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国立研究開発法人科学技術振興機構 グローバルサイエンスキャンパス 未来を創る科学技術人材育成プログラム ~筑波大学GFEST(Global Future Expert in Science & Technology)~ 平成 28 年度業務成果報告書 国立大学法人筑波大学

未来を創る科学技術人材育成プログラム ~筑波大学GFEST ......務(未来を創る科学技術人材育成プログラム~筑波大学GFEST(Global Future Expert

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Page 1: 未来を創る科学技術人材育成プログラム ~筑波大学GFEST ......務(未来を創る科学技術人材育成プログラム~筑波大学GFEST(Global Future Expert

国立研究開発法人科学技術振興機構 グローバルサイエンスキャンパス

未来を創る科学技術人材育成プログラム ~筑波大学GFEST(Global Future Expert in Science &

Technology)~

平成 28 年度業務成果報告書

国立大学法人筑波大学

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本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構との実施協定に基づき、国立大

学法人筑波大学が実施した平成28年度グローバルサイエンスキャンパス実施業

務(未来を創る科学技術人材育成プログラム~筑波大学GFEST(Global Future

Expert in Science & Technology)~)の成果を取りまとめたものです。

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目次

Ⅰ. 事業の目的と取組概要 - - - 1

Ⅱ. 平成 28 年度の受講生育成目的について - - - 3

Ⅲ. 平成 28 年度の業務実施状況 - - - 5

Ⅳ. 平成 28 年度の募集・選抜について - - - 1 1

Ⅴ. 受講生の活動成果 - - - 1 2

Ⅵ. 受講生の声 - - - 1 3

VII. 平成 28 年度以降の展望と課題 - - - 1 7

参考資料

全国受講生発表会受講生研究発表要旨

GFEST ニュースレター

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Ⅰ. 事業の目的と取組概要

【目的】

平成 20 年度より 3 年間にわたって筑波大学で行われた「未来の科学者養成講座・BS リー

グ~めざそう未来の生物学者!~」およびその後継プログラムとして行われた「SS リーグ~

めざそう未来の科学者~」は、確実に成果をあげ、全国レベルの科学研究コンテスト等で多

くの受賞者を輩出してきた。

このような実績をもとに、筑波大学は、茨城県教育庁、つくば市教育委員会、筑波研究学

園都市交流協議会とともに、選ばれた意欲ある高校生を対象として、傑出した次世代の科学

技術人材の育成を行う「筑波大学 GFEST」を全学体制で遂行することとした。

【取組概要】

■スーパーサイエンスコース(SS コース)

・ 真に熱意があり、自主的探求能力と科学的思考力を持ち、高度で挑戦的な問題解決をめ

ざす「グローバルな未来の科学者」の育成を目標とする。そのため、すでに研究を行っ

ている生徒を対象とし、その研究実績によって、一次選抜を行う。

・ 生徒各自の研究テーマに即した筑波大学の教員および大学院生を専属で配置する。主に

メーリングリストにより個別研究支援を行う。

・ 夏には SS リーグ生のみでの実習を行い、中間発表会を開催する。

・ SS3⇒SS2⇒SS1 と昇格していくリーグ制とする。

・ SS1 生については、国際学術専門誌への投稿を強く推奨する。さらに SS1 では、それぞ

れの研究テーマに関係する国際学会へ、チューター教員やティーチングアシスタント

(TA)とともに参加することを推奨する。

■科学トップリーダーコース(TL コース)

・ 特定科学分野への傑出した理解と興味をもち、その分野における幅広い知識やスキルの

習得をし、将来的にその力を活かして、グローバルな視野を持って、様々な分野で活躍

して行くリーダーの育成を目標とする。

・ 物理、化学、生物、地学・地理、数学、情報、工学の 7 分野に分けて、募集を行うが、

重複しての受講も可とする。科学オリンピック予選等において、上位 50%以内の成績

をおさめている生徒を対象とし、全国公募する。

・ 選抜は予選受験時の成績もしくはマークシート式筆記試験のいずれかにより行う。

・ 物理、化学、生物、地学・地理、数学、情報、工学の 7 分野のコースごとに専門の教員

が大学にて過去に科学オリンピック国内本選や World Robot Olympiad Japan で出題さ

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れた実験課題を課した後に、解説講義を行う。また理論課題の解説等も行う。

・ さらに、各分野で大学の研究者等が各分野の最近の進展や最新の研究成果を解説する

「特別セミナー」を行い、自主的探究を含めたレポート等の課題を課すとともに、個々

の生徒が主体的に学習・探究を進めるための指導と個別相談を実施する。

■2 コース共通プログラム

グローバルな視野を持つ科学技術人材には、英語力のみならず、論理的に考える力、わか

りやすく伝えるスキル等も必要である。そのため「グローバルな視野を持つための基礎」を

構築することを目的とし、筑波大学において講義・実習を 2 ヶ月に一回開催する。(一回当

たり 75 分×3 コマ予定)

