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和食文化の継承の取組について 平成28年5月 農林水産省食料産業局 食文化・市場開拓課 和食室

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和食文化の継承の取組について

平成28年5月 農林水産省食料産業局 食文化・市場開拓課 和食室

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目 次 【はじめに】 ・食文化・市場開拓課和食室について ・・・2 ・ユネスコ無形文化遺産とは ・・・3 ・ユネスコ無形文化遺産登録までの歩み ・・・4 ・ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化 ・・・5 ・無形文化遺産に登録された和食文化の4の特徴① ・・・6 ・無形文化遺産に登録された和食文化の4の特徴② ・・・7 【データで見る和食文化の現状】 ・国民の食生活の現状 ・・・8 ・データで見る和食文化の継承の状況(認知度及び継承度) ・・・9 ・データで見る和食文化の継承の状況(食材、調理) ・・・10 ・データで見る和食文化の継承の状況(食べ方、日本の伝統) ・・・11 ・和食文化の継承に対する意識 ・・・12 【これまでの取組】 ・食育推進基本計画での位置づけ ・・・13 ・これまでの和食文化の継承の取組 ・・・14 ・「和食」の保護・継承に向けた取組(①情報発信、食育の推進) ・・・15 ・「和食」の保護・継承に向けた取組(②教育現場での取組) ・・・16 ・「和食」の保護・継承に向けた取組(和食給食の実施事例) ・・・17 ・「和食」の保護・継承に向けた取組(③普及・啓発) ・・・18 ・「和食」の効果的な方策の検討・明確化・発信 ・・・19 ・和食文化の保護・継承に向けた新たな試み ・・・20 ・和食文化に関するチェックシート ・・・21 【今後の取組】 ・平成28年度新規事業 「和食」と地域食文化継承推進事業 ・・・22 【外部の組織と連携した取組等】 ・一般社団法人和食文化国民会議について ・・・23 ・一和食会議の最近の主な活動事例について ・・・24 ・「和食の日」に子ども達に和食文化を伝える取組 ・・・25 ・日本郵便等と連携した取組 ・・・26 ・地域における和食文化の保護・継承活動の事例 ・・・27 【和食文化継承の将来ビジョン】 ・我が国の農林水産業に吹く追い風 ・・・28

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食文化・市場開拓課和食室について ○ 平成27年度10月より、和食文化の保護・継承の施策と関連が深い食育の推進、日本食・食文化の海外発信、

国産農産物の需要拡大などの施策を一体的に推進するため、食料産業局に食文化・市場開拓課を設置。 ○ その中で、「和食室」を設け、ユネスコ無形文化遺産に登録した和食文化の保護・継承の推進を図るため、 ①一般社団法人和食文化国民会議等の関係団体と密接に連携しながら、地域団体、教育現場、食品産業等など

多くの関係者と産官学一体となった取組の推進 ②和食文化の継承を国民も含め多くの関係者で進めるための環境整備 等に取り組んでいるところ。

外食・中食産業の振興 業界の実情を踏まえつつ、以下の取組等で民間を後押し。 ・サービス生産性向上に向けた取組 ・地域の飲食店におけるムスリム・ベジタリアン等外国人の 多様な食文化への対応(インバウンド対応)

国内における国産需要の拡大

海外への日本食文化発信

国産農産物等の需要フロンティアの拡大

海外の日本食ブームが 国内での需要を喚起

日本人の伝統的な食文化の発信

国内外食産業の海外展開 による日本食文化の海外発信

国産農産物の大きな需要先として 国内の日本食文化を牽引

国産農産物の

需要の維持・拡大

輸出促進

インバウンドの増大

「海外日本料理人技能認定制度」や「日本産食材サポーター店制度」 による民間主体での日本食レストランのネットワーク化

「食と農の景勝地」による郷土料理など地域食・食文化の魅力の磨き上げ

総理や大臣等のトップセールスや在外公館と 連携した日本食・食文化の魅力発信

直売所や学校給食 を核とした地産地消

表彰・イベントによる国産農産物の需要喚起

健康ニーズに着目した医福食農連携

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国内における和食文化の保護継承

各種団体等と連携した 無形文化遺産「和食」の継承の取組

和食文化継承の環境整備

小学校を中心に「和食給食」の実施

和食室

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フランスの美食術(2010年)

メキシコの伝統料理(2010年)

ケシケキの伝統(トルコ) (2011年)

食に関する無形文化遺産 無形文化遺産の例

芸能(能楽)

伝統工芸技術 (結城紬)

社会的慣習・行事 (日立風流物)

地中海料理 (スペイン、ギリシャ、イタリア、モロッコ)

(2010年)

韓国のキムジャン (2013年)

ユネスコ無形文化遺産とは ○ 「無形文化遺産」とは、芸能や伝統工芸技術などの形のない文化であって、土地の歴史や生活風習などと密

接に関わっているもののこと。 ○ ユネスコの「無形文化遺産保護条約」では、この無形文化遺産を保護し、相互に尊重する機運を高めるため、

登録制度を実施。 ○ 2010年の「フランスの美食術」などの食に関する無形文化遺産が登録されて以来、和食文化を含め食に関す

る無形文化が増えてきている。

ジョージアワイン(2013年)

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伝統的な音楽や舞踊、演劇、工芸技術といった無形の文化であって、その土地の歴史、文化、生活風習と密接に結びついたもの。

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ユネスコ無形文化遺産登録の歩み ○ 日本食文化のユネスコ無形文化遺産登録を目指し、平成24年3月に政府としてユネスコに申請書を提出(申

請名称は「和食;日本人の伝統的な食文化」)。 ○ 平成25年12月のユネスコ無形文化遺産保護条約政府間委員会にて登録が決定。

フランス等の動きを見た我が国関係者の気運の高まり

2013 (H25)

