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『健康医療福祉都市構想提言書』1 1 『健康医療福祉都市構想提言書』 1.はじめに (日本の医療の流れと課題―超高齢社会を見据えて)

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『健康医療福祉都市構想提言書』

平成 30 年 5 月

経営戦略委員会

11

『健康医療福祉都市構想提言書』

1.はじめに (日本の医療の流れと課題―超高齢社会を見据えて)

世界に先駆けて日本は未曾有の超高齢社会に突入した。平均寿命は女性が 87

歳、男性が81歳に達し、これは世界に誇る国民皆保険を有する日本であっても、

「病気は治るもの」という神話の崩壊を意味する。高齢者の病気は治らず、慢性

化する。脳卒中後の後遺症である片麻痺、言語障害、精神・高次脳機能障害等も

残存する。すなわち、超高齢社会は病気や障害と上手につき合っていくことが重

要となる。従来の日本社会では超高齢者や障害者は外出しない「閉じこもり生

活」を選択することが暗黙の了解であった。2030 年には 3人に 1人が 65 歳以上

の高齢者となる社会では、超高齢者や障害者が不活動で寝たきりとなり、莫大な

医療費を発生させることが予想される。

要介護となる主な原因は、第1位が脳卒中後遺症で 26%、第2位が認知症で

20%、第 3位が高齢による衰弱で 17%である。脳卒中や高齢衰弱を発症した後は

閉じこもり、不活動で廃用症候群を生じ寝たきりとなる。認知症の発症率は 80

歳で 20%、85 歳で 40%、90 歳で 60%、95 歳で 80%であることから、超高齢社会で

は認知症の進行による要介護の爆発的増加も容易に予測される。一方、脳卒中治

療学的には適切な脳卒中リハビリテーション(以下、リハ)を行えば、70 歳ま

では約 80%に良好な回復が望め、70歳以降は回復率が低下するが、70歳代で 60%、

80 歳代で 40%、90 歳代で 20%が良好に回復する。また、認知症の本質的な治療

は現在困難であるが、適切なリハ治療で周辺症状を軽快して認知機能や運動機

能を向上することは可能である。この人間力の回復を進める人間回復リハ治療

が超高齢社会に必須であり、不活動から寝たきりへの悪循環を断ち切る新しい

人間回復医療の時代が到来した。

2000 年に高齢者医療や脳卒中医療に画期的な制度である「回復期リハビリテ

ーション医療制度」が誕生し、急性期、回復期、慢性期の医療連携と役割分担が

確立した。急性期は可及的短期間で疾病を治療する期間(2週間以内)、回復期

は機能障害による能力低下を回復する期間(約2~6カ月間のリハ治療)、慢性

期はその後の一生の暮らしを支援する期間である。急性期と回復期は病院で完

結するが、慢性期は在宅生活が基本となるため、社会参加やコミュニケーション

を支援する体制が必要となる。例えば50歳代で脳卒中による後遺症を生じると、

残り約 30 年という膨大な時間を障害者として過ごすことになる。慢性期はその

22

大半にあたり、この期間を部屋に閉じこもらず、いきいきと社会参加し社会貢献

すると、不活動による要介護度の進行や認知症を防ぐことが可能になる。しか

し、この活動は毎日必要となるため、病院や施設のみでは不可能である。すなわ

ち、超高齢社会では、予防や慢性期医療と暮らしを一体化し、可能な範囲で医療

保険や介護保険に頼らず、社会参加や社会貢献を支援する街づくり体制が要介

護や認知症の発生を予防できる機序を理解する必要がある。そこで、日本人が最

も暮らしたい地方都市として選ばれる松山市に、健康医療福祉都市構想の日本

モデルの実践を提言したい。

2.健康医療福祉都市構想とは

健康医療福祉都市構想とは、超高齢者や障害者、認知症、子育て世代を含めた

全ての人に優しく、安全に安心して快適に外出でき、社会参加し、その人なりに

社会貢献して、いきいきと暮らしていけるコンパクトなユニバーサルデザイン

の都市計画を意味する。健康医療福祉の面で困った時は、自分が暮らす街に整備

された急性期・回復期・慢性期の地域医療福祉連携で解決し、その後の長期的な

支援は、医療保険や介護保険に頼らずに、それぞれの自治体による街の環境整備

と社会参加支援活動体制が支えていく。その根底には、超高齢社会では全ての人

が長生きすれば必ず認知症になり介助を要し、ついに死を迎えるという真実が

ある。すなわち、これまでの効率性と生産性を重視した都市政策を超高齢者や障

害者の生活にも適合したコンパクトな環境整備に改めることが必要となる。そ

して、その人が暮らす街をアーチスティックにヘルシーデザインしていく感性

を国が育成することで、超高齢者や障害者、そして、困っている人をみんなで助

けることはかっこいいと感じる国民性を醸成することが必要である。

健康医療福祉都市構想の基本骨格は 3つであり、(1)回復期リハビリテーシ

ョンを中継とした質の高い急性期・回復期・慢性期の地域医療連携の確立、(2)