英語教育

プログラミング講義&実習

アカデミックコミュニケーション

サイエンス・プレゼンテーション

サイエンスツアー

最先端科学講義

倫理・生命倫理講義

安全・衛生管理講義

研究室インターンシップ

■海外派遣プログラム

マレーシア日本国際工科院と筑波大学と

の非常に緊密な連携関係を活かして、

2017 年 3 月 19 日から 23 日まで、4 グ

ループに分かれて研究室体験を行った。

GFEST の SS コース生 6 名、TL コース生

6 名と筑波大学大学院生 2 名、および教

職員 3 名の計 17 名が参加した。

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Ⅱ. 平成 28 年度の受講生育成目的について

【SS コース】

■SS3 生の育成

書類選抜された 9 名(SS3 生)に対して、筑波大学教員 1 名をチューター教員として、ま

た大学院生 1 名をティーチング・アシスタントとして配属し、1 対 2 できめ細やかな研究支

援を行うことで、それぞれの科学者としての能力を伸ばししつつ、彼らの科学者としての適

正を見極める。SS3 では「発想力、科学的な考察力、行動力」を育成することを目的とする。

■SS2 生の育成

一年間のサポート後、SS3 生は「つくば科学研究コンテスト」でのポスター発表を課し、

約半数を SS2 生に昇格させる。SS2 においては「プログラムに参加することで得られる高度

な知識や技術を活用し、個別研究の内容をさらに発展させる力」を育成することを目的とす

る。

■SS1 生の育成

一年間のサポート後、SS2 生に口頭発表させ、SS1 生として数名を選抜する。SS1 では個別

研究の成果を論文にまとめ、論文誌への投稿を推奨する。これにより、科学者にとって必須

である成果を論文としてまとめる力を養うとともに、査読を含む論文出版までの一連のプロ

セスを体験させる。またプロの研究者が集う場を舞台にして受講生自身の研究成果を発表さ

せることで、研究について議論する場を提供するとともに、受講生が研究者と交流する機会

を与える。更に研究をまとめる力、コミュニケーション能力の育成も兼ねる。

【TL コース】

・ 物理、化学、生物、地学・地理、数学、情報、工学の 7 分野のコースごとに専門の教員

が大学にて過去に科学オリンピック国内本選や World Robot Olympiad Japan で出題された

実験課題を課した後に、解説講義を行う。また理論課題の解説等も行う。

・ 生物コースでは国際生物学オリンピックの公式教科書となっている「キャンベル生物学」

を使って大学レベルの生物学についても解説する等、高校レベルを超えた講義を行う。

・ このコースの特に優れた生徒については、海外派遣プログラムへの応募を薦める。海外

派遣プログラムでは、トップ層の高校生の教育に定評のある海外教育機関と連携を図る。

【2 コース共通プログラム】

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グローバルな視野を持つ科学技術人材には、英語力のみならず、論理的に考える力、わか

りやすく伝えるスキル等も必要である。そのため「グローバルな視野を持つための基礎」を

構築することを目的とし、筑波大学において講義・実習を 2 ヶ月に一回開催する。

英語教育:

筑波大学英語教育学の教員と共同でカリキュラムを作成。 筑波大学で学生の英語教育の

ために利用している e-learnig も取り入れる。受講生の e-learning の利用状況や英語のレベ

ル等は、コーディネータが把握する。また、英語コミュニケーションの専門家による実習や、

英語で双方向のコミュニケーションを行うインタラクティブフォーラムといった活動をと

りいれ、世界中の人たちと意思疎通を図るスキルを高める。

アカデミックコミュニケーション:

英語でコミュニケーションを行えるようになるためには、英語圏での思考法や説明の仕

方を学ぶ必要があるため、添削も含めた個別対応型のアカデミックコミュニケーション実

習を行う。

サイエンス・プレゼンテーション:

筑波大学芸術専門学群の教員や、生命環境系サイエンスコミュニケーション担当の外国人

教員等から、プレゼンテーションのデザインやサイエンスコミュニケーションについて学ぶ。

サイエンスツアー:

連携大学院を中心としたつくば市内の研究所に行き、外国人研究者等と話をする。様々な

分野の研究者と直接、話をすることにより、多角的な視野をもち、理系への進路意識を醸成

する。

最先端科学講義:

主に筑波大学の教員により最先端の科学についての講義を行う。「なぜ研究者になったか」

などの進路選択の話も盛り込むことで、研究者への道筋を複数、提示する。

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Ⅲ.平成 28 年度の業務実施状況

【SS コース】

■メーリングリストによる研究サポート

・ 継続者については、チューター教員、ティーチング・アシスタントによる研究サポートを

行った。

・ 新規生については、10 月中に研究内容に合わせてチューター教員とティーチング・アシ

スタントを配置した。

■フィールド実習

8 月 2 日から 5 日までの 3 泊 4 日で筑波大学菅平高原実験センターにおいて SS コースお

よび TL 生物分野受講生の実習を行った。参加者は中 1 から高 2 までの 9 名であった。

■グローバルサイエンスキャンパス全国受講生発表会

9 月 18、19 日に開催された全国受講生発表会において、下記 5 名が発表し、全員優秀

賞を受賞した。

落合一翔「ナガコガネグモの嗅覚や味覚を探る」

大輪奏太郎「植物ホルモンのジベレリンとオーキシンが花粉管に与える影響」

高瀬由杏「擬似微小重力環境下におけるトマトの成長」

内山 龍人「セミの羽化殻の集合現象について

-フェロモンのような誘引物質の存在を検証する-」

田渕宏太朗「ファンプロペラの効率アップー風を変えるシンプルな表面加工ー」

【TL コース】

分野別特別実習

それぞれの分野の教員が、科学技術オリンピックの過去問等を行うと同時に、最先端の研

究の話などを行った。筑波大学で開催するものはそれぞれの研究室見学も含む。

【工学】

12 月 26 日に筑波大学で開催。

・ 各自が製作しているロボットについて教員とテ

ィーチング・アシスタントが個別にチェックとアド

バイスを実施。

【数学】

12 月 18 日に筑波大学で開催。

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午前中は、お互いの自己紹介をした後、実習に入っ

た。まず、事前課題で出されていた問題の解答を参加

者に板書してもらい、解答の検討を行った。修正箇所

などの検討は先生が行い、補足説明等があった。さら

に話を広げて、実際の数学オリンピックで使える技法

や知識の確認も行った。

午前中の実習が終わってからは 50 分程度の昼食休

憩となった。休憩後は、数学オリンピックの模擬問題

を 1 時間の実戦形式で参加者に解いてもらった。その後、先生による解説が行われた。

【化学】

12 月 23 日に筑波大学で開催。

サリチル酸を原料として解熱剤・鎮痛剤の主成分として

用いられているアセチルサリチル酸の合成実験を行った。

まず、本合成実験で用いるエステル化反応について講義

を行い、今回の実験で考察すべきポイントを説明した。

その後、実際に 1 人ずつ合成実験を行った。ブフナー漏

斗を用いた吸引濾過、再結晶、薄層クロマトグラフィー

など、やや高校の内容を超えた技術を体得してもらった。さらに、機器分析にも慣れてもら

うために、核磁気共鳴装置を用いて各自の生成物の純度を調べてもらった。最後に各自で実

験の考察をし、生成物の収率の算出や薄層クロマトグラフィーの結果の説明をしてもらった。

【情報】

12 月 25 日に筑波大学で開催

参加の学生の目的は日本情報オリンピック(JOI)の成績をあげるこ

とであったため、まず学生の能力を試すため 3 時間のプログラミン

グコンテストを実施した。TA と担当教員がコンテストを解いている

受講生を観察し、強いところと改良できるところを明確化した。そ

の後、コンテスト問題の解説し、改善するためのアドバイスを行っ

た。

【物理】

12 月 25 日に筑波大学で開催。

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午前中は「磁石の物性とその原理」についてプロジェクターと黒板を用いてゼミ形式で

講義を行った。なぜ磁石が磁力を持つかに関して、磁石の基本物性(結晶構造やスピン

配列)の解説、その背景にある物理学的な原理の説明に関しては、統計力学の基本的な

ことから、イジングモデルのモンテカルロシミュレーションについて原理及び計算結果

を解説した。

午後は、「ガイガーミュラー計数管による放射線の測定」に関する実験実習を行った。

テキストを使って計数管の動作原理を勉強した後、各自、計数管を使ってプラトー曲線

の測定、バックグラウンド測定を行った。次に、計数率の度数分布を多数回測定し、度

数分布が正規分布になることを確認した。

【地学・地理】

12 月 23 日に鬼怒川(筑西市・常総市)への巡検を行った。常総洪水災害地域や鬼怒川河川敷

での河川地形、河床礫などの観察をしたのち、鬼怒川の発達史などを開設した。その後下妻

市に移動し、上流と河床の違いを観察した。常総市に移動後は、周辺地形の特徴や、洪水に

よって作られる地形などの説明を行った。

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【研究室体験について】

TL コースはそれぞれの分野ごとに「研究体験」として筑波大学の研究室に配属され、実験

等を行った。

日にち 時間 内容

7 月 25 日(月) 13:00* 集合*

13:00-17:30 実習

18:00-19:30 夕食

19:39- ホテルへ移動

<到着後は自由行動>

7 月 26 日(火) 06:30~08:00 朝食

08:10- 大学へ移動

09:00-18:00 実習・発表資料作成

18:15-19:00 夕食

19:30- ホテルへ移動

<到着後は自由行動>

7 月 27 日(水) 06:30~09:00 朝食、チェックアウト

09:00 大学へ移動

09:30-11:00 プレゼンテーション(一人 10 分)

11:00-11:30 クロージング

11:30-13:00 交流会(軽食)

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【共通プログラム】

2015 年度受講生

<第 5 回>2016 年 5 月 15 日(日) 筑波大学総合研究棟 A

講義「ビジュアルデザインのルールを活用しよう!」(芸術専攻 田中佐代子先生)

海外研修発表

最先端科学講義「形態学入門:化石の『形』を考える」(地球学類 上松佐知子先生)

交流会

<第 6 回>2016 年 7 月 3 日(日) 筑波大学情報メディアユニオン

昇格審査

最先端科学講義「知覚の拡張」善甫啓一先生(システム情報系)

交流会

2016 年度受講生

<第 1 回>2016 年 9 月 25 日(日) 筑波大学情報メディアユニオン

オープニング&OB による GFEST 説明

「科学的とは何か」

(筑波大学教育イニシアティブ機構教授 野村港二先生)

最先端科学講義「クスリから知る体、見て知る体」

(筑波大学医学医療系講師 三輪佳宏先生)

英語プログラム説明

交流会

<第 2 回>2016 年 11 月 20 日(日) 筑波大学情報メディアユニオン

講義「ビジュアルデザインのルールを活用しよう!」

(芸術専攻 田中佐代子先生)

ライティング講義(人文社会系 島田康行先生)

最先端科学講義(生命環境系 丹羽隆介先生)

交流会(自由参加)

<第 3 回(冬の実習)>2017 年 1 月 8(日)- 9 日(月・祝) 筑波大学

1 月 8 日(日) 筑波大学 3A 棟 209 / 筑波研修センター

筑波大学の学生が中心となって人工衛星の開発をしている「筑波大学『結』プロジェク

ト」メンバーによる実習。

電波についての講義の後、人工衛星からの電波受信

サイエンスカフェ GFEST OB2 名

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1 月 9 日(月・祝) 筑波大学 3A 棟 209

実習:太陽電池についての説明のあと、それぞれのグループごとに太陽電池の効率に

ついての実験

昼食&交流会(自由参加)

<第 4 回>2017 年 3 月 5 日(日) 筑波大学総合研究棟 A110 / 2B 棟 403

講義「異文化コミュニケーション」

(筑波大学グローバルコミュニケーション教育センター

助教 鈴木華子先生)

修了生研究発表

生物実習「二枚貝の解剖」

(筑波大学生命環境系 講師 八畑謙介先生)

交流会

■白川英樹名誉教授特別化学実習

一昨年度、昨年度に引き続き 10 月 30 日(日)