2011 (H23)

7月~11月 申請する内容についての検討会を開催

2010年秋、フランス、メキシコ、地中海(スペイン、イタリア、ギリシャ、モロッコ)の食に関する社会的慣習がユネスコ無形文化遺産として登録される。(2011年秋にはトルコも登録)

3月 文化審議会等の審議を経てユネスコに申請書を提出

9月 文化審議会において、「和食」をユネスコにおける2013年審査の国内最優先審査案件とすることを決定

12月4日 第8回政府間委員会(アゼルバイジャン共和国で開催)にて登録が決定

• 熊倉功夫(静岡文化芸術大学学長)会長をはじめ、学識経験者、日本食関係者、調理学校経営者等による検討 (外務省、文化庁ほか3省庁の参加)

• アンケートの実施(92%が賛同) • NPO等 約1,500団体の賛同

補助機関※による事前審査

無形文化遺産とは

• ユネスコ事務局による「各国1か年あたり審査は1件まで」という方針に対応するもの。

日本食文化を食事という空間の中で「自然の尊重」という精神を表現している「社会的慣習(習わし)」とし、以下の特徴を整理。

• 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重 • 栄養バランスに優れた健康的な食生活 • 自然の美しさや季節の移ろいの表現 • 正月等の年中行事との密接な関わり

※…補助機関は、政府間委員会委員国6か国からなる評価機関

2012 (H24)

2016 (H28)

12月までに、ユネスコへの定期報告書(6年に1度、条約締結国が自国の現状をユネスコへ報告するもの)を作成し、ユネスコへ提出。

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(c) Masashi Kuma, 2006

「和食」の特徴③:

自然の美しさの表現

「和食」の特徴①:

多様で新鮮な食材と素材の味わいの活用

「和食」の特徴②:

バランスがよく、健康的な食生活

「和食」の特徴④:

年中行事との関わり

食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴の一つです。季節の花や葉などを料理にあしらったり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。

日本の食文化は、年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆が強くなるのです。

一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿、肥満防止に役立っています。

日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられています。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。

ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化

• 平成25年12月4日、我が国からユネスコ無形文化遺産に登録申請していた「和食;日本人の伝統的な食文化」の登録が決定。

• 登録を契機として、日本食文化を未来に向けて守り伝えていくこと機運に繋げることが重要。

「自然を尊重する」というこころに基づいた、日本人の食慣習

さらに

食育等による保護・継承

・登録による世界的な日本への注目 ・2015年ミラノ万博 (テーマ:地球に食料を、生命にエネルギーを) ・2020年東京オリンピック・パラリンピック

海外への日本食文化発信等の絶好の機会

継続的なPRによる関心の維持

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無形文化遺産に登録された和食文化の4つの特徴(①/2)

「和食」の特徴① 多様で新鮮な食材と素材の味わいの活用

・四季折々の自然の中から生み出される日本の食材は大変多様性に富んでいる。現在、日本の市場で流通する野菜の数は150種類ほどと言われている。また、日本で獲れる海水魚は実に種類豊富で、日本に生息する魚種だけでも約4,200種ある。

・このような多様で豊かな食材を調理する際には、素

材の持ち味を最大限に活かそうとすることも特徴。例えば、船上での活け締めの技術や刺身の味を損ねずに切るための専用の刺身包丁という調理道具の開発など、素材の持ち味を活かすための「知恵」や「工夫」、「技術」が日本食文化にはある。

「和食」の特徴②

バランスがよく、健康的な食生活

・健康的な食生活を表すキーワードは、「栄養バランス」と「低カロリー」の2つ。

・特徴①のような多様な食材の利用に加え、一汁三菜という多くの種類の食品をとれる食事スタイルがあるため、栄養バランスがとりやすい食生活になっている。

・また、動物性油脂を用いない代わりに、出汁のうま味を用いる料理法が発達してきたため、低カロリーな食事となっている。

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無形文化遺産に登録された和食文化の4つの特徴(②/2)

「和食」の特徴③ 自然の美しさの表現

「和食」の特徴④

年中行事との関わり

・料理だけでなく、器や食事の場のしつらいまで含めて、自然の美しさや四季の移ろいを表現する、そのような「美意識」が日本食文化にはある。

・これは、単に見た目の美しさというだけではなく、旬の食材を好んで用いたり、料理と器の取り合わせを選んだりといった、季節感を大切にする「心」も含まれる。

・正月のおせち料理やお雑煮から始まり、大晦日の年越しそばまで、様々な年中行事において、「食」は欠かせないものとなっている。

・また、お食い初め、七五三など、人生儀礼においても「食」はたびたび登場。

・「同じ釜の飯を食う」「一つの鍋を囲む」などといった言い回しに見られるように、このような行事の場で、家族や友人、地域の人たちと共に食事の時間を過ごすことで、絆を強める役割を持っている。

春 ぱっと花が咲くような 華やかさ

夏 ガラスの器に 氷を敷き詰めて

秋 秋の花 菊の器は、 こっくり深い色合い

冬 縁起のいい鶴は 新年のモチーフ

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国民の食生活の現状

○ 食の多様化や核家族化、共働きの増加など価値観や働き方の変化の影響を受け、日本人の食生活が変化してきていると言われているが、現在の国民の食生活の実態を明らかにするため、平成27年度「和食」の保護・継承推進検討会において、全国1万人に食生活に関するアンケート調査を実施。

○ 一日三度の食事を家族と食べている者が多いという姿が見えてきた一方、20代男性では、2割弱が朝食をほとんど食べない、4割弱が一人で食事をとっているという実態が明らかになったところ。

○ また、7割強の者が食べることへの関心(関心+やや関心)を持っており、この食への関心の高さをどのように行動に結びつけるかが、和食文化の継承への重要な視点となる。

