で胸郭が大きい患者に多い169).これは咳により胸腔内圧が上昇しやすいためである.また大量の喫煙者で飲酒例が多く,慢性閉塞性肺疾患の合併も多い169). 咳嗽失神は,胸腔内圧上昇に起因する場合と迷走神経反射に起因する場合とがある.前者では胸腔内圧の上昇により静脈還流量が減少し,心拍出量低下によって脳血流量が低下する.胸腔内圧上昇は脳脊髄圧を上昇させ,脳動脈を圧迫することによっても脳血流を低下させる.後者には気道における圧受容器の過敏に起因するもの170)

や頸動脈洞過敏によるもの171)が含まれる.

②診断

 詳細な病歴聴取により失神時の状況を把握すること,失神の原因となる他の基礎疾患(循環器疾患,神経疾患,代謝性疾患等)を否定することが重要である.診断が明

らかでない場合,誘発試験を行うが,状況失神では同じような状況で誘発を試みても失神発作が再現されることは少ない.しかし,嚥下性失神では,誘因となる物質(固形物等)の嚥下や食道バルーンの拡張により,再現性をもって徐脈性不整脈が誘発されることが多い158).また,バルサルバ試験も嚥下性失神や咳嗽失神患者において,ごく一部の症例で血圧低下や心停止を伴い失神発作が再現できる場合がある158).咳嗽失神等では頸動脈洞過敏症を合併している場合もあるため,50歳以上の患者では頸動脈洞マッサージを施行してみる171).頸動脈洞マッサージは仰臥位で陰性であっても,60~70度のチルトを併用することにより陽性反応が得られやすくなる172).一方,チルト試験は,状況失神において有用性は高くない173),174).しかし,血管迷走神経性失神を合併している例もあり,他に適当な検査もないことからチルト試験を施行しているのが現状である.

3 治療クラスⅠ1.病態の説明2.生活指導3.前駆症状出現時の失神回避法クラスⅡa

1.重症例や心抑制型の例に対するペースメーカ*

 確立されている治療はなく,個々の病態に応じて治療方針を立てる.

1)生活指導 状況失神では一般的に発作頻度が少なく,生活指導で十分な場合も多い.いずれの状況失神でも発作の直前に前兆(気分不快,血の気が引くような感じ等)があった場合,しゃがみ込んで転倒に備える等の回避法を指導する.①排尿失神 過度の飲酒や血管拡張薬の服用を避ける.特に感冒時や疲労時はアルコールを控える.飲酒時には男性でも坐位での排尿を指導する.②排便失神 誘因となる腹痛や下痢を予防し,夜間の排便を避ける.

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* ペースメーカ治療の有効性を支持する成績は多くはないが,本失神では他に有効な治療法が少ないためⅡaとした.

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失神の診断・治療ガイドライン

③嚥下性失神 誘因(固形物,温湯,冷水,炭酸飲料等)を避け,固形物は十分に咀嚼して小さくしてから飲み込む.④咳嗽失神 咳の予防として禁煙,肥満の改善(減量)を指導し,基礎に肺疾患がある場合はその治療を行う.

2)薬物療法 有効性が確立されたものはない.嚥下性失神で徐脈・心停止を伴うものでは硫酸アトロピンが有効との報告166)もあるが,口渇等の副作用も強く,一般的に長期間の服用は困難である.咳嗽失神では肺疾患の治療が咳の予防に重要であり,必要に応じて鎮咳薬を投与する.

3)ペースメーカ治療 生活指導により失神が予防できず,発作時に徐脈や心停止が確認されている場合はペースメーカ治療の適応である.特に嚥下性失神では著しい徐脈・心停止を認めることが多く,ペースメーカ治療が有効である.

④予後

 一般的には合併する基礎疾患(特に心疾患)による.特に高齢者では心血管系の異常を伴うことが多く,重大な基礎疾患を見落とさないことが重要である.失神の再発については血管迷走神経性失神とほぼ同様である174).

4 頸動脈洞症候群 頸動脈洞症候群は中高年齢層の原因不明の失神患者においてしばしば認められ,重要な疾患である8),66),175)-178).

①病態生理と発症頻度

 頸動脈洞の圧受容器は,血管内圧の上昇や外部からの頸動脈洞圧迫により血管壁の伸展が生じると刺激される.頸動脈洞内の圧受容器からの求心性神経線維は舌因神経を通り,延髄中の弧束核そして迷走神経背側核,疑核および延髄・橋網様体に至る.遠心性神経線維は,洞結節や房室結節に分布する迷走神経心臓枝と心室筋や全身血管に多く分布する交感神経に分かれる.頸動脈洞圧迫により前者が刺激されると洞機能や房室伝導能に抑制的に働き,洞停止や房室ブロックが生じ心停止に至る179).しかし,頸動脈洞過敏現象が,反射弓における求心性・遠心性神経線維または脳幹,さらには洞結節等心臓自体のどの部位の過剰反応に起因するものか明らかではない.頸動脈洞症候群が洞機能不全症候群の一症状であることは考えにくい180),181).頸動脈洞症候群の病態と加齢

に伴う動脈硬化との関係が指摘されており,また加齢に基づく胸鎖乳突筋の慢性除神経との関係が注目されている66),182),183).中枢神経におけるシナプス後α2受容体の抑制,セロトニン再摂取増強との関係も挙げられている66),184). 頸動脈洞症候群は,反射性失神を示す例の約13%に認められ,さらに原因不明の失神患者における検討では,頸動脈洞マッサージ(carotid sinus massage:CSM)により診断される頸動脈洞症候群は全体の25%以上に認められる178),185).

②診断

1)臨床症状 失神発作の頻度は様々であるが,頸動脈洞過敏の病態は数年に及ぶ慢性期においても持続することが多い181).脳虚血症状(めまい,ふらつき感,失神)は立位や坐位,歩行時で生じやすく,着替えや運転,荷物の上げ下ろし等の頸部の回旋や伸展およびネクタイ締め等の頸部への圧迫が誘因となる.また,頸動脈洞を圧排するような頸部腫瘍(甲状腺腫瘍等)や頸部リンパ節腫大等によって認められることもある. 頸動脈洞症候群の診断には血管迷走神経性失神との鑑別が重要であり,両者の臨床的特徴を把握することが必要である(表14)185).頸動脈洞症候群は男性に好発し,しばしば,冠動脈疾患や高血圧等を合併する66),175).

2)頸動脈洞マッサージによる診断および病型分類 ホルター心電図やモニター心電図記録上,一過性の洞停止や房室ブロックが認められ,その原因精査において電気生理検査上異常なく,頸動脈洞マッサージにより初めて診断される例もある186),187).  頸動脈洞症候群は心電図および動脈血圧モニター記録下に,CSMで病歴と一致した意識消失発作が誘発された場合,血圧および心拍数の反応から病型分類され

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表14 頸動脈洞症候群と血管迷走神経性失神の比較頸動脈洞症候群 血管迷走神経性失神

発症頻度 低い 高い発症年齢 中高年(>50歳) 若年~中高年性差 男性に多い 女性にやや多い前駆症状 ほとんどなし 高率家族歴 ほとんどなし しばしばあり心疾患合併 しばしばあり 少ない発作時活動状態 頸部廻旋に関係 立位,坐位,排尿時診断法 頸動脈洞マッサージ チルト試験

病型分類 心抑制型が多い 血管抑制型,混合型が多い

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る179)-181),188).5秒間の圧迫で陰性を示し,10秒間の圧迫で症状が出現し,初めて陽性と判定される場合もある.臥位と比較すると,チルト下の立位におけるCSMのほうが頸動脈洞過敏の程度が増強され,診断率が高まる172),178),189).特に,血管抑制反応が主体であるものは臥位では見過ごされやすく,立位による圧迫で診断される頻度が高い172),189). CSMによって生じる合併症は神経症状であるが,発症率は約0.1~0.45%と極めて低い178),190).神経症状が発症しても多くは24時間以内に回復する.しかし,過去3か月以内に脳梗塞や一過性脳虚血の既往を認める例や頸動脈に血管雑音を有する例では,合併症のリスクが高まるためCSMは避けるべきである8).①心抑制型(Cardioinhibitory�type) CSMにより少なくとも3秒以上の心停止を伴う頸動脈洞過敏を示し,意識消失発作が誘発され,収縮期血圧の低下は50mmHg以内にとどまる.心停止は,洞停止あるいは洞房ブロックばかりでなく完全房室ブロックによっても生じ,しばしば心電図上non-conducted PAC(心室伝導を認めない心房期外収縮)が記録される.AHブロックによる房室ブロックが潜在している可能性があり,心抑制型において電気生理検査を行うことは,伝導抑制部位の病態の解明ばかりでなく,ペーシングモード選択や治療判定にも有用である181).②血管抑制型(Vasodepressor�type) CSMにより3秒以上の心停止は示さないが,50mmHg

以上の収縮期血圧低下を認め意識消失発作が誘発される. ③混合型(Mixed�type) 混合型は心抑制型と血管抑制型の両者の頸動脈洞過敏を認める.

③治療

クラスⅠ1.病態の説明2. 生活指導:急激な頸部の回旋・伸展,きつい襟,きついネクタイ等の誘因を避ける

3.頸部腫瘍の摘除4. 反復する心抑制型失神に対するペースメーカ(DDD,

DDI)クラスⅡa

1. 失神発作があるが,頸動脈洞刺激で心抑制型の過敏反応を示すものの失神には至らない例に対するペースメーカ

クラスⅢ1. 頸動脈洞刺激によって心抑制型の過敏反応を示すが,症状がないか漠然としている例に対するペースメーカ

 薬物療法の有効性の報告は少なく,症状の頻度,重症度および病型により治療方針を決める8),178),191),192). 症状が失神に至らず,めまい感やふらつき感にとどまっている場合は,頸動脈洞圧迫につながる急激な頸部回旋,伸展等の行動は避けるように生活指導する.ネクタイ締め,着替え,運転,荷物の上げ下ろし等の行動に伴って症状が出現しやすいため,注意が必要である.失神に至る例では,心臓ペーシング等の適切な治療を積極的に行わないと症状再発の危険性が高い181),191)-196).特に,反復する失神を来たす例や失神発作時に長い心停止時間や頭部外傷を認める例ではペースメーカ治療の絶対適応となる192).頸動脈洞を圧排する頸部腫瘤等による二次性の頸動脈洞症候群では,臥位,坐位でも症状は出現しやすく摘出術等の根治治療が必要となる.心抑制型に対する抗コリン薬等の内服治療は再発率も高く無効である. 頸動脈洞症候群に対するペースメーカ治療の適応は本項の冒頭に示したとおりである8),192).つまり,反復する失神が認められ,かつ頸動脈洞刺激により心抑制型の頸動脈洞過敏が証明される場合にはペースメーカ治療が推奨される.一方,頸動脈洞刺激によって心抑制型の過敏反応を示すが,症状がないか漠然としている例では,ペースメーカ治療の適応とはされない192). 心抑制型ではしばしば房室ブロックによる心停止を伴うため,AAI型ペースメーカでは失神を予防することができず禁忌である.VVI型では,ペースメーカ症候群や血管抑制反応の増強により,心拍数は維持されるが血圧低下が認められ,必ずしも症状の改善は認められない場合がある.DDD,DDI型の心房心室同期ペーシングが本疾患に最適な治療法である192).混合型でも心抑制反応が強い例はペーシング治療が有効であるが,血管抑制が強い場合は血管抑制型と同様にペーシング治療による心停止の予防だけでは症状の改善は認められない.Rate

drop response(RDR)機能を持つ生理的ペースメーカが,頸動脈洞症候群における心臓抑制反応の強い例で有効とされている194),197). 血管抑制型に対しては,確立された治療法は得られていない.エフェドリンやプロプラノロール,セロトニン再吸収阻害薬が有効であった報告もみられる181),198).

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④予後と社会生活

 失神を示さず,めまい感やふらつき感等にとどまる場合は,頸動脈洞圧迫につながる急激な頸部回旋,伸展等の行動は避けるように生活指導することで,失神を予防できる.血管抑制反応が強い頸動脈洞過敏を呈する例では,ペースメーカ治療が無効であり,また有効な薬剤がないため日常生活における生活指導を常に念頭におく必要がある.特に,再発性の失神を有する例では運転中の失神はしばしば事故につながるため,運転制限および禁止が必要となる.

3 体位性起立頻脈症候群

 本症候群は失神を来たすことは一般的にはないが,病態生理は血管迷走神経性失神に類似しているため,本ガイドラインで取り上げて解説する.

1 概念 1982年Rosenらが起立時に疲労,運動不耐症,心悸亢進等を伴う患者群を“体位性頻脈症候群(postural

tachycardia syndrome)” と 報 告 し た199).1993年Schondorfらはこの病態を体位性起立頻脈症候群(POTS:postural orthostatic tachycardia syndrome)と命名した200).チルト試験で異常な心拍数の増加を示し,多くの場合起立2分以内に心拍数が120~170/分まで増加する.

2 臨床的特徴 POTSとほぼ同義語とされる特発性起立不耐症(idiopathic orthostatic intolerance)の有病率は少なくとも1/500以上にのぼり,全米で50万人以上の患者がいるとされる108).患者の大半は15~50歳,平均年齢は30代前半であり,男女比は1:4~5で若年女性に好発する201).女性に多い理由は明らかではないが,女性ホルモンや性周期との関連が示唆されている202).成人の慢性疲労症候群例の25~50%にPOTSが認められる203). 症状は立位に伴う動悸,ふらつき,疲労感,全身倦怠感が主体であるが,多彩な症状を認める204).これらの症状は脳血流低下に基づくものであり,正確な機序は不明である.静脈還流量の減少,過換気やそれに伴う低CO2血症による脳循環調節の異常,脳動脈収縮が,めまいや眼前暗黒感,頭痛等の症状の原因となる205),206).発汗や顔面紅潮等の交感神経刺激症状,悪心等の迷走神経刺激症状もみられ,さらに振戦やパニック障害のような

不安神経症状を呈する205).皮膚への血流低下により,四肢特に下肢のチアノーゼがみられることが多く,下肢に広汎に広がりまだら模様を呈する205),207).

