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研究データマネジメントの一実践例と
現状の課題
能勢正仁
京都大学大学院理学研究科・地磁気世界資料解析センター
2017/09/15第4回IUGONET研究集会
太陽地球環境データ解析に基づく超高層大気の空間・時間変動の解明1
研究サイクル
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助成金
観測
解析成果発表
研究計画
評価
研究データマネジメントも組み入れた研究サイクル
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助成金
観測
解析成果発表
研究計画
データマネジメント計画
データ引用
データ保管
データ公開・データ出版
研究データマネジメントの一実践例
• 自然電磁場を計測することにより、電離層に生じる波動現象(電離層アルフベン共鳴)
の研究を行う。
• 東レ科学技術研究助成に応募
– 2012年10月
• 採択通知
– 2013年2月
– 研究助成期間: 2013年4月-2017年3月
• 研究データマネジメントも念頭に置いて研究を進めることにした。
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助成期間に取得できるデータに
ついて、研究データマネジメントの先例を作ってみよう。
研究計画書の一部研究計画書の一部研究計画書の一部研究計画書の一部
観測
• 観測機器(誘導磁力計+電極)を購入
• 高知県室戸市にて観測を継続
– 2013年12月-2016年8月 (約2.5年間)
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国立室戸青少年自然の家国立室戸青少年自然の家国立室戸青少年自然の家国立室戸青少年自然の家
データデータデータデータ記録装置記録装置記録装置記録装置
誘導磁力計誘導磁力計誘導磁力計誘導磁力計センサーセンサーセンサーセンサー
解析
• 電離層アルフベン共鳴現象の解析。
• 0.5-3 Hzの周波数帯に、複数バンド構造を持った現象が現れている。
• 約2.5年間のデータを使った統計解析により、時刻
依存や季節依存が明らかになった。
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南北成分磁場
東西成分磁場
磁場偏波
時刻依存
季節依存
室戸の観測データ
周波数
3 Hz
0 Hz
3 Hz
0 Hz
3 Hz
0 Hz
成果発表
• 学会発表
– 2016年8月4日、AOGS 2016@北京
– 2016年10月14日、Geoscience Australiaセミナー
@オーストラリア
– 2016年11月20日、SGEPSS秋学会@福岡
– 2017年8月31日、IAGA 2017@南アフリカ
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• 論文発表
– 2017年3月30日、
Journal of Geophysical
Research誌に投稿。
– 2017年6月26日、論文受理。
Nosé et al. [2017]
データ保管、データ公開
• データサイズは、1日約470 MB。
• 約2.5年間の全期間で約700 GB。
• すべてのデータを自分が管理するサーバー上のNASで保管。
• バックアップを作成。
• ウェブサーバーで公開
– http://swdc244.kugi.kyoto-u.ac.jp/muroto/
課題
• メタデータを作っていない。
スキーマ????・・・SPASEスキーマ
時間がない。。。。
• サーバーの維持・永続性。
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データ公開・データ出版
• ウェブサーバーで公開
– http://swdc244.kugi.kyoto-u.ac.jp/muroto/
• httpによる公開だけでは、データの在りかを
永続的に指定することができない。
• データセット全体に対してdoiを付与。
– doi:10.17593/13882-05900
– ランディングページに各種情報を掲載。
• 広義のデータ出版と捉えることもできる。
– Nosé, M. (2017), Magnetotelluric data at
Muroto, Japan, doi:10.17593/13882-05900.
課題
• doi付与手続き
(メタデータ作成、ランディングページ作成)
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データ出版
• 本来のデータ出版=データジャーナル
への投稿・掲載は未実施。
– Polar Data Journal, Scientific Data?
課題
• 論文をもう一本書く時間が必要。
• データをリポジトリへ事前登録する必要がある。
– 一般的なリポジトリでは費用が掛かる。250GBで20-30万円???
• データジャーナルでの成果発表がまだそれほど一般的ではない。
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データ引用
• データ引用 ・・・出版されたデータやdoiが付与され
たデータを論文中で利用した際に、学術論文と同様に引用し、Referencesセクションにも情報を記載する。
• 室戸での観測データセットを、Nosé [2017]として引用。
• JGRでは、すでにデータ引用を受け付けている。
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課題
• 太陽地球系科学分野においては、データ引用はほとんど行われていない。
• 出版社が、データ引用の一般的なルール・形式をまだ確定していない。
Referencesセクション
本文Nosé et al. [2017]
データマネジメント計画(DMP)
• 日本の状況
– JST 「戦略的創造研究推進事業
におけるデータマネジメント実施方針」・・・平成28年4月より。国内
DMP要求の先駆。
• 米国の状況
– NIH (National Institute of Health)、
NASA (National Aeronautics and
Space Administration)、NSF
(National Science Foundation)な
どではDMP提出がほぼ必須。
課題
• 日本でDMPが米国並みに要求さ
れるのは、もう少し先?
• DMPに対する評価方法は、米国
でもまだ未定の部分が多い。
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NASA Proposers’ Guidebookより
JST 平成28年度研究提案
募集要項より
研究データマネジメントの実践から得た教訓
データ保管
• メタデータの作成。
• ストレージの準備・永続性。
データ公開・データ出版
• ウェブサイトの準備・永続性。
• doiの付与手続き(メタデータ作成、ランディングページ作成)。
• データジャーナルへの投稿は、研究論文執筆と同じくらい時間がかかりそう。
• 一般的な研究者にとっては無用な手間が増えるとしか捉えられない。
• 利用が容易なデータマネジメントシステムの導入、図書館員との連携が必要。
データ引用
• J. Geophys. Res.では、doiによるデータ引用が可能になっている。
• 出版社、学術雑誌編集者との協同が必要。
データマネジメント計画
• DMPの提出は、国内で今後義務化されていく?
• DMPに対する評価方法は、日本だけでなく米国でもまだ未定。
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地球電磁気学分野におけるデータ出版・データ引用
• IAGA Division V DAT Working Group・・・地磁気データ、地磁気指数に関する諸問題を扱うワーキンググループ。
• 地磁気データにdoiを付与する活動に大きな関心が寄せられ、Data DOI Task Forceが2013年に設置された。
• doi付与状況に関して、TFの調査レポートが、この夏に公開された。– https://ngdc.noaa.gov/IAGA/vdat/TaskForce/doi.html
• フランス
– 地球中央研究所(BCMT)で取得している17か所の全地磁気データに対し、一つのdoi(doi:10.18715/BCMT.MAG.DEF)を付与。
• ドイツ
– GFZががセントヘレナ島のデータにdoi(doi:10.5880/GFZ.2.3.2016.001)を付与。それを、JGR論文[Cnossen and Matzka, 2016]の中でデータ引用した。
• ロシア
– WDCを前身とする地球物理学センターが、国内で観測した地磁気データに対し、既に30個のdoiを付与。
• 日本– 室戸における観測データ以外にも、Dst指数、AE指数、Wp指数にdoiを付与済み。
– Dst指数:10.17593/14515-74000
– AE指数:10.17593/15031-54800
– Wp指数:10.17593/13437-46800 14