クリーニングニュース 2016 年 5 月号 3 クリーニングニュース 2016 年 5 月号 2 漂白 アイロン 商業クリーニング 家庭洗濯 26 10 27 12 28 12 貿41 5つの基本記号 洗濯 アイロン 商業クリーニング 漂白 乾燥 付加記号 強さ 線なし 通常 弱い 非常に弱い 温度 禁止 低い 高い × 1 図表 2 新 JIS の基本記号と付加記号の組み合わせによる全記号 新 JIS L 0001 による取扱い表示記号 全記号数=5分類 41 種類 平成 26 年 10 月に ISO と整合化した新しい取扱い表示記号 JIS L 0001 が制定され、いよいよ本年 12 月 1日より施行=新 JIS による表示がスタートします。 本誌3月号でお伝えしたとおり、これにより、表示記号の図柄の変更や適用範囲等、記号が指し示す情報が従 来の JIS L 0217 とは異なることや、新設された商業ウエットクリーニング記号Ⓦへの対応、クリーニング 店での洗浄条件の記録・保管などの取組みが必要となります。 クリーニング事業者の皆様は、お客様の大切な衣類をお預かりする立場として、お客様が安心してクリーニン グを依頼できること、衣類ケアのプロとしてお客様にアドバイスできることが求められています。今回は、表 示記号の変更点の詳細をお伝えします。 自然乾燥 新しく追加 タンブル 乾燥 新しく追加 ウエット クリーニング ドライ クリーニング 12 月1日から取扱い表示記号が変更になります クリーニング業者に求められる新 JIS 取扱い表示への対応 vol.2 ~ 表示記号の解説 ~ クリーニング業者に求められる JIS 取扱い表示への対応 Vol. 2 JIS規格自体は 残るが、 取扱い表示に 引用されない 現行JISを取扱い絵表示に引用 ※現行JISの引用は 平成28年11月30日まで 市場に 2つの表示が混在 施行=新JISを 取扱い表示に引用 現行JIS L 0217 新JIS L 0001制定 平成27年3月31日 JIS 規格 繊維製品 品質表示 規  程 ラベル 平成27年11月30日までに 製造・販売の衣類 =現行JISによる表示 ※施行後も販売は可能 (※切替えイメージ) 12月1日以降 製造の衣類 =新JISによる 表示が 義務付け 平成26年10月20日 12月1日以降 販売に向け 新JIS表示を準備 規程を改正・告示 平成28年12月1日 図表 1 新 JIS に関するスケジュール

新JIS取扱い表示への対応新JIS L 0001による取扱い表示記号 全記号数=5分類41種類 平成26年10月にISOと整合化した新しい取扱い表示記号JIS

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  • クリーニングニュース 2016 年 5月号3 クリーニングニュース 2016 年 5月号 2

    洗 濯 漂白 乾 燥 アイロン 商業クリーニング

    家庭洗濯

     

    新JISに関するスケジュールをお

    さらいすると(図表1)、平成26年10

    月に国際規格ISOと整合化した新し

    い取扱い表示記号JIS

    0001

    (以下、新JIS)が制定されました。

    さらに、日本国内で販売する衣料品の

    取扱い表示を規定している家庭用品品

    質表示法にもとづく「繊維製品品質表

    示規程」が平成27年3月に改正されま

    した。このため、本年12月1日の施行

    以降は取扱い表示に新JISを引用す

    ることとなり、新JISによる表示が

    スタートします。

     

    よって、平成28年12月1日以降に製

    造される衣類には新JISによる取扱

    い表示を付けることが義務付けられま

    す。一方で、それまでに製造された現

    行のJIS

    0217(以下、現行

    JIS)による取扱い絵表示が付けら

    れた衣類もしばらくの間は販売される

    ため、クリーニングの現場でも新旧の

    表示が付いた衣類を取り扱うことが想

    定されます。

     

    なお、新JIS制定の経緯としては、

    多様化する繊維製品への対応と、家庭

    用縦型洗濯機(パルセーター式)の進

    化やドラム式洗濯機の普及等、家庭洗

    濯の実態に対応するために制定されま

    した。さらに、日本独自の表示記号が

    貿易の技術的障壁となっており、IS

    Oと整合化するよう海外から要請が

    あったことも要因となっています。

     