3 原因と病態生理(図4)207)

① 下肢限局型の自律神経性ニューロパチー (Neuropathic POTS)

 POTSの発症に先行してウイルス感染がみられ200),ノルアドレナリンに対する血管収縮反応の検討で下肢の静脈に脱神経過敏が認められる.交感神経皮膚反応や定量的軸索反射性発汗試験,ノルアドレナリンのspilloverの検討から下肢のみで交感神経機能異常が認められる208),209).また,下肢への極度の重力依存性血液貯留が認められる210).これらの結果からPOTSの機序の1つに,下肢に限局した部分的自律神経障害(partial dysautonomia)が想定されている.

②β受容体感受性亢進(Hyperadrenergic POTS)

 起立時に血漿ノルエピネフリン濃度の過剰な増加と血圧の上昇を来たす例があり,β受容体感受性亢進の存在が考えられている.臥位でのイソプロテレノ―ル負荷による心拍数増加の程度も大きく,β遮断薬の有効性が期

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図4 POTSの体位性頻脈と起立不耐症を来たす原因として想定される機序(文献207より改変引用)

静脈運動調節障害

中心血液量の減少

動脈脈圧の減少 心肺圧受容体の減負荷

交感神経による増大

末梢血管抵抗

動脈圧の維持

脳血管抵抗頻脈

脳血流量と脳血流速度の低下脳動脈収縮

起立不耐症

起立時の静脈プーリングの増加

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待される211).

③循環血液量の減少

 POTSでは循環血液量の減少がみられるにもかかわらず,血漿レニン活性やアルドステロン濃度は低値であるという報告があるが,一定した成績はない.循環血液量の減少はPOTSの機序の一部か増悪因子として関与する212),213).

④脳循環調節の障害

 POTS例ではチルト負荷中に中大脳動脈血流速度の低下が観察され,起立中の交感神経活動の過度の亢進や過呼吸により脳動脈収縮が生じ,起立不耐症の症状の一因をなす209),214).

⑤骨格筋ポンプの障害

 一部のPOTS例では運動機能とは関係なく骨格筋ポンプが障害されている215).

⑥遺伝的要因

 ノルエピネフリントランスポーター(NET)遺伝子異常を認めた家系が報告され216),実験モデル217)で検討されたが,大多数のPOTS患者の遺伝的要因は明らかでない.

⑦ヒスタミン

 顔面紅潮と尿中ヒスタミン代謝産物の排泄増加を認め,肥満細胞の活性化によるヒスタミン分泌増加がPOTSの病態に関与する可能性が示唆されている218).

⑧High-flow,low-flow and normal-flow POTS

 POTSの病態は単一ではなく安静臥床時の末梢血管抵抗と心拍出量により“high-flow POTS”,“low-flow

POTS”,“normal-flow POTS”の3つに分類されることがある207),219).

4 診断 表15に診断基準108)を示す.起立もしくはチルト5分以内に臥位に比べ心拍数が30/分以上増加するが,起立性低血圧を認めない.この際に臨床経過と同様なめまい,立ちくらみ,視野異常,動悸,振戦,脱力感等多彩な起立不耐症の症状がみられる.貧血や脱水,体重減少を来たす消耗性疾患が基礎にないことが必要であり,起立不耐症を助長し得る薬剤の投与がなされていないかの確認も重要である.

5 治療(表16)

①生活指導,増悪因子の除去

 起立性低血圧の場合と共通する内容が多い.

②薬物療法

 臨床的な有効性が無作為二重盲検試験で確認された薬剤はいまだになく,症例ごとに薬剤の効果を検討する.治療の目的は,以下で述べるように1)循環血液量の増加,2)過剰な交感神経活動の抑制,3)末梢血管(動脈,静脈)の収縮,4)β受容体感受性亢進の減弱にある.

1)循環血液量の増加 急性の治療としては生理食塩水の点滴静注を行う.内服薬としてはフルドロコルチゾン(0.02~0.1mg/日,分2~3)の有効性が認められている220).ただしその効果は塩分の摂取量に依存するため,患者には十分な塩分摂取をあわせて指導する.夜間多尿の症例に対してデス

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表15 LowらによるPOTSの診断基準 (文献108より引用)(1)起立またはチルト5分以内に心拍数増加≧30/分(2)起立またはチルト5分以内に心拍数≧120/分(3)起立不耐症の症状が持続する

【注】 上記すべてを満たすものは重症POTS,(2)を満たさないものは軽症POTS.

表16 POTSの治療1.患者指導,増悪因子の除去 ①体重減少,脱水,貧血の是正 ②原因薬剤の中止 ③慢性消耗性疾患,長期臥床,運動不足の是正2.薬物療法 ①循環血液量の増加 (a)生理食塩水点滴静注(1L/1時間) (b)フルドロコルチゾン (c)デスモプレッシン(dDAVP) (d)エリスロポエチン ②過剰な交感神経活動の抑制 中枢性α2受容体刺激薬:クロニジン,メチルドパ,フ

ェノバルビタール ③末梢血管(動脈,静脈)の収縮 α1受容体刺激薬:ミドドリン,フェニレフリン ④受容体感受性亢進の減弱 β受容体遮断薬:プロプラノロール等

⑤その他:ピリドスチグミン,オクトレオチド,SSRI,SNRI

3.非薬物療法 ①塩分摂取 ②下肢筋肉トレーニング ③弾性ストッキング,腹帯 ④セミファウラー位での睡眠

【注】 β遮断薬のみ洞頻脈に保険適応があり,他の薬剤はPOTSに対する保険適応は承認されていない.

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モプレシン(dDAVP,経口バゾプレシンアナログ製剤)が有効である221).治療抵抗性の患者には,赤血球増加作用と血管収縮作用を有するエリスロポエチンの有効性が報告されている222)(保険適応外).

2)中枢性交感神経抑制 過剰な交感神経活動の亢進を認める患者には中枢性交感神経抑制薬が有効である.交感神経抑制薬に対する感受性が高いため少量より投与を開始する.クロニジン(0.225~0.45mg/日 分3)単独あるいはフルドロコルチゾンとの併用を行う219).メチルドパやフェノバルビタールも同様の効果が報告されている219),223)が,長期投与等不明の点が多く治療抵抗性の患者へ慎重に投与する必要がある.

3)末梢血管(動脈,静脈)収縮 α1受容体刺激薬(静注:フェニレフリン,経口:ミドドリン4mg/日 分2)が用いられる219)が,α1受容体刺激薬の長期投与による効果はいまだ明らかではない.

4)交感神経β受容体の感受性亢進の減弱 β遮断薬が非常に有効とされる211)が,これまでに無作為試験によるβ受容体遮断薬の効果の検討はなされておらず,長期効果も明らかではない.

5)その他 ピリドスチグミン(アセチルコリンエステラーゼ拮抗薬)224)オクトレオチド(選択的腹部内臓血管収縮薬)225),選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRI)226),選択的ノルエピネフリン再吸収阻害薬(SNRI)227)の有効性が報告されている(いずれも保険適応外).

6 予後と社会生活 POTSの生命予後は一般に良好であり1~数年以内に自然に軽快する例が多いが,予後を系統的に検討した報告はなく不明の点が多い.POTSのタイプによっても予後が異なる可能性が考えられ205),また起立時の頻回に認められる症状のためQOLや日常生活動作が著しく制限される場合がある228).

4 不整脈

 徐脈ばかりではなく,心拍数が著しく多い頻脈でも心拍出量量が維持できずに失神を来たすことがある.

1 徐脈性不整脈 失神の原因となる徐脈性不整脈には洞不全症候群,房室ブロックが挙げられる.これらの診断には失神発作の状況,年齢,既往歴,家族歴,基礎疾患の検索と心電図,必要に応じて電気生理検査等の検査が有用である156),229).

①洞不全症候群

1)定義・病態生理 洞不全症候群は洞自動能低下もしくは洞房伝導能の一過性または持続性低下により徐脈を来たすもので,前者により洞停止,持続性洞徐脈,心拍応答性の低下(chronotropic incompetence),後者により洞房ブロックが出現する.大部分は洞結節細胞もしくは周囲心房筋の加齢に伴う変性,線維化等による特発性と呼ばれるものである.二次性のものとして虚血性心疾患,心筋症,弁膜症,炎症,高血圧,膠原病,心アミロイドーシス等に伴うものがある.多くは50歳以上に発症するが,まれに若年者にもみられ,先天的な刺激伝導異常も疑われる230).自律神経,特に迷走神経の関与が大きく,徐脈は夜間に著明である.Brugada症候群との合併も報告され注意が必要である231),232).

2)分類 Rubensteinの分類が使用される233).Ⅰ群:原因不明の著しい持続性洞徐脈(心拍数<50/分)Ⅱ群:洞停止あるいは洞房ブロックⅢ群:徐脈頻脈症候群

3)診断 12誘導心電図,モニター心電図,ホルター心電図により診断されるが,迷走神経の影響を除外するため運動負荷心電図や硫酸アトロピンに対する反応を確認する.本症候群が疑われるが上記検査によっても確定診断に至らない場合は,電気生理検査の適応である234).電気生理検査では,(1)洞結節オーバードライブ抑制試験による洞結節回復時間(sinus node recovery time:SNRT),さらに基本刺激周期長により補正した修正(corrected)SNRTの計測235),(2)洞房伝導時間測定(Strauss法,Narula法)236),237),(3)洞結節電位直接記録238)により洞機能の評価を行う.一般にSNRTは1400ms未満,CSNRTは525ms未満を正常範囲とする.

4)治療 原則としてペースメーカが選択される.それまでのつ

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なぎとして,もしくは患者がペースメーカ治療を希望しない場合等にはシロスタゾール(200mg/日 分2,保険適応外)等の薬物療法が選択される.ただし,これら薬物療法の効果は不確実であることを念頭に置く.ペースメーカ植込みの適応は不整脈の非薬物治療ガイドライン239)に従う.

5)予後 ペースメーカ植込み後の予後は基礎疾患による.

②房室ブロック

1)定義・病態生理 房室ブロックは心房から心室へ刺激が伝達される際に,刺激伝導系のいずれかの部位において,伝導遅延または途絶が認められるものである. 先天性と後天性に大別されるが,前者は修正大血管転位や心室中隔欠損を伴う心奇形等によく認められる.後天性では伝導系を含む心筋の虚血,炎症,変性,外傷等が原因となる.後天性房室ブロックは,一般に加齢に伴う変性,線維化等の原因の明らかでないものが多い.その他,二次的なものとしては,虚血性心疾患,心筋症,心筋炎,薬剤性,膠原病,サルコイドーシスに伴うもの等がある240).

2)診断 12誘導心電図,モニター心電図,ホルター心電図により診断されるが,迷走神経の影響を除外するため運動負荷心電図や硫酸アトロピンに対する反応を確認する.器質的房室伝導障害を有する例では,これらの負荷により房室伝導の増悪を示すことが多い.房室伝導障害が疑われるが,上記検査によっても確定診断に至らない場合は電気生理検査の適応である234).本法ではブロック部位の診断をはじめ,不応期測定,下位中枢の安定性評価および潜在性ブロックの誘発を行う241).すなわち,(1)His束以下の伝導遅延の有無,(2)漸増性心房ペーシング法によるAH Wenckebach型ブロックおよびHis-

Purkinje系における2度以上のブロック出現心拍数242),243),(3)心房期外刺激法による心房,房室結節,His-Purkinje

系の相対・有効不応期の測定を行う.これらによってもブロックがみられない時には,(4)心室オーバードライブ抑制試験や(5)Ia群抗不整脈薬負荷等による房室ブロックの誘発を行う.これによりHV時間が2倍以上に延長する場合,HV時間が100ms以上に延長する場合,さらには2度以上の房室ブロックが出現した場合はHis-

Purkinje系の器質的伝導障害が示唆される.低用量の抗

不整脈薬によりブロックが誘発されれば診断意義は大きい.このために使用される薬剤はシベンゾリン(1.4mg/

kg),ジソピラミド(1.0mg/kg),プロカインアミド(10mg/

kg)等である. 右脚あるいは左脚ブロックに1度ブロックの合併を認めた場合は,ブロック部位診断のため電気生理検査が不可欠である244),245).また,2度Wenckebach型ブロックの大多数は,迷走神経の緊張に伴う機能的(可逆的)ブロックで,ブロック部位はHis束上である246),247).His

束内,His束遠位でみられることは比較的まれな現象であり248),何らかの器質的障害の存在が示唆される.運動負荷等心房拍数の増加に伴い房室伝導の増悪を認めることが多く249),250),ほとんどの例でさらに高度房室ブロックへ進展する.2度MobitzⅡ型ブロックはHis束以下の器質的伝導障害が原因とされ,運動負荷や硫酸アトロピンによる反応は,伝導の不変もしくは悪化となって現れる.より高度の房室ブロックへの進展が認められることが多い.2枝ブロックが存在する例で,進行性に1度もしくは2度のブロックを合併した場合は間欠的3枝ブロックの出現が考えられ注意が必要である.この場合は,電気生理検査が必須であり,HV時間が100msec以上に延長している例,毎分150以下の心房刺激でHVブロックが出現する例,心房期外刺激法によるHis-Purkinje系の有効不応期が450msec以上に延長する例等は3枝ブロックへの進展する可能性が高く失神の原因となり得る234). 徐脈性心房細動では,臨床症状と徐脈との関連が明らかでない場合には,ホルター心電図を繰り返し記録し,徐脈の程度(覚醒時の心室拍数<40/分)や心室停止の長さ(>3秒以上)等の所見を参考とする234).また近年では植込み型ループレコーダーも診断に有用であることが報告されており,原因不明の場合には植込み適応を考慮する(Ⅰ-4.診断ヘのアプローチ,植込み型ループレコーダーの項参照).

