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日本経営財務研究学会第 38 回全国大会 (明治大学、2014 10 5 ) 報告論文 における リスク リターン * 大学大学院 営学 リスクによって した (financial distress) リターン ある いう が多 されている。これ リスクを した して 、プラス リスク・プレミアムを いこ を意 しており、 アノマリー して されている。 1978 から 2014 1 2 ( ) を対 に、 における リスク リターン について みる。 リスク に株 から められるオプションアプローチによる モデルから した。 位ポートフォリオ クロスセクショナル づく った。そ リスク リターン リスク があるこ した。 リスクが まった において、 リスク リターン あり、 リスク から されたポートフォリオ 4 ファクター・モデル い大き アル ファが された。一 リスクが において リスク リターン ある がわかった。しかし がら、 リスク から されたポートフォリオ アルファ く、マーケット・ファクターが いこ された。したがって、 リスクを するこ による プラス リスク・プレミアム 確かに する リスク における異 リターンに よって されているこ らか った。 * 2013 において「 Financial Distress リターン いうテーマ した。 Ohlson [1980] O-Score した リスク リターン てたが、 おける モデル けて、 リスク をオプションアプローチによる モデルに変 した。 1

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日本経営財務研究学会第 38回全国大会 (明治大学、2014年 10月 5日) 報告論文

日本株式市場における倒産リスクと

株式リターンの関係性∗

北島 孝博

大阪市立大学大学院経営学研究科 後期博士課程

要 旨

 倒産リスクによって推計した財務的困窮度 (financial distress) と株式リターンの関係性が負であるという

研究が多数報告されている。これは投資家が倒産リスクを負担したとしても、プラスのリスク・プレミアムを

獲得出来ないことを意味しており、新たなアノマリーとして注目されている。本稿は、1978年から 2014年ま

での東証 1部・2部上場企業 (金融業含む) を対象に、日本株式市場における倒産リスクと株式リターンの関

係性についての分析を試みる。倒産リスクは、主に株価情報から求められるオプションアプローチによる倒産

確率推定モデルから推計した。分析方法は、分位ポートフォリオとクロスセクショナル回帰分析に基づく方法

で行った。その結果、倒産リスクと株式リターンの関係性は市場全体の倒産リスクと高い関連性があることを

発見した。倒産リスクが高まった時期において、倒産リスクと株式リターンの関係性は負であり、倒産リスク

の非常に高い銘柄から構成されたポートフォリオは 4 ファクター・モデルでは説明できない大きな負のアル

ファが示された。一方で、倒産リスクが低い時期においては、倒産リスクと株式リターンの関係性は正である

ことがわかった。しかしながら、倒産リスクの高い銘柄から構成されたポートフォリオのアルファは有意では

なく、マーケット・ファクターが非常に高いことが示された。したがって、倒産リスクを負担することによる

プラスのリスク・プレミアムは確かに存在するものの、倒産リスク増加時における異常に高い負のリターンに

よって相殺されていることが明らかとなった。

∗ 本稿は、2013年度統計関連学会連合大会において「我が国の Financial Distressと株式リターンの関係性」というテーマで発表した。発表時は、Ohlson [1980] の O-Score で推計した倒産リスクと株式リターンの関係性に焦点を当てたが、日本株式市場における倒産予測モデルの比較分析の結果を受けて、倒産リスクの推計方法をオプションアプローチによる倒産確率推定モデルに変更した。

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1 はじめに

近年、米国の株式市場を対象として、倒産リスクによって推計した財務的困窮度 (financial distress) と株式

リターンの関係性に注目した研究が盛んに行われている。その背景には、財務的困窮度によるリスクが規模効

果やバリュー株効果といったアノマリーを説明するのではないかと議論されていることにあった。Chan and

Chen [1991] は規模効果について、また Fama and French [1992]はバリュー株効果について、それぞれ財務

的困窮度によるリスクとの関係性について示唆している。これらの先行研究が提示した仮説に基づいて、多く

の先行研究は倒産リスクと株式リターンに正の関係性があることを期待し、その関係性を検証してきた。

しかしながら、先行研究の多くは上記の仮説と異なる実証結果を得ている。Dichev [1998] や Griffin and

Lemmon [2002] は、バリュー株効果や規模効果は倒産リスクによっては説明されず、むしろ倒産リスクと株

式リターンの関係性が負であることを発見した。また、Campbell, Hilscher and Szilagyi [2008]は、この負の

関係性が Fama and French [1993] の 3ファクターモデルやモメンタムに関するリスクプレミアムを考慮した

Carhart [1997] の 4 ファクターモデルでは説明されないことを示した。一方で、Vassalou and Xing [2004]

は、倒産リスクはシステマティック・リスクであり、規模効果やバリュー株効果を説明できることを示した。

しかしながら、彼女らが発見した倒産リスクと株式リターンの正の関係性は、Da and Gao [2010] や George

and Hwang [2010] による再検証によって短期のリターン・リバーサルに起因するものであることが示されて

いる。

いくつのか先行研究は、倒産リスクと株式リターンの負の関係性が生じる原因について検証している。

Dichev [1998]や Griffin and Lemmon [2002]はミス・プライシング仮説、Campbell, Hilscher and Szilagyi

[2008]は裁定の限界、また、Garlappi, Shu and Yan [2008]と George and Hwang [2010]はシステマティッ

ク・リスクに基づいてそれぞれ検証している。さらに、Chava and Purnanandam [2010] と Ang [2012]は、

倒産を含めた業績悪化に関連した上場廃止に注目した分析を行なっている。前者は米国における 1980年代の

予想外の倒産件数について、後者は上場廃止前の 2年間の異常に低い負のリターンについて、それぞれ注目し

た。これらの原因は、Dichev [1998] などを始めとする米国株式市場を対象とした先行研究のほとんどに関連

しており、倒産リスクと株式リターンの負の関係性が米国株式市場特有の現象なのかどうかを明らかにする必

要がある。

そこで、本稿は米国株式市場とは異なる特徴を持つ日本株式市場を対象に分析を行う。日本株式市場は、米

国よりも業績悪化に関連する上場廃止の件数が少なく、その多くは倒産によるものであるという特徴を持つ。

一方で、Ang [2012] によれば、米国における上場廃止は時価総額所要額未満や単位株価格基準などの業績悪

化に関連したものが非常に多い。また、日本の上場企業の倒産は 1990年代中頃まで非常に少なく、バブル崩

壊後の 1990年代後半以降において徐々に増えている。したがって、倒産リスクが非常に小さい時期と高い時

期における株式リターンの関係性をそれぞれ明らかにすることができる。

本稿の目的は、1978年から 2014年までの東証 1部・2部上場企業 (金融業を含む) を対象に、倒産リスク

によって推計した財務的困窮度と株式リターンの関係性を明らかにすることである。倒産リスクは、主に株価

情報から求められるオプションアプローチによる倒産確率推定モデルから推計する。分析方法は、分位ポート

フォリオとクロスセクショナル回帰分析に基づく方法で行う。分位ポートフォリオに基づく株式リターンの

分析では、倒産リスクの大小による株式リターンの違いを分析する。また、各分位ポートフォリオを対象に

Charat [1997] の 4ファクター・モデルを適用することで、リスク調整済みリターンの分析を行なう。クロス

セクショナル回帰分析では、各月末時点において推計された倒産リスク指標が 1年後の株式リターンに与える

2

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影響を分析する。その結果、倒産リスクと株式リターンの関係性は市場全体の倒産リスクと高い関連性がある