○食べることへの関心度

○朝食・昼食・夕食を食べる頻度(平日) ○内食・中食・外食の割合(平日の夕食)

○一緒に食事をする人(平日の夕食)

出典:平成27年度「和食」の保護・継承推進検討会「食生活に関するアンケート調査」

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データで見る和食文化の継承の状況(認知度及び継承度)

○ 前項の調査から、和食文化の継承の状況を見てみると、ユネスコ無形文化遺産に「和食:日本人の伝統的な食文化」が登録されたことについて、53.1%の人が「知っている」、21.8%の人が「聞いたことがある」と答え、その浸透ぶりがうかがえる。

○ 一方、和食を「教わった、受け継いだ」と答えた人は全体の3割弱。「教えている、伝えている」という 人はさらに少なく16.8 % 、若年層になればその割合はさらに下がる。

○ 教わった人は多かった順に、母親、祖母、学校の先生と続き、和食文化の継承には家庭や学校の場が重要で あることがうかがえる。

○「和食」がユネスコ無形文化である ことの認知度

○和食及び和食文化の継承の状況

出典:平成27年度「和食」の保護・継承推進検討会「食生活に関するアンケート調査」

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データで見る和食文化の継承の状況(食材、調理) ○ 和食文化を構成する要素ごとに実践度や重視度を見てみると、 ①ごはんを中心とした食事、魚貝類活用、四季折々の食材の利用が和食文化の特徴となる「食材」については、

ごはん(米)を一ヶ月以内に食べていない者は全体で約7%、魚を一ヶ月以内に食べていない者は全体で約20%となっている。旬の食材を意識的に食べている者は、半数程度にとどまっているものの、もっと食べたい人は30%という結果に。

②素材の味を活かすことが特徴となる「調理」については、「だし」を引いている人は3割弱に止まるが、今後 やってみたいという意向は顆粒・液体だしを使った調理より高い状況。

食材について 調理について

○主食について

○主菜について ○旬の食材について

○素材本来の味を活かした料理をする(女性)

○だしについて

出典:平成27年度「和食」の保護・継承推進検討会「食生活に関するアンケート調査」

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データで見る和食文化の継承の状況(食べ方、日本の伝統) ○ 栄養バランスに優れた献立や自然に感謝をする心から生まれた作法も重要な和食文化の要素。和食文化の献立

の基本である一汁三菜の献立は、全体の半数の以上の人が実施。また、「いただきます」の挨拶や残さず食べる等の作法については、約半数の親が子どもに身につけさせたいと思っている。

○ 日本の長い歴史の中で育まれてきた行事食や郷土料理には、自然の尊重や健康長寿への願い、地域の絆を大切にする気持ちなどが込められている。その実施実態を見てみると、「お正月・おおみそか」については約9割の人が実施している一方で、お彼岸などは4割弱の実施に止まる。

○ 郷土や地域に伝わる料理の実践度は約1割、受け継いでいこうとする意識も1割程度となっており、郷土料理等の継承は大きな課題となっている。

食べ方について 日本の伝統について

○一汁三菜について

○子どもに身につけさせたい作法

○行事食の実施頻度

○地域に伝わる料理の継承

出典:平成27年度「和食」の保護・継承推進検討会「食生活に関するアンケート調査」 11

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和食文化の継承に対する意識 ○ 和食文化国民会議(保護措置に責任を持つ組織として申請書に記載)の会員に行ったアンケート調査では、

多くの者が、和食文化の保護・継承を進めるに当たり、「地場の食材を活かした郷土料理の消失」、「正しく箸を持てない子どもの増加」、「食事の挨拶をしない若者の増加」、「若い女性が和食料理の調理に苦手意識を持っていること」等について、危機感を感じていると回答。

○ また、農林水産省において、国内4カ所で、おばあちゃん世代、母親世代、若者世代の三世代で行った意

見交換会では、「和食」に対して若者世代から、「洋食と比較して近寄りがたい」、「地味」、「作るのが難しい」、「外食時の単価が高い」といった意見が開陳。若者世代への継承が容易でないことが推測。

食材

地場の食材を活かした郷土料理が消失していく 97.3%

安全性が不安な輸入野菜が増えた 85.9%

食べ方・作法

食事の挨拶をしない若者が増えた 95.7%

正しく箸を持てない子どもが増えた 93.8%

「和食」マナーの大切さが若い世代に伝わっていない 93.0%

技術

若い女性が「和食」を作ることに苦手意識がある 90.4%

「包丁さばき」に自信がある主婦が少ない 79.0%

和食文化について心配されること 「和食」についてのイメージ

※アンケート結果(「かなり心配している」・「心配している」を合わせた数値の上位の項目を抜粋) 回答総数114

和食会議会員へのアンケート調査結果 三世代意見交換会での「和食」に対する意見 <若者世代の意見> ○ 和食は洋食と比較して近寄りがたい雰囲気がある ○ 和食は地味、作るのが難しい ○ 和食は外食する時の単価が高い 等

<母親世代の意見> ○ 和食は家庭で作るのに手間がかかる ○ 和食を作るのは子供に手伝わせにくい 等

出典:平成26年度「和食」の保護・継承に向けた検討会資料

<年配世代の意見> ○ 和食は健康で長生きするために必要なもの 等

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食育推進基本計画での位置づけ ○ 平成28年3月に食育推進会議により、平成32年までの5年間を期間とする「第3次食育推進基本計画」が

決定され、和食文化が無形文化遺産に登録されたこと等を踏まえ、重点事項の1つに「食文化の継承に向けた食育の推進」が位置づけられた。

○ 同計画案では、「地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民の割合」を、平成32年度までに50%以上(平成27年度41.5%)とすること。