3)治療 臨床症状を有する例ではペースメーカ植込みが原則である239).それまでのつなぎもしくはペースメーカ治療を拒否する例では,硫酸アトロピンやイソプロテレノール(0.01~0.1μg/kg/分)等を使用するが,効果は不確実である.植込みの適応は不整脈の非薬物治療ガイドライン239)に従う.

4)予後 ペースメーカ植込み後の予後は基礎疾患に依存する.

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2 頻脈性不整脈

①病態生理

 頻脈(表17)により心拍出量が低下ないし消失することが原因である.頻脈が数秒で停止すればめまいや動悸で終わることがあるし,持続すれば突然死に結びつく33),251).

②診断

 失神の原因として一過性の頻脈を疑うことが重要である.

1)病歴 失神に先行する動悸252),運動や精神的ストレスの関与253),突然死の家族歴,心疾患の既往,心電図異常の既往,服薬状況を把握する.

2)身体所見 器質的心疾患の有無,心拡大や心不全徴候の有無を確認する.病歴や身体所見は心臓由来の失神かどうかの推定に役立つ87).心エコー検査も有用である254).

3)心電図 WPW(Wolff-Parkinson-White)症候群,Brugada症候群255),QT延長症候群256)に注意する.不整脈原性右室心筋症(ARVC)では,T波の異常やイプシロン波等がみられる257).異常Q波,肥大所見,ST‐Tの異常,QRS幅の延長等は心疾患を示す.

4)ホルター心電図 頻脈発作がホルター心電図でとらえられる可能性は低い258)-260).失神を来たす頻脈が考えられる場合は,入院してモニターを行い,適時電気生理検査に移行するのが安全である.

5)電気生理検査 プログラム刺激によって頻脈の誘発を試みる.WPW

症候群,発作性上室頻拍や心房粗動では誘発率は高く診断的価値も高い261). 基礎心疾患を有し単形性の持続性心室頻拍が確認されている例では,心室頻拍の誘発率は高い262).持続性心室頻拍や心室細動の誘発例では,失神や突然死の危険が高い263),264).Brugada症候群では多形性心室頻拍や心室細動が誘発されるが265),その意義については議論がある.失神例の電気生理検査の適応は本学会ガイドライン266)に従う.

③治療

 失神が発作性上室頻拍,WPW症候群,心房粗動,特発性心室頻拍による場合はカテーテルアブレーションにより根治できる267),268).心室頻拍や心室細動による場合は,植込み型除細動器(ICD)が最も確実な手段となる269).心筋梗塞後の心機能低下例で,電気生理検査で持続性心室頻拍・心室細動が誘発される場合は ICDで予後は改善する270),271). 個々の頻脈についての治療のガイドライン272)は既にあるので,これに従う.持続性心室頻拍・心室細動例に対するアミオダロンの有効性には論議がある273),274).QT延長症候群やカテコラミン誘発性多形性心室頻拍の失神および突然死の予防には,β遮断薬と運動制限が原則となる.症状や突然死の家族歴の有無等を参考に ICD

を考慮する269),272).

④予後

 心原性失神の1年目の死亡率は24%と高い33),156).我が国の ICD治療群では,1~3年の観察で40~50%に適切作動が認められている275).QT延長症候群,Brugada

症候群,カテコラミン誘発性多形性心室頻拍等を対象に治療効果を比較した大規模試験はまだない.

5 虚血性心疾

1 病態生理 虚血性心疾患による失神の機序には,心筋ポンプ失調あるいは不整脈による心原性のものとBezold-Jarisch反射等の神経反射によるものがある.

①急性冠症候群

 14か国20,881人の急性冠症候群の検討では,8.4%の

25

表17 失神を来たす頻脈性不整脈A.上室性 ①発作性上室頻拍 ②心房粗動 ③心房細動B.心室性 ①単形性心室頻拍 ②多形性心室頻拍,torsade de pointes ③心室細動

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

症例で胸痛を認めず,23.8%の症例が初期には急性冠症候群と診断されず276),その中の約20%の症例が失神発作やその前兆を訴えて受診した(図5).したがって失神発作で受診してきた症例においては,常に虚血性心疾患の可能性を考慮する必要がある276)-278).

②狭心症

1)冠攣縮性狭心症 失神も1つの病態であり頻度は4~33%279)-282)とされる.機序として虚血による心筋ポンプ失調283),房室ブロック284),洞徐脈,心室性頻脈性不整脈等が考えられている.一般的には,右冠動脈の近位部285),QT

dispersionが増大している症例286),多枝病変287),288)や発作時に不整脈,特に心室頻拍289),290),心室細動,完全房室ブロック291)を呈する例に多い.非発作時には異常が認められないことから,原因不明の失神の中にはこの病態による失神発作が多く含まれている可能性がある292).

2)労作狭心症 心筋ポンプ失調や虚血に伴う頻脈性不整脈,房室ブロック等により失神・前失神発作を起こす.動脈硬化性病変のみでなく先天性冠動脈疾患293)や川崎病294)等も原因となる.

2 診断 患者が失神前後で胸痛を自覚すれば,運動負荷テスト,心エコー,心電図モニター等が第一段階として推奨される(クラスⅠ)156).ホルター心電図が最初に勧められるが,発作時の記録が困難な場合にはイベントレコーダーや植込み型ループレコーダーが推奨される295). 失神の原因として心筋虚血が疑われる場合,冠動脈造影が診断と適切な治療方法選択のために推奨される(ク

ラスⅠ).冠動脈造影が正常の場合には冠攣縮性心筋虚血を疑い,エルゴノビン負荷296)あるいはアセチルコリン負荷297)を行う.まれにイソプロテレノール負荷によって誘発される場合もある298). 運動負荷試験は,運動中あるいは運動直後に起こる失神発作の診断には重要である.運動中に起こる失神発作の多くは心原性であり,徐脈を伴わない著明な低血圧によって引き起こされることが多く,無痛性虚血性心疾患,虚血による心室性不整脈・房室ブロックが原因となる.一方,運動負荷直後に起こる失神発作の多くの原因は自律神経調節障害と考えられている. 虚血性心疾患の中でも心筋梗塞既往例における失神発作の診断には,電気生理検査が有用である(クラスⅠ)299).E S V E M(E l e c t r o p h y s i o l o g i c S t u d y Ve r s u s

Electrocardiographic Monitoring)試験263)でも電気生理検査で心室頻拍が誘発された失神既往例では,自然発作の心室頻拍が記録された症例と同程度にハイリスクであることが示された.冠動脈疾患症例に起こった原因不明の失神患者で,電気生理検査により心室頻拍・細動が誘発され ICDが植込まれた178例では,2年間で55%の症例で心室頻拍・細動が再発し,失神発作と心室性不整脈との関連が強かった264). 遅延電位,T波交互脈(保険適応未承認)等は,器質的心疾患を有する症例の失神発作・突然死に対する補助的な診断として用いられる.

3 治療 虚血性心疾患による失神発作がすべて心筋虚血による心筋ポンプ失調のみが原因と確定できないし,神経反射300)や原発性不整脈(心室細動)の関与もある.急性心筋梗塞後にはチルト試験の陽性率も33%と対照の3倍くらい高く,1年間の経過観察で25%の症例に失神あるいは失神前症状が発生する300). 虚血発作が頻脈性心室性不整脈の発生に関係している例では,虚血発作に対する治療を優先する.適応のある場合には冠動脈形成術や外科的治療を行う(クラスⅠ). 冠攣縮例の失神発作は突然死につながる可能性もあるが301),突然死とは無関係とする報告もある279).一般的には,Ca拮抗薬が第一選択である(クラスⅠ)301).しかし,薬剤による効果が不十分あるいは不確実と考えられる場合,ICD植込みを行う(クラスⅡb). 陳旧性心筋梗塞例で失神の原因が心室細動や持続性心室頻拍であることが確認されている場合は ICDの適応である(クラスⅠ).原因不明の失神発作があり,持続心室頻拍や心室細動が電気生理検査で誘発され,有効な

図5 無痛性の急性冠症候群における症状の頻度   (文献276より引用)   合計が100%を超すのは1つ以上の症状があるため

呼吸困難

n=20,881

19.124.326.2

49.350

40

30

20

10

0

症状発現者率(%)

発汗 吐気・嘔吐 失神

26

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失神の診断・治療ガイドライン

薬剤がない場合は ICDの植込みを行う(クラスⅠ)269).頻拍発作の予防にアミオダロンやβ遮断薬の併用投与も有効である(クラスⅡa)が,その効果は ICDに劣る.不整脈の非薬物治療ガイドライン等239),272)が公表されているので,治療方針はこれらに準じて立てる.

4 予後 原因となる冠動脈の重症度と左室機能の障害程度に依存する288),301),302).

6 心筋症

1 肥大型心筋症

①病態生理

 肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)における失神は,本症の死因の過半数を占める突然死の危険因子として重要である303),304).特に若年者の失神,運動中に発生する失神,繰り返し発生する失神は突然死の危険が高いことを示唆する.HCMの失神の頻度は欧米では16~19%305)-307),我が国の特発性心筋症調査研究班の報告308)では16.8%,久留米大学の報告309)では8.9%である.一般に非閉塞性例より閉塞性例で高率にみられる. HCMで失神を来たす機序としては以下のものが挙げられている310).(1)心室性・上室性頻脈性不整脈,(2)徐脈性不整脈,(3)高度な左室流出路狭窄,(4)自律神経異常(心肺圧受容器反射の異常),(5)心筋虚血と拡張障害の相互作用である.頻脈性不整脈では心室頻拍が突然死の危険因子として重要で,失神を伴う心室頻拍はICDを考慮する必要がある239),272),303),304).頻脈性心房細動もHCMの失神の機序とされるが比較的まれである.むしろHCMではCa拮抗薬,β遮断薬,抗不整脈薬が使用されることもあり,失神の原因としては徐脈性不整脈が多い. 一方HCMではこれらの不整脈がなくても失神を来たすが,その機序として心肺圧受容器反射の異常が指摘されている.特に閉塞性例では左室流出路狭窄により有効心拍出量が低下し,反射性の交感神経緊張状態が発生しやすい.このため左室流出路狭窄がさらに増強され,左室壁内の圧受容器を刺激して,交感神経抑制,迷走神経緊張を来たし失神を誘発する1).しかし失神は流出路狭窄のない非閉塞性例でも発生し,チルト試験陽性311)や,下半身陰圧負荷試験で血管収縮反応の低下あるいは逆に

血管拡張反応を示す例がある312),313).したがってHCM

では左室内圧の上昇がなくても圧受容器自身の異常または心筋錯綜配列等による心筋壁張力の変化により交感神経抑制と迷走神経刺激を来たし,失神が誘発される可能性がある.またHCMでは約30%の症例が運動負荷試験中に血圧上昇反応の異常を示し,これは突然死の危険因子として知られているが309),314)-316),この機序としても心肺圧受容器異常の関与が考えられている.

②診断

 HCMの失神の機序は多様であり,個々の症例においてどの機序で失神を来たしているかを判断することが重要である.病歴では突然死のリスクと関係する失神の回数,運動との関係,近親者の突然死の有無を聴取するが,頻回に失神発作を繰り返す例は我が国では比較的少ない.ホルター心電図は頻脈性,徐脈性不整脈の検出に必須の検査である.非持続性心室頻拍例における ICDの適応決定のための電気生理検査の有用性は確立されていない.失神の原因精査のための電気生理検査は,クラスⅡbに分類されている8).心肺圧受容器反射の異常の検討にはチルト試験や下半身陰圧負荷試験が有用であるが,日常臨床ではまだ一般的でない.むしろ運動負荷試験での血圧反応が突然死のリスク評価の面から有用である.失神を伴うHCMにおける突然死の予防に対しては,ESCの失神の診断と治療ガイドラインでは,ICDの適応となるハイリスク所見がない場合には,植込み型ループレコーダーによる原因精査が推奨されている8).

③治療

 HCMの突然死は運動中や直後に発生することが知られており,一般に過激な労作,競技スポーツ等の制限が必要である272),303),304).特に運動中に失神を来たす例や運動負荷試験中の血圧上昇反応不良例では厳しい運動制限が必要である(クラスⅠ).HCMの薬物治療に用いられるβ遮断薬,Ca拮抗薬,抗不整脈薬の失神に対する効果は不明である.また流出路狭窄に対する中隔枝塞栓術,DDDペースメーカの失神に対する治療効果も不明である.失神を伴う徐脈性不整脈はペースメーカの適応である(クラスⅠ)239).この場合には心房機能を温存できるDDDペーシングを選択する. 失神を伴うHCMにおける突然死の予防のためにはICDが最も有効で,その適応は不整脈の非薬物治療ガイドライン239),272)に準じて決定する.しかしHCMにおける電気生理検査の有用性は必ずしも確立されておらず,米国心臓病学会 /米国心臓協会 /欧州心臓病学会(ACC/

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

AHA/ESC)のガイドラインでは,(1)原因不明の失神,(2)突然死の家族歴,(3)高度な左室壁肥厚(≧30mm),(4)運動中の血圧上昇反応不良(<20mmHg),(5)自然発作の心室頻拍,(6)心停止もしくは心室細動のいずれか1つ以上が認められれば,ICDの適応を考慮すべきとしている(クラスⅡa)317).