市街地中心部におけるユニバーサルデザインの公園的歩道空間(ヘルシーロー

ド)の整備、(3)ヘルシーロード沿道から健康・医療・福祉の情報やサービス

の発信、そして、医療関連産業街創設による従来型ショッピング街との相乗的経

済活性化である。ヘルシーロードは直径約1㎞程度の市街地中心部にあるコン

パクトなコミュニケーションができる歩道環境であるが、自治体はそこで社会

参加や社会貢献ができるように街環境整備を行い、地域住民主体の交流と支え

合い体制を構築し定期的イベント体制を開催することでコミュニティを再生で

33

き、ヘルシーロードはそのシンボルとなる。病気で障害を負っても、ヘルシーロ

ード沿いの回復期リハビリ病院で人間力を回復(人間回復)し社会参加すること

で、その地域に暮らす住民に安心感と一体感を与える。ヘルシーロードの医療関

連産業街から発信される健康医療福祉関連の情報やサービスは利用が容易であ

り、そこへの外出を促進する理由づけになる。医療関連産業街では介護・福祉部

門に加え、復職・就労支援、子育て支援、シルバー支援関連の緩い沢山のビジネ

スを創出でき、80 歳までは趣味の延長による緩い社会貢献を継続することが地

域に活力を生む(図 1)。

ヘルシーロードは、宇和島市のような人口 10 万以下の地方型では既にあるア

ーケード街を直接利用し、松山市のような人口 10 万人以上の地方都市型では従

来のアーケード街と別にその間を結ぶ歩道空間を利用し従来型アーケード街と

でヘルシーサークルとして活用できる。東京都の大都市型では、既にある社会資

源を利用した多彩なヘルシーロードの創作が可能となる。既に進めてきた具体

的な健康医療福祉都市構想の活動を紹介する。

3.初台ヘルシーロードの取り組み

2004 年脳神経外科医からリハビリテーション(以下、リハ)医に転向した。

脳卒中診療科科長という役職を頂き、脳疾患の回復期リハ医療を専門にしてい

た初台リハビリテーション病院でリハ医療を開始した。理学療法士、作業療法

士、言語聴覚士、看護師、介護福祉士、社会福祉士と、患者と家族の現在と未来

を一緒に考え、人間力を回復させる治療を実践した。リハ診療で 1年もすると、

元気に退院した患者が徐々に弱っていき、超高齢社会では医療保険と介護保険

だけでは生活に対応できない現実に直面した。2008 年に厚生労働省が地域包括

ケア研究会を設立する 3年前である。

急性期と回復期治療を卒業し自宅に退院した患者に社会参加と社会貢献を実

践できる場所を提供することが必要である。デンマーク生活で体験した障害者

にも優しい社会参加環境が日々脳裏に蘇った。しかし、日本の一医師には病院外

のことなど何もできない。ふと、窓の外を見ると、病院前の山手通りを東京都が

8.8km の大規模整備事業を行っていた。そう、この屋外歩行訓練の道を 24 時間

365 日散歩ができ、笑顔で交流ができる歩道環境に変えよう。街に社会参加でき

るタウンリハ環境を整備することが喫緊の課題である。その想いが 2008 年東京

都建設局と連携した初台ヘルシーロードを実現する活動につながった。

44

道歩きは、患者が自立できない時は家族のサポートが必須となる。家族のサポ

ート時間は仕事により異なる。日中働いている場合は遅い時間帯になることも

あり、早朝勤務の場合はさらに早朝の時間しかとれないかもしれない。どの時間

帯でも足元が明るく、気持ちよく歩けて交流できる歩道が、眠らない街東京には

必要である。このアイディアが東京都に採用され、2015 年 24 時間 365 日安全、

安心、快適に散歩と交流ができる 8.8kmの光の帯を持つ歩道が山手通りに完成

した。世界の大都会の都心には、このような 24 時間安全に歩ける明るい歩道環

境は存在しない。日本ならではの治安基盤と文化が実現させた歩道であり、東京

オリンピックパラリンピンク2020ではユニバーサルマナーとして世界から注目