    現行JIS

    0217の絵記号

    および表示方法を、対応するISO

    3758と整合化し新たにJIS

    0001を制定するにあたっては、日

    本と海外の家庭用洗濯機の構造や洗濯

    習慣の違い(日本では自然乾燥を主と

    するのに対し、ISOはタンブル乾燥

    のみで自然乾燥の記号がない)や、I

    SO記号の商標権の問題でJIS規格

    にISO規格をそのまま採用できない

    等の課題がありました。

     

    その後、関連するISO規格に自然

    乾燥の記号とパルセーター式洗濯機に

    よる試験方法を追加することなど日本

    案の提案・承認や、商標権に関する問

    題解消を経て、今回の新JIS制定に

    至っています。

     

    それでは、新JISが示すそれぞれ

    の記号の意味と、現行のJISとの相

    違点について確認していきます。新J

    ISによる取扱い表示は、「洗濯」「漂

    白」「乾燥」「アイロン」「商業クリー

    ニング」の5つの基本記号と、「強さ」

    「温度」「禁止」を示す付加記号、温度

    を示す数字、の組み合わせで構成され

    ます(図表2)。新たに追加されたの

    はタンブル乾燥、商業ウエットクリー

    ニングです(現行JISの「絞り方」

    は削除され、付記用語で記載)。記号

    は5分類41種類となります。

     

    まず、現行のJISと新JISとの

    相違点として、表示が示す「適用範囲

    の変更」があります。現行JISが家

    庭における洗濯などの取扱い方法を指

    示しているのに対し、新JISは家庭

    洗濯に加え、商業クリーニングも対象

    となっています。

     

    なお、商業クリーニングにはワイ

    シャツの処理などが該当する「ランド

    リー」もありますが、ランドリーの処

    理に関しては新JISの適用範囲外と

    なっているため、家庭洗濯の表示を参

    照して行うこととなります。

     

    相違点の2つ目は、現行JISが取

    扱いについて【推奨する処理条件】を

    示す「指示情報」であるのに対し、新

    JISは【回復不可能な損傷を起こす

    ことのない最も厳しい処理・操作】に

    ついて示す「上限情報」であることで

    5つの基本記号

    洗濯

    アイロン 商業クリーニング

    漂白 乾燥

    付加記号

    強さ 線なし通常 弱い 非常に弱い

    温度 禁止低い 高い

    ×

    新JISスタートまでの

    スケジュールと経緯

    適用範囲の違い

    新JISは家庭洗濯に加え、

    商業クリーニングも対象

    相違点1

    新JIS記号が示す意味と

    現行JISとの相違点

    図表2 新 JIS の基本記号と付加記号の組み合わせによる全記号

    ◦ 新 JIS L 0001 による取扱い表示記号 全記号数=5分類 41 種類

    平成 26 年 10 月に ISO と整合化した新しい取扱い表示記号 JIS L 0001 が制定され、いよいよ本年 12 月1日より施行=新 JIS による表示がスタートします。本誌3月号でお伝えしたとおり、これにより、表示記号の図柄の変更や適用範囲等、記号が指し示す情報が従来の JIS L 0217 とは異なることや、新設された商業ウエットクリーニング記号Ⓦへの対応、クリーニング店での洗浄条件の記録・保管などの取組みが必要となります。クリーニング事業者の皆様は、お客様の大切な衣類をお預かりする立場として、お客様が安心してクリーニングを依頼できること、衣類ケアのプロとしてお客様にアドバイスできることが求められています。今回は、表示記号の変更点の詳細をお伝えします。