2 拡張型心筋症

①病態生理

 拡張型心筋症(DCM)で失神を合併する例では突然死が高率に発生し,失神は予後不良であることを示す症状である36).DCMにおける失神の頻度は特発性心筋症調査研究班の集計308)では17.6%である. DCMの失神の機序としても心室頻拍等の心室性不整脈,徐脈性不整脈,心房細動等の上室性不整脈による心原性失神の他,心肺圧受容器反射の異常による神経反射性失神が挙げられている36),318).このうち心室頻拍による失神が大多数を占め,原因不明の失神も大半は心室性不整脈によるものと推測されている.

②診断

 失神の原因が致死性不整脈の可能性が高い場合には入院による心電図モニターが必要である(クラスⅠ)8).ホルター心電図は,失神や失神前駆症状が頻回にみられる場合はクラスⅠ適応である.体外式のイベントレコーダーは4週間以内に失神症状がある場合は適応である(クラスⅡa)8). 電気生理検査による持続性心室頻拍・心室細動の誘発は冠動脈疾患等では突然死のリスク評価に有用とされている.しかし,DCMでは両者の関連は必ずしもみられず,持続性心室頻拍・心室細動の誘発がみられない例でも突然死の発生や ICDの作動がみられ,電気生理検査の有用性は確立されていない8),319),320).

③治療

 DCM等の左心機能低下例で有効性が認められている抗不整脈薬はアミオダロンとソタロールである.しかし,突然死の危険性が高い失神を伴うDCMでは,突然死の予防に優れる ICDが第一選択で,適応は不整脈の非薬物療法ガイドライン等239),272)に従う.なお同ガイドライン239)では,ICDの適応として持続性心室頻拍,心室細動以外の場合には電気生理検査による持続性心室頻拍・心室細動の誘発が条件とされている.しかし,DCMに伴う原因不明の失神はそれ自体が突然死の高リスクであ

り,持続性心室頻拍・心室細動が誘発されない場合にも誘発された場合とほぼ同等の頻度で突然死や ICDの作動がみられることが明らかとなりつつある.ESCの失神治療ガイドライン8)ではDCM(虚血性,非虚血性を問わず)における電気生理検査の有用性は低い(クラスⅢ)とされており,近い将来我が国のガイドラインの再評価が必要であろう. 一方房室ブロック,洞不全症候群等の徐脈性不整脈が失神の原因である場合にはペースメーカの適応となる(クラスⅠ).この場合心房機能を温存できるDDDペーシングを選択するとともに左室機能の改善が期待できる両室ペーシングの併用が望ましい.

3 不整脈原性右室心筋症

①病態生理

 不整脈原性右室心筋症(ARVC)の約3分の1に失神が生じると報告されている8).ARVCは若年男性に多く,頻度は1人 /5,000人とされる.ARVCは,右室の脂肪浸潤と右室起源の心室頻拍を来たす原因不明の疾患で,脂肪浸潤はしばしば左室に及ぶ.我が国では持続性心室頻拍の原疾患全体の約10%を占める.持続性心室頻拍の発症年齢は40~50歳で,病変は徐々に進行する272).

②診断

 失神の原因として,心室性不整脈が主な原因と推測されている.広範な右室壁運動の異常例では,心停止や持続性心室頻拍再発の危険が高いが,電気生理検査で心室頻拍が誘発される例,病変が左室に及ぶ例等で不整脈事故が多いと報告されている321).しかしながら,ARVCにおける電気生理検査の有用性は確立されてはおらず317),失神の原因精査のために行う電気生理検査はクラスⅡb

とされている8).

③治療

 失神を伴うARVCに対する治療については,ESCの失神治療ガイドラインでは,若年者や広範囲の右室機能障害,左室への浸潤,多形性心室頻拍,遅延電位,イプシロン波,突然死の家族歴等突然死の危険因子を有する場合,ICD治療はクラスⅡaとされている8).上記所見がない失神を伴うARVCでは,植込み型ループレコーダーによる診断が推奨されている.また,ACC/AHA/

ESCのガイドラインでは,突然死予防の観点から原因不明の失神を伴うARVCへの ICD治療はクラスⅡaとされている317).

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失神の診断・治療ガイドライン

7 弁膜症

 心臓弁膜症による失神は,他の原因が除外された時に診断されることが多く,確定診断に至ることは困難である.主に,(1)大動脈弁狭窄症,(2)僧帽弁狭窄症,(3)僧帽弁閉鎖不全症,(4)感染性心内膜炎により失神が生じる.

1 大動脈弁狭窄症

①病態生理

 主に運動中に末梢血管抵抗が下がり,大動脈弁狭窄症があるために心拍出量は増えず,血圧が下がり失神が生じる322).頸動脈洞や左室の圧受容器に機能障害を生じ,低血圧が引き起こされる場合もある.一過性の心房細動,房室ブロックが失神を起こすこともある.

②診断

 失神と重症大動脈弁狭窄症があり,他の失神を来たす疾患がないときに,大動脈弁狭窄症に伴う失神と診断される.身体所見,心電図(左室肥大)や胸部X線写真(左室拡大,大動脈弁の石灰化や上行大動脈の拡大)でまず疑う.心エコー図や心臓カテーテル法により大動脈弁狭窄症の有無,重症度を決定する.大動脈弁口面積1cm2

以下あるいは連続波ドプラ法による圧較差が64mmHg

以上の時は重症大動脈弁狭窄症とする323).発作が危険であるために,運動負荷等での失神誘発は通常行わない.大動脈弁狭窄症に合併する不整脈により失神が出現することもあるので,ホルター心電図による不整脈の評価は重要である.

③治療

 内科的には安静を保つ.外科的に大動脈弁置換術(クラスⅠ)を行うか,やむを得ない場合は経皮経管的大動脈弁交連形成術(クラスⅡb)を行う.

④予後

 大動脈弁狭窄症で失神が出現した場合の予後は悪く,約3年で多数例が死亡する324).

2 僧帽弁狭窄症

①病態生理

 左房内に生じたボール状血栓が僧帽弁口を塞ぐことに

より失神が出現することがある.左房内血栓による塞栓の部分症状としても出現する.合併する頻脈性心房細動により心拍出量の低下が生じ,失神に至ることもある.

②診断

 僧帽弁狭窄症と左房内のボール状血栓の存在を明らかにする.身体所見,心電図,胸部X線に加え,心エコー法や心臓カテーテル法により僧帽弁狭窄症の有無,僧帽弁口面積,僧帽弁圧較差等の評価を行う.僧帽弁口面積1.5cm2以下を中等度有意狭窄とし,1cm2以下は重症僧帽弁狭窄症とする325).左房内血栓の評価も行い,緊急手術の適応を判断する326).

③治療

 外科的に左房内のボール状血栓の摘出を行う(クラスⅠ).僧帽弁狭窄が重症な場合は弁置換術もあわせて行う.

④予後

 塞栓症状はしばしば非可逆的である.十分な抗凝固療法を行うことにより血栓の予防は可能であるが,形成された心房内血栓に対し,抗凝固療法を行うことにより可動性を持つことがあるため,厳重な監視が必要である.

3 僧帽弁閉鎖不全症

①病態生理

 僧帽弁閉鎖不全に伴う失神あるいは突然死(重症逆流例で年間1.0~7.8%)327)の病態生理は不明なところが多く,確立されていない.僧帽弁閉鎖不全による左室容量負荷が不整脈を起こすという考えや,弁尖逸脱時に乳頭筋が機械的刺激を受けて心室性不整脈を起こし失神や突然死の原因となるという考えもある.

②診断

 失神と僧帽弁閉鎖不全症があり,他の失神を来たす疾患がないときに,僧帽弁閉鎖不全症に伴う失神と診断される.身体所見,心電図,胸部X線写真に加え,心エコー法や心臓カテーテル法により僧帽弁閉鎖不全症の有無,原因,重症度の評価を行う.失神の出現は必ずしも僧帽弁逆流の重症度と相関しないため,失神の予測は困難であるが,失神を起こす原因は主に不整脈と考えられるため,ホルター心電図による不整脈の評価は重要である.

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

③治療

 僧帽弁置換術・形成術の適応は一般に心不全症状や左室機能により決定され,失神の有無だけからは決定できない.本学会の弁膜症の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版)328)にあるように複数の因子を検討して適応を決定する.

④予後

 一般に心不全症状のない,左室機能の良好な重症僧帽弁閉鎖不全症は予後良好とされてきた.しかし,無症状であっても突然死が多いという報告が最近あり,今後十分な検討が必要である327).

4 感染性心内膜炎 感染性心内膜炎に伴う疣贅が塞栓を起こし,脳虚血症状として意識障害を起こし失神との鑑別が必要となる.感染性心内膜炎症例の10%が塞栓による脳虚血症状を起こす329).

8 先天性心疾患

 ここでは成人に到達した一般的な先天性心疾患の異常330)やその姑息あるいは根治手術と失神発作との関連を中心にまとめる.器質的心疾患のない症例に起こる失神発作と異なり,突然死の危険信号と考えられる.

1 病態生理 先天性心疾患の症例が失神発作を呈した場合には不整脈によるものをまず考える.先天性心疾患の修復術は伝導障害や徐脈を起こし,心房や心室頻拍の基質を形成する.短絡疾患のEisenmenger化は肺血管抵抗の上昇を来たして低血圧を招く.

①心房中隔欠損症(ASD)

 心事故は40歳台で起こり始め,60歳までに約40%に生じる.心房性不整脈のみで失神は起こりにくく,肺血管病変との合併により低血圧や失神発作を引き起こす.一方,手術後のASD患者は手術結果にかかわらず,心房粗・細動を起こす331). 術前あるいは術後の心房細動は手術の時期が遅ければより発生しやすく,術前に心房細動や粗動であった68%は手術後も洞調律に復すことはない332).修復術を施行された0~14歳の患者の長期間の追跡では,67%の患者が24時間心電図で異常調律を指摘され,45%に上

室性頻拍,39%に洞機能低下,17%に伝導障害を認め,4%の症例で房室ブロックのためペースメーカ植込みが必要であった333).

②心室中隔欠損症(VSD)

 無手術のVSD患者は両心不全による心室性不整脈や突然死を引き起こす可能性が高い334).25年以上の自然歴研究では,多くの患者が失神や重篤な不整脈を経験し,失神の既往と生命予後は強く関連していた.心室頻拍はEisenmenger症候群の18%,修復術後患者の5%,薬物治療を受けている患者の3 %に認められた334).Eisenmenger化は失神の重大なリスクとなる. 手術成功例でも数十年後には不整脈が出現する可能性があり,心筋切開線が心室性不整脈の原因となる.通常,房室ブロックは手術中に起こるが,術後多年月を経て進行する場合もある335).

③動脈管開存症(PDA)

 PDAの死亡率は生後数か月以内が高く,1歳までで30%,20~30歳以上では1%となる336).左室肥大や肺高血圧症に伴うEisenmenger化が失神と関係する.

④心内膜床欠損症(ECD)

 術前あるいは術後を問わず徐脈性不整脈(洞不全症候群や房室ブロック)への進行が多く,これによる失神発作が起こりやすい337).

⑤大動脈狭窄

 大動脈狭窄・大動脈弁狭窄・大動脈弁上狭窄は同じ血行動態的な異常から失神を来たす.左心系閉塞性疾患は経時的に閉塞の程度が進行し,重症度が増して心拍出量が低下する.特に,失神は心拍出量の必要性が増大した時に起こる.左心系閉塞性疾患は左室肥大となり,これは心室性不整脈による突然死の危険因子である338).

⑥Ebstein奇形

 心房性不整脈から失神を起こす.Ebstein奇形の50%の患者が副伝導路やWPW症候群を合併しており,短い不応期の副伝導路に心房細動を合併すれば失神や突然死を引き起こす339).

⑦Fallot四徴症(TOF)

 失神の既往のある成人TOFの患者のほとんどが,VSDのパッチ閉鎖術,肺動脈弁下狭窄切除術あるいは右室流出路のパッチ閉鎖術による完全修復術を受けてい

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失神の診断・治療ガイドライン

る.失神や突然死のリスクは心室性不整脈と関連し339),340),手術術式と強い関連がある341).失神の既往のある成人TOFの精査には,心室性不整脈に対する電気生理検査が必須である.

⑧大血管転移症

 完全大血管転移症で手術を受け生存しているのは心房内血流転換術(atrial switch operation)または大動脈血流転換術を受けた患者である.心房内血流転換術(MustardやSenning手術)後に失神を起こす機序には,不整脈と心拍出量減少の2つがある.患者はしばしば運動と関連した失神を起こす.さらに低心拍出量の上に,徐脈や頻脈が合併し失神や突然死のリスクを増加させる. Mustard手術後の6%342)に失神発作があり,79%343)に不整脈が発生する.洞機能障害が術後10年の累積で35%にまで達し,電気生理検査が原因精査に有効である.ペースメーカ植込みによっても突然死は抑制されない342).術後に起こる心房粗動や心房内リエントリー性頻拍は生存者の4~16%に認められるが342),344),これは心臓手術に伴う瘢痕組織による伝導障害が心房内リエントリー性頻拍の基質となるためである345).心房性不整脈は失神症状と強く関連しているが,ブロックや心室性不整脈も失神や突然死の危険因子となる. 大動脈血流転換術(Jatene手術)が行われた患者では不整脈の報告はなく,電気生理検査にもわずかな異常がみられる程度である344).この手術の合併症は,左室流出路より右室流出路の閉塞が多い346).術後1年目の死亡原因は主に先天的な冠動脈異常に関連している347).

