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地理・環境・防災教育に使える位置情報型 AR アプリの開発 鵜川義弘・齋藤有季・伊藤 悟 Development of Location Based AR Application for Geography Education, Environment Education and Disaster Prevention Education Yoshihiro UGAWA, Yuki SAITO and Satoru ITOH Abstract: Using the Wikitude SDK and Google Maps, we developed a location based AR application for Geography Education, Environment Education and Disaster Prevention Education. Since a prototype for Android smart phone was made, this report explains how to use it. Keywords: AR(Argument Reality),Wikitude SDK, Google マップ(Google Maps) 1. はじめに 地理・環境・防災教育では、フィールドワーク が重要な活動の1つである。活動の際、スマート フォンのカメラを向け、その場に応じた情報をカ メラ映像内に示すことができれば、学習者の理解 度を飛躍的に高めることに繋がる。これを実現す るために、位置情報型 AR アプリの開発をすすめ てきた。 これまで、無料で使える AR サーバーとして、 Metaio 社 の Junaio 、 Wikitude 社 の Wikitude Studio を使ってきた(秋本ほか 2015,2017, 鵜川 ほか2012,2014,2015,2017)。しかし、会社の都合 による吸収合併やサービスの停止などが頻繁に 起こり、安定的に使える環境の開発が必要になっ た。 そこで、開発環境 Wikitude SDKを用いて Google マップで作成した地図を表示できるスマートフ ォン用のアプリケーションを作成することにし、 鵜川義弘 〒980-0845 仙台市荒巻字青葉 149 宮城教育大学 教員キャリア研究機構 齋藤有季 (同上) 伊藤 悟 〒920-1192 石川県金沢市角間町 金沢大学 人間社会研究域 人間科学系 Android 版について、試作アプリを利用できるよ うになったので紹介する。 2. 試作アプリの使用方法 試作アプリ内に表示する POI (Point of Interest)は、Googleマップで作成する。まずは、 マイマップで情報を入力する。Wikitude Studio で使っていた地図が、そのまま使える。 1 マイマップで地図を編集 図1 マイマップ編集画面

地理・環境・防災教育に使える位置情報型ARアプリ …gisa-japan.org/conferences/proceedings/2017/papers/A55.pdf地理・環境・防災教育に使える位置情報型ARアプリの開発

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地理・環境・防災教育に使える位置情報型 AR アプリの開発

鵜川義弘・齋藤有季・伊藤 悟

Development of Location Based AR Application for Geography Education,

Environment Education and Disaster Prevention Education

Yoshihiro UGAWA, Yuki SAITO and Satoru ITOH

Abstract: Using the Wikitude SDK and Google Maps, we developed a location based AR

application for Geography Education, Environment Education and Disaster Prevention

Education. Since a prototype for Android smart phone was made, this report explains how to

use it.

Keywords: AR(Argument Reality),Wikitude SDK, Googleマップ(Google Maps)

1. はじめに

地理・環境・防災教育では、フィールドワーク

が重要な活動の1つである。活動の際、スマート

フォンのカメラを向け、その場に応じた情報をカ

メラ映像内に示すことができれば、学習者の理解

度を飛躍的に高めることに繋がる。これを実現す

るために、位置情報型 AR アプリの開発をすすめ

てきた。

これまで、無料で使える AR サーバーとして、

Metaio 社の Junaio、Wikitude 社の Wikitude

Studio を使ってきた(秋本ほか 2015,2017, 鵜川

ほか 2012,2014,2015,2017)。しかし、会社の都合

による吸収合併やサービスの停止などが頻繁に

起こり、安定的に使える環境の開発が必要になっ

た。

そこで、開発環境Wikitude SDKを用いてGoogle

マップで作成した地図を表示できるスマートフ

ォン用のアプリケーションを作成することにし、

鵜川義弘 〒980-0845 仙台市荒巻字青葉 149

宮城教育大学 教員キャリア研究機構

齋藤有季 (同上)

