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指定発言: 「歯科臨床教育現場における診療ガイドラインの 活用と問題点」 ========================================= 指定発言者:窪木拓男 (日本歯科医学会収載部会委員, 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科教授) 指定発言者:和泉雄一 (日本歯科医学会常任理事, 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授) -41-

指定発言: 「歯科臨床教育現場における診療ガイドラインの ...岡山大学大学院医歯学総合研究科 インプラント再生補綴学分野 窪木拓男

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  • 指定発言:

    「歯科臨床教育現場における診療ガイドラインの

    活用と問題点」

    =========================================

    指定発言者:窪木拓男 (日本歯科医学会収載部会委員, 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科教授) 指定発言者:和泉雄一 (日本歯科医学会常任理事, 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授)

    -41-

  • 岡山大学大学院医歯学総合研究科

    インプラント再生補綴学分野

    窪木拓男

    歯科臨床教育現場における診療ガイドラインの活用と問題点

    指定発言

    日本歯科医学会 診療ガイドライン作成者意見交換会 2016/07/13

    このあたりは大変熱いトピックスですこのあたりは大変熱いトピックスです

    -42-

  • 中間欠損の治療オプション中間欠損の治療オプション

    インプラント義歯

    接着ブリッジ

    全部被覆冠ブリッジ

    インプラント義歯

    接着ブリッジ

    全部被覆冠ブリッジ

    残存歯への影響

    -43-

  • EBMのプロセスEBMのプロセス患者の問題点を抽出する

    患者の問題点の解決に関連した文献を検索する

    直接関連した文献がある 直接関連した文献がない

    文献の批判的吟味 問題点の解決に役立つ文献を検索する

    決断分析費用効果分析

    する

    文献の結論を眼前の患者に適用できるかどうかを検討する

    結論が一定している 結論が一定していない

    メタ分析

    「平均値に有意差がある」から「臨床上意味のある差」へ

    「平均値に有意差がある」から「臨床上意味のある差」へ

    統計学的に有意差があり,この治療オプションの方が優れているというだけでは,臨床決断に使いにくい

    どれぐらい,アウトカムに差があるのか?

    この先生に診てもらった患者さんは,何人ぐらいが治療を受けて良かったと思っているのか?

    患者の個別の特殊性を考慮した評価(多軸評価)はできないのか?

    何よりも,臨床エビデンスと相反する患者の「嗜好」をどのように扱うのか?

    統計学的に有意差があり,この治療オプションの方が優れているというだけでは,臨床決断に使いにくい

    どれぐらい,アウトカムに差があるのか?

    この先生に診てもらった患者さんは,何人ぐらいが治療を受けて良かったと思っているのか?

    患者の個別の特殊性を考慮した評価(多軸評価)はできないのか?

    何よりも,臨床エビデンスと相反する患者の「嗜好」をどのように扱うのか?

    -44-

  • 意味のある差とは?意味のある差とは? Standardized Effect Size:

    St. ES = 治療前後の効果量/ベースラインデータのばらつき(SD)

    St. ES =

  • 最小有効差の算出方法客観的判断による方法(Anchor-based method)患者による治療効果の評価とQOL得点変化量を比較する方法

    Juniper G et al., 1994, Osoba D et al., 1998.

    非常に悪化した 悪化した

    やや悪化した 変わらない

    やや良くなった 良くなった

    非常に

    良くなった

    □□□□ □ □ □

    あなたは歯の治療に関して,どの程度効果を感じましたか?

    治療効果なし 低効果 高効果

    Anchor:治療効果の主観評価

    治療前後の口腔関連QOL得点変化量の平均値

    =最小有効差

    包含基準 2013年11月から2015年8月に,初診で受診した全患者1歯以上8歯以下の欠損を有し,ブリッジまたは床義歯を選択した患者研究参加に同意した患者

    全身疾患等で外来にて治療を行うことができない患者認知機能低下により質問票の回答が困難な患者

    除外基準

    ブリッジ/床義歯治療

    目的対象 154名

    解析対象 144名

    治療後アンケートが回収できない患者 8名

    調査結果に不備がある患者 2名

    治療前評価:口腔関連QOL質問票

    治療後評価:口腔関連QOL質問票治療効果の主観評価

    平均年齢:63.1±11.8歳,男/女:60/94名,ブリッジ/床義歯:81/73名

    平均年齢:63.4±11.7歳,男/女:56/88名,ブリッジ/床義歯:76/68名

    研究デザインとサンプリング

    -46-

  • Kruskal-wallis検定,*:p<0.01

    治療前後の口腔関連QOL総得点の比較口

    腔関

    連Q

    OL総

    得点

    0

    (点)