ことを発見した。倒産リスクが高まった時期において、倒産リスクと株式リターンの関係性は負であり、倒産

リスクの非常に高い銘柄から構成されたポートフォリオは 4ファクター・モデルでは説明できない大きな負の

アルファが示された。一方で、倒産リスクが低い時期においては、倒産リスクと株式リターンの関係性は正で

あることがわかった。しかしながら、倒産リスクの高い銘柄から構成されたポートフォリオのアルファは有意

ではなく、マーケット・ファクターが非常に高いことが示された。したがって、倒産リスクを負担することに

よるプラスのリスク・プレミアムは確かに存在するものの、倒産リスク増加時における異常に高い負のリター

ンによって相殺されていることが明らかとなった。

本稿の貢献として、以下の 3つが挙げられる。第 1に、長期の日本株式市場を対象に、倒産リスクと株式リ

ターンの関係性をより詳細に明らかにした研究は私の知る限り初めてである。第 2 に、倒産リスクと株式リ

ターンの関係性が、市場全体の倒産リスクと高い関連性があることを発見したことである。第 3に、倒産リス

クが低い時期における倒産リスクと株式リターンの正の関係性は 4ファクター・モデルで説明可能である一方

で、倒産リスク増加時における負の関係性は説明できないことを示したことである。

本稿の構成は、以下のとおりである。第 2 節では、倒産リスクによって推計された財務的困窮度と株式リ

ターンに関する先行研究をサーベイする。第 3節では、本稿で使用されるデータについて説明する。第 4節で

は、倒産リスクの推計方法と倒産リスクと株式リターンの関係性を明らかにするための検証方法について説明

する。第 5節では、実証結果を示す。第 6節では、本稿の総括を行う。

2 先行研究

米国株式市場における財務的困窮度と株式リターンに関する最初の研究には、Dichev [1998] がある。彼

は、1981年から 1995年までにおける NYSE、AMEXと NASDAQの上場企業を対象に、Altman [1968] の

Z-Score と Ohlson [1980] の O-Score から推計した倒産リスクと株式リターンの関係性を検証した。その結

果、倒産リスクの高い銘柄から構築された分位ポートフォリオの株式リターンは、高くなく、むしろ低いこと

を発見した。また、倒産リスクと簿価時価比率の関係性は単調ではなく、最も倒産リスクの高い企業群の簿価

時価比率は低いことを明らかにした。これはバリュー株効果が財務的困窮度によるリスクに起因するものであ

る主張した Fama and French [1992] の推測と異なることを示している。

Dichev [1998] 以降、米国株式市場において、財務的困窮度と株式リターンの関係性に関する研究が発展し

た。Griffin and Lemmon [2002] は、Ohlson [1980] の O-Scoreを用いて、Dichev [1998] によって示された

倒産リスクの高い企業の低い株式リターンは、簿価時価比率の低いグロース株から生み出されていることを発

見した。Campbell, Hilscher and Szilagyi [2008] は、会計情報と株価情報の両方を利用した Shumway [2001]

の倒産予測モデルとその改良版を用いて、裁定に関わる摩擦があり、かつ倒産リスクの高い企業において、特

に株式リターンが低いことを示した。また、財務的困窮度と株式リターンの負の関係性は、CAPM、Fama

and French [1993] の 3ファクターモデルと Carhart [1997] の 4ファクターモデルを用いたリスク調整済み

リターンでは説明できないことを示した。

上記の先行研究は、財務的困窮度と株式リターンの負の関係性が生じる原因について、ミス・プライシング

仮説と裁定の限界を支持している。Griffin and Lemmon [2002] は、倒産リスクの高い企業が決算発表日付近

に株式リターンのリバーサルが起きていることを発見している。Campbell, Hilscher and Szilagyi [2008] は

倒産リスクの高い企業の特徴として、アナリスト・カバレッジ、流動性や機関投資家の保有割合が低いことを

示している。また、財務的困窮度と株式リターンの負の関係性はシステマティック・リスクによって説明さ

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れると主張した研究がいくつかある。Garlappi, Shu and Yan [2008] は、shareholder advantage を明示的

にモデルに導入することで、倒産リスクの高い企業のシステマティック・リスクは低いことを示した。また、

George and Hwang [2010] は、financial distress costを導入することによって、同様のことを示した。

一方で、財務的困窮度と株式リターンの正の関係性を示した研究も少なからずある。Vassalou and Xing

[2004] は、Black and Scholes [1973] と Merton [1974] に基づくオプションアプローチによって推計した倒

産リスクを用いて、規模効果とバリュー株効果は倒産リスクの高い企業においてのみ存在することを示した。

Chava and Purnanandam [2010] は、株式リターンの代わりに、アナリストの予想を用いて求めた資本コス

ト (implied cost of capital) を用いた場合、倒産リスクと株式リターンの関係性が正であることを示してい

る。しかしながら、Da and Gao [2010] は Vassalou and Xing [2004] が示した倒産リスクの高い企業の正の

リスクプレミアムは、システマティック・リスクではなく、むしろ短期のリターン・リバーサルであると主張

している。また、Bauer [2012] はアナリストの予想を用いた研究の問題点として、倒産リスクの高い企業の

アナリストカバレッジが低いといったサンプル・サイズの少なさを指摘している。

また、いくつかの先行研究は倒産を含む業績悪化に関連した上場廃止に注目した分析を行なっている。

Chava and Purnanandam [2010] は、米国における 1980 年代の予想外の倒産件数の多さに注目し、この期

間を除いて分析した場合、財務的困窮度と株式リターンの負の関係性が消失することを発見している。また、

Ang [2012] は業績悪化に関連する上場廃止前の 2年間に注目し、この期間における異常に低い株式リターン

が負の関係性を生み出していると主張している。これらの原因は、Dichev [1998] などを始めとする米国株式

市場を対象とした先行研究のほとんどに関連しており、財務的困窮度と株式リターンの負の関係性が米国株式

市場特有の現象なのかどうかを明らかにする必要がある。

米国株式市場以外では、Agarwal and Taffler [2008] と Bauer [2012] がロンドン株式市場を対象に、財務的

困窮度と株式リターンの関係性を検証している。Agarwal and Taffler [2008] は、Altman [1968] の Z-Score

を用いて、規模効果やバリュー株効果は財務的困窮によるリスクと関係がないことを示した。Bauer [2012]

は、米国株式市場と同様に財務的困窮度と株式リターンの負の関係性を発見した。また、その結果は倒産リス

クの推計モデルに対して頑健であることも示した。さらに、Gharghori, Chan and Faff [2009] は、オースト

ラリア株式市場を対象に倒産リスクと株式リターンの関係性を検証し、同様に負の関係性を示している。

3 使用データ

本稿は、東証 1部・2部上場企業 (金融業を含む) を分析対象とする。分析期間は、1978年 6月から 2014

年 6 月までの 433 ヶ月とする。株式データと財務データは日経 NEED-Financial QUEST (日経新聞デジタ

ルメディア) から取得し、東証株価指数 (TOPIX) のみ Thomson Datastreamから入手している。株価デー

タは配当・分割調整済みの日次の終値を用いた。財務データは、久保田と竹原 [2007] に基づいて、2000年 3

月以降の分析では連結財務諸表を優先し、それ以前の分析では単独財務諸表を用いた。また、使用される決算

データは本決算とし、財務データの利用可能性を確保するために、3ヶ月間のラグを設けた。

分析対象銘柄は、以下の条件を満たす銘柄とする。(1) 自己資本が負ではない。(2) 各月末時点において、

少なくとも過去 1年間の株価データが存在する。(3) 各月末時点において整理銘柄に該当しておらず、上場廃

止が確定していない。また、2013年 7月以降の分析対象銘柄は、2013年 6月末の分析対象銘柄のみを対象と

している。これは、2013年 7月に東京証券取引所と大阪証券取引所の現物株が統合した影響を除くためであ

る。したがって、統合によって東証に上場した企業は分析対象銘柄には含まれない。その結果として、1978

年 6月末における分析対象銘柄数は 1,314社、また 2013年 6月末においては 2,099社となっている。

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4 倒産リスクの推計方法と検証方法

本節では、倒産リスクの推計方法と倒産リスクと株式リターンの関係性を明らかにするための検証方法につ

いて説明する。倒産リスクの推計方法は、主に株価情報から求められるオプションアプローチによる倒産確率

推定モデルを用いる。検証方法は、分位ポートフォリオおよびクロスセクショナル回帰に基づく株式リターン

の分析を行う。

4.1 倒産リスクの推計方法

Merton [1974] モデルは、株式価値が企業資産価値を原資産、負債価値を行使価格とするユーロピアンコー

ルオプションであると見なす。株主は、ある満期時点において、企業資産価値が負債価値を上回った場合、そ

の差額を受け取る残余請求権を有している。一方で、企業資産価値が負債価値を下回った場合、株式価値がゼ

ロとなり、当該企業から何も得ることはできない。この考え方に基づいて、負債が単一の割引債券で構成さ

れ、将来時点 T で満期となると仮定すると、企業の倒産確率 PT は式 (1)で表現される。

PT = Pr(AT < DT ) (1)

すなわち、企業の倒産確率は将来時点 T における企業資産価値 AT の分布と負債価値 DT から求められる。

そこで、企業資産価値 At の挙動が、式 (2)の確率微分方程式で表される確率過程に従うと仮定する。

dAt

At= µAdt+ σAdWt (2)

µA と σA は、企業資産価値の期待成長率とボラティリティをそれぞれ表している。また、Wt はウィナー過程

を表しており、εを平均 0、分散 1の標準正規分布から得られる確率変数とすると、式 (3)となる。

dWT = WT −Wt (3)

