8
地域緩和ケアサポートセンターだより 第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成22年7月1日 発行所 財団法人三友堂病院 山形県米沢市中央6丁目1-219 2010年7月1日 (平成22年)木曜日 第5号 「松倉とし子さんのコンサート ~優しい調べとともに~」 ソプラノ歌手 松倉とし子さんコンサート 地域緩和ケアサポートセンター センター長 加藤佳子医師による教育講演 座長 川村博司医師

地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20110203124826.pdf · 地域緩和ケアサポートセンターだより 第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20110203124826.pdf · 地域緩和ケアサポートセンターだより 第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより

地域緩和ケアサポートセンターだより

第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成22年7月1日

発行所 財団法人三友堂病院 山形県米沢市中央6丁目1-2192010年7月1日

(平成22年)木曜日

第5号「松倉とし子さんのコンサート

~優しい調べとともに~」

平成二十二年度を迎え、緩

和ケア病棟へ入棟される患者

さんは増加し、そしてそこか

ら在宅へ移行される患者さん

も益々増加しています。地域

緩和ケアサポートセンターは、

「愛のネットワーク」の構築

を目指し、患者さんやご家族

の希望に応えられるように、

住み慣れた地域での自宅や施

設での生活を支える役割を果

たしていかなければならない

と考えています。今号では、

平成二十一年度を振り返り四

月に行われた活動報告会につ

いて特集しました。

平成二十一年度(財)三友堂病院

地域緩和ケアサポートセンター

活動報告会ならびに松倉とし子

さんコンサート

四月十六日(金)、三友堂病院診療棟

二階ホールにて『平成二十一年度

財団

法人三友堂病院

地域緩和ケアサポート

センター・化学療法室活動報告会』が、

患者さん、市民の皆さんも含め、約百五

十名の参加者をいただいて「緩和ケアや

モルヒネに関する理解を深めよう」とい

うテーマで開催されました。会の二部で

は、歌手の松倉とし子さんをお招きし、

『癒しのコンサート』が行われました。

地域緩和ケアポートセンター

電話

0二三八ー二四ー八三五五

ファックス

0二三八ー二四ー八三五五

ソプラノ歌手

松倉とし子さんコンサート

地域緩和ケアサポートセンター

センター長 加藤佳子医師による教育講演

座長 川村博司医師

Page 2: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20110203124826.pdf · 地域緩和ケアサポートセンターだより 第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより

第5号(2) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成22年7月1日

第一部

平成二十一年度三友堂病院

地域緩和ケアサポートセンター・化

学療法室活動報告会および教育講演

会三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター・

化学療法室活動報告

緩和ケア病棟看護主任

吉田美代子

緩和ケア科外来通院の患者さん、入院から

在宅へ移行する患者さんの増加にともなって、

以下のようなさまざまな問題が露呈しました。

一、在宅医が決まらず、在宅死を希望しても

実現できない

二、在宅療養中に状態の悪化

や臨死期に際して、家族が動揺し救急搬送を

依頼した

三、医療者にも誤解・偏見があり、

臨死期での入棟が目立った

など。終末期に

は冷静に最期を迎え、静かに穏やかに見守る

覚悟が重要です。救急搬送などは患者さんの

身体的、精神的負担を増大しかねません。在

宅で状態が悪化したときを想定し、そのとき

の対応について相談・決定し、訪問看護師と

の連携も十分にしておく必要があります。そ

のために患者さん、ご家族に対するインフォー

ムド・コンセントが必須です。そこで当セン

ターでは、在宅死を希望する場合には、在宅

療養支援診療所と連携を図ること、在宅医が

定まらない場合は、緩和ケア科医師が死亡確

認のために訪問すること、「緩和ケア」「臨

死期の対応のしかた」、また「緩和ケア病棟

入棟の目的」について説明し、さらに状態悪

化時に救急車搬送は行わないことについて同

意を得ること、併科の場合に、主治医と治療

方針について事前に十分に協議し、患者さんとご

家族が希望した時にいつでもスムーズに入棟でき

るように、患者さん、ご家族の同意を得ておくこ

とを手順として定めました。

院外活動も益々重要度を増しています。平成二

十年度から継続した啓発活動に取り組み、地域医

療、介護、福祉施設への出張講座を合計四回行い

ました。また、市民公開講座の開催や医師会への

働きかけを行って地域緩和ケアネットワークの構

築に向けて取り組みました。

化学療法室においては、平成二十一年一~十二

月までの入院化学療法患者数は七十三名(のべ四

四七回)、外来患者数は五十八名(のべ三三四回)

