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思春期になる前の男の子をもつ親御さんへ いのちと性を家庭で伝えるための 助産師からのメッセージ

思春期になる前の男の子をもつ親御さんへ ... - do …...1.思春期になる前の男の子に伝えたいこと 思春期は、子どもから大人への過渡期の第二次性徴が始まる11歳前後

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思春期になる前の男の子をもつ親御さんへ

いのちと性を家庭で伝えるための助産師からのメッセージ

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目次

はじめに .....................

1.思春期になる前の男の子に伝えたいこと .....

2.性教育での親の役割 ..............

3.男の子の身体の変化 ..............

4.男の子の心の変化 ...............

5.男の子の悩み .................

① 性器の大きさ ................

② 包茎 ....................

③ 精通と射精 .................

④ マスターベーション .............

⑤ メディアとの上手な付き合い方 ........

⑥ いつまで子どもとお風呂に入って良いか ....

⑦ 大人や家族がうざい .............

6.子どもへの接し方 ...............

7.思春期と更年期 ~どちらもつらい!~ .....

おわりに .....................

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はじめに

はじめまして。助産師の安藤です。思春期保健相談士として学校現場や保護者の方々に向けた性教育、いのちの教育を行っています。

子どもと『性』の話をする時、また性の問題に向き合う時、多くの親はちょっと構えてしまいますよね。なかには触れたくない、むしろ避けたくなる方もいるかもしれません。 性の教育は「心と身体といのちを守るための教育」であり、「未来を豊かに生きるための教育」です。

そのために、子どもたちが「健康的な性の知識」を身につけることはとても大切なことです。「心と身体といのちを大切にできる」子どもに育てるために、親として何をどのように伝えたら良いのか、3人の息子の思春期と向き合ってきた母親としての思いも込めて、いのちと性について家庭で伝えるためのメッセージをお伝えさせていただきます。

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1.思春期になる前の男の子に伝えたいこと

思春期は、子どもから大人への過渡期の第二次性徴が始まる11歳前後から18歳頃まで続くと言われています。女の子は10~12歳、男の子は女の子よりもやや遅く、11~14歳で始まることが多く、急速に発育する子もいれば、緩やかに発育する子もいるので個人差があります。

思春期は、心と身体が大人になり始める思春期初期、子どもと大人が入り交じりせめぎあう思春期中期、心も身体も大人であることを確かなものとしていく思春期後期の3つの段階に分けることができます。

思春期前の男の子、特に8歳から10歳前後の男の子には、これから迎える思春期に起こる心と身体の変化について、出来れば家庭において親からさりげなく日常会話の一環として伝えていくと良いと思います。それは、思春期を迎えてからでは何をどう伝えて良いのかを親も子も心身の変化を経験している最中には戸惑うことが多いからです。

性の話はいのちと密接にかかわっている大事な話です。「自分の身体といのちを大事にして欲しい」、「思春期は人間みんなが通る過程だから恥ずかしいことではない」というメッセージを家庭で伝えることによって、子どもと親がお互いの存在の大切さを確認していくことが出来るでしょう。

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2.性教育での親の役割

性教育に対するイメージはどのようなものですか?

恥ずかしい、いやらしい、子どもに伝えるのは難しいなど、色々ありますよね。性教育はセックスについての話やコンドーム教育だけではありません。性教育は「心と身体といのちを守るための教育」、そして、「未来を豊かに生きるための教育」です。 性教育を行う際には、家庭環境や親子関係がとても大きな役割を果たします。親と子がお互いに愛情や関心を持ち、居心地の良い家庭環境を作ることが性教育の基本です。その基本がしっかりできていれば、子どもたちは正しい知識や情報をもとにして、それぞれの健康な性行動や性知識を育てていくことができると考えます。

親として、まず大切なことは家族の関係、子どもとの関係を安定させ、家に帰るとほっとするような家庭をつくることです。幼い頃から、子どもが「自分は生まれてきて良かった」、「家族に大切にされている」と思えるような子育てを目指しましょう。

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男の子の性の話は、同性である男性の大人が話をすると良いでしょう。

思春期になったら、心や身体の悩みに関しては、同性の子どもには同性の親が関わることが望ましいでしょう。 母親は娘の、父親は息子の心や身体の悩みに心を寄せ、先輩として自分の経験を話しながら聞いてあげるといいですね。