伊藤 悟 〒920-1192 石川県金沢市角間町

金沢大学 人間社会研究域 人間科学系

Android 版について、試作アプリを利用できるよ

うになったので紹介する。

2. 試作アプリの使用方法

試作アプリ内に表示する POI (Point of

Interest) は、Google マップで作成する。まずは、

マイマップで情報を入力する。Wikitude Studio

で使っていた地図が、そのまま使える。

1 マイマップで地図を編集

図 1 マイマップ編集画面

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2 共有ボタンを押し、

図 2 共有ボタン

3 以下の「5 地図選択ページ」で、地図データ

の読み込みをするには「オン - リンクを知

っている全員で共有」に共有設定を変更する

必要がある。

図 3 共有設定

4 共有するリンクを以下でコピーし、

図 4 共有するリンク

5 地図選択ページにペーストし ADD ボタンを

押す。

https://ar.miyakyo-u.ac.jp/cgi-bin/ChangeGoogleMap.cgi

図 5 地図選択ページ

Google マップの URL は長く、MAP の ID だけを

取り出すにしても、パソコンでの作業が必要で、

スマートフォンのみで入力することは難しい。

地図編集後にパソコンでの登録操作をのみ想定

しておけば良い。ただ、フィールドに出ていると

きに、過去に登録した地図と入れ替えたい場合用

に、スマートフォンからでも地図を入れ替えられ

るような地図選択ページとした(図 6)。

図 6 地図選択ページ QR コード

3. 試作アプリのインストール方法

試作したアプリは Android 用で、バージョン

4.03 以上にインストールできる。iPhone, iPad

用の iOS 版は現在開発中である。

1 インストールしたいAndroid端末の設定>セ

キュリティ>「提供元不明のアプリのインス

トールを許可する」を ON にする。

2 インストールしたい端末で

https://ar.miyakyo-u.ac.jp/Wikitude/gisar2.apk

にアクセスしてアプリケーションパッケー

ジ(APK)をダウンロードする。

図 7 アプリダウンロード用 QR コード

3 ダウンロードしたファイルをタップすると

アプリがインストールされる。ファイルが見

つからない場合は、ファイルマネージャーな

どでダウンロードフォルダーを見てみる。

4 インストール後、端末の

設定>セキュリティ>「提供元不明のアプリ

のインストールを許可する」を OFF にするセ

キュリティ設定を必ず元に戻しておかない

とウイルス感染の危険性がある。

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4. Wikitude SDK による開発

Wikitude SDK のライセンスには、様々な種類が

あるが、位置情報型で必要な機能は、iOS 版、

Android 版ともに 10 万円以下で取得でき、一度購

入すれば済む。SDK には、サンプルコードが添付

されており、それを元に、以下の改変を行った。

1 読み取り先を地図選択ページのJSONに変更。

2 POI の高さが表現できてしまうので、POI の

高度を端末が存在する高さに修正した。

3 密集した POI だと、横に POI が並びと重なり

後ろが見えないことがわかりPOIのラベルを

透明化し、さらに、縦表示にした。

4 AR 画面のタイトルのみ表示するようにし、表

示される POI を細く修正した。

5. 試作アプリによる改善点

Wikitude SDK で作成した試作アプリでは、

Wikitude Studio の時に使っていた、Google マッ

プが継続して使える。地図選択ページで Google

マップを共有し URL で直接登録し、Google マップ

の KML から JSON への変換を行っているので KML

をダウンロードしたり、Wikitude Studio へのロ

グインや登録作業が必要ない(Wikitude Studio

のサービスは 2017 年 9 月に終了する)。

Wikitude Studio を授業で本格的に利用開始し

たのは、2016 年 11 月になってからであるが(秋

本ほか 2017,伊藤ほか 2017)、Junaio を利用して

いた時と比べ、いくつか欠点が見つかっていた。

Wikitude SDK を使用することにより、以下の部分

の改善が見られた。

1. Google マップに追加した写真がアプリ内で

表示できる。

2. Google マップに書き込んだ外部リンクが有

効になった(Androidのみ、iOSはデバグ中)。

3. POI の表示は小さくなるが制限なく遠い所ま

で表示できる。

4. Range で絞り込みができる。

5. 移動で現在地が変化しても、リロードせずに

POI を出せるリアルタイム性が復活。

6. 高さの表現が SDK では可能。

7. 緯度経度の丸めがなくなった。レーダー部分

の表示をみると、従前は緯度経度の丸めがあ

って、POIが直線的に整列していたが(図8)、

改善した(図 9)。

図 8 Wikitude Studio版(旧)

図 9 Wikitude SDK試作アプリ

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6.現在の問題点

現状で試作アプリはできたものの、問題点もあ

る。

1 POI が多いと Range ボタンを押さないと表示

されないことがある原因の究明。

2 外部httpリンクが機能しないのを改良(iOS)。

3 iOS は Visual Studio、Android は Android

Studio で開発、Visual Studio への統一。

4 地図を選ぶインターフェイスの改良。

5 iOS 版はセキュリティーが高く試作品もネッ

ト経由でインストールできていない。

TestFlight 等のアプリの利用を検討。

7. おわりに

AR は、Pokémon GO アプリが出たことで、一般

に認知された。ずいぶん前から有用性がわかり、

開発を進めていたので、今後多くの人に使っても

らうためにも、App Store/Google Play ストアで

の公開に向けて準備を行う予定である。

本研究は日本学術振興会科学研究費補助金基

盤研究(B)『地理・環境・防災教育において GIS

の利用を拡大するAR搭載システムの開発と活用』

(課題番号 16H03520 研究代表者 伊藤悟)の成

果の一部である。

参考文献

秋本弘章・伊藤悟・鵜川義弘・福地彩・堤純・井

田仁康 (2015):地理教育における AR(拡張現

実)情報システムの活用-フィールドワーク教

材の開発と実践-,環境共生研究,8,11-24.

秋本弘章・秋本洋子・伊藤悟・鵜川義弘 (2017):

フィールドワークにおけるスマートフォンの

活用 -AR(拡張現実)と GIS を用いた教材の

開発と実践-,環境共生研究,10,13-25.

伊藤悟・鵜川義弘・齋藤有季・久島裕(2017):

地理教育用 AR(拡張現実)情報システム(6)

‐新たなシステムの活用とその特徴‐,日本

地理学会発表要旨集,91,207.

鵜川義弘・伊藤悟・山本佳世子・秋本弘章・大西

宏冶・井田仁康・齋藤有季(2017):Google マ

ップと Wikitude を用いる位置情報型 AR の試

作,宮城教育大学環境教育研究紀要,19,1-3.

鵜川義弘・齋藤有季・村松隆・溝田浩二・栗木直

也(2012):リフレッシャー教育システムにお

ける環境教育用屋外 AR教材掲示システムの構

築 ―AR ブラウザ junaio を利用したコンテン

ツの作成方法―,宮城教育大学環境教育研究

紀要,14,1-6.

鵜川義弘・福地彩(2014):スマートフォンを用

いた防災教育用 津波 AR アプリの開発. 宮城

教育大学環境教育研究紀要,16,7-12.

鵜川義弘・福地彩(2015):Google スプレッドシ

ートを用いた AR 教材作成環境の試作,宮城教

育大学情報処理センター研究紀要 : COMMUE,

22,35-38.