と前年度に比べ入院化学療法では二十二人、外来

化学療法では三十六人増加しました。血液系また

小児悪性腫瘍を除く全ての領域の化学療法に対応

できるようになりました。また、セルフパンフレッ

トを用いて在宅で過ごしやすいように指導を行い、

セルフケアの充実に努めています。化学療法のク

リニカルパスを作成し、二十二年度に活用してい

く方向です。

症例報告

進行再発乳がん患者さんへの治療と緩

和ケア

緩和ケア病棟看護師

竹股洋子

化学療法からギアチェンジを行い、緩和ケア病

棟に入棟した乳癌症例のケアを振り返り考察した

内容が報告されました。乳癌の患者さんは、経過

が長期に及び、療養生活においては全人的な苦痛

を抱えます。「癌治療では、とかく化学療法など

の『治療』に重点が置かれ、個人としての生活を

尊重することを忘れがちになる。直接的な抗がん

治療を行う場合でも、『より早期に緩和ケアを同

時に行う』、『チームスタッフでかかわりを持つ』、

そして『可能な限り患者さんとのコミュニケーショ

ンを図る』ことが重要である。また、ご家族にも

しっかりと話し合う時間を取り、力を借りること

である。同時にご家族の不安、予期悲嘆に対応す

ること、家族ケアも緩和ケアの役割の一つである。

がんと向き合う時には、患者さん本人、ご家族、

医療スタッフが、共通の認識を持ち、一つの目標

に向かうことが必要である」と述べました。

痛み教室予定

H22.7.6

痛みの治療(帯状疱疹」)

H22.7.20

モルヒネについて

H22.08.03

医者にかかる10箇条

H22.08.17

終末期医療(リビングウイル)

講師 緩和ケア科科長

加藤佳子

場所 三友堂病院5階東

リクリェーションルーム

時間 pm 2時~3時

看護師募集

問い合わせ先

三友堂病院

人事企画部

電話

0二三八ー二四ー三七一四

Page 3: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20110203124826.pdf · 地域緩和ケアサポートセンターだより 第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより

第5号(3) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成22年7月1日

教育講演「がんと診断されたらどうしますか?