また、特に20歳代、30歳代の若い世代については、その受け継いでいる割合を60%以上(平成27年度49.3%)とすることを目指している。

第3次食育推進基本計画骨子(抜粋)

目標

第1 食育の推進に関する施策についての基本的な方針 1.重点課題 今後5年間に特に取り組むべき重点課題を以下のとおり定める。 (5)食文化の継承に向けた食育の推進 南北に長く、豊かな自然に恵まれ、海に囲まれた我が国では、四季折々の食材が豊富で、地域の農林水産業とも密 接に関わった豊かで多様な食文化を築いてきた。また、長寿国である日本の食事は世界的にも注目されている文化で ある。 しかし、近年、グローバル化や流通技術の進歩、生活様式の多様化等により、地場産物を生かした郷土料理やその 食べ方、食事の際の作法等、優れた伝統的な食文化が十分に継承されず、その特色が失われつつある。 このため、「和食;日本人の伝統的な食文化」が、「自然の尊重」という日本人の精神を体現した食に関する社会 的慣習としてユネスコ無形文化遺産に登録(平成25年12月)されたことも踏まえ、食育活動を通じて、郷土料理、 伝統食材、食事の作法等、伝統的な食文化に関する国民の関心と理解を深めるなどにより伝統的な食文化の保護・継 承を推進する。

・地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民の割合

・(特に20歳代、30歳代)地域や家庭で受け継がれてきた料理や味、箸使い等の食べ方・作法を受け継いでいる割合 平成27年度 41.5% ⇒ 平成32年度 50%以上

平成27年度 49.3% ⇒ 平成32年度 60%以上

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これまでの和食文化の継承の取組 ○ 平成25年12月に和食文化がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを踏まえ、 ①和食文化の保護・継承の取組を推進するため、対象の考え方、効果的な保護・継承方策の検討 ②次世代を担う子ども達の和食文化への理解を増進するため、和食給食等の事業の実施 ③「和食の日」を中心として、一般国民に向けたシンポジウムの実施 などに取り組んできたところ。 ○ 平成27年10月には、農林水産省の組織再編により、和食文化の保護・継承業務を行う部局が食料産業局食文

化・市場開拓課和食室に置かれた。 ○ また、「一般社団法人和食文化国民会議」をはじめとした関係団体等と密接に連携して、取組を進めてきた

ところ。

和食文化の特徴、歴史等をまとめた「和食パンフ」を作成

和食文化の保護・継承の範囲について一定の方向性をまとめた「未来へパンフ」を作成

和食文化の現状や保護・継承方策をまとめた「守る つなぐ

ひろげる」パンフを作成

和食給食事業

・6校訪問

和食給食事業

・26校訪問

和食給食事業

・15校訪問+23調理実演会

和食シンポジウム

・全国10箇所

和食シンポジウム

・全国3カ所

和食シンポジウム

・全国3カ所

日本全国こども郷土料理サミット

平成25年度 26年度 27年度 28年度 ・・・ 32年度

一般社団法人和食文化国民会議設立 任意団体「和食文化」の保護・継承国民会議

和食文化のユネスコ無形文化遺産登録

東京オリンピック・パラリンピック開催 14

27年度検討会を踏まえ、更に教育の場や

地域での継承活動の拡大向けた取組実施

より深く広い和食文化継承

27年10月 和食室設置

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「和食」の保護・継承に向けた取組(①情報発信、食育の推進)

・食育活動を通じて地域の伝統的な 食文化の保護・継承に取り組もう とする民間団体等の活動を推進す るため、先進事例等を紹介しつつ、 活動の進め方やヒントをまとめた 手引き。

○ 国民の「和食」への関心を高めるため、「和食」の特徴等をまとめたパンフレットを広く配布。 更に「和食」のユネスコ無形文化遺産登録に至る経緯や、農水省の「和食」関連イベント等に 関する情報をHPで発信。

○ また、食育による食文化の保護・継承を推進しており、民間団体や都道府県等が行う保護・継承活動の支援や、活動を行う民間団体向けの手引きの作成等を進めている。

○「和食」パンフレット 「和食」の特徴、歴史等をまとめたパンフレット

を作成し、全国に広く配布。既に希望者を対象に5万部以上を配布。

○「和食」のユネスコ無形文化遺産登録の経緯から、「和食」に関する農林水産省の様々なイベント等に至るまでホームページで情報発信。

「和食」パンフレット、「和食」を未来へ。

ホームページによる「和食」の情報発信 どうやって取り組むの?

○ フードチェーン食育推進事業 ・生産者、流通事業者、NPO等が連携し

て行う、地域の食文化の継承活動、加工・流通や農林漁業体験機会の提供など、フードチェーンを通じた先駆的な食育活動を支援。

○ 消費・安全対策交付金 ・都道府県等が実施する、食育推進リー

ダーの育成、地域のネットワーク作りなど、地域に根差した食育活動を支援。

食育による地域の食文化の保護・継承活動の推進

○地域の伝統的な食文化の保護・継承の手引き

○「和食」を未来へ。 「和食」の保護・継承に向けた検討会(平成26

年11月~平成27年3月)で、保護・継承措置の対象範囲の考え方等について取りまとめた内容を報告書として作成。

15

○和食文化を守る。つなぐ。ひろめる。 「和食」の保護・継承に向けた検討会(平成27

年9月~平成28年2月)において、食生活に関するアンケート調査結果や効果的な継承のための手法について取りまとめた内容を報告書として作成。

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「和食」の保護・継承に向けた取組(②教育現場での取組)

○ 農林水産大臣が給食で和食を普及する料理人(和食給食応援団)を認定し、この料理人が全国の小中学校関係者と連携して児童・生徒向けの新たな和食献立や地産地消メニューを開発・普及。

