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NS-24 2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法 Page 1
目次 2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法 .................................................................................... 3
2.7.1.1 背景及び概観 .................................................................................................................... 3 2.7.1.1.1 製剤開発の経緯 ........................................................................................................ 3 2.7.1.1.2 血漿中濃度測定法 .................................................................................................... 3
2.7.1.2 個々の試験結果の要約 .................................................................................................... 4 2.7.1.2.1 第 I 相:健康成人男性における単回及び反復投与試験 ..................................... 4
2.7.1.3 全試験を通しての結果の比較と解析 ............................................................................ 7 2.7.1.3.1 食事の影響 ................................................................................................................ 7 2.7.1.3.2 徐放性製剤と即放性製剤との比較 ........................................................................ 7
2.7.1.4 付録 .................................................................................................................................... 8
NS-24 2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法 Page 2
略語一覧表
語句略語 語句略語内容
AUC
area under the plasma concentration-time curve:血漿中濃度-時間曲線下面積 AUC0-t:0 時点から t 時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積
(t 時間:測定可能な最終測定時点) AUC0-∞:0 時点から無限大までの血漿中濃度-時間曲線下面積
Cmax maximum plasma concentration:最高血漿中濃度
LC-MS/MS liquid chromatography / mass spectrometry / mass spectrometry:液体クロマトグラフィータンデム質量分析法
MRT mean residence time:平均滞留時間 MRT0-∞:0 時点から無限大までの平均滞留時間
QOL quality of life:生活の質
t1/2 elimination half-life:消失半減期 t1/2,β:消失相(β相)の半減期
tmax time to maximum plasma concentration:最高血漿中濃度到達時間
λZ elimination rate constant:消失速度定数
NS-24 2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法 Page 3
2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法
2.7.1.1 背景及び概観
2.7.1.1.1 製剤開発の経緯
NS-24 は、Paladin Labs 社(旧 Labopharm 社、カナダ)が開発したトラマドール塩酸塩を 100 mg
含有する徐放性製剤[Tramadol Contramid once a day(Tramadol Contramid OAD)100 mg]である。
この製剤はフランスで初めて承認され、その後欧州を含む世界各国で販売されている。本剤は 1
日 1 回の経口投与を可能とした有核構造のフィルムコーティング錠であり、外層に含まれる本薬
が即放性成分として速やかに血漿中濃度を上昇させ、本薬と溶出制御剤であるヒドロキシプロピ
ル化リン酸架橋デンプン(商標名 Contramid)を混合した内核が徐放性成分として血漿中濃度の維
持に寄与する。
現在、国内で使用可能なトラマドール塩酸塩の経口剤は、1 日 4 回服用の即放性製剤である。
1 日 1 回服用の徐放性製剤では、服薬アドヒアランスの向上及び安定した鎮痛効果による QOL
の向上が期待できるため、NS-24 の開発を進めた。
2.7.1.1.2 血漿中濃度測定法
(試験番号 BP-NS24-100805、資料番号 5.3.1.4-1、評価資料)
臨床第 I 相試験におけるトラマドール及び活性代謝物 M1(モノ-O-脱メチル体)の血漿中濃度
の測定は、採取した血漿にトラマドール塩酸塩及び M1 の安定同位体(d6 標識体)を内部標準物
質として添加後、除タンパク処理し、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)
で実施した。
トラマドール及び M1 の血漿中濃度の定量下限はいずれも塩酸塩として 1 ng/mL で、定量範囲
は 1~500 ng/mL であり、20 倍希釈で 6000 ng/mL まで定量可能であった。本測定法の分析法バリ
デーションの概要を表 2.7.1.1.2-1 に示す。
なお、トラマドール及び M1 の血漿中濃度は、遊離塩基濃度に換算して表示した。
表 2.7.1.1.2-1 血漿中濃度測定法のバリデーション
トラマドール塩酸塩 M1 検量線範囲 1~500 ng/mL 1~500 ng/mL 日内変動 真度 2.0~12.0 4.0~15.0 精度 1.6~4.5 1.0~3.5 日間変動 真度 0.4~6.0 0.6~8.0 精度 1.4~6.6 1.3~5.6 希釈(5 及び 20 倍) 真度 0.0~0.2 4.0~6.0
血漿で希釈 精度 3.7~4.7 4.2~4.3 真度:相対誤差(%) 精度:変数係数(%)
[5.3.1.4-1 p.16,17 表 12,13,14 を改変]
NS-24 2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法 Page 4
2.7.1.2 個々の試験結果の要約
生物薬剤学試験の要約を表 2.7.1.4-1 に示す。
2.7.1.2.1 第I相:健康成人男性における単回及び反復投与試験
(試験番号 NS24/P1/01、資料番号 5.3.3.1-1、評価資料)
1) 単回投与試験:食事の影響
健康成人男性 12 例を対象に、絶食時及び食後に NS-24 を 200 mg 単回経口投与した後の薬物動
態を検討した。なお、2 群 2 期の非盲検クロスオーバー法にて実施した。
トラマドール及びM1の血漿中濃度推移を図2.7.1.2.1-1に、薬物動態パラメータ値を表2.7.1.2.1-1
に、薬物動態パラメータ値の幾何平均値の比及びその 90%信頼区間を表 2.7.1.2.1-2 に示す。
トラマドール及びM1の血漿中濃度推移は、絶食時投与と食後投与とで差は認められなかった。
トラマドール及び M1 の薬物動態パラメータ(Cmax、AUC0-t及び AUC0-∞)の幾何平均値の比の 90%
信頼区間は、いずれのパラメータについても 0.8~1.25 の範囲内であった。したがって、NS-24 を
200 mg 単回経口投与した後の薬物動態に食事の影響はないものと判断した。
トラマドール M1
Time (hr)Time (hr)
図 2.7.1.2.1-1 NS-24 200 mgを健康成人男性に絶食時(■)及び食後(□)に
単回経口投与した後のトラマドール及びM1 の血漿中濃度推移 各点は平均値及び標準偏差を示す(N=12)。
[5.3.3.1-1 p.60 図 11.4.1.2-1 を引用]
NS-24 2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法 Page 5
表 2.7.1.2.1-1 NS-24 200 mgを健康成人男性に絶食時及び食後に単回経口投与した後の トラマドール及びM1 の血漿中濃度に基づく薬物動態パラメータ
パラメータ a 絶食時 食後 P 値 b
トラマドール
Cmax (ng/mL) 266 ± 47 284 ± 51 - tmax (hr) 11.1 ± 3.7 9.7 ± 3.3 0.2047 AUC0-t (ng·hr/mL) 5650 ± 1260 5540 ± 1230 - AUC0-∞ (ng·hr/mL) 5740 ± 1320 5620 ± 1260 - λZ (1/hr) 0.108 ± 0.012 0.105 ± 0.013 - t1/2,β (hr) 6.53 ± 0.81 6.72 ± 0.87 - MRT0-∞ (hr) 15.2 ± 1.2 14.6 ± 1.1 0.0337
M1
Cmax (ng/mL) 60.6 ± 15.2 61.2 ± 17.0 - tmax (hr) 10.7 ± 3.4 10.7 ± 2.0 1.0000 AUC0-t (ng·hr/mL) 1420 ± 320 1330 ± 320 - AUC0-∞ (ng·hr/mL) 1450 ± 330 1360 ± 320 - λZ (1/hr) 0.0970 ± 0.0109 0.0945 ± 0.0133 - t1/2,β (hr) 7.24 ± 0.90 7.48 ± 1.09 - MRT0-∞ (hr) 17.2 ± 1.4 16.9 ± 1.5 0.2281
a:平均値±標準偏差(N=12)、b:分散分析により算出
[5.3.3.1-1 p.60 表 11.4.1.2-1 を引用]
表 2.7.1.2.1-2 NS-24 200 mgを健康成人男性に絶食時及び食後に単回経口投与した後の
トラマドール及びM1 の薬物動態パラメータの幾何平均値の比とその 90%信頼区間
パラメータ 幾何平均値の比 a 90%信頼区間
下限 上限
トラマドール Cmax 1.0689 1.0281 1.1112 AUC0-t 0.9793 0.9491 1.0105 AUC0-∞ 0.9792 0.9478 1.0117
M1 Cmax 1.0031 0.9690 1.0384 AUC0-t 0.9390 0.9100 0.9689 AUC0-∞ 0.9400 0.9105 0.9705
a:食後/絶食時
[5.3.3.1-1 p.60 表 11.4.1.2-2 を引用]
2) 徐放性製剤と即放性製剤との比較試験
健康成人男性 24 例を対象に、NS-24 を単回経口投与(200 mg)及び即放性製剤を 1 日 4 回、6
時間ごとに 1 回 50 mg 経口投与した後の薬物動態を検討した。なお、2 剤 2 期の非盲検クロスオ
ーバー法にて実施した。
トラマドール及び M1 の血漿中濃度推移を図 2.7.1.2.1-2 に、血漿中濃度に基づく薬物動態パラ
メータ値を表 2.7.1.2.1-3 に、薬物動態パラメータ値の幾何平均値の比とその 90%信頼区間を表
2.7.1.2.1-4 に示す。
両製剤を投与した後のトラマドール及び M1 の薬物動態パラメータ(Cmax、AUC0-t及び AUC0-∞)
の幾何平均値の比の 90%信頼区間は 0.8~1.25 の範囲内であり、両製剤の最高血漿中濃度及び薬物
吸収量は同等と判断した。
NS-24 2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法 Page 6
トラマドール M1