    自然乾燥

    新しく追加

    タンブル乾燥 新しく追加

    ウエットクリーニング

    ドライクリーニング

    190

    170

    160

    161

    150

    151

    141

    142

    130

    131

    132

    110

    100

    220

    210

    200

    320

    310

    300

    440

    430

    420

    445

    435

    425

    410

    415

    530

    520

    510

    500

    620

    621

    610

    611

    600

    710

    711

    712

    700

    12 月1日から取扱い表示記号が変更になりますクリーニング業者に求められる新 JIS 取扱い表示への対応 vol.2

    ~表示記号の解説~

    クリーニング業者に求められる新JIS取扱い表示への対応

    Vol.2

    JIS規格自体は残るが、取扱い表示に引用されない

    現行JISを取扱い絵表示に引用※現行JISの引用は 平成28年11月30日まで 市場に

    2つの表示が混在

    施行=新JISを取扱い表示に引用

    現行JIS L 0217新JIS L 0001制定

    平成27年3月31日

    J I S規格

    繊維製品品質表示規  程

    洗 濯ラベル

    平成27年11月30日までに製造・販売の衣類=現行JISによる表示※施行後も販売は可能

    (※切替えイメージ)12月1日以降製造の衣類=新JISによる 表示が 義務付け

    平成26年10月20日

    12月1日以降販売に向け新JIS表示を準備

    規程を改正・告示

    平成28年12月1日

    図表1 新 JIS に関するスケジュール

    140

  • クリーニングニュース 2016 年 5月号5 クリーニングニュース 2016 年 5月号 4

    クリーニング業者に求められる新 JIS 取扱い表示への対応 vol.2

     

    以上が新JISの考え方に関する大

    きな相違点です。では、現行のJIS

    と新JISの対比表を掲載し、それぞ

    れの意味や変更点に関して説明します。

     

    洗濯処理のための表示記号(図表3)

    は、洗濯機または手洗いによる洗濯処

    理を表わします。表示記号は現行JI

    Sで用いられていた「洗濯機」ではな

     

    乾燥処理のための表示記号(図表5)

    は、新たに追加になった①タンブル乾

    燥と、②自然乾燥、の2種類があります。

     

    ①タンブル乾燥については、現行J

    ISでは表示がなく、タンブル乾燥の

    使用可否は付記用語で表示されていま

    す。新JISではタンブル乾燥が新設

    され、「正方形に内接円」の図柄で表

    されます。温度の高低は点の数で表し、

    能と判断した場合は、利用者に事前に

    説明・重要事項説明書等にサインをも

    らったうえで、最適なクリーニング処

    理を選択するのが望ましい対応となり

    ます。

    ◆ 

    ◆ 

     

    漂白処理のための表示記号(図表4)

    は、現行の「フラスコ」ではなく「三

    角」の図柄で表します。現行JISで

    は塩素系漂白剤による漂白の可否のみ

    を表わしていますが(酸素系漂白剤使

    用不可は付記用語で表示)、新JIS

    では酸素系漂白剤による漂白の可否が

    追加になり、塩素または酸素系漂白剤

    による漂白の可否を表わしています。

    持たなければなりません。これによ

    り、実際には水洗い可能でもドライオ

    ンリーの表示にするような「過保護表

    示」はできないことになります。

     

    また、仮に水洗い×・ドライクリー

    ニング×の衣類がクリーニング店に持

    ち込まれた場合の対応としては、表示

    者に表示の根拠を確認します。クリー

    ニングが難しい場合は引受けをお断り

    する、クリーニング事業者が引受け可

    ウエットクリーニングが追加されてい

    るため、

    100

    (記号番号100)およ

    び700

    (記号番号700)の2つを表

    示するのがよいとされています。つま

    り、新JISの

    100

    (記号番号100)

    は「家庭洗濯できない」を意味します。

     

    さらに、現行JISで記号上に日本

    語で付記することができた「中性」

    「ネット使用」については、付記用語

    で記載することとなりました。

    す。ここで示す「最も厳しい洗濯処理」

    とは、洗濯後の乾燥・仕上げ処理にお

    いて被洗物の状態が洗濯前とほぼ同等

    に回復する上限に近い洗濯処理を指し

    ます。

     

    現行JISの場合、例えば水洗い×

    とドライクリーニングの表示が付いた

    衣類を、指示に従わずにドライマーク

    が洗えるとうたった家庭用洗濯洗剤で

    水洗いした場合に、問題なく洗えるこ

    ともあります。しかし新JISの場合

    は、例えば40℃が限度で洗濯機で洗濯

    できる表示のものを50℃で洗った場合

    には、型崩れや仕上げられないなど、

    家庭では回復不可能な損傷が生じるこ

    とを意味するので注意が必要です。

     

    相違点の3つ目は、新JISでは表

    示に対しての根拠が必要だということ

    です。「取扱いに関する表示記号・付

    記用語で示した事項」に関しては、試

    験結果や素材の特性、過去の不具合実

    績などによる裏付けを持つことが望ま

    しい、とされています。例えば、洗濯

    不可の表示をした場合、表示者は洗濯

    によって不具合が起こることの根拠を

    く、すべて「桶」の図柄になっていま

    す。また、機械力の強弱について現行

    JISでは「弱」の文字が使用されて

    いますが、新JISではアンダーバー

    の本数で表しており、「なし」は通常、

    「-」は弱い、「

    」は非常に弱い処理

    を意味します。

     