和食給食推進事業

○ 次世代を担う子ども達に「和食」を継承するため、和食の料理人が全国の小中学校を訪問し、和食の給食を提案・実演することで和食給食の普及を図る取組を推進。

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グッドデザイン賞金賞受賞

○ 和食給食応援団の取組は、和食の料理人が丁寧に給食をつくり、子どもたちがその魅力を体験的に理解することにつながる点が評価され、2015年度グッドデザイン賞金賞を受賞。

(参考)和食給食応援団年度別活動実績 (農林水産省委託事業分のみ) 平成25年度 訪問校 6校 平成26年度 訪問校 26校 平成27年度 訪問校 15校、調理実演会等 23回

和食給食応援団

○ 幼少期は、食の大切さを学ぶ重要な時期であり、和食は何を重んじ、何を楽しみ、どのように現在の形になったのかを伝える場として、給食の果たす役割は大きくなっている。

○平成25年から青少年に和食文化を普及する事業を開始。和食給食応援団の協力を得て、全国41名の和食料理人が和食給食の推進に取り組み、これまで、49万食(推定)の和食給食を提供。

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「和食」の保護・継承に向けた取組(和食給食の実施事例)

宮城県仙台市高砂小学校

○ 平成27年度の和食給食推進事業は、「自然を尊重する心」を児童生徒に伝え、育むことを目的に実施。 ○ 和食給食を推進するためには、児童の食生活の現状を把握し、様々な工夫を凝らしつつ、児童が慣れるま

でおいしい和食給食を提供し続ける体制を作ることが重要。

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テーマ:児童達の「苦手」骨つき魚を克服

趣旨:和食の代表的な主菜である魚。しかし、子ども達は骨付きの魚を食べることに苦手意識を持っている。海産物が豊富な宮城県でも、「骨つきの魚は苦手」な子が多い。

方法:魚のうち、食べやすい部位は低学年、難しい部位は高学年と使い分け。給食を食べる前に、和食料理人が残さずきれいに食べる方法を児童達に伝授。

東京都足立区鹿浜第一小学校

テーマ:子どもが作れる、家庭に届く和食

趣旨:家庭内での和食離れが言われて久しい。児童が自発的に和食を作るきっかけを学校給食の現場からアプローチする。

方法:家庭にある食材ですぐ作れる美味しい献立を考案。給食でおいしさを伝えると同時に、調理実習を含めた食育授業で作る意欲を高める取組を実施。学校栄養職員とともに、児童に自ら食事を作る力を意識させるプログラムを開発。

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「和食」の保護・継承に向けた取組(③普及・啓発)

○ 子どもたちが、それぞれのふるさとや家庭の郷土料理について調査及び発表を行い、交流を深めることを通じて、日本全国に伝わる「郷土食文化」への関心と理解を深めることを目的として、全国の小学校の子ども達を対象に「日本全国こども郷土料理サミット」を11月23日に実施。

○ 「和食」を次代に保護・継承していくことの大切さを伝える目的で「日本食文化の魅力シンポジウム」を平成27年度は「和食の日」等に全国2カ所(福井、東京)で実施。シンポジウムの様子は、Eテレ「TVシンポジウム」で放送し、全国に発信。

日本全国こども郷土料理サミット

日本食文化の魅力シンポジウム

○ メディア等と連携して、和食文化の魅力を広く一般の方々に知ってもらうため和食シンポジウムを実施。 ○ また、子ども達が地元の郷土料理について調べたことを発表する「日本全国こども郷土料理サミット」和

食文化の普及・啓発を推進。全国の子ども達から「調査・発表部門」、「お絵かき部門」合わせて1,000件の応募があったところ。

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(参考)平成27年度開催実績 6月27日 東京(@帝京平成大学) 「和食は世界の未来食 ~ミラノ万博・ジャパンサローネでの取り組みから」 10月18日 福井(@福井県産業情報センター) 「地域で育まれる和食」 11月23日 東京(@国連大学) 「和食が育む、健康な未来」

(参考)平成27年度審査結果 【調査・発表部門:応募数380】 ○総合グランプリ 「大和の茶がゆ」近畿ブロック選抜者

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「和食」の次世代への継承

○ 和食の料理人、学者等で構成する検討会を立ち上げ、広く国民全体での和食文化の保護・継承向け、食指向に関する国

民1万人調査や和食文化の効果的な継承策の検討・明確化等に取り組んだところ。 ○ 全8回の検討会を経て、現在の日本人の食生活実態や和食文化を「守る」、「つなぐ」、「ひろめる」ための試みをパ

ンフレットにとりまとめ、情報発信を行うこととしている。

○ 食の多様化等が進展する中、「和食」の存在感と活力が失われつつある状況。

○ 次代を担う若者等の意見を踏まえた対応が必要。

○ 「和食」の保護・継承に向けた機運を国全体で醸成するため、和食関係者と消費者を結びつける取組が必要。

・国民の食生活の実態や和食文化の代表的な要素(出汁、一汁三菜、発酵調味料等)がどの程度食生活に取り入れているか等について全国的なアンケート調査により把握。

・継承すべき和食文化を明確化 ・家庭への効果的な和食文化の普及策を明らかにするため、その試行的に実施し、効果を検証。

・検討会でとりまとめた検討結果を国民することで、和食志向の増大を図る。

○ 「和食」のユネスコの無形文化遺産登録を契機に、「和食」の保護・継承に向けた機運を高めるとともに、需要フロンティアの拡大に繋げていく必要。

現状と課題 一般社団法人和食文化国民会議(和食会議)

・和食の料理人、学者、企業、地域の食関連団体等から構成(会長:熊倉功夫 静岡文化芸術大学学長) ・「和食」の保護・継承に向けた国民運動の展開や会員の活動状況のモニタリング等の活動を展開

