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1 日本建築学会 建築計画委員会 オープンビルディングの産業化小委員会 ハブラーケンMIT名誉教授を囲む研究協議会 開催日時:2003年10月29日 場:日本建築学会会議室 1.開催主旨 ハブラーケン教授は1987年5月、1995年10月の来日時に、建築会館ホールにて講演を行 っている。その折には、長年研究されてきたオープンビルディングの理論を、整理して 話して頂いた。また当時教授が参画されていたインフィル・システムの開発事例を紹介 いただき、オープンビルディングの手法が建設産業に与える意味合いについても説明い ただいた。今回は、ハブラーケン先生の著書「The Structure of the Ordinary」に紹介 されている研究テーマ、とりわけ都市と建築の関係について、参加者と議論を行った。 2.議事次第 (1) 主旨説明 石塚克彦(小委員会主査)、南 一誠(日本郵政公社) (2) 主題解説 ニコラス・ジョン・ハブラーケン教授 (3) 主題解説 小畑晴治氏(都市公団総合研究所長) (略) (4) 主題解説 近角真一氏(集工社建築都市デザイン研究所長) (略) (5) 協議

日本建築学会 建築計画委員会 オープンビルディングの産業化小 ...news-sv.aij.or.jp/keikakusub/s13/habraken2003.pdf · 2014. 2. 7. · structure and the infill

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    日本建築学会

    建築計画委員会 オープンビルディングの産業化小委員会

    ハブラーケンMIT名誉教授を囲む研究協議会

    開催日時:2003年10月29日 会 場:日本建築学会会議室

    1.開催主旨

    ハブラーケン教授は1987年5月、1995年10月の来日時に、建築会館ホールにて講演を行

    っている。その折には、長年研究されてきたオープンビルディングの理論を、整理して

    話して頂いた。また当時教授が参画されていたインフィル・システムの開発事例を紹介

    いただき、オープンビルディングの手法が建設産業に与える意味合いについても説明い

    ただいた。今回は、ハブラーケン先生の著書「The Structure of the Ordinary」に紹介

    されている研究テーマ、とりわけ都市と建築の関係について、参加者と議論を行った。

    2.議事次第

    (1) 主旨説明 石塚克彦(小委員会主査)、南 一誠(日本郵政公社)

    (2) 主題解説 ニコラス・ジョン・ハブラーケン教授

    (3) 主題解説 小畑晴治氏(都市公団総合研究所長) (略)

    (4) 主題解説 近角真一氏(集工社建築都市デザイン研究所長) (略)

    (5) 協議

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    3.出席者

    ニコラス・ジョン・ハブラーケン(マサチューセッツ工科大学名誉教授、元建築学部長) 内田祥哉(東京大学名誉教授、日本建築学会元会長) 秋山 宏(東京大学名誉教授、日本建築学会会長) 高橋鷹志(東京大学名誉教授、早稲田大学教授) 難波和彦(東京大学教授) 深尾精一(東京都立大学教授) 小松幸夫(早稲田大学教授) 門内輝行(早稲田大学教授、当時) 松村秀一(東京大学助教授) 角田 誠(東京都立大学助教授) 門脇耕三(東京都立大学助手) 小畑晴治(都市整備公団総合研究所長) 熊谷雅也(都市整備公団) 井関和朗(都市整備公団) 遠藤淳子(都市整備公団) 宮本俊次(都市整備公団) 今井隆滋(都市整備公団) 近角真一(集工舎建築都市デザイン研究所代表) 中林由行(綜建築研究所所長) 宮坂公啓(宮坂建築設計事務所所長) 有岡 孝(有岡孝都市・建築設計室) 横河鉄弥(横河工務所) 小見康夫(建築環境ワークス) 打海達也(鹿島出版会) 梶川文生(株式会社アール・アイ・エー) 平井ゆか(内田祥哉建築研究室)

    司会進行:石塚克彦(東日本住宅品質保証機構)、

    南 一誠(日本郵政公社)

    記録:白石高志(東京大学大学院)、マルガリータ・カストロ(東京大学大学院) 通訳:株式会社アイ・アイ・エス

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    4.ニコラス・ジョン・ハブラーケン教授略歴

    マサチューセッツ工科大学名誉教授。日本建築学会名誉会員。オランダ、アーペルドールン市在住。

    1928年10月29日 インドネシア、バンドン生まれ。スラバヤとジャカルタの学校に通学。

    1948-1955 オランダ、デルフト工科大学で建築を学ぶ。

    1955-1957 オランダ空軍従軍。

    1960-1962 建築設計

    1962-1965 フォーブルグ市、Lucas and Niemeyer事務所勤務

    1962 「サポート、マスハウジングに代わるもの」初版発表。サポートとインフィルの分離を

    初めて提唱。

    1965-1975 アイトホーヘン市SAR(建築研究所)所長。順応可能住宅の設計手法、建設方法を研究・

    開発。

    1967-1975 アイトホーヘン工科大学教授、建築学科を創設し、初代学科主任を勤める。

    1975-1981 マサチューセッツ工科大学(MIT)建築学部長

    1989 MIT退官。引き続き、建築、アーバンデザインの手法、理論の研究に携わる。

    世界各地で講義、執筆活動、研究活動を継続。

    1987-1997 住宅用インフィル・システムを共同開発。

    (受賞歴)

    1988 米国 Creative Achievement Award of the Association of Collegiate Schools賞を

    受賞

    1979 オランダ、バーナード王子基金 the David Roell 賞を受賞

    1985-86 イスラム建築の設計、研究に対してキング・ファハド賞を受賞

    1996 オランダ、芸術、デザインおよび建築に関する基金Oevre賞を受賞

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    5.議事(概要)

