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1
木質バイオマスからの
連続型リグニン分離技術の開発
(独)産業技術総合研究所
コンパクト化学システム研究センター
川﨑 慎一朗
大川原 竜人、鈴木 明
2
化石資源の枯渇
温室効果ガスの増加
林野庁:森林・林業白書(H21年度)
化石資源の代替としての
バイオマス資源の重要性
ほとんどのバイオマス資源が未利用、もしくは燃料としての使用に留まっている
現状
林地残材 (約2000) ほとんど未利用
発生形態別
木質バイオマス廃棄物発生量 利用状況 (単位 : 万m3)
製材工場残材(1070)
建設発生木材(1180)
230 780 60
630 180 370
未利用
マテリアル利用
エネルギー利用 合計 約4000万m3
研究背景
3
木質バイオマス成分分離の既存技術
黒液
(リグニン、ヘミセルロース) 木質バイオマス
セルロース
燃焼による
エネルギー回収
環境負荷、リグニンの変質
NaOHなど
大量の薬剤
蒸解(パルプ製造)
パルプ
木質バイオマス中の糖分(セルロース、ヘミセルロース)は発酵原料、
パルプ製造などで利用されるが、リグニンの利用は限定されている。
パルプ業界の蒸解処理やオルガノソルブ法では大量のアルカリや溶媒
を使用するため、環境負荷が大きく、またリグニンの変性を伴うため
燃焼させてエネルギー回収するに留まっている。
4
プロセスコンセプト (京都大学)
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
Carb
on
co
nvers
ion
[-]
280260240220200180160140120
Extraction temperature [°C]
water-soluble
(hot water treatment 180 °C, 1 h)
CO2
residue
1 h
water/acetone-soluble
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
Carb
on
co
nvers
ion
[-]
280260240220200180160140120
Extraction temperature [°C]
water-soluble
(hot water treatment 180 °C, 1 h)
CO2
residue
1 h
water/acetone-soluble
溶剤流通式抽出装置を用いたリグニンの分離
Isao Hasegawa, Kazuhide Tabata,
Osamu Okuma, and Kazuhiro Mae
Energy & Fuels 2004, 18, 755-760
Solid residue
Water soluble
Water/acetone soluble
木質バイオマス
水熱処理
可溶
ヘミセルロース
不溶
リグニン、
セルロース
可溶
リグニン
不溶
セルロース
アセトン/水-熱処理
180℃
230℃
二段階プロセス
新提案1
水・アセトンを利用した木質バイオマス処理
5
プロセスコンセプト(住友ベークライト)
産総研目標) リグニン分離が可能な連続処理プロセスの開発
亜臨界水処理 or 水/アセトン処理
木質バイオマス
水熱処理
可溶
ヘミセルロース
セルロース
不溶
リグニン
低分子リグニン
アセトン抽出
300℃
常温
提案1京大 :半流通式
提案2住友ベークライト :回分式
高分子リグニン
処理量が少ない
新提案2
亜臨界水を利用した木質バイオマス処理
6
本研究 連続装置化 装置化コンセプト
木質バイオマス セルロース
ヘミセルロース
リグニン
前処理
含水率調節、
粉砕・均質化処理
によるスラリー化
ポンプ
高圧送液
反応器
加熱、保持
減圧・回収部
冷却、処理物の
高圧回収
連続処理プロセス
それ自体には
ほとんど流動性が無く、
連続処理困難
流動性を持たせ
連続処理を可能に
樹脂原料リグニン
ヘミセルロース
セルロース及び
分解物 230~300℃
従来の亜臨界水処理では回分式
もしくは半流通式(パーコレート)での研究が多い。
処理量の観点から実用化には連続装置化が必須。
亜臨界水単独or水アセトン処理の両方を比較検討
7
前処理検討 添加剤による均質化向上
連続装置化の必須条件として木質バイオマスの前処理方法の検討を実施
・ 極微量(スラリー重量比0.3%)の添加剤を加えることにより、スラリーの
均質化を達成 ⇒ 安定的な連続処理
・ 木粉の微細化により処理固形物の高濃度化を達成 ⇒ 経済性向上
微細化によるスラリーの高濃度化
水層
添加剤(増粘剤)を加える
ことにより固液分離を抑制
スラリーフィード試験
原料木粉を微細化することにより
スラリー中固形物の高濃度化を達成
安定送液
(*凡例) 固形物濃度-木粉粒子径
原料木粉
含水率調節
(流動性付加)
添加剤
均質な水-木粉スラリー
8
反応条件検討(回分式)
回分式実験による亜臨界水処理の基礎検討
・250℃以上の水処理でリグニンを固形物として回収できることを確認
・アセトン可溶の低分子リグニン(樹脂原料)の収率が300℃で
ピークを持つことを確認。
(酸不溶性リグニン)
9
連続リグニン分離装置
送液可能な含水スラリー状にした木粉をインジェクションポンプで
連続圧入。熱媒加熱反応器で亜臨界水処理した産物を受器で
高圧回収する。
モーノポンプ
(充填用ポンプ)
インジェクションポンプ
(圧送)
高温反応器
(加熱、保持)
受器
(減圧、回収)
原料木粉
前処理
(スラリー化)
糖溶液
樹脂原料
(低分子リグニン)
10
閉塞を回避するために、温度と固形物析出の関係を検証
条件 :250~300℃、5~9 MPa、濃度5%
流量 : 20g/min
冷却器内で閉塞発生
反応器から冷却器までの
ラインでは閉塞生じず
反応器
冷却器
処理流体
実験途中で圧力が徐々に上昇 → 運転中断
実験結果(反応器出口閉塞トラブル)