されよう。

24 時間歩ける歩道には、病院から屋外歩行訓練する患者、家族、退院した自

宅在住の患者、通勤者、地域住民、全国からの見学者が自由に集まり、快適に歩

いている。この歩道の誕生は、整備された山手通り全域を安心で快適な洗練され

た生活環境に変化させた。各種 NPO や障害者を含めた「ヘルシーウォーク」とい

う朝歩きと夜歩きの地域イベントも立ち上がった。約 1km の初台ヘルシーロー

ドには新築マンションやお洒落な店舗がたくさんオープンし、今では当時から

は想像できないユニバーサルデザインの街路環境となった。沿道にある既存の

オペラシティ、駅ビルなどの大規模社会資源は全天候型のリハ施設として利用

でき、各種イベントや芸術展にも参加できる。大人の居場所が誕生した。裏通り

も渋谷区や新宿区と連携して裏ヘルシーロードへと徐々に進化し、1本のリハ

歩道が街全体を変えた線のアプローチの現実である(図2)。

4.二子玉川ヘルシーロードの取り組み

東京都世田谷区の二子玉川ヘルシーロードは、面のアプローチである。社会参

加のためには、外出のために道(線)が必要である。その社会参加活動を広げる

と面の環境整備が必要になり、社会貢献活動も可能になる。その活動を支援する

二子玉川ヘルシーロードは、アーティスティックな街づくりを代表するヘルシ

ーデザインの一つである。

2010 年二子玉川の大規模開発を進めていた東急電鉄と美しい街づくりに何を

プラスすればさらに魅力的な街づくりになるかを話し合った。超高齢社会で気

持ちよく歩きながら人と交流するためには、無意識に歩きたくなるアーティス

ティックな街路環境が必要である。障害者、超高齢者、認知症、子育て世代を含

55

めた全ての世代が自由に、素敵だと感じ、安全に気持ちよく過ごせる社会参加環

境は社会貢献活動を生み出し、加齢性疾患を予防する。世界的な問題である認知

症の予防は、適度な運動、コミュニケーション、趣味の継続が有効な EBM とされ

る。2015 年に完成した二子玉川大規模開発には、二子玉川駅からショッピング

街、楽天本社ビル、ホテル東急、交流広場、マンション群を経て、二子玉川公園、

多摩川に抜ける美しいヘルシーロードがあり、ショッピング街屋上にも屋上庭

園が広がる。何があるのか、歩いて探りたくなる仕掛けが沢山盛り込まれてい

る。まさに、認知症を含めた加齢性疾患を予防できる工夫がなされた社会環境資

源である。

2012 年リハ環境が乏しい世田谷区二子玉川地区に世田谷記念病院を新設して、

副院長と回復期リハセンター長を併任した。病院と街づくりを連携させた社会

参加環境を整えた人間回復のリハ医療を開始するためである。すなわち、急性期

治療を終えた患者がストレッチャーや車いすで世田谷記念病院回復期リハセン

ターに入院し、攻めのリハを実践する。院内移動が可能になれば、二子玉川ヘル

シーロードで屋外活動訓練を行う。回復期病院を退院し自宅退院した後は、気持

ちよく二子玉川ヘルシーロードに外出して、歩行や交流、社会貢献活動をして、

病院を頼らない自主訓練活動を生活スケジュールに組み込みモデルを開始した。

とにかくお洒落で気持ちいい二子玉川のヘルシーロード環境は全世代の人が自

由に歩き楽しんでいる。そこでは、健康・医療・福祉の情報とサービスが提供さ

れ、定期的なイベントも開催され、セグウェイの利用も広がりつつある。毎日の

生活の中で可能な楽しいタウンリハ活動は超高齢社会に必須である。

2008 年国土交通省に健康・医療・福祉のまちづくり委員会を立ち上げ、コミ

ュニティ再生の委員会を続け、2014 年に健康・医療・福祉の街づくりの推進ガ

イドラインを策定した。まさに、この健康・医療・福祉の街づくりモデルの都会

版の一つが二子玉川であり、地方版が富山市である。ともに面のアプローチの実

現である(図3)。

5.医療連携からの街づくりとは (回復期リハから地域リハへ、そして、街づ

くりへ)

