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LTspice を用いたアナログ回路 I の再現 2 回目の内容 [目的と内容について] この文章の目的は、電気通信大学・情報理工学域・Ⅲ類におけるアナログ回路 I の第二回目の実験内容について、LTspice を用いて再現することである。従って、 LTspice の使用方法などの詳細は、各自で調査する必要があります。また、最大値 の計算や電圧制御電源などの SPICE 命令も多用しているので、ある程度の SPICE 知識は必要である。 この文章は、以下の4章からなる。 1) バイアス確認について 2) 入出力特性について 3)周波数特性の解析 4)増幅回路の周波数特性と実験データの比較 付録 h-parameter 等価回路による解析 この章の最後として、 LTspice を公開している linear technology 社には、このような 有用なソフトを無料で公開していることに感謝いたします。 また、Web 上で LTspice を用いた回路の情報を公開しているサイトの皆様にも感 謝いたします。有難うございました。 ((注意)) この版で使用した LTspice version は、LTspiceIV です。 最新版の LTspiceXVII で実行できない場合、出力結果が異なる場合があります。 同じ結果を再現したい場合は、LTspiceIV(WindowsXP )を使用してください。 電通大・Ⅲ類 坂本克好 2018.04.02 アナログ回路 I 参考資料 3

LTspice を用いたアナログ回路 I の再現 第2 回目の内容ktys-skmt.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2018/... · LTspice を用いたアナログ回路I の再現 第2

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LTspiceを用いたアナログ回路 Iの再現

第 2回目の内容

[目的と内容について]

この文章の目的は、電気通信大学・情報理工学域・Ⅲ類におけるアナログ回路 I

の第二回目の実験内容について、LTspiceを用いて再現することである。従って、

LTspiceの使用方法などの詳細は、各自で調査する必要があります。また、最大値

の計算や電圧制御電源などの SPICE命令も多用しているので、ある程度の SPICE

知識は必要である。

この文章は、以下の4章からなる。

1) バイアス確認について

2) 入出力特性について

3)周波数特性の解析

4)増幅回路の周波数特性と実験データの比較

付録 h-parameter等価回路による解析

この章の最後として、

LTspiceを公開している linear technology社には、このような

有用なソフトを無料で公開していることに感謝いたします。

また、Web 上で LTspice を用いた回路の情報を公開しているサイトの皆様にも感

謝いたします。有難うございました。

((注意))

この版で使用した LTspiceの versionは、LTspiceIVです。

最新版の LTspiceXVII で実行できない場合、出力結果が異なる場合があります。

同じ結果を再現したい場合は、LTspiceIV(WindowsXP 版)を使用してください。

電通大・Ⅲ類

坂本克好

2018.04.02版 アナログ回路 I 参考資料 3

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[目的]

増幅回路の設計における電圧値を確認する。

[方法・結果]

回路を作成する。

解析は、

DC op pntを実行する。

RUNを実行する。計算結果の ascファイルが開く。

ascファイルを閉じる

回路上で、右クリックしてメニューを開く。

View -> Place .op Data Label

を選択する。

電圧を確認したい場所をクリックする。

すると、電圧が表示されます。

Fig. 1 増幅回路

Fig. 2 右クリックメニュー

バイアス確認について

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表示される値は、桁数が多いので、

3桁表示に変更する。

表示する桁を制御するには、

Plotラベル上で右クリックして、

$ を round($*100)/100

と変更する。

動作点(Q)での

電圧を表示する。

VB=2.74V

Ve(V3)=2.1V

VC(V2)=6.92V

従って、動作点(Q)

は、次の計算で得られる。

VBE(Q)=VB-VE

=2.74 - 2.1=0.64V

Vce(Q)=6.92-2.1

=4.82V

以上から、

設計での値と比較することができる。

Fig. 5 電圧表示した回路

Fig. 4b 変更後

Fig. 4a 変更前

Fig. 3a 電圧表示 Fig. 3b 表示変更結果

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[目的]

LTspiceを用いて入出力特性の実験を再現する。

[結果]