    南(司会):簡単に主旨説明と進行の内容について説明させていただきます。ハブラーケン

    先生は 1987 年 5 月と 1995 年 10 月に来日されており、その折にも会館1F ホールで今日と同じようにオープンビルディングの長年研究なさってきた理論について講

    演をしていただいたことがあります。ただ、その時の2回の講演は SI 関係の話が主でした。当時 Matura システムの開発にも関わっておられたのでインフィルの開発の理論的側面についてご説明いただいたり、自動車産業と建設産業の比較などを行

    いながらオープンビルディングが建設産業に与える影響などをお話いただきました。

    先生は一般的な建築物(every day built environment)の中にある原理原則を見出していくこと、それから、一般的な建築環境をより良く作っていくために建築家が

    いかに責任を果たすべきかということについて長年研究をされてきました。日本で

    も都市と建築の課題については大変重要だと考えているところで、先生が長年にわ

    たって研究してこられた、持続的に既存の居住環境を発展させながらいかに新しい

    ものを調和させて作っていくのかということ、その中で社会的な合意形成をいかに

    築いていったらいいのかということを今日も詳しくお話いただけると思います。 (略歴説明:配布資料) 今回この会場にお呼びできたのは先週 CIB の国際会議が香港でありオープンビルデ

    ィングに関する国際会議で講演され、その後私共の方でお願いして日本まで足を伸

    ばしていただいたという経緯であります。今日は午前中、都市公団の新しいプロジ

    ェクトを一緒に見ていただき、日本のアーバンティシューについて多少現状を把握

    していただいきました。これから 20分間ほどハブラーケン先生の最近の研究の内容、MIT プレスから発行された『The Structure of the Ordinary』に書かれていることなどを中心に、最近のご関心についてお話いただきます。その後、大規模プロジェ

    クトにおける設計の責任分担の問題、コンピューターによる「形」の認識の問題に

    ついても時間が許す限りお話いただけるのではないかと期待しております。先生の

    プレゼンテーションの後に簡単に質疑応答の時間を取り、その後、本日の討議した

    い内容について都市公団総合研究所所長の小畑様、集工舎の近角様からご説明いた

    だきます。その後約一時間皆様と協議をする時間が取れるのではないかと考えてお

    ります。 ハブ:ご臨席の皆様、議長、本日はありがとうございます。ここで建築学会様にお呼びい

    ただきましたことを非常にうれしく思っています。初めてではありませんが、いつ

    参りましても非常にうれしい経験であります。ここで仲のいい皆さんの顔を拝見す

    ること、それから新しい方とお知り合いになることは、私にとって非常にうれしい

    ことです。

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    Mr. Chairman, ladies and gentleman, it's a great pleasure and honor to be here today, in the Architectural Institute of Japan. It’s not the first time I’m here, but it’s a real great pleasure to visit again and see so many good old friends and also new friends.

    ずいぶん昔になりますが、プロジェクトの中で設計を行った経験を元にお話したい

    と思います。こちらはサポートとインフィルの分離ということで、様々な研究を行

    ったときの結果を反映しています。その際に、単なるハウジングプロジェクトとい

    うことだけで考えるよりも、インフィルとサポートを分離して考えることが非常に

    重要であることはその当時でも十分にわかっておりました。ということで、住居用

    の家屋だけでなく、オフィスビルやスーパーマーケット、ショッピングセンターな

    ど、その他の分野でも今日ではサポートとインフィルの分離が行われるようになっ

    てきております。その際もう一つ関心を持っていたことなのですが、まず構造躯体

    を作りその後で内装を入れていくという手法を用いることによって、例えば従来で

    すと画一的で非常に退屈なビルになりがちな大型のプロジェクトであっても、そう

    いった画一性というものを排除することができるのではないかということを考えて

    おりました。今日プロジェクトの規模がどんどん大きくなってきているという傾向

    が将来も変わらないということを考えますと、これは重要なことです。 I would like to show you today a project that I designed a very long time ago. It was at the time when we made research on the separation of support and infill system. But, already at that time we understood that the separation of the structure and the infill was much more important than for only housing projects. And, of course, we know that today the same separation happens in office buildings and in supermarkets and in shopping malls. But, I was also interested in the fact that if you make a separate support structure which can be filled in later, you can much easier make very large projects without making them very uniform or boring. Because today projects become bigger and bigger, and in the future it will not be different.

    1967 年にアムステルダムの新庁舎に関しての国際コンペが行われました。その当時ちょうどアイントホーヘン大学で建築学部を立ち上げていたところでしたのでちょ

    っと時間がなかったのですが、それでも尚、このコンペにはぜひ参加したいと思い

    ました。この市庁舎はいくつものプログラムが複合で入っています。例えば行政に

    関連する部分があり、オフィスがあり、市会議場、すなわち議会が入っているわけ

    です。ということで、これは単なる普通の一つの建物としてではなく、アーバンテ

    ィッシュとして作っていかなくてはいけないと考えたわけです。今でもこういった

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    大きなビルディングがかなり画一的になってしまうという問題は残っているのでは

    ないかと思います。ということで、私の提案をお見せしたいと思います。こちらが

    アムステルダムの市内の敷地です。こちらで今お見せしているのは 17 世紀頃の古い地図です。こちらが 17 世紀の地図における、市庁舎が出来る場所です。コンペが行われた時点においても都市構造としてはほぼ同じアーバンファブリックが残ってい