Time (hr) Time (hr)
図 2.7.1.2.1-2 NS-24 を健康成人男性に単回(200 mg)(■)及び即放性製剤を 1 日 4 回、
1 回 50 mg経口投与(□)した後のトラマドール及びM1 の血漿中濃度推移 各点は平均値及び標準偏差を示す(N=24)。
[5.3.3.1-1 p.61 図 11.4.1.3-1 を引用]
表 2.7.1.2.1-3 NS-24 を健康成人男性に単回(200 mg)及び即放性製剤を 1 日 4 回、1 回
50 mg経口投与した後のトラマドール及びM1 の血漿中濃度に基づく薬物動態パラメータ パラメータ a NS-24 投与 即放カプセル投与 P 値 b
トラマドール
Cmax (ng/mL) 283 ± 66 308 ± 67 - tmax (hr) 8.9 ± 3.7 16.6 ± 3.7
NS-24 2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法 Page 7
2.7.1.3 全試験を通しての結果の比較と解析
2.7.1.3.1 食事の影響
健康成人男性に絶食時及び食後に NS-24 を 200 mg 単回経口投与した後のトラマドール及び M1
の薬物動態パラメータ(Cmax、AUC0-t及び AUC0-∞)の幾何平均値の比 90%信頼区間は、いずれの
パラメータについても 0.8~1.25 の範囲内であった。したがって、薬物動態に及ぼす食事の影響は
ないものと判断した。
健康白人成人男性 29 例に、高脂肪高カロリー食摂取後 Tramadol Contramid OAD 200 mg を投与
した場合 1)、トラマドールの Cmax及び AUC0-∞は、絶食時投与の 154%及び 98.0%、また M1 の Cmax及び AUC0-∞は、絶食時投与の 149%及び 100%であった。高脂肪高カロリー食は Cmaxを上昇させ
るが AUC0-∞には影響を与えなかった。
2.7.1.3.2 徐放性製剤と即放性製剤との比較
健康成人男性に NS-24 を単回経口投与(200 mg)及び即放性製剤を 1 日 4 回経口投与(50 mg
×4)した後のトラマドール及び M1 の薬物動態パラメータ(Cmax、AUC0-t 及び AUC0-∞)の幾何
平均値の比の 90%信頼区間は、いずれのパラメータについても 0.8~1.25 の範囲内であった。した
がって、両製剤の最高血漿中濃度及び薬物吸収量は同等と判断した。
NS-24
2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法
Page 8
2.7.1.4 付録
表 2.7.1.4-1 生物薬剤学試験の要約
試験名 (実施国)
試験の目的 試験の デザイン
被験者数 (男/女)
被験者の種類 平均年齢(範囲)
投与方法 (用量、剤形、
投与経路) 【ロット番号】
薬物動態パラメータ値の平均値±標準偏差 試験報告書 添付場所 (m2.7.6) Cmax
(ng/mL) tmax
(hr) AUC0-t
(ng・hr/mL) t1/2,β
(hr) MRT0-∞ (hr)
NS24/P1/01 (日本)
安全性及び薬
物動態(食事
の影響含む)
の検討並びに
即放性製剤の
薬物動態との
比較
非盲検 交叉比較
12(12/0) 健康成人
23.6(20~34)
200 mg 徐放錠 絶食
単回、経口 【S-100-(1)】
トラマドール(N=12) 5.3.3.1-1 (2.7.6.1)
266 ± 47 11.1 ± 3.7 5650 ± 1260 6.53 ± 0.81 15.2 ± 1.2
M1(N=12)
60.6 ± 15.2 10.7 ± 3.4 1420 ± 320 7.24 ± 0.90 17.2 ± 1.4
200 mg 徐放錠 食後
単回、経口 【S-100-(1)】
トラマドール(N=12)
284 ± 51 9.7 ± 3.3 5540 ± 1230 6.72 ± 0.87 14.6 ± 1.1
M1(N=12)
61.2 ± 17.0 10.7 ± 2.0 1330 ± 320 7.48 ± 1.09 16.9 ± 1.5
非盲検 交叉比較
24(24/0) 健康成人
23.9(20~31)
200 mg 徐放錠 空腹時
単回、経口 【S-100-(1)】
トラマドール(N=24)
283 ± 66 8.9 ± 3.7 5790 ± 1590 6.63 ± 0.90 15.0 ± 1.6
M1(N=24)
59.8 ± 23.0 10.4 ± 3.3 1330 ± 450 7.32 ± 1.33 17.0 ± 2.0
200 mg 即放カプセル
空腹時 分 4、経口
【S-50-(10)】
トラマドール(N=24)
308 ± 67 16.6 ± 3.7 5690 ± 1660 6.21 ± 1.05 18.0 ± 1.3
M1(N=24)
63.6 ± 21.8 19.1 ± 2.4 1330 ± 400 6.93 ± 1.01 20.0 ± 1.6
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 1
目次 2.7.2 臨床薬理試験 ............................................................................................................................ 3
2.7.2.1 背景及び概観 .................................................................................................................... 32.7.2.2 個々の試験結果の要約 .................................................................................................... 3
2.7.2.2.1 第I相:健康成人男性における単回及び反復投与試験 ....................................... 32.7.2.3 全試験を通しての結果の比較と解析 ............................................................................ 8
2.7.2.3.1 用量-濃度関係 ........................................................................................................ 82.7.2.3.2 単回投与と反復投与との薬物動態の比較 ............................................................ 8
2.7.2.4 特別な試験 ........................................................................................................................ 82.7.2.4.1 QT/QTc間隔延長と催不整脈作用の潜在的可能性について ............................... 8
2.7.2.5 付録 .................................................................................................................................. 12
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 2
略語一覧表
語句略語 語句略語内容
AUC
area under the plasma concentration-time curve:血漿中濃度-時間曲線下面積 AUC0-t:0 時点から t 時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積
(t 時間:測定可能な最終測定時点) AUC0-∞:0 時点から無限大までの血漿中濃度-時間曲線下面積
Cmax maximum plasma concentration:最高血漿中濃度
MRT mean residence time:平均滞留時間 MRT0-∞:0 時点から無限大までの平均滞留時間
t1/2 elimination half-life:消失半減期 t1/2,β:消失相(β相)の半減期
tmax time to maximum plasma concentration:最高血漿中濃度到達時間
λZ elimination rate constant:消失速度定数
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 3
2.7.2 臨床薬理試験
2.7.2.1 背景及び概観
NS-24 はトラマドール塩酸塩を有効成分とする徐放錠であり、トラマドール塩酸塩は海外及び
国内にて広く使用されている。トラマドール塩酸塩の薬物動態特性(タンパク結合、代謝に関す
る検討、内因性要因の影響、遺伝多型の影響、薬物相互作用)は、既承認の即放カプセル(トラ
マールカプセル 25 mg 承認番号:22200AMX00872000、トラマールカプセル 50 mg 承認番号:
22200AMX00873000)で述べたとおりであり、新たな試験は実施していない。したがって、本承
認申請では新剤型医薬品である NS-24 の日本人健康成人男性における薬物動態特性を検討した。
なお、QT/QTc 評価試験について、新たな試験は実施していない(2.7.2.4 項参照)。
2.7.2.2 個々の試験結果の要約
2.7.2.2.1 第I相:健康成人男性における単回及び反復投与試験
(試験番号 NS24/P1/01、資料番号 5.3.3.1-1、評価資料)
1) 単回投与試験
健康成人男性 36 例(3 ステップ、各ステップ 12 例:NS-24 群 10 例、プラセボ群 2 例)を対象
に、NS-24 又はプラセボを絶食時に単回経口投与(100、200 及び 300 mg)した後の薬物動態を検
討した。なお、二重盲検法にて実施した。
トラマドール及び活性代謝物 M1(モノ-O-脱メチル体)の血漿中濃度推移を図 2.7.2.2.1-1 に、
血漿中濃度に基づく薬物動態パラメータ値を表 2.7.2.2.1-1 に示す。
トラマドール及び M1 の血漿中濃度は用量の増加とともに上昇した。血漿中トラマドール濃度
は 9.5~11.6 時間で Cmaxに達し、t1/2,βは 6.44~6.97 時間であった。また、血漿中 M1 濃度は 9.6~
12.0 時間で Cmaxに達し、t1/2,βは 7.02~7.93 時間であった。
トラマドール及び M1 の薬物動態パラメータ(Cmax、AUC0-t及び AUC0-∞)と用量について、Power
model 解析(対数変換後の直線回帰分析)を行った際の回帰直線の傾き(95%信頼区間)を表
2.7.2.2.1-2 に、直線回帰分析での回帰直線の切片(95%信頼区間)を表 2.7.2.2.1-3 に示す。
Power model 解析による回帰直線の傾き及び直線回帰分析による回帰直線の切片の 95%信頼区
間がそれぞれ 1 及び 0 を含むことから、各パラメータの用量相関性(線形性)が確認された。
以上の結果から、NS-24 を 100、200 及び 300 mg 単回経口投与した場合、トラマドール及び M1
の体内動態は投与量に対して線形である事が示された。
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 4
トラマドール M1
Time (hr) Time (hr)
図 2.7.2.2.1-1 NS-24 を健康成人男性に絶食時で単回経口投与した後の
トラマドール及びM1 の血漿中濃度推移 各点は平均値及び標準偏差を示す(N=10)。
[5.3.3.1-1 p.58 図 11.4.1.1-1 を引用]
表 2.7.2.2.1-1 NS-24 を健康成人男性に絶食時で単回経口投与した後のトラマドール
及びM1 の血漿中濃度に基づく薬物動態パラメータ値
パラメータ a 投与量
100 mg 200 mg 300 mg
トラマドール
Cmax (ng/mL) 123 ± 39 257 ± 89 444 ± 117 tmax (hr) 9.5 ± 2.8 9.6 ± 3.2 11.6 ± 1.3 AUC0-t (ng·hr/mL) 2600 ± 990 5360 ± 2270 9510 ± 2640 AUC0-∞ (ng·hr/mL) 2640 ± 1020 5500 ± 2480 9720 ± 2820 λZ (1/hr) 0.110 ± 0.017 0.111 ± 0.025 0.102 ± 0.016 t1/2,β (hr) 6.44 ± 1.07 6.63 ± 1.99 6.97 ± 1.08 MRT0-∞ (hr) 15.1 ± 2.1 15.0 ± 2.5 16.1 ± 1.4