= ε√T − t

次に、式 (3)に伊藤のレンマ (Ito’s Lemma) を適用し、確率微分方程式を解くと式 (4)となる。

AT = Ate(µA−

σ2A2 )T+σAε

√T−t (4)

さらに、式 (4)の両辺について対数をとると、式 (5)となる。

lnAT = lnAt + (µA − σ2A

2)T + σAε

√T − t (5)

式 (5)は、将来時点 Tにおける企業資産価値 AT の自然対数値が、平均 lnAt + (µA − σ2A

2 )T、分散 σ2A(T − t)

の正規分布に従うことを意味する。したがって、式 (1)で表される企業の倒産確率 PT は、N を累積標準正規

分布関数とし、倒産確率の推定時点を t = 0とすると、式 (6)となる。

PT = Pr(AT < DT ) (6)

= Pr(lnAT < lnDT )

= Pr(lnA0 + (µA − σ2A

2)T + σAε

√T < lnDT )

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= Pr(σAε√T < −((lnA0 − lnDT ) + (µA − σ2

A

2)T ))

= Pr(ε < −(ln A0

DT+ (µA − σ2

A

2 )T )

σA

√T

)

= N(−(ln A0

DT+ (µA − σ2

A

2 )T )

σA

√T

)

= 1−N((ln A0

DT+ (µA − σ2

A

2 )T )

σA

√T

)

また、将来時点 Tにおける企業資産価値 AT の自然対数値が、負債価値の対数値から平均的にどの程度離れ

ているのかを表す指標として、DD (distance to default) を定義する。DDの値が大きければ大きいほど倒産

確率は低くなり、逆に小さいほど倒産確率は高くなる。

DD =(ln A0

DT+ (µA − σ2

A

2 )T )

σA

√T

(7)

以上より、将来時点 T における企業の倒産確率 PT は、下記に示す 5つのパラメーターから求められる。

A0 : 現在の企業資産価値

µA : 企業資産価値の期待成長率

σA : 企業資産価値のボラティリティー

DT : 将来時点 T における負債価値

T : 将来時点 (1年後など)

企業資産価値 A0、企業資産価値の期待成長率 µA とボラティリティ σA は、直接観測できないため、市場デー

タから推計する必要がある。そこで、本稿は森平 [2000] に基づいて、3 つのパラメータの推計に、(1) オプ

ション価格決定モデル、(2) 最適ヘッジ方程式、 (3) 期待成長率の関係式の 3つの方程式を用いる。

オプション価格決定モデルは、株式価値と企業資産価値の関係式であり、式 (8)で表される。

E0 = A0N(d1)− e−µATDTN(d2) (8)

d1 =ln( A0

DT) + (µA +

σ2A

2 )T

σA

√T

d2 = d1 − σA

√T

本稿では、Merton型のモデルではなく、無リスク金利を企業資産の期待成長率 µA に置き換えた Bonnes型

のモデルを用いる。次に、最適ヘッジ方程式は、株式価値のボラティリティ σE と企業資産価値のボラティリ

ティ σA の関係式であり、式 (9) で表される。

σEE0 = N(d1)σAA0 (9)

最後に、期待成長率の関係式は企業資産価値、株式価値と負債の期待成長率の関係を表しており、式 (10) で

表される。ただし、須田・竹原 [2008] と同様に、負債の期待成長率の推定は困難であること、また将来時点

T が 1年と比較的に短期であることから µD = 0と仮定する。

µA =E0

A0µE +

1− E0

A0µD (10)

=E0

A0µE

6

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本稿は、上記の 3つの非線型連立方程式から企業資産価値 A0、企業資産価値の期待成長率 µA とボラティ

リティ σA を推計する。パラメータの推計に必要な設定は、以下のとおりとした。(1) 株式時価総額 E0 は、t0

時点における株価の終値と総発行済株式数から求めた。(2) 株式価値の期待成長率 µE とボラティリティ σE

は、それぞれ過去 250日間の分割・配当調整済み株価の日次対数収益率から求めた。平均収益率は 250倍、標

準偏差は√250倍することで、年率換算した。(3) 将来時点における負債価値DT は、t0 時点における企業の

有利子負債*1 の合計とした。(4) 将来時点 Tは、1年後とした。(5) 企業資産価値 A0 の初期値は、株式時価

総額 E0 と負債価値 DT の合計とした。

パラメータの推計手順は、森平 [2011] に基づき、以下のとおりとする。(1) 上記の初期設定に基づいて、式

(9)と式 (10)から企業資産価値のボラティリティ σA と期待成長率 µA を求める。(2) 式 (8)から企業資産価

値 A0 について解く。(3) ステップ 1と同様に、新たに求まった企業資産価値 A0 から、企業資産価値のボラ

ティリティ σA と期待成長率 µA を新たに求める。(4) 新たに式 (9) の N(d1) を求め、企業資産価値のボラ

ティリティ σA を再度求める。(5) 企業資産価値のボラティリティ σA の値の変化が収束判定の 10−4 になる

まで、ステップ 4を繰り返す。(6) 式 (8)から株式時価総額 E0 を求め、実際の株式時価総額との差が 10−4 に

なるまで、ステップ 2から 6を繰り返す。(7) 収束した時点における企業資産価値 A0、企業資産価値のボラ

ティリティ σA と期待成長率 µA を倒産確率推定に用いるパラメータの推計値とする。

図 1は、1978年 6月から 2014年 6月までの期待倒産確率 (Expected Default Probability) の時系列推移

を示している。各月末時点の分析対象銘柄について、上記で説明したオプションアプローチによる倒産確率を

求め、その単純平均を取った。図から、1990年までの市場全体の倒産リスクは非常に低いが、1990年代後半

から急激に倒産リスクが高まっていることがわかる。また、その後の倒産リスクは、2005年頃までに大きく

低下しているが、2008年以降において再び急激に増加している。

図 1 1978年 6月から 2014年 6月までの EDPの時系列推移

*1 有利子負債は、須田・竹原 [2008] と同様に、短期借入金、長期借入金、社債と従業員預り金とした。また、金融業 (銀行業、証券・先物取引業、保険業とその他金融業) の負債価値は、総負債を用いた。

7

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4.2 検証方法

分位ポートフォリオに基づく株式リターンの分析では、倒産リスク指標 (DD) による分位ポートフォリオを

毎年構築し、各ポートフォリオのリターンを比較する。ポートフォリオの構築時点は、毎年 6月末とし、年 1

回のリバランスを行なう。リターンの計算方法は、前月末時点の時価総額をウェイトとする時価総額加重平均

リターンとする。倒産リスクの各分位点は、東証 1部上場企業だけを用いて求め、これらを基準点に分析対象

企業を複数のポートフォリオに分割する*2。各ポートフォリオの分析対象全銘柄の時価総額加重平均リターン

に対する超過リターンに加えて、以下の Carhart [1997] の 4ファクター・モデルを用いた分析を行う。

Rp,t −Rf,t = α+ b1(RM,t −Rf,t) + b2SMBt + b3HMLt + b4MOMt + et (11)

Rp,t は第 t月の分析対象のポートフォリオのリターン、Rf,t は第 t月の無リスク金利、RM,t は、第 t月の

分析対象全銘柄のリターン、et は誤差項をそれぞれ表している。また、SMBは時価総額 (MV) に関するファ

クターのリターン差、HMLは簿価時価比率 (BPR) に関するファクターのリターン差、MOMはモメンタム

に関するファクターのリターン差、をそれぞれ表している。なお、各ファクターの計算方法は、太田、斉藤、

吉野と川井 [2012] に準拠している*3。

表 1 4ファクター・モデルの記述統計量 (月次リターン (%))、相関係数行列および VIF

記述統計量 相関係数行列Mean Std Dev. EVW SMB HML MOM VIF

EVW 0.276 5.194 1.000 -0.061 -0.137 -0.069 1.063SMB 0.059 3.444 -0.106 1.000 0.064 -0.135 1.073HML 0.523 2.840 -0.127 0.097 1.000 -0.114 1.056MOM 0.061 4.489 -0.139 -0.218 -0.167 1.000 1.113

(注) 左下三角行列はピアソン積率相関係数を、右上三角行列はスピアマン順位相関係数をそれぞれ表している。

図 2 1978年 7月から 2014年 6月までの 4ファクター・モデルの各ファクターの累積リターン (%)

*2 2006年 6月以降のポートフォリオ構築時点では、倒産リスク指標 (DD) の値が無限 (Inf) になる銘柄が 10%を超えている。したがって、10分位ポートフォリオを構築する場合、2006年 6月以降についてはこれらの銘柄を全て第 10分位とする。

