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平成 30 年度 教育課程研究指定校事業 研究協議会 追加資料 「自己存在感を実感し,主体的に学習に取り組む生徒の育成」 ~自立的・協働的に学び,数学的に思考・判断・表現する力が伸びる授業づくり~ 大分県日田市立東部中学校 発 表 日:平成31年2月8日(金) 都道府県名:大分県 校 名:日田市立東部中学校 種:中学校 教科・科目等:数学

「自己存在感を実感し,主体的に学習に取り組む生徒の育成」tyu.oita-ed.jp/hita/toubu/%EF%BC%A8%EF%BC%B0%E7%94... · 8月 平成30年度の全国学力・学習状況調査の結果分析

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平成 30年度

教育課程研究指定校事業

研究協議会 追加資料

「自己存在感を実感し,主体的に学習に取り組む生徒の育成」

~自立的・協働的に学び,数学的に思考・判断・表現する力が伸びる授業づくり~

大分県日田市立東部中学校

発 表 日:平成31年2月8日(金)

都道府県名:大分県

学 校 名:日田市立東部中学校

校 種:中学校

教科・科目等:数学

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≪ 目 次 ≫

【研究の概要】

1.本研究の目的,内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

2.研究主題,主題設定の理由・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

3.研究体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

4.2年間の主な取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

5.研究内容

(1)全国学力・学習状況調査等の調査問題を検証問題とし,

活用力を高める「単元の指導計画」の作成及び充実・・・・・・・・・・・・・・・・・4

(2)「新大分スタンダード」に基づく授業改善の工夫・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

(3)「説明する力を伸ばす基本形」の利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

(4)1時間の授業の「振り返り」,単元の「振り返り」の在り方・・・・・・・・・・・・・11

(5)校内で統一したペア・グループ学習の際の「話合いの仕方」のモデルの設定・・・・・ 13

6.研究の成果と課題

(1)全国学力・学習状況調査の平均正答率の向上と無解答率の減少・・・・・・・・・・・14

(2)平成30年度 全国学力・学習状況調査において成果の上がった問題・・・・・・・・15

(3)アンケートによる肯定的評価の向上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

(4)検証問題における平均正答率の向上と無解答率の減少,理解が不十分な設問の把握・・19

(5)研究成果のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

(6)課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

【授業実践】

1.研究 1 年目の取組

①2年生 3 章「1次関数」 〔理由の説明〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24

②1年生 5 章「平面図形」 〔事柄・事実の説明〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

2.研究 2 年目の取組

③2年生 1 章「式の計算」 〔事柄・事実の説明〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・34

④1年生 2 章「文字と式」 〔理由の説明〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39

⑤1年生 4章「比例と反比例」〔方法・手順の説明〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44

⑥2年生 4章「平行と合同」 〔理由の説明〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49

【単元の指導計画】別ページに掲載

1.1年生

1 章「正負の数」 2章「文字と式」 3 章「方程式」 4 章「比例と反比例」

5 章「平面図形」 6章「空間図形」 7 章「資料の分析と活用」

2.2年生

1 章「式の計算」 2章「連立方程式」 3章「1 次関数」 4章「平行と合同」

5 章「三角形と四角形」 6章「確率」

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【研究の概要】

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1.本研究の目的,内容

国立教育政策研究所 教育課程センターより以下のことが示された。

※平成 29年度 教育課程研究指定校事業連絡協議会(中学校数学) の資料より抜粋

本研究では,各教科等において,生徒の確実な理解,定着が望まれる内容に係る教育課程の編

成,指導方法及び評価方法等の工夫改善に関する実践研究を行い,その成果を全国に普及し,各学

校での指導改善の参考に資する。さらに必要に応じて,ペーパーテストだけでは把握が困難な学習

状況等を把握するために,これらに関して各教科等で示された課題についても調査研究に取り組

み,今後の教育課程や指導方法等の改善に資する。

◎研究課題

学習指導要領の趣旨を実現するための学習・指導方法及び評価方法の工夫改善に関する実践研究

◎中学校数学

全国学力・学習状況調査の記述式問題等の分析に基づき,知識,技能などを実生活の様々な場面

で活用する力や様々な課題解決のための構想を立てて実践し,評価・改善する力を育成するための

指導方法等の研究

これを踏まえ本校数学科では,次のような研究主題を設定し,研究を進めていった。

2.研究主題,主題設定の理由

(1)研究主題

「自己存在感を実感し,主体的に学習に取り組む生徒の育成」 ~自立的・協働的に学び,数学的に思考・判断・表現する力が伸びる授業づくり~

(2)主題設定の理由

本校では,ここ数年来,自己存在感の実感を通した「心の居場所づくり」や教師や生徒どうしの心

の結び付き,信頼感の中で行われる主体的な学びを通した「絆づくり」に取り組んできた。

その結果,自己肯定感の上昇と,授業等への主体的な取組ができている割合が上昇したことによ

り,全国学力・学習状況調査での正答率は年々上昇傾向にあると捉えることができる。しかしなが

ら,上昇傾向にあるとはいえ,平成 28年度の調査においても本校の正答率はA問題,B問題ともに

全国平均正答率を下回る結果となった。その要因として,自分の考えを数学的に説明することに苦手

意識を持つ生徒が多いことが考えられる。

そこで,基礎・基本の定着を図りつつ,「自己表現力の向上」「活用力の向上」に向けて,更に主体

的に学ぶ生徒の育成に取り組んでいくことが必要であると捉えた。

これらの課題を踏まえ,本校では,主体的・対話的で深い学びを実現するために,課題のもち方やペ

ア学習・グループ学習の場面設定を工夫することによって,生徒の主体的な態度を養い,思考力・判断

力・表現力を高めることができると考え,本研究主題を設定した。

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3.研究体制

研究体制としては,本研究指定に関わる研究は,数学科教員で構成する「数学科授業改善」研究部

が進める。

本校がここ数年取り組んでいる短学活の研究・提案,ペア・グループ学習の「話合いの仕方」のモ

デル研究・設定・提案等については,その他の教員が所属する「協働的な学び」研究部が進める。

研究の進め方,内容等について,適宜国立教育政策研究所教育課程調査官や大分県教育委員会,日

田教育事務所,日田市教育委員会の指導主事より指導・助言を受ける。

校長

国立教育政策研究所教育課程調査官

教頭

指導・助言

研究主任 大分県教育委員会義務教育課指導主事

大分県教育委員会日田教育事務所指導主事

「数学科授業改善」 「協働的な学び」 日田市教育委員会指導主事

学年部・担任

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4.2年間の主な取り組み

29

4月 研究の方向性,研究主題・研究計画の検討

単元の指導計画の作成開始

6月 校内授業研究会

(2年生「式の計算」 指導助言者:日田市教育庁学校教育課 日隈 芳郎 指導主事)