⑨修正大血管転移

 修正大血管転移では失神に関する十分な数の報告はない.しかし,完全房室ブロックの合併が手術の有無にかかわらず29~31%にみられる348),349).さらに,心房細動や粗動も36%にみられ350),死亡した患者の4人のうち2人に心房細動の病歴があった.心房内血流転換術を受けた患者と同様に右室機能不全を認め351),どのような頻脈性不整脈でも失神や失神前症状を起こす可能性がある.

2 診断 先天性心疾患がどのような手術(特に切開や縫合の部位)を施行されたかについて詳細な情報が重要である. 先天性房室ブロックも他の先天性心疾患を伴わないものがある352).通常の心電図,ホルター心電図で診断で

きない場合には,イベントレコーダーや植込み型ループレコーダーを利用する353).心エコー検査は非侵襲的な病態確認に,心臓カテーテル検査・造影検査は血行動態把握,先天性冠動脈異常293),354)や血管走行異常355)による失神発作の診断に有用である.

3 治療・予後 失神は突然死とも関連する場合が多いので,原因を探求して,それに対する治療を行う.修復術が不完全であった場合には,その修復目的に再手術が行われる.徐脈性不整脈にはペースメーカ,頻脈性不整脈にはカテーテルアブレーション,ICD植込みを行う356),357).

9 その他の心疾患

1 心臓粘液腫

①概念と病態生理

 原発性の良性心臓腫瘍(心臓腫瘍全体の75%)のうちの約50%を心臓粘液腫が占める.あらゆる年齢層にみられ358),左房(75%),右房(18%)の順に多く,心室での発生は少ない(左室4%,右室4%)359). 腫瘍の脳塞栓により意識障害を引き起こしたり,腫瘍が弁口を閉塞し一過性に心拍出量が低下し失神を生じたりすることがある.左房粘液腫は僧帽弁狭窄症に,右房粘液腫は三尖弁狭窄症に類似の血行動態を示す.

②症状

 多彩な臨床症状が特徴的である.全身症状の他,塞栓症状,心腔閉塞症状等がみられる.粘液腫で産生されるIL-6(インターロイキン6)自体の作用あるいは過剰産生に対する反応である種々の全身症状(発熱・易疲労感・体重減少・貧血・関節痛・発疹等)が出現する360).塞栓症は心臓粘液腫の約45%で発生し361),脳・腎・四肢で起こりやすい.左房粘液腫の塞栓症の約50%は一過性脳虚血発作・てんかん・偏頭痛・脳梗塞等の中枢神経症状として発現する.

③検査

 身体所見では,I音亢進(僧帽弁閉鎖の遅延による)と I音分裂(僧帽弁口からの腫瘍の突出による)が聞かれることがある.全収縮期雑音と拡張期ランブルを聴取するが,体位によって心雑音が大きく変化する点が特徴である.左房粘液腫が左室内に陥頓し,心内膜にあたる

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

際に発生する叩打音(tumor plop)が拡張早期に聴取される. 経胸壁心エコーや経食道心エコーにより腫瘍の大きさ,付着部位,性状,可動性について詳細な観察が可能である.造影CTやMRIからも有用な情報を得ることができる.腫瘍が存在する心腔内へのカテーテル挿入は腫瘍塞栓の危険性もあり,カテーテル検査と造影検査の意義は合併する心疾患の検索に限定される.

④治療と予後

 良性腫瘍であるが,弁口陥入,血行動態の悪化,塞栓症あるいは不整脈により死に至ることもあり,診断がつき次第速やかに外科的に摘出を行う(クラスⅠ).

2 心タンポナーデ

①概念と病態生理

 心嚢液貯留により心膜腔圧の上昇を来たし,静脈還流障害と心室充満障害が発生する.その結果,心拍出量が低下した状態を指す.急速に貯留した場合には急激な心拍出量の低下によりショック,失神の原因となり得る.

②原因疾患

 悪性腫瘍,特発性,尿毒症が主要な原因とされるが,心外傷後,開心術後の心タンポナーデに加え,インターベンション治療時の心タンポナーデが増加している362),363).

③症状

 心タンポナーデが急激に発生した場合にはショックとなり,意識消失を来たすことがある.緩徐に生じた場合には心不全の症状に類似し,呼吸困難・起坐呼吸・全身倦怠感の左心不全症状や,頸静脈怒張・肝うっ血等の右心不全症状を伴う. 他覚所見としては,急性発症の心タンポナーデの時にみられる収縮期血圧低下・静脈圧上昇・心音微弱(Beck

の三徴)がよく知られている.頻脈・呼吸数増加・奇脈等も認められる.

④検査

 心電図では洞頻脈・低電位・電気的交互脈等がみられるが,特異的ではない.胸部X線写真では心タンポナーデによるショックの際には,心不全と異なり肺野は正常であることが多い.心エコー検査では,吸気時の右室径拡大と左室径の減少,収縮早期の右房虚脱および拡張早期の右室虚脱が出現し,さらに進行すると収縮早期の左

房虚脱が発生する.

⑤治療と予後

 確定診断後に心膜穿刺をただちに行い心嚢液をドレナージする(クラスⅠ).穿刺はエコーガイド下に行うことが望ましい.出血による急性心タンポナーデの場合には緊急開胸を行い外科的なドレナージを要する場合もある.急性心タンポナーデの短期予後は早期診断と早期治療で決定され,長期予後については心タンポナーデの原因疾患に依存する.

10 大動脈疾患

 失神を起こす大動脈疾患で最も重要なものは大動脈解離である.その他,動脈硬化や大動脈炎症候群に伴って大動脈弓から脳へ灌流する動脈が狭窄や閉塞を起こし,失神する場合があるが364),大動脈炎症候群に伴う失神はまれである(数%の頻度).したがって,本改訂版では大動脈炎症候群には触れないこととした.

1 大動脈解離

①病態

 大動脈解離による失神は以下の原因で起こる365). (1) 心原性 心タンポナーデ,重症大動脈弁逆流,冠

動脈閉塞 (2) 血管性 分枝閉塞・狭窄による脳血流低下.大動

脈圧受容器反射 (3)神経原性 痛みによる迷走神経反射 (4)出血性 胸腔内出血

②診断

1)症状 突然発症の激烈な胸背部痛が典型的症状である.その他の症状として,失神(意識障害),心窩部痛,胸膜刺激症状,片麻痺,腰痛,下肢痛等がある. 急性大動脈解離で失神を来たす頻度は約9~13%366)-368)

と報告されているが,意識障害を含めるとさらに高率である369).失神があると死亡率が増加する.失神の約92%がStanford A型である366).胸背部痛を示さず非典型的症状で発症した場合,診断が遅れ死亡率の増加につながる368).

2)身体所見と検査 高血圧が病態の基本であり,来院時の血圧は高値であ

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失神の診断・治療ガイドライン

ることが多いが367),ショックを呈することもあり一様ではない369).血圧は解離の進展部位に応じて上下左右差が出るため,必ず両側上下肢で測定する. 胸部X線写真では上縦隔陰影の拡大,下行大動脈陰影の左方への偏位,胸水,心拡大等に注意する.心電図は異常所見を示さないことも多いが,以前の心電図と比較できる場合,Stanford A型では心嚢液貯留,冠動脈への病変進展等による変化が半数で観察される370). 断層心エコー図検査による内膜フラップの検出は解離の存在を示唆するが,アーチファクトとの鑑別に注意を要する365).傍胸骨左縁から上行大動脈をみるだけでなく,胸骨上アプローチによる大動脈弓部の観察,腹部アプローチによる腹部大動脈の観察も同時に行う.心嚢液の有無を確認し,壁運動の異常があれば冠動脈への解離進展を疑う.カラードプラでは大動脈弁閉鎖不全の合併の有無を調べる. CTは確定診断に最も有用であり,緊急時に短時間で検査可能である.単純CT,造影CT早期相および後期相を撮ることを基本とする.

③治療

 外科治療,降圧治療を含めた初期治療を行う(クラスⅠ)371).

11 肺塞栓症,肺高血圧症

1 肺塞栓症 塞栓子が何であれ肺塞栓症においては失神を来たし得るが,最も遭遇する機会の多い肺血栓塞栓症による失神について記述する.

①病態生理

 失神を呈したものの割合は14~27%372),373)とされる.肺血栓塞栓症での失神は,特に広汎型肺血栓塞栓症において血栓による肺動脈の閉塞が原因で急性右心不全,心拍出量の急激な低下,体血圧の低下から脳血流の低下を来たすことで生じる.意識レベルの低下を来たすような広汎型肺血栓塞栓症例のなかにはそのまま心停止に進展するものもあるが,失神のみで生存するものは,肺動脈内で血栓が移動あるいは破砕溶解することで肺動脈の閉塞が不完全となり血流が再開し脳血流が回復することによる374). その他,急激な肺動脈への血栓閉塞による心筋への伸展刺激から頻脈性不整脈や徐脈性不整脈が誘発される可

能性や,血管迷走神経反射(Bezold-Jarisch反射)による血圧低下の可能性が想定されている375),376).

②診断

 失神とともに呼吸困難,胸痛といった症状の有無や,低血圧,頻脈,頻呼吸,頸静脈怒張,Ⅱ音肺動脈成分の亢進といった所見の有無,危険因子の有無を確認する.急性肺血栓塞栓症では安静臥床後の初めての起立,歩行,トイレでの発症が多い377).心電図,胸部X線,動脈血ガス,Dダイマー測定,心エコー図,下肢静脈エコー等を行う.心エコー図における右室拡張,右室壁運動低下,三尖弁逆流速度から推定される肺動脈圧上昇等の右心負荷の存在や,下肢静脈エコーでの静脈血栓の存在は肺血栓塞栓症の可能性を高める. 確定診断は造影CT,肺血流シンチグラフィー,肺動脈MRA,肺動脈造影による.CTは肺動脈内血栓のみならず下肢,骨盤,腹部を同時にスライスすることで,塞栓源の検索にも有用である.

③治療

 主な治療は,肺動脈内血栓の溶解・除去,再発防止,呼吸循環管理である378).

1)薬物治療 抗凝固療法は予後改善効果や再発率低下効果が明らかであり,禁忌でない限り全例に対して行う(クラスⅠ).急性期の抗凝固薬としては,従来から用いられてきた即効性のある未分画ヘパリンの静脈内投与あるいは皮下投与に加えて,最近,フォンダパリヌクスの1日1回皮下投与による治療が我が国でも承認された379).同時にワルファリン経口投与を併用し,ワルファリンが治療域にコントロールされたことを確認後にへパリンあるいはフォンダパリヌクスを中止する.慢性期のワルファリン継続期間は肺血栓塞栓症を生じた危険因子の種類によって決定する. 血栓溶解療法(我が国ではモンテプラーゼのみ保険承認あり)は,ヘパリンによる抗凝固療法単独治療に比べ,より早期に肺動脈内血栓の溶解が得られる.血栓溶解療法の適応は,急性肺血栓塞栓症の急性期で,ショックや低血圧が遷延する血行動態が不安定な例である(クラスⅠ).血行動態が安定している症例でも,心エコー上,右室拡張や壁運動低下といった右心負荷所見を認める場合には血栓溶解療法で治療する(クラスⅡa).

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2)カテーテル治療(クラスⅡb) 血栓を破砕吸引して血流を再開させるカテーテル的血栓破砕吸引療法が積極的に試みられる.しかし治療中に血栓が血管遠位部や別の血管を閉塞することで血行動態が増悪することもある.

3)呼吸循環管理 低酸素血症に対しては酸素投与を行い,経皮的酸素飽和度を90%以上に維持する(クラスⅠ).必要に応じて気管内挿管を施し人工呼吸器管理を行う(クラスⅠ).ショック,低血圧に対しては昇圧薬や経皮的心肺補助装置(PCPS)を用いる.

4)下大静脈フィルター 下大静脈フィルターは下肢あるいは骨盤内の静脈血栓が遊離して肺動脈に流入するのを防ぐ.永久留置型と非永久留置型(一時留置型と回収可能型)に分けられる.絶対的適応は,急性肺血栓塞栓症や深部静脈血栓症を有する症例のうち(1)抗凝固療法禁忌例(クラスⅠ),(2)十分な抗凝固療法下に再発する例(クラスⅠ)である.

5)外科的治療 適応例では人工心肺を用いた体外循環下に肺動脈を切開して直視下に肺動脈内の血栓摘除を行う(推奨度は重症度によって異なる).

④予後

 失神を呈した肺血栓塞栓症例は重症例が多く,失神なし群と比べ肺動脈造影で50%以上の閉塞を認めた割合は82%対28%(p<0.001),低血圧を認めた割合は76%対12%(p<0.001),心停止を来たした割合は24%対1%(p<0.001)と有意に失神あり群で高率であった380).肺血栓塞栓症における失神は30日死亡率の独立した予後規定因子である381).

2 肺高血圧症

①病態生理

 肺高血圧症では運動時に肺動脈圧が上昇しやすいため,一回駆出量は増加せず,主として心拍数を増加させることで心拍出量を維持している.肺高血圧症に伴う失神発作は運動誘発性右心不全によって生じる382).その他,頻脈性不整脈や徐脈性不整脈,血管迷走神経反射によっても失神を来たす383).