にノーベル化学賞受賞者の白川英樹筑波大学名誉

教授による化学実習を開催した。白川先生にご講演

いただいたあと、導電性高分子を使った二次電池の

作製を行った。白川先生自らご指導いただき、直接

話す機会をもてたことは、受講生にとって非常によ

い刺激となったようである。

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Ⅳ. 平成 28 年度の募集・選抜について

■募集方法

・ 筑波大学および筑波大学GFESTのウェブサイトで 募集を行った。

・ 6月に東京都、千葉県、埼玉県、栃木県および茨城県のSSH校にチラシを郵送した。

・ 筑波大学附属駒場中学校の生徒が筑波大学訪問時に、GFESTの説明を行った。

■選抜方法

・ 応募者の選抜においては、「理数分野に関して意欲・能力共にトップ層の児童生徒」の養

成という本事業の目的から、単に「科学に興味がある」に留まる公募でなく、実践的に研

究を行うポテンシャルがあるかどうかを重要視し、SS コースでは「各種の科学コンテスト

に参加、入賞、独自の、あるいは部活・クラブ・外部団体での優れた研究実績があること」

を、TL コースでは「科学技術オリンピック国内予選でおおむね 50%以上の成績を収めて

いること」を応募条件とした。

・ 申請書、自己推薦書、研究実績に関する資料の 3 点を提出を義務付け、複数名の大学教員

により厳正な審査を行った。この結果、48 名の受講生が選抜された。

■課題

平成 28 年度は、SS コース、TL コースの基準に達する生徒が定員に満たなかった。しか

しながら、選抜にもれた生徒も科学に強い興味を持つ生徒たちであるので、「チャレンジ

コース生」として受け入れ、自己財源で支援を行うこととした。チャレンジコース生は次

年度 SS コース、TL コースへの移行を目指す。

茨城県内の高校生からの応募が昨年に引き続き少なかった。これは、これまでの GFEST

受講生の実績が高いため、高校教員および生徒が応募を躊躇していることが主な原因であ

る。そのため、「科学に興味はあるが、高い実績がない」という生徒もチャレンジコース

生として受け入れることとした。SS コース生や TL コース生と触れ合う中で、自主研究や

科学オリンピックに挑戦していくようになることを想定している。

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Ⅴ.受講生の活動成果

SS1 生の田渕宏太朗さん、内山龍人さんが高校生科学技術チャレンジ最終審査に選出さ

れ、田渕さんが花王賞、内山さんが審査員奨励賞を受賞した。田渕さんは ISEF2017 へ

の派遣が決定した。

Interdisciplinary Workshop on Science and Patents 2016 高校生口頭発表の部で受講生

5 名が英語で発表した。

成果一覧(全国レベルのみ掲載)

【SS コース生】

日本学生科学賞は中央審査に進んだ生徒は 2 名。うち 1 名は環境大臣賞を受賞

高校生科学技術チャレンジ 最終審査進出 2 名。1 名が ISEF2017 日本代表。

科学の芽賞 1 名

【TL コース生】

情報オリンピック本選出場 2 名

地学オリンピック本選出場 2 名

地理オリンピック本選 1 名

日本生物学オリンピック本選 2 名

化学グランプリ 2 名

物理チャレンジ 2 名

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Ⅵ.修了生の声

"科学が好きな同年代の友人や、自分と同じように自主的に研究を行っているたくさんの仲

間に出会うことができました。それらの仲間や、GFEST の共通プログラムなどで講義をし

てくださる先生型から受ける刺激は、自分を成長させてくれたと感じています。

昇格審査前や、科学コンテストの直前などは、何度もポスターを直したり、発表の練習を

したりと大変でしたが、とてもよい経験になりました。

GFEST で活動することで、レポートの書き方や、見やすいポスターの作成も仕方などを

学ぶことができたので、とてもよかったです。"

"専門の先生が研究を指導してくださるのは非常に勉強になった。どのように研究を進めて

いくと面白くなるかを学べた。また、プレゼンの仕方がだんだん分かってきて、研究に限ら

ず人に自分の意見をプレゼンするのが楽しいと感じられるようになった。多くのご指導のお

かげで ISEF に出場し入賞することができ、ISEF を通して NSS に入会できた。NSS では刺激

的な出会いが多く、貴重な経験がたくさん出来ている。先日は ISEF の現地プレスとして派

遣していただき、2 度目の ISEF に行くことができ、素晴らしい経験となった。GFEST での

経験が今につながっており、大変感謝しています。ありがとうございました。"

"良かったことは様々な先生の話を聞くことができたことや他の同年代の人達がどのような

研究を行っているのか知る機会を得られたことです"

"英語のコミュニケーションプログラムは個人的に一番役に立ちました。毎週ネイティブの

方と話せる機会があったので、自分の英語力向上のために大きく貢献したと思います。ただ

時間が決められていて、予定を合わせなければいけなかったのは少し大変でした。"

"レポートや英語学習など、課題は大変でしたが、教科書の枠を超えた講義を聞くことは貴

重な経験でした。全国の頑張っている人達に会えるので、自分の視野を広げることができた

と思います。

また、GFEST に参加する度にまだまだ私の上がいる、他の受講生に負けないように頑張ろ

うと思えるので、良い刺激を貰えました。"

"良かったこと:私が個人でやっていた研究を一流の先生に指導していただけた

こと。最先端の科学技術を講義などで学べたこと。"

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"様々な分野において優秀な多くの人と出会えたことがとてもよかったと感じています。

大変だったのは、受験勉強との兼ね合いが少し大変でした。"

"<よかったこと>色々な分野の最先端の面白い話を聞けたこと。海外派遣で海外の研究室の

雰囲気を知ったら英語力の確認をしたりできたこと。筑波大学の教授に物理や数学の発展的

な内容を教わったこと。<大変だったこと>レポートを全て提出すること。"

"大学での様々な分野の研究に関する講義、体験や、専門家と直接話す機会、海外研修等が

あり、他では体験できない豪華な体験ができたことが、よかった。

特に負担になったことはないが、一緒に受講している人の科学に対する意欲の高さや知識の

豊富さに気後れすることはあった。"

"研究者という今まで知らなかった世界を見、またそういった世界に身を投じている高校生

たちと交流できたこと。"