父親・母親がいない家庭では、代わりとなる同性の大人、たとえば叔父さんや叔母さん、少し年上のいとこのお兄さんやお姉さんなどに力を借りることも大切だと思います。 「援助交際」など子どもたちの性にからんだ問題行動の要因は、性に対する興味や関心の高まりだけではありません。時には寂しさや家庭の問題もあることを忘れないようにしましょう。

子どもたちの身体やいのちを脅かす商業的な性の情報に、親も子も振り回されることのないよう、未来ある子どもたちの性の健康を守るために共に学び、大切ないのちをつないでいきましょう。

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3.男の子の身体の変化

思春期の身体の発育は、急速に発育する子もいれば、緩やかに発育する子もおり、個人差があります。

《思春期の男の子の発達》

思春期の男の子は男性ホルモンが活動し始め、精通を体験するなどの生殖機能が発達します。思春期の男の子の第二次性徴の発達は次のとおりです。

1. 生殖器の発達2. 声変わり3. わき毛、ひげ、体臭の発生4. がっしりとした体つき5. 顔の変化が女の子に比べて著しい(おでこ、下あごが突出し、顔が変化してくる)

あまり注目されることはありませんが、5番の顏の変化について男の子によってはとても気にし、悩むことがあります。鏡に向かいヘアースタイルを熱心に整える姿は、男の子なりに顏のバランスを整えている行為かもしれません。

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4.男の子の心の変化  

思春期は身体と共に、心理面で大きな影響が見られます。大人からすれば何でもない悩みも、子どもからすれば深刻な悩みであることが多くあります。

① 自意識の高まりとアイデンティティの確立

思春期に入り身体が大人へと変化する中で、意識が自分自身に向かうようになります。学校生活の中で家族、先生、友達と接しながら、自分の外見や行動を常に意識するようになります。 「自分は何が他の人と違うのか?」、「友だちからどのように見られているか?」、「友だちから嫌われていないか?」、「自分は劣っていないか?」という心理的な比較や競争が始まり、些細なことで劣等感を感じることもあります。そのために精神的なストレスも高くなります。

自分の居場所を確保するために自分の個性を抑え、周りの友だちと同じ行動や態度・考え方を取ることもあります。 個性的な子どもほど個性を発揮する場を失ってしまう矛盾が生まれます。そのため自分の心を閉じてしまい引きこもりや、家を飛び出して反発してしまうこともあります。また、自分を主張したい気持ちと、それを学校や社会的な場面で適応させなければならない気持ちとの間で悩むことがあります。

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② 完璧主義になります

外見的にも行動的にも完璧に物事を成し遂げたい気持ちが高まります。この時期にファッションに目覚めたり、髪や体の手入れに夢中になったり、行動に対しても「~すべき」や「~すべきでない」といった自分自身の規律を作ることがあります。

しかし、多くの子どもにとって物事を完璧に成し遂げることは難しく、そのために劣等感を覚え、自己を否定するような行動を取ることが多くあります。反面、勝っている部分があると自意識過剰になり、その行動が逆に周りからの孤立を招くことがあり、 悩ましい時期です。

③ 性的な目覚め

思春期に入ると恋愛に興味を持ち、また性的な欲求が高まります。男と女の身体の違いに興味を持ち、セックスへの期待・欲求が出てきます。

これは大人への過渡期の健康的な側面でもありますが、自分の性的欲求に上手に対処でないため、戸惑う子もいます。

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5.男の子の悩み

① 性器の大きさ

ペニスが小さい、大きすぎる、まがっている、形が変など、男の子にとってペニスは悩みの種です。大きすぎて悩む男の子はそれほど多くありません。小さくて悩む子どもが圧倒的です。いつからか漫画や雑誌には、ペニスの大きな男性がもてるというような表現ばかりがめだつようになりました。ペニスのサイズも遺伝によるものですから、本人の努力で解決できるものではありません。医学的には、ペニスが勃起した時に5㎝あれば挿入できると言われています。 このように子どもたちがペニスについての悩みを持っていることを知っていただきたいと思います。

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② 包茎

子どもたちは雑誌やネットから多くの情報を得ています。

『皮をむいて、一つ上の男になろう』、『包茎は前立腺ガンになる危険があるので、早く手術しよう』、『君も包茎を治して、女の子にもてる男になろう』などです。こうした広告や雑誌を目にした思春期の男の子が、お小遣いやアルバイトのお金で包茎手術を受けるケースが増えています。また、『包茎はセックスが出来ない・性病になる』など根拠がない情報のために、幼い我が子に包茎手術を受けさせる母親もいます。

