Masque 16/9 Bureau Veritas Japan.pdf社会責任監査から見えてくるサプライチェーン上の課題ビューローベリタスジャパン株式会社カスタマイズドサービス部

社会責任監査から見えてくるサプライチェーン上の課題

ビューローベリタスジャパン株式会社

カスタマイズドサービス部

社会監査・RBAエキスパート

川⼿洋明

2

顧客から規格適合・監査要求はより広範囲(より小規模組織、日本など)で求められる

->顧客要求の「波」は来る

社会責任監査規格対応は日本も海外もあまりできていない(リスクあり)

早めに規格対応のアクションを起こす事が重要

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ポイント

3

1 ビューローベリタスについて

2 社会責任監査の種類

3 サプライチェーンの現状と課題

4 課題の是正・解決の方向性


内容

4

創業: 1828年

本社:フランス・パリ (日本法人本社:横浜市中区)

業務内容: 品質、健康・安全、環境及び社会的責任分野(QHSE&SR)に

おける適合性評価を行う、世界最大級の第三者民間検査・認証機関

従業員: 75,000人

売上: 2018年、48億ユーロ(約5,900億円)

株式上場: 2007年10月 (NYSE Euronext)


1 ビューローベリタスについて: ビューローベリタスグループ

5 © Copyright Bureau Veritas


5

国内の顧客総数：約11,850社

船級

産業

システム認証

建築認証

インサービス検査

政府指定検査・国際貿易検査

ISO9001/14001/27001、

サステナビリティレポート検証、RBA、SMETA、

FSSC22000、TS、AS、サプライヤー監査、

確認検査、構造適判、住宅性能評価、

適合証明、テクニカル・DD、

技術監査、CASBEE、LEED、

原子力機器/ASME・プラント関連機器・設備/ラインパイプ, OCTG・配管の検査、

LNGターミナル等プロジェクト認証、CE Marking

新造船検査、就航船検査、

舶用機器・鋼材検査、図面承認、

オフショア承認及び検査

船積前検査(PSI)、X線スキャン、

適合性検証(VOC)、

自動車関連サービス、

放射能測定検査

日立製作所、東芝、ネスレ日本、

ソニー、ニコン、村田製作所、オムロン、

エプソングループ、三菱自動車、

出光興産、セイコーインスツル他

清水建設、大成建設、鹿島建設、

大和ハウス、三井不動産、

野村不動産、大東建託、大京、

日本GE 他

日本郵船、商船三井、川崎汽船、

ジャパンマリンユナイテッド、三菱重工業

川崎重工、今治造船、三井造船、他

ブリヂストン、住友ゴム工業、東洋

ゴム工業、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、豊田通商、三菱商事、

三井物産、大丸松坂屋百貨店他

荏原製作所、日本製鋼所、関西電力、

三菱重工業、川崎重工業、IHI、日揮、

東洋エンジニアリング、新日鐵住金、

神戸製鋼、千代田化工建設、日立製作所、住友商事他

4,550社

300社

5,000社

800社

200社

主要サービス主要大手顧客 (順不同)

消費財消費財(玩具・幼児製品、ハードライン製品、

ソフトライン製品、電気･電子製品、食品)の試験・検査・認証

良品計画、バンダイ、トイザらス、

コストコ、ミツカン、三菱商事、

日清フーズ、S&B、西友他

1,000社

6






内容

7

RBA(旧EICC)

