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50 【日本機械工業連合会会長賞】 新型ラインヘッド搭載サーマル式新聞製版装置(GX-9700) パナソニックCCグラフィックス株式会社 神奈川県茅ヶ崎市 1. 機器の概要 新聞紙面の印刷は、記事、写真、イラストおよび広告データ等を紙面として新 聞編集システムで編集し、このデータから輪転機で使用するアルミプレート(刷 版)を制作、この刷版を使用して輪転機により新聞を印刷します。 従来、刷版を作成する為には新聞組版編集システムからのデジタルデータをフ ィルムに描画、描画されたフィルムから刷版機を用いてプレートに焼き込むこと で刷版を作成していました。 このフィルム作成工程を省き直接レーザーでプレートに描画する装置(CTP: Computer to Plate)を開発し、本年新たに画期的な記録ヘッドを搭載した第三 世代 CTP である GX-9700 を開発。 第一世代、第二世代装置に比べ 1.5 倍から2倍を超える生産性と省電力を実現 しました。 写真1 GX-9700

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    【日本機械工業連合会会長賞】

    新型ラインヘッド搭載サーマル式新聞製版装置(GX-9700)

    パナソニックCCグラフィックス株式会社

    神奈川県茅ヶ崎市

    1. 機器の概要

    新聞紙面の印刷は、記事、写真、イラストおよび広告データ等を紙面として新

    聞編集システムで編集し、このデータから輪転機で使用するアルミプレート(刷

    版)を制作、この刷版を使用して輪転機により新聞を印刷します。

    従来、刷版を作成する為には新聞組版編集システムからのデジタルデータをフ

    ィルムに描画、描画されたフィルムから刷版機を用いてプレートに焼き込むこと

    で刷版を作成していました。

    このフィルム作成工程を省き直接レーザーでプレートに描画する装置(CTP:

    Computer to Plate)を開発し、本年新たに画期的な記録ヘッドを搭載した第三

    世代 CTP である GX-9700 を開発。

    第一世代、第二世代装置に比べ 1.5 倍から2倍を超える生産性と省電力を実現

    しました。

    写真1 GX-9700

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    2. 機器の技術的特徴および効果

    2.1 技術的特徴

    環境創造性

    刷版製作機器開発の歴史

    (1) フイルムプロッター時代(1978 年~)

    刷版を作成する為には、新聞組版編集システムからの情報を一旦、フィルム

    に描画し、このフィルムから刷版機を経て刷版を作成していました。

    フィルムを作成する装置(CTF:Computer To Film)においては、銀塩フィル

    ムを用いた装置から現像が不要なドライフィルムを用いた装置を 1995 年に開

    発・製造し、全国の新聞社に 300 台以上を販売。

    (2) CTP時代(2002 年~)

    フィルム作成工程を省き、新聞組版編集システムで制作された紙面データか

    ら輪転機で使用するプレート上に直接刷版を作成する装置

    (CTP:Computer To Plate)を他社に先がけて開発に成功。

    第一、第二世代の装置は、CTF のレーザーによってフィルムに描画する技術

    (工業レーザー+光ファイバーの方式)をプレート記録に応用して開発しまし

    た。

    (3) 2007 年 第三世代 CTP(GX-9700)

    これまでの工業用レーザー+光ファイバーの方式では、レーザーパワーの伝

    達が非効率で記録の精度にバラツキが見られました。非効率なために消費電力

    も高く材料価格も高い問題がありました。これらの問題を解決するために

    GX-9700 には新規開発の記録ヘッド「新型ラインヘッド」を搭載しています。

    紙面伝送 紙面編集

    システム CTP 現像機

    パンチベ

    ンダー 輪転機

    紙面伝送 紙面編集

    システム

    フィルム

    プロッタ製版機 現像機

    パンチベ

    ンダー 輪転機

  • — 52 —

    「新型ラインヘッド」

    この記録ヘッドには新規開発の汎用シングルモード半導体レーザーを採用。

    本レーザーを複数本並べたマルチチャネル記録ヘッドにより装置の小型軽量化

    記録時間の短縮による抜群の生産性・瞬発力を実現するとともに、描画品質の向

    上を実現しました。時間当たりの生産能力は、従来機 120 版から 180 版と 1.5 倍

    を実現し、更に初版に要する時間も 205 秒から 160 秒へと 45秒の短縮を実現しま

    した。この記録ヘッドは焦点深度が深くプレートの表面に微妙な凹凸があっても

    常に高品質な記録を行うことが可能です。又、オートパワーコントロール機能に

    より各レーザーの出力パワーをモニタリングし最適な記録パワーを確保する機能

    を有しています。

    2.2 効果

    省エネ・効率性

    ①生産性の向上

    新型ラインヘッドの採用および記録プレートの搬送効率の向上により従来機に

    比べ 1.5~2.25 倍 生産性を実現

    第一世代(GX-9900)第二世代(GX-9800)第三世代(GX-9700)

    生産性(版/時) 80 120 180

    新型ラインヘッド

    ドラム

    プレート

    図1 新型ラインヘッド

  • — 53 —

    ②消費電力の低減

    記録ドラムの小型化をはじめとする装置の小型・軽量化により駆動部での消費

    電力の削減を実現

    第一世代(GX-9900) 第二世代 (GX-9800) 第三世代(GX-9700)

    動作時電力 8.0(kW) 8.0(kW) 3.5(kW)

    待機時電力 0.98(kW) 0.95(kW) 0.4(kW)

    ③年間消費電力の低減

    (通電時間 10H/日、 製版枚数 250 枚 30 日/月として算出)

    第一世代(GX-9900) 第二世代 (GX-9800) 第三世代(GX-9700)

    年間消費電力 11,425(kWH) 8,707(kWH) 2,740(kWH)

    削減率 - 24 %

    第一世代比

    76 %

    第二世代比

    3. 用途

    ・新聞印刷用輪転機に使用する刷版の制作工程にて稼動。

    ・機器の販売実績及び利用状況は以下のとおりです。

    GX-9900 販売開始時期 2002 年9月 販売実績 67 台

    GX-9800 販売開始時期 2004 年5月 販売実績 62 台

    GX-9700 販売開始時期 2007 年6月

    販売実績(2007/12 現在) 14 台

    2008 年度見込み 50 台

    ・国内シェア 50%