計算で使用した回路を示す。

解析には、過渡解析を実行する。

Step命令で、sine波の振幅 ampl

をパラメータにして、list値に

従って変化させる。

また、measure命令を用いて、

V1、V2での peak-to-peak電圧を

計算する。

増幅率を計算して、ans4に代入する

回路と SPICE命令入力後に、

過渡解析を実行する。

Error-logファイルから、

パラメータグラフを作成する。

はじめに、Error-logファイルを開く。

Error-logファイルにおいて、

右クリックして、メニューを表示

させる。

入出力特性について

Fig.1 回路図と SPICE命令

Fig.2a Error-logファイル

Fig.2b 右クリックメニュー

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このメニューの Plot .step’ed .meas data

を選択すると、グラフが表示される。

Error-logファイルから、

各点における計算値を示す。

傾きは、一定でないことがわかる。

出力波形を右に示す。

Listの成分数が、6個なので、

波形が 6個同時に表示されます。

1mV,10mV,20mVまでが

下側の振れが飽和していない。

しかし、

20mV のとき、上と下の振れの

形が異なっている。

20mV では、歪んでいる。

Fig.5 出力波形のグラフ

Fig.3 Step計算した結果グラフ

Fig.4 Error-logファイルの計算結果

電圧 [V]

時間 [s]

入力電圧[V]

出力電圧[V]

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[目的]

LTspiceを用いて、電流帰還エミッタ接地増幅回路の周波数特性を求める。

[結果]

周波数特性を計算する

LTspiceで解析する回路を図に示す。

解析には、AC Analysisを選択

する。

Edit Simulation Commandウインド

が開くので、Type of Sweepは、

Decadeにして、計算したい範囲

と計算点の数を入力する。

計算を実行すると、空白のグラフウインドが開く。

空白のグラフ上のおいて、右クリックして

メニューを開く。 メニュー中の

Add Traceを選択する。

周波数特性の解析

Fig.1 回路図

Fig.2a Simulateメニュー

Fig.2b 解析編集ウインド

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縦軸に増幅度を表示させるために、

Expression to add 欄に計算の式を入力する。

OKをクリックすると、グラフが表示されます。

しかし、標準のグラフでは、縦軸は[dB]である。

これを、線形に変更する。

縦軸上で、クリックして軸設定ウインド

を開く。

右のグラフが表示されます。

左側の縦軸が増幅率であり、右側が位相

の軸である。

実線が増幅率、点線が位相に相当します。

次に、計算結果をテキスト出力して

他のソフトで処理可能にする。

Fig.4b 周波数依存性

Fig.4a 表示方法選択

Fig.3a 右クリックメニュー

Fig.3b 信号選択ウインド

Fig.3c 計算式入力欄

増幅率 位相[ °]

周波数 [Hz ]

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LTspiceでの計算結果のグラフを

テキストファイル出力するには、

出力するグラフを表示する。

このグラフ表示ウインドにおいて、

Fileの Exportを選択する。

出力する信号を選択するウインド

が開く。

このウインドにおいて、増幅率

を選択して、OKボタンをクリック

する。

保存先、ファイル名は、

Browseボタンをクリックすること

で変更できる。

出力されたファイルを、メモ帳をもちいて開く。

テキストとして出力されていることが確認できる。

これにより、他のソフトを用いて、

実験値との比較が可能になります。

Fig.5 周波数依存性

Fig.6 Exportを選択 Fig.7 信号の選択

Fig.8 出力ファイルの中身

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[目的]

LTSpice を用いることで、計算値はグラフ表示できる。計算値と実験値と比較することで、実験結果

と計算値の差について考察が可能になる。SPICEの値を変化させるなどにより実験結果を再現可能にな

り原因が推測できる。LTspiceのグラフに実験結果を表示させることが重要である。

[方法と結果]