Responsible Business Alliance（責任あるビジネスアライアンス）

世界最大級のCSR アライアンス

本部：米国ワシントンDCエリア

メンバー企業：

主に電子電機IT企業（例：ソニー社、アップル社、東芝社など）だが、自動車（テスラ社、フォード社）や玩具企業（ハスブロ社）など業界が広がってきている

行動規範と監査を通じサステナブルで倫理的な労働環境の実現

メンバー企業140社、総売り上げ550兆円

600万人の雇用


2 社会責任監査の種類： RBA

出典：アップル社


2 社会責任監査の種類：対象分野と例

労働倫理

安全衛生環境

マネジメントシステム

規格「要求事項」は235ページ分にもなる

規格内容

例）

労働時間

週の労働時間は60時間まで。7日間に1日以上の休日。

賃金および福利厚生

最低賃金、残業、および法的に義務づけられている福利厚生に関連する法律を含め、すべての適用される賃金に関する法律に準拠。

紛争鉱物

紛争地の資金源になる鉱物を使っていないか


2 社会責任監査の種類： RBA監査の規模

RBA監査：世界の件数と国

出典：RBA


2 社会責任監査の種類： SMETA

Sedex SMETA監査

Sedex Members Ethical Trade Audit

主に小売、食品、流通業界のアライアンス

行動規範と監査を通じサステナブルで倫理的な労働環境の実現

英国ロンドンに本部

メンバー企業（一例）


2 社会責任監査の種類： SMETA

複数メンバー企業顧客に監査結果開示可能->重複監査低減

グローバルサプライチェーンにおける企業倫理の向上

監査市場（件数）はRBAよりも多い

中小規模の受審組織が多い


2 社会責任監査の種類：監査規格は何が基になっているか？

ILO条約

安全衛生、住居など

マネジメントシステム規格

ISO14001, OHSAS18001, SA8000

各国の法令

米ドット・フランク法など

業界のインプット

13






内容



15

社会問題->業界団体設立->監査



1990年代

• ナイキ・リーバイス等児童労働問題

• AVON、バーバリー、ウォルトディズニー

• スポーツ用品、衣料品、おもちゃ業界が中心

2000年代以降

• SEDEX設立 (UKの小売り) 2001年

• RBA 2004年


3 サプライチェーンの現状と課題: RBA監査国ごとのトップ３不適合項目

RBA監査：2017年不適合項目

出典：RBA


3 サプライチェーンの現状と課題: RBA監査不適合項目

RBA監査：2017年不適合項目

出典：RBA

RBA不適合ランキング（2017年全世界）

13% A3 労働時間

10% B2 非常時の対応

6% B1 労働安全

5% A3 賃金と福利厚生

4% C3 危険物

4% E1 サプライヤー責任

4% B3 怪我と疾病

4% A1 自由選択による労働

4% B7 食堂・寮

3% C8 エネルギー消費とGHG

3% A6 差別

2% E2 経営陣説明責任

2% C7 雨水管理

2% B4 衛生

2% E4 リスク分析・管理

2% E5 改善目標

2% E3 法令・顧客要求事項

2% E9 監査と評価

2% D5 フェアビジネス

2% A2 児童労働

18

労働時間課題

長時間労働（特に中国など）、週60時間などを上回る

7日以上の連勤（海外、日本）

賃金・福利厚生課題

時間外賃金不払い、時間外割増率が間違っている（海外）

企業が保険の負担金不払い（中国）


3 サプライチェーンの現状と課題:労働

19

ハラスメント

労働者インタビュー時に発覚する事も（海外、日本）

ただ監査手法として複数情報源からの裏付けが必要な為、立証が困難な場合も

身分証明書

年金手帳（IDとみなされる）を雇用者が預かっている（日本）

年齢差別

求人票で年齢制限をしている（日本）

児童労働

稀に発生（中国）

児童労働が発覚した場合の手順が無い（海外、日本）



20

若年労働者（海外、日本）

危険な仕事や深夜時間外労働禁止の方針が無い

宗教（海外、日本）

労働者の宗教の自由への便宜のシステムが無い

規格は礼拝室、安息日、服装、男女配慮、食事

（ハラル、宗教上禁止されている食べ物など）

サプライヤー管理（海外、日本）

サプライヤーのサプライヤ規格の未監査・未評価

サプライヤーへのサプライヤ規格を伝えていない



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21

出稼ぎ労働者の人権（日本、海外）

背景

斡旋手数料ローンの返済ができず、国に帰れない

ローンは母国の資産を担保にするなどしている

出稼ぎ送り出し・受け入れ双方国で複数の仲介者の存在により手数料が雪だるま式に多額に

課題

劣悪な住まい

パスポートやID等会社が預かっている

契約内容不明確



出典：外務省HP

22

出稼ぎ労働者（日本）

背景

技能実習生：26万人、ベトナム、中国、フィリピンなど

課題

出稼ぎ労働者が理解できる言語での機械安全指示書不備など



出典：日本政策金融公庫中小企業における外国人労働者の役割

「外国人材の活用に関するアンケート」





23

環境の課題

産廃業者の評価結果が無い


3 サプライチェーンの現状と課題:環境

24

労働現場の安全性の課題

保護具が支給されていない（海外）

保護具が不適切（海外、日本）

緊急時の対応（海外、日本両方）

緊急時の対応の種類（暴力事件・テロ）

社員寮の安全性（非常時の安全性、避難訓練）

避難経路上に障害物

非常口サインが見えない・不適切

非常口が施錠されている、開閉が容易でない（シングルアクションで無い）

消火器・消火栓が見えにくい、障害物がある


3 サプライチェーンの現状と課題:安全


25

労働現場の安全性:緊急時の体制事例