M1
Cmax (ng/mL) 25.9 ± 5.9 56.1 ± 13.8 86.6 ± 26.1 tmax (hr) 11.5 ± 4.0 9.6 ± 3.6 12.0 ± 0.0 AUC0-t (ng·hr/mL) 594 ± 156 1260 ± 260 2020 ± 520 AUC0-∞ (ng·hr/mL) 610 ± 159 1290 ± 260 2090 ± 520 λZ (1/hr) 0.102 ± 0.019 0.0990 ± 0.0201 0.0902 ± 0.0166 t1/2,β (hr) 7.02 ± 1.37 7.34 ± 1.89 7.93 ± 1.51 MRT0-∞ (hr) 16.9 ± 2.4 17.0 ± 3.2 18.3 ± 2.1
a:平均値±標準偏差(N=10)
[5.3.3.1-1 p.58 表 11.4.1.1-1 を引用]
表 2.7.2.2.1-2 NS-24 を健康成人男性に単回経口投与した後のトラマドール及びM1 の薬物動態パラメータと用量の関係をPower model解析したときの回帰直線の傾きとその 95%信頼区間
パラメータ 傾き 傾きの 95%信頼区間
下限 上限
トラマドール Cmax 1.16813 0.91825 1.41801 AUC0-t 1.20379 0.90767 1.49990 AUC0-∞ 1.20731 0.90278 1.51184
M1 Cmax 1.09046 0.86462 1.31629 AUC0-t 1.12010 0.90535 1.33484 AUC0-∞ 1.12552 0.91606 1.33498
[5.3.3.1-1 p.59 表 11.4.1.1-2 を引用]
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 5
表 2.7.2.2.1-3 NS-24 を健康成人男性に単回経口投与した後のトラマドール及びM1 の薬物動態パラメータと用量の関係を直線回帰分析したときのy切片とその 95%信頼区間
パラメータ y 切片 y 切片の 95%信頼区間
下限 上限
トラマドール Cmax -46.22 -132.6 40.13 AUC0-t -1095 -3154 963.1 AUC0-∞ -1127 -3334 1079
M1 Cmax -4.580 -21.47 12.31 AUC0-t -135.7 -473.1 201.8 AUC0-∞ -147.1 -487.5 193.2
[5.3.3.1-1 p.59 表 11.4.1.1-3 を引用]
2) 反復投与試験
健康成人男性 24 例(2 ステップ、各ステップ 12 例:NS-24 群 10 例、プラセボ群 2 例)を対象
に NS-24 又はプラセボを食後に、1 日目は単回投与、3~7 日目は 1 日 1 回 反復経口投与(200 及
び 300 mg)した後の薬物動態を検討した。なお、二重盲検法にて実施した。ただし、200 mg 群で
治験計画の遵守が不可能になった 1 例が、300 mg 群で治験責任(分担)医師が治験の継続を困難
と判断した 1 例が中止となった。いずれの中止例も NS-24 投与群であったため、薬物動態はそれ
ぞれ 9 例で解析した。
トラマドール及び M1 の血漿中濃度推移を図 2.7.2.2.1-2 に、血漿中濃度に基づく薬物動態パラ
メータ値を表 2.7.2.2.1-4 に示す。
200 及び 300 mg 群における第 5 日(反復投与 3 日目)のトラマドールの AUC0-24hrは第 1 日の
AUC0-∞と比較すると 42%及び 31%増加し、第 7日(反復投与 5日目)のAUC0-24hrは第 1日の AUC0-∞と比較すると 57%及び 28%増加した。一方、M1 については、いずれの群においても第 5 日(反
復投与 3 日目)及び第 7 日(反復投与 5 日目)の AUC0-24hrは第 1 日の AUC0-∞と比較して増加は
認められなかった。
各用量における第 3 日(反復投与 1 日目)から第 7 日(反復投与 5 日目)の投与 24 時間後のト
ラマドール及び M1 の血漿中濃度(トラフ値)を図 2.7.2.2.1-3 に示す。第 4 日(反復投与 2 日目)
から第 7 日(反復投与 5 日目)のトラフ値はいずれの用量においてもほぼ一定の値を示していた。
以上のことから、NS-24 を反復経口投与(200 及び 300 mg)した場合、第 5 日(反復投与 3 日
目)には定常状態に達しているものと推察された。
また、第 1 日と第 7 日(反復投与 5 日目)の Cmax、AUC0-24hr及び AUC0-∞を比較し、累積効果を
検討した。各用量の累積係数(第 7 日/第 1 日)はトラマドールで 1.4~1.9、M1 で 1.0~1.3 であり、
いずれも累積効果は低かった(表 2.7.2.2.1-5)。
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 6
トラマドール M1
Time (hr) Time (hr)
図 2.7.2.2.1-2 NS-24 200 mg(■)及び 300 mg(□)を健康成人男性に 1 日目は単回投与、
3~7 日目は 1 日 1 回反復経口投与した後のトラマドール及びM1 の血漿中濃度推移 各点は平均値及び標準偏差を示す(N=9)。
[5.3.3.1-1 p.63 図 11.4.1.4-1 を引用]
図 2.7.2.2.1-3 NS-24 を健康成人男性に 1 日目は単回投与、3~7 日目は 1 日 1 回
反復経口投与(200 及び 300 mg)した後のトラマドール及びM1 のトラフ値 各ポイントは個別値、Bar は平均値を示す。
[5.3.3.1-1 p.63 図 11.4.1.4-2 を引用]
トラマドール M1
トラマドール M1
Day3 Day4 Day5 Day6 Day70
100
200
300
投与日
Ctr
ough (
ng/
mL)
Day3 Day4 Day5 Day6 Day70
20
40
60
投与日
Ctr
ough (
ng/
mL)
Day3 Day4 Day5 Day6 Day70
100
200
300
400
500
投与日
Ctr
ough (
ng/
mL)
Day3 Day4 Day5 Day6 Day70
20
40
60
80
投与日
Ctr
ough (
ng/
mL)
Pla
sma
conc
entra
tion
(ng/
mL)
Pla
sma
conc
entra
tion
(ng/
mL)
P
lasm
a co
ncen
tratio
n (n
g/m
L)
Pla
sma
conc
entra
tion
(ng/
mL)
200 mg 投与
300 mg 投与
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 7
表 2.7.2.2.1-4 NS-24 を健康成人男性に 1 日目は単回投与、3~7 日目は 1 日 1 回反復経口投与(200 及び 300 mg)した後のトラマドール及びM1 の血漿中濃度に基づく薬物動態パラメータ
パラメータ a 200 mg 300 mg
トラマドール
第 1 日
Cmax (ng/mL) 300 ± 76 495 ± 155 tmax (hr) 7.4 ± 2.1 8.2 ± 2.5 AUC0-24hr (ng·hr/mL) 4570 ± 1350 7360 ± 1520 AUC0-t (ng·hr/mL) 5220 ± 1680 8450 ± 1760 AUC0-∞ (ng·hr/mL) 5290 ± 1730 8530 ± 1800 λZ (1/hr) 0.116 ± 0.021 0.115 ± 0.017 t1/2,β (hr) 6.17 ± 1.28 6.15 ± 0.84 MRT0-∞ (hr) 13.6 ± 2.0 13.9 ± 1.5
第 5 日 (反復投与 3 日目)
Cmax (ng/mL) 433 ± 117 700 ± 147 Cmin (ng/mL) 129 ± 47 172 ± 49 tmax (hr) 6.7 ± 2.8 7.1 ± 2.3 AUC0-24hr (ng·hr/mL) 7120 ± 1670 11100 ± 2500
第 7 日 (反復投与 5 日目)
Cmax (ng/mL) 446 ± 80 664 ± 158 Cmin (ng/mL) 156 ± 45 227 ± 85 tmax (hr) 8.0 ± 2.4 6.1 ± 3.1 AUC0-24hr (ng·hr/mL) 7710 ± 1540 10800 ± 2500 AUC0-t (ng·hr/mL) 9120 ± 2050 12800 ± 3600 AUC0-∞ (ng·hr/mL) 9300 ± 2150 13100 ± 3900 λZ (1/hr) 0.0982 ± 0.0143 0.0985 ± 0.0162 t1/2,β (hr) 7.18 ± 0.98 7.25 ± 1.44 MRT0-∞ (hr) 14.4 ± 1.3 14.3 ± 1.7
M1
第 1 日
Cmax (ng/mL) 72.0 ± 19.2 95.1 ± 22.0 tmax (hr) 9.7 ± 2.9 8.4 ± 2.2 AUC0-24hr (ng·hr/mL) 1100 ± 210 1510 ± 300 AUC0-t (ng·hr/mL) 1320 ± 270 1830 ± 340 AUC0-∞ (ng·hr/mL) 1350 ± 270 1860 ± 350 λZ (1/hr) 0.0985 ± 0.0164 0.0990 ± 0.0145 t1/2,β (hr) 7.25 ± 1.41 7.13 ± 0.96 MRT0-∞ (hr) 15.6 ± 2.7 15.9 ± 1.9
第 5 日 (反復投与 3 日目)
Cmax (ng/mL) 68.9 ± 10.5 99.1 ± 24.2 Cmin (ng/mL) 30.1 ± 5.1 38.1 ± 9.3 tmax (hr) 8.3 ± 2.9 8.9 ± 2.5 AUC0-24hr (ng·hr/mL) 1260 ± 190 1770 ± 420
第 7 日 (反復投与 5 日目)
Cmax (ng/mL) 70.5 ± 11.4 93.2 ± 33.2 Cmin (ng/mL) 33.5 ± 6.5 44.5 ± 13.3 tmax (hr) 8.4 ± 2.8 7.7 ± 2.0 AUC0-24hr (ng·hr/mL) 1290 ± 230 1680 ± 540 AUC0-t (ng·hr/mL) 1630 ± 330 2070 ± 660 AUC0-∞ (ng·hr/mL) 1690 ± 360 2140 ± 660 λZ (1/hr) 0.0836 ± 0.0118 0.0862 ± 0.0162 t1/2,β (hr) 8.43 ± 1.15 8.41 ± 2.29 MRT0-∞ (hr) 16.9 ± 1.9 16.4 ± 2.4
a:平均値±標準偏差(N=9)
[5.3.3.1-1 p.64 表 11.4.1.4-1 を引用]
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 8
表 2.7.2.2.1-5 NS-24 を健康成人男性に 1 日目は単回投与、3~7 日目は 1 日 1 回反復経口投与(200 及び 300 mg)した後のトラマドール及びM1 のCmax、AUC0-24hr及びAUC0-∞の累積係数
パラメータ a 累積係数(第 7 日/第 1 日)
200 mg 投与 300 mg 投与
トラマドール Cmax 1.52 ± 0.27 1.40 ± 0.40 AUC0-24hr 1.78 ± 0.47 1.48 ± 0.25 AUC0-∞ 1.87 ± 0.54 1.54 ± 0.31
M1 Cmax 1.05 ± 0.31 1.00 ± 0.31 AUC0-24hr 1.19 ± 0.21 1.11 ± 0.23 AUC0-∞ 1.26 ± 0.17 1.14 ± 0.22
a:平均値±標準偏差(N=9)
[5.3.3.1-1 p.65 表 11.4.1.4-3 を引用]
2.7.2.3 全試験を通しての結果の比較と解析
2.7.2.3.1 用量-濃度関係
健康成人男性に NS-24 を絶食時に単回経口投与(100、200 及び 300 mg)したところ、トラマド
ール及び M1 の Cmax並びに AUC0-∞は用量の増加とともに上昇した。したがって、100~300 mg の
薬物動態に線形性が認められた。
2.7.2.3.2 単回投与と反復投与との薬物動態の比較
