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1 地域通貨ゲームはどのような教育効果を持つのか 小林 重人 1 *,吉田 昌幸 2 *,橋本 1 [email protected], [email protected], [email protected] What is Educational Effect of Community Currency Game? KOBAYASHI Shigeto, YOSHIDA Masayuki, and HASHIMOTO Takashi 1 はじめに 1.1 学習ツールとしての地域通貨ゲーム 地域の経済とコミュニティ双方の活性化を図るメディアである地域通貨の仕組みや特性 を学習するツールとして地域通貨ゲームがある.地域通貨ゲームとは特定の地域社会にお ける様々な主体(農家,商店,飲食店など)を担うプレイヤーが法定通貨と地域通貨を活 用して財やサービス,ボランティアなどを取り引きしていくマルチプレイヤー対面型のア ナログゲームである.これまで長岡市川口地域や北海道北見市,上越教育大学などで行い, 実際に地域通貨を導入する地域において活用するツールのひとつとして地域通貨ゲームを 位置付け,その活用方法について考察してきた(吉田,2012). 一般的に,ゲーミングは学習ツールとしてどのような効果をもたらすのだろうか.防災 ゲームを通じた学びについて論じた吉川(2008)によれば,ゲームの参加者は,それを通 じて特定の知識だけではなく,現実に存在している問題構造の理解や自ら考えることそれ 自体を学ぶことができる.これを通じて,災害に伴う様々な出来事に対していかに振る舞 うことがのぞましいのかについてゲーム参加者同士が学びあい,生じた災害からの二次的 被害を最小化することに寄与することができる. 一方,地域通貨ゲームは,これまで地域通貨の仕組みを理解するものとしてだけではな く,地域通貨の導入段階における制度設計補助ツールとしての使用を目的に開発,実践さ れてきた(吉田,2012).これまで行ってきた域通貨ゲームも吉川が指摘したように,参 加者に対して地域通貨の仕組みや特性といった知識だけでなく,地域通貨導入に伴う様々 な問題状況の認識,そして自ら生活している地域に地域通貨が導入された場合どのように 振る舞うことが地域あるいは自分にとって良いのかについて考える機会を提供している. しかしながら,地域通貨ゲームがゲーム参加者に対してどのような意識の変容をもたら すのかということについてはわかっていない.本報告では,この点に着目して,地域通貨 ゲームの参加者がゲームを通じた価値意識の変容について考察する.次に地域通貨に関わ る価値意識として想定されるものを見ていくこととする. 1.2 地域通貨の循環に関わる価値意識 日本で現在までに 650 以上の地域で導入されてきた地域通貨であるが,地域通貨ゲーム でも想定されているような,ある程度の規模を維持しながら長期に渡って地域経済と地域 コミュニティの活性化を達した例は数少ない.なぜ導入前に謳われている地域通貨の効果 と現実の効果には大きな乖離が発生しているであろうか.これまで考えられてきた主な原 1 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 〒923-1292 石川県能美市旭台 1 丁目 1 2 上越教育大学大学院教育研究科 〒943-8512 新潟県上越市山屋敷町 1 *These authors contributed equally to this work.

地域通貨ゲームはどのような教育効果を持つのか …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~jafee/papers/Kobayashi_Yoshida2.pdf1 地域通貨ゲームはどのような教育効果を持つのか

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1

地域通貨ゲームはどのような教育効果を持つのか

小林 重人1*,吉田 昌幸2*,橋本 敬 1

[email protected], [email protected], [email protected]

What is Educational Effect of Community Currency Game?

KOBAYASHI Shigeto, YOSHIDA Masayuki, and HASHIMOTO Takashi

1 はじめに

1.1 学習ツールとしての地域通貨ゲーム 地域の経済とコミュニティ双方の活性化を図るメディアである地域通貨の仕組みや特性

を学習するツールとして地域通貨ゲームがある.地域通貨ゲームとは特定の地域社会にお

ける様々な主体(農家,商店,飲食店など)を担うプレイヤーが法定通貨と地域通貨を活

用して財やサービス,ボランティアなどを取り引きしていくマルチプレイヤー対面型のア

ナログゲームである.これまで長岡市川口地域や北海道北見市,上越教育大学などで行い,

実際に地域通貨を導入する地域において活用するツールのひとつとして地域通貨ゲームを

位置付け,その活用方法について考察してきた(吉田,2012).

一般的に,ゲーミングは学習ツールとしてどのような効果をもたらすのだろうか.防災

ゲームを通じた学びについて論じた吉川(2008)によれば,ゲームの参加者は,それを通

じて特定の知識だけではなく,現実に存在している問題構造の理解や自ら考えることそれ

自体を学ぶことができる.これを通じて,災害に伴う様々な出来事に対していかに振る舞

うことがのぞましいのかについてゲーム参加者同士が学びあい,生じた災害からの二次的

被害を最小化することに寄与することができる.

一方,地域通貨ゲームは,これまで地域通貨の仕組みを理解するものとしてだけではな

く,地域通貨の導入段階における制度設計補助ツールとしての使用を目的に開発,実践さ

れてきた(吉田,2012).これまで行ってきた域通貨ゲームも吉川が指摘したように,参

加者に対して地域通貨の仕組みや特性といった知識だけでなく,地域通貨導入に伴う様々

な問題状況の認識,そして自ら生活している地域に地域通貨が導入された場合どのように

振る舞うことが地域あるいは自分にとって良いのかについて考える機会を提供している.

しかしながら,地域通貨ゲームがゲーム参加者に対してどのような意識の変容をもたら

すのかということについてはわかっていない.本報告では,この点に着目して,地域通貨

ゲームの参加者がゲームを通じた価値意識の変容について考察する.次に地域通貨に関わ

る価値意識として想定されるものを見ていくこととする.

1.2 地域通貨の循環に関わる価値意識

日本で現在までに 650 以上の地域で導入されてきた地域通貨であるが,地域通貨ゲーム

でも想定されているような,ある程度の規模を維持しながら長期に渡って地域経済と地域

コミュニティの活性化を達した例は数少ない.なぜ導入前に謳われている地域通貨の効果

と現実の効果には大きな乖離が発生しているであろうか.これまで考えられてきた主な原

1 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 〒923-1292 石川県能美市旭台 1丁目 1 2 上越教育大学大学院教育研究科 〒943-8512 新潟県上越市山屋敷町 1

*These authors contributed equally to this work.

2

因として,地域通貨に参加する住民や店舗が少なく,地域通貨が特定の参加者や団体に滞

留する,地域通貨が想定した流通スキーム通りに機能しないことが挙げられている(与謝

野他,2006).そのため,地域通貨を効果的に循環させる条件を探ろうと地域通貨の流通

や利用者のデータを実証的に分析・評価する研究が行われている.実証研究では大きく分

けてマクロレベルの「地域通貨の流通」とミクロレベルの「地域住民の価値・意識・行動

の変容」が分析されている(栗田,2010).後者が分析される理由は,地域通貨にはボラ

ンティアや相互扶助的なサービスといった非商業活動が介在するため,経済効率性だけで

は測ることのできない住民の意識・価値観や慣習が地域通貨の循環の因果関係ネットワー

クの中に含まれるためである.次にそのように主張できる理由を見ていこう.

経済規模と持続可能性という点で成功の条件を備えた地域通貨にブラジルのパルマス銀

行の例がある.小林ら(2012)は,パルマス銀行の現地調査をし,住民が有する地域連帯

の価値意識が地域通貨の効果的な流通に寄与していることを見出した.地域連帯の価値意

識とは,住民同士の信頼や互酬性といった認知的ソーシャル・キャピタル3だけではなく,

地域への愛着や地域活動への主体性といった地域貢献の意識も含まれる.