    たということが分かります。ということで私は、ビルではなくて都市の一部をなす

    ものを作っていかなくてはいけないと考えた次第です。 So in 1967, there was a competition for the city hall of Amsterdam, an international competition. And at that time, I had just started a new department of architecture at the University of Einhoven, so there was very little time for me, but still I wanted to enter the competition. Because the program from the town hall, with all the administration, with all the offices, as well as with all the representative species was a perfect example of a very large project, that in my opinion should not be a single building. But, maybe a small piece of urban tissue. So, although it was a long time ago, I think the problem is still relevant and I would like to show you the proposal I made. So this is the site in the city of Amsterdam, and this gives you an old map of the 17th century. And, this is the site in the old map. Much of the urban fabric around it is still preserved. So that’s why I felt we should not design a building, but a piece of a city.

    www.habraken.com 1

    Amsterdam Town Hall, 1967

    A mega structure that makes an urban tissue

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    www.habraken.com 2

    Site on 1650 map

    www.habraken.com 3

    Plan in context 1967

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    もう少し詳しくご覧いただきたいと思います。川に沿った形で見ていく必要がある

    わけです。では、スキームをご覧いただきます。こちらはご覧のように連続的な構

    造体であるということがわかります。こちらで二次元のベイ仕切り部分が見えます。

    一つが 7m20、もう一つが 4m80 になっています。ということは二つ合計すると、6m×2 というサイズになるわけです。ここからアムステルダムの運河に面している家屋は、間口が平均 6m間隔ということがわかります。そこで私たちはアーバンティッシュにうまく溶け込んでいくものを作っていくためには、まずこのような寸法を勘

    案しなくてはいけないと考えました。こちらで同じような寸法が出ているのですが、

    ここではリズムが少し変わっています。また、特定の交通システムが出来るという

    ことによって小さなサイズが生まれているところもあります。こちらは 7m20 の半分の 3m60 になっています。真ん中をご覧いただきたいのですが、今度は大きい方の 2 倍のサイズになっています。 Now this is the plan of the design, but for some reason, now it is not in the right position. But here you see in more detail… You see here... I need a pointer…this is the river in Amsterdam so you see the view down the river from that site. Here you see the scheme itself, and the dimensions....as you see, it is a continuous structure. And, the dimensions of the base are 2 dimensions; one is 7.2 and the other is 4.80. Together, they are 2 times 6 meters. And, 6 meters is about the average size in the Amsterdam canal. So choosing the right dimension is the first step to fit into the urban tissue. In the other side you have the same dimension, but in a different rhythm. Now, there are other sizes that come in places where specific circulation may happen, so these dimensions are half of 7.20; so 3.60. And in the central axis, there is a larger dimension.

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    www.habraken.com 4

    Covered public space

    www.habraken.com 5

    dimensionsBA

    AAA

    BB

    AA A AB

    A = 7.20 mB = 4.80 mA+B = 2 x 6.00M

    dimensions

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    今度は全体像をご覧いただきたいのですが、はっきり連続の構造体と見えると思い

    ます。しかしその中で一部除去されているところがあります。つまりもともとこの

    ように設計していったところからマテリアルを除去する形で広場を作っていったわ

    けです。こちらで一階上がっていくような形の中央の広場が作られています。車が

    入ってきて駐車をして出て行くことができるスペースになっています。歩行者の広

    場が中にあります。天井がガラスになっております。そしてこちらの下の部分です

    けど、川沿いにまた小さな広場があり、ここに行くと川の景色が見えるようになり

    ます。 Now, by the continuous structure, it could be seen across the field, and the spaces are sort of carved out of it. So, we actually designed the spaces by taking away the material. There is a central square for the entrance that goes up for one storey, so that the cars can go under and park and then go out again. There is the pedestrian square inside, which is covered by glass. And there is a small square on the river that gives a view down the river.

    www.habraken.com 7

    Major public spaces

    public spaces

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    こちらには二つ通路があります。これも同じようにガラスで覆われています。下に

    一つ、上に一つ道があり、それから、縦の方向に一本、こちらの細いところにも一

    本あります。それから裏道のような小さな細い道もあります。このような連続的な

    構造体があるわけですが、道路沿いに別々のビルという形で決めていくことが出来

    るものがあります。特に真ん中付近のものについては大きなものを作っていくこと

    が可能です。そして最後のもの、これが一番重要です。こちらが市議会が開催され

    る議場になっています。地方自治体の政府がここで会議をするという意味でこれが

    非常に重要であるわけです。こちらのファブリックに比べますと市庁舎全体は大き

    なビルということになります。 Now, this was a cross section of the plan where see… my computer is different from this computer…but there are also two streets that you see here, which are also covered by glass. Unfortunately I cannot get rid of this…but you can also see that you have one street here, and another street there, and then there is a street here, and one is here, and there are small alleys here, and here. Now, in this continuous structure, we can still design separate buildings along the streets. And some of them can be bigger in the center. And the last one of course is the most important one, because there is the town hall proper where government has its meetings. So the town hall becomes a small building, but it is again a big building. The town hall compared to the urban fabric is a large building.