回復期病院の退院後は、自宅退院できるか、療養施設(慢性期病院も含む)に

入所になるかの二つの流れがある。その行方は患者の病態や障害の重症度と家

族の受け入れ体制のバランスで決まる。おおよそ 80%が自宅退院となり、20%が

66

施設入所となる。発症時に既に超高齢であることから、施設入所になった患者が

自宅退院になることはあまり多くない。このため、施設入所になった患者の人生

はその施設のホスピタリティと生活リズム、入所リハで決定されるため、療養施

設選びは極めて重要である。

自宅退院後のリハは維持期リハと呼ばれる。維持期リハは、生活期リハ、介護

期リハ、終末期リハの 3 段階に分かれる。生活期リハは回復期リハ後に残存機

能や能力の回復が望める時期であり、社会参加や社会貢献活動の継続が生き甲

斐を増す。医療・介護保険のリハ利用だけでは十分でなく、フレイル予防も含め

た地域リハ活動を利用する意義が大きい。介護期リハは、超高齢化や新たな障害

により日常生活能力が徐々に低下する時期であり、自立は難しく、気持ちを明る

くすることと介助量を減少させることが核となる。通所リハや訪問リハが主と

なるが、最近では短期集中リハを実践できる攻めの介護老人保健施設が運営さ

れ、その有効性が注目されている。介護期にあっても、家族などの協力を得た地

域リハ参加は患者に活気と生き甲斐を生む。一方、終末期リハは死を迎える約 2

週間のリハ介入であり、訪問リハか入所リハで担当する。この時期は食事や水分

を欲さず、排尿も消失する。入所リハでは 3 食の食事時間の離床を核にした生

活リズムと気持ちいいコミュニケーションを提供でき、立派な旅立ち(老衰)を

支可能とする。

地域リハは、生活期リハや介護期リハ、そして予防期リハの時期にあたり、医

療・介護保険のリハに加えて、地方自治体や NPO、地域住民により提供される社

会参加や社会貢献を支援する地域活動と考えられる。我々はこのような日々の

暮らしの中で街に外出して繰り広げられる活動をタウンリハと呼んでいる。こ

のタウンリハ活動への参加は日々の生活スケジュールに、居場所と楽しさと生

き甲斐を生む。生き甲斐を持った生活は認知症を予防することが報告され、タウ

ンリハの重要性は高い。しかし、自立して参加できる患者は情報のみで参加可能

であるが、介助を要する患者には移動支援が必要になり、家族などの協力が不可

欠となる。回復期リハからタウンリハへと繋ぐ役割は回復期スタッフにあり、回

復期スタッフが地方自治体や地域活動者と顔の見える関係となり、地域で使え

る社会資源を理解することが重要である。タウンリハには、社会参加環境(ハー

ド)と社会参加支援活動(ソフト)が必要である。ハードはコンパクトな都市環

境整備を意味し、2014 年健康・医療・福祉の街づくりの推進ガイドラインとし

て国交省より発表した。一方、ソフトは地方自治体が中心となり実践される様々な

77

地域支援活動体制であり、その完成モデルはまだどこにも存在せず、富山市の

コンパクトシティ構想や練馬区の健康医療福祉都市構想が注目されている(図4)。

6.現在進行する練馬健康医療福祉都市構想の取り組み

2016 年 4 月練馬区に地域包括ケアシステムを推進するために、練馬健康医療

福祉都市構想委員会が設立された。約 3年間で練馬区の急性期・回復期・慢性期

の医療連携の基盤を作り、慢性期における社会参加と社会貢献の地域支援活動

体制を構築するためである。練馬区は人口約 72 万で、東京都で 2番目に人口が

多い街である。しかし、練馬区は医療過疎地であり、救急治療は練馬区内では 4

割しか対応できず、回復期は 160 床のみで、人口 10 万人あたり 22 床しかリハ

病床が存在しなかった。このため、回復期リハや慢性期リハを必要とする患者が

練馬区に戻れない現実があり、解決されるべき喫緊の課題であった。練馬区の

医療連携と地域社会資源の現状を1年間調査した。幸い、練馬区は既存の道や住

居、公園が規則正しく区画されており、大泉学園通りはヘルシーロードとして活用