また,現在までに 5 カ国で実施している貨幣に関する意識調査からは,地域通貨が効果

的に流通している地域では住民の貨幣の多様性を是認する傾向が流通していない地域のそ

れよりも強いことを明らかにしている(小林・西部他,2010;小林,2012).貨幣の多様

性の是認には,地域通貨の理念や意義といった法定通貨とは異なる貨幣としての性質を理

解し,受け入れる必要がある.

これまでの我々の研究成果から,ミクロレベルの「地域住民の価値・意識・行動の変容」

に含まれるものとして「地域連帯の価値意識」と「貨幣の多様性意識」が地域通貨の循環

において重要な要因であり,これらを高めることで地域通貨が効果的に循環するのではな

いかという仮説を持つに至った.

1.3 研究目的

先述した通り,従来の地域通貨ゲームは,地域通貨の擬似的な使用を通じて自分たちの

地域社会で地域通貨を導入する際のメリットやデメリット,そして必要となるものについ

て検討してもらうことが目的であった.それゆえゲーム参加者の多くは地域通貨や地域活

性化に興味関心を持つ住民たちであったため,学習ツールとしての地域ゲームの効果測定

は,自発的に地域通貨ゲームに参加する者ばかりが集まる自己選択バイアスの影響があり

一般性に欠ける可能性があるものであった.そこで我々は地域通貨や経済に関する授業を

受けたことがない中学生を地域通貨ゲームの参加者として本ゲームの教育効果を観測する

こととした.参加者は中学 1年生 35名で,ゲームの内容をまったく知らせずに集まっても

らった.

地域通貨ゲームが中学生にとってどのような教育効果を持つのかを明らかにするために,

本研究では地域通貨が有する特徴を中心として以下の 2つの仮説を立てた.

3

認知的 SC は Uphoff(2000)が分類したソーシャル・キャピタルを構成する要素のひとつであり,信頼,

価値観,規範,互酬性等を指す.認知的 SCを相互補完するもうひとつの要素として構造的 SCがあり,

こちらは地縁,ネットワーク,役割等を示す.構造的 SCの基盤が認知的 SCであり,認知的 SCは構造的

SC により強化,再生産できると考えられている.認知的 SC は構造的 SC に比べて自治体の関与が難しく,

第三者が容易に醸成することは難しいとされる(内閣府,2002).

3

社会科の公民的分野4を受けたことがない中学生でも地域通貨ゲームを体験することで,

1 地域通貨と法定通貨の違いを認知して通貨の多様性を是認することができる.

2 地域への愛着や他者への信頼,地域内での互酬性といった認知的ソーシャル・キャ

ピタルを高められる.

地域通貨ゲームにおける事前事後の変化を観測することで我々の仮説が検証されれば,

一般性の高い形で地域通貨ゲームの教育範囲と効果を示すことが可能となる.そしてまた,

経済の学習や社会経験を経ずともゲーミング・シミュレーションという低コストで即時性

のある学習ツールの有効性があることを立証することにも繋がる.

2 地域通貨ゲーム

2.1 目的

今回行った地域通貨ゲームは,2011 年 11 月と 12 月に上越教育大学で行った地域通貨ゲ

ーム(吉田,2012)の改良版(地域通貨ゲーム ver.3)である5.地域通貨ゲーム ver.3 は,

特定の地域経済社会の成員となり,経済取引やボランティアを行う状況を体験しながら,

法定通貨のみの場合と地域通貨を導入した場合とではどのような違いがあるのかについて

考えるマルチプレイヤー対面型ゲームであるという点ではこれまでの地域通貨ゲームと同

じである.しかし,今回のゲームでは,個々の取引における意志決定の段階で,地域通貨

導入による変化をより明確に体験できるように,以下のような状況を設定した.

第一に,全 20 の取引アイテムのうち 6 種類のアイテムについては,ゲームで設定した

地域の内外両方で販売され,地域内のほうが地域外より高い価格で販売されている.各地

域住民はこれらのアイテムを購入する場合に安さをとって地域外の大型スーパーで購入す

るか地域のために地域内で購入するかを決定しなければならない.第二に,ボランティア

を行う度に次のターンの収入から 5%分だけ差し引かれるという設定をおいた.これによ

って,ボランティアを依頼された場合,次のターンの収入を考えてボランティアを断るか

地域住民の助け合いを重視してボランティアを行うかを決定しなければならない.ちなみ

に,ボランティアを断られた場合は,断られた内容の事柄を自分で行わなければならない

ので,断られた方の次のターンの収入から一回につき 5%分だけ収入が差し引かれること

になる6.

ゲームの導入段階において,参加者に対して,(1)地域住民同士の助け合いがない,(2)

地域商店街での売上げ低下という二つの問題があることを示している.また,無駄に借金

をしないようにということについても導入段階で説明している.他の村民をボランティア

で助けると次ターンの外部収入が減る.また,地域内の商店街で購入するアイテムの内い

くつかは村外で安価に購入できる.それゆえ,地域通貨導入前は 地域の問題を解決しよう

とすると自らの収入減少や支出増加というコストを払わなければならないことになる.こ

の状況に地域通貨を導入することによって,地域の問題解決と個々の地域住民の利益が両

立するかどうかについて体験させることが本ゲームの設計目的である.

4 中学校の社会科は地理的分野,歴史的分野,公民的分野の三つに分類されている.そのうち公民的分野

は中学 3年生が対象とされ,市場経済や社会制度について学習することになっている. 5 地域通貨ゲーム ver.1と ver.2のゲーミングの設計やその結果については吉田(2012)を参照のこと. 6 したがって,地域外部からの収入は次の様に決まることになる.地域外収入=当初の地域外収入−0.05

(前ターンでボランティアをした回数+前ターンでボランティアを断られた回数)

4

2.2 設計

本ゲームでは,JAIST 村を設置し,その中にサラリーマン,学生,スーパー,雑貨屋,

農家,陶芸工房,レストラン,温泉旅館という8つの役割(JAIST 村内住民)を設定し,

参加した中学生にはその8つの役割のどれかをグループで担ってもらうこととした.

JAIST 村は参加者の通う中学校がある地域を想定している.また,JAIST 村外に郊外大型

スーパーと村外住民,そして銀行を設置し,これについては大学院生と教員が担った(以

上図 1 参照のこと).用いた地域通貨は紙幣型(100J,500J,1000J,5000J)で単位は「J」,

1J=1円とした.

図 1 JAIST村のイメージ

各村内住民にはあらかじめ取引記録表(図 2)や法定通貨7などが配布されている.ゲー

ムは全 5 ターンで行い,前半の 2 ターンは法定通貨のみで,後半の 3 ターンは法定通貨と

地域通貨の両方を用いて取引を行う.村内住民は各ターンのはじめにサイコロを振り,購

入アイテムや依頼するボランティア,そして地域外部からの収入金額を決定する.地域外

部からの収入は,各村民が地域外部で稼いできた金額を意味する(例えば,サラリーマン

であれば村外で働いた収入を意味し,レストランであれば村外住民が利用して支払った金

額を意味する).

取引は,アイテムとボランティアの二つに大別される.アイテムの購入先は,地域内

(サラリーマン,学生,スーパー,雑貨屋,農家,陶芸工房,レストラン,温泉旅館)と

地域外 の郊外大型スーパーを設定している.アイテムは以下の 20品目である.

(1)村内のみで買えるアイテム(8品目)

労働力,アルバイト,家庭教師,雑貨,大皿,カレーセット,宿泊,日帰り入浴

(2)村外の大型スーパーでしか買えないアイテム(5品目)

家電,スパイス,肥料,苗,自転車,薪

(3)村外大型スーパーと村内の各商店で競合するアイテム(7品目)

7 村内住民に配布されている現金はそれぞれの住民の期待収入によって異なっている.最も少ないのがス

ーパーの 18000円で最も多いのが陶芸工房の 40800円である.