8月 平成 29年度の全国学力・学習状況調査の結果分析

10月 先進校研修視察(福岡市立東光中学校)

先進校研修視察(岐阜市立長良中学校)

11月 中間報告・公開授業

(1年生「平面図形」 指導助言者:大分県教育庁義務教育課 松村 義広 指導主事

講演:国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部 佐藤 寿仁 学力調査官)

学力向上支援教員公開授業(2年生「1次関数」)

1月 学力向上支援教員公開授業(2年生「平行と合同」)

2月 国立教育政策研究所 教育課程研究指定校事業 研究協議会

3月 1年次の取組の検証,まとめ・2年次に向けての取組内容の確認

30

4月 2年次の研究の方向性の確認

平成 30年度の全国学力・学習状況調査における独自無解答率調査

6月 校内授業研究会

(1年生「正負の数」 指導助言者:大分県教育庁日田教育事務所

西村 博之 指導主事)

自主公開提案授業

(2年生「式の計算」 指導助言者:国立教育政策研究所教育課程研究センター

研究開発部 佐藤 寿仁 学力調査官)

先進校研修視察(土佐市立高岡中学校)

8月 平成 30年度の全国学力・学習状況調査の結果分析

9月 学力向上支援教員公開授業(1年生「文字と式」)

11月 研究発表・公開授業

(1年生「比例と反比例」 指導助言者:大分県教育庁義務教育課

学力向上支援班 松村 義広 指導主事兼主幹

2年生「平行と合同」 指導助言者:大分県教育庁日田教育事務所

西村 博之 指導主事

講演:国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部 佐藤 寿仁 学力調査官)

先進校研修視察(福岡市立東光中学校)

12月 学力向上支援教員公開授業(1年生「比例・反比例」)

2月 国立教育政策研究所 教育課程研究指定校事業 研究協議会

3月 2年次の取組の検証,まとめ・次年度以降の取組内容の確認

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5.研究内容

(1)全国学力・学習状況調査等の調査問題を検証問題とし,活用力を高める「単元の指導計画」の

作成及び充実

その単元でどのような力を付けたいのかを明確にするために,本校独自の単元の指導計画を作成し

ている。「新大分スタンダード」で目指す,主体的な学びを促すための 1時間完結型の授業を実践す

るために,「めあて」「課題」「まとめ」「振り返り」を記載した 1時間ごとの計画を,1ペーパーにま

とめている。数学的な見方や考え方の観点が主となる授業では,「数学的なプロセス」を明記した。

また,この単元の学習内容が他教科のどの場面で使われているかを「教科横断的な内容」として載せ

ている。

単元終了後には,付けたい力が付いたのかどうかを評価するための「検証問題」に取り組ませる。

過年度の全国学力・学習状況調査等を検証問題として実施し,本校平均正答率と全国平均正答率を比

較し生徒の理解度を測るとともに,その単元の授業の検証にもつなげていく。

例:2 年生 第 3 章「1 次関数」の単元の指導計画

【大分県教育委員会HPより】

拡大図①

拡大図③

拡大図②

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1時間ごとの「めあて」「課題」

「まとめ」「振り返り」を設定する。

数学的な見方や考え方が主な観点の

授業では,「数学的なプロセス」も明

記する。

拡大図② 拡大図①

拡大図③

「数学的なプロセス」

全国学力・学習状況調査の「活

用」の問題作成の枠組みは,当該の

数学的な知識・技能などについて,

「活用の文脈や状況」,「活用される

数学科内容(領域)」,「数学的なプ

ロセス」の3つの視点から右の表の

ように整理されている。この表の

「数学的なプロセス」であるα1~

3,β1・2,γ1~3の内容のどれに

あたるかを確認しながら,単元の指

導計画を作成した。

【平成30年度 国立教育政策研究所

教育課程研究センター発行

全国学力・学習状況調査 解説資料

より】

3.1次関数と図形①:少人数

技能,見方・考え方(プロセスα3)

[めあて]図形の面積の変化を式で表せ

るようになろう。

[課題]動く点の位置によって三角形の

面積はどのように変化するのだろう。

[まとめ]三角形の面積は0→だんだん

大きくなる→一定→だんだん小さくな

る→0と変化する。

[振り返り]点が動くことによって,面積

に様々な変化が起こることを振り返る。

検証問題 平成 28 年度全国学力・学習状況調査 B3(プロセスα1.2.3,β1)