日本人の約7割の男性で仮性包茎といわれており、治療の必要のない仮性包茎の男性までが手術の対象になっているのが現状です。幼いころからお風呂の時には包皮をむいて、亀頭部と包皮の間をキレイに洗うことを伝えましょう。毎日顔を洗うのと同じように習慣づけましょう。

“手術は必要ない”というメッセージは、子どもたちにとっての何よりの安心材料になると思います。まずは包茎について正しい知識をもちましょう。

参考:岩室紳也 監修 「ママもパパもしっておきたいよくわかるオチンチンの話」, 2013 金の星社

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③ 精通・射精

男の子の身体が大人になる目安の一つは射精です。初めての射精を精通といいます。命のもととなる精子をつくり始めたしるしです。 射精は快感と共に起こる生理的な現象です。性行為の時やマスターベーション、また眠っている時にも起こる夢精があります。

一般論として男の子が夢精やマスターベーションによって下着を汚した時、自分で洗ったり、洗濯機に入れたり、中にはゴミ箱等へ下着を捨てる子もいます。そこで、成長する中で精通について話し、下着が汚れたら自分で下あらいをして洗濯機に入れる、という生活習慣を伝えましょう。 もし、夢精によりシーツや布団が汚れていた場合、親は何も言わず洗濯し、元通りにしておくと良いでしょう。

親にしてみれば夢精は自然な事であっても、子どもの立場からすると親に知られる事は大変恥ずかしい事であり、時には罪悪感を感じる事だからです。子どもの気持ちを理解し、対応したいものですね。

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④ マスターベーション

自分で自分の性器に刺激を与えて快感を得ることを『マスターベーション』といいます。

マスターベーションは男女ともに性的に発達していく過程で、とても自然なことです。男子では高校3年生までに90%以上が体験します。思春期男子の性的欲求は人生の中でもっとも強い時期ですから、性的な欲求を自分でコントロールするのは大切な行為ともいえます。

回数については個人差が大きく、回数が多くなると罪悪感を持つ子もいますが、性器や身体を傷つける方法でなければ心配は要りません。 それともう一点、「自分のマスターベーションを親に見られてショックだった」という子どもの声が聞かれます。子どもの部屋に入る時は必ずノックをし、声をかけてから入ることは基本であり、親子といえどもこれは大切なマナーです。必ず守りましょう。

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⑤ メディアとの上手な付き合い方

さまざまなメディアを介して提供される、性産業やポルノに関連した情報にどのように対応したらよいのでしょうか?

今ではどの家庭にもパソコンがあり、さまざまな情報に自由にアクセスできる生活になりました。思春期の子どもを持つ親たちは、自分たちの時代とは異なった環境の中に子どもがいることを認識することが大切です。

溢れる情報の中で、正しい情報を得る力を育てることも必要です。メディアからは良い情報ばかりではなく、マイナスの情報も入ってくることもがあり、性の犯罪に捲き込まれる可能性があることを伝え、家庭内でもルールを作りましょう。様々な自治体で、インターネットやスマートフォンなどを使うときのルールについての冊子などでも作られていますので、これらを利用するのも良いと思います。一番大切なのは「あなたを守りたい」という親の態度かもしれません。

子どもの部屋でポルノ雑誌などを見つけてしまった場合、親はショックを受けるかもしれませんが冷静に受け止めてください。そのような場合は、普通は放置し見守るしかありません。ただし、下の兄弟姉妹の目に付く場所にポルノ雑誌を放置してあるなど気になる時は、マナーやアドバイスを伝えることが大切です。

その時は母親が対応するのではなく、父親や、父親に代わる同性の叔父さんや年上のいとこなどに対応してもらう事をおすすめします。

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⑥ いつまで子どもとお風呂に入って良いか

欧米では湯船に入る習慣がないため、幼い頃から1人でシャワーを浴びるのが普通です。子どもと一緒にお風呂に入る習慣は日本ならではのものです。

個人的には、親子でお風呂に入る習慣は、日本の良い文化だと思います。なぜならお風呂の中では子どもとのスキンシップが高められ、自然に性のこと、身体のことを伝えられる場だと考えるからです。