JAIST村

サラリーマン

学生

スーパー

レストラン

陶芸工房農家

雑貨屋

温泉旅館

銀行

大型スーパー

村外住民

商品・サービス

ボランティア

商品・サービス

お金の貸借

お金

お金

お金

5

サイコロ(1) あなたがお願いしたいこと

家電 おかず 家庭教師

地域外 スーパー/地域外 学生

自転車 ホットケーキ 野菜

地域外 レストラン/地域外 スーパー/地域外

洋服 宿泊 カレー ペットの散歩

雑貨屋/地域外 温泉旅館 レストラン 学生

おかず 日帰り入浴 食器セット 地域活性化

スーパー/地域外 温泉旅館 陶芸工房/地域外

スパイス 米 おかず カレーの作り方

地域外 スーパー/地域外 スーパー/地域外 レストラン

洋服 雑貨 大皿 地域活性化

雑貨屋/地域外 雑貨屋 陶芸工房

販売アイテム

労働力

メニュー

大掃除の手伝い

地域活性化

サイコロ(2) 収入 実際の収入

1,2 0円

3,4 6000円

5,6 12000円

10000円分=(    )円+(    )J

数量地域通貨受取ルール

地域通貨受取ルール 数量

0J 500J 1000J

0J 500J 1000J

販売

前ターンでボランティアをしてもらえたか

Yes No

ボランティア

地域外での労

前ターンでボランティアをした回数

取引記録表:地域通貨導入後

第( )ターン

サラリーマン

購入アイテム・購入先

購入リスト

1

2

3

4

5

6

サイコロ(1) あなたがお願いしたいこと

家電 おかず 家庭教師

地域外 スーパー/地域外 学生

自転車 ホットケーキ 野菜

地域外 レストラン/地域外 スーパー/地域外

洋服 宿泊 カレー ペットの散歩

雑貨屋/地域外 温泉旅館 レストラン 学生

おかず 日帰り入浴 食器セット 収穫体験

スーパー/地域外 温泉旅館 陶芸工房/地域外 農家

スパイス 米 おかず カレーの作り方

地域外 スーパー/地域外 スーパー/地域外 レストラン

洋服 雑貨 大皿 子どもの世話

雑貨屋/地域外 雑貨屋 陶芸工房 学生

サイコロ(2) 収入 実際の収入

1,2 0円

3,4 6000円

5,6 12000円

メニュー 回数

大掃除の手伝い

地域外での労

前ターンでボランティアをした回数

前ターンでボランティアをしてもらえたか

Yes No 円

取引記録表:地域通貨導入前

第( )ターン

サラリーマン

購入アイテム・購入先

購入リスト

1

2

3

ボランティア

4

5

6

販売

販売アイテム 数量

労働力(10000円)

陶芸体験

カレーの作り方

収穫体験

ボランティアありがとうカード

お願いしたボランティア

大掃除の手伝い

役割名(         )

第(    )ターン

子どもの世話

ペットの散歩

「地域の課題」解決カード

役割名(         )

解決策

洋服(雑貨屋で販売),米,野菜,おかず(村内スーパーで販売),食器セット(陶

芸工房で販売),ホットケーキセット(レストランで販売)

※価格はすべて大型スーパーの方が安い

取引については,地域通貨導入前はすべて法定通貨で取引を行うが,地域通貨導入後は

自分が販売するアイテムについては地域通貨で対価をもらうこともできるようにした.例

えば,サラリーマンが販売する労働力は地域通貨導入前であれば 10000 円で販売するが,

地域通貨導入後は 5000 円+5000J ように法定通貨と地域通貨を併せて販売することができ

る(10000 円で販売ということも可能).この法定通貨と値域通貨の割合はターン毎に変更

できる.また,農家については,販売する米と野菜は地域通貨導入前には村内のスーパー

のみにしか販売できないが,地域通貨導入後には全額地域通貨で他の村民にも販売できる

ように設定している(スーパーに対しては法定通貨と地域通貨を組み合わせた価格設定が

できる).

一方,ボランティアについては,

村内住民の一部(サラリーマン,学

生,農家,陶芸工房,レストラン)

が行える個別ボランティアと,地域

通貨導入後に村内住民全員が行える

地域活性化ボランティアを設定した.

個別ボランティアについては,次の

ような手続きをおいた.サイコロの

目によってボランティアを依頼しに

図 2 取引記録表(左図:地域通貨導入前,右図:地域通貨導入後)

図 3 ボランティアカード

6

行く場合,はじめに「ボランティアありがとうカード」(図 3左)に記入し,そのカードを

持ってボランティアを依頼しに行く.ボランティアをしてもらえた場合,そのカードを相

手に渡して「ありがとう」と言う.もしボランティアをしてもらえなかった場合はカード

を渡さずに引き返す.ボランティアは地域通貨導入前には無償であると同時に,機会費用

としてボランティアをする毎に次のターンの外部からの収入が 5%減少するという設定を

おいた.

地域活性化ボランティアについては,地域通貨を導入する第 3 ターンのはじめに,地域

内に設立された地域通貨発行団体が地域住民から地域活性化アイデアを募集する.ゲーム

の参加者はそれぞれの役割主体の立場に立って地域の課題を解決するアイデアを「地域の

課題」解決カード(図 3 右)に記入し (一住民二枚まで),地域通貨発行団体へ提出する.

地域通貨発行団体はアイデアひとつにつき 1000J を支払う.「地域活性化」を依頼しなけれ

ばならない場合,提出された様々な「地域の課題」解決カードの中身を見て,最も JAIST 村

の活性化に役立ちそうだと思うアイデアを出した住民へ依頼しに行く.また,地域通貨導

入後,個別ボランティアと地域活性化ボランティアの両方で地域通貨(0J,500J,1000J の

どれかを選択)で対価を受け取ることができる.アイテムと同様にボランティアの対価に

ついてもターン毎に変更できる.

地域通貨は,域通貨発行団体から円と換金して発行することもできる.その際には 10%

のプレミアムをつけて発行される.その一方で,J を円に換金することもできる.その場

合は換金手数料として 5%を地域通貨発行団体へ支払うことになる.

3 方法 3.1 ゲーミングの設定

地域通貨ゲームの参加者は,北陸先端科学技術大学院大学で 2012 年 9 月 29 日に開催さ

れた中学生向けの講義8に出席した地元の中学 1 年生 34 名(男性 14 名,女性 20 名)であ

る.中学生には中学校の教員から事前にお金に関するゲームをすることのみを伝えてもら

い,地域通貨に関する知識やゲームの内容については知らせないよう依頼した. 実際の講

義は地域通貨ゲームのルールを説明することから始め,ゲーム開始前に地域通貨に関する

知識を伝えることは一切行わなかった.

ゲーム内における 8 つのグループ分けは男女が同一グループに入らないようにするとい

う条件の下でランダムに振り分けた.スーパーと温泉旅館の 2 グループのみ 5 名 1 組とし,

それ以外のグループは 4 名 1 組のグループとした.また,取引の結果は,取引記録表に記

入してもらい,行動の履歴をとった.

3.2 事前事後アンケート

地域通貨ゲームに参加したことによって,参加者の地域や貨幣に対する価値観が変容し

たのかを明らかにするために,地域通貨ゲームの参加者にはゲーム参加前後でアンケート

に回答してもらった.事前アンケートは,講義の 1 週間前に参加者が所属する中学校の教

員を通じて参加予定の中学生 34名全員に対して実施した.事後アンケートはゲームが終了

した直後に実施し,参加した 34名全員から回答を得た.

8 参加した中学生が所属する中学校では北陸先端科学技術大学院大学で開催される「一日大学院」という

イベントにおける複数の講義からひとつを選択して出席することが義務づけられている.本講義には当該

中学校以外からの参加申込みをした中学生はいない.