単元終了後には,付けたい力

が付いたのかどうかを評価す

るための「検証問題」に取り

組ませる。

教科横断的な内容 1節 3.1次関数のグラフ

→理科 フックの法則

オームの法則

定比例の法則

この単元の学習内容が他教科のどの

場面で使われているかを記載。

教科のつながりを確認する。

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(2)「新大分スタンダード」に基づく授業改善の工夫

①「新大分スタンダード」について

本校の研究を進めていくにあたり,ベースとなっているのが大分県全体で取り組んでいる「新大分

スタンダード」である。数学だけに限らず,他教科もこれを基本として授業を展開している。

【大分県教育委員会HPより】

【大分県教育委員会

HPより】

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10月

A層:学び合いの時間を設け、理解が不十分な生徒に教えるよう指示し、理解を深めさせる。

評価規準 問題に合った方程式を作って解き、答えを導くことができる。

レスキュー

条件を満たす方程式を作り、それを解いて試合時間を求めよう。

授業者氏名

ドッヂボールの試合時間を、交代時間を自分で決めそれに合わせた方程式を作って解くことにより、求めることができる。

ねらい

まとめ

    7時間扱い中  5時間目

めあて

単元

題材

時数

方程式の利用

3章 方程式

教科 数学 学年 1年

15日 月曜日

佐藤武吉

備考

振り返り

課題

本時の授業を通して、わかったことや考えが深まったことをノートに記述させる。

どの数量に着目して方程式を作ればよいだろうか。

C層:ヒントカードを配布する。

試合時間をxとし、6試合の合計と入替時間の合計を合わせた時間が80分になる方程式を作る。

板書計画

めあて

条件を満たす方程式を作り、それを解いて試合時間

を求めよう。

問題

東部中学校の1年生7クラスでクラスマッチを行う。

数種類の競技を行うが、実行委員の加奈さんはその中でドッヂボールを次のような条件で実施しよう

と計画している。

このとき、試合時間を何分に設定すればよいだろう

か。

【条件】

・試合はトーナメントで行い、全部で6試合となる。

・ドッヂボールに使える時間は80分以内。(競技時間は余ってもよいが、オーバーしてはいけない)

・試合時間はすべて同じ長さとする。

・試合と試合の間には、チームの入替時間が必要

である。入替時間の長さもすべて同じ長さとする。

・試合時間と入替時間はともに△分間とし、秒まで

は設定しない。

課題

どの数量に着目して方程式を作ればよいだろう

か。

方針 ・入替時間を設定

・試合時間をx分とする

・時間に着目して方程式を作る整理 ・試合時間の + 入替時間の = 80分

合計 合計

計算 (例) 6x + 5×3 = 80

6x = 80-15

6x = 65

x = 10.8・・・

答え 10分

まとめ

試合時間をxとし、6試合の合計と入替時間の

合計を合わせた時間が80分になる方程式を作る。

適用問題

決勝戦のみ他の試合よりも6分長くしたい。

入替時間を4分と設定すると、決勝戦とその他の試合時間は何分に設定すればよいだろうか。

解 その他の試合時間をx分とすると

5x+(x+6)+5×4=80

5x+x+6+20=80

6x=80-26

6x=54

x=9

その他の試合 9分

決勝戦 15分

振り返り

(本時の授業を通して、わかったことや考え

が深まったことをノートに記述させる。)

情報を整理しよう

○求めたい物は何→試合時間を何分に設定するか

○試合数は何試合→6試合○入替は何回→5回

②「授業レシピ」「学習指導案の本時案」

1時間の授業を考える際に,本校独自の指導案の略案である「授業レシピ」を作成した。この「授

業レシピ」には,「評価規準」と「ねらい」,「板書計画」「努力を要する状況の生徒への支援」等を記

載し,付けたい力を明確にした授業実践につなげている。

「授業レシピ」については各教師が作ったものをデータとして保管し,次年度以降も活用できるよ

うにしている。

例:1年生 第 3章「方程式」の授業レシピ

この時間に付けたい力

が付いたのかどうかを

見取る「評価規準」,

どんな授業を行うのか

一目でわかる「ねら

い」も明記する。

習熟の程度に応じた指

導として,A 層と C 層

の生徒にそれぞれどん

な対応をするのか明記

する。

板書計画をつけること

で,「めあて」「課題」

「まとめ」「振り返

り」をどう提示するか

はっきりわかる。本時

の問題や,予想される

生徒の反応も示すこと

ができ,思考の過程を

振り返ることにつなが

る。

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学習指導案を作成する際にも,「めあて」「課題」「まとめ」「振り返り」を位置付けた本時案を作成

している。

例:1年生 第 5章「平面図形」の学習指導案の本時案の展開

学習活動 時 指導上の留意点 評価・備考

1.めあてを提示し,

本時に取り組む

問題を確認す

る。

2.本時の課題を示

し,条件に合っ

た作図を行うた

めの見通しをも

つ。

3.条件に合った作

図を行い,Q地点

を見つける。

4.作図の仕方を発

表する。

5.本時のまとめを

する。

6.本時の振り返り

をする。

5

15

15

10

2

3

○めあてと本時の問題を確認させる。

めあて 条件に合った基本の作図を組み合わせて,宝物の在処を

見つけ出そう。

問 東輝島には宝物が隠されているという伝説がある。その宝物の場

所を示した地図と2つの暗号が見つかった。この地図と2つの暗

号をもとに,宝物が隠された場所「Q地点」を見つけ出そう。

○どんな作図をすればよいか,見通しをもたせる。

課題 【暗号 1】,【暗号 2】の条件を満たすには,どんな作図をすれば

よいだろうか。

○個人で考えさせた後,ペアで作図の見通しを交流させる。

・【暗号 1】…線分 ABの垂直二等分線を作図する。

・【暗号 2】…角度を作る作図を組み合わせる。

・75°を作る作図には多様な考え方があるので,個人の考え方を大

切にした上で意見交流する。 ・60°+15°=75°

・45°+30°=75°・(60°+60°+30°)÷2=75°

○どんな作図をするか見通しを発表させ,全体で確認させる。

○個人で【暗号 1】【暗号 2】それぞれの作図を行う。その後,班で作図

の方法を交流させる。

○「Q地点」は【暗号 1】【暗号 2】の作図によってかかれた直線の交点

になることを確認する。

○作図の方法と,その理由を説明させる。

・多様な考え方があることを理解させる。

・作図に関わる数学用語を適切に使用し,説明できるよう指導する。

○本時のまとめを確認させる。

まとめ 例 ・【暗号 1】…線分 ABの垂直二等分線を作図する。

・【暗号 2】…角度を作る作図を組み合わせ,75°を作る。

・60°+15°=75° ・45°+30°=75°

・(60°+60°+30°)÷2=75° ・90°-15°=75°

○角度を作る作図にどのようなやり方があったのか振り返らせる。

個→ペア

「努力を要する

状況の生徒」に

は,ヒントカード

を与える。

「十分満足でき

る状況」の生徒に

は,他の考え方を

考えさせる。

個→班

【数学的な見方・

考え方】角度を作

る作図を組み合

わせて 75°を作

ることができる。

(ワークシート,

机間指導)