健康成人男性に NS-24 を食後に反復投与(200 及び 300 mg)したところ、トラマドール及び
M1 の血漿中濃度は反復投与 3 日目には定常状態に達するものと推察された。また、単回投与時と
反復投与 5 日目の Cmax、AUC0-24hr及び AUC0-∞を比較したところ、累積効果は低かった。
2.7.2.4 特別な試験
2.7.2.4.1 QT/QTc間隔延長と催不整脈作用の潜在的可能性について
(1) QT/QTc 評価試験
「非抗不整脈薬における QT/QTc 間隔の延長と催不整脈作用の潜在的可能性に関する臨床的評
価について(薬食審査発 1023 第 1 号 平成 21 年 10 月 23 日)」(QT/QTc 評価ガイドライン)で
推奨されている QT/QTc 評価試験は実施していない。以下の点から、QT/QTc 評価試験を実施する
必要はないと判断した。
1) トラマドール塩酸塩の既承認製剤の状況
トラマドール塩酸塩は、1977 年にドイツで販売開始後、100 ヵ国以上で承認され、1 億人以上
の患者に投与されている。トラマドール塩酸塩の海外市販後安全性情報で、心臓障害として、心
停止、不整脈、心室細動、心室性頻脈、トルサード・ド・ポワント等の報告があるが、その発現
頻度は極めて低いと考えられた。したがって、企業中核データシート及び米国の添付文書
(ULTRAM 錠)において催不整脈リスクに関する注意喚起はされていない。
トラマドール塩酸塩の即放カプセルであるトラマールカプセルの慢性疼痛を対象にした効能追
加に関する承認申請時資料(平成 24 年 9 月申請)において、海外市販後安全性情報、国内外の添
付文書及び国内外の臨床試験成績から、トラマドール塩酸塩が QT/QTc 間隔に重大な影響を及ぼ
し、潜在的に催不整脈作用を有する可能性は極めて低いと考えられ、QT/QTc 評価試験を実施して
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 9
いない(平成 25 年 6 月承認、トラマールカプセル 25 mg 承認番号:22200AMX00872000、トラマ
ールカプセル 50 mg 承認番号:22200AMX00873000)。このような経緯から、国内の添付文書(ト
ラマール注及びトラマールカプセル)においても催不整脈リスクに関する注意喚起は行っていな
い。
2) QT/QTc 評価ガイドラインの適応範囲
QT/QTc 評価ガイドラインにおいて、その適応範囲として「本ガイドラインは第一義的には新規
薬物の開発に関するものであるが、曝露量[最高血中濃度(Cmax)あるいは血中濃度時間曲線下
面積(AUC)]が著しく高くなるような新用量、もしくは新投与経路を開発する場合にも適用さ
れることがある」と記載されていることから、既承認の即放カプセル(1 日 4 回投与)と NS-24
(1 日 1 回投与)の曝露量を比較し、表 2.7.2.4.1-1 に示す。
両製剤を投与した後のトラマドール及び M1 の Cmax、AUC0-t 及び AUC0-∞の幾何平均値の比の
90%信頼区間は 0.8~1.25 の範囲内であり、本剤の曝露量は既承認の即放カプセルの曝露量を上回
らないと判断した。
表 2.7.2.4.1-1 健康成人男性にNS-24 を単回(200 mg)及び
即放カプセルを 1 日 4 回、1 回 50 mg経口投与した後の曝露量の比較
パラメータ a NS-24 投与 即放カプセル投与 幾何平均値の比b
(90%信頼区間)
トラマドール
Cmax (ng/mL) 283 ± 66 308 ± 67 1.0967
(1.0217,1.1772)
AUC0-t (ng·hr/mL) 5790 ± 1590 5690 ± 1660 0.9795
(0.9354,1.0257)
AUC0-∞ (ng·hr/mL) 5880 ± 1660 5810 ± 1770 0.9832
(0.9380,1.0307)
M1
Cmax (ng/mL) 59.8 ± 23.0 63.6 ± 21.8 1.0801
(1.0122,1.1526)
AUC0-t (ng·hr/mL) 1330 ± 450 1330 ± 400 1.0145
(0.9715,1.0594)
AUC0-∞ (ng·hr/mL) 1370 ± 450 1370 ± 400 1.0201
(0.9757,1.0665) a:平均値±標準偏差(N=24) b:即放カプセル投与/NS-24 投与
[5.3.3.1-1 p.62 表 11.4.1.3-1、表 11.4.1.3-2 を改変]
(2) NS-24 の催不整脈リスク
NS-24 の国内臨床試験成績及び Paladin Labs 社発行の Tramadol Contramid OAD(NS-24 の海外市
販製剤)の市販後安全性情報から評価した結果、NS-24 は QT/QTc 間隔に重大な影響を及ぼし、
潜在的に催不整脈作用を有する可能性は極めて低いと考えられた。
1) NS-24 の国内臨床試験成績
a) 第 I 相試験
国内臨床第 I 相試験(NS24/P1/01)において、単回投与時には投与後 1、2、4、8、12、24 及び
48 時間に、反復投与時には投与後 2 時間に標準 12 誘導心電図を測定し、心電図異常変動の有無
を検討した。その結果、3 例に異常変動が認められ、そのうち単回投与 100 mg 投与群で 1 例に心
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 10
電図 QT 延長が認められた。QTcF 値の変化は投与前 443 msec(正常)、投与後 1 時間 454 msec
(異常)、投与後 2 時間 462 msec(異常)、投与後 4 時間 457 msec(異常)、投与後 8 時間 433 msec
(正常)であり、投与後 24 時間の QTcF 値は 441 msec(正常)であった。治験責任医師はもとも
と QTcF 値が高いこと、逸脱幅、変動幅が大きくないことより、被験者固有の生理的変動である
と考えたが、投与後の変化であるため治験薬との因果関係は「関連あるかもしれない」と判断し
た。本事象は、軽度、非重篤かつ一過性であり無処置にて消失した。
b) 第 III 相試験
国内臨床第 III 相試験として、がん疼痛(NS24/P3/01、NS24/P3/02)及び慢性疼痛(NS24C/P3/01、
NS24C/P3/02、NS24C/P3/03)を対象にした 5 試験を実施した。NS-24 は、がん疼痛対象試験の 2
試験併合で 115 例、慢性疼痛対象試験の 3 試験併合で 646 例の合計 761 例に投与された。そのう
ち、標準 12 誘導心電図を測定し、NS-24 群で因果関係が否定されずに QT 延長と判定された症例
は、がん疼痛患者を対象にした二重盲検並行群間比較試験(NS24/P3/01)からの継続投与試験
(NS24/P3/02)で 1 例、慢性疼痛患者を対象にした長期投与試験(NS24C/P3/03)で 1 例の合計 2
例であった。
がん疼痛患者を対象にした NS24/P3/02 試験で QT 延長と判定された患者は、NS24/P3/01 試験で
はトラマドール塩酸塩の即放カプセル群であり、その時の判定は投与前が正常、投与終了時が異
常(QT 延長)であった。NS24/P3/02 試験に移行後の QTc 値は 456 msec(異常、QT 延長)、終了
時 470 msec(異常、QT 延長)であり、7 日後の追跡調査時も異常(460 msec、QT 延長)と判定
された。この患者における QT 延長は腫瘍の頸部交感神経節への浸潤等による可能性が考えられ
たが、治験薬の投与開始とともに認められた事象であった。
慢性疼痛患者を対象にした NS24C/P3/03 試験で QT 延長と判定された患者の QTc 値は、投与前
が 437 msec(正常)、52 週目の治験薬投与終了後 3 日目が 460 msec(異常、QT 延長)であり、
30 日後の追跡調査では正常と判定された。
これら 2 例はいずれも非重篤で軽度の事象であり、QT 延長に伴う臨床症状は認められなかった。
2) 海外市販後安全性情報
2005 年 2 月 2 日~2013 年 2 月 2 日までの調査期間において、Tramadol Contramid OAD を投与さ
れた推定患者数は 46 万人・年以上で、有害事象は 2369 例報告されている。そのうち、Paladin Labs
社が QT 延長に関連すると考えている有害事象(心臓障害、一般・全身障害および投与部位の状
態、臨床検査、神経系障害)として、心電図 QT 延長、不整脈、心停止、突然死等が 31 例報告さ
れている(表 2.7.2.4.1-2)。これらのうち、心電図 QT 延長が認められた患者 1 例はブプレノルフ
ィン経皮吸収製剤を、心循環器系に関する事象が認められた数例では高用量のトラマドール塩酸
塩と他剤を併用していた。また、QT 延長と密接に関連する有害事象である意識レベルの低下につ
いては、いずれも心臓障害との関連性は認められなかった。したがって、Tramadol Contramid OAD
が催不整脈作用を有する可能性は低いと考えられており、海外の製品情報概要及び添付文書等に
催不整脈リスクに関する注意喚起はされていない。
NS-24 2.7.2 臨床薬理試験 Page 11
表 2.7.2.4.1-2 海外市販後安全性情報 器官別大分類 基本語 発現件数
心臓障害 不整脈 2 心停止 1 心肺停止 2 一般・全身障害および投与部位の状態 突然死 1 臨床検査 心臓負荷試験異常 1 心電図異常 1 心電図 QT 異常 1 神経系障害 意識レベルの低下 8 意識消失 5 失神 9 合計 31
事象名:MedDRA ver.13.0
NS-24
2.7.2 臨床薬理試験
Page 12
2.7.2.5 付録
表 2.7.2.5-1 健康被験者における薬物動態試験の要約(1/2)
試験名 (実施国)
試験の目的 試験の デザイン
被験者数 (男/女)
被験者の種類 年齢範囲
投与方法 (用量、剤形、投与
経路) 【ロット番号】
薬物動態パラメータ値の平均値±標準偏差 試験報告書 添付場所 (m2.7.6) Cmax
(ng/mL) tmax
(hr) AUC0-∞
(ng・hr/mL) t1/2,β
(hr) MRT0-∞ (hr)
NS24/P1/01 (日本)
安全性及び
薬物動態(食
事の影響含
む)の検討並
びに即放性
製剤の薬物
動態との比
較
二重盲検 プラセボ
対照
12(12/0) 健康成人
20~35
100 mg 徐放錠 絶食
単回、経口 【S-100-(1)】
トラマドール(N=10) 5.3.3.1-1 (2.7.6.1)
123±39 9.5±2.8 2640±1020 6.44±1.07 15.1±2.1
M1(N=10)
25.9±5.9 11.5±4.0 610±159 7.02±1.37 16.9±2.4
12(12/0) 健康成人 20~33
200 mg 徐放錠 絶食
単回、経口 【S-100-(1)】
トラマドール(N=10)
257±89 9.6±3.2 5500±2480 6.63±1.99 15.0±2.5
M1(N=10)
56.1±13.8 9.6±3.6 1290±260 7.34±1.89 17.0±3.2
12(12/0) 健康成人 20~30
300 mg 徐放錠 絶食
単回、経口 【S-100-(1)】
トラマドール(N=10)
444±117 11.6±1.3 9720±2820 6.97±1.08 16.1±1.4
M1(N=10)
86.6±26.1 12.0±0.0 2090±520 7.93±1.51 18.3±2.1
NS-24
2.7.2 臨床薬理試験
Page 13
表 2.7.2.5-1 健康被験者における薬物動態試験の要約(2/2) 試験名
(実施国) 試験の目的 試験の
デザイン 被験者数 (男/女)
被験者の種類 年齢範囲
投与方法 (用量、剤形、投与
経路) 【ロット番号】
薬物動態パラメータ値の平均値±標準偏差 試験報告書 添付場所 (m2.7.6) Cmax
(ng/mL) tmax
(hr) AUC0-∞
(ng・hr/mL) t1/2,β
(hr) MRT0-∞ (hr)
NS24/P1/01 (日本)
安全性及び
薬物動態(食
事の影響含
む)の検討並
びに即放性
製剤の薬物
動態との比
較
二重盲検 プラセボ
対照
12(12/0) 健康成人
20~29
1 日目:200 mg 単回投与、
3~7 日目:1 日 1 回200 mg 反復投与、
徐放錠 朝食後、経口 【S-100-(1)】
7 日目(N=9) 5.3.3.1-1 (2.7.6.1)
トラマドール
446±80 8.0±2.4 9300±2150 7.18±0.98 14.4±1.3
M1
70.5±11.4 8.4±2.8 1690±360 8.43±1.15 16.9±1.9