電源 V1を設置して、

出力にラベルの 1を設定する。

抵抗 1kohmの Re1の接続端子に

ラベル refを設定する。

次に、SPICE命令で以下の様に

記述する。

Efreq1を電源名にして、

端子を ref と 0に設定する。

周波数と大きさと位相の

Tableを作成する。

記述内容の詳細は、

SPICE の netリスト

の記述方法を調べてください。

増幅回路の周波数特性と実験データの比較

Fig.1 周波数変化電源

Fig.2 SPICE命令で tableを記述

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次に、

実験の回路を作成する。

ポイントは、

電圧制御電源 G1を使用

していることである。

制御電圧は、端子 1を

接続する。電源の大きさ

を 10m倍する。

完成した回路図を

右に示す。

解析方法は、

AC Analysis を選択して、

計算範囲を、10Hzから

100kHzに設定する。

回路が完成後、

解析を実行(RUN)する。

次に、

増幅率のグラフを表示する。

Fig.3 増幅回路の回路図

Fig.4 完成した回路図

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グラフ上で右クリックして、

メニューを表示させる。

Add Traceを選択する。

OKボタンで、

緑色のグラフが表示されます。

軸をクリックして、

設定ウインドを開き、

Decibelを Linearに変更する。

図の様に、計算結果:緑色と

実験値 V(ref):青色を

同時表示できます。

位相は、点線で表示されています。

実験値と計算値に差が確認できる。

この差について、

回路パラメータなどを変化させて

原因を調査することになる。

Fig.5 表示する信号を決める

Fig.9 計算値と実験値のグラフ

Fig.7 増幅率を表示

Fig.8 縦軸の表示を変える

Fig.6 表示する値を選択するウインド

周波数 [Hz]

増 幅 率

周波数 [Hz]

位相[°]

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[ 目的 ]

hパラメータ等価回路を用いた周波数解析を実行する。

[ 結果 ]

以下の hパラメータのトランジスタ等価回路を作成する。

hfe : 200

hie: 1k [ohm]

hoe: 1/100k [ohm^-1]

hre: no-setting

もし、必要ならば、Vceによる電圧制御電圧電源を用いることになる。

ここでの等価回路において、

ベース抵抗(R8)、エミッタ抵抗(R6)、コレクタ抵抗(R9)を入れています。

電源 V3、V2を挿入することで、電流を検出しています。

この回路でポイントは、

電流制御電流源 ( F ) の使用方法です。

電源 V3に流れる電流値を、

170倍するように設定します。

電流制御用の電源が必要です。

Value欄に関係式を入力する。

V3 170

((注意)) 変数の間にスペースを入れると、

掛け算になります。

Fig.1 hパラメータ等価回路

Fig.2 設定ウインド

h-parameter等価回路による解析 付録

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また、等価回路を別の場所で実現している。

このときの端子には、右図のように、

Port Type欄を、Bi- Direc.を選択する。

周波数解析するので、

AC 解析を実行する。

解析実行後に、Add Traceを選択して、

V( c ) / V( b )

のグラフを表示する。

ミラー効果を考慮して、C5を接続しています。

また、コレクタ端子に浮遊容量 C6、ベース端子に接合容量 C4

を考慮しています。また、グラフ表示を判り易くするために、入力、出力に Node名を付ける。

Fig.4 周波数特性のグラフ

Fig.5 コンデンサ追加した等価回路

Fig.3 端子名設定

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解析を実行後の空白グラフが表示される。

右クリックして、Add Traceを選択する。

Add Traces to Plotウインドにおいて、

下の Expressions to add欄に

V(out)/V(in)

を入力する。

OKボタンをクリックすると、

グラフが表示されます。

初期の表示では、縦軸が[dB]である。

縦軸をクリックして、軸設定ウインドを

開き、linearに変更する。

ここでは、位相に注目する。

10Hzでの位相が-60°に

なることがわかる。

また、10kHzのとき最小値で約-180°になり、

その後、増加して 100kHzでは、-175°

となる。

増幅率では、コンデンサの影響は明確でないが、

位相の観察からコンデンサの影響が判断できる。

Fig.7 周波数特性グラフ

Fig.6 信号選択ウインド