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2011年12月18日に実施したKELESセミナーでの発表スライドです。一ヶ所誤記がありましたので,修正したものです。
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実践! 英語のリズム・イントネーションの指導
大和 知史
神戸大学国際コミュニケーションセンター
関西英語教育学会KELES第24回セミナー(大阪・兵庫地区)"平成23年12月18日(日) "於: 龍谷大学・大阪梅田キャンパス
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本日の配布資料は以下の通りです。
ご確認下さい。
1.スライド資料(封筒内)
2.ハンドアウト(こちらから配布)
(スライド補足・タスク案・参考文献一覧)
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1. はじめに
– 本発表の目的・ねらい
– きっかけ
2. リズム・イントネーションの指導
– リズム・イントネーションとは
– 指導の現状と問題点
3. リズム・イントネーションの指導 考え方の提案
– 何が言われているか
– では、それを基にどうするか?
– その根拠は?
4. リズム・イントネーションの指導 こんな風に
– 提案を受けて、実例の紹介
5. まとめ3
はじめに• 軽く自己紹介
• 本日の発表の目的・ねらい
• きっかけ
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• これがあればリズム・イントネーションは完璧!という「特効薬の処方」は残念ながらできません。
• まず、リズム・イントネーションの指導に関して、これまでの音声学での知見を基に、ある考え方を提案します。
• そして、その考え方に基づいた、リズム・イントネーションの指導の実例を提示してみます。
• 今回提示した考え方を踏まえて、ひとりでも多くの方に「教科書を分析してみよう」・「活動を考えてみよう」・「実例を試しにやってみよう」と思って頂くのが、本発表の目的・ねらいです。
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• 磯田先生@広島大とお話した際…
• リズム・イントネーションの指導に関して、その重要性にもかかわらず、指導はなされていない。
• それぞれの音声項目について、教科書などでは記述がなされているが、そこでの扱いも、音節構造、語強勢、文強勢、リズム、イントネーション、といった形で、それぞれの項目を個別に扱う形式が多い。
• もっとそれぞれを「関連したものとして」教えることはできないか?
• というところで、提供して頂いた情報を合わせて考えて、今回の提案としています。
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リズム・イントネーションの指導現状
• リズム・イントネーションとは
• 指導の現状と問題点
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• 音節 • 「母音を中心に前後に子音を伴う単位(牧野,2005: 27)」
• 「リズムの1拍やひとつの強勢を受けることのできる、音の最小のまとまり(松坂,1986: 165)」
• プロソディ – 語強勢・文強勢
• 語単独で発音された時のアクセント型・単語が文中で受ける強いアクセント(竹林・斎藤, 2008)
– リズム • 強弱や長短などの規則的な繰り返しのパターン(牧野, 2005)
– イントネーション • 発話におけるピッチの変動
• イントネーションの記述・機能 – 主に,態度,フォーカス,文法,談話,の機能(Roach, 2000; Cruttenden, 1997; Wells, 2006)
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• 学習者・教員・指導者として
– 重要だとは思うけど…
– 何をどう指導するのか,指導者の自信,教材などでも扱いづらい(Chapman, 2007; Dalton & Seidlhofer, 1994)
– 教科書等でも少し触れられているけど…、子音・母音、強勢、リ
ズム・イントとそれぞれ別個に
– 特にイントなどは…
• “problem child” “icing on the cake”
• 聞き手が無意識に反応する領域(Lodge, 2009)
• 日英で共通なのでは? → 特段の練習の必要はない?習うより慣れよ!?
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リズム・イントネーションの指導考え方の提案
• 何が言われているのか
• では、それを基にどうするか
• その根拠は?
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• 松坂(1986)
「日本人学習者が注意すべき4点(p.176)」
① 強形,弱形を使い分け,文強勢を自然なものにすること。
② 文強勢と抑揚とちぐはぐにならないようにすること。
③ 音調核の位置を間違えないようにすること。
④ 下降調では,自分の声域のもっとも下まできちんと声を下ろすこと。日本人は,降りきらぬうちに声門閉鎖により発話をとめてしまいがちである。
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<プロソディ要素を関連づける指導の3原理>
1. 母音のあるところに拍がくる – 語強勢の形を確認
2. 拍が2つ以上になれば、強弱を – 弱は曖昧に早く – 強がおよそ等間隔でリズムを形成
3. 強い拍が複数になれば、その内の一つを 目立たせる。
– 一番目立つものが、音調核 – 原則は、イントネーション句の最後の内容語 – そこでトーンを大きく変化させる(上昇・下降・下降上昇) – 別のところに来るということは意図がある
"(磯田 personal communication, May 16, 2011)
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「気をつけること」の①
「気をつけること」の②と③
「気をつけること」の④
• 「関連したものとして」の根っこ
• 「かぶせ音素の勉強は、音節の研究から始めることとする。なぜなら、音節が受け皿となって、文や語句に強勢が置かれ、その強勢がリズムを作り出し、また抑揚の動きにきっかけを与えるからである(松坂,
1986, p.165 下線は発表者)」
• 「『プロソディー』は、基本的に音節を単位として起こる音声現象(牧野, 2005, p.106)」
1. 母音のあるところに拍がくる(語強勢の確認)
• “the characteristics of stressed and unstressed syllables in single words are mirrored in rhythm, teaching word stress primes students for work with suprasegmentals (Lane, 2010,p.17)”
• ハミングなどで拍の数を確認
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1. 続き
– 英語のアクセントのイントネーションとの不可分性(牧
野, 2005)
• 日本語はアクセントとイントネーションは別々の部分で実現(例:
目、梅田に)
• 英語はアクセントは語の中の特定の部分で起こり、かつイントも
そこで起こる(アクセントから始まるピッチの動き方によってイ
ントネーションが決まる 例: no, normally)
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2. 拍が2つ以上になれば、強弱を
– 語アクセント 語内の強弱パターン
– 文アクセント 語間の強弱パターン
• 内容語 語アクセントのパターン保持
• 機能語 弱アクセント
– リズム
• 強勢拍リズム アクセントのあるところが等間隔に(等時性)
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3. 強い拍が複数になれば、その内の一つを目立たせる
– 目立たせるにはどうやって? →イントネーション
– 強い拍の一番目立つもの 音調核
– それはどこになる? 原則「イントネーション句」の最後の内容語
– Wells (2006) • Three T’s (tonality, tonicity, tone)
• tonality=chunking, tonicity=nucleus placement
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3. 続き
–核配置に関する3つの基本原理(南條, 2011, p.