"講義を受け、最先端の技術などのお話を聴くことができ、また、実習など実物に触れて学

べる機会も多くとても勉強になりました。特に海外研修では、英語を使うことはもちろん、

現地の大学の研究室で実験をして、グループで発表したり、様々なことを体験できて、とて

も良い経験になりました。大変だったことは、講義や実習の後のレポートが、最初はどう書

けばいいのかよく分からなくて苦労しましたが、GFEST では講義がたくさんあったので、

書く機会も多く、その分力がついたと思います。"

"高校生の間に大学の先生興味深いお話を聞く機会が増えたこと。

"・レポートを書く良い訓練になったこと

・普段入れないような施設で実験できたこと

・第一線で活躍されている先生方のお話を聞けた"

"導電性高分子(ポリピロール)の合成、人工衛星の運用、マレーシアの MJIIT といった通常

では経験できないことを経験できたこと。そして、いろいろな分野の先生方の話が聞けたこ

とが良かったです。大変だったことは、レポートを書くことでしたね。"

"まずはじめに、GFEST でたくさんの科学好きな仲間と出会えたことにとても良かったと思

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い、また感謝しています。一部の人とは今でもたまに SNS で連絡をとっています。そして

様々な分野を専門とする仲間たちに強い刺激を受けました。新たな視点や研究に対する熱意

など、、、。大変だったのは、ハイレベルな講義や実習についていくことでした。しかし頑張

って理解して分かった時の喜びや新たな知識を得られる講義が毎回楽しみでした。

"

skype での英語の授業がためになりました。また、定期的にある大学の先生による講義も良

かったです。"

"英語のサポートや海外研修などの機会があった。教授に直接質問したり、少人数で授業を

聞けたりした"

"大学の設備や教授の先生方のお話を聞いたことで、大学での学びに対する具体的なイメー

ジを持てました。GFEST の他の参加者に聞いたことをきっかけに言語学オリンピックに挑

戦し、日本代表になれました。"

"自分が底辺であるという環境で勉強したり、研究することで、めげない力や諦めない力、

競争心が高まった。"

"よかったこと:

普通の高校生活では絶対に交流できないような大学の先生や大学生の方に直接質問でき、ア

ドバイスをもらえたこと。また、たくさんの学校から集まったレベルの高い受講生達に刺激

をもらえたこと。

大変だったこと:

一時間の講演を聞き、まとめてレポートを書いたこと。初めての経験だったので難しかった

けれど、何回もするうちにコツや要点がわかってきた。

"大学生になる前に大学の環境や最先端の科学、そして最先端の学生に触れることを通して

人間として一回り成長できたことは大変素晴らしい経験でしたが、その一方で共通プログラ

ムと学校の行事が重なるなどした際にはもどかしい思いをすることもありました。"

"刺激的な出会い目から鱗の体験"

"何をしたかは今となっては、はっきりとは覚えていないが、講習やほかの人の研究を見た

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りしたことで、科学の世界が、より好きになったことがよかった。プレゼンをすることが、

とても大変だった。けれど、それから学べたこともいろいろあるので、今思うと、とても良

い経験となった。"

"海外に行けたこと。上には上がいると気づき、謙虚に努力できるようになったこと。

文章を書くのがうまくなったこと。学校や部活との両立がきつい時期もあった。"

"GFEST を受講して、中学生や高校生では普段体験することができないような経験をするこ

とができ、自分の興味・関心を高め、物事に対する視点が変わった。また、GFEST を通し

て、全国の科学好きな人と関わっていく中で、学校では話題になりにくいサイエンスの問題

などについて深く語り合うことができたり、他人の発表をきいて自分が刺激を受けたりする

など、自分の研究について深く考える良い機会になった。"

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17

VII.平成 29 年度以降の展望と課題

筑波大学 GFEST では、理工学群と生命環境学群をはじめとし、芸術専門学群等の教員の協

力により、非常に質の高いプログラムを提供できていると自負している。筑波大学 GFEST の

SS コース生にとっては、SS1 生となって ISEF に行くことが目的となっており、平成 27 年度

に引き続き、平成 28 年度も高校生科学技術チャレンジ最終審査出場者 30 組のうち 2 名(2

組)が GFEST 受講生であった。また、グローバルサイエンスキャンパス全国受講生発表会に

おいても、毎年、発表者全員が優秀賞を受賞していることからも、GFEST 受講生のレベルの

高さがうかがえる。

科学トップリーダーコースにおいても、科学技術オリンピックの国内本選に多数の受講生

が出場する等、トップ人材の確保・育成には成功していると考える。

修了生の声からは、このようなトップ層の高校生たちが筑波大学 GFEST に満足していたこ

とがわかる。

GFEST は意欲が高い生徒に対して、きめ細やかな個別支援を含む質の高いプログラムを提

供することで、高い実績を上げている。しかしながら、科学に意欲のある生徒は「受験のた

めに勉強に力を入れたい」という場合も多く、GFEST のプログラムが負担になるようだ。

次年度はグローバルサイエンスキャンパスの最終年度となるため、これまでの経験を踏ま

えてより質の高いプログラムの提供を行っていきたい。

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参考資料

SS コース生 研究発表要旨

ニュースレター

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花粉の発芽・伸長に対するジベレリンとオーキシンの作用 筑波大学附属駒場高等学校

