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海洋科学検術 センター試験研呪報告JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH (1991 ) 小笠原海域「海形海山」の熱水性マンガン酸化物 一 第408回潜航調査- 臼井 朗*1 伊豆・小笠原弧の火山 フロンHこ位・ する海形海山の緩創面,水深900~12a)m の砂賢堆秋物上に分布する熱水性マンガン酸化物の産状観察・献料採歌・温度測定 を 行 な い 形 成 過 程 を 考察 し た。 活動 初|扣 こ下 部 火山 岩 体 の 割 れ目 から 供給 され たマ ンガンを溜存する低温熱水溶i を逝して租やかに浸透・上昇 S9 し,海底而近傍において酸化的な海水にふれてマンガン酸化物を沈殿させる。海底 面にはマ ンガン酸化物に胆結された数 cm厚の半固結砂岩庖が形成される。その 後, お そら く岡 欠的 な 強い 活 動 に よ って , リッ ジ 状 ま た はマ ウ ンド 状 の 多 数 の湧 出 孔が形成される。本潜航では直接の噴出現象は確認されなかったが閃査結果はいず れも現在の熟水活助を支持する。この穏やかな活動様式は鳥弧における低温熱水活 動の一典型であると考えられる。 The Hydrothermal Manganese Deposits on the Raikata Seamount, Izu-Ogasawara Arc: "Shinkai 2000" Div≪ 408 Akira USUI** On the flank of the Kaikata Seamount in (he volcanic front of the feu-Oga- sawara (Bonin) Arc, possible recent hydrothermal manganese deposits were observed during the Dive 408 with Shinkm 2000 on the sea floor of sandy vol* canic sediments at depths between 900 and 1200m. The deposits cover almost entire sediment surfaces across the manganese belt on the northwestern flank of the seamount. Occurrence of the deposits, sea floor morphology, and temperature of the sediments, combined with the previous shipboard survey, )ead to a possible model for forming process of hydrothermal manganese de- posits. The low-temperature hydrothermal solution derived from the fractures or faults within the volcanic substrate ascends through porous volcanic sands, resulting in precipitation of manganate minerals which cement surface sand layers of several centimeters in thickness. The followed more intense and probably intermittent discharge of the hydrothermal solutions forms typical ridge-like vencs and mounds on the flat sea floor. The later dense manganate layers develop just beneath the semi-consolidated sandstone. The wet undis- turbed samples of manganate collected at three stations along the track are 一--- 一一一 一一 梟技術院地質調介所 海 洋地 貿部 2 GEOLOGICAL SURVISY OF j 八PAN JAMSTECTR DEEPSEA RESEARC 卜1 0991 )

New 小笠原海域「海形海山」の熱水性マンガン酸化物 一第408回潜 … · 2015. 1. 19. · of the seamount. Occurrence of the deposits, sea floor morphology, and

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  • 海洋科学検術 センター試験研呪報告JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH (1991 )

    小笠原海域「海形海山」の熱水性マンガン酸化物

    一第408回潜航調査-

    臼井  朗*1

    伊豆・小笠原弧の火山 フロンHこ位・ する海形海山の緩創面,水深900~12a)m

    の砂賢堆秋物上に分布する熱水性マンガン酸化物の産状観察・献料採歌・温度測定

    を行ない形成過程を考察した。活動初|扣こ下部火山岩体の割れ目から供給されたマ

    ンガンを溜存する低温熱水溶i

    を逝して租やかに浸透・上昇

    S9

    し,海底而近傍において酸化的な海水にふれてマンガン酸化物を沈殿させる。海底

    面にはマ ンガン酸化物に胆結された数 cm厚の半固結砂岩庖が形成される。その

    後,おそらく岡 欠的な強い活動によって,リッジ状またはマウンド状の多数の湧出

    孔が形成される。本潜航では直接の噴出現象は確認されなかったが閃査結果はいず

    れも現在の熟水活助を支持する。この穏やかな活動様式は鳥弧における低温熱水活

    動の一典型であると考えられる。

    The Hydrothermal Manganese Deposits on the Raikata Seamount,

    Izu-Ogasawara Arc: "Shinkai 2000" Div≪ 408

    Akira USUI**

    On the flank of the Kaikata Seamount in (he volcanic front of the feu-Oga-

    sawara (Bonin) Arc, possible recent hydrothermal manganese deposits were

    observed during the Dive 408 with Shinkm 2000 on the sea floor of sandy vol*

    canic sediments at depths between 900 and 1200m. The deposits cover almost

    entire sediment surfaces across the manganese belt on the northwestern flank

    of the seamount. Occurrence of the deposits, sea floor morphology, and

    temperature of the sediments, combined with the previous shipboard survey,

    )ead to a possible model for forming process of hydrothermal manganese de-

    posits. The low-temperature hydrothermal solution derived from the fractures

    or faults within the volcanic substrate ascends through porous volcanic sands,

    resulting in precipitation of manganate minerals which cement surface sand

    layers of several centimeters in thickness. The followed more intense and

    probably intermittent discharge of the hydrothermal solutions forms typical

    ridge-like vencs and mounds on the flat sea floor. The later dense manganate

    layers develop just beneath the semi-consolidated sandstone. The wet undis-

    turbed samples of manganate collected at three stations along the track are

    一 一--- 一 一 一 一 一 一 一 一一 一一 一

    梟 技 術 院 地 質 調 介所 海 洋地 貿部

    2 GEOLOGICAL SURVISY OF j 八PAN

    JAMSTECTR DEEPSEA RESEARC 卜1 0991)

  • similar in chemical and minertlogicaf characteristics to those synthesized from

    alkaline solutions of manganese.

    The moderate activity in this area may be a type of low-temperature hydro*

    thermal activity to submarine island-are volcanoes. Similar occurrences of

    hydrotbenaal maogaaese deposits are mcsl likely expected in other recent

    active areas and past island arcs.