【暗号1】 A の灯台と B の灯台から

等しい距離にある。

【暗号2】 石像から A の灯台,石像から Q 地点に出

る2つの半直線でできる角は 75°であ

る。

習熟の程度に応じた指導

として,A 層と C 層の生

徒にそれぞれどんな対応

をするのか明記する。

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(3)「説明する力を伸ばす基本形」の利用

日々の授業に「説明する力を伸ばす基本形」

を用いて問題解決する場面を設定し,生徒の数

学的な表現の高まりについて検証し,「説明す

る力を伸ばす基本形」の効果的な用い方につい

て研究を行った。

問題を解決する際に,まず既習事項の何が使え

るのか,どんな公式をもとに考えるか等の見通し

をもった上で,図,式,表,グラフを用い,筋道

を立てて考え,数学用語を適切に使い自分の考え

を表現する。この一連の流れが定着するように,

普段行う計算問題についても「説明する力を伸ば

す基本形」を利用し解いていく場面を設定する。

例:1年生 第 1章「正負の数」での使用例

【大分県教育委員会HPより】

分数の除法を行う際

に,既習事項の中で必

要なものを確認させ

た。

この段階では除法や乗

法という言葉を使うこ

とができていないとい

うことも把握できる。

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例:2年生 第 1章「式の計算」での使用例

例:3 年生 第 1章「多項式」での使用例

2 年生の「式による説

明」では,まず□×11

の形にすることで 11

の倍数であることを説

明することができると

いうことを方針として

確認し,記述させた。

同様の問題でも,この

見通しのもと説明を進

めさせたので定着が図

れた。

因数分解を計算する手順を確

認した上で解いたため,

4x2-16y2

=(2x+4y)(2x-4y)

という間違いを減らすことが

できた。

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(4)1時間の授業の「振り返り」,単元の「振り返り」の在り方

①1時間の授業の「振り返り」

1時間の授業の中で,何を理解しているか,何ができるかを明確にさせたり,学びの成果を実感させ,

学んだことや意欲・問題意識等を次につなげられるようにしたりするために,どのような振り返りをさ

せればよいかの研究を行った。

単元の指導計画を作成する際に,その時間で付けたい力を身に付けさせるための活動のゴールの姿

やゴールまでの道筋を「めあて」として設定した。この「めあて」に対する「振り返り」として,新た

にわかったことやこの時間の学びをどう次につなげるのか等を設定し,ノートやワークシートに記入

させた。記入させることでその日の学習内容の定着を図ることができ,また,定期考査前に数時間分の

学習を振り返りたいときにも役立つものとなっている。

生徒の記入例

この時間を通して,自分が実感

したことを言葉で残すことがで

きた。

できたことと,「もっとこうすればよ

かった」という反省点も記述できて

おり,次につなげることができる。

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1年生 4章「比例と反比例」では,日常生活の中でどこに比例や反比例の関係が使われているか

を振り返らせ,出てきた意見を交流させた。

②単元の「振り返り」

単元が終わった後に,その単元で身につけた力を確認するための振り返りの方法を研究した。

その単元で学んだ内容が日常生活の中ではどのような場面で使われているのかを調べたり,発展的

な学習内容をレポート形式で考えさせたりした。

2 年生1章「式の計算」では,授業を通してカレンダーの中に見出すことができる規則性につい

て,文字を使って説明するという授業を行ったのだが,レポートでは囲み方を自分で考えさせそ

の和にどのような性質があるのかを予想し,文字を使って説明させた。

出てきた意見はクラスで交流させた。

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(5)校内で統一したペア・グループ学習の際の「話合いの仕方」のモデルの設定