大輪 奏太朗(高 1) チューター教員佐藤 忍先生

目的 花粉はめしべにつくと受精するために花

粉管と呼ばれる管を伸ばす。本実験で、細胞

の生長に関わるホルモンであるジベレリ

ン・オーキシンと花粉の発芽・花粉管伸長の

関係を調べた。 方法 それぞれの実験には寒天培地(スクロ

ース濃度約 10%)を用いた。 実験 1, 2 ジベレリンおよびオーキシンの効

果(ヤブツバキの花粉を用いた) 寒天培地にジベレリン(GA)またはオーキ

シン(2,4-D)を加えた。培地に撒いて 90~95 分後に発芽率を、24 時間後に花粉管の長

さを測定した。 実験 3 濃度比の効果(アフリカホウセンカ

の花粉を用いた) 濃度の異なるオーキシンとジベレリンを

組み合わせて与えた。オーキシンの溶媒はエ

タノールであるためオーキシンを加えてい

ない対照区では 30μℓエタノールを加えた。 培地に花粉を撒いて 40~45 分後に発芽率

を、20 時間後に長さを測定した。 結果 実験 1 ジベレリンの効果 濃度 (ppm) 0 5 20 100

発芽率 (%) 62.1 39.0 61.0 38.7

長さ(μm) 1000 1000 1000 90

実験 2 オーキシンの効果 濃度 (ppm) 0 1 10 100

発芽率 (%) 39.8 65.6 57.4 16.9

長さ(μm) 40 3053 3067 20 以下

加えたジベレリン:発芽率に関しては、低

濃度、高濃度で抑制し、20ppm であればほ

とんど抑制は起こらなかった。花粉管伸長は

高濃度で抑制された。 加えたオーキシン:低濃度では発芽を促進、

高濃度では抑制した。この実験で用いた花粉

は花粉管伸長が悪かったが、高濃度以外では

伸長が顕著に促進された。 実験 3 オーキシン・ジベレリンの濃度比の効果

高濃度のジベレリンのみ与えた場合では、

発芽率や花粉管の長さは通常条件と大きな

差はなかったが、高濃度のジベレリンと低濃

度のオーキシンを同時に与えた場合は抑制

がみられた。 考察 以上より、花粉に含まれている(人為的に

与えたものも含む)内生オーキシンの量によ

って、ジベレリンの影響の出方も変わると考

えられる。同じ種類でも、花によってジベレ

リンやオーキシンの濃度と花粉の発芽、伸長

の関係が違うのはこのためかもしれない。

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化学的防除に頼らない牛にやさしい防除方法の確立

北海道帯広農業高等学校 廣瀬華織(3年) チューター教員上原拓也先生

◆本研究の動機

サシバエ・ノサシバエはハエ目イエバエ科サシバエ属に属する吸血性昆虫で、主に乳肉牛などの家畜に寄生 ・吸血し、ストレスによる免疫力低下や乳質、乳量の低下、刺し傷による化膿を引き起こし、サルモネラなどをはじめとする感染症を媒介するため、対策が急務である。

本研究では、サシバエ防除において、人体 ・牛への健康被害、ハエの薬剤抵抗性発達、生態系への影響が懸念される化学農薬からの脱却を目指し、薬剤耐性を獲得しにくいと考えられる自然由来の成分を使用した防除方法を確立する。また,アニマルウェルフェアの観点から,牛へのストレスが少ない成分としてエッセンシャルオイルに着目した。ハエによる牛へのストレスをエッセンシャルオイルによる防虫効果とアロマテラピーの両面から減少させることが本研究の目標である。 ◆材料及び方法 下記実験は全て、北海道帯広市帯広農業高校の敷地内で行う。サシバエは野外発生個体を用いる。また、2~3産の牛は、高校で飼育しているものを用いる。 実験 1:エッセンシャルオイル(全 13 種)をしみこませた吸い取り紙を粘着板に設置し、ピックテールピンにぶら下げた粘着トラップを作成する。ピンの間隔は 50 cm ずつ離す。トラップに引っかかった飛来昆虫数をオイルごとに計測、評価する。ここで飛来数の少ないオイルを、以降の実験で使用する。 実験 2 :牛を6頭用意し、実験 1 で選抜したエッセンシャルオイルを水で希釈したものを手

動噴霧器で塗布し、牛体サンプルの体表面に寄生した飛来昆虫の数を記録、オイルの忌避性を評価する。 実験 3 :牛のストレスを、尾の振り払い行動や唾液アミラーゼ濃度に着目し定量化する。尾の振り払い行動は歩数計を尾に取り付けることで計測する。また唾液中のアミラーゼは、市販のアミラーゼモニターで濃度を計測し、ストレスを評価する。 ◆予想される結果 実験 1 :実験に使用するエッセンシャルオイルは、他の吸血性昆虫に対して忌避性が報告されているものを選択しているため、サシバエ属でも同様の効果が得られると予想される。 実験 2 :エッセンシャルオイルの忌避性によって、オイル施肥した牛群の方が飛来昆虫個体数が少ないと予想される。 実験 3 :エッセンシャルオイルによる防虫効果とアロマテラピー効果により、ストレスの値が少ないと考えられる。 ◆研究の意義 化学薬剤以外での防除方法は、酪農の現場に浸透していないが、簡単で実践しやすい化学薬剤に頼らない防除が確立できれば、コスト削減、牛や環境、人にとって安全で持続可能であり、新たな防除法として普及させることができる。 消費者目線では、エッセンシャルオイルを使用し飼育された牛の牛乳の方がイメージが良く、購買意欲をそそるものと考える。つまり、牛乳に新たな価値を付加でき、酪農家への支援になることが期待される。

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相補フィルタを用いたジャイロセンサの補正 筑波大学附属駒場高等学校

川村 慧(1年) チューター教員須山先生

はじめに

身近な移動ツールとして、セグウェイと呼ばれる一軸二輪の乗り物の製作に取り掛かった。しかし、その姿勢を正確に検知することは難しく、以下の様な手順でそれを改善させていった。

過程

1. ジャイロセンサを用い、積算したうえで、一定時間内の変化量が一定水準以下の場合にその数値をリセットした。 →ゆっくりとした動きに反応することができなかった。

2. 距離センサを導入し、セグウェイ前面に下向きに取り付けた。これによって床との距離を測定し、誤差を補正した。 →周囲の明るさなどの条件によってセンサの値に大きな誤差が生じてしまい、実装することができなかった。