7

質問項目 点数

  とても愛着がある 5

  少し愛着がある 4

  どちらとも言えない 3

  あまり愛着がない 2

  まったく愛着がない 1

  とても信用できる 5

  少し信用できる 4

  どちらとも言えない 3

  あまり信用できない 2

  まったく信用できない 1

  強く思う 5

  少し思う 4

  どちらでもない 3

  あまり思わない 2

  まったく思わない 1

  地域通貨 5

  どちらかというと地域通貨 4

  どちらでもない 3

  どちらかというと円 2

  円 1

12.地域通貨ゲームは楽しかったですか

  とても楽しかった 5

  まあまあ楽しかった 4

  どちらでもない 3

  あまり楽しくなかった 2

  まったく楽しくなかった 1

11.あなたが住んでいる地域に地域通貨があるとして,あなたは地域通貨と円のどちらを使いたいですか

3.~10.までの質問項目すべて(質問項目の内容は付録参照)

1.あなたの住んでいる地域にどのくらい愛着がありますか

2.あなたの地域に住んでいる人は信用できますか

事前事後で比較するアンケート項目は全 9

問あり,認知的ソーシャルキャピタル(以降,

認知的 SC)を問うものと,貨幣に対する価値

観を問うものの 2 つに大別される.認知的 SC

に関する質問項目は 4 問あり,認知的 SC を問

うものとして一般的によく利用されている一

般的信頼感,互酬性の規範,地域への愛着,

地域貢献に関する質問項目を採用した.貨幣

に対する価値観に関する質問項目は 5 問あり,

小林・西部他(2010)が実施している貨幣意

識アンケートでの貨幣の多様性を問う質問項

目を中心に中学生向けに平易な言葉に言い換

えたものをアンケート項目として採用した.

事後アンケートでのみ,地域通貨に対する選

好と評価を尋ねる質問項目を 2 問とゲームの

楽しさについて尋ねる質問項目を 1 問用意し

た.その他に地域通貨ゲームを行ってどのよ

うな感想を持ったかを自由記述で回答しても

らった.自由記述以外の質問項目に対する回

答の選択肢は,5 段階の評定尺度とし,表 1 に

示したように各質問項目に対して是認する度

合いが最も強い選択肢を 5,最も弱い選択肢を

1 とする 5 段階で点数化した.アンケート項目

の詳細については巻末の付録 1,2 を参照された

い.

統計処理には SPSS Statistics 19を使用し,自

由記述の分析には SPSS Text Analytics for

Surveys 4 を使用した.

4 結果

本章では,まず初めに提示した 2 つの仮説を検証するためにゲーミング前後で実施した

アンケート結果の比較を行った.具体的にはゲーミング前後で参加者の認知的 SC と貨幣

に対する価値観に有意な差が見られるかを確かめた.次にゲーミングにおける地域通貨導

入の効果を調べるために,参加者に記述してもらった取引記録表をもとにして,地域通貨

導入前後でのボランティア実行率や地域内外での売り上げの比較を行った.最後に自由記

述に対してテキストマイニングを行うことで,参加者の地域通貨ゲームに対する感想や評

価をカテゴリ別に整理した.

4.1 事前事後アンケート結果

地域通貨ゲーム前後における参加者の認知的 SC の変容を表 2 に示した.それぞれの質

問項目においてゲーム開始前とゲーム終了後にどの評価を何名の参加者が選んだのかを見

ることができる.各質問項目におけるゲーム前後での比較は,Wilcoxon の符号順位和検定

を用い,有意水準は α=.05 とした.ゲーム前後ともすべての質問項目において中立点であ

表 1 質問項目の選択肢と点数

8

る 3よりも高い 4,5を選択する回答者が多い.事前事後の比較では 4つの質問項目すべて

において有意に向上したことがわかる.

表 2 ゲーム前後における認知的 SC の変容

次に地域通貨ゲーム前後における参加者の貨幣に対する価値観の変容を表 3 に示した.

表の見方や各質問項目におけるゲーム前後での比較は,認知的 SC における分析方法とま

ったく同じである.事前事後の比較で有意差が認められた質問項目は,設問 5 の「いろい

ろな種類のお金から好ましいものを選ぶことができればよいと思いますか」のみで,事後

の方が有意に高くなった.同じく貨幣多様性を表す設問 6 と設問 7 の質問項目では事前事

後で有意差は認められなかった.その他,設問 8 の拝金主義と設問 9 のボランティアに対

する報酬観も有意な変化は現れなかった.

項目 評価 ゲーム開始前 ゲーム終了後 統計5 4 84 13 163 15 102 2 01 0 0

平均(標準偏差) 3.56(.79) 3.94(.74)5 8 114 18 193 5 42 3 01 0 0

平均(標準偏差) 3.91(.87) 4.21(.64)5 3 64 15 193 11 92 5 01 0 0

平均(標準偏差) 3.47(.86) 3.91(.67)5 6 124 16 133 10 82 1 11 1 0

平均(標準偏差) 3.74(.90) 4.06(.85)※数値は回答者数.統計はWilcoxonの順位和検定によるp値.

2.あなたの地域に住んでいる人は信用できますか

p<.05

3.自分のことよりも地域のために役に立ちたいと思いますか

p<.05

4.地域の人同士で助け合うことは,自分の義務だと思いますか

p<.05

1.あなたの住んでいる地域にどのくらい愛着がありますか

p<.05

9

表 3 ゲーム前後における貨幣に対する価値観の変容

4.2 ゲーム後の地域通貨に対する評価

ゲーム終了後のみに尋ねた地域通貨に対する評価に関する設問 10,11 への回答をそれぞ

れ図 4,5 に表した.「あなたの住んでいる地域に地域通貨があればよいと思いますか」と

いう質問項目に対して僅かながら「強く思う」「少し思う」と答えた参加者のほうが多く

いた.グループ毎に選択肢の内訳を見ると,レストランが全員「あまり思わない」と答え,

農家が「少し思う」「強く思う」のどちらかを選択していた.温泉旅館が「どちらでもな

い」と中立で占められていたのに対し,サラリーマンや学生,雑貨屋などは回答が分散す

る傾向にあった.

「あなたは円と地域通貨のどちらを使いたいですか」という質問項目では逆に円を使い

たいと答える参加者の割合がわずかながら多かった.

項目 評価 ゲーム開始前 ゲーム終了後 統計5 0 04 8 143 18 142 3 31 5 3

平均(標準偏差) 2.85(.96) 3.15(.93)5 10 134 14 113 9 92 1 11 0 0

平均(標準偏差) 3.97(.83) 4.06(.87)5 19 184 7 63 7 72 0 11 1 2

平均(標準偏差) 4.26(.99) 4.09(1.19)5 12 84 12 163 8 52 2 41 0 0

平均(標準偏差) 4.00(.92) 3.85(.94)5 8 114 12 113 13 112 1 11 0 0

平均(標準偏差) 3.79(.85) 3.94(.89)※数値は回答者数.統計はWilcoxonの順位和検定によるp値.