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    The ‘real’ town hall

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    全体のファブリックの中に教会が溶け込んでいることが分かります。なぜこれをコ

    ピーしたのかということを説明したいのですが、こちらが教会のプランです。この

    間隔をご注目いただきたいと思うのですが、ベイの大きさが小さな家の大きさと同

    じになっており、道の大きさもほぼ同じになっていることがわかります。こちらの

    斜線が入っているところは墓地になっています。壁が入っていますので道からは見

    えなくなっています。教会の内部はオープンスクエア、広場のような形をとってい

    ます。そうしますと教会の中に立って、窓を通して家々を眺めることが出来るわけ

    です。この対面の住民も、教会の中を見ることが出来るというわけです。 Here you see a plan of the city, how the church is fitted into a normal fabric. And there is where I copied this idea because here you see the floor plan of the church. You see that the size of the bay is the same as the size of the houses, and the sizes of the streets. This was the graveyard, which was separated by walls and you couldn’t see it from the street. So the church was really an open space inside, and when you stand in the church and you can look through the windows and see the houses, and how the people who live here can look down into the church.

    www.habraken.com 10

    zuiderkerk

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    そこで、実際に市庁舎というのがどんなふうにうまく溶け込んだのかということを

    示します。こちらがウェディングストリートと呼んでいる道です。というのはここ

    からウェディングロードということで歩いてくる場所なのです。こちらで今度は結

    婚式を行います。結婚式の後、こちらに出て行きます。そして写真を撮って、ウェ

    ディングカーに乗り込んで去るという形を採っています。その道の断面図をご覧下

    さい。どのような形で動線が出ているのかが分かります。毎回結婚式というのが個

    人個人の思い出となるように設計されているのです。 So this is how the town hall fits into the town hall. I’m sorry again I got mixed up,

    uh… because this is now mirrored, so I should just tell you that here you have a street, which could be called the "wedding street" because this is where people go for weddings, and then they move into this space where the ceremony is, and after the ceremony they go out here and people can take a picture and then get into the car. Here you see the cross section of that street, and here you see the circulation principle. So that makes every ceremony of a wedding very personal.

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    Zuiderkerk plan

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    Circulation by wedding st.

    Wedding street

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    Double high space with mezzanine

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    次に市民の広場をご覧いただきます。こちらは内部です。こちらは 17 世紀の古い市庁舎を参考に作られました。この 17 世紀における広場は、市民は誰でも自由に入っていくことが出来るように作られておりました。そこで色々話し合いをできたので

    す。もう一つこちらに道があります。こちらは官僚通りと呼ばれています。色々と

    オフィスが並んでいて、例えばパスポートを申請したりだとか、自動車の免許証を

    取らなくてはいけないとか、子供が生まれたので出生届を出すといった手続きをす

    ることが出来る道だからです。この官僚通りは非常に古く、細く、かつまっすぐの

    通りとなっています。そして、同じように道の周りの部分も非常に細く、同じぐら

    いのサイズになっていることがわかります。しかしながらこの道は決して退屈だと

    いう気持ちにはなりません。周りに見える家々がそれぞれ異なるからです。 Inside there is what is called the citizen square, which is also inspired by the old town hall of the 17th century. Where an old inside space was available to all the citizens. So, there they can have meetings. Then, there is another street that is here, and there is the street of the bureaucrats because that is where people go when they need a new passport or a license for a car or when a baby is born. Now, these streets are very narrow like old streets and also very straight, but then again you see that nearby streets are very narrow and straight. But these streets are not boring because all the houses are all different.

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    www.habraken.com 14

    Section trough Citizen square

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    Bureaucrat st. in planBureaucrat street

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    そこで今度はオフィスの側もそれぞれ異なった味付けをしたいと思いました。そこ

    で、この道に面している家と同じように、それぞれ別々の建築家に設計してもらう

    ようにしたのです。実際に市民が入ってくるフロアは一階になります。それぞれの

    入り口から市民が入ってきて色々な申請をしたりするのですが、裏方でやる事務に

    ついては2階で行うことになります。これは役人が様々な作業をする場所です。こ

    れは単なる大きなビルということではありません。この1階部分は階高が高くなっ

    ております。その奥には中二階ができております。そうしますと道から見た時の広

    がり感が出てくるわけです。運河沿いの家屋にも同じ構造が見られます。 In that way, I wanted these offices and the sections of the offices to be like the houses. So that they would be designed by separate architects like the houses on the street. And have their own entrances where people could do their business on the ground floor while up stairs the administration can take place. So again you see that it is not a big office building. In the section you also see that the ground floor is higher with a mezzanine inside, which gives a scale to the street, and which we also see on the old houses along the canals, where you have a very high space and in the back there is a mezzanine.

    www.habraken.com 17

    Plan detail burcr.st.

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    ということで、私たちは大きな建築プロジェクトとは必ずしも大きな建物を意味す

    るのではないと言えるのではないかと思いました。そして、プロジェクトがますま

    す大きくなるという中において、これこそ私たちが向かっていくべき道筋ではなか

    ろうかと考えたわけです。基本的にこのプロジェクトのファサードについても異な

    る建築家に設計してもらっています。そして、いつか市庁舎がなくなったとしても

    家々は別の形で使っていくことが出来るであろうと考えています。以上で私の発表

    を終わらせていただきます。ありがとうございました。 So in that way, we can begin to see that a large project is not a large building. And I believe that this is probably a direction that we can begin to think of again when the projects that we make are bigger and bigger. Of course I should not even have to tell you that the outside of this project, all the facades would be designed by different architects. And then some day the town hall will disappear, then the houses will be used for something else. This is what I wanted to show you. Thank you very much.

    h b k 18

    Section tru. Bureaucrat street

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    南 :ありがとうございました。簡単に今のお話について質問を受けたいと思います。今

    日の午前中、非常に大きな都心の再開発プロジェクトを見ていただきました。高層

    の集合住宅を中心にご覧になっていただいたのですが、そういうことを踏まえての

    大規模な建物と都市の関係についてのご提案だったのではないかと思います。 難波:今のプロジェクトは実現しなかったのですか。 ハブ:コンペでは勝つことが出来なかったのでこのようなものは作られませんでした。協

    力してくれた方にも馬鹿みたいと言われたものでした。その頃は協力してくれた生

    徒からそっぽを向かれたものですが、20 年も経ちますとその頃私の生徒だった人たちが戻ってきて、こういうものに関心を持つという時代が来ています。 No, I didn’t win it. In fact my collaborators thought it was a very stupid project. But about 20 years later, the students became interested in it.

