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分散性に優れた微細球状バテライト粉粒体
北海道立総合研究機構
フェロー 長野 伸泰
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球状炭酸カルシウム微粒子の開発経緯ゴム,プラスチック,塗料,インク,紙などのフィラーや食品,医薬品,化粧品の添加材等に広く使用されて
いる軽質炭酸カルシウムには,立方体~紡錘形のカルサイト型,針状~柱状のアラゴナイト型および球状のバテライト型の3種類のものがあります。
このうち,バテライト型軽質炭酸カルシウムは,真球状粒子が個々に独立分散した微粒粉末で,優れた分散・流動性,充填性,滑性等を示すことから,製紙・インク等の充填材,医用材料,個体潤滑剤として注目されている素材です。
ここでは,本特許技術で製造した微細球状バテライト粒子の特性についてご紹介します。
炭酸カルシウムポリタイプの特性と主な用途
ポリタイプの種類 比重 結晶系 硬度 粒子形状 主な用途
カルサイト 2.71 三方晶系 3 立方体、紡錘形 各種フィラー、添加剤
アラゴナイト 2.94 斜方晶系 3.5~4 針状、棒状 製紙用、石綿代替用
バテライト2.5~2.6
2.54六方晶系 3~4 球状、楕円体 製紙・インキ用、研磨用
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アラゴナイト
カルサイト
バテライト
軽質炭酸カルシウムのX線回折パターン
各種軽質炭酸カルシウムの粒子形状とX線回折パターン
カルサイト(立方体) カルサイト(紡錘体)
バテライト(球状)アラゴナイト(棒状)
10μm 1μm
5μm5μm
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球状バテライト微粒子の製造方法(1)
由来石灰石ホタテ貝殻ライムケーキ
炭酸カルシウム水酸化カルシウム酸化カルシウム
酢酸カルシウム水溶液の調整
酢酸水溶液
モル比(カルシウム成分/酢酸成分)=1/2
酢酸カルシウム水溶液酢酸カルシウム濃度
~1mol/L
CaCO3 H2O + CO2Ca(OH)2 + 2CH3COOH ⇒ Ca(CH3COO)2 + 2H2O CaO H2O
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球状バテライト微粒子の製造方法(2)
酢酸カルシウム水溶液(Ca)<60℃
炭酸アンモニウム水溶液(CO2)pH:9~10
炭素数1~3のアルコール酢酸カルシウム水溶液に対する容積倍率:0.6~1.0
混合:CO2/Ca:0.9~1.2
炭素数1~3のアルコール炭酸アンモニウム水溶液に対する容積倍率:0.6~1.0
A液 B液
瞬時に反応して球状バテライト微粒子が生成
ろ過
乾燥
粉砕(分散)
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本特許技術で得られるバテライト型軽質炭酸カルシウムの特徴1. バテライト球状粒子の構成割合が85%以上の軽質炭酸カルシウムを得ることができる
2. 粒子サイズが揃った真球状粒子で、個々の球状粒子は独立分散している
3. 球状粒子は10~30vol.%の粒子内空隙を保有する
4. 粒子サイズ、比表面積、細孔径分布などを制御することができる
5. 耐熱性、および、熱水安定性を有する
6. 充填性・分散性・流動性・研磨性などに優れた特性を示す
7. 上記バテライト粒子を、再現性良く、極めて簡単な操作で製造することができる
従来技術によるバテライト型軽質炭酸カルシウムの問題点
1. 扁平な楕円球状、厚みのある楕円球状、真球状粒子の混合物
2. 粒子サイズ、比表面積、細孔径分布などを制御することができなかった
3.耐熱性、および、熱水安定性に劣る
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バテライト含有量の異なる軽質炭酸カルシウムのX線回折パターン
本特許技術によりバテライト含有率85%以上の炭酸カルシウム微細球状粒子を安定して製造することができる
バテライト含有量の高い軽質炭酸カルシウムの製造
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バテライト含有率の異なる微細球状炭酸カルシウム粒子のSEM像
5μm 5μm
5μm5μm 5μmバテライト含有量:100%バテライト含有量:85%
バテライト含有量:76%バテライト含有量:50%
粒子サイズの揃った真球状粒子で、個々の球状粒子は独立分散している
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粒子サイズ・粒度分布のコントロール
微粒子 粗粒子粒子サイズをコントロールできる、またシャープな粒度分布を示す
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バテライト粒子の内部構造
バテライトは、微細一次粒子が集合して球状二次粒子を形成している。一次粒子は、球の中心から放射状に成長している。
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002面 100面 101面 102面結晶質Vaterite 53.9±22.2 34.9±14.4 31.0±12.8 24.0±10.0微晶質Vaterite 18.9±11.2 13.5± 8.0 13.4± 7.9 11.4± 6.7
vateriteの結晶子サイズと標準偏差