5.いろいろな種類のお金から好ましいものを選ぶことができればよいと思いますか

p<.05

8.お金は儲ければ儲けるほどよいと思いますか。

n.s

9.人や地域を助けるのは無償でするのがよいと思いますか

n.s

6.お金はどんな場所や地域でも使えるほうがよいと思いますか

n.s

7.日本国内で使えるお金は円一種類でよいと思いますか

n.s

10

図 4 あなたの住んでいる地域に地域通貨があればよいと思いますか

図 5 あなたが住んでいる地域に地域通貨があるとして,

あなたは地域通貨と地域通貨と円のどちらを使いたいですか

4.3 取引記録表からみる結果

アンケートの結果から見えてきたように,ゲーム参加を通じて,参加者の地域への愛着

や地域の人たちへの信頼,地域での互酬性などの認知的 SC が高まっている.それでは,

参加者たちが行ったゲーム全体の結果はどのようなものであったのだろうか.本ゲームで

は,(1)村民同士の助け合いがない,(2)地域商店街での売上げ低下という二つの問題を

JAIST 村が抱えていることを説明し,それが地域通貨導入によって解決できるかどうかに

11

0

1

2

3

4

5

6

7

8

回数

主体別ボランティア実施内訳

(地域通貨導入前)

実施

断る

0

1

2

3

4

5

6

7

8

主体別ボランティア実施内訳

(地域通貨導入後)

実施

断る

回数

ついて考えてみることを参加者に対して提示している.ここでは,地域通貨を使ったり公

民分野の学習を受けたりしていない中学 1 年生の参加者が地域通貨導入前後でこれら二つ

の問題に対してどのように対応していたのかについて取引記録表の結果に基づいて確認し

ていく.

第一に,地域通貨導入により,依頼されたボランティアの約 9 割が実行され,村内での

助け合いが増えたことが明らかになった.図 6 は地域通貨導入前後でのボランティア実行

率(ボランティアを依頼された回数に占めるボランティア実行割合)の変化である.これ

によれば,地域通貨導入前が約 18%(11 回中 2 回実行)であったのに対して,導入後が約

88%(16回中 14回実行)と向上している.

図 6 ボランティア実行率

図 7 は主体別に依頼されたボランティアの実施内訳を地域通貨導入前(左図)と導入後

(右図)で比較したものである.本ゲームでは,ボランティアは他の住民に依頼されない

限り行えない.縦軸がボランティアを依頼された総数を示し,そのうち断った回数とボラ

ンティアを引き受けて実施した回数とで分けて表示している.これによれば,学生と農家

は,地域通貨導入前ではすべて断っていたのに対して,導入後は依頼されたボランティア

をすべて実行している.地域通貨導入によって,村内での助け合いを助長することは本ゲ

ームにおいて見られた結果のひとつである.

図 7 主体別ボランティア実施内訳(左図:地域通貨導入前,右図:地域通貨導入後)

0.18

0.88

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

地域通貨導入前 地域通貨導入後

12

地域通貨導入前において学生とレストラン,そして農家が多くボランティアを断ってい

ることがわかるが,その原因のひとつに負債がある.図 8 は銀行への負債の推移を示した

ものである.学生は第 1 ターンから銀行への借り入れを行い,ゲームが進む毎に銀行での

借入額が増えていることがわかる.また,レストランも同様に第 3 ターンから借入をして

いることがわかる.また,農家は苗や肥料といった地域外でしか買えないアイテムを毎回

購入しなければならない一方で,地域通貨導入前は米や野菜をスーパーに卸すだけで,収

入も地域外に依存するという構造になっていることが原因として考えられる.

図 8 負債の推移

それでは域内商店街での売上げ向上についてはどうであろうか.本ゲームの結果からは,

域内商店街での売上げが上昇したことが示された.図 9 は域内での販売収入の推移である.

これによれば,円の地域内販売収入は地域全体で地域通貨導入前が 62350 円(第 1 ターンと

第 2 ターンの平均),地域通貨導入後は 81700 円(第 3 ターンから第 5 ターンの平均)と上昇

している,これに地域通貨の収入を加えると 100100円分となり,地域通貨導入によって地

域内での販売収入が上昇したことがわかる.

図 9 地域内販売収入の推移

0

10000

20000

30000

40000

50000

60000

0 1 2 3 4 5

ターン

サラリーマン

学生

スーパー

雑貨屋

農家

陶芸工房

レストラン

温泉旅館

平均

地域通貨導入前 地域通貨導入後

J 0 18400

円 62350 81700

0

20000

40000

60000

80000

100000

120000

円・J

13

このような結果になる原因のひとつとして,アイテム購入時に直面する地域内外の選択

結果の変容が考えられる.図 10に示されているように,地域通貨導入前は同一アイテムを

地域内外のどちらかで買わなければならない機会に直面した場合約 44%を地域内で購入す

ることを選んでいるのに対して,地域通貨導入後では約 61%を地域内で購入することを選

ぶようになっている.ここから,地域通貨導入によって地域内での購入を選ぶことが多く

なったことがわかる.

図 10 アイテム購入時の地域内選択割合

図 11はアイテム購入時の地域内外選択機会の内訳の推移である.これによれば,地域通

貨導入後の第 3 ターンにおいて地域内を選択する割合が最も高くなっていることが見て取

れる.

図 11 アイテム購入時の地域内外選択機会の内訳の推移

以上から,地域通貨導入後の参加者の行動からみると,JAIST 村が抱えている(1)村民

同士の助け合いがない,(2)地域商店街での売上げ低下という二つの問題を解決する方向

へと変化したことがわかる.ただし,参加者が JAIST 村の問題解決に向かったとしても,

それが必ずしも地域通貨を積極的に活用したいと思っているわけではないことも本ゲーム

の取引結果から明らかになっている.図 12は,アイテム販売価格に占める地域通貨の割合

を示したものである.これによれば,域内で販売しているアイテム 14種類の内,域内のみ

で販売しているアイテムの販売価格に占める地域通貨の割合は約 20%であったのに対して,

0.44

0.61

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

地域通貨導入前 地域通貨導入後

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

1 2 3 4 5

回数

ターン

地域外

地域内

14

地域内外で販売しているアイテムの販売価格にしめる地域通貨の割合は約 42%であった.

地域外と競合するアイテムを販売する主体は積極的に地域通貨を受け取るような態度とっ

ていたが,地域内でしか販売していないアイテムを販売する主体はあまり地域通貨を受け

取らないように設定したことがこの結果から見て取れる.主体毎で見ると,ゲーム初頭か

ら借金残高が膨らんでいた学生が販売するアイテムの販売価格にしめる地域通貨の割合は

0%で最も低く,次いで低いのが,販売単価が高く,地域外との競合がないアイテムを販売

する温泉旅館(15%)であった.これらのことから,地域の問題を解決するといっても,

本ゲームの結果からは個々の主体の利益を犠牲にしてまで村の問題を解決するという行動

をとることはないということがわかった.

図 12 アイテム販売価格に占める地域通貨の割合(3~5 ターンにおける平均)

4.4 地域通貨ゲームを行った感想の分析:-テキストマイニングによる検討-

31 名の参加者から自由記述による回答を得た.抽出されたキーワードをカテゴリ化9し

た結果,30 名の記述内容から 8 つのカテゴリが構築された.図 13 はグループ毎に各カテ

ゴリの度数を示したものである.「地域通貨へのポジティブな理解」や「ゲームの楽しさ」

といった好意的なカテゴリがある一方で,「地域通貨へのネガティブな理解」や「地域通

貨の難しさ」といった批判的なカテゴリも現れた.「借金に対する理解」のカテゴリでは

借金をしてはいけない,借金は怖いものという記述が見られた.この理解を示した 4 名は

毎ターン借金を重ねていた「学生」グループに属する参加者であった.この他には自分た

ちの町に地域通貨が導入されて欲しい,地域通貨があったら良いという「地域通貨への希

望や導入」に含まれる記述も 6つ見られた.