ペア・グループ学習については数学だけに限らず,他の教科や道徳,特別活動,短学活でも行ってい

るのだが,「話合いの仕方」はそれぞれの教師がそれぞれに行っている状況があった。つまり生徒の立

場で言うと,教師の指導に合わせざるを得ない環境であった。この点を改善し,どの場面でのペア・グ

ループ学習であっても校内の統一した「話合いの仕方」があれば,生徒も混乱せず話合い活動に取り組

むことができ,協働的な学びが行えるのではないかということで,モデルを設定した。

数学科では,次のような工夫をして活用している。

数学班の活用

・学力面でのリーダー(数学リーダー)が 1人入るように 4人班(3人班)を編成。

・数学の授業の際は,すぐに数学班が作れるように座席も移動しておく。

・グループ学習の際には,数学リーダーが司会となり,話合いを進める。

・話合いの進め方は,「話合いの仕方」のルールに則る。

「話合いの仕方」のルールの効果

・話合いの手順がマニュアル化されていることで,スムーズな進行ができる。

・ペア,グループ学習の回数の増加。

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6.研究の成果と課題

(1)全国学力・学習状況調査の平均正答率の向上と,無解答率の減少

①数学Aの平均正答率の推移

平成 27年度 平成 28年度 平成 29年度 平成 30年度

本校 62.8 60.0 59.8 66.9

全国 64.4 62.2 64.6 66.1

全国平均正答率との差 -1.6 -2.2 -4.8 +0.8

※平成 29,30年度の本校平均正答率は独自に算出

②数学Bの平均正答率の推移

平成 27年度 平成 28年度 平成 29年度 平成 30年度

本校 38.0 41.5 41.8 45.4

全国 41.6 44.1 48.1 46.9

全国平均正答率との差 -3.6 -2.6 -6.3 -1.5

※平成 29,30年度の本校平均正答率は独自に算出

③数学Aの無解答率の推移

平成 27年度 平成 28年度 平成 29年度 平成 30年度

本校 3.3 5.0 7.3 2.6

全国 3.7 6.3 6.3 3.3

全国無解答率との差 -0.4 -1.3 +1.0 -0.7

※無解答率は独自に算出

④数学Bの記述式問題における無解答率の推移

平成 27年度 平成 28年度 平成 29年度 平成 30年度

本校 24.4 17.2 33.0 15.7

全国 23.2 19.5 25.2 22.9

全国無解答率との差 +1.2 -2.3 +7.8 -7.2

※記述式問題の無解答率は独自に算出

平成 30年度全国学力・学習状況調査において,数学Aでは全国平均正答率を上回る結果を出すこ

とができた。数学Bでは全国平均正答率に 1.5ポイント及ばない結果となったが,この数年では最も

全国平均正答率に近い結果となった。さらに,今年度の「全国平均正答率との差」は昨年度の「全国

平均正答率との差」から 4.8ポイント上昇している。

無解答率は数学A,数学B(記述式問題に限定して本校独自に算出)共に,全国の無解答率を下回

る結果を出すことができた。

授業の中で「説明する力を伸ばす基本形」を活用し,見通しをもった上で,筋道を立てて自分の考

えを表現する力が身に付いてきた成果であると思われる。また,自分の考えを持たせた上でペア・グ

ループでの意見交流を行う場面を多く設定したことで,自信をもって自分の考えを記述することがで

きる生徒が増えた結果であると思われる。

5.6 ポイント上昇

4.8ポイント上昇

15.0 ポイント減少

1.7ポイント減少

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(2)平成30年度 全国学力・学習状況調査において成果の上がった問題

①数学B3 事象の数学的な解釈と問題解決の方法(ダイヤグラム)

≪方法・手順の説明≫(プロセスα1,α2,α3,β1)

3(3)≪方法・手順の説明≫ 【本校平均正答率 13.1% 全国平均正答率 13.2%】

(正答の条件)次の(a),(b)または(a),(c)について記述しているもの。

(a) 列車アと列車エのグラフのy 座標が6である点に着目すること。

(b) 上記(a)に対応するx の値の差を求めること。

(c) 上記(a)に対応する2点間の x 軸方向の距離を読むこと。

(正答例) 例1 列車アと列車エの2つのグラフについて,y の値が6のときのxの値の差を求める。

(解答類型1)

例2 列車アと列車エの2つのグラフについて,y 座標が6のときの2点間のx 軸方向の

距離を読む。(解答類型4)

解答類型 正答 本校反応率 全国反応率

1 (a),(b)について記述しているもの ◎ 1.4 1.6

2 (a)について,y を用いた記述がなく,(b)について記述しているもの ○ 0.0 0.2

3 (b)についての記述が十分でなく,(a)について記述しているもの ○ 7.6 8.6

4 (a),(c)について記述しているもの ◎ 0.0 0.1

5 (a)について,y を用いた記述がなく,(c)について記述しているもの ○ 0.7 0.1

6 (c)についての記述が十分でなく,(a)について記述しているもの ○ 3.4 2.6

7 (a)について,y を用いた記述がなく,(b)についての記述が十分でないもの 9.7 11.0

8 (a)について,y を用いた記述がなく,(c)についての記述が十分でないもの。 7.6 3.7

9 (a)のみを記述しているもの。((a)について,y を用いた記述がないものを含む) 28.3 16.1

10 (b)のみを記述しているもの。((b)についての記述が十分でないものを含む) 4.1 3.4

11 (c)のみを記述しているもの。((c)についての記述が十分でないものを含む) 0.0 0.0

12 グラフを用いることについて記述しているが,(a),(b),(c)について記述していな

いもの

11.0 12.1

99 上記以外の解答 5.5 7.2

0 無解答 20.7 33.4

平成 30年度の全国学力・学習状況調査数学B3(3)では,本校平均正答率は全国平均正答率か

ら-0.1ポイントと,ほぼ同等の結果が出た。さらに本校の無解答率は全国の無解答率から-12.7ポ

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イントとなっている。2年次に行った「水道料金はどちらが得か選び,グラフを読み取り自分の考え

を説明する授業」により,グラフの読み取りに重点を置いた活動に取り組ませた成果が出ている。

しかし,どのような不正解があったかを分析すると,解答類型9で本校反応率は全国反応率から

+12.3ポイントとなっており,問題解決のために列車アと列車エのグラフのy 座標が6である点に着目し

ているが,それに対応する「x の値の差を求める」ことや「2点間のx 軸方向の距離を読む」ことを表現

することができていなかった生徒が多かったことがわかる。問題解決の方針は立てることができても,

その方法について数学的に説明する力が不足していることが明らかになった。

②数学B5 数学的な結果の事象に即した解釈(バスツアー)

≪理由の説明≫(プロセスα1,α2,α3)

5(2)≪理由の説明≫ 【本校平均正答率 15.9% 全国平均正答率 10.4%】

(正答の条件) イを選択し,次の(a),(b)のいずれかについて記述しているもの。

(a) 文字a(通常料金)を使って団体料金の10人分が通常料金の何人分にあたるかを表した式

に,a が含まれていないこと。

(b) 文字a(通常料金)を使って団体料金の10人分が通常料金の何人分にあたるかを求めた計

算過程で,a が消去されること。

(正答例) 例1 通常料金a について,団体料金の10人分が通常料金の何人分にあたるかを表す式に,a が含

まれていないので,通常料金が変わっても,団体料金の10人分が通常料金の何人分にあたる

かは変わらない。(解答類型1)

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例2 通常料金a について,団体料金の10人分が通常料金の何人分にあたるかを求める計算過程

でa がなくなるので,通常料金が変わっても,団体料金の10人分が通常料金の何人分に

あたるかは変わらない。(解答類型4)