国産農林水産物等の需要の拡大

和食資源をフル活用した地域活性化

・ 「

和食」

の保護・

継承に向けた国民的な

機運を醸成し、和食志向を維持・増大

・「和食」の文化的価値の確立

平成27年度事業の内容

「和食」の保護・継承に向けた効果的な方策の検討・明確化・発信等を通じ、「和食」の保護・継承に向けた国民の機運を醸成

「和食」の専門知識を有し、発信力の高い料理人、学者等で構成される検討会を立ち上げ。 検討会委員の専門知識と国民への発信力を活かし、以下の事業を実施。

「和食」保護・継承推進検討会 ※全8回開催

「和食」の効果的な方策の検討・明確化・発信 平成27年度事業

連 携

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和食文化の保護・継承に向けた新たな試み 平成27年度に開催された「和食の保護・継承推進検討会」においては、今後の保護・継承活動の推進に

向けた新たな継承策の試行・検証を行った。

○ 継承していきたい和食文化の要素を整理した「和食文化に関するチェックシート」を作成。試行を重ね、改良を施した上で、和食文化への理解を深めるためのツールとして普及していく。

○ 子育て世代による家庭での継承を促すため、「和食ワークショップ」を開催。同じ立場の参加者が意見交換し、自ら気づきを得ることができるこの手法は有効。

○ 食への関心が薄い若年層については、彼らに人気の高いスマホゲームで和食をゲーム化する取り組みを実施。身近なツールを入口とした取組は、関心・知識を高めるために有効。

和食文化に関する チェックシート

② 和食ワークショップ

○「食材」「調理」「献立・配膳」「作 法」の4つの視点から、継承していき たい和食文化の要素をチェックシート 化。

○和食をテーマとした食育活動や講演会 において、日常の食生活の中に、どれ だけの和食文化が含まれているか チェックするためのツールとして活用 する。

③ 若年層に身近なツール

【和食ワークショップのポイント】

①事前アンケートやふだんの食事写真 を送ってもらう。 (参加者の課題・背景を知る) ②和食文化のイメージをグループで 話し合い、発表。 (参加者が和食文化を客観的に把握) ③和食文化の伝統や食材等に関する 講演・実演 (和食文化への新しい気づき) ④明日からできることを発表 (自分で考えたことを発表することが実 行力につながる)

【スマホゲームによる試行】

○若年層に人気の高いスマホゲーム 「ごちぽん」で和食をゲーム化する 取組を実施。

○和食文化への関心・ 知識を高める効果が あった。 (具体的なアクションへ つなげる仕組みが課題)

【海外の事例】

○歌やダンスなど遊びの要素を盛り込 むことで、楽しみながら食文化を継 承する取組が見られる。

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「和食文化」チェックシート

○ 「日本の自然が育んだ多様な食材」「素材の持ち味を活かした調理」「米中心の栄養バランスの整った献立」「自然に感謝し他者を気づかう気持ちを表した作法」など、次の世代へ受け継いでいきたい和食文化の要素を具体的な項目化して整理した「和食文化」チェックシートを作成。

○ 和食をテーマとした食育活動や講演会において、日常の食生活の中に和食文化が含まれているかチェックし気づきを得るためのツールとして試行的に活用し、利用者に応じた改良を施した上で普及していく。

「和食文化に関するチェックシート」 今後の普及に向けて

ステップ① 和食をテーマとした食育活動等を行っている団体・企業等において、試行的に、チェックシートを活用した取組を行ってもらう。

ステップ② 各団体等における活用事例を収集し、優良事例や効果的な活用方法を整理するとともに、利用しやすい内容・使用となるようチェックシートを改訂。

ステップ③ チェックシートと活用事例をセットで発信して、和食文化の継承活動での活用をはじめ、学校教育の場や企業活動における利用を推進していく。

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「和食」の次世代への継承・地域における食育の推進

和食資源等をフル活用した地方創生と国産農林水産物の需要拡大

「和食」情報発信事業 (委託事業)

メディア等と連携して和食の魅力等を効果的に発信して、和食の保護・継承に向けた国民運動の機運の醸成を図る。

平成28年度事業

郷土料理や伝統野菜等の魅力の再発見や日本型食生活の実践を促すため、 生産者や地域の食品企業等を巻き込み、地域一体となった食育活動を支援する。

地域食文化魅力再発見食育推進事業(補助事業)

食生活、食習慣を変える手法の共有 地域の郷土料理、伝統野菜等の情報を効果的に配信 など

・展示会や交流会、食育推進リーダーの育成、農林漁業体験活動 など

連携

第3次食育推進基本計画を踏まえ、ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」を次世代に継承していくための取組及び地域の食文化の魅力の再発見や日本型食生活の実践を地域の消費者に促す取組等を支援

○ 食が多様化する中で、家庭の食生活を一過性ではなく、継続的に和食化し、「和食」を継承していくには、これまで以上に食生活を形成・転換するキッカケのある「時期」にある人々をターゲットにする必要。

○ 第3次食育推進基本計画に掲げられる食文化の継承等の重点課題の解決に向けた取組を強化する必要。

○ また、地域ごとに特色のある食文化の継承等に向け、地域の関係者が一体となった食育活動を支援する必要。

現状と課題

次世代継承型の食育活動として幼少期の子ども、育児ママ等、食習慣を変えることに抵抗感が少ないライフステージにある者に対し、「和食」に慣れ親しみ、食生活の和食化を促す集中的な「和食」の普及活動を実施。

「和食」継承事業(委託事業)

幼少期 青年期 壮年期 老年期

【食生活形成期】 ・幼児が味覚の形成期に「和食」に慣れ親しむことで和食好きとなる。 ・学校給食で和食を提供することで和食を食べる 食習慣が形成される。

【育児期】 子どもの健康への影響を考え、食習慣への関心が生まれる。

平成28年度新規事業 「和食」と地域食文化継承推進事業

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<主なメンバー>生産者、食品メーカー、流通・小売業者、調理師学校、情報通信業者等