析出物 黒色、表面は滑らか 配管を完全に閉塞
11
反応器出口から受器までの排出ラインの制御温度を
変化させ、温度と閉塞(固形物析出)の関係を
検証した
反応器排出ラインを210℃に保った時のみ配管閉塞・析出物無し
Run No 反応器-受器間の構成 閉塞 冷却過程 反応温度
(℃)
反応圧力
(MPa)
01 コイル/シェル冷却器 あり 250→RT 250 5
02 銅管冷却 あり 250→RT 250 5
03 二重管熱交換器 あり 300→80℃ 300 9
04~06 ヒートトレース
Run04
Run05
Run06
あり
あり
なし
300→120℃
300→180℃
300→210℃
300 9
PT
反応器
PG
加熱制御
ピストン受器
回収 ライン
実験結果(反応器出口温度と閉塞の関係)
12
ペースト状、常温
で軟化
受器内残存物
K-Lignin : 103%
アセトン可溶成分 : 95%
未処理スラリー含む
K-Lignin : 78%
アセトン可溶成分 : 3%
PT 反応器
回収系 PG
210℃
300℃
受器
反応器内
受器内 ~70℃
・処理後固形物はほぼK-Ligninであった。連続処理によるリグニン分離の確認。
・受器の固形物はアセトン可溶成分が95%と回分式実験と比較して遥かに高い
→ アセトン可溶な低分子リグニンが210℃以上の亜臨界水に溶解し、
選択的に分離回収されている可能性が高い
K-Lignin : 86%
アセトン可溶成分 : 47%
回分式実験では・・・
閉塞回避実験の分析結果
13
PSV1
PT1
反応器
加熱器
二重管冷却器
PT2
ポンプ1
ポンプ2
PSV3
PG2
PT3圧力調節弁
PSV2
圧力調節弁
抽出容器 1/2インチチューブ、L 150 mm、容積:13.5 ml 前後にフィルターを設置し、容器内の固形物が流出を防止
ヒーター保温
ヒーター保温
抽出容器充填物 回分式装置で300℃、30min 処理
後に得られた回収固形物
Klason-Lignin率 :約90%
アセトン可溶成分率 :約40%
亜臨界水抽出装置・フローダイアグラム
14
0
20
40
60
80
100
120
140
0 50 100 150 200 250 300 350
温度 (℃)
固形
物流
出率
(%)
アセ
トン
可溶
成分
抽出
率 (
%)
亜臨界水によるアセトン可溶成分抽出率
固形物流出率
250℃と300℃ではアセトン 可溶成分の抽出率はほぼ 同じだが、流出する固形物 の量は増加している
300℃の亜臨界抽出の過程で リグニンがさらに低分子化された と考えられる
亜臨界水に低分子リグニン(アセトン可溶成分)は溶解する。
亜臨界水抽出実験 結果
15
原料スギ木粉 セルロース
ヘミセルロース
リグニン
可溶:セルロース、
ヘミセルロース
反応器:300℃
受器:<210℃
可溶:低分子リグニン 不溶:高分子リグニン
可溶:セルロース、
ヘミセルロース
不溶:低分子リグニン
210℃以上で固形物は高分子リグニンのみ
高温ろ過器で高分子リグニンを分離
【加速費】 亜臨界水可溶な低分子リグニンと 亜臨界水不溶な高分子リグニンのフィルターで分離
高温ろ過器:>210℃
210℃以下で低分子リグニンのみ析出
受器で固形物として低分子リグニンを回収
温度操作によるリグニン分子量分画
16
15%固形物スラリーの連続処理
15%という高濃度固形物スラリーの
連続処理において圧力変動、閉塞の
無い安定した連続処理を達成。
固形物残存率 回収固形物のリグニン率 樹脂原料収率
バッチ処理(比較) 49.8 % 96.8 % 55.2 %
15%連続処理 42.4 % 92.8 % 59.4 %
圧力データ (300℃、9MPa、反応時間30分)
固形物分析
連続処理において原料中リグニン比で約60%を
樹脂原料として回収することに成功
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実用化に向けた今後の課題
• 現在15%の固形物スラリーの連続処理は達成している。経済性を考慮する上で更なる高濃度化を検討予定。
• リグニン以外の成分(糖、および分解物)の効率的な利用方法の検討。
• 実用化に向けて、さらに効率的なリグニンの分離方法の検討。
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企業への期待
• リグニン以外の成分については、発酵、ガス化などの技術で有効利用できると考えている。
• セルロースの分離、利用技術を持つ製紙業界との共同研究を希望。
• また、リグニンを新規樹脂材料として開発中なので、樹脂を研究中の企業には、本技術の導入が有効と思われる。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :リグノセルロース系バイオマスから
の樹脂原料の製造方法及びその装置
• 出願番号 :特願特願2012-028936
• 出願人 :産業技術総合研究所
• 発明者 :鈴木明、川﨑慎一朗、大川原竜人
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謝辞
本研究は(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構の
「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発」
ー化学品原料の転換・多様化を可能とする革新グリーン技術の開発
ーバイオマスの化成品転換のための熱化学反応技術基盤の構築と
それに基づく脂肪族、芳香族ポリマー製造プロセスの開発
に関わる委託研究として実施された。ここに謝意を表する。
21
お問い合わせ先
(独)産業技術総合研究所
ライフサイエンス分野研究企画室
TEL 029-862 - 6032
FAX 029-862 - 6048
e-mail:life-liaison-ml@aist.go.jp