でき、新たなハード整備にお金がかからないプロジェクトが可能である(図5)。

2017 年 4 月練馬区大泉学園町 7 丁目に大泉学園複合施設(ねりま健育会病院

100 床、ライフサポートねりま 80 室)を開設し、回復期リハと維持期リハの治

療と地域医療連携指導を開始した。介護老人保健施設(老健)は維持期に機能や

能力が低下した患者や回復期病名がつかないリハ治療を必要とする患者を回復

させて自宅退院させる入所リハと通所リハ機能を持ち、健やかな看取りの機能

をも備えた。この複合施設の開設により、練馬区は人口 10 万人あたり約 47 床

のリハ機能病床を有することになり、最低限の医療連携環境を実現した。2018 年

度は、練馬区内の急性期・回復期・維持期の医療連携体制の安定した構築を進め、

自宅退院後に医療・介護保険で使える施設や制度の地域状況、さらに、高齢者セ

ンター、街角カフェ、障害者センター、障害者スポーツセンター、高次脳機能障

害支援センター、復職支援センターなどの施設やリハ活動が可能な大規模ビル

などの社会資源、そして、NPO や地域住民の地域活動の現状を調査、情報収集し

ている。委員会で得られた情報を練馬区民に共有し、具体的な地域医療情報と、

社会参加や社会貢献の支援活動情報をまとめて、地域住民に伝える市民公開講

座や協働フェスタ、街づくりグループワークも企画中である。

88

7.おわりに (松山健康医療福祉都市構想の可能性)

松山市は、富山市や練馬区と同様な健康医療福祉都市構想は可能である。その

ためには、厚生労働省が示す地域包括ケアシステムとは街づくりであることを理

解する必要がある。人口 5-10 万人程度の宇和島市のような地方都市は、街なか

にあるアーケード商店街の再活性化とコミュニティの再生から街づくりが容易に

可能となる。ハードであるヘルシーロードは街なかのアーケード街の全天候型歩

道利用、ソフトは宇和島市が行う社会参加支援体制の構築とアーケード街のお店

の活用である。その促進には街のプロデューサーの存在が必須であり、街のプロ

デューサーがいない場合は、その養成とともに街づくりを始める必要がある。

松山市の社会参加環境整備は、大街道や銀天街、市駅あたりの地域を利用した

ヘルシーロードとヘルシーサークルが可能と思われ、お金をかけない環境整備

が可能であろう。社会参加支援体制整備には、1.地域医療介護の切れ目のない

連携構築、2.医療関連産業街の育成、3.松山市による社会参加支援整備、

4.住民、企業、NPO、学校による社会参加支援協力体制の構築が必要になる。

簡単に推進できる街づくりであるが、それを理解した街のプロデューサーの存

在が必須である。間もなく松山にも訪れる超高齢社会の前に、松山健康医療福祉

都市構想の必要性を提言したい(図6)。

最後に、日本の大都会の都心では新しい病院の新設は難しい。超高齢社会の過

密な都心では、高層大規模施設の一フロアーをリハ病院とすることで回復期治

療を実践でき、タウンリハで地域全体の維持期リハ医療を管理し、災害時 48 時

間以降は地域リハ健康管理を行う大規模施設リハ司令塔機能をも実現できる。

本機能を有した高層大規模施設の海外輸出は、同時に都市環境と健康医療福祉

環境の輸出を可能とする。すなわち、松山市は既に各機能を持った病院や施設、

事業所が存在する。松山ヘルシーロードやヘルシーサークルを利用したタウン

リハも可能である。この形ができれば、災害時は愛媛県立中央病院に 48 時間以

内の救急対応と、それ以降の地域リハ健康管理を行うリハ司令塔機能が持たせ

ることも可能である。現在、中国やアジア諸国から注目される本構想が松山市に

故郷貢献となることを期待して、提言を終えたい。

なお、本提言書作成に当っては、大泉学園複合施設 (ねりま健育会病院院長

ライフサポートねりま管理者)愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科 非常勤講師

の酒向 正春 様に大変お世話になりました。ここに、深く感謝申し上げます。

9

1.