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    効果なし1名

    76名

    低効果11名

    効果なし2名

    低効果9名

    -標準偏差

    +標準偏差

    平均値

    高効果64名

    68名

    高効果57名

    治療前

    治療後

    ブリッジ 床義歯

    効果なし1名

    口腔

    関連

    QO

    L総得

    点変

    化量

    (点)

    低効果11名

    高効果64名

    0

    10

    20

    30

    -10

    -20

    -30

    Anchor-based methodによる最小有効差の算出

    -ブリッジ群-

    -標準偏差

    +標準偏差

    平均値

    40

    -40

    9.2±13.1-16 4.8±10.6

    天井効果

    -47-

  • 効果なし2名

    2.3±9.4-20±10.0 7.5±13.2

    口腔

    関連

    QO

    L総得

    点変

    化量

    低効果9名

    高効果57名

    (点)

    0

    10

    20

    30

    -10

    -20

    -30

    40

    -40

    Anchor-based methodによる最小有効差の算出

    -床義歯群-

    -標準偏差

    +標準偏差

    平均値

    変化量マイナス

    24名

    変化量プラス44名

    変化量08名

    QOL変化量の内訳

    MID以上20名

    MID未満56名

    QOL変化量と最小有効差

    (MID)

    ブリッジ:76名 床義歯:68名

    変化量マイナス

    21名

    変化量プラス42名

    変化量05名

    MID以上35名

    MID未満33名

    QOL変化量の内訳

    QOL変化量と最小有効差

    (MID)

    患者が本当に知りたいことは,この施設で治療を受けたものがどの程度治療効果を感じているか

    治療後に有意にQOLが向上した例でも,症例毎に見てみると効果がないものが多数ある

    患者が本当に知りたいことは,この施設で治療を受けたものがどの程度治療効果を感じているか

    治療後に有意にQOLが向上した例でも,症例毎に見てみると効果がないものが多数ある

    -48-

  • 8年前に始まったプロジェクトがやっと実を結びつつあります

    8年前に始まったプロジェクトがやっと実を結びつつあります

    補綴治療の難易度を測定するプロトコルの信頼性,妥当性の検討

    多軸診断1軸:口腔内の状態

    2軸:全身疾患3軸:患者立脚型アウトカム(OHIP-J57)4軸:精神心理学的問題補綴学会始まって以来の多施設臨床研究

    Original article

    A multi-centered epidemiological study evaluating the reliability of thetreatment difficulty indices developed by the Japan Prosthodontic SocietyTakuo Kuboki DDS, PhDa,1,*, Tetsuo Ichikawa DDS, PhDb,1, Kazuyoshi Baba DDS, PhDc,1,

    Masayuki Hideshima DDS, PhDd, Yuji Sato DDS, PhDc, Hiroyuki Wake DDS, PhDd,Kan Nagao DDS, PhDb, Yorika Kodaira-Ueda DDS, PhDe, Aya Kimura-Ono DDS, PhDa,Katsushi Tamaki DDS, PhDf, Kazuhiro Tsuga DDS, PhDg, Kaoru Sakurai DDS, PhDe,Hironobu Sato DDS, PhDh, Kanji Ishibashi DDS, PhDi, Hirofumi Yatani DDS, PhDj,

    Takashi Ohyama DDS, PhDd,2, Yasumasa Akagawa DDS, PhDg,2, Toshihiro Hirai DDS, PhDk,2,Keiichi Sasaki DDS, PhDl,2, Kiyoshi Koyano DDS, PhDm,2

    aOkayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences, JapanbUniversity of Tokushima, Institute of Health Biosciences, Japan

    cShowa University School of Dentistry, JapandTokyo Medical and Dental University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Japan

    eTokyo Dental College, JapanfKanagawa Dental College, Japan

    gHiroshima University Graduate School of Biomedical Sciences, JapanhFukuoka Dental College, Japan

    i Iwate Medical University Dental School, JapanjOsaka University Graduate School of Dentistry, Japan

    kHealth Sciences University of Hokkaido School of Dentistry, JapanlTohoku University Graduate School of Dentistry, JapanmKyushu University Faculty of Dental Sciences, Japan