<事業内容>「和食」に関する効果的な情報発信、食育活動、「和食」の体験活動の推進 等

正会員、賛助会員、賛同会員(メールマガジン会員) ※企業会員/団体会員/個人会員の区別あり ※正会員、賛助会員は年会費が必要(詳細は和食会議のHP参照)

組織体制及び事業(概要)

一般社団法人和食文化国民会議について ○ 平成27年2月、「和食」文化の保護・継承国民会議の正副会長及び中心的な会員が発起人となって、一

般社団法人和食文化国民会議(会長:熊倉 功夫)が設立。 ○ 平成27年4月から、法人として本格的に活動を開始し、3部会、1会議をもって「和食」の保護・継承の

取組を実施。

<ビジョン>

ユネスコ無形文化遺産に登録された 「和食」の保護・継承活動を推進する運動の中心的な役割を果たす団体となる。

<ミッション>

日本人の伝統的な食文化である「和食」を人類共通の財産として国民との協同により活性化し、将来の世代に継承していく。

和食文化国民会議の活動方針 一般社団法人和食文化国民会議

「和食」調査・研究部会

「和食」普及・啓発部会

「和食」技・知恵部会

全国「和食」連絡会議 会員区分

<主なメンバー>和食に関する研究者、有識者 <事業内容>「和食」に関する調査・研究、「和食」を次世代へ伝

えるテキストの作成、講習会の開催 等

<主なメンバー>料理人、調理機材メーカー等 <事業内容>児童層への和食、味覚体験の拡大推進、地域食材・伝

統野菜の魅力再発見 等

<メンバー>全国の和食関係者(非会員を含む) <活動内容>全国の「和食」に関する情報交換、活動の集約・発信、参

加者同士の連携の促進 等 23

平成23年7月 農林水産省内に「日本食文化の世界無形遺産登録に向けた検討会」を設置し、申請内容等について検討を開始。

平成24年3月

平成25年7月 平成25年12月

上記検討会の委員が発起人となり、無形文化遺産登録の実現と和食文化の次世代への継承を目的とした「日本食文化のユネスコ無形文化遺産化推進協議会」を設立。同協議会を保護措置に責任を持つ組織と位置付けてユネスコに登録申請。 上記協議会を『「和食」文化の保護・継承国民会議』(略称:和食会議)へ改称、事務局を農林水産省から民間に移管。 「和食」のユネスコ無形文化遺産登録が決定。

組織の設立経緯

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和食会議の最近の主な活動事例

平成28年2月20日 調査・研究部会 講演会

・ 会員だけでなく、和食文化に興味がある一般の方にも解

放して、以下の2つのテーマについて講演会を開催。和食文化に関する最新の情報を提供。

(於:東京家政学院大学、参加者数:約150名) 【講師・演題】 ①渡邊智子(千葉県立保健医療大学教授) 「和食と食品成分表」 日本食品標準成分表の策定目的、収載食品数の変遷等を解説しながら、

2015年版(七訂)の解説。和食文化の4つの特徴が、食品成分表からも見て取れることを説明。

②後藤加寿子(料理研究家) 「家庭の食育」

家庭料理としての和食に関する知見や現代において和食が変化してきた背景と共に、子ども達の食の経験を育む為に実践してきた内容を説明。現代に合った和食を気軽に楽しんで欲しい、食べることは「おいしい」、「楽しい」とわかってもらうことが重要であることを伝えた。

平成28年2月15日

普及・啓発部会 講演会 ・ 和食会議の発足1周年記念として、伏木部会長によるだし

の解説、実演・試飲及び熊倉会長の講演会を開催。(於:楠公レストハウス、参加者数:約120名)

【講師・演題】 ①伏木 亨(和食会議会長代行、普及・啓発部会長) 「だしのお話(前編・後編)」

本格的な「だし」を普及させるため、素人でもおいしいだしが引ける伏木メ

ソッドを実演。また、水の硬度により、どのように「だし」に違いがでるか、 3種類の硬度の異なる水を使っただし参加者に配布し、塩分の役割やだしの香りの組成、うま味成分の分析結果について解説を交えながら試飲。

②熊倉 功夫(和食会議会長) 「和食とは何か」

和食とは何か、という問いに対して、和食とは料理一つ一つの分類ではなく、文化であるということ、和食の根底には自然の尊重があるということを説明。箸と椀にみられるような日本人の持つ感性、現代における米食の現状などを解説。

・懇親会では、料理監修を行った江原調査・研究部会長からお料理(江戸エコ行楽重)の説明があり、 味わいながら会員間の交流を深めた。

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○ 11月24日(和食の日)に、(一社)和食文化国民会議が全国約2,000校の小・中学校等で、子ども達 が和食の基本であり、日本が世界に誇る第五の味覚である「うまみ」を本物のだしを体験することで、和食 文化を伝える取組『「だし」で味わう和食の日』を実施。 ○ モデル校に選定した泰明小学校(東京・中央区銀座)では、農林水産省事業の「和食給食推進事業」 (和食給食応援団)との連携事業を実施。

泰明小学校での取組(東京都中央区) 「だし」で味わう和食の日

【実施主体】 ・(一社)和食文化国民会議 技・知恵部会

【取組内容】 ・小学校等の協力を得て、和食給食にするとともに、 汁物は「だし」が感じられるすまし汁等にする。 ・担任の先生からテキストで和食の基本である 「だし」について児童に説明することで、 和食文化の魅力を伝える。 ・「だし」を使った和食レシピを家庭に持って帰って もらい、家庭でも和食文化について話すきっかけに。