図 14 はカテゴリ間のサークルレイアウト10を示したものである.「地域通貨へのポジテ

ィブな理解」と「ゲームの楽しさ」というカテゴリで繋がりが見られる一方,「管理通貨

の難しさ」と「ゲームの楽しさ」という一見すると相反すると考えられるカテゴリでも繋

がりが見られた.これは複数通貨を管理することの難しさがゲームの楽しさを必ずしも損

なっていないことを示すものである.他にも「ゲームは楽しかったですか」という質問項

目において,1 名が「まあまあ楽しかった」と答えた以外全員が「とても楽しかった」と

9 SPSS Text Analytics for Surveysに用意されているテキスト分析パッケージ(TAP)に基づいて自動的にあ

る程度のカテゴリに分類した後に,筆者が最終的に手動でカテゴリ分類の判断を行った.最終的な分類に

ついて第三者の評価は受けてはおらず,筆者ひとりの判断に拠るものである. 10

各参加者の自由記述におけるカテゴリ間の共起を示したものである.すなわち,一つの自由記述におい

て二つのカテゴリが出現している場合に両カテゴリに繋がりがあるとした.図 13 中の●はカテゴリを示し,

ノードと呼ばれる.ノード間の位置や距離に特別な意味はなく,ノードを繋ぐリンクによって共起頻度を

表している.破線がサイズ 1,細い実線がサイズ 2,太い実線がサイズ 3である.

0.20

0.42

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

地域内でのみ販売しているアイテム 地域内外で販売しているアイテム

15

回答している.これらのことから地域通貨のネガティブな評価や通貨管理の難しさが,地

域通貨ゲームのゲームとしての娯楽性を損なわないことが示された.

図 13 自由記述におけるカテゴリの度数

図 14 カテゴリのサークルレイアウト

5 考察

5.1 ゲーミング結果からの仮説検証

地域への愛着,地域の人たちへの信頼,地域での互酬性のいずれもゲーム開始前と比較

してゲーム終了後に高まった(表 1).ゲーム開始前の時点で参加者の認知的 SC の平均は

中立点である 3 よりも高く,各質問項目に対してゲーム開始前に否定的な回答(1,2)を

した参加者は 2~5 名と全体の約 5~15%に留まっている.ゆえにゲーム前後で態度変容し

た参加者の多くは,ゲーム開始前に中立的な回答(3)か弱い肯定的な回答(4)を行い,

ゲーム終了後にそれぞれ弱い肯定(4)か強い肯定(5)へシフトしていることがわかる.

これによって地域通貨ゲーム後に認知的 SC が高まることが確認されたが,果たして地

域通貨ゲームのどの部分によって認知的 SC が高められたのであろうか.それについては,

地域通貨に関する次の 2つの可能性が考えられる.

16

1 地域通貨による JAIST村商店街の売り上げの増加

2 ボランティアの実践とありがとうカードの付与

1)図 9が示すように,地域通貨導入後,地域内の売り上げは増加している.この背景に

は,地域内外の両方で販売しているアイテムに関する次のような思惑や行動がある.買い

手側は,ボランティアなど地域の課題を解決することで手に入れた地域通貨を使う機会を

探しており,その機会の一つとして地域内で販売されているアイテムの購入があった.そ

れは,地域内外双方で販売しているアイテムを購入する機会に直面した際,地域内で購入

する回数を増やしたという買い手の行動(図 10)からも明らかとなっている.その一方で,

売り手側には,地域内外双方で販売しているアイテムについて地域内でより多く買っても

らうために,販売価格に占める地域通貨の割合を増やすという戦略をとっている.これは,

地域内部でしか販売していないアイテムと比べて,地域内外で販売しているアイテムの販

売価格に占める地域通貨の割合が高いという結果(図 12)に現れている.このように,入

手した地域通貨を利用する機会を探すという買い手の行動と,より域内での購入を促進さ

せるために地域通貨を活用するという売り手の戦略が域内での売上げの増加に寄与してい

る.これらの買い手と売り手双方の行動や戦略は,ボランティアなどで入手した地域通貨

を地域内で使うことを促すものでもあり,村民同士の助け合いの輪を広げていくことに結

果として寄与している.

2)村民同士の対面によるボランティアを体験することによって,自分が他人を助けら

れること,他人から助けられることのありがたさを感じることができる.他人を助ける側

も助けられた側からありがとうカードを受け取ることで感謝される喜びも感じることがで

きる.このような相互扶助を体験することで,地域連帯の大切さや地域への愛着が高まっ

た可能性がある.前章で述べたように,実際にボランティアの実施率が増えたのは地域通

貨が導入された後である(図 6).2)が主要因として考えられる場合,地域通貨は直接の

要因ではないものの,人と人とを結びつけ,ボランティアの実施率を高めることに間接的

に寄与していると言える.

しかしながら認知的 SC の向上は,1)か 2)のいずれか独立の事象によって引き起こさ

れたものではなく,両者のポジティブ・フィードバックによって高められたと考えるのが

合理的である.地域通貨に対するポジティブな評価について参加者たちが自由記述で書い

たものを表 4 にまとめた.自由記述から参加者は,地域通貨導入による売り上げの増加だ

けではなく,地域通貨によるお金の循環や地産地消の大切さ,さらには地域通貨がコミュ

ニケーションツールとして人と人とを結びつけていると感じていることがわかる.当初は

プレミアムが付いたり,ボランティアによって入手したりと経済合理的な理由から地域通

貨を使用したいという動機であったと考えられるが,地域通貨の流通量が増え,非経済的

活動にも積極的に使われると村民同士のコミュニケーションを媒介したり,地域の役割や

大切さを気づかせたりするツールとして機能した可能性が高い.

西部(2002)は,地域通貨の目的のひとつとして「人々の間に協同や信頼の関係を築き,

貨幣交換へと一元化しているコミュニケーションを多様で豊かなものにする」ことを挙げ,

人々の価値観や関心をも伝えるメディアとしての側面を強調している.実際の地域通貨が

流通する現場において,上述の目的がどのように達せられているかを確かめることは難し

いが,今回ゲーミングという仮想的な状況であっても参加者の認知的 SC の向上が確かめ

17

られたことは地域通貨がコミュニティ形成ツールとしてどのように機能するかを知る上で

も重要な発見であろう.しかしながら 1)と 2)のいずれの可能性も取引記録表から推測

される仮説に過ぎない.また,地域通貨そのものが認知的 SC を高めたかどうかについて

は,地域通貨の導入前後でアンケート調査を実施したわけではないので現段階で因果関係

までを説明することはできない.

表 4 地域通貨に対するポジティブな評価における自由回答

また,地域通貨を利用した取引活動やボランティアの実践とは関わらない部分で認知的

SC が高められた可能性についても検討する必要がある.その要因として最も可能性が高い

と考えられるのは,ゲームの前提となった JAIST 村の状況設定である.(1)村民同士の助

け合いがない,(2)地域商店街での売上げが低下しているという JAIST 村の二つの問題は,

中学生である参加者にとって通常考えることがない問題であると想定され,これらの問題

解決について考えさせることによって自分たちの地域社会に対する認識や態度を変容させ

た可能性がある.(1)村民同士の助け合いは,認知的 SC における信頼の項目と関わりが

あり,(2)地域商店街での売り上げ低下は,互酬性や地域貢献の項目と関わりがある.

JAIST 村の問題を提示し,それらを解決しようと行動する中で,信頼や互酬性,地域貢献

の意識の重要性に気づき,自分自身の認知的 SC も高められたのではないだろうか.しか

し,JAIST村の問題提示それだけで参加者の認知的 SCを変容させたとは言いがたい.実際,

地域通貨導入前後ではボランティアの実施割合に違いがあったり,域内外の商品購入割合

にも差異が見られたりする.いずれも認知的 SC と関係のあることは先述した通りであり,

問題提示そのものだけが認知的 SCの変容を促したと考えることはできないであろう.

他にも「地域の課題」解決カードを書いてもらうことで,地域の課題に主体的に関与さ

せることを促し,地域活動への参画を是とするところがある.地域の問題提示とその解決

方法を話し合うことは地域通貨がなくとも実施することができるが,解決方法を円滑に実

施するためのツールとして地域通貨を用いていることが今回の地域通貨ゲームの特徴であ

り,ゲーム内において「地域の課題」解決カードと地域通貨の関係を分離して議論するこ

とは適切ではない.参加者から出されたアイデアが地域通貨を通じて擬似的ながら実施可

能となることで,さらに参加者自身に対してボランティアや地域貢献といったことを考え

る場面を実践という側面から提供できていると考えられる.