    1.はじめに

    近年 世界各地の中央海嶺系,鳥弧系のリフトお

    よび海底活火山などにおいて,硫化物を沈殿する

    高温の熟水喰出現象が術人潜水艇に よって確認さ

    れ,その酒助の様子,海底下の熱水循爾系の実態

    が明らかになりつつある。一方でこ れらの高温熱

    水噴出城の周辺に。 熱水性の鉄・マンガン酸化物

    が分布することが多くの海娘で認められている。

    双に本調査海域の海形海山のマンガン酸化物分布

    域でも同海山東部の KC峰カルデラの中央火口丘

    において熱水湧出現 匁と破化物の分布がしんかい

    2000 に よって 確認 さ れてい る (仲 二郎 ほか。

    1989)。 必ずしも周辺に硫化物を伴わないが,酸

    化物はより低温下で形成されるため,一般的にそ

    の分布腮囲は硫化物 よりはるかに広い。さらに硫

    化物は通常の海底または海底堆積物の環塊下で容

    易に分解されるのに対して,酸化物は岡条件下で

    安定なため,遇去の地質時代の熱水活助の指標と

    しても有用である。 また海底熱水活助によって海

    水へ放出される金属成分はマンガン団塊・マンガ

    ンクラストへの一つの重要な金属供給源であるか

    ら。海洋における地球化学サイクルのなかでの物

    質収文を見稍る手がかりにもなる。

    熱水性鉄・マンガン酸化物は世界各地の海洋底

    から多数採収されているものの。 熱水湧出城を有

    人潜水艇によって観察した例はまだ無い。小規模

    なマンガン酸化物の沈殿が沖縄トラフ伊平屋海嶺

    のマウンド (内部の温度は40 ℃程度)において採

    取されているが, 沈殿物の主成分は鉄酸化物と琵

    酸塩である(木村ほ か,1987)。一 方海形海山KM

    峰では地質飼査所による過去5か年の躙査・研究

    により熱水性マンガン淤化物の広範な分布と現在

    の低温為水活助の 可能性が指摘されていた。筆者

    は1989 印6月に当 モデ ル海域に おいて し んかい

    2000 による潜航調査を実施する機会を得たので以

    下に悚告する。

    本海域で は以下の3つの目的をもって潜航調査

    を実施した。1) 熱水(温泉水)湧出孔の確認と

    欽・マンガン酸化物の産状観察による沈殿メカニ

    ズムの解明,2)成層水及び堆積初の温度測定に

    よる現在の活助可能性の検証,および3)自然乾

    燥・昇温を経ない現場試料の採取である。 本潜航

    の飼査結果を述べる前に。従来の船上調査の赭果

    をまとめる。

    2.従来の飼査

    地質糾査所の 厂海底熱水活励に伴う麗金属資源

    の調査手法に閧する研究」(1984-1989)では, 鳥

    弧に伴う海底熱水活助の地質学的背景と探査手法

    に閲する地球科学的研究を実施してきたが。本稿

    では海形海山の熱水性マンガン破化物に限ってそ

    の知見をまとめる。海形海山は伊豆・小笠原弧の

    火山フロント,七島一硫黄島海嶺上の海底活火山

    である。酒去において喰火の記録や変色水の報告

    はない が,北方の四之鳥,南方の海徳海山は近年

    激しい噴火活動を行なっている。海形海山は4つ

    の山体(KN, KM. KS, KC 峰)から成る大型の

    複合火山である(圜l)。KC 峰は竃径3k 。カルデ

    ラを持つ安山岩質の山体であり内郎には玄武岩質

    の中央火口丘が存在する。その頂部では22で の熱

    水喰川と坐物群集が確認されている(前述,仲ほ

    か,1989 )。 西方の円錐 形の3つ の山体(KN,

    KM. KS 峰)は北北東一南南西の血義 上に配列す

    る。前二者からはドレッジ,グクプにようて熱水

    性マンガン酸化物(稀に鉄酸化物を伴う)が多数

    探収されている。 特にKM峰では0.5 -1マイル川

    隔で60点以上の戚質探取(単発カメラ付き)を行

    ない。その分布概薺を把握した (図 2)。その結

    果から同酸化物は 水深900m一】200mの海底に,

    幅2km 前後,延長約10km の帯状地破をなして広

    範に分布するらしいことが分かってきた。延艮方

    向 の北東一南西は加述の3つの山体の配列方向と

    ヽJAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH (199D

  • ljll  誨 形 海111に お け る 熱 水 性 酸 化 物 ・ 硫lヒ 物 の 分 布 と 潜 航 地 点C 地 質 調 企 所 の 調 査

    結 米 よ り) 。

    上 国 の 等 深 線 は 匍 匐 m 及 び7(X)0 ., 下 園 の 等 濠 維 間 隔 は50.。 KM 峰 の||| 疸 拿

    裸 は171 加。 熱 水 性 マ ンガ ン 酸 化 勧 の 帯 状 分 布 域 を 破 線 で 示 し た 。

    Fig. 1. Distribution cf bydrolhel・mal deposits in Kaikata Seamounl and diviag sile.

    Contour intervals ll・e 2χχ}O m and?0001nillllleugpQr m呻50 m in lhe lo wel・

    map, Dashed lines indicat e b011ndaries 01 n・ineralizattoit s・ith hydrothermal

    ●lnganese oside {all data lrl・ Gs} 0qicll S11「vり・of Japan). The walerdept ●

    01 Ill* KM peak is 171m.

    JAMSTECTR DEEPSEA REsEARcH (199n 91

  • 図 2  海 形 海 山 KM 峰 に お け る 熱 水 鎧 酸 化 物 の 分 布 と 柱 状 図 (Usuiela 凵989 に 加 筆 )。

    Fig. 2 Description of faydrotherma 】m21Salese oxide of the s ●rlace sandy sediments Ln lhe Kaikala

    Sealoull (modelied from Usui el al.. 1988).