    なお、現行JISでは「水洗い禁止」

    (記号番号107)で表すことが

    できますが、新JISでは新たに商業

    JIS L 0001:2014

    番号 表示記号 表示記号の意味

    190液温は、95℃を限度とし、洗濯機で通常の洗濯処理ができる。

    170液温は、70℃を限度とし、洗濯機で通常の洗濯処理ができる。

    160液温は、60℃を限度とし、洗濯機で通常の洗濯処理ができる。

    161液温は、60℃を限度とし、洗濯機で弱い洗濯処理ができる。

    150液温は、50℃を限度とし、洗濯機で通常の洗濯処理ができる。

    151液温は、50℃を限度とし、洗濯機で弱い洗濯処理ができる。

    140液温は、40℃を限度とし、洗濯機で通常の洗濯処理ができる。

    141液温は、40℃を限度とし、洗濯機で弱い洗濯処理ができる。

    142液温は、40℃を限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯処理ができる。

    130液温は、30℃を限度とし、洗濯機で通常の洗濯処理ができる。

    131液温は、30℃を限度とし、洗濯機で弱い洗濯処理ができる。

    132液温は、30℃を限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯処理ができる。

    110液温は、40℃を限度とし、手洗いによる洗濯処理ができる。

    100 洗濯処理はできない。

    JIS L 0001:2014

    番号 表示記号 表示記号の意味

    320

    洗濯処理後のタンブル乾燥処理ができる。高温乾燥:排気温度の上限は最高80℃

    310

    洗濯処理後のタンブル乾燥処理ができる。低温乾燥:排気温度の上限は最高60℃

    300 洗濯処理後のタンブル乾燥処理はできない。

    440 つり干し乾燥がよい。

    430 ぬれつり干し乾燥がよい。

    420 平干し乾燥がよい。

    410 ぬれ平干し乾燥がよい。

    445 日陰でのつり干し乾燥がよい。

    435 日陰でのぬれつり干し乾燥がよい。

    425 日陰での平干し乾燥がよい。

    415 日陰でのぬれ平干し乾燥がよい。

    JIS L 0001:2014

    番号 表示記号 表示記号の意味

    220 塩素系及び酸素系漂白剤による漂白処理ができる。

    210酸素系漂白剤による漂白処理ができるが、塩素系漂白剤による漂白処理はできない。

    200 漂白処理はできない。

    JIS L 0217:1995

    番号 表示記号 表示記号の意味

    101 液温は、95℃を限度とし、洗濯ができる。

    JIS L 0217には対応する記号なし。JIS L 0001を参照して処理する。

    102 液温は、60℃を限度とし、洗濯機による洗濯ができる。

    JIS L 0217には対応する記号なし。JIS L 0001を参照して処理する。

    103 液温は、40℃を限度とし、洗濯機による洗濯ができる。

    104液温は、40℃を限度とし、洗濯機の弱水流又は弱い手洗いがよい。

    JIS L 0217には対応する記号なし。JIS L 0001を参照して処理する。

    105液温は、30℃を限度とし、洗濯機の弱水流又は弱い手洗いがよい。

    106液温は、30℃を限度とし、弱い手洗いがよい。洗濯機は使用できない。

    107 水洗いはできない。

    JIS L 0217:1995

    番号 表示記号 表示記号の意味

    JIS L 0217には対応する記号なし。JIS L 0001を参照して処理する。

    601 つり干しがよい。

    603 平干しがよい。

    602 日陰のつり干しがよい。

    604 日陰の平干しがよい。

    JIS L 0217:1995

    番号 表示記号 表示記号の意味

    201 塩素系漂白剤による漂白ができる。

    JIS L 0217には対応する記号なし。JIS L 0001を参照して処理する。

    202 塩素系漂白剤による漂白はできない。

    上限情報の提供

    新JISは回復不可能な損傷を

    起こさない最も厳しい処理・

    操作に関する情報を提供

    相違点2

    表示に対しての根拠

    新JISでは

    表示を裏付ける根拠が必要

    相違点3

    190

    170

    160

    161

    150

    151

    140

    141

    142

    130

    131

    132

    110

    100

    図表3 洗濯処理のための表示記号図表5 乾燥処理のための表示記号

    図表4 漂白処理のための表示記号

    220

    210

    200

    320

    310

    300

    440

    430

    420

    445

    435

    425

    410

    415

  • クリーニングニュース 2016 年 5月号7 クリーニングニュース 2016 年 5月号 6

    クリーニング業者に求められる新 JIS 取扱い表示への対応 vol.2

    付記用語で記載されます。

     