「子どもといつまで一緒にお風呂に入ってもよいですか?」という質問を受けますが、中学生になっても親と入りたいという子はとても少ないと思います。むしろ中学生になれば親に自分の身体を見られる事に抵抗を示し、一緒にお風呂に入りたがらなくなります。 子どもの発達にもよりますが、男の子が母親を異性と意識し始める時期は9歳以後です。女の子も小学4年生ごろになると、多くの子が父親とお風呂に入らなくなりますが、男の子は女の子に比べて発達がゆっくりですので小学校5~6年生までは親とお風呂に入る子もいるでしょう。

子どもと一緒にお風呂に入れる期間はわずかです。湯船に浸かり、身体を洗ってあげられる時を大事にしましょう。その際に、心と身体の成長は、大人になる準備を始めるために素晴らしいことなのだというメッセージを伝えたいものです。

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⑦ 大人や家族がうざい

思春期の子ども達は、自立に向けた一歩を踏み出すためにひとりになりたい時間が増えます。今までの自分をゆっくり見つめ直す「さなぎのような時期」は思春期そのものであり、とても大切なことだと考えます。

そのためにも、親は子どもが「ひとりになれる時間や居場所」を確保することを考えて欲しいと願います。 兄弟と一緒の部屋、親や祖父母など自分以外の家族と常に一緒という家庭もあるかもしれません。そのような場合でもカーテンやついたて、場合によっては押し入れなどを上手に利用し、他の人からの視線をさえぎられる場所や、身体を隠すことのできる場所を確保してあげて下さい。

しかし、その場所にこもりっぱなしになり、多くの時間をパソコンやゲームに費やし、不健康な生活習慣が身についてしまうことがあります。

睡眠中成長ホルモンも分泌されるので、健康的な生活になるように働きかけましょう。

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6.子どもへの接し方

① 思春期の子どもの特徴は・・・

イライラしやすい事です。今まで思いのままに生きてきた子どもたちも、大人になるとそれでは生きていけないことを学びます。 そのために仕方なく、自分が本当にやりたい行動とは違う行動を取らざるをえなくなり、どんどんイライラしてしまうのです。頭の中ではわかっていても、身体がいうことをきかないために、子どもにとっても辛い時期です。

② 特に思春期の男子に顕著に現れること・・・

それは、かっこよくなりたい!という願望です。思春期になると、少しずつ、「かっこよくなって、女の子からもてたい」という気持ちが強くなります。また、この時期は不良っぽいことに憧れる時期です。ちょっと服装を不良っぽくしてみたり、酒やたばこに関心を示したり、色々な興味を持ちたがります。親としては非常に心配で、特に責任感の強い親ほど「自分がしっかりしないと子どもが大変なことになる・・・」と思ってしまい、毎日子どもとぶつかってばかりの状態になることもあるかもしれません。

明らかに子どものいのちに関わること、飲酒や喫煙、薬物など、危険な行動を発見した時は、厳しく注意することが親の大事な役割ですが、服装や態度、口のきき方などは、その時期を「卒業」するまで耐えて、問題が起こったときは子ども自身に考えさせる事が大切です。そのような広い心を持って接したいものです。

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③ 他人、特に友達からの目線を気にします

親の意見よりも友達の意見が優先になる時期です。親の対場からすると、「親の意見を素直に聞いてほしい」と思うかもしれませんが、親の考えが絶対正しいというわけではありません。

後から振り返ってみると、子どもの意見の方が正しかった、ということもあるかもしれません。思春期は自我が目覚める時期、つまり自分という人間が作られる時期です。それを親の力で変えることはできない事を理解しましょう。 人は成長の過程で多くの失敗をするものです。親も思春期に人を傷つけたり、友人関係で失敗した事があるはずです。しかし振り返ると「あの時期の苦い経験は、その後に役に立った」と思われる方もいるのではないでしょうか?当時は失敗だと感じた経験も、後になって考えると大切な経験です。親としては、子どもには失敗をして欲しくないと思いがちですが、子どもへの愛情さえ捨てなければ大丈夫。失敗も大切な経験という考えも大切です。

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④ 親の価値観を子どもに押し付けず、子どもを見守りましょう