    ほぼ 一致する。

    こ の召 状地蛾はKM 峰 の北西麓,勾配約10°の

    火lj」砂で 覆われる起伏の少ない斜而上にあ って,

    熟水性マ ンガン酸化物は海底を覆って分布する。

    一般に火山岩 質の砂質堆積物 (わずかに浮遊性 有

    孔虫を含む)の表層致cm をマンガン酸化物か基

    質となって曜結した産状を呈する。固 結ないし半

    固結板状の砂岩瓠の直下には,しぱしぱ数 mm~

    Zcm厚の級密・均質・亜光沢・灰 黒色 のマ ンガン

    酸化物昵が認められる。U. Tilの同位体に よる放

    射化学年代は黒色砂岩層直下の緻密層で 4万一5

    万年,均質層 最下部では3000 年未満と上下が辿転

    していること (Melh and Reyss, pers.c・mj お

    よびその成長構造 から最新の酸化物層は下|匈きに

    成長していることが明 かとなっている。

    化学・鉱物分析の結果は,海水起源。続成起源

    の深海底マンガン同塊 ・マンガンクラストの一般

    的特徴とは明 破に 異なることを示している。非常

    に 高い Mn/Fe 比, 低い 震金属(Cu. Ni. O・, Zn.

    92

    Pb ) 含 有 量, お よび 低 いSi,AI 含有 母で 特 徹づ

    けら れる。 重 金属 含有量 の オーダ ーは 火山 署のそ

    れ と同 程度であ り, そ れよ り低いこ と も希で はな

    い。 粉 末X 線 回 折 パ ター ン は10A mallganale系

    (tod・r・kite に 類 似} ま た は 7 A m3nganate 系

    (birnessileに 類似) の合 成産 物に 一致 する。 震者

    はft Ni. Cu マ ン ガ ン団 塊 と|同じX 纖回 折 パ タ ー

    ンを示す か化 学組 成的 にはNi. Cu. Zn をほ とん ど

    含 まず, 代 りにア ルカ リ, アルカ リ土 顛元素 を含

    む と考え られてい る。 海形 海山の 熟水性マ ンガ ン

    酸化 物の 形成 条件, 鉱物 化学的性 貿につ いて はす

    で にUsui et al. 0989 ) に 詐 しく 述 べ ら れ て い

    る。 一 つ の解 釈は 風 乾状 態 で10 Å ・anganate を

    示 す もの は7 Å ・anganate よ り も比 較的 高 温‘F

    で 形成 され たとい うも のであ る。 当帯 状地 域の中

    軸 郤付 近では 前老 がよ り多 産す る。 また中 紬付 近

    は 周縁 部に比 べ酸化物 層が厚 く。 上述 の緻 密・均

    質繝 が多 い傾向 があ るこ と も指摘 さ れた。こ れ ら

    の 結果 に基づ いて し んかい2000 の調査 副線 は帯状

    JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH (199D

  • 域を横断するように設定した(圜 Z)。

    幣状域付近のサイドスキ ャンソ ナー詞査も実施

    したが,繿やかな起伏のほかは顕著な構造は認め

    られない (村上ほか,1986)。海底カメラ(テレビ

    付き巡続カメラまたは採泥器付属の単発カメラ)

    では平坦な海底に単調な砂質堆積物が続く様子し

    か得られず,喰出孔,割れ目等は観察されていな

    い。単発カメラの海底写真のなかに創れ目らしい

    ものが画面を横切っているものが一枚あったが不

    明 瞭である(臼井ほ か,1987)。山崎(1988)は

    本潜航調査の第一着底点の西方1.3 マイルの帯状

    地域内部において測定隈差を超える非常に高い地

    般熱流最(約9(X)mW/m2) を報さしている。

    3.潜航調査の概要

    前述の目的に沿って,以下の ように当初2回の

    淋航地点 を予 定した。観察測楾は幣状地域を直角

    に横断し。 緩斜面をほぽKM峰山頂に向けて 登る

    方向に進みなから,数回の聊底と泥温測定(また

    はピートフロー)の紐合せを行なう。 各着底点で

    の作業 は通常の目視観讚』,写真撮影(船外,船

    内)のほか電動グラバーとマニピュレーターによ

    る試料探取と温度測定を行なう。測定は東大地震

    研  山野誠氏作成の簡易式ピートフロー計により

    底層水温と堆積物の温度測定を行う。同時 に船体

    伽え付けのCTD 計による測定を行う。 第1回の

    潜航で帯状地域を完全に横断できた場合は,さら

    に北方1マイルの予飼渕線に移る予定であった。

    また第1回の潜航で明らかな湧水現象が確認され

    た鳩合は予め用意した採水器を装着して再度同地

    点に潜航することとした。潜航調査の概要を表1

    図 3 「し ん か い2000 」 の 航 跡 に 沿 っ た マ ン ガ ン 酸 化 物 の 観 察 紀 録 。

    砂 質 堆 積 物 か ら 成 る 海 廠 表 層 の ほ と ん ど が 酸 化 物 に よ 9 で 覆 わ れ

    て い る 。

    Fig.3 Track of Dive 408 and description of seμloors.

    Mosl 01 the 1100 「s are covered with nlanpne se-cenlenled sand・

    93

  • 図 4  着 定 点 と 離 底 点 を 結 ぶ 垂 直 面 に 投 影 し た 海 底l 听 面 。

    廠 質 を 示 す1.2.3 の 凡 例 は 図 3 と 火 通 で あ る 。

    Fig. 4 CrOSS section ol lhe sea floor on t he NW-SE plane of pr o・

    jeclion・

    Three numbers for legend are same as Fig ure 3.