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図1

10

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福祉

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(1.0km)

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図2

11

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図3

12

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図4

13

人口

約72万

大泉

学園

人口

約14万

大泉学園駅

大泉中央

公園

大泉学園町

希望が丘

公園

関越自動車道

医療

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(仮称)大泉高齢者センター

(平

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予定

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整備候補地

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図5

14

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整備

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健康

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老舗

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ート

老舗

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図6

159

経営戦略委員会

代表幹事 本田 元広 (株)愛媛銀行 頭取

〃 山本 恒久 えひめ洋紙(株) 代表取締役社長

委員長 野本 政孝 (株)サンメディカル 社長

副委員長 井川 直樹 愛媛パッケージ(株) 代表取締役

〃 岩田 哲也 ソニー生命保険㈱ ライフプランナー

〃 桑波田 健 岡田印刷(株) 代表取締役社長

〃 妹尾 次郎 正起ガス(株) 社長

〃 松本 陵志 フジケンエンジニアリング(株) 代表取締役社長

〃 村上 泰久 (株)ウイン 常務取締役

委員 浅海 真一 山中造船(株) 代表取締役社長

〃 井川 高幸 四国紙販売(株) 社長

〃 井川 俊高 大王製紙(株) 特別顧問

〃 伊賀上 竜也 (株)パドス 代表取締役

〃 石川 滉三 大成薬品工業㈱ 代表取締役社長

〃 伊藤 謙一 西日本電信電話(株) 四国事業本部長兼愛媛支店長

〃 伊東 毅嗣 東京海上日動火災保険(株) 愛媛支店長

〃 岩本 透 (株)SSP 代表取締役社長

〃 江崎 英夫 (株)えざき 代表取締役社長

〃 遠藤 辰也 住友重機械工業(株) 常務執行役員愛媛製造所長

〃 大亀 右問 (株)大亀製作所 代表取締役社長

〃 大塚 岩男 (株)伊予銀行 頭取

〃 大塚 敏彦 (株)森熊 会長

〃 岡田 康 伊予商運(株) 代表取締役社長

〃 岡本 五十鈴 (有)大和屋 専務

〃 沖野 一 (株)オキノ 代表取締役会長

〃 尾後 正樹 アイビー(株) 名誉会長

〃 尾崎 英雄 (株)フジ 代表取締役社長

〃 小田 道人司 渦潮電機(株) 最高顧問

〃 越智 通秀 税理士法人 越智会計事務所 会長

〃 越智 陽一 (株)ジョイ・アート 代表取締役社長

〃 戒田 順 (株)戒田商事 取締役会長

1610

委員 片山 一 五洋建設(株)四国支店 執行役員四国支店長

〃 門田 省二 門田省二税理士事務所 代表者