*3 ただし、(1) 無リスク金利は、長期国際応募利回り (10年物) ではなく、コールレート有担保翌日物月中平均値を 12で割った値を用いたこと、(2) 分位ポートフォリオの構築時点は 9月末ではなく 6月末としたこと、がそれぞれ異なっている。

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表 1 は、1978 年 7 月から 2014 年 6 月までの各ファクターの記述統計量、相関係数行列および VIF を

示している。また、図 2 は、各ファクターの累積リターンを示している。EVW (Excess Value Weighted

Retrun) は、分析対象全銘柄の時価総額加重平均リターンから無リスク金利を差し引いた値を表している。

VIF (Variance Inflation Factors) は、多重共線性の程度を知るための統計量である。表から、SMB の平均

リターンはかなり小さく、分析期間全体の規模効果は小さいと言える。一方で、HML は約 0.52% (年率約

6.28%)と高く、図の HMLの累積リターンが一部の期間を除いて上がり続けていることから、バリュー株効

果が非常に大きいことがわかる。また、MOMは約 0.06%の正の値となっているが、SMBと同様にかなり小

さい。各相関係数は、ピアソン積率相関およびスピアマン順位相関共に低い値を示している。また、VIFも低

い値を示していることから、多重共線性の問題はないと考えられる。

クロスセクショナル回帰に基づく株式リターンの分析は、1 年後の株式リターンを被説明変数、時価総額

(MV)の自然対数値、ベータ (Beta)、簿価時価比率 (BPR)、倒産リスク指標 (DD) およびコントロール変数

群を説明変数とする重回帰分析を毎月行う。分析期間は、1978年 6月から 2013年 6月までの 421ヶ月間と

する。分析対象は、各月末時点に上場している銘柄とする。各変数の算出方法は、以下のとおりである。(1)

株式リターンは、1年間のバイ・アンド・ホールド (BHR) から求める。(2) 時価総額 (MV) は、各月末時点

の株価に総発行済株式数を乗じて求める。(3) 簿価時価比率 (BPR) は、各月末時点までに公表された自己資

本*4。を各月末時点の時価総額*5。で除して求める (4) ベータ (Beta) は、各月末時点から過去 12 ヶ月間の

日次リターンを対象に、TOPIXに対するヒストリカル・ベータとする。(5) 倒産リスク指標 (DD) は、各月

末時点から過去 250 日間の日次データを対象にオプション・アプローチに基づく方法で推計する。以下の式

(12) は、上記の回帰式を示している。

Rj,t = b1,t + b1 log (MVj,t) + b2 Betaj,t + b3 BPRj,t + b4 DDj,t +φ Zj,t + ej,t (12)

Rj,t は、第 t月の第 j銘柄の 1年後の株式リターン (BHR) を表している。同様に、log (MVj,t)は時価総

額の自然対数値、Betaj,t は日次ベータ、BPRj,t は簿価時価比率、DDj,t は倒産リスク指標、ej,t は誤差項を

それぞれ表している。また、Zj,t は業種ダミー*6 から構成されるコントロール変数群である。

表 2は、クロスセクショナル回帰に用いる変数間の相関係数行列および VIFの最大値を示している。1978

年 6 月から 2013 年 6 月までの相関係数行列を毎月求め、各変数間の相関係数の最大値のみを取り出してい

る。同様に、各変数の VIFの最大値のみを取り出して示している。表から、時価総額の自然対数値とベータ

の相関係数が最も高く、ピアソン積率相関で約 0.65となっている。ただし、VIFはそれぞれ約 2.4と 2.0と

なっており、それ程大きな値を示していないことから、多重共線性の懸念は小さいと考えられる。

表 2 クロスセクショナル回帰に用いる変数間の相関係数行列および VIFの最大値

相関係数行列 (最大値)BHR (1-year) log (MV) BPR Beta DD VIF (最大値)

BHR (1-year) 1.000 0.418 0.472 0.489 0.443 1.579log (MV) 0.418 1.000 0.202 0.619 0.539 2.307BPR 0.402 0.188 1.000 0.199 0.344 1.528Beta 0.452 0.647 0.201 1.000 0.136 1.928DD 0.250 0.337 0.196 0.118 1.000 1.238

(注) 左下三角行列はピアソン積率相関係数を、右上三角行列はスピアマン順位相関係数をそれぞれ表している。

*4 2006年 5月以降におけ自己資本は、純資産から新株式申込証拠金、新株予約権および少数株主持分を差し引いた値を用いている。*5 2004年 1月以降における簿価時価比率 (BPR) 算出に使用する時価総額は、普通株の発行済株式数を用いている。*6 1993年 6月までは東証業種コード 28分類、それ以降については東証業種コード 33分類を使用している。

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5 分析結果

本節では、最初に倒産リスクの最も高いポートフォリオと低いポートフォリオがどのような企業特性を持

ち、また異なっているのかを示す。次に、倒産リスクと株式リターンの関係性に関する分析結果を、分位ポー

トフォリオおよびクロスセクショナル回帰についてそれぞれ示す。最後に、倒産リスクの高いポートフォリオ

と低いポートフォリオにおける株式所有状況の変化に関する結果を示す。

5.1 倒産リスクの最も高いポートフォリオと低いポートフォリオの企業特性

図 3 は、倒産リスク指標 (DD) による 10 分位ポートフォリオを構築した時の各ポートフォリオの企業特

性を示している。企業特性は、期待倒産確率 (EDP)、簿価時価比率 (BPR)、時価総額 (MV) の自然対数値、

日次ヒストリカル・ベータ (Beta)、Amihud [2002] の ILLIQ、売買回転率 (Turnover)、総資産経常利益率

(ROA)と負債比率 (Debt Ratio) の 8つが示されている。ILLIQと売買回転率は、各月末時点から過去 1年

間の日次データを用いて求めている。金融業以外の負債比率の計算には有利子負債を、また金融業については

総負債を用いている。その他の企業特性の算出方法は、クロスセクショナル回帰分析に使用する各変数と同一

である。以上の企業特性について、1978年 6月から 2014年 6月まで毎月、各ポートフォリオを構成する銘柄

の中央値をそれぞれ求めて時系列で描いている。なお、次節で示す分位ポートフォリオに基づく株式リターン

の分析とは異なり、毎月分位ポートフォリオを構築した時の結果を示している。

図 3から、各企業特性と倒産リスクとの関係性について以下のことが言える。(1) 簿価時価比率 (BPR) と

の関係性は、1990 年以前とそれ以降では全く異なっている。1990 年代以前においては、倒産リスクの最も

高いポートフォリオよりも低いポートフォリオの方が簿価時価比率 (BPR) が高い傾向にある。しかしなが

ら、1990年以降ではその関係性が逆あるいはなくなっており、大部分の期間について倒産リスクの高いポー

トフォリオの方が簿価時価比率 (BPR) が高い。(2) 時価総額 (MV) の自然対数値から、1980年代後半を除

いて、倒産リスクの最も高いポートフォリオは小型株である傾向が強い。(3) ベータ (Beta) から、倒産リス

クの最も高いポートフォリオは高いベータを持ち、逆に低いポートフォリオは低いベータを持っている。た

だし、1990 年代後半に倒産リスクの高いポートフォリオのベータが急激に低下していることがわかる。(4)

ILLIQから、倒産リスクの最も高いポートフォリオの流動性は大きく変化しており、特に 1990年代後半にお

いて急激に ILLIQが高くなっている。(5) 一方、売買回転率との関係性では 1990年代を除いて、倒産リスク

の最も高いポートフォリオの方が低いポートフォリオよりも売買回転率が高い傾向にある。(6) ROAとの関

係性は、倒産リスクの最も高いポートフォリオほど低く、逆に低いポートフォリオほど高い。(7) 逆に、負債

比率は倒産リスクの最も高いポートフォリオほど高く、逆に低いポートフォリオほど低いことを示している。

したがって、1990年以降における倒産リスクの最も高いポートフォリオは、簿価時価比率、ベータ、ILLIQ

が高く、また規模および ROAが小さいという極めてリスクの高い企業特性を持っていると言える。1990年

以前についても、簿価時価比率を除いて同様の特徴を持っている。一方で、倒産リスクの最も低いポートフォ

リオは簿価時価比率が高くなく、比較的規模が大きい。また、ベータおよび ILLIQが非常に低く、ROAが高

いという特徴がある。以上から、倒産リスクの最も高いポートフォリオと低いポートフォリオは倒産リスクの

高さだけでなく、企業特性についてもその多くが逆の傾向を示しており、簿価時価比率や規模といったリス

ク・ファクターとの関連性が高いことがわかった。

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図 3 倒産リスク指標 (DD) による 10分位ポートフォリオの企業特性 (各月末時点の中央値)