3. ジャイロセンサと加速度センサを組み合わせ、変化量の割合を調整しながら値を合成した。 →変化成分を統一していなかったために、大きな誤差が生じてしまった。

4. ジャイロセンサと加速度センサを組み合わせ、相補フィルタを実装した。 →水平方向に移動しても、正しい値が得られるようになった。

おわりに

相補フィルタの実装により、センサから正確な角度を求めることが出来るようになった。これを

実際にセグウェイに実装し、大きなモーターを動かすとなると、筐体の面で様々な問題が出てく

ると考えられるが、早急に実装していきたいと思う。

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4 4.においてのセンサの出力値

センサの出力値

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表1 成長の速さ比較

環境1G(平均)

5段目の葉が現れるまで

花が咲くまで

初めて実が生るまで

10個の実を収穫するまで

μG5段目の葉が現れるまで

花が咲くまで

初めて実が生るまで

10個の実を収穫するまで 136

100 125 150

52

63

94

46

66

71

日数 25 50

27

75

10.1

15.522.5

0

表2 収穫時の測定値

μG 1G μG

126

8311

1.45

0.7913.1

μG 1G μG 1G μG 1G

高さ(mm) 実の数/本(個) 実の重さ(g) 実の直径(mm) 種の数/個(個)

1G

擬似微小重力環境下におけるトマトの成長 國學院高等学校

高瀨 由杏(2 学年) チューター教員 横谷(富田)先生

1.背景および目的 2011年 11月、富山大学の神阪盛一郎が代表研究

者を務めた「微小重力環境における高等植物の生活

環(Space Seed)」において、シロイヌナズナが宇

宙の微小重力環境下で、正常な生活環(種子の発芽

から結実採種まで)を完了することが分かった。し

かし現在、果実を作る植物で生活環が完了するかど

うか分かっていない。本研究は、矮性のトマト種を

使い、微小重力環境下で生活環を成立させるために、

成長過程でどのような変化が起きるのかを、まず検

証した。 2.材料および方法 ・生物材料:筑波大学遺伝子

実験センターより提供を受

けたマイクロトム種を本実

験に用いた。 ・育成環境:温度25~28度 に保った温室(冬季;サー

モスタット付ヒーター使

用) ・光源:7:00~23:00の16時間、LEDライトを

用いた。 ・培地:固形土培地(元肥の固形肥料入) ・給水:50 mL/ 日 ・液肥:50 mL/ 週 ・3Dクリノスタット(自作):縦軸回転枠、横軸回

転枠、ターンテーブル 2 個(充電池使用、1.3 回

転/分)、LED ライト(ブレッドボードにLED 電

球 11 灯、充電池使用)、苗床プレート(固形培地を

設置)。 ・観察項目:植物の高さの測定。収穫時の実の重さ、

直径、個数、種の個数の計測および断面の観察。

成長過程の茎や葉の形態の観察。 3.結果および考察 トマトの成長の速さを比較した結果、μG 側のす

べての項目が抑制傾向を示した(図 2)。植物の成長

エネルギーは、葉で光合成が行われ、糖分として茎、

葉、実に送られる。水は根より根圧、毛細管現象、

凝集力、葉の蒸散などにより吸い上げられ全体にい

きわたる。微小重力環境下での茎(巻き込む様に曲

がる)や葉(面積の減少)の形態変化が認められた

ことから(図 3)、栄養分の吸い上げる力が弱まった

ことおよび、光合成による養分生産量の減少が原因

であると考えられる。図3、4に示すように、µGに

おいても実は収穫できたが、種子は出来なかった。

これは、実が十分に成長するまでは養分が行き渡ら

なかった為に実の成長が途中で止まったためだと考

えられる。

4.今後 第 2回目の実験以降では細胞レベルの観察や、栄

養成分の解析を加え、種が採取出来る環境条件の確

立を目指し、最終的には高等植物が微小重力でも生

活環(ライフサイクル)が成立する条件を探りたい。

また、本研究の過程で実の付き方の違いを見つけた。

それについても考察したい。

図 5 1 G と µGにおける実の付き方の違い A; 1 G(実が下向き),B; µG(実が上 or横向き)

図 3 実の切断面と葉の育ち方

図 1 実験装置

図 2 成長の速さの比較

図 4 収穫時の測定値

A B

1Gの実と茎の形態 μGの実と茎の形態

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エチレンがカイワレダイコンを辛くする!? ~エチレンがカイワレダイコンのアリルイソチオシアネート生成量に与える影響~

並木中等教育学校 4 年田中歩 チューター教員山田先生

【研究目的】

① エチレンがカイワレダイコンの辛味成分(アリルイソチオシアネート)の増減にどのような影響を与

えるかを明らかにする。

② エチレンの与え方を工夫して,カイワレダイコンの辛さをコントロールする栽培方法を研究する。

【研究の仮説】

① エチレンの濃度が高ければ高いほどアリルイソチオシアネートの生成量は増えるであろう。

② 市販のカイワレダイコンとエチレン処理をしたカイワレダイコンでは,エチレン処理をしたカイワ

レダイコンの方がアリルイソチオシアネートの生成量が,多いであろう。

【研究の方法】 本研究では比色定量法を用いて行った。

比色定量法(ダイコン用)