②診断

 安静臥位での平均肺動脈圧が25mmHgを超える場合を肺高血圧とする384). 失神以外に労作時息切れや呼吸困難,易疲労感,動悸,胸痛,咳嗽を生じる.低酸素血症に伴うチアノーゼ,頸静脈怒張,Ⅱ音肺動脈成分の亢進,心雑音(三尖弁閉鎖不全や肺動脈弁閉鎖不全)等の肺高血圧に伴ってみられる身体所見の有無を確認する. 心電図では右室肥大の変化が現れる.心エコーでは右室・右房の拡張と,肺高血圧が高度の場合には心室中隔の左室側への偏位,三尖弁逆流速度の増加が認められる. 肺高血圧症が疑われた症例に対しては,胸部造影CT,MRI,肺換気血流シンチグラフィー,右心カテーテル検査,肺動脈造影(高度肺高血圧では急性増悪の危険あり)等の精密検査により重症度の判定や原因疾患の同定を行う.

③治療

 ここでは肺動脈性肺高血圧症の治療を中心に述べる385).

1)在宅酸素療法(クラスⅠ) 長期使用に伴う予後改善効果については明らかでないが,低酸素血症を認める症例では低酸素性肺血管攣縮とそれに伴う肺血管リモデリングの進行防止を期待して用いられる.

2)抗凝固療法(クラスⅡa) 禁忌でない限り原則として抗凝固療法を全例に対して行う.エポプロステノール持続静注療法下では喀血といった出血性合併症の問題が指摘されており,減量もしくは中止する.

3)血管拡張療法①Ca拮抗薬(クラスⅡa) 欧米の研究で,急性負荷試験での反応群(約25%)においてのみCa拮抗薬の大量投与が予後を改善することが示されている386).②エポプロステノール持続静注療法(クラスⅠ) エポプロステノールは強力な血管拡張作用と血小板凝集抑制作用を有し,中心静脈カテーテルと注入用ポンプを用い持続静脈内投与される387).投与量は1~2ng/kg/

分の微量より開始し,状態をみながら漸増する.エポプロステノール持続静注療法は特発性肺動脈性肺高血圧症

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失神の診断・治療ガイドライン

の予後を大幅に改善した388).ただし,右心不全の急性増悪期の使用は病態悪化の危険性があるため原則禁忌であり,カテコラミン等を用いた右心不全の治療を優先する.③�プロスタサイクリンアナログ(ベラプロストナトリウム:クラスⅡb) 経口で投与可能な長時間作用型のプロスタサイクリンアナログが使用される.60μg/日 分3から開始し,状態に応じて最大180μg/日まで漸増する.徐放性製剤では120μg/日 分2から開始し,状態に応じて最大360μg/日 分2まで漸増可能である.④�エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタン,アンブリセンタン:クラスⅠ) エンドセリン受容体拮抗薬は肺動脈収縮抑制のみならず,血管平滑筋増殖および線維化抑制作用も期待されている.経口薬ボセンタンはETAとETB両受容体の拮抗薬であり,62.5~125mg/日 分2から開始し,状態に応じて最大250mg/日まで増量する.アンブリセンタンは選択的ETA受容体拮抗薬であり,5mg/日 分1を経口投与する.10mg/日まで増量可能である.⑤�ホスホジエステラーゼ(PDE)V阻害薬(シルデナフィル:クラスI,タダラフィル:クラスⅡa) PDE V阻害薬は肺高血圧症患者における強力な肺動脈拡張作用を有する.シルデナフィルは,60mg/日 分3,タダラフィルは40mg/日 分1を経口投与する389),390).

4)肺移植(クラスⅠ) 内科的治療に抵抗し進行する症例では移植を考慮せざるを得ない.生体部分肺移植が成人例に対しても試みられ,成功例が報告されている391).

5)心房中隔裂開術(クラスⅡb) 心房内での右左シャントを形成することで右室圧を低下させ,左室前負荷を増やして心拍出量を増加させることが望める反面,右左シャントにより動脈酸素分圧は低下する392).根本的な治療法とはなり得ず,あくまで移植までの橋渡し的治療である.

④予後

 肺高血圧症は実に様々な原因によって生じ,予後も原因によって大きく異なる.肺動脈性肺高血圧症の基礎疾患の中ではHIV感染症が最も予後不良であり,特発性肺動脈性肺高血圧症,膠原病が続き,Eisenmenger症候群は予後が良いとされる.特発性肺動脈性肺高血圧症の予後は,確定診断からの平均生存期間が約3年,5年生

存率は約30~40%と極めて不良とされたが393),最近の治療薬の開発導入に伴って予後の改善傾向が報告されており,エポプロステノールの導入後,3年生存率は43%から63%へと向上し394),さらに改善しつつある.

12 小児の失神

 小児においても失神の原因が成人と大きく異なることはない.小児特有の失神としては,以下の項目が挙げられる.

1 反射性失神,自律神経失調症,起立性低血圧

 小児,特に思春期の失神の原因として最も多い.反射性失神の項を参照のこと.

2 モヤモヤ病 内頸動脈終末部,脳底動脈が進行性に狭窄,閉塞を来たす疾患で395),脳虚血に伴う失神を来たす.外科的に直接・間接血行再建術396)(クラスⅠ)を行う.生命予後は良好であるが,てんかん,高血圧等の合併症が起こり得る.

3 先天性房室ブロック 先天性房室ブロックでは徐脈,ひいては心停止により失神を起こす可能性がある.発症機序の実験モデルによる検討397)では,Ca2+電流の抑制が直接的もしくは間接的に房室ブロックを起こすことが考えられる398).治療は房室ブロックの項を参照のこと.

4 家族性洞不全症候群 家族性のものは小児期,若年から症状が出現することが多い399).洞不全症候群の項目参照のこと.ペースメーカを植込めば予後は良好である(クラス I).

5 心房頻拍,心房粗動,発作性上室頻拍 小児では房室伝導が良好で,心房頻拍,心房粗動の1:1伝導を起こし,失神することがある.また発作性上室頻拍も頻拍レートが速いものでは,失神の可能性がある.抗不整脈薬の投与,もしくはカテーテルアブレーションを行う.詳細は頻脈性不整脈の項を参照のこと.

6 QT延長症候群,QT短縮症候群,カテコラミン誘発性多形性心室頻拍

 これらの疾患は,心室頻拍,心室細動,torsade de

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pointes等の心室性不整脈により失神を起こす可能性がある.詳細は頻脈性不整脈の項を参照のこと.

7 先天性心疾患術後不整脈 先天性心疾患術後には洞機能不全,房室ブロック,心房粗動,心室頻拍等種々の不整脈が起こることがある.術後症例では心機能が低下していることがあり,心不全,失神,突然死等を起こしやすい.それぞれの不整脈は心電図,ホルター心電図で診断できる.

①Senning術,Mustard術後

 Mustard術後には10年後には接合部調律,促進性心室調律等が60%を占める400).Senning術後でもほぼ同等と報告され,123例のMustardまたはSenning術後の患者で心房頻拍の合併がある例では洞徐脈は重症で,12%が死亡し,ペースメーカが15%に必要であった401).

②Fontan術後

 Fontan術 後 や 上 下 大 静 脈 肺 動 脈 吻 合(Total

cavopulmonary connection:TCPC)術後では洞機能不全の可能性が高いが,心外導管を用いたTCPCでは洞機能が比較的温存される402),403).

③Fallot四徴症術後

 Fallot四徴症術後例では右室切開の影響で心室性不整脈の発生が多い.三枝ブロック,心室期外収縮,右室血行動態悪化(右室圧≧60mmHg)等が遠隔期突然死の危険因子となる404).これ以外にも,手術時年齢,手術が行われた年代,血行動態,心拡大の有無,心機能,伝導障害の有無,心室性不整脈の有無等が心室頻拍の発生に関与する.突然死が約5%にみられる405).

④その他の先天性心疾患術後の予後

 心室中隔欠損術後は2%335),両大血管右室起始症術後406)

や,単一肺動脈を合併する総動脈管症術後では18%407)

に遠隔期突然死が起こるとの報告もあり,このうちのかなりの例が心室頻拍によるものであると推測されている. 先天性心疾患術後症例では遠隔期に完全房室ブロックとなり,失神・突然死を来たすことがある408).術後一過性に完全房室ブロックとなった症例,完全右脚ブロックに左軸偏位を合併する症例は注意が必要である.

8 冠動脈奇形

①Bland-White-Garland病,冠動静脈瘻

 Bland-White-Garland病は左冠動脈が肺動脈から起始するもので,失神で発見されるものは多くはない.冠動静脈瘻も失神を起こすものは少ない.

②冠動脈起始異常

 冠動脈が大動脈と肺動脈の間を走行することにより,運動中に突然心筋虚血を起こす.冠動脈奇形は若年者運動中の突然死の症例に高率に認められ,45%の症例で胸痛,失神等の症状が認められる409).心電図,運動負荷テスト,心エコーで左心機能評価等を行っても異常を認めることはない.心エコー図で冠動脈起始を注意深く観察するか,造影CT検査を行い診断する.外科的治療を行う(クラス I).

9 心筋炎 心筋の急性炎症による急性循環障害,房室ブロック,心室頻拍,心室細動等の不整脈により失神を起こす.突然死した若年者剖検心の273例中27例(10%)が心筋炎で,このうち2例は失神が主症状であった410). 治療法は成人の心筋炎と同様である.クラスⅠ1. 劇症型に対する心肺補助循環411),大動脈内バルーンパンピング

2. 房室ブロックに対する一時ペーシング3. 低心拍出量に対するカテコラミン,ホスホジエステラーゼ阻害薬

クラスⅡa

1. 心室頻拍,心室細動に対する抗不整脈薬2. 抗ウイルス薬3. γグロブリン大量療法クラスⅡb

1. ステロイドパルス療法クラスⅢ1. 非ステロイド系抗炎症薬

 小児心筋炎の24%が死亡もしくは心移植が必要であったとの報告があり,予後は不良である412).

10 川崎病 川崎病の急性期に失神を起こすことはなく,遠隔期にも失神を主症状とすることは少ない.多くは遠隔期に起

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こる虚血性心疾患後の心室性不整脈294)によるものである.冠動脈造影で冠動脈瘤,冠動脈瘤石灰化,広範囲なsegmental stenosisを伴う場合には川崎病冠動脈瘤の後遺症を考える. 川崎病遠隔期の冠動脈狭窄に対しては内胸動脈を用いた冠動脈バイパス術,PCI,ロータブレータ,ステント留置等が行われる(クラスⅡa).死亡率は極端に減少し,遠隔期の予後は比較的良好である413).

11 その他 以下のものは本ガイドラインでいう失神には該当しないが,小児の失神の鑑別上重要なので概説する.

①てんかん(欠神発作)414)

 小児の失神類似の症状を来たす病態では1~8%と比較的多く,脳波で典型欠神発作の発作時に3c/sの棘除波律動を認める.エトサクシミド,バルプロ酸等の抗てんかん薬を用いる(クラスⅠ).生命予後は良好である.

②ケトン性低血糖

 空腹,飢餓等に伴い低血糖となり,意識障害,痙攣等を起こす.2~5歳の,低出生体重児,痩せた児に発症することが多い.血中のアラニン濃度が低く,アラニンを投与すると血糖が上昇することより,糖新生系の異常ではなく,糖新生のための基質(グリコーゲン等)が不足していることが原因とされる415). 発症時の血糖が低く,ケトン体が増加しており,血中のインスリン低値,成長ホルモンやグルカゴン,コルチゾール,遊離脂肪酸の高値を示す. 発症時にはグルコースの点滴を行い(クラスⅠ),予防法として高炭水化物,高蛋白食,飢餓時間を少なくする.大多数は8~9歳に自然治癒する.

13 入浴と失神

1 はじめに 入浴は,身体の清潔保持のため,古くから世界中で行われてきた生活習慣である.我が国はアジア北東部に位置し,住民は冬季に寒冷に暴露されるため,入浴は身体の清潔保持のみならず身体を温める効用を兼ねていた.したがって,欧米では入浴温度は40℃以下であるが416),我が国では冬季には43℃,夏季には41℃と高温である416),417).また,入浴は楽しみを伴う習慣であり(例:温泉旅行),代替医療の要素をも兼ねていた(例:湯治).

集団入浴(銭湯)も我が国独自の文化である.日本人の入浴時間(脱衣,洗体を含む)は平均20分,入浴頻度は週に平均5回である417).若年男性では,入浴後0.3から0.5℃の体温上昇で満足感が得られ,体温上昇の効果は2時間持続する418).日本人の入浴習慣が頻回になったのは第二次世界大戦後であり,経済成長(各家庭に浴室が普及)や燃料の変化(薪から石炭,石油,ガスに,さらに自動化)が主な理由である.核家族化によって,家庭内で不定期な時間にも1人で入浴する例が多くなりつつある. 一方,我が国には入浴に伴う死亡事故が多く,従来は心疾患や脳血管障害等が死因と考えられてきた.近年,高温浴による体温上昇が,失神(熱失神:heat

syncope),ショックや意識障害(熱射病:heat stroke)をもたらし,入浴中の死亡事故の原因となる可能性が推測されている.この立場によれば,入浴事故は熱中症(heat illness)の範疇に含まれる.