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5.2 分位ポートフォリオに基づく株式リターン分析

表 3は、倒産リスク指標 (DD) で 10分位ポートフォリオを構築した時の全期間の分析結果を示している。

分析期間は、1978年 7月から 2014年 6月までの 432ヶ月間である。表のパネル Aは、各分位ポートフォリ

オの平均超過リターンおよびポートフォリオの企業特性を示している。平均超過リターンは、分析対象全銘柄

の時価総額加重平均リターンを差し引いて求めている。ポートフォリオの企業特性は、各分位ポートフォリオ

ごとに 6 月末時点 (ポートフォリオ構築時点) における各指標の中央値をそれぞれ求め、36 年間の平均値を

求めている。表のパネル Bは、各分位ポートフォリオの株式リターンに対して、Carhart [1997] の 4ファク

ター・モデルを適用した時の回帰結果を示している。また、図 4は、各分位ポートフォリオの累積収益率およ

び倒産リスクの最も高いポートフォリオと低いポートフォリオのリターン・スプレッドを表している。

表 3のパネル Aから、倒産リスクの違いによる超過リターンの差はほとんどないことがわかる。倒産リス

クの最も高いポートフォリオと低いポートフォリオのリターン・スプレッドは、年率約-1.0%であり、0に近

い値を示している。また、各分位ポートフォリオの簿価時価比率 (BPR) は、倒産リスクの最も高いポート

フォリオと低いポートフォリオにおいて共に低い値を示している。さらに、倒産リスクの高いポートフォリオ

ほど小型株であり、ベータ、ILLIQおよび売買回転率が高い傾向にある。パネル Bの 4ファクター・モデル

の結果を見ても、アルファは全てにおいて有意ではなく、倒産リスクと株式リターンに何の関係性もないこと

が示唆される。しかしながら、図 4を見てみると、リターン・スプレッドが大きく上昇している期間と下落し

ている期間に分かれており、倒産リスクと株式リターンの関係性が時期によって異なっていることが示されて

いる。したがって、全期間の結果は、異なる関係性を示す時期を含んでおり、それらが相殺された結果を示し

ていると考えられる。

図 4 1978年 7月から 2014年 6月までの 10分位ポートフォリオの累積超過リターン (%)

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表 3 倒産リスク指標 (DD) に基づく 10分位ポートフォリオの分析結果 (全期間)

1978年 7月から 2014年 6月 (432ヶ月)

パネル A:平均超過リターン (年率%) およびポートフォリオの企業特性

平均超過 ポートフォリオの企業特性 (ポートフォリオ構築時点の中央値の 36年間の平均値)

倒産リスク リターン (%) BPR log (MV) Beta DD ILLIQ Turnover ROA (%) Debt Ratio (%)

High 1.657 0.705 23.399 0.818 2.308 0.491 0.649 0.640 50.921

2 0.727 0.756 23.908 0.796 3.018 0.208 0.489 1.456 43.914

3 1.962 0.755 24.064 0.744 3.556 0.153 0.430 2.065 38.176

4 0.873 0.743 24.209 0.706 4.108 0.119 0.393 2.733 33.635

5 1.705 0.742 24.252 0.661 4.728 0.115 0.352 3.403 28.565

6 0.412 0.748 24.391 0.616 5.489 0.102 0.336 3.975 23.924

7 -1.115 0.708 24.481 0.573 6.500 0.086 0.314 4.738 19.265

8 -0.780 0.689 24.612 0.528 8.061 0.079 0.298 5.650 13.884

9 -0.097 0.656 24.866 0.491 11.258 0.060 0.288 6.829 8.445

Low 0.661 0.699 24.553 0.433 31.949 0.085 0.244 7.869 2.325

Spr. (Low - High) -0.996

パネル B:4ファクター・モデルの回帰結果 (年率 %)

倒産リスク 平均リターン α EVW SMB HML MOM R2

High 7.675 -2.175 1.368 *** 0.049 0.437 *** -0.226 *** 0.674

(0.480) (0.000) (0.522) (0.001) (0.003)

2 6.745 -1.277 1.243 *** 0.023 0.205 *** -0.147 *** 0.794

(0.523) (0.000) (0.668) (0.005) (0.001)

3 7.980 0.451 1.160 *** -0.007 0.167 ** -0.083 ** 0.822

(0.797) (0.000) (0.885) (0.011) (0.046)

4 6.891 -0.664 1.099 *** 0.025 0.195 *** -0.043 0.838

(0.670) (0.000) (0.514) (0.005) (0.249)

5 7.723 0.071 1.113 *** 0.083 ** 0.197 *** -0.052 * 0.879

(0.957) (0.000) (0.027) (0.000) (0.087)

6 6.430 -0.437 0.947 *** 0.054 0.157 *** 0.003 0.858

(0.718) (0.000) (0.119) (0.003) (0.922)

7 4.903 -0.920 0.903 *** 0.096 *** 0.016 -0.059 ** 0.832

(0.461) (0.000) (0.003) (0.758) (0.028)

8 5.238 0.658 0.839 *** 0.116 *** -0.154 ** -0.027 0.763

(0.682) (0.000) (0.008) (0.048) (0.474)

9 5.921 0.600 0.800 *** 0.052 -0.014 0.022 0.760

(0.674) (0.000) (0.177) (0.818) (0.531)

Low 6.679 1.976 0.786 *** 0.028 -0.102 0.020 0.656

(0.301) (0.000) (0.599) (0.210) (0.621)

Spr. (Low - High) -0.996 1.437 -0.581 *** -0.020 -0.537 *** 0.247 ** 0.211

(0.740) (0.000) (0.854) (0.006) (0.014)

(注) ***、**、*は、それぞれ有意水準 1%、5%、10%で平均 0を帰無仮説 (両側) とする統計的仮説検定を棄却できることを表す。また、t値の算出には、White [1980] の分散不均一性を考慮した修正済み標準誤差を用いた。

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図 5 1978年 7月から 2014年 6月までのリターン・スプレッド (%)と EDP (%)の時系列推移

図 5は、図 4のリターン・スプレッド (右軸) と図 1の EDP (左軸) を重ねた図を示している。図から、市

場全体の倒産リスクが上昇した時にリターン・スプレッドが大きく上昇している傾向が見て取れる。1978年 7

月から 2014年 6月までの全期間の相関係数 (スピアマン順位相関係数) は約 0.44であり、やや高い正の相関

が示されている。また、倒産リスクが大きく増加した期間である 1996年 7月から 2010年 6月までの相関係

数は約 0.79であり、非常に高い正の相関関係がある。リターン・スプレッドと倒産リスクの正の相関は、倒

産リスクの増加時において、倒産リスクの最も高いポートフォリオの超過リターンが下落、あるいは逆に倒産

リスクの最も低いポートフォリオの超過リターンが上昇している、またはその両方を意味している。したがっ

て、倒産リスクと株式リターンの関係性を明らかにするためには、倒産リスクが大きく増加した期間とそうで

ない期間に分けた分析が必要である。

表 4は、1996年 6月から 2000年 6月と 2006年 6月から 2010年 6月までの 8年間の分析結果を示してい

る。それぞれの期間は、市場全体の倒産リスクが大きく増加した時期を含んでいる。表のパネル Aから、平均

超過リターンは倒産リスクの高いポートフォリオほど低い傾向にあると言える。倒産リスクの最も高いポート

フォリオと低いポートフォリオのリターン・スプレッドは、年率約 24.3%と非常に高い値を示している。た

だし、倒産リスクの最も高いポートフォリオは、倒産リスクの低いポートフォリオに比べて、簿価時価比率

(BPR)とベータ (Beta) が高く、規模 (MV) が小さいという特徴を持っている。パネル Bの 4ファクター・

モデルの結果を見ると、倒産リスクの最も高いポートフォリオは有意水準 5%で統計的に有意な負のアルファ

が示されていることがわかる。また、倒産リスクの最も低いポートフォリオは逆に有意水準 1%で有意な正の

アルファが示されており、同様に倒産リスクの最も高いポートフォリオとのリターン・スプレッドも有意な正

のアルファとなっている。したがって、倒産リスクの増加時における倒産リスクと株式リターンの関係性は負

であると言える。また、この関係性は 4ファクター・モデルのリスク調整済みリターンでは説明できない。

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表 4 倒産リスク指標 (DD) に基づく 10分位ポートフォリオの分析結果 (倒産リスクの増加期間)