    に示す。予伽日を含めた3日間の日程のうち前2

    日は海況悪化のため潜航中止となり。最終日のみ

    1回の潜航を行った。諮底作業と測定に予恕以上

    に時間 を費やしたため,結果的には帯状地域の北

    西緑から観察を始めてほぽ中軸郎 まで進んだとこ

    ろで調査を打切った。その鬨約200m の間隔で4

    回の着底作業 を行った(うち1回は強い底榊流の

    ため翦底作業 を中止)。図aには航跡図と簡単な

    ルートマップを,図4にはその横断面を示した。

    代表的な海底写真 を時間を追って写真 Hこ示す。

    4.潜航調査結果

    第1着底点 (St.1)は図2にあるように帯状域

    の周縁郤であ る。従米の 白嶺九の調査から予恕さ

    れたように, 全体としては火山性砂質堆積物から

    なる平坦な海底である。 海底面は部分的にマンガ

    ン巌化物に謬結 された黒色の 半固結砂 岩(厚さ1

    ~2cm) に覆われる(写真1-A) 。試料は非常にも

    ろ いためマニピュレーターによる採収は不可能で

    あった。1試料を電動グラバーにて採収した。一

    辺数】Ocm 程度の不規則な多 角形の板状になった

    半|絹結砂岩が瓦を蟆いたように分布している。半

    圃結砂岩の割れ目が至る所に発達するが,以降の

    測点に比較すると海底は単調で,新しい砂貿堆棚

    物によって覆われ始めているところも多い。割れ

    目の中には多数の クモヒ1・デが棲息している。海

    底にはところどころ数cm程度の軽石の慨石か認

    められる。全体としてマンガン酸化物の鉱化作用

    は偶い。粁底して海底 を観察したが,水のゆらぎ

    の ような直接の湧水現 象は確 認されなかった。

    ピートフロー計のセンサー(間隔25cm) を堆積

    物中に挿入したが砂質堆穣物では深くささらない

    ため, 下方のセ ンサーの温度 データ(海底から

    10em 程度)のみが有効であった。本測点の堆積

    物温度は底層 水よりも0.16℃高いことがわかる。

    測定結果 を図 5と裟2に他の2測点とともに示

    す。

    測点St.l を離れ, 訓点に沿って斜面 を靦簾し

    ながら南東方向に向 かう。 海底の表面は概 ね半固

    j;:

    M 5  ピ ー ト フ ロ ー 計 に よ る 堆 硫 物 のi 畆度 測 定 結

    果 。

    下 方 の セ ン サ ー 挿 入 後 の 温 度 嚢ll; 。 上 向

    き , 下 向 き の 矢 印 は 引 き 抜 き 畤 , 挿 人 時 を

    示 す 。 セ ン サ ー は い ず れ も 海 底 か ら 約

    10cm の 深 さ に あ る 。

    |。` jg,5.Tellperal ure mes●『e●e11 01 surface sedj・

    nlenls with tbe hell rlo w meter al thl・ ee

    stations.

    Thethel・mister is wilhil sedimenls 10 c 僵

    b1・10s・ lha sul・race. Downward and up・

    wal・d arl・ ow s inllicale slarl and end ol

    l●eas111ellenl.

    JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH (1991)

  • 俶 1  温亅宦儷 定 の 雌 蘂 。

    T●bS● 2 T ●讎penl ●rt ●sd be縅n ●w ia lb* llr・

    ls ・ ●s●1・s・・●●

    ている。St.3を離れると部分的には平堰躑やり.

    プ ルマークが存在するが(写翼1-C),一面に方

    向 N籌 E゚-N5(rEのリッジ辟が卓越する.この方

    向は測線食体を通じてほぼ一定である。St.4に向

    う油中で北肉きの隹い眞れ(約0.6kt)にちうて

    船体は北に流された. リ.プルマークの延長方向

    はN-S系でこの眞向とは一歡しない.

    剩点St.4 の近くでは再ぴリッジ群が卓越し始

    めたので停船する. 海底の様子は写真1 (G.H.

    I)にあるようにS 亀.3に似ているがややリ7ジの

    スケールが大きい.その内部や割れ目の問にはク

    モヒトデが多数倹息し足をのぞかせている(零真

    1-F).着艦籖,皿度測定と試料探取を行なった.

    海廝面の摺輪層は厚い もので6-7f- あってSl.l

    ―St.3に比べると厚い. またマニビ.レーダーで

    挟みとれる輹度に固結が適んでいる.一散に膰繪

    層は最 詼層 の2 ―3cm の半固結砂 岩と 直下の均

    質・繊密な純粋なマンガン酸化物層から成ってい

    る.しかしさらに下郎は未髑綰の砂質増積物とな

    る.本地点では多量の不撹乱試料を探取した.温

    皮剽定はリ.ジの頂郎で行なウだが.ここでは堆

    積物の温度が底層水温よりやや低く,センサー押

    入糺 時間とともにほぼ海水遑廖まで復兄してし

    まった.復元したのは挿入深度が小さかったため

    であろう.一つの測定データのみからは結論は出

    せないが皿齏の逆転には様々な理由が考えられ

    る. 近傍の湧出孔から高温の熱水が湧き出ている

    ことも一つの町麓性として挙げられるが,単に底

    刷水の定期的蜜働かもしれない.今後靜繼な測定

    が必要である.

    訓点St.4 を離れさらに150・ 進んだ最終離廰点

    までの問も違謇の躙紬珊やり.ジ状搬地形が一一嚢

    に認められる力r徐々に規模が小さくなるように兇

    える.時間的飼約のため奩側線を終了せずに浮上

    せざるを得なかったが,帯状地峨の中軸部付近ま

    で連続的に熱水性マンガン酸化物が分●すること

    が検足され,心初の目的は概ね達成された.