~賢く準備しましょう」

三友堂病院

地域緩和ケアサポートセンター長加

藤佳子

がんが日本人の死因の第一位になってまも

なく三十年になります。男性の二人に一人は

がんになり、三人にひとりはがんで亡くなり

ます。女性では三人に一人はがんになり、四

人に一人はがんで亡くなります。がんになる

と痛み・食欲不振・呼吸困難などの身体的な

苦痛が襲います。仕事でも自分の役割が果た

せなくなるために社会的・精神的苦痛が加わ

り、日常生活に障害が出てきます。さらに進

行すると衰弱して生命まで奪ってしまうのが

「がん」です。しかし、がんの治療もめざま

しく進歩しています。手術も抗がん剤治療も

放射線治療も各々の専門家が担当して効果も

あがっています。痛みや呼吸苦などがんに伴

う苦痛を緩和する医療(緩和医療)も進歩し

ています。多くのひとが「緩和ケア病棟に行っ

たらもうおしまい」と考えています。しかし

私どもは、緩和ケア病棟を単に「看取りだけ

の場」とは考えていません。緩和ケア病棟は、

患者さんや家族に苦痛症状のコントロールの

やり方を会得してもらうための「訓練の場」

でもあると伝えています。入院した日からい

つでも在宅療養への移行ができるように準備

を始めます。在宅での療養生活が長くなると、

介護する家族が疲れます。その時には、短期

間の「レスパイト入院」にも対応しています

し、看取りの準備を支援し、様々な困ったこ

と、不安なことに対して相談にのっています。

また「痛み教室(隔週火曜日の午後)」では、

痛みの治療薬である「モルヒネ」や「医者に上

手にかかる方法」、「病院で悪い知らせを聞か

されたときの心の準備」などについて勉強会を

行っています。三友堂病院の緩和ケア科では数

時間から一日以内で症状をコントロールしてい

ますから、緩和ケア病棟の在院日数は平均二十

五日と短く、約四割の方が自宅療養のために、

あるいは抗がん剤治療や放射線治療のために退

院しています。がんにならないような生活をす

ることが第一ですが、がんになってしまっても

「がんとともに生きる」手段がたくさんありま

す。がんが疑われたら、医者に上手にかかって、

主治医から良い情報をもらい、病気をよく理解

して自分に最も適した治療を選択しましょう。

自分の身体は自分で守るという心構えで、治療

に望みましょう。健康な時から、自分の生き方

は自分で選択する習慣をつけてください。そう

すれば病気になってもうまく病気と付き合うこ

とができますし、上手な死に方を選ぶこともで

きるでしょう。

地域緩和ケアサポートセンター

加藤佳子医師

地域ケアサポートセンターだよりは三友堂病院ホームページでも紹介しています。

http://www.sanyudo.or.jp

第1号 第2号 第3号 第4号

Page 4: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20110203124826.pdf · 地域緩和ケアサポートセンターだより 第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより

第5号(4) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成22年7月1日

第二部

『松倉とし子さんのコンサート

~優しい調べとともに~』

会場の二階外来ホールは満員。仁科盛之理事

長を最前列に会は始まりました。オープニング

の「オーシャンゼリゼ」が歌いだされると病院

の白く静寂なイメージがガラッと華やかな雰囲

気にかわりました。当日は、春を思わせるピン

クのドレスで登場され、歌声もさることながら

その存在感と可憐な美しさに目を奪われました。

全十曲。弾き語りも交え、松倉さんの魅力いっ

ぱいのステージでした。松倉さんの歌には日本

語の美しさをさらに際だたせる力があると思い

ます。その歌声の美しさと懐かしい親しみやす

やすい楽曲によって、参加した皆さんの心に若

かりし頃の懐かしい情景がそれぞれに蘇ってい

たことでしょう。

特に「千の風になって」は圧巻でした。今は

亡き、最愛のお父様への思いのこもった、情感

あふれる、優しく、凛とした歌声。会場の皆さ

んの心の中にそれぞれの千の風が吹き渡り、そ

の人に思いを馳せながら穏やかな時間が流れて

いたのではないでしょうか。これは、緩和ケア

の「グリーフケア」に通じるものです。残され

た者が亡き人との関係性を整理、物語化し少し

ずつその死を受容していくことが、辛い悲嘆を

和らげることにつながります。松倉さんは、会

場の皆さんに緩和ケアそのものについて身をもっ

て伝えてくださいました。このコンサートは、

見事に今回の緩和ケア報告会の趣旨にマッチし

て会を盛り上げていただきました。本当に感謝

いたします。

松倉さんの今年の希望の色はピンクとうかが

いました。今年は、そんな暖かく優しい色に包

まれる出来事が数多くありますよう、そして今

後益々のご活躍をお祈りしたいと思います。

夢と安らぎをありがとうございました。これ

からも、心に残るステキな歌を歌い続けていた

だきたいと思います。

松倉とし子さんは、山形在住のソプラノ歌手

でオペラ「フィガロの結婚」でデビュー後、数

多くの主役を演じ、日本における二十世紀を代

表する作曲家・中田喜直先生に高く評価され、

先生と共に十七年間全国でリサイタル・レコー

ディングをされました。中田喜直先生はあの有

名な「小さい秋みいつけた」「めだかの学校」

などの作曲をなさった先生でいらっしゃいます。

また、松倉とし子講演会「とし子の会」は会員八

百名を越え、年間八十回に及ぶ講演活動やチャリ

ティーコンサートを開催し、全国の方々に「歌う

喜び」をプレゼントしておられます。

ソプラノ歌手 松倉とし子さん

松倉とし子さんコンサート

Page 5: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20110203124826.pdf · 地域緩和ケアサポートセンターだより 第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより

第5号(5) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成22年7月1日

モルヒネ友の会 第2回医療講演会 地域緩和ケアサポートセンター院外活動

(平成二十二年四~六月)について報告しま

す。

モルヒネ友の会

第二回医療講演会

加藤佳子センター長が講師を務める『モル

ヒネ友の会開催

第二回医療講演会』が、五

月二十二日(土)、伝国の杜置賜文化ホール

第一・第二小会議室にて開催されました。日本

の痛み治療の先駆者である加藤医師は、「痛み

はとることができます」、「モルヒネはがんだ

けでなく様々な痛みの治療に使われています

~どんな病気に有効か学んでみましょう~」と

訴えかけました。医療用麻薬として痛みの治療

には欠かせないモルヒネですが、誤解・偏見に

よってモルヒネが使われず、痛みから解放され

ずに苦しまれている患者さんもまだまだ多いの

が現状です。講演会にはモルヒネによる治療で

痛みを克服して通常の生活を取り戻せた方々が

集まり、モルヒネを中心とする痛みの治療の普

及に参加してくださいました。聴講者からモル

ヒネを使用している患者さんへの質問や加藤医

師による医療相談が行われ、盛況の内に終了し

ました。

モルヒネを使用している患者さん

情報交換しませんか

「モルヒネを使っている」というだけで

反対されていませんか

痛がっている人に「モルヒネを使ってみた

ら」と勧めたいけど拒否されそうだと思ったこ

とはありませんか

モルヒネを使っていることを他の人に秘密に

していませんか

モルヒネ友の会は加藤佳子医師と山川真

由美医師が診療している山形大学医学部

附属病院、やまかわ整形外科(山形市)

と三友堂病院(米沢市)の患者の会です。

モルヒネ友の会

TEL 090-1066-8929

常識的な時間内での使用を心が

けてください。

Page 6: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20110203124826.pdf · 地域緩和ケアサポートセンターだより 第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより

第5号(6) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成22年7月1日

第十三回山形胃がん研究会

「高齢者胃がんや高度進行胃がんに対しても

積極的な手術、化学療法、ステント治療は行

うべきである」と提言

五月二十九日(土)、山形市立病院済生館

講堂において第十三回山形胃がん研究会が行

われ、川村博司緩和ケア病棟長が、「胃がん

の自然史」という演題で発表しました。当院

緩和ケア病棟に入棟して死亡した胃がん患者

さんを中心に、早期胃がんを発見されたにも

かかわらず、無治療で経過した症例、および、

無治療で経過し、終末期に緩和的外科治療が

行われた症例について検討し、「早期胃がん

で無治療の場合余命は四~五年、早期から進

行癌となるまでの期間は一年から四年(平均

三・二年)、全身状態が良好な患者さんに対

して手術、化学療法、ステント留置を行った

場合には、高度進行がんでも一年から一年六

か月の生存期間が得られたが、全身状態が不

良の進行胃がんの予後は三か月から一年であっ

た」と述べました。そして、高度進行胃がん

に対する手術、化学療法、ステント留置が予

後改善に結びつくことは立証できなかったも

のの、「全身状態の良好な場合では、経口摂

取再開、嘔気嘔吐改善、在宅療養期間の延長

といったQOLの改善に結びつき、緩和的治

療として有効である症例が多かった」ことが

明らかとなりました。そして、「インフォー

ムド・コンセント[治療方針決定(患者の意

思決定)]において有用となる判断材料とし

てこれらの知見を用いることによって、

良質で効率的な医療の実践に結び付け

ることができるであろう」と結論づけ

ました。

緩和ケア出前講座のご案内

三友堂病院では、地域の方々に緩和ケアに対する理解を深めていただくために、『緩和ケア出前講座』を実施してい

ます。緩和ケア総論

緩和ケア病棟長 川村博司

疼痛コントロールと看取りについて

緩和ケア科科長 加藤佳子

外科科長 横山英一

緩和ケア病棟・外来紹介

緩和ケア病棟師長 黒田美智子

緩和ケアの手技と実践

緩和ケア病棟主任 吉田美代子

チームケア その1心理的援助

臨床心理士 吉田満美子

その2音楽療法

音楽療法士 小笠原未希

在宅緩和ケア

看護師(社会福祉士) 渡部芳紀

お申し込みは

三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

電話 0238-24-8355(直通)