1996年 7月から 2000年 6月、2006年 7月から 2010年 6月 (96ヶ月)

パネル A:平均超過リターン (年率%) およびポートフォリオの企業特性

平均超過 ポートフォリオの企業特性 (ポートフォリオ構築時点の中央値の 8年間の平均値)

倒産リスク リターン (%) BPR log (MV) Beta DD ILLIQ Turnover ROA Debt Ratio

High -14.027 0.930 23.469 1.043 2.002 0.590 0.885 0.607 48.614

2 -7.658 0.971 24.029 0.992 2.689 0.231 0.636 1.463 41.656

3 -1.853 0.939 24.184 0.925 3.215 0.130 0.520 1.999 36.174

4 -4.849 0.928 24.216 0.834 3.776 0.127 0.434 2.648 31.261

5 0.017 0.909 24.210 0.776 4.420 0.108 0.405 3.350 26.244

6 -3.322 0.895 24.472 0.721 5.212 0.092 0.361 3.790 21.143

7 1.912 0.822 24.541 0.655 6.254 0.067 0.348 4.509 16.674

8 4.997 0.799 24.642 0.627 7.949 0.061 0.328 5.207 10.417

9 5.257 0.733 24.948 0.550 11.706 0.035 0.333 6.361 6.053

Low 10.227 0.781 24.636 0.580 34.923 0.064 0.296 7.640 0.171

Spr. (Low - High) 24.254

パネル B:4ファクター・モデルの回帰結果 (年率 %)

倒産リスク 平均リターン α EVW SMB HML MOM R2

High -19.434 -13.389 ** 1.200 *** -0.214 0.621 *** -0.603 *** 0.755

(0.030) (0.000) (0.199) (0.003) (0.000)

2 -13.065 -6.828 1.245 *** -0.203 0.178 -0.357 *** 0.772

(0.176) (0.000) (0.119) (0.295) (0.000)

3 -7.261 -0.076 1.257 *** 0.022 0.280 ** -0.229 *** 0.838

(0.985) (0.000) (0.864) (0.043) (0.007)

4 -10.256 -4.587 1.083 *** -0.038 0.302 ** -0.112 0.811

(0.203) (0.000) (0.704) (0.029) (0.152)

5 -5.390 1.303 1.008 *** 0.246 *** 0.430 *** -0.146 *** 0.923

(0.546) (0.000) (0.000) (0.000) (0.001)

6 -8.730 -3.856 0.790 *** 0.144 ** 0.245 *** -0.044 0.829

(0.111) (0.000) (0.048) (0.010) (0.297)

7 -3.496 1.500 0.794 *** 0.161 ** 0.141 -0.009 0.814

(0.554) (0.000) (0.025) (0.134) (0.835)

8 -0.411 5.847 * 0.844 *** 0.303 *** -0.458 *** 0.084 * 0.791

(0.055) (0.000) (0.002) (0.001) (0.088)

9 -0.151 4.755 ** 0.881 *** 0.073 -0.116 0.165 *** 0.857

(0.036) (0.000) (0.149) (0.103) (0.000)

Low 4.820 9.029 *** 0.959 *** -0.138 -0.145 0.204 *** 0.798

(0.006) (0.000) (0.185) (0.260) (0.000)

Spr. (Low - High) 24.254 22.164 *** -0.240 ** 0.077 -0.766 *** 0.808 *** 0.557

(0.003) (0.047) (0.713) (0.007) (0.000)

(注) ***、**、*は、それぞれ有意水準 1%、5%、10%で平均 0を帰無仮説 (両側) とする統計的仮説検定を棄却できることを表す。また、t値の算出には、White [1980] の分散不均一性を考慮した修正済み標準誤差を用いた。

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表 5 は、1978 年 6 月から 1996 年 6 月、2000 年 6 月から 2006 年 6 月および 2010 年 6 月から 2014 年 6

月までの 28 年間の分析結果を示している。これらの期間は、市場全体の倒産リスクが大きく上昇した時期

を含んでいない。表のパネル Aから、平均超過リターンは倒産リスクの高いポートフォリオほど高い傾向に

あると言える。倒産リスクの最も高いポートフォリオと低いポートフォリオのリターン・スプレッドは年率

約-8.0%と低い値を示している。しかしながら、パネル Bの 4ファクター・モデルの結果では、アルファは全

てにおいて有意ではない結果となっている。倒産リスクの高いポートフォリオほど、EVWのファクターが高

くなっており、全てにおいて有意水準 1%で有意な結果となっている。したがって、倒産リスクが大きく上昇

した時期を除いた場合、倒産リスクと株式リターンの関係性は正であると言える。ただし、倒産リスクの高い

ポートフォリオの高いリターンはリスク調整済みリターンで説明され、倒産リスクが大きく上昇した時期の結

果とは異なっている。

次に、簿価時価比率 (BPR) で制御した場合における倒産リスクと株式リターンの関係性を明らかにする。

そこで、分析対象銘柄を簿価時価比率 (BPR) で 3分位 (東証 1部上場企業のみで求めた 30%点と 70%点)

し、さらに各ポートフォリオを倒産リスク指標 (DD) で 5分位した時の 15分位ポートフォリオの分析結果を

表 6に示す。期間は、1996年 6月から 2000年 6月と 2006年 6月から 2010年 6月までの 8年間であり、市

場全体の倒産リスクが大きく上昇した時期を含んでいる。表のパネル Aは、各分位ポートフォリオの平均超

過リターンを示しており、パネル Bに 4ファクター・モデルの回帰結果を示している。

表のパネル Aから、特にグロース株において倒産リスクと株式リターンに大きな負の関係性が見て取れる。

グロース株で倒産リスクの最も高いポートフォリオと低いポートフォリオのリターン・スプレッドは年率約

22.4%と非常に高い。また、倒産リスクの最も高いバリュー株の株式リターンも低く、年率約-10.4%となっ

ている。パネル Bの 4ファクター・モデルの回帰結果では、グロース株の倒産リスクの高いポートフォリオと

低いポートフォリオに、それぞれ有意水準 5%と 1%で有意な負のアルファと正のアルファが示されている。

また、それらのリターン・スプレッドも有意水準 1%で有意な正のアルファとなっている。一方で、バリュー

株の倒産リスクの高いポートフォリオと低いポートフォリオの p 値はそれぞれ約 0.12 と約 0.13 と有意水準

10%で棄却されない。ただし、これらのリターン・スプレッドは有意水準 10%で有意な正のアルファとなっ

ていることがわかる。したがって、倒産リスクの上昇時における倒産リスクと株式リターンの負の関係性は、

簿価時価比率を制御しても同様の結果が得られた。特に、グロース株において負の関係性が強く、リスク調整

済みリターンでも説明できないことがわかった。

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表 5 倒産リスク指標 (DD) に基づく 10分位ポートフォリオの分析結果 (倒産リスクの増加期間を除く)

1978年 7月から 1996年 6月、2000年 7月から 2006年 6月、2010年 7月から 2014年 6月 (336ヶ月)

パネル A:平均超過リターン (年率 %)およびポートフォリオの企業特性

平均超過 ポートフォリオの企業特性 (ポートフォリオ構築時点の中央値の 26年間の平均値)

倒産リスク リターン (%) BPR log (MV) Beta DD ILLIQ Turnover ROA Debt Ratio

High 5.992 0.654 23.349 0.761 2.406 0.452 0.610 0.696 51.153

2 3.041 0.716 23.865 0.748 3.136 0.197 0.458 1.510 44.045

3 3.022 0.720 24.014 0.698 3.683 0.156 0.413 2.144 38.283

4 2.510 0.705 24.190 0.674 4.242 0.114 0.391 2.805 33.849

5 2.190 0.710 24.251 0.631 4.868 0.114 0.346 3.486 28.810

6 1.510 0.719 24.351 0.588 5.639 0.103 0.335 4.103 24.329

7 -1.976 0.690 24.444 0.552 6.670 0.090 0.307 4.829 19.626

8 -2.414 0.670 24.580 0.502 8.249 0.084 0.291 5.820 14.504

9 -1.587 0.643 24.819 0.476 11.439 0.066 0.276 6.960 8.851

Low -1.992 0.687 24.481 0.397 33.166 0.092 0.234 7.899 2.840

Spr. (Low - High) -7.984

パネル B:4ファクター・モデルの回帰結果 (年率 %)

倒産リスク 平均リターン α EVW SMB HML MOM R2

High 15.325 2.167 1.347 *** 0.058 0.206 0.006 0.668

(0.507) (0.000) (0.472) (0.186) (0.952)