12(12/0) 健康成人 20~33
1 日目:300 mg 単回投与、
3~7 日目:1 日 1 回300 mg 反復投与、
徐放錠 朝食後、経口 【S-100-(1)】
7 日目(N=9)
トラマドール
664±158 6.1±3.1 13100±3900 7.25±1.44 14.3±1.7
M1
93.2±33.2 7.7±2.0 2140±660 8.41±2.29 16.4±2.4
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 1
目次
2.7.3 臨床的有効性 ............................................................................................................................ 3 2.7.3.1 背景及び概観 .................................................................................................................... 3
2.7.3.1.1 試験デザインの特徴 ................................................................................................ 4 2.7.3.1.2 対象患者の選択 ........................................................................................................ 6 2.7.3.1.3 有効性評価項目 ........................................................................................................ 7 2.7.3.1.4 統計解析方法 ............................................................................................................ 8
2.7.3.2 個々の試験結果の要約 .................................................................................................. 10 2.7.3.2.1 がん疼痛患者を対象とした二重盲検比較試験 .................................................. 10 2.7.3.2.2 がん疼痛患者を対象とした継続投与試験 .......................................................... 11
2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析 .......................................................................... 12 2.7.3.3.1 試験対象集団 .......................................................................................................... 12 2.7.3.3.2 全有効性試験の結果の比較検討 .......................................................................... 16 2.7.3.3.3 部分集団における結果の比較 .............................................................................. 23
2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析 .................................................................. 26 2.7.3.4.1 推奨用法・用量 ...................................................................................................... 26 2.7.3.4.2 用法・用量の設定根拠 .......................................................................................... 26
2.7.3.5 効果の持続、耐薬性 ...................................................................................................... 33 2.7.3.6 付録 .................................................................................................................................. 34
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 2
略語一覧表
語句略語 語句略語内容
AUC area under the plasma concentration-time curve:血漿中濃度-時間曲線下面積
Cmax maximum plasma concentration:最高血漿中濃度
EDC electronic data capture:電子データ収集
FAS full analysis set:最大の解析対象集団
LOCF last observation carried forward:最終観察の引き延ばし
MAO monoamine oxidase:モノアミンオキシダーゼ
NSAIDs non-steroidal anti-inflammatory drugs:非ステロイド性消炎鎮痛薬
QOL quality of life:生活の質
SmPC summary of product characteristics:欧州製品概要
VAS visual analog scale:視覚的アナログ尺度
WHO world health organization:世界保健機関
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 3
2.7.3 臨床的有効性
2.7.3.1 背景及び概観
NS-24 は、トラマドール塩酸塩を有効成分とする 1 日 1 回経口投与の徐放性製剤である。トラ
マドール塩酸塩の 1 日 4 回経口投与の即放性製剤であるトラマールカプセルは、国内ではがん疼
痛及び慢性疼痛に対する鎮痛薬として使用されている。
NS-24 は、日本人健康成人を対象とした臨床第 I 相試験(NS24/P1/01 試験)で、1 日 1 回の投与
において、即放性製剤であるトラマドール塩酸塩カプセル(即放カプセル)の 1 日 4 回投与と曝
露量(AUC、Cmax)が同等であることが確認された。本結果を基に、NS-24 は、疼痛治療の選択
肢を増やし、服薬アドヒアランスの向上及び安定した鎮痛効果による生活の質(QOL)の向上に
寄与できると考え、がん疼痛及び慢性疼痛に対する有効性及び安全性の評価を行うため、がん疼
痛患者を対象とした臨床第 III 相試験 2 試験、慢性疼痛患者を対象とした臨床第 III 相試験 3 試験
を実施した。
本項(2.7.3 がん疼痛)では、がん疼痛に対する有効性を評価した。評価に用いた、即放カプセ
ルに対する非劣性を検証する二重盲検比較試験(NS24/P3/01 試験)及び継続して長期投与時の有
効性を検討する継続投与試験(NS24/P3/02 試験)の概略を表 2.7.3.1-1 に示す。
表 2.7.3.1-1 がん疼痛の有効性評価に用いた臨床試験一覧
検討内容 がん疼痛に対する有効性検討 即放性製剤に対する非劣性検証
がん疼痛に対する長期投与時の有効性検討
フェーズ 試験番号
国内第 III 相 NS24/P3/01
国内第 III 相 NS24/P3/02
施設数 試験期間
42 施設 20 ~20
42 施設 20 ~20
デザイン 二重盲検並行群間比較試験 即放カプセル対照
非対照、非盲検
対象 トラマールカプセルで疼痛コントロール されているがん疼痛患者
NS24/P3/01 試験で有効性が確認され、 忍容性に問題のないがん疼痛患者
目的 即放カプセルに対する非劣性を検証 がん疼痛患者に対する長期投与時の 有効性及び安全性を検証
用法 NS-24 錠:1 日 1 回(夜就寝前)経口投与、 即放カプセル:1 日 4 回(4 時間以上間隔を あける)経口投与
NS-24 錠:1 日 1 回(夜就寝前)経口投与
用量 観察期のトラマールカプセル投与量 (トラマドール塩酸塩として 100~300 mg/日)
NS24/P3/01 試験での投与量から開始し、 有効性と忍容性を勘案しながら 100~400 mg/日 aで増減量可
レスキュー・
ドーズ トラマールカプセル 治験薬 100 mg/日、200 mg/日投与時には 1 回 25 mg で 1 日最大 4 回まで、300 mg/日投与時には 1 回 50 mg で 1 日最大 2 回まで b
トラマールカプセル 治験薬 100 mg/日、200 mg/日投与時には 1 回 25 mg で 1 日最大 4 回まで、300 mg/日投与時には 1回 50 mgで 1 日最大 2回まで b
投与期間 観察期:3~15 日、二重盲検期:7 日、 追跡期:7 日
継続投与期:最長 24 週間、 追跡期:1 週間
有効性解析対
象(FAS)例数 ・NS-24 群:61 ・即放カプセル群:60
・NS-24 群:107
主要評価項目 二重盲検期終了日前 3 日間及び観察期 終了日前 3 日間の VAS 平均値の変化量
疼痛コントロール状況(VAS 値の推移)
資料番号 5.3.5.1-1(2.7.6.2)評価資料 5.3.5.2-1(2.7.6.3)評価資料 a:同意取得時に 75 歳以上の被験者では 300 mg/日まで b:同意取得時に 75 歳以上の被験者では、300 mg/日投与時のレスキュー・ドーズ使用は不可
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 4
NS-24
即放カプセル
(トラマドール塩酸塩カプセル)
トラマール
カプセル
2.7.3.1.1 試験デザインの特徴
NS24/P3/01 試験は、即放カプセル対照の二重盲検並行群間比較試験とした。NS24/P3/02 試験は、
NS24/P3/01 試験からの継続投与試験であり、非対照非盲検試験とした。試験デザインの概略を図
2.7.3.1.1-1 及び図 2.7.3.1.1-2 に、用法・用量を表 2.7.3.1.1-1 に示す。
NS24/P3/01 試験では、まず観察期(3~15 日間)に市販薬のトラマールカプセルで疼痛コント
ロールされていることを確認した。選択基準の要件(2.7.3.1.2 項参照)を満たし、二重盲検期へ
移行した被験者に、NS-24 又は即放カプセルを 1:1 でランダムに割り付け、観察期で確認された
被験者ごとの至適用量(固定用量)をダブルダミー法を用いて 7 日間投与した。定時投与で鎮痛
効果不十分なときは、レスキュー・ドーズとしてトラマールカプセルの投与を可能とした。
NS24/P3/02 試験に移行しない被験者は、二重盲検期終了後から 7 日間を追跡期とし、安全性を確
認した。
図 2.7.3.1.1-1 二重盲検比較試験(NS24/P3/01 試験)のデザイン
NS24/P3/02 試験では、NS24/P3/01 試験で有効性が確認(2.7.3.1.2 項参照)され、忍容性に問題
がない被験者に対し、NS-24 を最長 24 週間投与した。二重盲検期終了時での投与量から開始し、
有効性と安全性を勘案しながらトラマドール塩酸塩の総投与量が 400 mg/日(75 歳以上は 300 mg/
日)を超えない範囲で用量調節した。定時投与で鎮痛効果不十分なときは、レスキュー・ドーズ
としてトラマールカプセルの投与を可能とした。8 週間以上 24 週間未満の本剤投与中に、レスキ
ュー・ドーズも含めたトラマドール塩酸塩の総投与量 400 mg/日(75 歳以上は 300 mg/日)におい
ても鎮痛効果不十分と判断された場合は、終了することとした。また、継続投与終了(中止)後