    ドライクリーニングのための表示記

    号(図表7)は、現行JISは「ドラ

    イクリーニング」と「石油系ドライク

    リーニング」の2種類であるのに対し、

    新JISでは「丸」の図柄に「P」が

    「パークロロエチレンおよび石油系溶

    ◆ 

    ◆ 

     

    以上が現行JISと新JISの表示

    記号の対比とポイントの概要となりま

    す。

     

    次回は、前述のとおり洗浄条件・洗

    浄記録の保存、ウエットクリーニング

    の今後の課題等について説明します。

    号530)および (記号番号520)

    はスチームが使用できますが、原則は

    家庭でのアイロン仕上げの可否を示す

    ものなので、家庭用アイロンによるス

    チーム処理は可能です。スチームボッ

    クスや人体プレス等の可否は表示から

    は判断できないので、品物の素材や加

    工等を確認しながらスチーム処理の可

    否を現場で判断する必要があります。

    また、従来あった「あて布」の図柄は

    いずれかが記載されていない時には、

    その記号が意味するすべての処理(最

    も強い処理)が可能であることを示し

    ています。

     

    なお、商業ドライクリーニングおよ

    びウエットクリーニング記号には対応

    する試験方法が定められています。各

    表示が示す機械力や洗浄条件に対し、

    自店のクリーニング処理の機械力や洗

    浄条件が対応しているか、あらかじめ

    確認しておく必要があります。

     

    また、前述のとおり表示を付けるア

    パレルには表示の根拠が求められる反

    面、クリーニング事業者には洗たく物

    に事故が発生した際の備えとして「表

    示が示す試験方法の範囲内で処理を

    行ったことを証明できるようにしてお

    く」必要があります。そのために、全

    ク連では自店の洗浄条件の記録や、石

    油系ドライクリーニングの場合はドラ

    イソープ濃度の測定と記録を行うこと

    を推奨しています。

     

    試験方法の数値にもとづく自店の洗

    浄条件の検証や記録方法等について

    は、次号にて解説します。

    に「アイロン」の図柄で表されます。新

    JISではタンブル乾燥と同様に温度

    の高低が点の数で表わされ、点3つは

    200℃が上限温度、点2つは150℃

    が上限温度、点1つは110℃が上限

    温度となり、現行JISから上限温度

    が若干変更されています。

     

    また、注意点として点1つのアイロ

    ン記号

    510

    (記号番号510)は「ス

    チームの使用が禁止」です。 (記号番

     

    ウエットクリーニングのための表示

    記号(図表8)は新JISで新設され

    ました。「丸」の図柄に「W」で表わ

    され、アンダーバーの本数で機械力の

    強弱を表わします。

     

    現行JISではウエットクリーニン

    グについては個々のクリーニング事業

    者の技術や判断で行われていますが、

    新JISのウエットクリーニングは、

    「特殊な技術を用いた業者による水洗

    いから乾燥・仕上げまでの処理」を指

    します。機械力としては

    710

    が141

    (記

    号番号141)に、

    711

    が110

    (記号番

    号110)に相当します。

     

    ウエットクリーニングの表示は、家

    庭での仕上げが困難な製品やドライク

    リーニングに耐性が低い樹脂加工製品

    等への表示が想定されます。

     

    記号の並べ方も変わります(図表

    9)。新JISは「①洗濯」「②漂白」「③

    乾燥(タンブル乾燥・自然乾燥)」「④

    アイロン」「⑤商業クリーニング(ド

    ライ・ウエット)」の順に並べます。

     

    また、現行JISでは色物への塩素

    系漂白など「通常その処理を行わない

    時は省略可」「絞りと乾燥の記号は任

    意」とされていますが、新JISでは

    点2つは高温乾燥(上限80℃)、点1つ

    は低温乾燥(上限60℃)を意味します。

     

    なお、このタンブル乾燥記号は、家

    庭洗濯における表示であり、ドライク

    リーニングのタンブル乾燥を対象とし

    ません。現行JISでは製品のダメー

    ジを考慮し、石油系ドライの表示にタ

    ンブル乾燥禁止や自然乾燥の付記用語

    が付く場合があります。しかし、新J

    ISではドライクリーニングの試験方

    法にタンブル乾燥を含むことから、ド

    ライクリーニングの記号には必ずタン

    ブル乾燥が含まれ、タンブル乾燥を禁

    止することはできないことになってい

    ます。

     