バテライト粒子の結晶度と結晶子サイズ
結晶質、および、微晶質のバテライトを製造することができる結晶度の高いバテライトは結晶子サイズ (24~54nm)が大きく
逆に、結晶度の低いバテライトは結晶子サイズ(11~19nm)が小さい
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結晶質、および微晶質バテライト粒子のFESEM像
結晶質バテライト 一次粒子サイズが大きく、細孔径サイズも大きい
微晶質バテライト 一次粒子サイズが小さく、細孔径サイズも小さい
200nm
200nm 200nm
200nm 100nm
100nm
球状粒子である二次粒子はバテライト一次粒子の集合体であり、二次粒子の内部細孔は一次粒子のサイズに影響を受ける
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結晶質および微晶質バテライト粒子の比表面積、粒子内細孔の分布と容積
結晶質バテライトは比表面積10~30m2/gで、30~40nmの細孔が卓越している微晶質バテライトは比表面積45~90m2/gで、4nmの細孔が卓越している
二次粒子内の細孔容積は40~120μL/gで、空隙率としては10~30vol.%である
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バテライトの耐熱性(1) 結晶質バテライト
結晶質バテライトのDTA曲線
カルサイト転移前のバテライトSEM像
加熱処理物のX線回折パターン
カルサイトに転移した後のSEM像
この特許製法で製造した結晶質バテライトの転移温度は486℃、従来報告されてきた400℃より高い耐熱性を示すまた、カルサイト転移後も球形の形状を維持している
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5μm 5μm
バテライトの耐熱性(2) 微晶質バテライト
微晶質バテライトのDTA曲線 加熱処理物のX線回折パターン
カルサイト転移前のバテライトSEM像 カルサイトに転移した後のSEM像
この特許製法で製造した微晶質バテライトの転移温度は616℃、従来報告されてきた400℃より高い耐熱性を示すまた、カルサイト転移後も球形の形状を維持している
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浸漬時間 (hour) Vaterite (%) Calcite (%)0 100 03 100 07 100 00 91 924 92 8
結晶質Vaterite
微晶質Vaterite
80℃温水中に浸漬したvaterite試料の相組成変化
バテライトの熱水安定性
結晶質バテライトの熱水安定性 微晶質バテライトの熱水安定性
バテライトを80℃の熱水に1~7時間浸漬すると、70~100%の割合でカルサイトに転移すると報告されていますが本特許製法で製造したバテライトを 80℃の熱水に3~24時間浸漬しても、カルサイトへの転移は認められませんでした
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結晶質バテライト熱水浸漬前後の
粒子形状
80℃熱水に浸漬する前の結晶質バテライト粒子のSEM像
80℃熱水に7Hr浸漬した結晶質バテライト粒子のSEM像
バテライト型軽質炭酸カルシウムの熱水安定性
80℃熱水に浸漬する前の微晶質バテライト粒子のSEM像
80℃熱水に24Hr浸漬した微晶質バテライト粒子のSEM像
微晶質バテライト熱水浸漬前後の
粒子形状
本特許製法で製造したバテライトを 80℃の熱水に3~24時間浸漬しても、粒子形状の変化は認められない
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本特許技術で製造したバテライト型軽質炭酸カルシウムの特徴と想定される用途
特徴1 2~15μmの真球状バテライト二次粒子は、容積割合で10~30%の空隙を保有しており、その細孔径を数nmあるいは数10nmに制御することができる。
用途1 この細孔に様々な有用物質を担持・吸収させたキャリア等の活用が期待される。
特徴2 2~15μmサイズのバテライト粒子は、20~50nmサイズ一次粒子から構成される比表面積の大きな多結晶体であり、粒子間隙も卓越している。さらに、バテライトの溶解度は2.4mg/水100gと、カルサイトやアラゴナイトの溶解度1.4mg/水100gよりも大きな値を示す。
用途2 生体吸収性の高いカルシウム補給剤等の活用が期待される。
特徴3 サイズの揃った真球状で、個々の粒子が独立分散した、充填性・分散性・流動性、耐熱性・熱水安定性にも優れた粉粒体である。
用途3 菓子類など食品をはじめ、プラスチック・ゴム、インク、紙、化粧品、医薬品などの充填剤等の活用が期待される。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 : バテライト型球状炭酸カルシウム及びその製造方法
• 出願番号 : 特願2006-104688• 公開番号 : 特開2007-277036• 登録番号 : 5387809• 出願人 : 地方行政独立法人北海道立総合研究機構
• 発明者 : 山下 豊、長野伸泰、内山智幸
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お問い合わせ先
北海道立総合研究機構
本部研究企画部
知的財産グループ 武者、西山
TEL 011-747-2806
FAX 011-747-0211
e-mail [email protected]