    Received 9 February 2012; accepted 10 February 2012

    Available online 24 April 2012

    Abstract

    Background: The diagnostic assessment of the level of difficulty in treating patients who need prosthodontic care is useful to establish a medico-economically efficient system with primary care dentists and prosthodontic specialists.Materials and methods: A multi-axis assessment protocol was established using the newly established treatment difficulty indices. The protocolcontains Axis I: oral physiological conditions (e.g., teeth damage and/or missing teeth); Axis II: general health and sociological conditions (e.g.,medical disorders); Axis III: oral health-related quality of life (OHRQOL; e.g., oral health impact profile: OHIP); and Axis IV: psychologicalhealth (e.g., mood, anxiety, somatoform disorders). A preliminary study on the test–retest consistency of the protocol was conducted to check thelevels of reliability of the indices prior to a large-scale, multi-center cohort study on the validity of the protocol.Results: The test–retest consistency in terms of the oral physiological condition (Axis I) after data reduction was 0.63 for patients with teethproblems, 0.95 for partially edentulous patients, and 0.62 for edentulous patients. The reliability for general health and sociological conditions(Axis II), OHRQOL (Axis III), and psychological health (Axis IV) were 0.88, 0.74, and 0.61, respectively. These values reflect either ‘‘sufficientagreement’’ or ‘‘excellent agreement’’ in accordance with the criteria established by Landis and Koch (1977) [1].Conclusion: This protocol is the first multi-axis assessment scheme introduced for prosthodontic treatment with sufficient reliability. This newsystem is therefore expected to have a significant impact on future dental diagnostic nomenclature systems.# 2012 Japan Prosthodontic Society. Published by Elsevier Ireland. All rights reserved.

    Keywords: Diagnosis; Prosthodontics; Quality assurance; Treatment outcome; Patient risk profile

    www.elsevier.com/locate/jpor

    Available online at www.sciencedirect.com

    Journal of Prosthodontic Research 56 (2012) 71–86

    * Corresponding author at: Department of Oral Rehabilitation and Regenerative Medicine, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and

    Pharmaceutical Sciences, 2-5-1 Shikata-cho, Kita-ku, Okayama 700-8525 Japan.

    E-mail address: kuboki@ md.okayama-u.ac.jp (T. Kuboki).1 Ad Hoc Committee Chairs for Clinical Guidelines for Prosthodontic Management, Japan Prosthodontic Society: Tetsuo Ichikawa (2003–2008), Takuo Kuboki

    (2009–2010), Kazuyoshi Baba (2011–2012).2 Contributing Presidents: Takashi Ohyama (2003–2004), Yasumasa Akagawa (2005–2006), Toshihiro Hirai (2007–2008), Keiichi Sasaki (2009–2010), Kiyoshi

    Koyano (2011–2012).

    1883-1958/$ – see front matter # 2012 Japan Prosthodontic Society. Published by Elsevier Ireland. All rights reserved.

    doi:10.1016/j.jpor.2012.02.007

    ガイドラインや臨床エビデンスを目の前の患者に適応するためには

    ガイドラインや臨床エビデンスを目の前の患者に適応するためには

    平均的な集団に向けた推奨度を用いて,目の前の患者の臨床決断を支援するには?

    治療内容や診断方法に関する十分なTechnical Appraisal

    対象患者の特性

    臨床エビデンスと相反する患者の「嗜好」や「身体状況」をどのように扱うか?

    外科処置が怖い

    経済的な問題

    骨粗鬆症の患者のインプラント治療

    平均的な集団に向けた推奨度を用いて,目の前の患者の臨床決断を支援するには?

    治療内容や診断方法に関する十分なTechnical Appraisal

    対象患者の特性

    臨床エビデンスと相反する患者の「嗜好」や「身体状況」をどのように扱うか?

    外科処置が怖い

    経済的な問題

    骨粗鬆症の患者のインプラント治療-49-

  • ガイドラインは万能ではないガイドラインはすべての患者に適応できるわけではない

    ガイドラインは万能ではないガイドラインはすべての患者に適応できるわけではない

    平均値寄り60%〜95%はガイドラインがカバー

    典型例

    平均値から外れているところが問題

    医師の裁量権 小?

    医師の裁量権 大?

    参考:Eddy DM. JAMA 1990;263:22.