① カイワレダイコンを 8日間育てる。

② カイワレダイコンをすりつぶしてガーゼで搾り、搾汁液を得る。

③ 恒温槽で10分間温める。

④ 取り出した後,エタノール・アンモニア混合液4mlを搾汁液1mlに入れる。

⑤ 恒温槽で60分温める。

⑥ グロート試薬4mlを搾汁液1ml に入れる。

⑦ 恒温槽で40分温める。

⑧ 分光光度計で溶液を測定する。

実験1 カイワレダイコンを 20ppm のエチレンを与えて育てたものと,与えないで育てたものの2

つ 8 日間育てた。また,スーパーマーケットで購入したカイワレダイコン 2 種類とわさび,

アリルイソチオシアネート原液でも実験を行い,計6種類で実験を行った。方法は比色定量

法を用いて実験を行った。

実験 2 色をはかる際に,色が薄くなってしまう原因は比色定量法④のエタノールにあると考えた

ことから,エタノールの入れる量を減らして実験を行った。

今回は,エチレンを与えたカイワレダイコン,与えていないカイワレダイコン,わさび,ア

リルイソチオシアネート原液を用いて実験を行い,それぞれ今までの方法と,④の部分のエタ

ノール対アンモニアを 19対1で 2ml混ぜて実験を行うものの 2つにわけた。

実験 3 600nmにピークを出す実験を行った。

600nm にピークが出ないのは 700nm 付近にあるクロロフィルのピークによって隠されて

しまっているのが原因ではないかと考えた。それなので今回は,クロロフィルが多く入ってい

る葉とあまり入っていない茎に分けて実験を行った。

【結果】 実験 1 色がとても薄く,測定することが困難だった。

実験 2 色を実験 1 の時よりも濃く出すことができたが,600nm にピークが出なかった。

実験3 600nmにきれいにピークを出すことができた。

【考察】 結果より,ダイコン用の比色定量法をカイワレダイコンで行うには,エタノールの量を減ら

し,クロロフィルの少ない茎の部分のみを実験に用いることが必要であると考えられる。

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人工飼料育蚕と休眠性との関係 茨城県立竹園高等学校

市川 和人(2年) チューター教員 井戸川 直人先生 本研究では,カイコガに与える餌によって受精

卵の休眠のコントロール可能な方法を探るため,

カイコガの休眠の有無と餌の影響を明らかにする

ことを目的とした。

今までの研究で,桑葉育蚕の受精卵は休眠卵に

なりやすく,人工飼料育蚕の受精卵は非休眠卵に

なりやすいことが推測できた(図 1)。また,人工飼

料育蚕は非休眠性を誘引しやすいことが推測され

た(図 2)。

今回の研究では,大造(p50:純系),赤熟(p20:

純系)の2種類の受精卵を使用し,桑葉育蚕,人

工飼料育蚕,人工飼料+桑エキス(図3)育蚕3つ

に分けて受精卵の休眠性について観察した(図 4)。

研究の結果,次のことが推測できた。

(1)人工飼料育蚕の非休眠卵産下蛾の出現が多

い傾向は,他の品種(純系)でも同様であり,餌

と休眠の有無に関係性があるといえる(図 5)。

(2)人工飼料に桑エキスを加えることで休眠卵

になったことから,休眠卵を促進する成分は桑

の中にあり,その成分は水溶性である(図 6)。

しかし,継代のカイコガほどの明らかなデー

タはとれず,餌と休眠の有無に関係性があるこ

とや休眠卵になる成分は推測に終わっている段

階である。

よって今回,さらに休眠の有無に影響する成

分の特性を探っていくつもりだ。

桑からとった

水溶性抽出液

人工飼料+

桑エキス

図3 人工飼料+桑エキス

9

3

2

0% 50% 100%

人工飼料

桑エキス

図2 H25餌と休眠性の有無(番) 休眠卵 非休眠卵

16

7 30

0% 20% 40% 60% 80% 100%

人工飼料

図1 H24餌と休眠性の有無(番) 休眠卵 非休眠卵

非休眠卵, 4

0% 20% 40% 60% 80% 100%

P50 人工飼料

図5 大造(p50)の受精卵の内訳(番)

休眠卵,5

休眠

卵,60

休眠

卵,79

非休眠卵, 9

0% 20% 40% 60% 80% 100%

赤熟(p20) 桑

赤熟(p20)

人工飼料

赤熟(p20)

人工飼料+桑エキス

図6 赤熟(P20)の受精卵の内訳(番)休眠卵非休眠卵

図4 育蚕方法の変更スケジュール

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生物模倣で高効率の風車を作る(仮) 東京都立小石川中等教育学校

佐藤圭一郎(高校2年) チューター教員:中山先生 目的:生物模倣の風車を作り、日本大学生産工学部で行われる風力発電コンペである WINCOM に参加し、高い

発電量を得ることを目標とする。昨年制作したトンボの羽根型風車を参考に、凹凸の形状を持った新たに

風車のブレードを開発し、発電量を比較し、風洞装置でブレードごとの空気の流れを観察する。

左から、WINCOM での大会形式、風洞装置、作成した風車(左が密、右が粗)

実験方法: 発電機には WINCOM に参加する際に使用する自転車用ダイナモ(シマノ DH-2N30-J)を使い、

PP 板で風車のブレードを作り、風速 2~6m/s の風を 1m 刻みで変化させて風車に当て、発電量を計

測する。ブレードは 3 種類製作した。未加工のものと凹凸を付けたものを用意し、凹凸は粗(昆虫の

翅脈を模倣したものを付けた)、と密(等間隔に丸い突起を大量に付けた)の 2 種類とした。ブレー

ドの表面だけに建築用接着剤で加工した。今回の実験ではピッチ角は 35 度にした。 実験結果:グラフから、凹凸をつけたブレードの粗

いタイプが最も発電量が高かった。続いて、風洞実

験を行った。

上が凹凸の密のブレード、下が粗のブレード。

考察:凹凸の粗いタイプのブレードの発電量が最も高か

った。これは、ブレードの表面の空気の流れが、風洞実

験時の写真下のように乱流が発生し、剥離点を後退させ

たと考えられる。その結果風車が滑らかに動き、ブレー

ドの回転数を上げ、発電量の増加につながったと考えら

れる。また、発電効率のグラフから、凹凸の粗いブレー

ドは、昨年制作したトンボの羽根型のブレードよりも特

に低風速時に上回っていることが分かる。

45 1301100

2345 2337

180 4001290

2370 2360

200 4901390

2379 2390

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

発電

量(m

W)

風速( m/s )

風車の発電量比較 加工

せず

凹凸

(密

凹凸

(粗

2 3 4 5

0

2

4

6

8

10

2 3 4 5 6

発電

効率

(Cp)

風速(m/s)

風車の発電効率比較'14トンボ

'14平板

凹凸

(粗)

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