    ②自然乾燥の記号については、現行

    JISでは「服」の図柄ですが新JI

    Sでは「正方形」で表し、四角の中の

    線の向きや本数で干し方を示していま

    す。「―(縦棒)」は「吊干し」、「-(横

    棒)」は「平干し」、「=または

    (棒

    2本)」は「ぬれ干し(脱水せず・絞

    らずに)」、「/(斜線)」は「日陰干し」

    を意味し、組合せにより8種類の表示

    があります。なお、自然乾燥の表示も

    家庭洗濯での乾燥に関する表示となり

    ます。

     

    アイロン処理のための表示記号(図

    表6)は現行JISおよび新JIS共

    剤によるドライクリーニング」、「F」

    が「石油系溶剤によるドライクリーニ

    ング」が可能であることを表わします

    (FはF

    lamm

    ability

    =引火性の意味)。

    さらに、それぞれ「アンダーバー」の

    有無で機械力が「通常」か「弱い」か

    を示しています。

    相当

    相当

    JIS L 0001:2014

    番号 表示記号 表示記号の意味

    530底面温度200℃を限度としてアイロン仕上げ処理ができる。

    520底面温度150℃を限度としてアイロン仕上げ処理ができる。

    510底面温度110℃を限度としてスチームなしでアイロン仕上げ処理ができる。

    500 アイロン仕上げ処理はできない。

    JIS L 0001:2014

    番号 表示記号 表示記号の意味

    620

    パークロロエチレン及び記号Ⓕの欄に規定の溶剤でのドライクリーニング処理*)ができる。通常の処理

    621

    パークロロエチレン及び記号Ⓕの欄に規定の溶剤でのドライクリーニング処理*)ができる。弱い処理

    610

    石油系溶剤(蒸留温度150℃~210℃、引火点38℃~)でのドライクリーニング処理*)ができる。通常の処理

    611

    石油系溶剤(蒸留温度150℃~210℃、引火点38℃~)でのドライクリーニング処理*)ができる。弱い処理

    600 ドライクリーニング処理ができない。

    JIS L 0217:1995

    番号 表示記号 表示記号の意味

    301アイロンは210℃を限度とし、高い温度(180~210℃まで)で掛けるのがよい。

    302

    アイロンは160℃を限度とし、中程度の温度(140~160℃まで)で掛けるのがよい。

    303アイロンは120℃を限度とし、低い温度(80~120℃まで)で掛けるのがよい。

    304 アイロン掛けはできない。

    JIS L 0217:1995

    番号 表示記号 表示記号の意味

    401

    ドライクリーニングができる。溶剤は、パークロロエチレン又は石油系のものを使用する。

    402ドライクリーニングができる。溶剤は、石油系のものを使用する。

    403 ドライクリーニングはできない。

    図表6 アイロン処理のための表示記号

    図表7 ドライクリーニングのための表示記号

    注*):ドライクリーニング処理は、タンブル乾燥を含む。

    JIS L 0001:2014

    番号 表示記号 表示記号の意味

    710ウエットクリーニング処理ができる。通常の処理

    711ウエットクリーニング処理ができる。弱い処理

    712ウエットクリーニング処理ができる。非常に弱い処理

    700 ウエットクリーニング処理はできない。

    例:現行 JIS の記号の並べ方(左から順に)◦ 色物の塩素漂白など、通常その処

    理を行わない時は省略可

    ◦ 「絞り方」と「干し方」の記号は表示者の任意

    例:新 JIS の記号の並べ方(左から順に)◦ 記号の省略はその記号が意味する

    最も強い処理が可能。

    ( 例:「洗濯」記号の省略=95℃を限度とした洗濯機での処理が可能)

    JIS L 0217:1995

    番号 表示記号 表示記号の意味

    JIS L 0217には対応する記号なし。JIS L 0001を参照して処理する。

    図表8 ウエットクリーニングのための表示記号

    図表9 記号の並べ方と省略について

    710

    711

    712

    700

    620

    620

    621

    610

    611

    600

    ヨ クワ

    530

    520

    510

    500

    141 210 300 445 530 710

    530

    520

    141

    110