〃 門田 治満 (株)ニュウズ Chairman

〃 門田 実 (株)門田商店 社長

〃 上沖 耕三 (株)アート工藝社 代表取締役会長

〃 河端 民平 河端民平司法書士事務所 所長

〃 川本 栄次 (株)茶玻瑠 代表取締役

〃 菊野 先一 (株)キクノ 代表取締役社長

〃 城戸 善浩 ヤマキ(株) 代表取締役社長

〃 木和田 権一 (株)宇和島プロジェクト 代表取締役社長

〃 櫛部 邦寛 日新工業(株) 代表取締役

〃 河野 健一 栗原工業(株) 松山営業所長

〃 高山 正志 (株)テレビ愛媛 常務取締役

〃 小林 寛之 (株)鳳建築設計事務所 代表取締役

〃 薦田 泰男 (株)アイソウ 代表取締役社長

〃 佐伯 正夫 (株)佐伯物産 取締役会長

〃 塩崎 恭久 塩崎恭久事務所 代表

〃 塩見 律子 (株)塩見組 取締役副社長

〃 篠藤 悟 司法書士篠藤悟事務所 代表者

〃 篠原 成行 桜うづまき酒造(株) 会長

〃 清水 一郎 (株)伊予鉄グループ 代表取締役社長

〃 白石 卓三 白石物産(株) 代表取締役社長

〃 上甲 啓二 愛媛県信用保証協会 会長

〃 神野 泰正 (株)丸菱商会 代表取締役社長

〃 末光 宏之 (株)末光硝子商会 代表取締役

〃 清家 幹広 (株)かどや 代表取締役社長

〃 関 啓三 セキ(株) 代表取締役会長

〃 仙波 弘樹 矢崎総業四国販売(株) 松山支店長

〃 曽我部 謙一 (株)曽我部鐵工所 代表取締役

〃 高橋 祐二 三浦工業(株) 代表取締役会長

〃 高松 秀光 高松石油(株) 代表取締役

〃 竹内 雅章 伊予食品(株) 代表取締役

1711

委員 田中 雅幸 (株)ミロク情報サービス 松山営業所長

〃 玉置 泰 (株)一六 社長

〃 千原 徹也 有限責任監査法人トーマツ松山事務所 パートナー

〃 続木 剛 (株)続木鉄工所 代表取締役社長

〃 中岡 数夫 (株)中央設計 代表取締役

〃 中岡 富茂 (株)スカイネットシステム 代表取締役

〃 長崎 晃夫 (株)長崎商事 代表取締役

〃 永野 正彦 四国建設機械販売(株) 代表取締役会長

〃 乃万 恭一 (株)日本エイジェント 代表取締役委員

〃 橋本 博一 (株)アイクコーポレーション 社長

〃 畑 睦美 (有)エディア 代表取締役

〃 畑中 貴博 (株)ほけんラボ 代表取締役

〃 花岡 克久 トータスエンジニアリング(株) 代表取締役社長

〃 平岡 清樹 (株)フィースト/(社)愛媛福祉車輌協会 代表取締役/代表理事

〃 藤岡 久実 キャリア・サポート(株) 代表取締役

〃 古川 實 スカイ建設工業(株) 社長

〃 舛田 希仁 舛田希仁税理士事務所 代表者

〃 松井 宏冶 (株)エリアサポートイーズ保険 代表取締役

〃 松本 等 生活協同組合コープえひめ 理事長

〃 松本 祐治 (株)ほうきょう 代表取締役社長

〃 松本 良之 (株)シャープ松山オーエー 専務取締役

〃 丸木 公介 丸木公認会計士事務所 代表

〃 三橋 信也 (株)レディ薬局 代表取締役社長

〃 宮内 圭三 (株)ビージョイ 代表取締役社長

〃 宮内 隆 (株)愛媛CATV 代表取締役社長

〃 三宅 孝房 (有)セイフティーテクノス 代表取締役

〃 明関 和雄 マルトモ(株) 代表取締役社長

〃 三好 潤子 アビリティーセンター(株) 代表取締役

〃 村上 高志 (株)シンツ 代表取締役社長

〃 明関 勉 コーエキ(株) 代表取締役社長

〃 甕 哲也 三井住友信託銀行(株) 松山支店長

〃 元山 達央 愛媛南部ヤクルト販売(株) 代表取締役社長

1812

委員 守谷 啓 ㈱三井住友銀行 四国法人営業部 部長

〃 柳尾 匡彦 (株)西広 代表取締役社長

〃 矢野 達夫 ペガサス運輸(株) 代表取締役社長

〃 山本 一心 住友共同電力(株) 社長

〃 弓山 慎也 愛媛信用金庫 理事長

〃 吉本 謙一郎 公認会計士吉本謙一郎事務所 所長

〃 脇水 雅彦 (株)ひめぎんソフト 代表取締役

〃 綿﨑 賀彦 ルナ物産(株) 代表取締役社長

〃 渡辺 重栄 (有)ダイコク 取締役会長

〃 渡部 裕司 (株)ミック 社長