思春期の子どもは失敗しないとわからないと理解し、忍耐をもって関わりましょう。子どもが本当に困った時は、失敗した時も、きちんと愛情を注いでいれば、必ず親のところに帰って来ることを信じましょう。小さな失敗は目をつむることも親の愛情かもしれません。 一番大切なことは、彼らを自立した一人の人間として接することです。子どもとしてだけでなく、大人として成長してきた部分を尊重してあげましょう。とはいえ、この時期は親を避け、対話すら難しい場合も多くなり、親も子どものサインに気づかない事があります。子どもが話しかけてきた時には、しっかりと子どもの話を聞き、向き合いましょう。

⑤ 揺れ動く子ども達から、親は多くの課題を突きつけられます

子どもにとって何よりも親が味方であること、どんな場面でも愛情を示してくれることが大切になってきます。正しいやり方はありません。自分なりの言葉や態度で、愛情を示していくことが大切です。自分たちもそうであったように、子ども達も大人になり、親となっていくにつれ、親の愛情に気付いてくれることを信じたいと思います。

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7.思春期と更年期 ~どちらもつらい!~

子ども達が思春期を迎える頃、あるいはそのさなか、親は更年期を迎えます。更年期は女性だけの問題ではなく、最近では男性の更年期も多く報告されるようになりました。男性の更年期は、リストラ・サービス残業など、仕事関係でのストレスや、家族関係のストレスが原因と言われています。また、女性も頭痛、肩こり、耳鳴りなどが更年期症状の一つであることに気づかず、あちこちの病院を渡り歩く方も多いようです。 症状が軽い人にとっては、気づかぬ間に通り過ぎていく更年期ですが、症状が重い人にとっては、自殺につながりかねない大きな問題となることがあります。

そして子どもが思春期のころ、多くの親は更年期で、社会人としても責任を問われる時期です。特に男性は、妻にさえも悩みを語れずに一人で抱え込んでしまう事があります。 女性も更年期症状の重い方は、頭痛・吐き気・耳鳴りなどの症状とともにイライラ感、焦燥感にとらわれます。結婚して20年近くを共にした夫婦でさえ、更年期と気づいても、悩みを打ち明けることに抵抗があるようです。

人生のなかで、ともすれば自信を喪失しがちな更年期ですが、子どもたちの思春期と重なるようなら、まずは一度、健康チェックも必要かしれません。

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ふたりのためにも、我が子のためにも!

この時期の問題として夫婦も往々にして相手の気持ちに寄り添えないことがあります。夫は仕事でひたすら疲れて帰ってくる。妻は夫や子どもから、省みてもらえない寂しさをかかえている。そこに夫婦そろって更年期。

思春期を迎える子どもたちは、なにげない夫婦のすれ違いを見逃しません。 相手を思いやれなくなった、お互いの身体に触れたくない、そんな気分が続いたら、もしかしたら更年期?と疑ってみて下さい。更年期とわかったら日々の生活を見直しましょう。そして、前向きに生活している親の姿を、子どもに見せたいですね。

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おわりに

思春期を迎える前の男の子をもつ親御さんが、家庭でいのちと性についてお伝えしていただくためのメッセージを助産師の目線からいくつかご紹介しました。

いのちは性がなくては始まりません。心と身体の大きな成長を遂げる思春期に向けて、親としてどう対応していくと良いのかは手探りかもしれません。子育ては答えのない旅のように、この先も子どもが大人になるまではいくつもの関門や悩みがあることでしょう。ぜひ、勇気をもって家庭で子どもにいのちと性の話をしていただきたいと思います。困ったときには、専門職や子育ての先輩たちに相談してください。

ひとりひとりのいのちが、奇跡的な出会いと愛によって大切に受け継がれていくことを心から願っています。

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この冊子は平成25年度日本教育公務員弘済会本部奨励金の助成を受けて作成しました。また、いのちの応援舎ぼっこ助産院(高松市)助産師、眞鍋由紀子氏に助言を受けました。

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思春期になる前の男の子をもつ親御さんへ いのちと性を家庭で伝えるための助産師からのメッセージ

平成27年3月31日発行

《制作・著作》 [札幌市立大学]   多賀昌江(現、北海道文教大学)   石田勝也   須之内元洋 [北海道助産師会]   安藤由美子 [Officeアイカレッジ北海道]   高橋慶子

《挿絵・冊子デザイン》 [札幌市立大学]  佐藤みずき

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