2 12.375 0.656 1.209 *** 0.051 0.132 * -0.033 0.812

(0.739) (0.000) (0.357) (0.082) (0.579)

3 12.356 2.319 1.094 *** -0.045 0.027 0.067 0.841

(0.182) (0.000) (0.373) (0.668) (0.227)

4 11.843 1.066 1.084 *** 0.027 0.111 0.013 0.851

(0.518) (0.000) (0.499) (0.116) (0.752)

5 11.524 1.023 1.117 *** 0.021 0.049 0.061 * 0.892

(0.472) (0.000) (0.611) (0.375) (0.096)

6 10.844 0.741 0.981 *** 0.020 0.104 ** 0.034 0.877

(0.555) (0.000) (0.587) (0.047) (0.296)

7 7.358 -1.774 0.942 *** 0.090 ** -0.004 -0.085 *** 0.844

(0.197) (0.000) (0.012) (0.951) (0.010)

8 6.920 -2.089 0.872 *** 0.088 ** 0.038 -0.132 ** 0.792

(0.209) (0.000) (0.044) (0.597) (0.017)

9 7.747 -1.291 0.806 *** 0.072 0.093 -0.079 0.753

(0.429) (0.000) (0.116) (0.191) (0.148)

Low 7.342 -0.872 0.776 *** 0.111 * 0.001 -0.110 ** 0.655

(0.687) (0.000) (0.072) (0.990) (0.029)

Spr. (Low - High) -7.984 -6.525 -0.567 *** 0.058 -0.197 -0.115 0.156

(0.168) (0.000) (0.635) (0.348) (0.396)

(注) ***、**、*は、それぞれ有意水準 1%、5%、10%で平均 0を帰無仮説 (両側) とする統計的仮説検定を棄却できることを表す。また、t値の算出には、White [1980] の分散不均一性を考慮した修正済み標準誤差を用いた。

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表 6 倒産リスク指標 (DD) に基づく 10分位ポートフォリオの分析結果 (倒産リスクの増加期間)

1996年 7月から 2000年 6月および 2006年 7月から 2010年 6月 (96ヶ月)

パネル A:平均超過リターン (年率 %)

倒産リスク

簿価時価比率 (BPR) High 2 3 4 Low Spr. (High - Low)

Low -13.074 -5.312 -2.379 4.070 9.332 22.406

Middle -6.295 -2.623 1.686 3.684 3.377 9.672

High -10.446 -2.302 -1.677 -2.725 1.605 12.051

パネル B:4ファクター・モデルの回帰結果 (年率 %)

簿価時価比率 (BPR) 倒産リスク 平均リターン α EVW SMB HML MOM R2

High -18.481 -12.179 ** 1.264 *** -0.301 ** -0.068 -0.534 *** 0.749

(0.035) (0.000) (0.044) (0.745) (0.000)

2 -10.719 -5.010 1.188 *** -0.202 ** -0.090 -0.129 * 0.804

(0.203) (0.000) (0.041) (0.597) (0.053)

3 -7.787 -2.496 0.820 *** 0.125 -0.065 -0.123 ** 0.818

Low (0.350) (0.000) (0.161) (0.485) (0.038)

4 -1.338 4.733 ** 0.946 *** 0.182 *** -0.432 *** 0.154 *** 0.887

(0.032) (0.000) (0.001) (0.000) (0.000)

Low 3.925 8.180 *** 0.922 *** -0.108 -0.269 ** 0.196 *** 0.835

(0.005) (0.000) (0.238) (0.017) (0.000)

Spr. (High - Low) 22.406 20.105 *** -0.341 *** 0.193 -0.202 0.729 *** 0.441

(0.007) (0.004) (0.319) (0.479) (0.000)

High -11.703 -5.618 1.194 *** -0.128 0.557 *** -0.359 *** 0.781

(0.260) (0.000) (0.316) (0.000) (0.000)

2 -8.031 -1.649 1.035 *** 0.156 ** 0.614 *** -0.223 *** 0.927

(0.474) (0.000) (0.024) (0.000) (0.000)

3 -3.722 1.736 0.821 *** 0.255 *** 0.421 *** -0.016 0.863

Middle (0.469) (0.000) (0.000) (0.000) (0.679)

4 -1.724 3.236 0.810 *** 0.206 *** 0.424 *** 0.090 ** 0.846

(0.178) (0.000) (0.004) (0.000) (0.014)

Low -2.031 1.361 0.692 *** 0.047 0.471 *** 0.116 *** 0.742

(0.610) (0.000) (0.526) (0.000) (0.005)

Spr. (High - Low) 9.672 6.726 -0.501 *** 0.176 -0.087 0.475 *** 0.396

(0.301) (0.000) (0.318) (0.603) (0.000)

High -15.854 -8.570 1.264 *** 0.072 1.201 *** -0.477 *** 0.824

(0.122) (0.000) (0.659) (0.000) (0.000)

2 -7.710 0.016 1.018 *** 0.543 *** 1.009 *** -0.046 0.925

(0.995) (0.000) (0.000) (0.000) (0.364)

3 -7.085 0.097 0.937 *** 0.516 *** 1.003 *** -0.077 * 0.906

High (0.971) (0.000) (0.000) (0.000) (0.098)

4 -8.133 -0.970 0.888 *** 0.574 *** 0.750 *** 0.047 0.902

(0.689) (0.000) (0.000) (0.000) (0.182)

Low -3.803 3.158 0.864 *** 0.561 *** 0.679 *** 0.073 ** 0.910

(0.125) (0.000) (0.000) (0.000) (0.018)

Spr. (High - Low) 12.051 11.475 * -0.399 *** 0.489 ** -0.522 *** 0.550 *** 0.443

(0.091) (0.000) (0.016) (0.002) (0.000)

(注) ***、**、*は、それぞれ有意水準 1%、5%、10%で平均 0を帰無仮説 (両側) とする統計的仮説検定を棄却できることを表す。また、t値の算出には、White [1980] の分散不均一性を考慮した修正済み標準誤差を用いた。

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5.3 クロスセクショナル回帰に基づく株式リターン分析

図 6は、1978年 6月から 2013年 6月まで式 (12)の重回帰分析を毎月行った時の回帰係数の時系列推移を

示している。上から順番に、切片、時価総額 (MV) の自然対数値、簿価時価比率 (BPR)、ベータ (Beta)、倒

産リスク指標 (DD) の結果がそれぞれ示されている。図の灰色の部分は毎月、各回帰係数を t検定した時に、

有意水準 10%で統計的に有意であることを意味している。また、表 7は、回帰係数間の相関係数行列を示し

ている。

図 6の各回帰係数から、以下のことが言える。(1) 時価総額 (MV) の自然対数値は、小型株効果を示す時期

と逆に小型株よりも大型株の方が高いリターンを生み出している時期がある。(2) 簿価時価比率 (BPR) は、

一部の期間を除いたほとんどの期間において正の値を示しており、グロース株よりもバリュー株の方が高いリ

ターンを継続的に生み出していると言える。(3) 倒産リスク指標 (DD) は、倒産リスクが上昇している時期に

おいて正の値を示しており、それ以外の期間は負の値あるいは 0に近い値を示している。また、表 7から、各

回帰係数の相関係数の絶対値が約 0.26から約 0.63の範囲に収まっており、比較的高い相関があると言える。

切片、簿価時価比率 (BPR) およびベータ (Beta) は、倒産リスク指標 (DD) と正の相関を持ち、逆に時価総

額 (MV) の自然対数値のみ負の相関を持っていることがわかる。

表 7 クロスセクショナル回帰分析の回帰係数の相関係数行列

切片 log (MV) BPR Beta DD

切片 1.000 -0.598 0.420 0.522 -0.631log (MV) -0.517 1.000 -0.351 -0.400 0.338BPR 0.400 -0.368 1.000 0.267 -0.421Beta 0.492 -0.484 0.352 1.000 -0.457DD -0.594 0.323 -0.399 -0.486 1.000