    南 :一等に選ばれたのはどのような案だったのですか。 ハブ:ウィーンから来たウェレム・ホルスバウアーさんでした。その時にオランダの建築

    家と一緒に作業を行いました。ところが、かなりお金が掛かりそうだということで

    市当局からかなり懸念があるということを言われてしまったわけです。それから、

    コンサートホールを作りたいと考えていました。市当局から、コンサートホールと

    議会を同じ場所に置いてくれと言ってきたわけです。そのような要請が出たという

    ことはもともとこの設計者の持っていた概念は駄目になってしまったということに

    なりますが、その方が経済的には良いものだと考えたわけです。しかしながら、最

    終的にはもともと考えていた 2 倍のコストが掛かっていたことが分かりました。その意味ではあまり大きな成功を収めることが出来なかったと思います。ただ、建築

    家が完全に悪いとは言えないような事情があったと思います。 The competition was won by a Viennese, an architect from Austria, William Holtsbauer. Then he took a part in the Dutch Architect, and was a partner for him. Then the Town Council was afraid that it would become too expensive. So therefore they asked… and they also had plans for a large music theater. So they asked the architect to combine the town hall and the theater in the same place. Of course, with that request they virtually killed the project, but they thought it would be more economical. But when the scheme was actually finished, it was twice as expensive as they had originally budgeted it. So in that sense it was not so successful. But you cannot blame the architect entirely.

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    南 :議論に入っていきたいと思います。皆さんハブラーケン先生の意見を聞きたいとい うお考えが強いのではないかと思いますので、プレゼンテーションと今日の見学に

    対する先生のご意見を簡単に聞かせていただきたいと思います。 ハブ:本日は素晴らしい見学の旅に連れて行っていただきました。都市公団の方でやって

    いらっしゃる様々なプロジェクトを見せていただきました。小畑様のご発表を伺い

    まして、30 年間の歴史というものが全体像として捉えることが出来たと思っています。それから、近角様のご発表を伺いまして R&D についての可能性がよくわかるようになりました。今日一日でずいぶんいろんなことを学んだということで大変驚い

    ています。 Well today, I had a wonderful trip through the city, where we saw very interesting projects that were done by the UDC. And, Mr. Kobata’s presentation also helped me to put that in a larger context of the history of the last 30 years. And, of course Mr. Kazumi’s presentation was very helpful to understand possibilities and development in the future. I must say that I’m completely impressed by all the things I’ve learned today.

    世界の様々な国を見てまいりましたけど、UDC のような正式なそして大規模な組織がある国は他にはありません。すなわち、このハウジングにおいて一貫したアプロ

    ーチを持って作業を進めておられる、そういったプロジェクトをしておられる国は

    他にはありません。かなり大きな公団がある国もありますが、通常そういったとこ

    ろはかなり保守的なところに流れていってしまいがちです。今回、初めて前向きの

    戦略を持っているところを見せていただきました。そして、それぞれのプロジェク

    トの中で新しい可能性を模索し問題の解決をするにあたっての道筋を築くという意

    味で段階を踏んで進んでいくという可能性を見せていただきました。 I do not know of any large formal organization like UDC elsewhere in the world, that has projected such a consistent approach towards the development of housing. We are used to seeing very large housing corporations that always are very conservative. And today for the first time I have visited one that has a real forward strategy. And they have used the possibility to go step by step in each project, to introduce new possibilities and to explore new ways of solving the problem.

    そして研究という形でのプロジェクト、NEXT21 等がございましたが、それに加え

    て今行われているのは非常に大きな、言ってみれば、実験と実務の関係付けだと思

    います。そのしっかりとした関係が出来上がっていることに感動を覚えました。

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    NEXT21 について、内田先生が人々に対して三次元のアーバンティッシュを実現したかったとおっしゃっていたのをよく覚えております。他の建築家を招待してそれ

    ぞれのユニットの設計をするという形を見てまいりました。そして今回高層ビルの

    プロジェクトを見せていただきましたが、最初に見せていただいたプロジェクトの

    中では、スケルトン部分、つまりサポートの部分において様々なデザイナーを入れ

    て、設計者の方々にそれぞれの部分部分を設計していただくという可能性が広がっ

    ているのだということが分かりました。もちろんこれは、異なる建築家が入ってく

    ることによってバラエティが生まれるということが大切だということだけではあり

    ません。これに加えて、例えば一社がサポートを担当し別の企業がインフィルを担

    当していくということになりますと、両者の関係をしっかりと管理していくという

    ことが新たに重要になってくるわけです。 And I’m also impressed between these experiments in practice and more advanced laboratory projects like Next 21. I remember when the Next 21 project was first made available to the public, that Prof. Utida had said he wanted to make a 3 dimensional urban tissue. And he took the consequences by inviting other architects to design the units inside. And today, in the first project we saw that different designers are invited to do different parts of the skeleton. I think that's important because different architects will bring variety to a project but also because if you have one company who makes the skeleton and one company that makes the infill you must seriously deal with the relationships of the different companies.