解答類型 正答 本校反応率 全国反応率

1

(a)について記述しているもの

(結論がなくてもよい。以下同様) ◎ 4.8 0.3

2 (a)について,計算結果に着目していることについての記述が十分でなく,a

が含まれていないことについて記述しているもの ○ 0.0 0.0

3 (a)について,計算結果が一定であることを記述しているもの ○ 9.0 9.7

4 (b)について記述しているもの ◎ 2.1 0.3

5 (b)について,計算過程に着目していることについての記述が十分でなく,a

が消去されることについて記述しているもの ○ 0.0 0.0

6 (a),(b)についての記述はないが,団体料金の10人分が通常料金の何人分に

あたるかや通常料金に着目して記述しているもの

13.1 10.4

7 選択肢イに当たる事柄のみを記述しているもの 4.1 6.7

8 上記以外の解答 14.5 15.0

9 無解答 15.2 15.5

10 アを選択しているもの 34.5 35.1

99 上記以外の解答 0.0 0.3

0 無解答 2.8 6.6

平成 30年度の全国学力・学習状況調査数学B5(2)では,本校平均正答率は全国平均正答率か

ら+5.5ポイント上回る結果が出た。さらに本校の無解答率は全国の無解答率から-3.8ポイントと

なっている。2年次に行った「陸上トラックのセパレートコースのスタート地点の差は直線部分の長

さや半円部分の半径に関わらず一定であることの理由を,文字式を利用して説明する授業」により,

事象を文字を用いて考察する場面を設定し,計算の過程で文字が消去されることや計算結果に文字が

含まれていないことを読み取って,その理由を説明させる活動に取り組ませた成果が出ている。

しかし,不正解の解答類型を分析すると,解答類型9の本校反応率は全国反応率とほぼ同等の15.2

ポイントで「イを選択しているものの,理由の部分を書くことができていない」生徒も多いことがわ

かった。また,解答類型10の本校反応率も全国反応率とほぼ同等の34.5ポイントとなっており,「通

常料金a について,団体料金の10人分が通常料金の何人分にあたるかを表す式にa が含まれていな

いので,通常料金が変わっても,団体料金の10人分が通常料金の何人分にあたるかは変わらな

い。」ことを理解していない生徒が多いこともわかった。文字を使って数量を表すことの意味や,計

算の途中で文字が消去されるというのはどんなことを表しているのか等の理解が不足しているという

ことが明らかになった。

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(3)アンケートによる肯定的評価の向上

数学の学習に関して,生徒がどのように考えているのかを把握するために標記のアンケートを毎学期

実施した。

質問 肯定的回答(%) 肯定的回答

の変容 平成29年6月 平成30年12月

数学の勉強は好きですか 47 65 +18

数学の授業内容はよく分かりますか 73 84 +11

数学の授業で学習したことを,普段の生活の中で活用で

きないか考えますか 46 60 +14

数学の授業で学習したことは,将来,社会に出たときに

役に立つと思いますか 86 93 +7

数学の授業で学習したことは,他の教科の学習の中で役

立っていると思いますか 82 91 +9

数学の授業やテストの中で,理由を説明したり,書いた

りすることができますか 46 60 +14

ペア・グループ学習で,友達と相談することは問題を解

決することに役に立つと思いますか 87 95 +8

本校 3年生のアンケート調査による意識の変容を分析した。

研究 1年目の平成 29年 6月と研究 2年目の平成 30年 12月の 1年半の変容だが,肯定的回答が大き

く増えたのが「数学の勉強は好きですか」+18ポイント,「数学の内容はよく分かりますか」+11ポイ

ント,「数学の授業で学習したことを,普段の生活の中で活用できないか考えますか」+14ポイント,「数学の授

業やテストの中で,理由を説明したり,書いたりすることができますか」+14ポイントであった。平成 30年度全国

学力・学習状況調査の結果も踏まえて分析してみると,数学 Bの記述式問題の平均正答率の上昇や,無解答率

の減少という数値の面の成果と,アンケート調査による生徒の意識の面での肯定的回答の上昇は関係しており,

これまで行ってきた授業改善の成果だといえる。

「ペア・グループ学習で,友達と相談することは問題を解決することに役に立つと思いますか」や

「数学の授業やテストの中で,理由を説明したり,書いたりすることができますか」の項目の数値も上昇していること

から,本校の研究主題にある「自己存在感を実感し,主体的に学習に取り組む生徒」が増えたといえる。

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2年 3章「1次関数」検証問題の分析

(1)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率 全国平均正答率全国平均正答率

との差

1 74.3 ◎ 68.1

2 2.9 4.3

3 2.9 0.8

4 11.4 11.3

5 0.0 0.5

9 8.6 11.8

0 0.0 3.3

(2)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率 全国平均正答率全国平均正答率

との差

1 57.1 55.6

2 2.9 8.3

3 28.6 ◎ 30.1

4 11.4 5.3

9 0.0 0

0 0.0 0.7

(3)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率 全国平均正答率全国平均正答率

との差

1 (a)について記述しているもの。 2.9 ◎ 11.3

2 (a)について記述が十分でないもの。 2.9 ○ 1.8

3 上記以外の解答 31.4 20.9

4 無解答 2.9 11.2

5 (b)について記述しているもの。 0.0 ◎ 11.2

6 (b)について記述が十分でないもの。 34.3 ○ 6.8

7 上記以外の解答 22.9 13.5

8 無解答 0.0 10.3

9 0.0 1.1

0 2.9 11.8

74.3 68.1 6.2

本校無解答率

全国無解答率

全国無解答率との差

0.0 3.3 -3.3

28.6 30.1 -1.5

本校無解答率

全国無解答率

全国無解答率との差

0.0 0.7 -0.7

31.1 8.9

本校◎ 全国◎ 全国◎との差

11.8 -8.9

2.9 22.5 -19.6

本校無解答率

全国無解答率

全国無解答率との差

上記以外の解答

無解答

320 と解答しているもの。

40 と解答しているもの。

284 と解答しているもの。

2840 と解答しているもの。

340 と解答しているもの。

ア と解答しているもの。

イ と解答しているもの。

ウ と解答しているもの。

エ と解答しているもの。

上記以外の解答

上記以外の解答

無解答

(正答の条件)アを選択し、次の(a)について記述しているもの、または、イを選択し次の(b)について記述しているもの。 (a)方程式を解いて、使用年数の値を求めること。 (b)グラフの交点の座標から、使用年数の値を読み取ること。

無解答

アを選択

イを選択

2.9

40.0

(4)検証問題における平均正答率の向上と無解答率の減少,理解が不十分な設問の把握

①平成 28年度全国学力・学習状況調査 数学 B3(プロセスα1,α2,α3,β1)