2 入浴中の急死 図6に厚生労働省人口動態調査による「家庭内溺死」の経年変化を示した.溺死者の大部分が高齢であることから,発生場所のほとんどは浴室と推測される.年間3,000人以上の家庭内溺死は死亡診断書に死因が「溺水」と記載された例に限られ,死因が心疾患や脳血管障害と記載された場合を含めると,入浴中急死の実数はこの数倍にのぼるものと推測された.2005年に大阪府で行われた病院外心肺停止直前の活動調査では,入浴中の心肺停止が54.5人 /(10万人×時間)と睡眠(6.2人),労働(1.1人),運動(10.1人)と比較して最も高く,その発生は気温低下と相関していた419).なお,WHOの世界統計(World Statistics)に掲載された各国の溺死者数を比較すると,我が国は有数の溺死国である.他国では小児や若年者の溺死が多いことと比べ420),高齢者が溺死のほとんどを占めている(図7).世界統計に示された我が国の高齢者の溺死は,入浴中の溺死を意味し,我が国に特有な現象である.なお,北欧の高温浴であるサウナ浴中の急死はまれである421).フィンランドの年間急死6,175人の中で,102人(1.7%)のみがサウナ入浴から24時間以内の死亡であったが422),我が国の入浴中急死は病院外心肺停止の10%以上を占めている.サウナ浴が死亡事故につながらない理由は,溺水が発生しないことによるものと考えられる. 入浴中急死は我が国の法医学専門医にはよく知られた現象で,高齢者を中心に冬季に多く発生し,死因は心臓病,脳血管障害,溺水と考えられてきた423).1982~

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

1986年の大阪府の剖検例1,230人の17%は入浴中の急死であった424).秋田県では病院外心肺停止の8~10%が入浴中に発生している425),426).1987~1988年の東京都監察医務院の調査では,検案事例14,366例中の764例(5.3%)が入浴中の死亡であり,このうち88%が病死,12%が外因死と判定された.病死扱いで剖検を行った143例中83例(58%)は虚血性心疾患,外因死扱いの剖検70例中53例(75.7%)が溺死と判定された427).1995~1998年の調査では,死亡の発生場所は浴槽内が90%で

あること,内因死は85.5%,外因死は13.1%(心血管系疾患が6割,脳疾患が2割,溺死が1割)と内因死が多いことが報告された. 一方,法医学的な死因判定の正確性に疑問を呈する報告も認められる.検案では内因死(特に虚血性心疾患)と判定される例が多いが,剖検では外因死(特に溺死)が多い傾向があること,内因と外因の判定に評価者の個人差が大きく,検案時に70%の例を虚血性心疾患と診断する法医学専門医がいる一方で,約半数を溺死と診断する専門医も認められた428).すなわち,入浴中急死の法医学的な死因判定には問題が含まれている.

3 救急医療からの観察:失神から心肺停止への連続性

 東京都では入浴中の市民の救急要請(急病)が1995年には年間に約2,500件あり,心肺停止はそのうち25%であった.心肺停止とその他の急病を比較すると,ともに高齢者に多いこと,冬季に多いこと,等の共通する特徴を認めた429).また入浴場所を検討すると,公衆浴場では自宅浴室に比較して心肺停止の発生頻度が少なかった.また急病の多くは一過性意識障害が主訴であった430),431).救急隊長へのアンケート調査から,心肺停止には至らないが入浴中に自力で浴槽から脱出できずに救

図6 家庭内溺死年次別・年齢別推移(人口動態統計より)

5000

4500

4000

3500

3000

2500

2000

1500

1000

500

0

1956

1958

1960

1962

1964

1966

1968

1970

1972

1974

1976

1978

1980

1982

1984

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

2010

(人)

(年)

65~45~6415~445~140~4総数

図7 各国の年齢別の溺死率(人口10万人あたりの溺死数、WHO統計2004年より引用)

500045004000350030002500200015001000500

0

オーストラリア

フランス ドイ

ツイギリス

アメリカ 日本

0~14歳

15~59歳

60歳以上

(人)

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失神の診断・治療ガイドライン

助を要した傷病者(要救助)が多数存在することが明らかとなり,これらの傷病者は救助により心肺停止から免れたものと考えられた431),432).東京都で2000年に実施された大規模前向き調査では,入浴中の救急要請の約半数が心肺停止,約25%が要救助の傷病者であり,後者の主訴の90%は意識障害であった.病院に搬送された要救助の傷病者では,心電図の虚血性変化や頭部CTの明らかな異常が検出されることはまれであり,約半数の患者が診療の後に帰宅を許可されていた433).以上から,入浴中に発生した一過性の意識障害が本病態の特徴であり,救助により体温が低下すると意識障害が改善することから,高温入浴による熱失神(環境温度上昇による血管拡張の結果生じる失神)が病態の本質であり,救助が遅れると体温がさらに上昇して熱射病となり,血圧低下や溺没により,心肺停止に至るものと推測された.なお,この調査の一環として,検案の体制が最も充実している東京都23区(東京都監察医務院)の入浴中急死発生数から全国の入浴中急死数を推定する作業が行われ,2000年には14,000人の入浴中急死が発生している状況が推定された.

4 入浴と失神 入浴は温熱負荷と水浸負荷(水圧,浮力)の影響を生態に及ぼす.前者は水温により高温浴(42℃以上),温浴(39~41℃),微温浴(37~38℃),不感温浴(34~37℃)に区分され434),水温が体温より高ければ熱失神を誘発する因子となるが,さらに自律神経系の反応,水圧による体表静脈の圧迫435),年齢等の因子により,入浴時の血行動態は修飾を受ける.水温40℃(10分)から47℃(3分)の入浴負荷時の血行動態の報告では,水温が高いほど,被験者が高齢であるほど,心拍数増加と血圧上昇が認められたが,総じて生理的に危険な血行動態変化は認められなかった416),436),437).実際,水温41℃10分間の入浴は慢性心不全の治療にも用いられている438).これらの研究は安全性を配慮した条件で行われているため,生理的に危険な血行動態が認められなかったことは当然ともいえる.また我が国の一部の高齢者は,さらに過酷な条件での入浴を習慣としている可能性がある.42℃5分間の入浴で,血圧が89mmHg低下した81歳男性の例が報告されている434).入浴事故に遭遇して救助された2例では,立位耐性の低下(血管迷走神経性失神)が認められ,これらの患者では高温負荷により血圧低下を来たしやすい可能性がある439).浴槽内での失神とは異なるが,洗い場での失神を説明する機序として,健常男性の41℃10分間の入浴を行ったところ,9人中4

人に立ちくらみを伴う起立性低血圧を認めたとの報告がある440).

5 危険因子と対策 入浴による失神や心肺停止が,熱中症による意識障害と溺水が関与して発生するとの仮説は,従来の心疾患,脳血管障害を死因とする説に対置するものであるが,冬季の日本人の平均的入浴温度が43℃であること,入浴中の体温は全身浴1時間で水温と同等となること,体温の生存限界は42℃であること等を考えると,検討に値する.高齢者が入浴事故に遭遇しやすいことは,高齢者と小児が熱中症に脆弱であることからも説明可能である. 入浴中の事故の危険因子には,入浴者側の要因として高齢や循環器疾患(大多数は高血圧),入浴方法の要因として高温入浴,長時間入浴,自宅入浴(発見が遅れる)等がある.入浴中の事故の予防には,入浴による体温上昇を軽度にする方法(低温浴,半身浴,短時間入浴,浴室暖房,シャワー等)や声かけ入浴(入浴時に家族が声をかける)がある. 浴槽内に溺没あるいは声をかけても反応が低下している状態で発見した場合には,ただちに浴槽から救出するか,傷病者の顎を風呂の蓋に乗せて溺没を防ぐ.浴槽から救出できない場合には浴槽の栓を抜く.これらと並行して救急要請,さらに一次救命処置を施す.

14 採血と失神

 採血時(献血を含む)の合併症の中で失神発作は最も頻度の高い合併症であり,血管迷走神経反応(vasovagal

reaction:VVR)によって発生すると考えられている.

1 発生頻度と原因 VVRは軽症と重症に分けられるが(表18),一般献血者を対象とした日本赤十字社の統計441)によると,献血時に発生した軽症VVRの発生頻度は0.76%(男性0.605%,女性1.012%),重症VVRの発生頻度は0.027%(男性0.021%,女性0.036%)である. VVRの発生は採血開始5分以内に発生することが最も多いが,採血中または採血前にも発生する.心理的不安,緊張もしくは採血に伴う神経生理学的反応によって発生する場合が多い.症状には個人差があるが,軽症から放置により重症に進行し,気分不良,顔面蒼白,痙攣,尿・便失禁に至る.

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2 危険因子

 VVRにおけるハイリスクと考えられる献血者には下記のような特徴がある.ハイリスクに該当する場合にはあらかじめ十分な注意が必要である.反射性(神経調節性)失神患者には,病歴で採血時失神の既往のある患者が比較的多い.(1)初回輸血(2)前回献血から間隔のあいた場合(3)若年(4) 失神の既往(強い立ちくらみや反射性(神経調節性)

失神の既往,過換気症候群を含む)(5) 献血に対する強い不安感や緊張感(採血時の合併症

経験)(6)強い空腹,食べ過ぎ,強い疲労感,睡眠不足(7) 体重・血圧等が採血基準の最低値・最高値(特に女性)(8) 献血後,身体に負荷のかかる予定(急ぎの移動,重

労働,激しいスポーツ等)(9)衣類等により体を強く締め付けた状態(10)水分摂取不足

3 予防と処置・対応 採血の方法,採血室の温度,環境,献血者の緊張度や体調が影響する.定期的に採血施行者の教育訓練を実施し,専門的知識を備え,応急処置について熟知し,迅速な対応を計ることが重要である.合併症を起こした献血者に対しては,その場で症状が回復しても注意を怠らず,電話等によりその後の状況を把握する. 処置および対応は,以下のように行う.(1)医師の診察を受けさせる(2) 献血者に安心させるように声をかけると同時に仰臥

位にして頭部低位にする(3)症状の改善がなければ採血を中止する(4) 衣服を緩め,足元を保温する(5) 脈拍を測定し,適宜血圧を測定する(6) 悪心がある場合はゆっくりと深呼吸させ,嘔吐に備

えて顔を横に向け容器等の準備を行う(7) 失神した場合は,名前を呼ぶ等声をかける

(8) 舌根沈下の恐れがある場合は,気道の確保を計る(9) 血圧低下が続く場合,医師の指示により適宜補液等

を行う(10) 回復後は水分補給を行い,十分休養させる(11) 医師の判断により帰宅させる.状況に応じてタク

シーを利用するか,付き添って送り届ける(12) 症状によっては医療機関を受診させる

Ⅲ 救急での対応

 失神患者は突然発生する一過性意識消失(transient

loss of consciousness)を主訴として,あるいは転倒に伴う外傷を主訴として救急部門(ED)を受診する.

1 救急部門(ED)における一過性意識消失と失神

 一過性意識消失はEDにおいて頻度の高い症候である8),23),24),442),443).来院時に意識消失を認める場合は意識消失が遷延していると認識されるので,一過性意識消失ではない.一過性意識消失は受診時に意識清明であることを原則とする.東京都内の救急搬送患者を対象とした後ろ向き研究では,急病患者の13%が一過性意識消失であった24).さらにEDを受診する一過性意識消失の半数以上は失神と報告されており,EDでは一過性意識消失の鑑別を重視しなければならない23),24).失神を疑う患者でも失神以外の病態と診断された患者の頻度は6~20%であり(表19)17)-19),24),26),33),444)-454),この中で主な鑑別診断はてんかん発作と精神疾患である8).しかし,くも膜下出血や消化管出血のような重篤な疾患を見逃してはならない. 一過性意識消失では転倒によって外傷を受傷することが少なくない4),12),455),456).原因の明らかでない転倒患者では一過性意識消失を疑わなければならない457).患者はしばしば一過性意識消失を「貧血」や「めまい」と表現する.これらの患者にも一過性意識消失を疑わなくて

40

表18 血管迷走神経反応の重症度分類(文献441より改変引用)

分類 症 状 収縮期血圧(mmHg)採血前→測定最低値

脈拍数(/分)採血前→測定最低値

呼吸数(/分)

軽症 気分不良,顔面蒼白,あくび,冷汗,悪心,嘔吐,意識消失,四肢皮膚の冷感

120以上→80以上119以下→70以上

60以上→40以上59以下→30以上 10以上

重症 軽症の症状に加え,けいれん,尿失禁,脱糞

120以上→79以下119以下→69以下

60以上→39以下59以下→29以下 9以下

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失神の診断・治療ガイドライン

はならない.

2 救急部門(ED)における失神患者へのアプローチ

 EDで失神の原因診断は容易でない.このため,原因が明らかでない失神患者ではリスクを層別化する必要がある8),252),451),458)-469).失神におけるリスク層別化では,心臓性突然死の予兆とされる心原性失神の可能性のみならず,重大な合併症や早期の治療を要するような病態,例えば,くも膜下出血,消化管出血に伴うプレショック状態,あるいは敗血症に伴うショック等を鑑別しなければならない.すなわち,EDでは心疾患をはじめとする器質的疾患を原因とする失神のリスクを評価する必要がある(表20,21).

1 病 歴 詳細な病歴聴取は一過性意識消失や失神の原因診断に役立つ(表21,22)8),26),252),447),451),458)-464),466)-469).運動中の失神,胸痛や呼吸困難を合併した失神,あるいは何

ら先行する症状のない失神はリスクが高いとされる.一方,悪心や体が熱くなるような感覚あるいは発汗は,血管迷走神経性失神で起こることが多い470),471). 失神は必ずしも立位で発生するとは限らない.19~55%は坐位で発生しており,坐位での失神は血管迷走神経性失神や起立性低血圧を否定する根拠とはならない(表19).仰臥位での失神は心原性失神が示唆され8),18),うっ血性心不全や心室性不整脈をはじめとした心疾患の既往や突然死の家族歴もリスクが高い8),252),451),458)-464).