    それこそが皆さんが直面する非常に重要な問題であります。つまり二つの当事者が

    接触するインターフェースをどう扱っていくのかということです。そしてまた、こ

    れは私が昔から思っていることで信念でもあるのですが、今日色々と見学をさせて

    いただきまして、大規模のプロジェクトというのは単なる家屋なりハウジングなり

    を考えるのではなく、アーバンプロジェクトというか、都市の設計として考えてい

    くべきだと考えました。つまり歩道がビルの中に直接続いていくような形態です。

    この新しいプロジェクトにおいて公的な空間はどうなるのか、あるいは歩道はどう

    変わっていくのかということについて全く今までとは違った解決策が出てくるよう

    な、全く新しい建築の時代が始まろうとしていると思います。 And we all know that is the crucial interphase that you have to solve. Where is the interphase between the different parties? I think also what I have seen today has reinforced my conviction that indeed the large project has to do with urban design as much as with housing. And where the public pedestrian space is continued into the building. And I personally believe that we are in the beginning of a different kind of architecture where we will see many solutions to

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    urban space and pedestrian space in the large projects. よく建築家は都市にはもう既に車と公共輸送機関がたくさんあるので歩行者にとっ

    てはあまり住み心地のいいところになっていないと不平を言っています。しかし、

    そのブロックの中に入っていくという意味において歩行者の生活というのは今も十

    分に活動的であります。そこで、このオープンビルディングのアプローチというの

    はこれから先の新しい建築の姿として非常にふさわしいものなのではないでしょう

    か。そしてまた、日本でもこの分野における新しい実験が行われ始めていると感じ

    ました。本当に素晴らしい一日をありがとうございました。 Very often architects have complained that because of the cars and the public transportation the city is no longer friendly to the pedestrian. But we know that the pedestrian life is still very active because it has been moved inside the blocks. And there, it seems to me that is the open building approach and that I have seen today and which we have all been talking is also new approach of architecture to public space. And we also have seen beginning of experiments going that way. So I thank you very much for a very inspiring day. Thank you.

    南 :ありがとうございました。サポートとインフィルの分離は可能性をもたらすと同時

    に建築の長寿命化にもつながるということがハブラーケン先生のお話に出てきまし

    た。それをアーバンティッシュとサポートあるいはスケルトンの関係で見たときに、

    日本の都市建築というのは非常に多様性に富んでいるのかもしれないけど、共通の

    テーマに欠いている点もあるし、非常に寿命が短いという問題を抱えています。先

    生はサポートとインフィルの関係において両者の関係が重要だとおっしゃいました

    が、日本の都市建築を考えたとき、アーバンティッシュとスケルトンの関係が十分

    確立されていないのではないかという印象を受けます。今日既に門内先生から次の

    質問をいただきました。「長寿命のスケルトンは長期にわたってアーバンティッシュ

    に大きな影響を及ぼす。しかし日本ではスケルトンの基盤となるアーバンティッシ

    ュが存在しないことが多い。このような場合何を根拠にスケルトンのデザインを展

    開したらよいのか。」というものです。今日の午前中に公団の小畑さんに案内してい

    ただいたものは大きく分けて二つのタイプの開発だったかもしれません。汐留、東

    雲というのは非常に大規模な新しいタイプの面開発で、一方、木場三好と大島とい

    うのは既存の下町との調和を図ったものです。周辺の既存の街の構造を発展させる

    ような形で新しい開発を、ということで、二つの大きく違ったタイプのアーバンテ

    ィッシュのデザインをするものをご紹介されたのかなと思いますが、今日見たもの

    を含めて門内先生の質問に答えていただけたらと思います。

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    小畑:アーバンティッシュというのは、もともとあったものからできるだけ探しながら育

    てていくものではないかと思っていますので、そういうこだわりを作れるように

    我々も設計をしたいし、管理もしていくべきだということを思っています。建物の

    寿命をまっとうできているものが非常に少ないですので、街の開発コンセプトを間

    違えないということが何よりも大切なのではないかと思います。 南 :汐留、東雲みたいに全く周辺に参考とするような既存のアーバンティッシュがない

    場合、公団としてはどういう手法で計画なさっているのでしょうか。 小畑:東雲に関しては全く新しいところに突如として構想したように思われますが、プロ

    ジェクトに参加した比較的若手の建築家は下町で育った人が多く、下町のアーバン

    ティッシュというか、例えば辻空間や路地の良さを高層建築の中にも持ち込みたい

    という意図がかなり込められています。汐留は都心の超高層ですからすこし飛んで

    いるかなと思いますが、近くの超高層ビルや浜離宮公園という資源を活かす建築で、

    巨大な壁を作らないという意味ではポリシーを持っています。巨大な壁を作ると浜

    離宮が見えない場所が広がるのですが、そうではない作り方をしたとご理解いただ

    くとわかりやすいかなと思います。 ハブ:質問の意味が分かりかねます。安定したアーバンティッシュが存在しないとおっし

    ゃっているのですが、安定したアーバンティッシュとはどんなことでしょうか。 Well, I’m not sure if I understand correctly what is meant by... I think the English is clear, but he refers to non-existing urban tissue. I’m not sure what he has in mind…

    門内:アムステルダムなどのヨーロッパの都市の場合、都市の構造が長期間にわたって持

    続していて、そのコンテクストで読めば先ほどのプロジェクトのように建築のプロ

    トタイプというのが見えてくると思います。日本でも京都の場合には 120mのブロックでアーバンティッシュがあるわけですが、東京など色々なところではそれほどき

    れいなアーバンティッシュが見えません。おそらく、トポロジカルというか抽象的

    なディメンジョンではある種の秩序があると思うのですが、幾何学的にはあまりき

    れいに見えません。その時に都市の中での建築のプロトタイプをどうやってつくる

    といいのでしょうか。特にスケルトンは 100 年、200 年と長期間持ちますから間違ったスケルトンを作るとマイナスの効果が大きいと思います。その辺においてヨー

    ロッパや京都と比べると大変難しい問題を抱えておりますので、その点についてお

    聞かせいただきたいと思います。

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    ハブ:非常に大事なご質問をいただきました。すぐに出てくるというような展開ではない

    かもしれませんが、おそらくヨーロッパの都市部においても同じような問題がある

    と思います。例えば 16 世紀、17 世紀のパリの地図をご覧いただきますと 18 世紀とは全く違った種類のビルが並んでいることが分かりますし、今日の地図と比べても

    また違います。それはロンドンでもベルリンでも同じことです。 I think this is a very important question. I think that also in the European cities the same problem can be seen, maybe not in such a quick development but if we, if for instance you see at the maps of the 16th and 17th century in Paris, we can see a completely different kind of building than we find in the ones from the 18th and 19th century and today. And that can also be seen in places like London and Berlin.