地域通貨が導入された後はボランティアにも多く参加するようになってすごくいいなと思いました

地域通貨を導入することで売り上げが少しであるが伸びた.その方が地域が活性化するのでとても良いことだと思った.安い方もいいけど思いのこもった地域のものを買う方がいいなと考えられました

地域通貨を使うと,いろいろな人が買いに来てくれて,コミュニケーションがいっぱいとれたかなと思いました.

地域通貨を使う前(導入する)まではどこのお店も過疎化していたけど,導入するとたくさんの人がお店に来てくれたりして賑やかになったので地域通貨の力ってすごいなと思いました.

円だけのときより,地域通貨も使えるようにすると,地域の人たちと仲良くなれると思いました.

地域通貨があると地域の中でそのお金がぐるぐる回っているんだと思いました.

18

全く思わない あまり思わない どちらでもない 少し思う 強く思う 合計円 1 6 1 1 0 9

どちらかというと円 0 0 5 1 1 7

どちらでもない 0 3 2 3 0 8

どちらかというと地域通貨 0 0 2 4 1 7

地域通貨 0 0 0 1 1 2

合計 1 9 10 10 3 33

Spearmanの順位相関係数 .60**

あなたの住んでいる地域に地域通貨があればよいと思いますか

あなたが住んでいる地域に地域通貨があるとして,あなたは地域通貨と円のどちらを使いたいですか

お金の価値観の変容は,問 5 の「いろいろな種類のお金から好ましいものを選ぶことが

できればよいと思いますか」でのみゲーム終了後で有意に高まった.その他の貨幣の多様

性を表す項目では有意な差異が見られなかったので,地域通貨ゲームによって通貨の多様

性を是認できるとした仮説が支持されたとは言えない.地域通貨と法定通貨の違いを認識

するという部分においては,問 5 で変化が見られたことから,法定通貨とは異なる通貨が

存在してもよいという考えが強まったことが示唆される.日本国内で使えるお金は一種類

でよいと考える参加者がゲーム終了後に減ったが,それらは有意な変化ではなく,依然と

して単一通貨の使用を支持する者が 24名と全体の 7割に上った.これらのことから貨幣の

多様性があってもよいが,自分自身が地域通貨を使用するかどうかは別であると考えてい

ることが推測される.

次にゲーム終了後に地域通貨に対する評価(図 4,5)に関する質問への回答を見ると,

参加者の回答は肯定的,中立的,否定的のいずれにも分散していることがわかる.問 10と

11 の回答結果の相関係数が 0.6(p<.01)であることから,地域通貨の存在願望と使用願望

には高い相関があることがわかる.クロス表を見ると(表 5),いずれの問いで「どちらで

もない」と選択した参加者は 2 名だけであり,一方を「どちらでもない」と選択しても,

もう一方で中立以外の選択をしている参加者が半数以上にのぼる.参加者は事前に地域通

貨に関する知識を持っておらず,講義でも地域通貨に関する知識を一切教授しなかった.

したがって,地域通貨ゲームを通じて円と地域通貨への評価を参加者が自分自身で判断で

きたと考えられる.

表 5 問 10 と問 11 における回答結果のクロス表

その他にもアイテム販売価格に占める地域通貨の割合をゲームターンの推移で見てみる

と(図 15),減少傾向になっている.この結果は本講義において地域通貨を必ずしも肯定

的に伝えていない証左でもあり,参加者が地域通貨ゲームを通じて自分自身の判断におい

て地域通貨を評価していることを示すものである.

図 15 アイテム販売価格に占める地域通貨の割合(全アイテムの平均)

0.42

0.29

0.24

3 4 5

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

ターン

19

5.2 地域通貨ゲームの効果について

地域内でのヒト・モノ・カネの循環促進という地域通貨導入目的と,地域内外のどちらで

商品を購入するかといった問題やボランティアを行う際に伴うコストの問題などといった

個々の住民が直面する問題の解決という目的が,どこまで両立するかを参加者に考える機

会を与える点でゲーミングという手法は総じて適していると言えよう.今回は時間の制約

でできなかったが,ゲームの結果を参加者にフィードバックし,なぜあの時その様な行動

をとったのかについて参加者同士で話し合うディブリーフィングを行えばこの効果はより

高まることが考えられる.

ただし, 単にゲーミングを通じて,地域通貨を導入することが良いことであるという意

識や貨幣の多様性意識の形成をもたらすことにはならないという点は本ゲームの結果から

も明らかである.学習ツールとしての地域通貨ゲームはあくまで地域通貨を導入したらど

んな問題に直面するのかについて参加者が共に考える場を提供するものとして意味がある.

また,「地域の課題」解決カードに記入し,それらのアイデアをボランティアとして実行

していくことで,自らの地域の問題を解決する上で何ができるのかについて考えることが

できる.実際の地域通貨流通実験においても地域住民が地域通貨を法定通貨と同じように

使用するだけでは彼らの貨幣の多様性意識は高まらないことがわかっており,貨幣の多様

性意識を高めるためには地域通貨に対する理解が必要となる(小林他,2011) .ゲーミン

グは,参加者に対して自分自身で考え,気づき,理解するという過程を体験させる場を意

図的に設計することが可能であり,それがゲーミングの利点であると言える.今後,参加

者が有する貨幣の多様性意識を高めるためにはゲーミング中やディブリーフィングにおい

て振り返りのポイントを用意する必要があるであろう.

我々が想定していなかった効果として,借金に対する理解というものがあった.借金と

いうことを経験したことに乏しい中学生にとって,ゲーム内で借金をすることが実生活で

の借金やその恐ろしさの理解に繋がることがわかった(図 13).自分で稼いだお金を社会

で本格的に使用する前にお金や借金に対するリテラシーを高めることができるのも地域通

貨ゲームの効果のひとつであろう.本稿で検討してきたボランティアや地域通貨の導入は,

地域における連帯を高めることにつながるものと考えられる.一方,地域活性化の施策を

持続可能性があるものにするためには,経済合理性を度外視してボランティアや地域通貨

による地域内での購入を行って,友愛や連帯を高めるような行動ばかりをするわけにはい

かない.地域への愛着を高めつつお金や借金に対するリテラシーも高まるという地域通貨

ゲームの効果は,「連帯と経済合理性の両方を高めることができるツール」と考えられ,

持続可能性を持った地域活性化施策の担い手を育てるものになる可能性を持つ.これは,

地域の課題解決のグループワークを行うといったワークショップに対する地域通貨ゲーム

の優位性だろう.

一方,本ゲームの結果から見るといくつか考えるべき設計上の問題が浮かび上がった.

特に,図 12で示しているように,販売アイテムの価格に占める地域通貨の割合を見ると,

地域内でしか販売していないアイテムの割合が低くなっている.多くの地域通貨導入事例

では,地域内でしか扱っていない地場産品などに対して地域通貨を積極的に用いている.

そこから見ると本ゲームの結果は実際の導入事例で起きている現象と合わないことになっ

ている.これについては,今後考察していく必要がある.

20

6 結論

本稿は地域通貨の意義や役割について座学での教授を受けたことがない中学生を対象に

地域通貨ゲームを実施することで,地域通貨ゲームにどのような学習効果があるのかを調

べた.地域通貨ゲームの実施前と実施後に行ったアンケート結果の比較から,参加者の認

知的 SC と貨幣観の一部に有意な差が認められた.このような学習効果は地域通貨の導入

や地域通貨の使用そのものによって生まれるものではなく,地域通貨が経済的活動と非経

済的活動の双方で使用されることによって域内に貨幣が循環し,地域通貨がコミュニティ

を形成するメディアとして機能することで生じるものである可能性が高い.ゲーミングに

よって人々の間に協同や信頼を築くとされる地域通貨の循環効果を定量的に示した今回の

知見は,地域通貨の効果的な循環を目指す実際の現場を支援する学習ツールとしての可能

性を示唆するものである.