から 7 日間を追跡期とし、安全性を確認した。
観察期 (3~15 日間)
追跡期 (7 日間)
NSAIDs 鎮痛補助薬等
二重盲検期 (7 日間)
ランダム 割付け
又は NS24/P3/02 試験へ
NSAIDs 鎮痛補助薬等
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 5
NS-24
図 2.7.3.1.1-2 継続投与試験(NS24/P3/02 試験)のデザイン
表 2.7.3.1.1-1 用法・用量
試験番号 投与期 投与群 用法 用量 投与期間 NS24/P3/01
定時投与 NS-24 1 日 1 回 夜就寝前 経口投与
観察期で決定した被験者ごとの トラマールカプセルの至適用量 (固定用量 100~300 mg/日)
7 日間
即放カプセル 1 日 4 回 経口投与 投与間隔は 4 時間以上
観察期で決定した被験者ごとの トラマールカプセルの至適用量 (固定用量 100~300 mg/日)
7 日間
レスキュー・ドーズ 定時投与間に 1 回まで、 治験薬との 投与間隔は 1 時間以上
定時投与で鎮痛効果が不十分な 場合は、トラマールカプセルを投与 治験薬 100 mg/日、200 mg/日投与時:
1 回 25 mg で 1 日最大 4 回まで 治験薬 300 mg/日投与時:
1 回 50 mg で 1 日最大 2 回まで a
NS24/P3/02 定時投与 NS-24 1 日 1 回 夜就寝前 経口投与
二重盲検期の投与量から開始し、 有効性と忍容性を勘案しながら 用量調節(100~400 mg/日 b)する。
最長 24 週間
レスキュー・ドーズ 治験薬との 投与間隔は 1 時間以上
定時投与で鎮痛効果が不十分な 場合は、トラマールカプセルを投与 治験薬 100 mg/日、200 mg/日投与時:
1 回 25 mg で 1 日最大 4 回まで 治験薬 300 mg/日投与時:
1 回 50 mg で 1 日最大 2 回まで a 治験薬 400 mg/日投与時: レスキュー・ドーズの使用は不可
a:同意取得時に 75 歳以上の被験者では、レスキュー・ドーズ使用は不可 b:同意取得時に 75 歳以上の被験者では 300 mg/日まで
試験ごとの併用薬及び併用療法について表 2.7.3.1.1-2 に示す。
NS24/P3/01 試験では、試験開始前から使用していた NSAIDs 等の非オピオイド鎮痛薬や抗うつ
薬等の鎮痛補助薬並びに副腎皮質ホルモン(外用剤を除く)及び腫瘍用薬は併用制限薬とし、用
法・用量を変更せずに継続投与した。
NS24/P3/02 試験では、併用制限薬は設けず、非オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬等の用法・用量
の変更、中止も可能とした。
NSAIDs 鎮痛補助薬等
NSAIDs 鎮痛補助薬等
追跡期 (7 日間)
継続投与期 (最長 24 週間) 二重盲検期
NS-24 又は 即放カプセル
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 6
表 2.7.3.1.1-2 併用薬及び併用療法 試験番号 NS24/P3/01 NS24/P3/02
併用禁止薬 ∙ NS-24 及びトラマールカプセル以外の オピオイド鎮痛薬
∙ モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬 ∙ オンダンセトロン ∙ カルバマゼピン ∙ リネゾリド ∙ 他の治験薬
∙ NS-24 及びトラマールカプセル以外の オピオイド鎮痛薬(注射剤、経口剤、外用
剤)(鎮咳目的で使用するリン酸コデイン
及びリン酸ジヒドロコデインは除く) ∙ モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬 ∙ オンダンセトロン ∙ カルバマゼピン ∙ リネゾリド ∙ 他の治験薬
併用禁止療法 ∙ 原疾患の回復を目的とした手術(摘出術)や全身麻酔を必要とする手術
∙ 放射線療法 ∙ 神経ブロック、刺激鎮痛法 ∙ 医療機器の治験
∙ 原疾患の回復を目的とした手術(摘出術)や全身麻酔を必要とする手術
∙ 放射線療法(痛みの原因部位以外への照射は可能とする。ただし、医師が疼痛評価に
影響しないと判断した場合に限る) ∙ 医療機器の治験
併用制限薬 ∙ 鎮痛補助薬 ∙ 非オピオイド鎮痛薬 ∙ 副腎皮質ホルモン(コルチコステロイド) ∙ 腫瘍用薬
∙ なし
2.7.3.1.2 対象患者の選択
NS24/P3/01 及び NS24/P3/02 試験の主な選択基準を表 2.7.3.1.2-1 に示す。
NS24/P3/01 試験では、トラマールカプセルで疼痛コントロールが安定しているがん疼痛患者を
選択するため、疼痛コントロールの判定基準として以下の 3 点を設定した。
① 治験薬投与開始日から起算した前 3 日間の VAS 平均値が 25 mm 未満であり、各日の VAS
が 40 mm 未満
② 治験薬投与開始日から起算した 3 日間以上、トラマールカプセルの投与量(1 日 4 回、100 mg/
日、200 mg/日又は 300 mg/日、レスキュー・ドーズを除く)が一定
③ 治験薬投与開始日までの 3 日間以上、各日のレスキュー・ドーズ投与回数が 2 回以下
疼痛コントロールが安定している基準としては、VAS 値が 30 mm 以下で疼痛がほぼコントロー
ルされた状態、40 mm 以上で疼痛コントロールができていない状態であるとの平賀らの報告 1)を
参考とした。
また、NS24/P3/02 試験では、NS24/P3/01 試験の有効性評価の最終時(終了前 3 日間)の VAS
値(平均値)が、疼痛コントロールできている状態(25 mm 未満)であり、レスキュー・ドーズ
投与回数が 2 回以下であることを選択基準とした。
表 2.7.3.1.2-1 主な選択基準
試験番号 NS24/P3/01 NS24/P3/02 投与開始前の VAS 値
治験薬投与開始日から起算した前 3 日間の VAS 平均値:25 mm 未満、 各日の VAS:40 mm 未満
NS24/P3/01 試験の二重盲検期終了日の前 3日間の VAS 平均値:25mm 未満
レスキュー・ドーズ
の投与回数 治験薬投与開始日までの 3 日間以上、 各日の投与回数:2 回以下
NS24/P3/01 試験の二重盲検期終了日の前 3日間の各日の投与回数:2 回以下
年齢 20 歳以上 20 歳以上 性別 問わない 問わない 外来・入院 問わない 問わない
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 7
2.7.3.1.3 有効性評価項目
各試験の有効性評価項目を表 2.7.3.1.3-1 に示す。主要評価項目は、NS24/P3/01 試験は VAS 平均
値の変化量、NS24/P3/02 試験は疼痛コントロール状況とした。
表 2.7.3.1.3-1 有効性評価項目
有効性評価項目 NS24/P3/01 NS24/P3/02 VAS 平均値の変化量 ◎ - 疼痛コントロール状況 - ◎ VAS 値の推移 ○ ○ 1 日の有痛時間 ○ ○ 夜間の睡眠 ○ ○ レスキュー・ドーズの使用回数 a ○ ○ 治療の満足度 ○ ○ 疼痛コントロール状況(日単位) - ○
◎:主要評価項目 VAS:visual analog scale a:NS24/P3/02 試験では、レスキュー・ドーズの使用状況(使用回数及び使用量)
以下に、各評価項目の調査方法を記載する。
(1) 痛みの程度(VAS)
毎日就寝前に、被験者は患者日記の 100 mm の直線上に過去 24 時間以内の平均的な痛みの程度
(VAS 値)を記入した。治験責任(分担)医師又は治験協力者は被験者の記入した VAS を測定
し、疼痛コントロール調査票及び患者日記に記入した。
(2) 1 日の有痛時間
被験者は、1 日の有痛時間の合計を以下の 5 段階で評価した。NS24/P3/01 試験では、毎日、患
者日記に記載し、NS24/P3/02 試験では来院日ごとに疼痛調査票に記載した。 1 = 4 時間未満 2 = 4 時間以上 8 時間未満 3 = 8 時間以上 12 時間未満 4 = 12 時間以上 5 = 終日
(3) 夜間の睡眠
被験者は、前日の夜間の睡眠について以下の 4 段階で評価し、毎日、患者日記に記載した。 1 = よく眠れた 2 = まあまあ眠れた 3 = あまり眠れなかった 4 = 全く眠れなかった
(4) レスキュー・ドーズの使用回数
被験者は、レスキュー・ドーズの 1 日の使用回数を毎日、患者日記に記録した。
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 8
(5) 治療の満足度
被験者は、治療効果の満足度を、以下の 5 段階で評価した。NS24/P3/01 試験では、治験薬投与
開始日及び二重盲検期終了・中止時に治療の満足度調査票に記載し、NS24/P3/02 試験では、来院
日ごとに疼痛調査票に記載した。 1 = 非常に満足 2 = 満足 3 = 満足・不満のどちらでもない 4 = 不満 5 = 非常に不満
2.7.3.1.4 統計解析方法
2 試験共に、有効性評価のための主要な解析対象集団は full analysis set(FAS)とした。FAS の
定義は、対象外疾患の症例、有効性に関して解析すべきデータがない症例、治験薬が未投与であ
ることが明らかな症例及び GCP 違反例を除いた集団とした。
脱落・中止等により投与後のデータが欠測の場合は、last observation carried forward(LOCF)を
用いて、投与開始後の最終観察・検査時点のデータを終了時のデータとした。
NS24/P3/02 試験への移行前に NS24/P3/01 試験の主要評価項目のデータを固定するために、
NS24/P3/01 試験の投与開始前 3 日間及び投与終了日前 3 日間の VAS 値を登録センター(第三者機
関)に登録し、登録データと EDC 入力データの整合性を確認した。
各評価項目の統計解析方法を以下に記載する。
(1) 主要評価項目「二重盲検期終了日前 3 日間及び観察期終了日前 3 日間の VAS 平均値の変
化量」(NS24/P3/01 試験)
二重盲検期終了日前日から 3 日間(又は中止日から 3 日間)及び観察期終了日前 3 日間の VAS
平均値及びその変化量について記述統計量を算出した。また、群間比較として VAS 平均値の変化
量の差(NS-24 群-即放カプセル群)について、記述統計量及び 95%信頼区間を算出し、その信
頼区間の上限が非劣性マージン 7.5 mm を超えないことを検証した。
【非劣性マージンの設定根拠】
非劣性マージンの設定は、平賀らの報告 1)を参考とした。報告では、「疼痛がほぼコントロー
ルされていると考えられる鎮痛薬投与前値 3 cm 以下の領域では、VAS 減少に加えてこの値が維
持又は 1 cm程度の増加であっても有効と判断され、この値が 2~3 cm増加したときに無効と判定」
とされている。この報告から、10 mm 程度の差は効果に大きな違いはなく、20 mm を超える差は
無効となり、VAS の差が ± 15 mm 未満であれば、疼痛をコントロールできていると考えられる。
そこで、15 mm の 1/2 である 7.5 mm を非劣性マージンと設定した。
(2) 主要評価項目「疼痛コントロール」(NS24/P3/02 試験)
NS24/P3/01 試験の二重盲検期終了日の前 3 日間の VAS 値の平均値を基準値とし、治験薬投与開
始後各 Visit 内(2 週間もしくは 4 週間)の VAS の推移より疼痛コントロール状況は以下の基準で
判定した。
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 9
良好 :「基準値+10 mm」以内で推移している
ほぼ良好:「基準値+20 mm」以内で推移している
不良 :「基準値+20 mm」を超えて推移している
また、各 Visit で「良好」を示す被験者の割合を疼痛コントロール良好率(%)とし、疼痛コン
トロール良好率及びその 95%信頼区間を算出した。
(3) 副次評価項目
1) VAS 平均値及びその変化量(NS24/P3/01、NS24/P3/02 試験)
観察期及び二重盲検期の各評価時点(日)並びに二重盲検期終了日、二重盲検期終了日前 3 日
間のVAS平均値及びNS24/P3/02試験の各Visit間のVAS平均値について記述統計量を算出した。
また、NS24/P3/02 試験の各 Visit 間の VAS 平均値については、二重盲検期終了日前 3 日間 VAS 平
均値との変化量の記述統計量を算出した。
2) 1 日の有痛時間(NS24/P3/01、NS24/P3/02 試験)