    推奨の強さ(positive/negative)GRADEでは,1)望ましい効果と望ましくない効果のバランス,2)エビデンスの質,3)価値観や好み,4)コスト(資源の活用)

    推奨の強さ(positive/negative)GRADEでは,1)望ましい効果と望ましくない効果のバランス,2)エビデンスの質,3)価値観や好み,4)コスト(資源の活用)

    強い 利益が害,負担コストをしのぐ

    患者:ほぼ全員がその推奨に沿った診療を希望

    歯科医師:患者がその介入を受けるようにすべき

    行政:施策として採用すべき

    コンセンサスグループのほぼ全員が推奨する

    弱い 利益が害,負担コストのバランスの差が近接,不確実,エ ビデンスが低い

    患者:半数以上がその推奨に沿った診療を希望

    歯科医師:患者と十分な議論が必要

    行政:かなりの議論が必要

    コンセンサスグループの過半数が推奨する

    判断不能 エビデンスの意見が相反する

    コンセンサスグループの意見が一致しない場合,あるいは 判断不能と判断した場合

    強い 利益が害,負担コストをしのぐ

    患者:ほぼ全員がその推奨に沿った診療を希望

    歯科医師:患者がその介入を受けるようにすべき

    行政:施策として採用すべき

    コンセンサスグループのほぼ全員が推奨する

    弱い 利益が害,負担コストのバランスの差が近接,不確実,エ ビデンスが低い

    患者:半数以上がその推奨に沿った診療を希望

    歯科医師:患者と十分な議論が必要

    行政:かなりの議論が必要

    コンセンサスグループの過半数が推奨する

    判断不能 エビデンスの意見が相反する

    コンセンサスグループの意見が一致しない場合,あるいは 判断不能と判断した場合

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  • Shared Decision Making臨床エビデンスのみでなく,患者と一緒に臨床判断

    Shared Decision Making臨床エビデンスのみでなく,患者と一緒に臨床判断

    臨床医の腕Clinical expertise

    臨床エビデンスClinical evidence

    医療資源Medical resource

    患者の価値観と行動Patient’s preference and actions

    患者の病態・臨床情報Clinical state and circumstances

    EBM新モデルを改変(Haynes and Guyatt, 2002)

    成功( 0.90)

    失敗(0.10)

    成功( 0.33)

    失敗(0.67)

    成功( 0.54)

    失敗( 0.46)

    下顎片側

    遊離端欠損症例

    治療法の選択

    インプラント義歯

    可撤性床義歯

    無処置

    治療後5年経過時点で満足?

    (個々の患者の価値観)

    期待値

    アウトカム(確率) 効用(価値)

    x

    価格侵襲 治療期間

    a

    b

    c

    d

    e

    f

    隣在歯の保護(欠損阻止効果)

    審美性

    機能・違和感

    全身疾患遺伝、加齢

    精神心理学的社会的状態

    口腔内環境口腔習癖

    生活習慣

    治療後のトラブル

    精神的な安堵 義歯自体の生存率

    臨床判断分析リスク因子

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  • Value Based Medicine (VBP)Fulford, Peile and Carroll, 2012.

    Value Based Medicine (VBP)Fulford, Peile and Carroll, 2012.

    価値の違いに対する相互の尊重

    気づき 推論 コミュニケーション技法

    当人中心の診療 多職種チームワーク

    二本の足の原則 きしむ車輪の原則 科学主導の原則

    パートナーシップ

    共有された価値という枠組みにおけるバランスのとれた意思決

    前提

    プロセス

    到達点

    知識

    評価・訓練 結果介護施設・在宅

    嚥下障害患者脳卒中認知症

    神経疾患

    十分

    不十分

    まったくなし

    経口摂取可

    経管栄養(N-Gチューブ留置)

    胃瘻

    いかにしてよい死を迎えるか:終末期のケアにおける意見の多様性

    →アドバンスドケアプランニング

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  • なかなかおもしろいねえ!本発表の共同研究者(敬称略)

    中川晋輔

    園山 亘

    荒川 光

    水口 一

    前川賢治

    完山 学

    暈 貴行

    峯 篤志

    松香芳三

    矢谷博文

    山下 敦

    Glenn T. Clark*

    木村 彩

    縄稚久美子

    上原淳二

    小島俊二

    水島恒尚

    岡本壮一郎

    鈴木秀典

    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科インプラント再生補綴学分野*USC歯学部

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  • P. gingivalis

    P. gingivalis

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