(注) 左下三角行列はピアソン積率相関係数を、右上三角行列はスピアマン順位相関係数をそれぞれ表している。

表 8は、各期間における回帰係数の検定結果を示している。パネル Aは 1978年 6月から 2013年 6月まで

の全期間、パネル Bは 1995年 6月から 1999年 6月および 2005年 6月から 2009年 6月までの倒産リスク

の増加期間、パネル Cは 1978年 6月から 1995年 6月、2000年 6月から 2006年 6月および 2010年 6月か

ら 2014年 6月までの倒産リスクの増加期間を除いた期間、の結果をそれぞれ示している。また、重回帰分析

における調整済み決定係数の平均値もそれぞれの期間について示している。

表のパネル A から、ベータ (Beta) 以外の回帰係数はどれも有意水準 1% で統計的に有意な値となってい

る。時価総額 (MV) の自然対数値と簿価時価比率 (BPR) は、それぞれ負の値と正の値を示しており、規模効

果とバリュー株効果が存在していることを示している。また、倒産リスク指標 (DD) は負の値を示しており、

倒産リスクが高ければ高いほど 1年後の株式リターンが高い傾向にあると言える。パネル Cについても、ベー

タ (Beta) の回帰係数が有意水準 1%で有意な値となっている点を除いて、同様の結果を示している。一方

で、倒産リスクの増加期間の結果を示すパネル Bは、時価総額 (MV) の自然対数値と倒産リスク指標 (DD)

の符号が共に正の値になっていることがわかる。つまり、逆の規模効果が存在していること、また倒産リスク

が高ければ高いほど株式リターンが低いこと、をそれぞれ意味している。

以上より、分位ポートフォリオに基づく株式リターンの分析で得られた結果は、クロスセクショナル回帰分

析においても頑健であることがわかった。具体的には、倒産リスク増加期間において倒産リスクと株式リター

ンの関係性は負であること、逆に倒産リスクが低い時期においては正の関係性が見られたことである。ただ

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し、全期間における分析結果は異なっており、分位ポートフォリオでは何の関係性も見られなかったが、クロ

スセクショナル回帰分析では倒産リスクと株式リターンの関係性が正であることを示している。

図 6 1978年 6月から 2013年 6月までのクロスセクショナル回帰分析の回帰係数の時系列推移

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表 8 クロスセクショナル回帰分析の回帰係数の検定結果

パネル A:1978年 6月から 2013年 6月 (421ヶ月)

回帰係数 平均値 t値 p値 調整済み決定係数 (平均値)

切片 10.341 *** 8.019 0.000log (MV) -0.911 *** -2.659 0.008BPR 3.091 *** 21.674 0.000 0.174Beta 0.239 0.969 0.333DD -0.312 *** -3.325 0.001

パネル B:1995年 6月から 1999年 6月、2005年 6月から 2009年 6月 (98ヶ月)

回帰係数 平均値 t値 p値 調整済み決定係数 (平均値)

切片 -8.394 *** -5.155 0.000log (MV) 3.796 *** 7.165 0.000BPR 2.003 *** 6.993 0.000 0.181Beta -1.840 *** -4.185 0.000DD 0.924 *** 6.298 0.000

パネル C:1978年 6月から 1995年 6月、2000年 6月から 2006年 6月、2010年 6月から 2014年 6月 (323ヶ月)

回帰係数 平均値 t値 p値 調整済み決定係数 (平均値)

切片 16.026 *** 10.919 0.000log (MV) -2.339 *** -6.108 0.000BPR 3.421 *** 21.371 0.000 0.172Beta 0.870 *** 3.070 0.002DD -0.687 *** -6.512 0.000

(注) ***、**、*は、それぞれ有意水準 1%、5%、10%で平均 0を帰無仮説 (両側) とする統計的仮説検定を棄却できることを表す。また、t値の算出には、White [1980] の分散不均一性を考慮した修正済み標準誤差を用いた。

5.4 倒産リスクの最も高いポートフォリオと低いポートフォリオの株式所有状況

図 7は、倒産リスク指標 (DD) による 10分位ポートフォリオを構築した時の各分位ポートフォリオの株式

所有状況を示している。金融機関、金融商品取引業者、その他法人、外国法人等および個人・その他の株式所

有比率について、 1983年 1月から 2014年 6月まで毎月、各ポートフォリオを構成する銘柄の平均値をそれ

ぞれ求めて時系列で描いている*7。データの制約上、1983年以降のみの結果を示している。また、図 3と同

様に、毎月分位ポートフォリオを構築した時の結果を示している。

図 7から、1990年代後半と 2000年代後半の倒産リスク増加時における株式所有状況の変化について次のこ

とが言える。(1) 金融機関について見ると、倒産リスクの最も高い銘柄の株式所有比率は 1990年代後半にお

いて約 10%近く下がっていることがわかる。また、2000年代後半においても同様で、倒産リスクの高い銘柄

の株式所有比率が下がる傾向にある。ただし、倒産リスクの最も低い銘柄の株式所有比率についても 1995年

以降一貫して下がり続けている。(2) 金融商品取引業者は、倒産リスクが増大している期間において、倒産リ

スクの最も高い銘柄の株式所有比率が大きく下がっている。この傾向は、1990年代後半と 2000年代後半につ

いてほとんど同じ傾向を示していることがわかる。(3) その他法人は、2000年代後半においてのみ傾向が見ら

れ、倒産リスクの最も高い銘柄の株式所有比率が下がっている。(4) 外国法人等は、1990年代にかけて倒産リ

スクの最も低い銘柄の株式所有比率が大きく上がっている。また、2000年代後半にかけて倒産リスクの最も

高い銘柄の株式所有比率が特に上がっているが、その後急激に下がっている。(5) 個人・その他は、1990年以

降において全体的な株式所有比率が急激に伸びており、最も倒産リスクの高い銘柄が特に顕著である。

*7 政府公共団体を含めた株式所有比率の合計が 90%以上 110%以下の銘柄を分析対象にしている。

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以上から、1990年代後半の倒産リスク増加時において、金融機関および金融商品取引業者の株式所有比率

が下がっており、逆に個人・その他の株式所有比率が上がっていると言える。また、2000年代後半において

も、金融機関および金融商品取引業者の株式所有比率が下がっており、逆に外国法人等が上がっていることが

わかる。ただし、2007年 1月以降から下がり続けている金融商品取引業者に遅れているものの、外国法人等

の株式所有比率も 2009年 1月以降は下がっている。したがって、倒産リスク増加時において、金融機関や金

融商品取引業者はリスク回避的な行動を取る可能性が示唆される。

図 7 倒産リスク指標 (DD) による 10分位ポートフォリオの株式所有状況 (各月末時点の平均値)

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6 おわりに

本稿は、1978年から 2014年までの東証 1部・2部上場企業 (金融業含む) を対象に、日本株式市場におけ

る倒産リスクと株式リターンの関係性についての分析を試みた。倒産リスクは、主に株価情報から求められる

オプションアプローチによる倒産確率推定モデルから推計した。分析方法は、分位ポートフォリオとクロスセ

クショナル回帰分析に基づく方法で行った。分位ポートフォリオに基づく株式リターンの分析では、倒産リス

クの大小による株式リターンの違いを明らかにした。また、各分位ポートフォリオを対象に Charat [1997] の

4ファクター・モデルを適用することで、リスク調整済みリターンについても示した。クロスセクショナル回

帰分析では、各月末時点において推計された倒産リスク指標 (DD) が 1年後の株式リターンに与える影響を

分析した。さらに、倒産リスクの最も高いポートフォリオと低いポートフォリオの企業特性および株式所有割

合についても示した。

その結果、倒産リスクと株式リターンの関係性は市場全体の倒産リスクと高い関連性があることを発見し

た。倒産リスクが高まった時期において、倒産リスクと株式リターンの関係性は負であり、倒産リスクの非常

に高い銘柄から構成されたポートフォリオは 4 ファクター・モデルでは説明できない大きな負のアルファが

示された。一方で、倒産リスクが低い時期においては、倒産リスクと株式リターンの関係性は正であること

がわかった。しかしながら、倒産リスクの高い銘柄から構成されたポートフォリオのアルファは有意ではな

く、マーケット・ファクターが非常に高いことが示された。また、1990年以降における倒産リスクの最も高い

ポートフォリオは、簿価時価比率、ベータ、ILLIQが高く、規模および ROAが小さいという極めてリスクの

高い企業特性を持っていることを示した。逆に、倒産リスクの最も低いポートフォリオは簿価時価比率が高く

なく、比較的規模が大きい上に、ベータおよび ILLIQが非常に低く、ROAが高いという特徴を持つことがわ

かった。以上より、倒産リスクを負担することによるプラスのリスク・プレミアムは確かに存在するものの、

倒産リスク増加時における異常に高い負のリターンによって相殺されていることが明らかとなった。さらに、

倒産リスク増加時において、金融機関や金融商品取引業者は倒産リスクの最も高い銘柄の株式所有割合を下げ

ていることが発見した。よって、倒産リスクの最も高いポートフォリオの異常に高い負のリターンが、機関投

資家のリスク回避的な行動によって生じた可能性が示唆された。

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