観察期及び二重盲検期の各評価時点(日)並びに二重盲検期終了日前日、NS24/P3/02 試験の各
Visit で集計した。
3) 夜間の睡眠(NS24/P3/01、NS24/P3/02 試験)
二重盲検期の各評価時点(日)、二重盲検期終了日前日及び NS24/P3/02 試験の各 Visit 前日で
集計した。
4) レスキュー・ドーズの使用回数(NS24/P3/01 試験)又は使用状況(NS24/P3/02 試験)
観察期及び二重盲検期の各評価時点(日)のレスキュー・ドーズの使用回数平均値、並びに二
重盲検期及び NS24/P3/02 試験の各 Visit 間のレスキュー・ドーズの使用回数平均値及び使用量平
均値を集計した。
5) 治療の満足度(NS24/P3/01、NS24/P3/02 試験)
観察期終了日、二重盲検期終了日及び NS24/P3/02 試験の各 Visit で集計を行い、「非常に満足」
又は「満足」であった被験者の割合の 95%信頼区間を算出した。
6) 疼痛コントロール状況(日単位)(NS24/P3/02 試験)
NS24/P3/02 試験の投与開始後の総投与日数における疼痛コントロール状況が「良好」の日数の
割合を求めた。
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 10
2.7.3.2 個々の試験結果の要約
有効性の評価に用いた NS24/P3/01 試験及び NS24/P3/02 試験の試験ごとの結果を以下に要約し
た。なお、個々の試験結果の詳細は、2.7.6 項に記載した。
2.7.3.2.1 がん疼痛患者を対象とした二重盲検比較試験
(試験番号 NS24/P3/01、資料番号 5.3.5.1-1、評価資料)
本剤の即放カプセルとの非劣性を検証するために、トラマールカプセルで疼痛コントロールが
確認された日本人がん疼痛患者[目標症例数:120 例(各群 60 例)]を対象に、即放カプセルを
対照とした二重盲検並行群間比較試験を実施した。
トラマールカプセル投与により疼痛がコントロールされているがん疼痛患者(3 日間の痛みの
程度 VAS が平均 25 mm 未満、各日 40 mm 未満であり、トラマールカプセルの 3 日間投与量が一
定で、レスキュー・ドーズ投与回数が 1 日 2 回以下)を、NS-24 群又は即放カプセル群に 1:1 に
ランダムに割り付け、ダブルダミー法により治験薬(NS-24 又は即放カプセル)を投与した。用
法用量は、観察期で確認されたトラマールカプセルの被験者ごとの 1 日用量(100、200、300 mg/
日)を用い、NS-24 は夜就寝前に 1 日 1 回、即放カプセルは 1 日 4 回、7 日間経口投与した。また、
治験薬投与開始以降に鎮痛効果が不十分と考えられる場合は、レスキュー・ドーズとしてトラマ
ールカプセル 25 mg 又は 50 mg を治験薬の投与量に応じて規定の用法・用量(表 2.7.3.1.1-1 参照)
で投与可能とした。
総投与症例 121 例(NS-24 群 61 例、即放カプセル群 60 例)の全例が有効性の主要な解析対象
集団 FAS 及び安全性解析対象集団であった。
治験薬定時投与の平均投与日数は NS-24 群 7.8 ± 1.4 日、即放カプセル群 7.9 ± 0.7 日であった。
平均 1 日投与量(Mean±SD)は、NS-24 群 132.79 ± 53.92 mg/日、即放カプセル群 130.00 ± 56.15 mg/
日、レスキュー・ドーズの平均 1 日投与量は、NS-24 群 2.76 ± 7.00 mg/日、即放カプセル群 3.00 ±
7.79 mg/日であり、トラマドール塩酸塩としての平均 1 日総投与量(定時投与+レスキュー・ドー
ズ)は、NS-24 群 135.54 ± 56.39 mg/日、即放カプセル群 133.00 ± 57.72 mg/日であった(5.3.5.3-1
表 1 参照)。
主要評価項目である二重盲検期終了日前 3 日間及び観察期終了日前 3日間の VAS 平均値変化量
(Mean±SD)は、表 2.7.3.2.1-1 に示すように、NS-24 群 -0.90 ± 6.11 mm、即放カプセル群 -0.61 ±
5.33 mm であり、その変化量の群間差は -0.29 mm(95%信頼区間 -2.35~1.78 mm)であり、信頼
区間の上限値が予め設定した非劣性マージン 7.5 mm を超えないことから、NS-24 の即放カプセル
に対する非劣性が検証された。
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 11
表 2.7.3.2.1-1 VAS平均値及びその変化量(NS24/P3/01 試験)-FAS-
投与群 時期 a N Mean±SD
(mm) Median (mm)
Min~Max (mm)
変化量(投与期-観察期)(mm)
Mean±SD Median Min~Max 群間 差 b
95% 信頼区間
NS-24 群 観察期 61 9.43 ± 7.56 10.0 0.0~24.3
-0.90 ± 6.11 -1.0 -15.3~20.3 -0.29 -2.35~1.78
投与期 61 8.53 ± 8.33 6.7 0.0~35.7 即放カプ
セル群 観察期 60 9.42 ± 7.47 8.8 0.0~23.3
-0.61 ± 5.33 0.0 -16.7~17.7 投与期 60 8.81 ± 8.72 6.0 0.0~36.0
a:観察期=観察期終了日前 3 日間の平均値、投与期=二重盲検期終了日前 3 日間の平均値 b:NS-24 群変化量の平均値-即放カプセル群変化量の平均値
[5.3.5.1-1 p.59 表 11.4.1.1-1 を引用]
また、副次評価項目である VAS の推移、1 日の有痛時間、夜間の睡眠、レスキュー・ドーズの
使用回数並びに治療の満足度において、NS-24 と即放カプセルの両群間に差は認められなかった。
以上より、トラマールカプセルで疼痛コントロールされたがん疼痛患者を対象として有効性を
比較した結果、NS-24 1 日 1 回投与の即放カプセル 1 日 4 回投与に対する非劣性が検証された。
2.7.3.2.2 がん疼痛患者を対象とした継続投与試験
(試験番号 NS24/P3/02、資料番号 5.3.5.2-1、評価資料)
二重盲検比較試験(NS24/P3/01 試験)において有効性が確認され、忍容性に問題がないがん疼
痛患者[目標症例数:8 週間投与例として 40 例]を対象に、本剤の長期投与時の有効性及び安全
性を検証するため、非対照オープンラベル試験を実施した。
二重盲検期を終了し、終了前 3 日間の VAS が平均 25 mm 未満で、レスキュー・ドーズ投与回
数が 1 日 2 回以下であり、忍容性に問題のないがん疼痛患者を対象に、二重盲検期での投与量を
開始用量として NS-24 を 1 日 1 回夜就寝前に最長 24 週間経口投与した。有効性と忍容性を勘案し
ながら 400 mg/日(75 歳以上は 300 mg/日)を超えない範囲で、増減量することを可能とした。治
験薬投与開始以降に定時投与では鎮痛効果が不十分と考えられる場合は、レスキュー・ドーズと
してトラマールカプセル 25 mg 又は 50 mg を治験薬の投与量に応じて規定の用法用量(表
2.7.3.1.1-1 参照)で投与可能とした。
総投与症例 107 例全例が有効性の主要な解析対象集団 FAS 及び安全性解析対象集団であった。
治験薬定時投与の平均投与日数は 109.7 ± 55.8 日(Min~Max:5~176 日)であった。最終時 1
日投与量(Mean±SD)は 171.0 ± 84.7 mg/日、最大 1 日投与量は 174.8 ± 83.7 mg/日、レスキュー・
ドーズの 1 日最大投与量は、49.5 ± 38.1 mg/日であり、トラマドール塩酸塩としての最大 1 日総投
与量(定時投与+レスキュー・ドーズ)は、219.4 ± 102.8 mg/日であった。
主要評価項目である疼痛コントロール状況を表 2.7.3.2.2-1 に示す。疼痛コントロール良好率
(95%信頼区間)は、V2w で 68.2%(58.5~76.9%)、V8w で 71.6%(61.0~80.7%)、V24w で 76.7%
(61.4~88.2%)であり、試験期間を通して概ね 60%から 70%の被験者が良好であった。
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 12
表 2.7.3.2.2-1 疼痛コントロール状況及び良好率(NS24/P3/02 試験)-FAS-
評価 時期
疼痛コントロール状況 a N
疼痛コントロール良好率 良好 ほぼ良好 不良
n % n % n % 良好率 (n/N) 95%信頼区間 V2w 73 68.2 19 17.8 15 14.0 107 68.2% (73/107) 58.5~76.9% V4w 65 65.0 18 18.0 17 17.0 100 65.0% (65/100) 54.8~74.3% V6w 68 70.8 16 16.7 12 12.5 96 70.8% (68/ 96) 60.7~79.7% V8w 63 71.6 14 15.9 11 12.5 88 71.6% (63/ 88) 61.0~80.7% V12w 49 62.8 10 12.8 19 24.4 78 62.8% (49/ 78) 51.1~73.5% V16w 38 56.7 9 13.4 20 29.9 67 56.7% (38/ 67) 44.0~68.8% V20w 34 63.0 7 13.0 13 24.1 54 63.0% (34/ 54) 48.7~75.7% V24w 33 76.7 5 11.6 5 11.6 43 76.7% (33/ 43) 61.4~88.2%
終了時 b 59 55.1 15 14.0 33 30.8 107 55.1% (59/107) 45.2~64.8% a:NS24/P3/01 試験の二重盲検期終了日前 3 日間の VAS 平均値を基準値とし、各 Visit 内の VAS の推移より
以下のとおり判定した。 良好:「基準値+10 mm」以内で推移、ほぼ良好:「基準値+20 mm」以内で推移、不良:「基準値+20 mm」を超えて推移
b:終了時は終了又は中止した最後の Visit 間の疼痛コントロール状況
[5.3.5.2-1 p.59 表 11.4.1.1-1 を引用]
また、副次評価項目である Visit ごとの VAS 値(Mean)は、試験期間を通して 10 mm 前後の値
で推移し、1 日の有痛時間は、試験期間を通して約 80%以上の被験者が 4 時間未満であった。夜
間の睡眠は、試験期間を通して 80%から 90%の被験者が「よく眠れた」又は「まあまあ眠れた」
であった。レスキュー・ドーズの使用回数及び使用量は、85%以上の被験者が 1 回以下で 25 mg
以下であった。治療の満足度は試験期間を通して 80%以上の被験者が「非常に満足」又は「満足」
であった。疼痛コントロール状況が「良好」の日数の割合は、89.4%であった。
以上より、がん疼痛患者を対象に、本剤 100~400 mg/日を 1 日 1 回で長期投与(最長 24 週間)
した結果、試験期間を通して良好な鎮痛効果を示すことが確認された。
2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析
2.7.3.3.1 試験対象集団
2.7.3.3.1.1 人口統計学的及びベースライン時特性
人口統計学的及び他の基準値の特性を表 2.7.3.3.1.1-1 に示す。
NS24/P3/01 試験において、NS-24 群と即放カプセル群の人口統計学的特性、治験薬投与前の VAS
値及び痛みの強度に不均衡は認められなかった。
NS24/P3/02 試験では、平均年齢(Mean±SD)は 65.7 ± 10.4 歳であり、女性よりも男性の割合が
高かった。
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 13
表 2.7.3.3.1.1-1 人口統計学的及び他の基準値の特性-FAS-(1/2) 試験番号 NS24/P3/01 NS24/P3/02
投与群 NS-24 群 (N=61)
即放カプセル群 (N=60)
NS-24 群 (N=107)
性別 男 40 (65.6) 37 (61.7) 69 (64.5) 女 21 (34.4) 23 (38.3) 38 (35.5)
年齢
65 歳未満 26 (42.6) 25 (41.7) 45 (42.1) 65~74 歳 20 (32.8) 25 (41.7) 39 (36.4) 75 歳以上 15 (24.6) 10 (16.7) 23 (21.5) Mean±SD(歳) 65.9 ± 11.3 64.8 ± 10.3 65.7 ± 10.4 Median(歳) 65 66.5 67 Min~Max(歳) 41~87 37~85 41~87