    5.試料の記載と分析

    熊水性マンガン酸化物試科は空気中で保存する

    と亂水によウて容

    易に鉱初カt変化することがある

    ため.揚収後海水に攪したまま冷蔵侭存した.

    st.2以外の3点で試料を採取した. St.lの肬畆1ま

    紡状態にあるが. St.l と岡様船体の勵●に伴った

    ●の舞い上がりが搬しいので未●縫の●質堽稍物

    が多いと考えられる.剥線に沿.て.瓦狄に創れ

    た海雌漏と一面平墻な海底の睥方が交亶に不観則

    に出現する.St.2近くではS.1に比べて海底の凹

    凸が臘しくなり.割れ目や多様な形状の盛り上が

    りなどの複雑な海雌康地娜が目立ウでくる.特に

    皺坎の卒廛輪●倡に覆われた.畝に似たIJ .ジ欷

    の盛り上 がりや単独のマウンドなどが卓越 する

    (写真I-B).これらは単なる張力剖れめではなく

    湾底下の未髑希珊から何らかの上肉きの力 またlj

    物貿の供給によ・.て形成されたように見える≪ 'J

    フジ状構適の頂鄒胃口郎Sこは新たなマンガン破化

    物が厚く発達することから,熱水の湧出孔である

    ことは興違いない.a.2 では麌れが強いため着底

    せず観察のみ行な.た.鄒2回目の2 £&Si.3 付

    近の海底sこは・J ツジ状の構造が海底にきらに多数

    耋,世し. 各々の・j フジ( 轜数10c胝からl●.比

    高数10cm くらい) の延長は數 ●から蝕10・ に わ

    たる.末端で分岐しなりΞ 重点のように結合した

    りする.必ずしも直鑞的ではなく,纖やかに蛇行

    したりするもの も●い. その延長方向 はSI.2 と

    S

  • 土状黒色で無光沢の半固結砂質堆積物であ&。砂

    粒の空隙を熱水性マ ンガン酸化物が光填したもの

    で非営にもろい。他の2点に見られる均貿・緻密

    な純粋なマンガン酸化 物層は本濁点で は稀であ

    る。St.3およびSt.4 ではリッジ状盛り上がりの側

    面 に斜めに横たわった板状試料を多量 に探 取し

    た。全 体の厚さは3 -6cm で, 蝨上部1 -Zc・ は

    Sul に卓越する黒色半固結砂岩黽 と岡 質の もので

    覆われている。 下部に灰鳳色・緻密・光沢貿の均

    質層(各層はlcm 程痃)が何層か重なって発達す

    るのが一般的であるが,部分的に砂賢部を伴うこ

    と もある(写真2)。

    化学分析は船上調査で採取した試剽・についてす

    でに多数行なっている(Usuiet al.。1989)。商い

    Mn含有量と極めて低い遷移金属元素含有量 を特

    徴としている(図 6),本試科は鉱物変化を中心

    に配寐する。詳しい研究結果は別の機会に述べる

    として,ここでは海底熱水性マンガン鉱物の特異

    な性質の一端を紹介する。従来の解釈では海底熟

    水性マンガン鉱物は二つの端成分 を結ぶ連続系列

    である。一成分は現在陸上に存在する熱水成マン

    ガン鉱床なと にみら れるトンネ ル構 造を もつ

    t・d・r・kiteであり。一方は富温のアルカリ性搏液

    中で合成される届構造を持つ含水マンガン酸慍鉱

    物buserite である。後者の眉 悶イオンは様々な陽

    イオン(アルカ リ,アルカリ土額,遷移金属;元

    素。有機物など)によって置換可能で,その層問

    隔は イオン覩によって7Åから25 Åまで変化す

    る。あるものは室温・空気中で脱水をおこし層問

    隔を変える。 前者はトンネルのなかに大きい陽イ

    オンを合んでいるが,安定な構造を持つため,端

    成分では4{}O℃近くまで空気中では変化しない。

    両者は基本的には化学敍成に迫いが無く,構造の

    み連続的であると筒単にまとめることができる。

    両者の形成環境 につ いて定説は ないが,Usli

    el al. (1989)は,前者は後者より高温の条件下

    で 形成すると描察している。本潜航調査では中周

    的なものに混じって,後者のbuseriteに和当する

    KM

    p16  海 形 誨||| の 熱 水 性 酸 化 物 と 中 部 太 平 洋 の 海

    水 起 源 {hydr ,qeotic } ・ 組 成 起 源

    (diageneljc ) マ ン ガ ン 団 塊 の 化 学 釐 成 と の

    比 較 {Usuielal.。1989 }。

    海 彫 海 山 【KM 】 献 料lj 鉄 , マ ン ガ ン 以 外

    の 元 素 の 含 有 量 が 極 め て 低 い 特 徴 が あ る 。

    Fig. 6 Comparison 01 chemic11 comF siliQ11 01

    hyd rolherllal iron and 鵬allganese de・

    posits of the Kai kala Seamouiit with

    lhD se or ●ydl・offtnelic ald diagelelic

    們odlle s from lie Cenlral Pacific.

    JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH  0991)

  • Man 傭●n●1● frlm Kalk ●|● Ssl. Syllhellc l ●●Il m●・lanal ●mi ≪ jam ≪・ a・        I    I    I

    1・ h●し 【6●●「≪*il NI-CJII*r*4 CM Kg ¶h・ta rd*gn・si 心・ ●吋* Cu K≪

    図 ?  側 点 4 の マ ン ガ ン 酸 化 物 と 合 成 層 状 マ ン ガ ン 酘 塩 鉱 鞠

    の 風 乾 ・ 加 熱 ・ 陽 イ オ ン 置 換 に よ る X 線 粉 末 回 折 パ タ

    ー ン 変 化 の 比 較 。

    Fig. 7 X-ray dilfraction plUeyns af the 即inga●ale slmple

    from Dive 408 1r esled in air. wilh metallic and cr p・

    nic cations in comparison with lbos e ol a tfpical

    synlhelie s heet ●a●alp lle.