    そこからわかることは、アーバンティッシュには二つの大切なことがあるのだとい

    うことです。まず、タイポロジーです。タイポロジーゆえに連続性、一貫性が生ま

    れてきます。もうひとつが公共空間です。全体像の歴史的な変容の度合いというこ

    とを見ていきますと、今お話したような公共スペースの方がビルのタイポロジーよ

    りも安定的であることが分かります。 We… From that we begin to understand that what we call urban tissue is two important parts, one is the typology of the buildings, that brings great continuity and coherence, and the other is public space and if we look at the transformations of the cities we find that the public space is more stable than the typology of the buildings. So both are very important.

    ハウスマンブルバード辺りのパリの開発の状況を見てみましょう。ハウスマンの場

    合には公共スペースとしてかなり変化を遂げてきました。公共空間の周りに接する

    形でビルが建てられているのですが、そのビルは従来型の伝統的なビルであり、中

    庭があるという形になります。その意味では、ビルと公共空間の関係は今でも安定

    的であると言えます。 For instance is you take the development from the boulevards in Paris by Hausman, in that case Hausman changed very much the public space but we see that the buildings that were built along the new spaces are traditional buildings with courtyards and have a tradition of several hundred years. So the relation of the building and the public space was stable.

    しかし今日、これと正反対の傾向が見られるようになって来ています。つまり公共

    空間はかなり長く使われるけれども、ビルはあまり長く持たないという状況です。

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    周りで建てられるビルの建設が非常に迅速に、そして根本的に行われていますので、

    その中にあっての公共スペースの連続性と、構造体としての力というのが非常に重

    要になってきます。それからまた、多くの大都市に見られることですが、世界の様々

    な都市において大きな新しいタイポロジーが生まれることによって、必ずしも必要

    ではないのに公共スペースがなくなるということもあります。しかしながら今公共

    空間の役割や機能について理解が高まっており、それに対して敬意を払う向きも増

    えております。 Today, we usually see it the other way, around that public space is used for a very long time and the buildings change a lot. And exactly because the development in buildings is so rapid and fundamental, the continuity of the public space becomes more and more important. You very often see in many cities of the world that new typologies of buildings often have demolished the public space. And that was not always necessary. I think now we begin to understand to have more and more respect for a clear understanding of the function of public space.

    しかし、門内先生がおっしゃるとおりだと思います。というのは今日の世界は以前

    よりも速いスピードで変容しているからです。そういう背景にあって、公共スペー

    スの連続性ということを考えたならば、公共の空間とは単なる広場とか道というこ

    とだけでなく、これからはビルの中に入っていく繋がりのあるものとして考えなく

    てはなりません。これからはますます公共空間の連続性ということを考えないとい

    けないと思います。ビルが一番重要と位置づけられておりましたモダニスト運動の

    中で学んだのとは違った連続性です。 But, Prof. Monnai’s point is still very valid. Because now the transformations are more larger and quicker than ever before. And as we have been discussing earlier, the continuity of public space now has to continue not only in the streets and squares but it also has to continue into the buildings. But, personally I think that therefore, we must begin to think more and more about the continuity of the public space. Which is different from what we have learned of the modernist movement. Where the building became the most important thing. Thank you very much.

    南 :先ほどハブラーケン先生の説明の中で NEXT21 のスケルトンが三次元のアーバンテ

    ィッシュだとおっしゃったと思うのですが、その計画のリーダーであった内田先生

    に、スケルトンの設計時にアーバンティッシュとの関係性をお考えになった時のこ

    とをコメントしていただきたいと思います。

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    内田:NEXT21 については、始めからああいう三次元のまちの道が成立するとは思ってい

    ませんでした。ただ、大阪にまちを建てるのだから大阪のまちらしくしようという

    ことで、うちの中に道を突っ込んでいくということを考えたわけです。今ハブラー

    ケン先生が公共部分の連続性ということを言われたのですが、私は連続性というよ

    りはサーキュレーションを考えました。クルドサックのような突き当りではなくサ

    ーキュレーションをつくれば街並みが生き生きとするかなと思いました。それに加

    えて京都の人たち、巽さんと高田さんが私たち以上に京都の、あるいは関西の街並

    みをよく知っていたので、それが計画をある程度成功させたのではないかと思って

    います。ただ、成功したかどうかは 50 年、100 年経たないとわからないというのが私の感想です。

    南 :関西地方のアーバンティッシュの環境を前提に設計したスケルトンは、東京で設計

    した場合とは違った設計になるのでしょうか。 内田:ハブラーケンさんが外国人であるということであえて言うとすれば、日本の中で関

    西と関東というのはヨーロッパで言うと違う国くらい違います。我々が関西でそう

    いう市民レベルのことで手を下してうまくいくとは最初から思っていなかったので、

    ぜひとも関西の人の協力が必要だったわけです。おそらく関西の人が東京に来た時

    にも同じことを考えるだろうと思っています。 南 :NEXT21 に参加されていた深尾先生はいかがでしょうか。 深尾:内田先生がおっしゃられたとおりで、敷地を探すところから始めたのです。最初大