【平成27年度実施実績】 ・1,957校

【今後の実施目標数】

0

5000

10000

15000

20000

27年度 28年度 29年度 30年度 31年度

(校数)

初年度:2000校

全ての小学校で実施

【取組内容】 ・農林水産省事業「和食給食推進事業」(※)と連携実施。

・和食文化国民会議 熊倉会長が和食について説明。

・森山農林水産大臣が児童とともに和食給食を味わいながら、和食文化の大切さを伝えた。

※和食料理人が和食給食献立を開発し、調理指導を実施。食育事業も行い、和食の知恵や献立開発の秘話、和食の大切を伝える事業。

【児童の感想】 ・給食や授業で、だしのおいしさがよく分かった ・和食を今後も受け継いでいこうと改めて思った ・家に帰って使っている昆布を調べた ・大臣と握手できてうれしかった

「和食の日」に子ども達に和食文化を伝える取組

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日本郵便等と連携した取組

○ 平成27年11月24日(「和食」の日)に、農林水産省和食室や和食会議の協力のもと、日本郵便(株)がユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」を題材とした、特殊切手を発行。

○ 平成27年11月24日~28日、和食と酒のイベント「黄葉見SAKE2015」(主催・黄葉見SAKE2015 運営委員会)が開催された。本イベントは、農林水産省が後援するとともに、和食会議が和食文化に関する特別プログラムを実施。

「和食切手」の発行 黄葉見SAKE2015

【名称】 和の食文化シリーズ 第1集

【種類】 82円郵便切手

【意匠】 (1)栗ごはん (2)みそ汁 (3)天ぷら (4)白米と奈良漬け (5)みそ汁とひじきの煮物 (6)茶碗蒸し (7)あじの干物 (8)五目ごはんとぬか漬け (9)けんちん汁 (10)かぼちゃの煮物と冷ややっこ

【発行枚数】 1,200万枚(120万シート)

【取組内容】 ・厳選素材で手作りした吸い物の無料の試飲提供

11月24日を中心に全国の多くの小学校等で和食給食が提供され子ども達がだしの味わいを実感したことにあわせ、一般の方にも和食の基本であるだしを試飲できるイベントを実施。

・和食切手の販売(日本郵便)

・「テーブル・フォー・トゥー」(※)コラボ企画 おにぎりを食べて、途上国の子どもに給食を贈る「おにぎり一斉いただきます」とコラボレーションし、和食の普及と途上国支援が一体となった取組を実施しました。

・「和食の日」記念トークセッション 和食文化の匠の世界に精通する 熊倉功夫氏(和食会議会長)、岡副真吾氏(金田中)、田村隆氏(つきぢ田村)による和食をとりまく文化等について、トークセッションを実施。

※健康的なメニューに20円の寄付金を上乗せした金額で提供することで、途上国に給食を寄付する国際支援を行っている団体。

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地域における和食文化の保護・継承活動の事例

福井県小浜市

若狭カレイ

~市民主導の「食のまちづくり」の推進~ ○飛鳥・奈良の時代より、豊富な海産物や塩などの食材を朝廷に貢進した「御食国」の歴史を背景に、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層を対象にした食育プログラムを市民主導で展開し、「食のまちづくり」を行う。平成13年には、全国にさきがけ「食のまちづくり条例」を制定。 ○「御食国若狭おばま食文化館」を活動拠点として、食料の地域自給、健康への貢献、食を作る体験学習を通じた児童教育など、各種展示、体験教室等を実施。 また、「食の達人・食の語り部」認定制度を創設することで、各地域の食文化の継承を推進。 ○食文化の象徴である塗り箸の一大産地で、若狭塗り箸は国産塗り箸の生産シェア9割を占める。全国をリードして、箸文化を大切に後世に継承していく活動を推進。

岩手県一関市 ~「もち食文化」の伝承~

○官民一体となった「一関もち食推進会議」を組織し、伝承を推進。

○若い世代への定着を目的に、日本唯一の「もち本膳」を再現。もち本膳研修会、ご当地もちサミット、学校給食等を通じて、「もち食文化」の伝承を進める。

栃木県

○干ぴょうは、国内生産シェアの95%以上を占める栃木県を代表する特産物。 ○地元企業組合では、干ぴょうや地場産農作物を使用し地元の良さをお弁当で発信したり、高校生との共同開発、女性企業の応援、伝承料理講習会、農業体験の受入などを実施。

もち本膳研修会

~300年の歴史がある干ぴょうの食文化の継承~

伝承料理講習会

27 鯖のなれずし 若狭塗り箸

○一関地方は、藩政時代から地域に「もち食文化」が根付くが、その調理法や盛りつけ等は地域によって異なる。

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和食文化を次世代につなげるホップ・ステップ・ジャンプ

[2013]

「和食」ユネスコ無形文化遺産登録決定

[2015]ミラノ万博開催

テーマ「地球に食料を、生命にエネルギーを」

[2020]

オリンピック・パラリンピック

東京大会

和食文化を未来に向けて守り伝えていくため、国民的に和食文化を伝える取組を実施

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和食文化を伝えていくキーマンの活動を活発化させるためのツールの開発

和食文化を継承し、更にそれを伝えることができる日本人を増やしオリ・パラで訪日外国人を和食文化でおもてなし

ホップ

ジャンプ

[2016]ユネスコ定期報告

○海外における好きな外国料理ランキング ・日本料理が第1位 (第2位はイタリア料理、第3位は中国料理)※2014年3月「日本食品に対する海外消費者アンケート調査」(JETRO)(海外6都市) ○ 海外における日本食レストラン数 ・約8万9千店(平成27年7月時点) 前回調査(平成25年1月時点から約1.6倍 (農林水産省調べ) ステップ