6) 1. 文の意味とは無関係に,最後の内容語に核が置かれる。
2. 繰り返された項目には核は置かれない。
3. 強調または対比がある場合には,その項目に核が置かれる。
• 優先順位は3から1へ(3においては,文の最後の語から検討され,遡っていく)
• 「渡辺(1994b: 64)も述べるように,「意味の上で最も重要な語」よりも「最後の語彙項目」という原理を優先的に教えることが,きわめて有用である」(p.8-9)
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3. 続き
– 斎藤(2002)
• センター試験の問題での混乱は、「最も強調される語は音調群最後の内容語」という音調核配置のルールを知らないことに起因している。
– 斎藤・上田(2011)
• 日本語からの負の転移?
• 人称代名詞・疑問詞・限定形容詞・否定辞がくるとそこに音調核を配置する傾向
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<プロソディ要素を関連づける指導の3原理>
1. 母音のあるところに拍がくる – 語強勢の形を確認 the/pandas/will/eat/bamboo/
2. 拍が2つ以上になれば、強弱を – 弱は曖昧に早く The pandas will eat bamboo.
1. 強がおよそ等間隔でリズムを形成
3. 強い拍が複数になれば、その内の一つを 目立たせる。 The pandas will eat ↘bamboo.
– 一番目立つものが、音調核 原則は、イントネーション句の最後の内容語
– そこでトーンを大きく変化させる(上昇・下降・下降上昇) – 別のところに来るということは意図がある
"(磯田 personal communication, May 16, 2011)
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リズム・イントネーションの指導こんな風に
提案を受けて、実例の紹介
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• では、具体的にはどうしましょう? いくつか実例を紹介します。
• それらは既存の教材から持ってきては、先の少しアレンジしています。
• 拙提案は、視点・考え方のシフトを促すものですので、是非既存の教材を有効活用してみて下さい。
• ハンドアウトを参照下さい。
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• 実例1 – ハミングなどで表現してみるタスク
– ハミングで1)から3)のどの文を言ったのかをキャッチ
ねらい:
• 音節のところに拍があることを確認(原理1)
• 日本語と英語とで比較することで、モーラ単位と音節単位との違いを体感
• 文レベルでもハミングで、ただし、強いところと弱いところを確認してリズムへの配慮(原理2)
• 最後の内容語のところでピッチが大きく動くことを確認(原理3)
• 音節構造・強音節への意識、等時性、リズム、イントネーションの意識も
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• 実例2
– 対話文の半分だけからペアで推測読み
ねらい:
• 単音節の拍の確認、音調の確認(原理1)
• 対話文の半分をペアで推測読みさせるところは磯田(2010)の活動。対話の流れを意識して、かつ音調を意識して、ペアで読み合わなければうまく対話が成立しない。(原理3)
• 単音節語のみで、アクセントとイントの不可分性を再確認(原理1)
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• 実例3
– インタビュータスク
ねらい:
• イントネーション句の確認、音調核配置のルール確認、音調の使用(原理3)
• 普通にインタビューするところは、疑問と答えのやり取りでとどまる。もちろんその段階でも強弱、リズム、イントネーションに意識を持っておくことはできる。(原理1、2)
• インタビュアーが確認の作業を入れることで、一文をイントネーション句と認識、句の最後の音調核で上昇を用いる形にすることができる。(原理3)
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まとめ
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• 本発表では,以下の2点について検討しました。
1)リズム・イントネーションの指導
• したほうがいいのはわかっている。ただ、諸々の問題が。
• 語強勢・文強勢・リズム・イントネーションの関連づけが薄いのでは? ならば関連づけて指導できるように提示してみよう。
• プロソディ要素を関連づける指導の3原理の提案
2)指導、こんな風に。
• 「1)に述べた関連付け」を意識した指導として、こんなものが考えられる(実例1~3)。
• 個別のルールを覚えるというよりも、相互に関連したものを少しずつ俯瞰で見るイメージ。(Google mapなどで建物からどんどん引きの画像になっていくような)
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発表は以上ですリズムやイントネーションについて、もっと知りたいな・教材分析してみようかな・指導してみようかな、
と思って頂ければ幸いです。ご清聴ありがとうございました。
ご意見・ご質問は
[email protected] までよろしくお願いします。
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