3 サプライチェーンの現状と課題:安全性事例

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26

日本：日本ではまだ新しいトピックへの対応

搾乳場所確保など

倫理に関する方針・手順が無い

倫理に関するマネジメントシステムが無い

日本では労働者の宗教の配慮がほぼ不要な為、海外の現地宗教文化に対する知識不足

海外：ハラスメントや指導

どこまでからアウトか、どう伝えるか（特に海外でプライバシーの考え方などが違う）

日本・海外：宗教や妊婦など個人の状況（プライバシー）

リスクアセス時、プライバシーが関わる部分をどうするか

リクルート時に何が聞けるか（年齢・写真など）

PC（ポリティカルコレクトネス）温度感が分からない


3 サプライチェーンの現状と課題:日本企業が直面する課題

27

日本：明文化・記録不足「当たり前」の事でも明文化が必要

「当たり前」の事でも明文化が必要

「実施はしているんですが。。。」->記録がない

児童労働禁止、談合禁止など

海外：従業員のニーズ

海外工場の労働者の離職率高止まりの原因が分からない（若いから？忠誠心の違い？）

折角トレーニングを施したのに。。。




28

海外：工場（新たなM&Aなど含め）のCSR力の把握

M&Aで取得した海外工場など何がどの程度できているか分からない

監査実施のマンパワー不足

自社規格監査の限界、独立した第3者監査ではない（信用度が足りない、顧客が受け入れない）

業界内外含めた他社と比べどの程度できているのか不明

日本、海外：急に社会監査要求が来て狼狽える

そもそも規格が英語でニュアンスが分からないなど実装も難しい

新たな規格で頼れるコンサルも日本に存在しない

何度か交渉する内に結局監査今回は不要となったが、近い将来対応は必須。。。



29






内容


4 課題の是正・解決の方向性：社会責任監査の種類

RBA監査：監査平均スコア

出典：RBA

31

労働時間（海外）

長時間労働の是正が様々な国でできていない

業界団体は長年に渡り、労働時間低減の啓蒙や研修・調整などしてきたが明確な改善のトレンドが見られなかった

RBAでは不適合基準を若干緩めるなどもしている

労働者にとっては労働時間減＝収入減->より稼げる他の工場に転職してしまう

顧客が短納期要求（電子機器などは陳腐化が早く、製品を今すぐに市場に出したい）


4 課題の是正・解決の方向性：労働時間改善の難しさ

32

労働時間（日本）

日本では労働時間の改善傾向が見られる（監査及びOECDデータ）

政府主導の政策:働き方改革

シフトの効率化、作業員増員


4 課題の是正・解決の方向性：日本の労働時間課題

1729

1719

1714

1710

1670

1680

1690

1700

1710

1720

1730

1740

2014 2015 2016 2017

日本の平均年間労働時間データ：OECD 2014-2017年

系列1

33

非常口にパニックハードウェア装着義務

全ての非常口に工事となると、多額の費用が発生

不適合後、実際に対応した工場も

グローバル規格に対し、日本からインプットをしていく政治力も必要

日本企業がロビー活動をし、要求事項の改定で緩くなった


4 課題の是正・解決の方向性：非常口に関する対応（事例）


34

出稼ぎ労働者

斡旋料及び手数料は企業が負担する

飛行機代（来日、帰国）、検診代、パスポート・ビザ代

外国語の通訳を監査時に使用（出稼ぎ労働者の本音）


4 課題の是正・解決の方向性：出稼ぎ労働者に関する対応

35

出稼ぎ労働者

斡旋料・手数料は企業が負担しなければならないという不適合

実際に対応し、手数料を企業が事後負担した


4 課題の是正・解決の方向性：出稼ぎ労働者に関する対応（事例）

36

規格把握

説明会、アウトリーチミーティング、勉強会など参加

組織の現状把握

自己調査

内部監査

外部監査機関のGAP監査、パイロット監査

規格対応

監査結果を踏まえ、GAP部分の是正・実装

他工場・海外にも水平展開

業界アライアンスに参加

行動規範、規格へのインプットや提言

アライアンスのリソース活用（研修、ツール）


4 課題の是正・解決の方向性：どう新たな規格に対応するか


37

如何に要求レベルの高い顧客要求事項（人権・倫理など）を実装したか

CSR部を社長直轄に

CSR部の非常に強力なリーダー（伝道師）が組織文化を変革・リードした

社長も外部監査を受けた

本社CSR部員が全ての工場を徹底的に内部監査

監査機関に外部からの監査を実施し、フィードバックループを作った


4 課題の是正・解決の方向性：事例

38

RBAなどは業界の垣根が少し低くなってきている（例:電子業界外から他業界が乗り入れなど）

小売り：Walmart, Amazon

自動車：Ford, Tesla

玩具：Hasbro

監査対象組織裾野が拡大中

ティア2サプライヤ

サービス業

小規模組織

ローリスク国（日本など）

企業独自規格（例:X社サプライヤ基準）からグローバル規格（例:RBA）へ移行する場合も


4 課題の是正・解決の方向性：社会責任監査の動向

出典：テスラ社

39

RBAなどメジャーな企業が多数集結しより大きな影響力を持ち始めている

サプライヤー企業自体の責任可視化（サプライヤーリスト公開など）


4 課題の是正・解決の方向性：社会責任監査の動向

出典：ブルームバーグニュース

出典：アップル社

40

顧客から規格適合・監査要求はより広範囲(より小規模組織、日本など)で求められる

->顧客要求の「波」は来る

社会責任監査規格対応は日本も海外もあまりできていない(リスクあり)

早めに規格対応のアクションを起こす事が重要


全体のまとめ


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