地域通貨ゲームの効果の持続性については,今回はゲーミング後に時間をおいて調査す

ることはしなかった.なぜなら本稿で着目した認知的 SC や貨幣観は個人の価値観や認知

といったものであるので,日常生活や社会環境の変化によって容易に変容するものだから

である.とはいえ,外的要因を極力除くような工夫によって地域通貨ゲームによって変容

した価値観の持続性を調べることは可能であるかもしれない.調査対象を中学生に限らず

大人に広げることや参加者の年齢や性別といった属性の違いによる効果を見ることも含め

て今後の研究課題としたい.

謝辞

本研究は,科学技術融合振興財団(FOST)の平成 23 年度調査研究助成を受けて実施さ

れた.ここに記して謝意を表す.

参考文献

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コミュニティ活性化の評価と考察-」,北海道大学,博士学位取得論文.

小林 重人*,西部忠*,栗田健一,橋本敬(2010)「社会活動による貨幣意識の差異-地域

通貨関係者と金融関係者の比較から-」,『企業研究』,中央大学企業研究所,Vol. 17,

pp. 73-91. (*equal contribution)

小林 重人*, 栗田 健一*,西部 忠,橋本 敬(2011)「地域通貨流通実験前後における貨幣意

識の変化に関する考察-東京都武蔵野市のケース-」,『北海道大学社会科学実験研究

センター(CERSS) ワーキングペーパーシリーズ』,No. 118. (*equal contribution)

小林 重人,橋本 敬,西部 忠(2012)「制度生態系としてのコミュニティバンクと住民組織

-ブラジル・フォルタレザにおけるパルマス銀行を事例として-」,『進化経済学論

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小林重人(2012)「更別村公益通貨「サラリ」アンケート調査による「貨幣意識」の分析」,

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公募研究シリーズ(全労済協会),第 5章 6節,Vol. 25,pp. 130-135.

内閣府(2002)「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」.

https://www.npo-homepage.go.jp/data/report9_1.html

西部忠(2002)「地域通貨を知ろう」,岩波書店.

21

吉田 昌幸(2012)「学習ツールとしての地域通貨ゲームの設計とその実施結果の考察」,

『経済学研究』,北海道大学,Vol. 62,No. 1,pp. 69-87.

与謝野 有紀,熊野 建,高瀬 武典,林 直保子,吉岡 至(2006)「日本の地域通貨に関する

実態調査結果の概略」,『関西大学社会学部紀要』,Vol. 37, No. 3, pp. 293-317.

吉川肇子(2008)「ゲームにおける『学び』を考える:何を,どのように学ぶのか」『三田

商学研究』Vol.50, No.6,pp.19−31.

Uphoff, N (2000) “ Understanding Social Capital: Learning from the Analysis and Experience of

Participation.” in Social Capital: A Multifaceted Perspective. edited by P. Dasgupta and I.

Serageldin: Washington, D. C., World Bank, 215-252.

地域通貨ゲーム 事前アンケート

本アンケートは、地域通貨ゲームに参加される皆さんのことを前もって我々が知るためのものです。本アンケ

ートで収集された情報は、今後のゲーム開発と学術研究にのみに利用されます。アンケートはあまり深く考えず

に直感で答えてください。ご協力よろしくお願いします。

上越教育大学 講師 吉田 昌幸

北陸先端科学技術大学院大学 助教 小林 重人

あなたのことについてお聞かせください。(それぞれひとつに○をつけてください)

1) あなたの住んでいる地域にどのくらい愛着がありますか。

□ とても愛着がある □ 少し愛着がある □ どちらとも言えない □ あまり愛着がない □ 全く愛着がない

2) あなたの地域に住んでいる人は信用できますか。

□とても信用できる □少し信用できる □どちらとも言えない □あまり信用できない □全く信用できない

3) 自分のことよりも人や地域のために役に立ちたいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

4) 地域の人同士で助け合うことは、自分の義務だと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

5) 生きていくために,法定通貨と異なる他のお金を利用できるのがよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

6) 人々が自由にお金を創造・発行できる方がよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

7) お金は人と人とを結びつけるものであればよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

8) お金の発行権を中央銀行や商業銀行だけでなく人々やコミュニティも持つべきだと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

9) 日本国内で使えるお金は円一種類でよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

10)友人がお金で困っている時、貸してあげるのがよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

裏面に続きます。

付録 1

11) お金は儲ければ儲けるほどよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

12) 人や地域を助けるのは無償でするのがよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

13) お金はどんな場所や地域でも使えるほうがよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

14) いろいろな種類のお金から好ましいものを選ぶことができればよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

ご回答ありがとうございました。

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年齢: 歳 職業:

地域通貨ゲーム 事後アンケート

本アンケートは、地域通貨ゲームに参加された皆さんがこのゲームを通じてどのようなことを感じたのかを教

えてもらうためのものです。以前回答したいただいたものと同じ質問がありますが,前回と必ずしも同じ回答に

しなくてもよいです。本アンケートで収集された情報は、今後のゲーム開発と学術研究にのみに利用されます。

アンケートはあまり深く考えずに直感で答えてください。ご協力よろしくお願いします。

上越教育大学 講師 吉田 昌幸

北陸先端科学技術大学院大学 助教 小林 重人

あなたのことについてお聞かせください。(それぞれひとつに○をつけてください)

1) あなたの住んでいる地域にどのくらい愛着がありますか。

□ とても愛着がある □ 少し愛着がある □ どちらとも言えない □ あまり愛着がない □ 全く愛着がない

2) あなたの地域に住んでいる人は信用できますか。

□とても信用できる □少し信用できる □どちらとも言えない □あまり信用できない □全く信用できない

3) 自分のことよりも人や地域のために役に立ちたいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

4) 地域の人同士で助け合うことは、自分の義務だと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

5) 生きていくために,法定通貨と異なる他のお金を利用できるのがよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

6) 人々が自由にお金を創造・発行できる方がよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

7) お金は人と人とを結びつけるものであればよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

8) お金の発行権を中央銀行や商業銀行だけでなく人々やコミュニティも持つべきだと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

9) 日本国内で使えるお金は円一種類でよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

10)友人がお金で困っている時、貸してあげるのがよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

裏面に続きます。

付録 2

11) お金は儲ければ儲けるほどよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

12) 人や地域を助けるのは無償でするのがよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

13) お金はどんな場所や地域でも使えるほうがよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

14) いろいろな種類のお金から好ましいものを選ぶことができればよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

15) あなたの住んでいる地域に地域通貨があればよいと思いますか。

□ 強く思う □ 少し思う □ どちらでもない □ あまり思わない □ 全く思わない

16) あなたが住んでいる地域に地域通貨があるとして,あなたは地域通貨と円のどちらを使いたいですか。

□ 地域通貨 □ どちらかというと地域通貨 □ どちらでもない □ どちらかというと円 □ 円

17) 地域通貨ゲームは楽しかったですか。

□ とても楽しかった □ まあまあ楽しかった □ どちらでもない □ あまり楽しくなかった □ まったく楽しくなかった

18)地域通貨ゲームを行ってどんな感想を持ちましたか(例えば,地域通貨が導入された前後の違い,

円と地域通貨の違いなど)。ご自由にお書きください。

ご回答ありがとうございました。

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□ サラリーマン □ 学生 □ スーパー □ 雑貨屋

□ 陶芸工房 □ レストラン □ 温泉旅館 □ 農家