    試科が採取されたのでその諸性 質を合成産物と比

    較した(図 7)。その挙動は今回の処理に限って

    いえば全く同一である。 また海水起源,続成起源

    の団塊・クラストを構成するマ ンガン鉱物に比べ

    て単粘品のサイズが桁違いに大きいことも一つの

    特徴である。 走査型電子顕微鏡は(写裏3)にあ

    るよう に, 一 股に畏さ 数 μm~数10μm,厚さ

    1μm以下の板状・短冊状の結品 からなっている。

    合成産物と同一の天然試科が得られたことは海底

    におけ るマンガン鉱物の形成, 重金属元素の汲集

    過程を解明する上で重要な手がかりとなる。

    6.海形海山における熱水性マンガン酸化

    物の形成過程

    従米の船上調査においては様々な手法で調炎し

    たにもかかわらず。熱水活助に由来する構造は観

    察されなかった。しかし潜航調査の結果,付近の

    海底は予想以上に変化に富んでいることが明かと

    なり, はじめて低温熱水活動の様子が具体的に把

    掘できた。

    JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH (1991)

    目視観察と試料採取の結果,当地域では低温熱

    水の湧出は数km にわたる広範囲の砂質堆積物全

    体におよび,穏やかな活助の過程で砂質堆積物の

    表層にマンガン酸化物を沈殿させたと考えられ

    る。海底には砂質堆積物の下部岩体の構造に規制

    された熱水活動を反映するリッジ状地形やマウン

    ドが発見された。砂貿堆積物の全局厚を示すデー

    タは無いが柱状採泥器やグラブによる試料探取か

    らは少なくともlm 程度より厚く,おそら く数

    mないし数10m 程度であろうか。

    主な湧出孔と考えられるリッジ状地形は北東一

    南西方向に延び,茹:状域の延艮方向と一致する。

    海底面は非常に平坦なことからこの方向性はおそ

    ら く火山砂の堆積以前から存在する下部の火山岩

    体の構造に出来するものと考えられる。さらに小

    さい スケールで試料を観察すると,マンガン酸化

    物は砂質堆積物 の表聯数em -10 数cm にのみ顕

    著に発達し。リッジやマウンド近くでは直下に均

    質 一級密で純粋なマンガン酸化物が厚 く発達す

    る。 年代的にはこの均質層が酘も新しい。さらに

    97

  • 一 一

    一 一

    図 8  海 形 海 山KM峨 に お け る熱 水性 マ ンガ ン酸

    化 物 の形成 過 程 (Usui.in press)。

    F4 8 Model of forming process of hydrothermal

    man駻nese depo sils on the Kaikata Sea・

    mounL

    下の同 じ岩相の砂貿堆積物中にはマ ンガ ン酸化物

    の鉱化作用はみられない。

    以上の産状観察なとから推定 した一連のマ ンガ

    ン酸 化物沈殿 のプロ セスは図 8に示 す通りで あ

    る。こ のモデルに よると眇質物が堆積する以 前に

    湧出 孔とな る亀裂が 火山岩 体に既 に存 在してい

    た。熱水の湧・ は砂質物 の堆積以 前から始 まった

    可能性 もある。次に透水性 の良い 砂貿堆積物の中

    をマ ンガンを溶存する熟水溶濱が穏 やかに拡放・

    上昇 し海底面に達 し,海底 近くの酸化的な海水に

    接して海底面の直下で沈殿 する。広 く海底 を覆っ

    た半固結駟は帽岩のような働きをして熱水溶液の

    海底への拡敵を妨げ,直下の堆積物中において沈

    殿が促 進される。 都分的に熱水の強い供給 がある

    とリ ッジ状,マ ウンド状 の湧出孔 が形成 され。そ

    の周辺で は空隙な どに厚 くマンガ ン酸化物 が沈殿

    する。

    リ・ ジ群の方向性を規制する火lj.|岩体の亀裂の

    方向は莟状地域 の延傴方I"Jのみならず,海形海山

    の3つ の小 火山体 (KN.KM.KS 峰) の直線的 配

    列方向 とも一致 している。 しかしこ の方向は 火|||

    フロ ントや南方 の火山列島の火1.11配列とは 一一致し

    ない (渦浅ほ か,)987)。岡 辺海域でこ の方向 に

    近 い も の は 孀 婦 岩 構 造 線 や 西 之 島 ト ラ フ の 延 畏 方

    向 で あ る が 当 地 放 の マ ン ガ ン 酸 化 物 の 鉱 化 作 用 と

    の 関 連 は 今 の と こ ろ 明 ら か で は な い 。

    陸 上 の 第 四 紀 火 山 の 周 辺 に も 本 海 域 に 類 似 す る

    マ ン ガ ン 酸 化 物 を 沈 殿 す る 温 泉 が 存 在 す る か( 北

    海 遊 雌 阿 豪 岳 , 鳥 根 県 三 瓶 山 , 栃 木 県 沼 沢 沼 な

    ど) 規 模 は 小 さ い 。 陸 上 火 山 に 比 べ て 海 底 火 山 で

    は 海 水 の 浸 透 に よ っ て , よ り 大 き い ス ケ ー ル の 熱

    水 循 環 系 が 生 じ る た め と 考 え ら れ る 。

    と こ ろ で 。 こ の モ デ ル で 示 し た 熱 水 性 マ ン ガ ン

    酸 化 物 の 一 連 の 形 成 過 程 は 海 形 海 山 に 特 有 の も の

    で あ ろ う か , あ る い は 海 底 火 山 に と も な う低 温 熱

    水 活 助 に 一 般 的 な も の で あ ろ う か ?  最 近 伊 豆 ・

    小 笠 原 ・ マ リ ア ナ 弧 か ら , マ ン ガ ン酸 化 物 に 謬 結

    さ れ た 火 山 砂 ま た は 火 山 砕 屑 物 が 多 数 発 見 さ れ て

    い る 。 当 海 域 南 方 の 火 山 列 島( Volcano Islands)