記述式解答の(3)では,◎の解答は少ないもののグラフを使用し使用年数を求める方法の説明している生徒が非常に

多かった。グラフの読み取りから自分の意見を述べる経験をした,後述①の授業実践の成果であると思われる。◎の解答

が増えるよう授業改善を行っていく。

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1年 5章「平面図形」検証問題の分析

(1)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率 全国平均正答率全国平均正答率

との差

1 アと解答 16.0 12.5

2 イと解答 10.0 10

3 ウと解答 66.0 ◎ 68

4 エと解答 8.0 9.4

9 上記以外の解答 0.0 0

0 無解答 0.0 0.2

(2)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率 全国平均正答率全国平均正答率

との差

1 (a)、(b)、(c)を記述しているもの。 12.0 ◎ 7

2 (b)についての記述が十分でなく、(a)、(c)を記述しているもの。 4.0 ○ 0.4

3 (b)に関する記述がなく、(a)、(c)を記述しているもの。 0.0 ○ 3.2

4

(a)を記述し、(b)、(c)以外に四角形ABCDが四角形GBEFに重なる回転移動について、対応する点や辺を用いて、成り立つ事柄を記述しているもの。

2.0 ○ 4.2 本校◎ 全国◎全国◎との差

5(a)、(b)を記述しているもの。または、(a)のみを記述しているもの。

8.0 19.6

6(b)、(c)を記述しているもの。または、(c)のみを記述しているもの。

0.0 2.8

7 (b)のみを記述しているもの。 0.0 7.7

8 (a)、(b)、(c)の記述に誤りがあるもの。 26.0 24.4

9 上記以外の解答 22.0 13.4

0 無解答 26.0 17.3

(3)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率 全国平均正答率全国平均正答率

との差

1 アと解答 48.0 ◎ 53.2

2 イと解答 14.0 21.9

3 ウと解答 6.0 7

4 エと解答 26.0 17.6

9 上記以外の回答 2.0 0

0 無解答 4.0 0.3

4.0 0.3 3.7

66.0 68

12.0 7

26.0 17.3

18.0 14.8

本校無解答率

全国無解答率

3.2

5.0

-2.0

0.0 0.2 -0.2

本校無解答率 全国無解答率全国無解答率

との差

全国無解答率との差

本校無解答率

全国無解答率

全国無解答率との差

(正答の条件)四角形ABCDが四角形GBEFに重なる回転移動に着目し、次の(a)、(b)、(c)を記述しているもの。(a)「点Bを中心に」などの回転の中心の位置(b)「時計回りに」などの回転の方向(c)「120°」などの回転角の大きさ

8.7

48.0 53.2 -5.2

②平成 29年度全国学力・学習状況調査 数学 B1(プロセスα1,α2,α3,β1,γ3)

記述式解答の(2)では,後述の授業実践②の成果が出て◎の解答が全国平均正答率を上回った。本校平均正答率も全

国平均正答率を上回っている。しかし,本校無解答率は全国無解答率を上回っており,自分の考えを記述できない生徒へ

のサポートが必要である。

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2年 1章「式の計算」検証問題の分析

(1)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率

全国平均正答率

全国平均正答率との差

1 3×20 または 20×3 と解答しているもの。 84.8 ◎ 79.2

2 20+20+20 と解答しているもの。 0.0 ○ 0.1

3 3×□ または □×3 の□に20以外の整数を入れて解答しているもの。 0.0 0.7

4 言葉や文字を用いて解答しているもの。 0.0 0.5本校

無解答率

全国

無解答率

全国無解答率

との差

5 上記1以外で、積が60になる乗法の式を解答しているもの。 0.0 3.6

9 上記以外の解答 15.2 10

0 無解答 0.0 5.8

(2)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率

全国平均正答率

全国平均正答率との差

1 3(n+1)で、(a)、(b)の両方を記述しているもの。 12.1 ◎ 4.7

2 3(n+1)で、(a)、(b)のどちらか一方を記述しているもの。 18.2 ○ 7.8

33(n+1)で、(a)、(b)の両方を記述していないが、中央の整数の3倍であることを示していると

判断できるもの。 0.0 ○ 28.3

4 3(n+1)で、(a)、(b)の記述に誤りがあるもの。 6.1 0.2

5 3n+3で、(c)、(d)、(e)の全てを記述しているもの。 0.0 ◎ 0

6 3n+3で、(c)と(d)、(c)と(e)、または(c)のみを記述しているもの。 12.1 ○ 3.3

73n+3で、次のいずれかの場合に当てはまるもの。

・(d)と(e)を記述しているもの。  ・(d)のみを記述しているもの。

・(e)のみを記述しているもの。  ・(c)、(d)、(e)を記述していないもの。9.1 7.1

8 3n+3で、(c)、(d)、(e)の記述に誤りがあるもの。 0.0 0.9

9 上記以外の解答 27.3 24.3

0 無解答 15.2 23.3

(正答の条件)<3(n+1)と計算している場合>

次の(a)、(b)を記述している。(a) n+1は中央の整数だから、(b) 3(n+1)は中央の整数の3倍である。

(3)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率

全国平均正答率

全国平均正答率との差

1 (a)、(b)の条件を満たして記述しているもの。 51.5 ◎ 59.5

2(a)の「連続する5つの整数の和」に関する記述が十分でなく、(b)の条件を満たして記述し

ているもの。 6.1 ○ 1.6

3(a)の「連続する5つの整数の和」に関する記述がなく、(b)の条件を満たして記述している

もの。 0.0 0.3

4 (a)、(c)の条件を満たして記述しているもの。 6.1 ◎ 2.5

5(a)の「連続する5つの整数の和」に関する記述が十分でなく、(c)の条件を満たして記述し

ているもの。 3.0 ○ 0.4

6(a)の「連続する5つの整数の和」に関する記述がなく、(c)の条件を満たして記述している

もの。 0.0 0.1

7(a)の条件を満たし、(b)、(c)以外に成り立つ事柄を記述しているもの。((a)の「連続する

5つの整数の和」に関する記述が十分でないものを含む) 0.0 ○ 0.4

8「○○は、◇◇になる」という形で、(a)の条件を満たし、成り立たない事柄を記述しているも

の。((a)の「連続する5つの整数の和」に関する記述が十分でないものを含む) 0.0 3.2

9 上記以外の解答 18.2 13

0 無解答 15.2 18.9

(正答の条件)「○○は、◇◇になる」という形で、次の(a)、(b)または(a)、(c)の条件を満たし、成り立つ事柄を記述している。(a) ○○が、「連続する5つの整数の和」である。