身長
150 cm 未満 6 (9.8) 4 (6.7) 8 (7.5) 150~160 cm 未満 23 (37.7) 23 (38.3) 42 (39.3) 160~170 cm 未満 28 (45.9) 24 (40.0) 45 (42.1) 170 cm 以上 4 (6.6) 9 (15.0) 12 (11.2) Mean±SD (cm) 159.98 ± 7.07 161.38 ± 9.06 160.73 ± 7.97 Median (cm) 160.2 161.45 161.0 Min~Max (cm) 145.0~174.0 142.2~179.0 142.2~179.0
体重
50 kg 未満 22 (36.1) 16 (26.7) 33 (30.8) 50~60 kg 未満 23 (37.7) 30 (50.0) 47 (43.9) 60~70 kg 未満 11 (18.0) 9 (15.0) 19 (17.8) 70 kg 以上 5 (8.2) 5 (8.3) 8 (7.5) Mean±SD (kg) 55.06 ± 11.04 54.57 ± 10.09 54.83 ± 10.50 Median (kg) 53.3 55.95 55.2 Min~Max (kg) 40.0~87.6 33.6~80.7 33.6~87.6
BMI
20 未満 24 (39.3) 24 (40.0) 43 (40.2) 20~25 未満 29 (47.5) 30 (50.0) 52 (48.6) 25 以上 8 (13.1) 6 (10.0) 12 (11.2) Mean±SD 21.48 ± 3.87 20.91 ± 3.39 21.19 ± 3.62 Median 20.6 20.5 20.5 Min~Max 15.2~34.2 14.6~30.9 14.6~34.2
診療区分 入院 18 (29.5) 17 (28.3) 30 (28.0) 外来 43 (70.5) 43 (71.7) 77 (72.0)
腫瘍名 (重複有り)
頭頸部の癌 0 1 (1.7) 1 (0.9) 肺癌 18 (29.5) 16 (26.7) 31 (29.0) 乳癌 8 (13.1) 5 (8.3) 10 (9.3) 消化管の癌 11 (18.0) 14 (23.3) 23 (21.5) 胆・肝・膵の癌 9 (14.8) 8 (13.3) 15 (14.0) 泌尿・生殖器の癌 15 (24.6) 9 (15.0) 22 (20.6) その他 1 (1.6) 8 (13.3) 7 (6.5)
疼痛期間
3 ヵ月未満 19 (31.1) 17 (28.3) 32 (29.9) 3~6 ヵ月未満 16 (26.2) 18 (30.0) 30 (28.0) 6~12 ヵ月未満 9 (14.8) 11 (18.3) 17 (15.9) 12 ヵ月以上 17 (27.9) 14 (23.3) 28 (26.2) Mean±SD(ヵ月) 9.4 ± 13.3 8.8 ± 12.1 9.4 ± 13.1 Median(ヵ月) 4 4 4 Min~Max(ヵ月) 0~87 1~78 0~87
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 14
表 2.7.3.3.1.1-1 人口統計学的及び他の基準値の特性-FAS-(2/2) 試験番号 NS24/P3/01 NS24/P3/02
投与群 NS-24 群 (N=61)
即放カプセル群 (N=60)
NS-24 群 (N=107)
疼痛部位 (重複有り)
頭・頸 1 (1.6) 3 (5.0) 4 (3.7) 上肢・肩 6 (9.8) 7 (11.7) 11 (10.3) 背 15 (24.6) 9 (15.0) 22 (20.6) 胸 19 (31.1) 15 (25.0) 30 (28.0) 腹 17 (27.9) 23 (38.3) 35 (32.7) 腰 10 (16.4) 10 (16.7) 18 (16.8) 臀 7 (11.5) 3 (5.0) 9 (8.4) 下肢 9 (14.8) 8 (13.3) 15 (14.0) その他 5 (8.2) 6 (10.0) 9 (8.4)
疼痛原因 (重複有り)
骨転移 31 (50.8) 20 (33.3) 46 (43.0) 神経圧迫 6 (9.8) 12 (20.0) 14 (13.1) 軟部組織浸潤 16 (26.2) 15 (25.0) 27 (25.2) 内臓転移 11 (18.0) 18 (30.0) 28 (26.2) 筋萎縮 0 0 0 その他 7 (11.5) 7 (11.7) 11 (10.3)
既往歴 無 14 (23.0) 10 (16.7) 21 (19.6) 有 47 (77.0) 50 (83.3) 86 (80.4)
合併症 無 1 (1.6) 0 1 (0.9) 有 60 (98.4) 60 (100.0) 106 (99.1)
【観察期】
トラマールカプセル
の 1 日投与量
100 mg/日 43 (70.5) 45 (75.0) 79 (73.8) 200 mg/日 16 (26.2) 12 (20.0) 25 (23.4) 300 mg/日 2 (3.3) 3 (5.0) 3 (2.8) Mean±SD (mg/日) 132.8 ± 53.9 130.0 ± 56.1 129.0 ± 51.4 Median (mg/日) 100 100 100 Min~Max (mg/日) 100~300 100~300 100~300
【観察期】
治験薬投与開始日か
ら起算した前 3 日間の VAS 平均値
0~10 mm 未満 30 (49.2) 32 (53.3) 57 (53.3) 10~25 mm 未満 31 (50.8) 28 (46.7) 50 (46.7) Mean±SD (mm) 9.43 ± 7.56 9.42 ± 7.47 9.07 ± 7.37 Median (mm) 10.0 8.8 8.7 Min~Max (mm) 0.0~24.3 0.0~23.3 0.0~24.3
【観察期】
治験薬投与開始日か
ら起算した前 3 日間のレスキュー・ドー
ズ回数平均値
0 回 56 (91.8) 53 (88.3) 97 (90.7) >0 回 5 (8.2) 7 (11.7) 10 (9.3) Mean±SD(回) 0.08 ± 0.33 0.09 ± 0.31 0.07 ± 0.28 Median(回) 0 0 0 Min~Max(回) 0.0~2.0 0.0~2.0 0.0~2.0
【観察期】
治療の満足度
非常に満足 16 (26.2) 19 (31.7) 32 (29.9) 満足 29 (47.5) 32 (53.3) 54 (50.5) 満足・不満のどちらで
もない 15 (24.6) 8 (13.3) 19 (17.8)
不満 1 (1.6) 1 (1.7) 2 (1.9) 非常に不満 0 0 0
[5.3.5.1-1 p.56 表 11.2-1、5.3.5.2-1 p.56 表 11.2-1、5.3.5.3-1 p.19 表 2 を改変]
2.7.3.3.1.2 市販後に使用が予想される患者集団との差異
NS24/P3/02試験では、男性 64.5%、女性 35.5%と男性の割合が比較的高く、また 65歳未満 42.1%、
65 歳以上 57.9%と高齢者が多く含まれた。これらの偏りは、癌の罹患率が高齢者では男性の方が
高いという報告 2, 3)に一致する。また、疼痛の原疾患(腫瘍名)は、肺癌、消化管の癌、泌尿・生
殖器の癌の患者が多く、日本人での癌患者分布 2)に類似している。診療区分では、外来患者 72.0%、
入院患者 28.0%の割合で外来患者が多かった。試験には腫瘍用薬の併用患者が 78.5%(84/107 例)
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 15
含まれている(表 2.7.3.3.3.2-2 参照)ことからも、外来で行う化学療法の実施件数が年々増加傾
向にあるという調査結果 3, 4)に一致する。
以上から、臨床試験に組み入れられた患者は市販後に使用が予想される患者集団を反映してい
ると考えられた。
2.7.3.3.1.3 被験者の内訳
NS24/P3/01 及び NS24/P3/02 試験の被験者の内訳を、表 2.7.3.3.1.3-1 及び表 2.7.3.3.1.3-2 に示す。
NS24/P3/01 試験では、二重盲検期に移行した 121 例をランダムに割り付け(NS-24 群 61 例、即
放カプセル群 60 例)、そのうち 115 例[NS-24 群 57 例(93.4%)、即放カプセル群 58 例(96.7%)]
が二重盲検期を完了した。中止した NS-24 群 4 例(6.6%)、即放カプセル群 2 例(3.3%)の中止
理由はいずれも有害事象の発現であり、鎮痛効果不十分による中止は認められなかった。
NS24/P3/02 試験に移行した 107 例のうち 45 例(42.1%)が試験を完了した。62 例(57.9%)が
試験を中止し、そのうち、有害事象の発現による中止は 12 例(11.2%)、鎮痛効果不十分による
中止は 3 例(2.8%)、その他医師判断による中止が 39 例(36.4%)であった。医師判断による中
止例の多くは原疾患の悪化に起因していた。
NS24/P3/02 試験の中止率を NS24/P3/01 試験時の投与群別に比較すると、NS-24 群 60.4%(32/53
例)、即放カプセル群 55.6%(30/54 例)と同等であった。また、NS24/P3/02 試験開始 2 週間以内
の中止率は NS-24 群 7.5%(4/53 例)、即放カプセル群 3.7%(2/54 例)といずれも低く、即放カ
プセルから NS-24 への切替えによる中止率への影響は認められなかった(2.7.6.3.2 項参照)。
表 2.7.3.3.1.3-1 被験者の内訳(NS24/P3/01 試験)
投与群 NS-24 群 即放カプセル群
n % n % 完了 57 93.4 58 96.7 未完了 4 6.6 2 3.3
中止 理由
同意の撤回 0
0
不適格判明 0
0
有害事象の発現(医師の判断) 1 1.6 2 3.3 有害事象の発現(被験者の希望) 3 4.9 0
治験薬の鎮痛効果不十分 0
0
治験計画の遵守不可能 0
0
被験者の都合(転院、非協力等) 0
0
被験者の妊娠 0
0
その他、医師判断 0
0
計 61
60
[5.3.5.1-1 p.51 表 10.1-1 を引用]
NS-24 2.7.3 がん疼痛 臨床的有効性 Page 16
表 2.7.3.3.1.3-2 被験者の内訳(NS24/P3/02 試験)
合計 (N=107)
1 週 2 週 3~4 週 5~8 週 9~12 週 13 週~
n % n % n % n % n % n % n % 完了 45 42.1 -
-
-
-
-
-
未完了 62 57.9 2 1.9 4 3.7 5 4.7 11 10.3 12 11.2 28 26.2
理
由
同意の撤回 1 0.9 0
1 0.9 0
0
0
0
不適格判明 0
0
0
0
0
0
0
有害事象の発現 (医師の判断)
8 7.5 1 0.9 1 0.9 0
1 0.9 1 0.9 4 3.7
有害事象の発現 (被験者の希望)
4 3.7 1 0.9 0
1 0.9 2 1.9 0
0
治験薬の鎮痛効果不十分 3 2.8 0
0
1 0.9 2 1.9 0
0
治験計画の遵守不可能 5 4.7 0
1 0.9 1 0.9 0
1 0.9 2 1.9 被験者の都合 (転院、非協力等)
2 1.9 0
0
0
1 0.9 0
1 0.9
被験者の妊娠 0
0
0
0
0
0
0
その他、医師判断 39 36.4 0
1 0.9 2 1.9 5 4.7 10 9.3 21 19.6
[5.3.5.2-1 p.49 表 10.1-1 を引用]
2.7.3.3.1.4 鎮痛薬の併用状況
NS24/P3/01 試験開始時又は NS24/P3/02 試験期間中、非オピオイド鎮痛薬及び鎮痛補助薬を併用
していた被験者の割合を鎮痛薬の分類ごとに表 2.7.3.3.1.4-1 に示す。
ほとんどの被験者で非オピオイド鎮痛薬として NSAIDs を併用していた。プレガバリンの併用
は約 13%であった。
表 2.7.3.3.1.4-1 試験期間中の非オピオイド鎮痛薬及び鎮痛補助薬の併用状況
試験番号 投与群
NS24/P3/01 NS24/P3/02 (N=107) NS-24 群
(N=61) 即放カプセル群
(N=60) 使用例数 a % 使用例数 a % 使用例数 a %
鎮痛薬全般 50 82.0 49 81.7 100 93.5 非オピオイド鎮痛薬全般 49 80.3 48 80.0 99 92.5
NSAIDs 49 80.3 48 80.0 99 92.5 鎮痛補助薬全般 9 14.8 9 15.0 23 21.5 抗う