    か ら マ リ ア ナ 弧 に わ た る 火[LI フ ロ ン ト の 海 底 火 山

    か ら は 多 数 の 熱 水 起 源 の manganirel・ous sand・

    slones の 広 い 分 布 が 報 告 さ れ( Heinetal。1987) ,

    残 留 島 弧 の 西 七 鳥 海 嶺 で は 有 孔 虫 砂 を 膠 結 し た 災

    新 世 の 熱 水 性 マ ン ガ ン 酸 化 物 が 記 載 さ れ て い る

    (Usui el al.。1986) 。 さ ら に 第 四 紀 の 背 弧 拡 大 に

    よ っ て 形 成 さ れ た ス ミ ス リ フ ト 中 の 小 火 山 か ら も

    類 似 の 産 状 と 化 学 組 成 を 持 つ 板 状 の マ ン ガ ン 酸 化

    物 が し ん か い2{}OO に よ っ て 観 察 ・ 採 収 さ れ て い る

    (村 上 一山 畸 ,1990) 。 お そ ら く 当 海 域 で 観 察 さ れ

    た 熱 水 性 マ ン ガ ン 酸 化 物 の 産 状 は , 火 山 岩 質 堆 積

    物 や 有 孔 虫 遺 骸 の 堆 積 が 活 発 な 鳥 弧 畩 の 海 底 火 山

    に お い て 一 般 的 な も の と み な す こ と が で き る 。 今

    後 , 未 調 査 の 海 底 火 山 の 周 辺 , 背 弧 の 活 動 域 な ど

    に お い て 類 似 の 産 状 ・ 組 成 を 持 つ 熱 水 性 マ ン ガ ン

    酸 化 物 が 発 見 さ れ る に 遼 い な い 。

    7.現在の活動の可能性

    現在の熱水活動を端的に示すものは水のゆらぎ

    等の熱水噴出現象の目視確認であるが,本潜航調

    査では確認されなかった。しかし海底には最近の

    活動を示唆する構造が卓越し,半固結岩の割れ目

    や湧出孔付近の熱水性マンガン酸化物の表面は新

    しい印象を与える。活動の間接的指標の一つは海

    水または海底下の温度であ 叭 船上からの 匕-ト

    フロー洲定儘は誤差を考慮して も高異常を示し

    た。本潜飢調査の鯛査結果でも堆積物と底層水の

    JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH (1991)

  • 温度差は大きい。有為な温度異常であるか否かは

    検討の余地があるが,前のピートフローによる温

    皮差とは調和的である。 また同じ帯状地域で採取

    されたマンガン巌化物試料の放射年代は3{}CO年よ

    りも若いことがわかっている。

    これらの亊実は必ずしも現在の顕著な活動を直

    接示すものではない。しかし本海域のように数

    km に広がる堆積物を通じた熱水活助は当然穏や

    かとなることか予想され,目視確認カr可能な激し

    い活動は見られないことが一般的なのかもしれな

    い。リ。ジ状構造やマウンドを形成するrj欠的な

    強い活兔があることは十分考えられるが,定常的

    には庭層水温に近い温度の海水が砂貿堆積物中を

    循環することによって徐々に,しかしマンガン団

    塊・クラストに比べると2, 3桁速い成長速陵で

    マンガン酸化物の沈殿しているというのが現在の

    調査結果から推察されるプロセスである。今後,

    堆積物中の熱水溶液および雹上の海水の探取と分

    析および多利点で のピ ートフローの現場洲定な

    ど, 深海潜水讌を用いて実施するべき課題は多

    し19

    6.まとめ

    1)船上調査では筬察できなかった熱水湧出孔付

    近の熟水性マンガン酸化物の産状・形態が明らか

    になった。数km にわたる御状地域は砂質堆翻物

    から成る勾配約10°の平坦な海底であり,その表

    層数c・ はマンガン酸化物に鵬貉された牛囚結砂

    岩によって一而覆われている。しばしば然水i遉出

    孔とみられるり。ジ状・マウンド状の盛り上がり

    が認められ。これは茹=状地域の中軸部近くで顕著

    であ る。リッジの延長方向(りNE-ssw)は帯状

    地域の延畏方向および小火LI】体(KN. KM.Ks峰)

    の配列方向と一致する。

    2}上の榊造は眇質堆積物の堆積以前から存在す

    る下部火EI.|岩体の割れ目などから供給される低温

    の熱水溶液が砂賀噌を通じて上昇し,海底而付近

    で沈殿する過程で広い地域に形成されたものと考

    えられる。近修の高いピートフロー。底層水に対

    する堆積物の+0.1 ―0.2での温度差,若い放射化

    学年代等は双在の活助を支持するがia接の湧出現

    象は確認されなかった。然水性マンガン酸化物分

    布域ではJli常に穏やかな湧出現象がー 一般的な もの

    JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH (1991)

    かもしれない。

    3)本淋航調査では純粋な熟水性マンガン酸化物

    の不攪乱試料が探取され,湿潤・低温のまま保存

    された。そのなかからマンガン団塊・クラストや

    地質時代の熱水成マンガン鉱床にみられるマンガ

    ン鉱物とは性質を異にし,合成buseriteに相当す

    るものが綿られた。これらはマンガン鉱物の形成

    条件,金属の濃集過程を考察する上で資皿な試科

    となった。

    謝  辞

    筆者が参加した第408潜航調査において,「しん

    かい2000」の指令ほか運航チーム,「なつしま」

    乗紐貝,海洋科学技術センターの仲二郎氏および

    涓澤巨彦氏には調査作業を央施する上で貴麗なご

    助言とご支援を得た。地貿調査所の村上文敏。西

    村昭,湯浅真人。飯笹幸吉,浦辺徹郎諸氏には調

    査・研究を遇めるにあたって有益なご助言などを

    頂いた。1司所特殊技術課の竹内三郎氏には採収機

    郢の試作をお願いした。以上の方々に深く感謝す

    る。

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    調 査J そ の7.115-120.

    1 ひ0

    JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH {1991}

  • JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH {}9!川

    写 真|  冽雄 に 添 っ て撮 彰 した海 底 写 真g 各写 真

    の櫑 はI ―5m 極 度】。

    F11elg l. Ph01aSra凶s lakll lhr Quli windovr of

    ・h≪ Submersible. Width el e xh photo

    ra●leillo5即。

    A。 砂 質 郡 の 梅 底(St. 1) の 一 郎 に 熱 水

    湧 出 扎 と み ら れ る 亀 裂 が 以 察 さ れ る 。

    亀 裂 の 内 部 に クモ ヒ ト デ が 多 畝 棲 息 す

    る 。

    A Small v ests on lhe unconsolidated

    a nds lt St. 1. Many Ophiuriod s are

    ahvc in the frac(ure.