三友堂病院地域医療連携室

電話 0238-24-3708

第1回緩和ケア研修会ならびに病棟見学会のご案内

当院地域緩和ケアサポートセンターでは地域の皆様に『緩和ケア』を知っていただくための

普及活動を始め、患者様がどこでも緩和ケアを受けることができるようになるために、医療・

福祉・介護に従事されている皆様とのネットワークを作るための活動を行っています。今年度

は当院主催で緩和ケアの実際や事例検討会などを開催予定としており、シリーズでの開催を計

画しております。

第1回緩和ケア研修会ならびに病棟見学会につきまして、7月のホームページでご案内しま

すので、ご多忙中とは存じますが、上記趣旨への皆様のご理解とご協力をお願いしますととも

に、多数ご参加下さいますようご案内申し上げます。

http://www.sanyudo.or.jp

Page 7: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20110203124826.pdf · 地域緩和ケアサポートセンターだより 第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより

第5号(7) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成22年7月1日

第十五回日本緩和医療学会

六月十八日~十九日

東京国際フォーラム

緩和医療・ケアに関する全国大会での原著

報告を二題行いました。

まず、川村病棟長が、『緩和ケア病棟』を

テーマとしたセッションにおいて、当緩和ケ

アサポートセンターの開設経緯と、活動内容

を説明し、「緩和ケア病棟の役割は、早期に

症状緩和を達成して、在宅移行を推進するこ

とにある」と強く主張しました。そのための

取り組みを精力的に行い、それらの成果とし

て、全国でもトップレベルの症状緩和と在宅

移行を達成できていることを報告しました。

この発表に対して、米沢地区でがん患者の9

割が在宅移行を希望していること、症状緩和

を目的に入院した患者さんの在宅移行率が六

十五%に達したことに驚嘆の声が上がりまし

た。在宅で緩和ケアを行いながら看取りを行

う方向に、ようやく日本も国策として進み出

している中で、当センター、緩和ケア病棟が

率先して活動を展開していることが評価され

ました。

黒田美智子緩和ケアサポートセンター副セ

ンター長(緩和ケア病棟師長)は『スピリチュ

アルケア』のセッションにおいて、当病棟ス

タッフが、解決の非常に困難なスピリチュア

ルペインに挑戦し続けてきたこれまでの経過

を発表しました。そして、当病棟が全国で初

めてとなる「スピリチュアルケアマニュアル」

を作成し、それを臨床の場で実際の患者さん

たちに適用して非常に有用であったことを報告

しました。この発表は、スピリチュアルペイン

の専門家たちからも注目され、質疑応答が相次

ぎました。当院の試みの方向性が間違ってはい

ないことを確信できました。

第15回日本緩和医療学会

セッション『緩和ケア病棟』

演者の川村博司医師

第15回日本緩和医療学会

セッション『スピリチュアルケア』

演者の地域緩和ケアサポートセンター

副センター長 黒田美智子病棟師長と

緩和ケアサポートセンタースタッフ

三友堂病院 緩和ケア病棟

Page 8: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20110203124826.pdf · 地域緩和ケアサポートセンターだより 第5号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより

第5号(8) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成22年7月1日

編集後記

今年度は、四月の地域緩和ケアサポートセンター・

化学療法室報告会ならびに松倉とし子さんコンサー

トを皮切りに、日本緩和医療学会学術大会に演題

二つを発表するなど益々その活動内容は充実した

ものになってきています。さらに地域においては

「山形胃がん研究会」、「モルヒネ友の会」など、

医療者さらには患者さんと共に緩和医療・緩和ケ

アを考える場において、精力的な活動を開始して

います。これらの実績で得た自信をバネに今後も

確かな専門性に裏打ちされた臨床実践、質の高い

緩和ケアの提供に努めていきたいと考えています。

(黒田美智子)

(財)三友堂病院ホームページのご案内

http://www.sanyudo.orjp

地域緩和ケアサポートセンターの目的

がん患者の増加により、がん医療の充実および療養生活の

質の向上が求められている中、置賜地域の緩和ケアを推進す

る中核的な拠点として「地域緩和ケアサポートセンター」を

開設しました。患者さんやご家族が住み慣れた地域において、

在宅や施設での希望に応じた緩和ケアが利用できる地域完結

型の緩和ケア連携システム(これを「愛のネットワーク」と

呼んでいます)の構築を支援します。

『人明かりに包まれたケア』を実現し、

患者さま中心の、その人らしい人生を歩む

ための援助をさせていただきます。

人明かりに包まれたケアとは、患者さま

を最大限尊重するという医療の原則に立ち

返り、私たちが目指そうとしている緩和ケ

アの理念、心のありようを表現した言葉で

す。