    阪ガスからは郊外の鉄道の駅の裏みたいなところはどうかという話があったのです

    が、やはり大阪の真ん中でやりたいという話になって土地が選ばれました。内田先

    生がおっしゃられた通り、チームでやっていたというのがとてもよく含まれている

    と思います。我々が最初に話していたのは街区型みたいなことをやりたいというこ

    とでした。ただ、あの土地はいわゆる街区型をやるには小さすぎるので、コの字に

    して南側にもう一個コの字が来ると街区型みたいになるので、そこにハブラーケン

    先生の言われるアーバンティッシュに相当する路地が突き抜けているというように

    しました。今から見ればそれもまた面白かったなという気がします。そういうとこ

    ろからスタートした中で、高田先生がぜひ立体路地みたいなものをということをか

    なり強く提唱されたのであのようになりました。その前に内田先生、高田先生、近

    角さん、大阪ガスの人たちとヨーロッパを三週間ぐらい旅行したのですが、一緒に

    回っているうちにそういうことを一緒に考えていく雰囲気が出てきました。今から

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    振り返ってみると、いきなり関西の人と東京の人が一緒になって何かやろうといっ

    てもうまくいかなかったのではないかなという気がします。 内田:私はモーレンフリートは何度も見ているのですが、その時にモーレンフリートの後

    で出来た立体的な街路のある団地を一回見せていただきました。そういうのも参考

    になったのだと思います。 ハブ:直接にこちらのコメントということではなく全体を通じてということなのですが、

    今回は本当に楽しい思いをさせていただいています。このような意見交換会という

    のを日本だけでなくオランダでも開催できればどんなにいいだろうと思います。今

    日は色々見せていただき、色々伺い、大変刺激を受けることができました。こうい

    った会というのを他の国でもやっていただいき、日本でやっていることを学んでい

    ただいて、その経験を活かしていく形に進めていただけたらと思う次第です。 Again, my comments are very general because I very much enjoy this kind of discussion. I wish I could have that kind of discussion in my own country much more. And I think that know I have seen many things and heard many things, that as I said are very inspiring but, I hope that in other parts of the world people will begin to learn from this and will follow the example. Thank you very much.

    南 :高橋鷹志先生は MIT でハブラーケン先生とは面識がおありで、欧米の都市の状況についても大変お詳しいのですが、今日のハブラーケン先生のお話や今までで議論さ

    れたことを踏まえて、お話いただけますでしょうか。 高橋:日大の大学院で槇さんのヒルサイドテラスのある土地を使って課題を出しています。

    最近足繁く通っているのですが、そうすると、今日の話題と関連してアーバンティ

    ッシュとパブリックと言った時に、物理的なパブリックティッシュとソシアルなテ

    ィッシュがあるように思います。代官山が成功しているのは住居と他の施設との交

    じり合い方が絶妙で、民間の商業施設もあそこの雰囲気にあったような感じだから

    だと思います。住居と他の施設との交じり合い方があの場所のティッシュを作って

    います。そういった意味で、新しい街を作る時に社会的な交じり合いをどうやって

    コントロールしていくかというのが大きな問題だと感じました。 南 :建築の寿命と都市の関係ということで小松先生お願いします。 小松:日本という国は非常に建物の寿命が短いです。どうしてそうなのか色々考えている

    のですが、一つには日本の社会の変化の大きさというのが原因としてあるのかなと

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    考えております。最初の大きな変革は明治維新なのですが、都市の構造ということ

    を考えますと、明治維新以前には日本には車がありませんでした。道路は人が歩く

    だけの空間であったので、幅の広い道は要らなかった。それから第二次世界大戦を

    へて、戦後は急激に西欧化していくのですが、そういう変化の中で結局アーバンテ

    ィッシュと呼ばれるものが大きく変わることになり、それが建物の大変革を余儀な

    くしてしまったのではないでしょうか。これまでの状況は、とりあえずの用を足す

    建物を作るとそれが寿命を終える前に社会が変わってしまうので、建物を途中で壊

    して変化した社会にあわせたものを作り直すという繰り返しでした。つまり非常に

    ドラスティックな社会の発展を経てきたがゆえに、建物寿命が短いという状況にな

    ったと思っています。今後は社会としてももう少し安定的になるだろうし、アーバ

    ンティッシュ、スケルトンあるいはサポートとインフィルという関係の秩序も段々

    安定するだろうと考えています。都市も少しずつ変わっていくのだという前提の中

    で建物の寿命を今よりは長くするために、サポートとインフィルをどう構成すべき

    かということを考えていきたいと思っています。 南 :本年 5 月 14 日、日本建築学会から「良好な建築物による社会ストックの形成への提

    言」が出されましたが、その中で日本においては社会的合意形成が不足していると

    指摘されています。秋山新建築学会長は、「都市建築の発展と制御に関する論文」募

    集を行われるなど、都市と建築の関係についてご関心が高いと存じます。本日の協

    議会の最後に、会長から一言ご発言いただけますでしょうか。 秋山:今日はハブラーケン先生の話を大変興味深く聞かせていただきました。私たちはこ

    の巨大な都市構造をいかにコントロールして豊かな公共空間を生んだり、いわゆる

    地球環境と調和したような発展を確保していくかということが共通の問題だと思っ

    ております。それが建築学会でも共通のテーマとして、単に建築の分野だけでなく、

    造園、都市計画など全体の枠組みの中で横断的な議論が出来るのではないかという

    ふうに考えています。今日の先生の示されたオープンビルディングの考え方は確実

    にこの問題の解決策の一つになるということを感じた次第です。今日はありがとう

    ございました。

    (文責、南 一誠)