    B。 直i 萱豹50 - の マ ウ ン ド(Si. l とSI.

    2 のlnl)。 頂 郤 に ウ ミ シ ダ 匐 が 鯰 め ら れ

    る 。

    B. A hydrolh ぞrlla] mo,lnd al・ound 50 c ●1

    1● dia・eter between St 1 and St- 2.

    Crinoids i s observed e● lhe lop gl t he

    mouod.

    C。 砂 贊 堆 航 物.E の リ 。プXL・マ ー ク(Si. 2

    とSミ。3 の 同) 。n 黼lj3 -3eem く ら

    い 。

    C Ripp 】e 讖arks on Ihe u ●cgnsolidaled

    sands ol the sぞa lloel・ belw een Si. 2

    and St 3. The interval 01 lh ≪ l・ipples is

    appl・oχilllalely20t0341 tll,

    扨j

  • 卩jJ

    V. *) ・・ レl の 亀Sqi,' お11 る 心 度 洌i・ のlj

    孑ISヤ3J.

    D  Te鱸pt・r』4urf sf 』¶u・lescnl al a lldge

    ljle 、・ellllI S1 3

    E。 数 ・ 以.ljl 祓'J' るIJ ・ , ジ 狄 の 盛 り 上 か

    |) 地l ∃ISI.3)。 帽lj 約50c 。。

    1: A Scng l,dl r-11ke ・・fnl jr ひ●sd 54) rm >a

    ●・1{li all、Iseyr・jll,flfr 丶jn l でnglh al

    SI.3.

    Fj 恥底 ? 幽 を1 う 鹹 水¶17 ン ガ ノ 勣 化 物

    とjil り1 と み らII 'si

    a'xISI.'lj ク そli 卜/' が 柚.QI.す る .

    ド T 畆f  丶・` a  1104χ ¶・jljllll( ●丶‘ered by

    Mn・{r111・・111・・d tdiiilMMif al SI  爿

    ()ph・uI・l・ds IS  do11111anl ●・■ I hill 11111

    1r・clur、・・・Mb lIU・ 1,・;1111環χ .

    JAMSTECTR DEEpSEA MESEARCH  j9911

  • JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH  く1卯1)

    G。 リ ッ ジ 状 湧 出 孔 の ク ロ ー ズ ア 。 プ

    (St. 4) 。 内 部 に は 空 隙 か 麸 め ら れ る 。

    順 部 に は ウ ミシ ダ 頬 が み ら れ る 。

    (;. CIQse-up af lk (re11 cl a ridgi-lik ●

    vlnlat St. 4. Open spaces are Present

    just benealh lhe Mn- ≪mented plales

    of sandsionf. Crlneid s is ll lhe lap oI

    (he ridge.

    ||. 不 規 則 に 辿 続 す る り ツ ジ 状 湧 出jL

    (SI. 引 . 両 側 面 に 横 た わ る 熱 木 性 マ

    ン ガ ン 酸 化 物 の 呎 の 厚 さ は4 -5 ㎝ 程

    撹 . 周 囲 に 未 固 結 の 砂 穴 堆 植 物 は み ら

    れ な い .

    ||. 】「regularly running ridges at Si. 4.

    Pllles cl hydro* hernial llanganese

    {Mide s ㎝・e「lyil扈llle ridges are 4 to

    Scrl in liicbe ss.

    】SI.4 周 辺 に・;i.越 す る 幅 の 広 い リ ・ シ 状

    の 班 出 孔 。i の a 枚 の 万1 ’1.と 川 祁 , ド

    66 岩 体 の 胆 M ・ 断 層 等 に 沿 っ て 彫j& さ

    れ た 構 遭 と 考 え ら れ る 。

    I. Dominant lal・ge l・idSes around lhe SI. ・|。

    511gge sting inlenM・ dighal・g ol ll!.-dro・

    tliernal fluids .'Jong Ihe fractures oI ’

    la・|Is ●・ilh躪lhe stlb sIlate voIca ●ic

    1・ocks.

    10J

  • 7叫

    St.3

    St.4麟 吩

    写 真 2  代 表 的 な 熟 水 性 マ ン ガ ン 嫐 化 物 訣 料 の 側

    翻 。

    侵 上 部 の 黒 色 半 碣 粘 岩 と 下 郎 の 灰 黒 色 均

    貿 鵯j 踊゙ 著 で あ る 。

    Phol ぬ2 Side yic w ● 01 typical hydr01hey禹al man,

    lanese d ●pQsils , Note (he  upper

    sesi- eonselidaged 躙aaSan●se sands101e

    ald lhe u●derlying denser submctallie

    olid き 】ayer s・

    写 良 3  熱 水憧 マ ン ガ ン 霞 化 物 の 走 を 塰 電 子 貨[僵

    鯤 写 真 .

    い ず れ も エ ネ ル ギ ー 分 散 型 X 翰 分 光 分 析

    に よ ウ て 純 粋 な マ ン ガ ン鉱 勧 で あ る こ と

    を 綣 か め た . 写 真 A, B は 測 叭 3 の,X

    柊 , ス ケ ー ル はXj ・. 写 奥 C, D は 測 比

    4 . ス ヶ - ル は50jj, 1 で あ る4

    Photo 3 Scanning elecCr on micrograhs cl hyd-

    r01her ●ll sallgalleR oxides.ED χ

    analy父s c・tarly r evell p●re nalure ol

    nlanginalf s. Phlt os A a ●d B; Si. 3.

    【】i●e 408 , scale bars are 5 μ11. PhoIcs

    C and D・Si. 4. Di・ t 408. sclle bars j,f

    SO μ m.

    JAMSTECTR DEEPSEA RESEARCH 1199 D

    小笠原海域「海形海山」の熱水性マンガン酸化物一第408回潜航調査-1.はじめに2. 従来の調査3.潜航調査の概要4. 潜航調査結果5. 試料の記載と分析6. 海形海山における熱水性マンガン酸化物の形成過程7. 現在の活動の可能性6.まとめ謝 辞参考文献写真