2 バイタルサイン 頻呼吸,頻脈や徐脈,あるいは低血圧の持続は器質的原因を疑う根拠となる451),461),462),464).

3 身体所見 うっ血性心不全は予後不良を強く示唆する(表21)8),252),451),458)-464).うっ血性心不全の症候を見逃してはならない. EDを受診する失神患者の6~39%は転倒に伴って頭頸部に受傷しており,外傷を主訴に来院することが少な

41

表19 救急部門における失神患者

著者名 報告年 患者数 非失神患者*

%外傷の合併

%坐位失神

%

心電図による診断

%

失神の原因 , %

心原性 血管迷走神経性

起立性低血圧 不明

Day446) 1982 198 31.2 - - 3.1 9.1 43.0 - 13.4

Kapoor33),449) 1983/1986 204 3.4 35.8 - 5.9 26.0 4.9 6.9 47.5

Martin450) 1984 170 11.2 - - 1.9 4.1 37.1 7.7 37.6

Thakore454) 1999 100 18.0 - - 24.0 16.0 31.0 - 29.0

Ammirati17) 2000 195 20.0 26.2 - - 21.0 29.7 6.2 17.4

Sarasin18) 2001 650 6.3 - - - 10.6 37.2 24.3 14.2

Crane19) 2003 189 6.9 - - 12.4 7.4 40.7 3.7 -

Farwell448) 2004 421 17.6 - - - 17.1 45.6 - 22.1

Quinn451) 2004 684 0.9 6.7 - - 8.2 - - -

Shen452) 2004 263 7.2 33.0 49.5 - 28.9 34.2 - 58.2

Sun453) 2004 1778 - - - - 10.0 - - -

Suzuki24),26),465) 2004/2007 715 21.2 - - - 9.9 30.6 21.4 32.2

Bartoletti444) 2006 1124 10.0 - - - 5.7 - - -

Bringnole445) 2006 541 8.1 25.5 32.9 7.3 13.7 35.1 6.7 -

Elesber447) 2005 200 2.5 32.5 42.5 - 12.0 41.5 17.5 19.5

加重平均(95%信頼区間) - 13 (6~20) 23 (6~39) 37 (19~55)

8(4~13)

11 (8~14)

35 (30~40)

15 (7~23)

35 (30~40)

*失神を主訴に来院した患者のうち失神類似の病態と診断された患者

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くない(表19).転倒患者では失神の有無を病歴から明らかにする必要がある4),12),455),456).

4 12誘導心電図 心電図は失神患者の診療において必須の検査である.診断への寄与は4~13%であるが(表19),異常を認めれば心事故の発生が懸念されるので,すべての患者に施行すべきである.心電図で異常所見(表22)を認めず,その他の予後不良を示唆する因子がなければ心原性失神の可能性は否定的である450),472).

5 血液検査 一般的な血液検査は必須とは考えられていない8),156),

178),473)-475).しかし,ヘマトクリット<30%は1週間以内のイベント発生の予測因子である461),476).失神患者において心筋特異的トロポニンをはじめとした心筋マーカーや肺塞栓症鑑別のためのDダイマー検査をルーチンに行う根拠は明確ではない477)-479).近年,心不全の診断にBNPが使用されており,失神においてもBNP高値はリスクの高い失神を示唆するとされる32),462).また,失神自体がBNPを上昇させるとの報告もあるが,詳細な検討が行われていない480).このため,これらの検査

は施行目的を明らかにして,選択的に施行すべきである.

6 断層心エコー図検査 断層心エコー図検査は心原性失神のみならず,心疾患の既往や心電図異常が認められた失神患者においてルーチンに施行すべき検査である452),481),482).

7 頭部CT・脳波検査 脳神経系の異常を示唆する病歴や身体所見を認めない患者に対して頭部CT検査や脳波検査を施行する必要はない.ただし,神経学的異常所見を認める患者やくも膜下出血を示唆する頭痛を訴える患者,てんかん発作との鑑別を要する患者,あるいは頭頸部に外傷を合併している患者では,施行目的を明らかにし患者を選択して施行すべきである8),156),178),474),475),483).

8 立位負荷 失神患者の仰臥位でのバイタルサインは正常であることが原則である.バイタルサインの測定は仰臥位のみならず立位でも必要である.原因不明の失神患者において起立性低血圧はまれではない(表19).立位負荷によって起立性低血圧の有無を判定すべきである(起立性低血

42

表20  救急部門における失神患者のリスク因子

リスク因子

心疾患のリスク 非心疾患を含めたリスク

年 齢 高齢者 ○ ○ ○ ○性 別 男 性 ○ ○

病 歴

心疾患の病歴や所見(器質的疾患,不整脈,虚血,うっ血性心不全を含む)

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

突然死の家族歴 ○

自覚症状

失神に先行する症状なし ○ ○

失神に合併する胸痛 ○ ○ ○

失神に合併する呼吸困難 ○

所 見

バイタルサインの異常 ○ ○ ○ ○

心電図異常 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

神経学的巣症状 ○

貧血,循環血液量不足,便潜血陽性 ○ ○ ○

心筋トロポニン逸脱,BNP上昇 ○ ○

その他 失神に合併する外傷 ○

George

son460)

Saras

in463)

Martin252)

Quinn451)

Constan

tino459)

Grossm

an461)

Sun464)

Reed462)

Colivic

chi458)

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失神の診断・治療ガイドライン

表21 病歴チェックリスト心原性失神を示唆 反射性失神を示唆 その他

失神発生時体 位 □仰臥位 □立位または座位活 動 □運動中 □首の回旋や圧迫

□運動直後□排尿中または直後□排便中または直後□咳嗽中,嚥下直後

環 境 □医療処置中□精神的緊張□痛み□混雑した環境□長時間の立位□暑苦しい環境

失神前後の症状□胸痛・背部痛 □体の暑くなる感じ □頭痛□動悸 □発汗□呼吸困難 □悪心□前駆症状なし □腹痛

既往歴□うっ血性心不全 □糖尿病□心室性不整脈 □神経疾患□虚血性心疾患 □てんかん□その他の心疾患 □精神疾患□抗不整脈薬内服

家族歴□心臓突然死□遺伝的不整脈疾患

43

表22 心原性失神を示唆する心電図異常虚 血•急性の虚血を示唆する心電図所見が失神に合併不整脈による失神•陰性変時作用のある薬剤を使用せずに洞徐脈(<40/分),反復する洞房ブロックまたは洞停止(>3秒)•Mobitz II型 または3度の房室ブロック•上室または心室頻拍•心停止を来たすペースメーカ不全不整脈による失神の可能性• 2束ブロック•心室内伝導遅延 (QRS 幅≧0.12 秒)• 2度房室ブロック(Wenckebach型)•陰性変時作用のある薬剤を使用せずに無症候性洞徐脈 (<50/分),洞房ブロック または洞停止(<3秒)•期外収縮•QT延長•V1~V3のST上昇を伴う右脚ブロック (Brugada症候群)•心筋梗塞を示唆するQ波

文献8から邦訳改変

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圧の項参照)8).消化管出血や中等症以上の脱水症では,立位負荷により頻脈と血圧低下を来たす.立位負荷によって起立性低血圧484)が認められたとしても,その起立性低血圧が無症候性であれば必ずしも失神の原因とは判断できない.他の原因や起立性低血圧を呈する器質的疾患や投薬の影響を疑う必要がある8),485).一部の血管迷走神経性失神患者では,能動的立位によっても血管迷走神経反射が誘発される.

3 救急部門(ED)における失神患者のリスク層別化

 EDでは失神の原因診断が容易ではないため,原因不明の失神患者では,リスクを判断する必要がある(表20,21,23).EDで行うリスク層別化の検討では(表20,21)概ね共通したリスク因子を抽出している(表23)ものの,広く認められている臨床判断ルールはまだ存在していない8),252),451),458)-465).また,このようなリスク因子に加えて,臨床医の総合的判断も加えて,リス

ク評価を行うべきである486).

1 高リスク患者 高リスクを示唆する因子①~⑧を示す(表23).因子が多いほどリスクが高いと判断すべきである.高リスク患者では,失神直後から1か月以内に治療を要するような何らかの合併症が発生するリスクが高いので,入院や十分な経過観察,あるいは速やかな失神専門医へのコンサルテーションが行われなければならない487)-490).

2 低リスク患者 高リスクを示唆するような因子のない失神患者,例えば若年者で心疾患の合併のない反射性失神は低リスクであり,帰宅が可能である.失神の再発頻度が高い患者や外傷を合併した患者はチルト試験の適応である.このような患者では,後日,失神専門医にコンサルテーションを行う必要がある.

4 外傷予防

 失神に伴って致死的頭部外傷を受傷することがある.大都市圏においては失神が原因で鉄道のホームから線路内に転落する事故や自動車運転中の失神によって交通事故が起こる491)-494).

5 救急部門(ED)における失神の診療アルゴリズム

 以上の推奨事項を踏まえ,EDにおける失神の診療指針を図8に示す.患者の病態にあわせて検査や処置を追加する.

Ⅳ 自動車運転

 平成13年から施行された改正道路交通法では,自動車運転免許取得あるいは免許更新に際しては,失神発作を有する者は自己申告が必要であり,その場合には医師の診断書が必要とされている.我が国においては,日本不整脈学会がペースメーカ・ICD患者の自動車運転についての指針495)を公表しているが,それ以外の指針はなく,各主治医の判断に委ねられていたのが現状であった. 失神患者の自動車運転における失神発生頻度についての報告は少ないが,米国における3,877人の失神患者の

44

表23 リスク層別化のためのリスク因子①年齢  65歳以上②既往歴(表21参照)  心疾患   うっ血性心不全   心室性不整脈   虚血性心疾患   中等症以上の弁膜疾患③家族歴(表21参照)  心臓突然死または遺伝性不整脈疾患④症状(表21参照)  胸痛・背部痛  突発する頭痛  呼吸困難  失神の前駆症状なし⑤バイタルサインと身体診察  15分以上持続するバイタルサインの異常   呼吸数>24/分   心拍数>100/分,または<50/分   収縮期血圧<90 mmHg,または>160 mmHg   SpO2<90 %  異常心音や肺野のラ音  神経学的異常  治療を要する外傷⑥12誘導心電図  異常(表22参照)⑦その他の検査(検査の必要性を判断して施行する)  血液検査  ヘマトクリット<30 %  BNP>300 pg/mL  心筋特異的トロポニン陽性  D-ダイマー陽性  便潜血陽性⑧臨床医の印象  重症感

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失神の診断・治療ガイドライン

調査では,381人(9.8%)の患者が自動車運転中に失神発作を来たしていた496).自動車運転中に失神発作を来たした患者は,失神の既往があっても自動車運転中の失神発作の経験のない患者に比べ,比較的若年で男性に多く,心血管疾患の既往のある患者に多かった.また,自動車運転中の失神発作を来たした患者の原因疾患としては,反射性(神経調節性)失神が最多(37.3%)で,次いで心原性(不整脈性)失神(11.8%)が多かった.自動車運転中に失神を経験した患者では運転中の失神の再発が約19%にみられ,その約半数は医療機関受診後6か

月以上たって再発していた496),497).しかし自動車運転中に失神発作を経験した患者の運転中の再発率は性・年齢をマッチングさせたミネソタ州の一般人口での発生率とほぼ同じであった(0.8% /年).欧米においては各疾患におけるガイドラインが制定されており,その基準はヨーロッパ諸国のみならず米国においてもほぼ同じ内容となっている.ここでは2009年に公表されたESCのガイドライン8)を表24に示す.我が国においてもこれに準じた指導を行う.

45

図8 救急部門における失神患者診療のフローチャート 

主訴が以下の患者1)意識消失 2) 頭頸部外傷 3)転倒 4)「めまい」 5)「貧血」 等

① 一過性意識消失か否か?

他の症候

他の診断

② 失神か否か?

③バイタルサイン(表23)病歴聴取(表21, 23)12誘導心電図(表22)必要に応じて血液検査

身体所見

原因の明らかでない失神

④ チルト試験

⑤リスク層別化(表23)

低リスク

帰 宅入院またはコンサルテーション

高リスク原因に対する対処

原因の明らかな失神

一過性意識消失

失 神

症候性の起立性低血圧あり有意な心拍・血圧変動あり 有意な心拍・血圧変動

なし

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)

46

表24 失神患者の自動車運転に関する指針(ESCガイドライン20098)より引用)診   断

●不整脈 自家用運転手 職業運転手

薬物治療 治療の有効性が確認されるまで禁止

治療の有効性が確認されるまで禁止

ペースメーカ植込み 1週間は禁止 ペースメーカの適切な作動が確認されるまで禁止

カテーテルアブレーション 治療の有効性が確認されるまで禁止

長期間の有効性が確認されるまで禁止

植込み型除細動器 一次予防で1か月,二次予防で6か月間禁止 永久的禁止

●反射性(神経調節性)失神 自家用運転手 職業運転手

単発,軽症 制限なし 危険(高速運転等)を伴わない場合は制限なし

再発性,重症 症状がコントロールされるまで禁止

治療の有効性が確認されなければ禁止

●原因不明の失神

自家用運転手 職業運転手重症の器質的心疾患や運転中の失神がなく,安定した前駆症状がある場合には制限なし

診断と適切な治療の有効性が確認されるまで禁止

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