(b) ◇◇が、「中央の整数の5倍」である。(c) ◇◇が、「5の倍数」または「中央の整数の倍数」である。

本校無解答率

全国無解答率

全国無解答率との差

15.2 18.9 -3.7

本校◎ 全国◎ 全国◎との差

57.6 62 -4.4

15.2 23.3 -8.1

66.7 64.4 2.3

<3n+3と計算している場合>

次の(c)、(d)、(e)を記述している。(c) 3n+3がn+1の3倍になることを示している。(d) n+1は中央の整数だから、

(e) 3n+3は中央の整数の3倍である。

12.1 4.7 7.4

本校無解答率

全国無解答率

全国無解答率との差

42.4 44.1 -1.7

本校◎ 全国◎ 全国◎との差

84.8 79.3 5.5

0.0 5.8 -5.8

③平成 27年度全国学力・学習状況調査 数学 B2(プロセスβ1,β2)

記述式解答の(2)では,◎の解答が大きく全国◎を上回ったが,本校平均正答率と全国平均正答率との差では-1.7

ポイントとなっている。後述の授業実践③により,きちんと説明が書ける生徒が増えたことは成果と言えるが,全体的に

はまだ式による説明が書けない生徒もいることが分かった。

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1年 2章「文字と式」検証問題の分析

(1)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率

全国平均正答率

全国平均正答率との差

1 26 と解答 87.5 ◎ 80.8

2 30 と解答 0.0 2.9

3 25 と解答 0.0 1.6

4 28 と解答 25.0 2.3本校

無解答率

全国

無解答率

全国無解答率

との差

9 上記以外の回答 8.3 11.1

0 無解答 0.0 1.3

(2)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率

全国平均正答率

全国平均正答率との差

1 n-1 と解答 50.0 ◎ 45.2

2 n と解答 16.7 2.7

3 n+1 と解答 0.0 2.8

9 上記以外の回答 33.3 41.3本校

無解答率

全国

無解答率

全国無解答率

との差

0 無解答 0.0 8

(3)解答類型

本校反応率

全国反応率

本校平均正答率

全国平均正答率

全国平均正答率との差

1 ①、②、③について記述しているもの 4.2 ◎ 6.2

2 上記1について、①、②についての記述が十分でないもの 12.5 ○ 2.2

3 ①、②のみを記述しているもの 4.2 ○ 7.1

4 上記③について、①、②についての記述が十分でないもの 12.5 4.3 本校◎ 全国◎ 全国◎との差

5 上記1、2以外で③について記述しているもの 0.0 0.3

6 ②のみを記述しているもの 0.0 0.5

7 上記1~3以外で、正しく説明しているもの 0.0 ◎ 0

8 上記7について、表現が不十分であるが、説明の筋道が正しいとわかるもの 0.0 ○ 0本校

無解答率

全国

無解答率

全国無解答率

との差

9 上記以外の回答 58.3 56.5

0 無解答 8.3 22.88.3 22.8 -14.5

(正答の条件) 次の①、②、③について記述しているもの ①囲まれていないストローの本数が6本あること

 ②1つの囲みにストローが5本あり、その囲みが(n-1)個あること ③必要なストローの本数は、囲まれているストローの総数と囲まれていないストローの本数の和であること

20.8 15.5 5.3

4.2 6.2 -2.0

50.0 45.2 4.8

0.0 8 -8.0

87.5 80.8 6.7

0.0 1.3 -1.3

④平成 29年度全国学力・学習状況調査 数学 B2(プロセスα1,α3,β1,γ3)

記述式解答の(3)では,本校平均正答率が全国平均正答率を上回った。後述の授業実践④による成果であると思われ

る。無解答率も少ないのだが,全体の約 8割の生徒が間違った解答をしている事実もあるので,次年度以降の授業におい

て指導方法の改善が必要である。

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(5)研究成果のまとめ

2年間の研究の成果をまとめると次のようになる。

○「単元の指導計画」の作成により,その単元で付けたい力を身に付けさせるために,日々の授

業をどう組み立てていくか明確にすることができた。

○授業の中で自らの考えを記述したり説明したりする場面において,「説明する力を伸ばす基本

形」を取り入れることにより,筋道を立てて記述や説明ができる生徒が増えた。

○振り返りの工夫により,その日の学習内容の定着を図ることができた。また,単元で学んだ内

容が日常生活とどうつながっているのかを把握したり,発展的な学習につなげたりすることが

できた。

○平成 30年度全国学力・学習状況調査において,数学A,数学Bともに,過年度より平均正答

率が上昇した。

○同調査の数学Bの記述式問題において,無解答率が大きく減少した。

○アンケート調査において,各項目で肯定的回答が増えた。授業の中でペア・グループ学習を行

うことにより,自分の考えや意見を認めてもらう場が増えたことで,理由を説明することがで

きるようになったと感じる生徒が増加している。

これらの成果を上げたことから,研究主題である「自己存在感を実感し,主体的に学習に取り組む

生徒の育成」が実現できたと言えるのではないだろうか。

(6)課題

課題としては次の点が挙げられる。

●「説明する力を伸ばす基本形」の活用の仕方については,更に研究が必要である。形式的な枠

として使用するのではなく,問題解決をするための思考の流れや過程として定着を図らせるこ

とが必要である。

●毎時間の「振り返り」をどのようにさせるか更なる内容の検討が必要である。その時間に何を

学んだのかを確認する振り返りや,次の時間につながる振り返り等,学習内容に合わせて適切

な振り返りをさせなければならない。

これらを踏まえて,次年度以降も研究を継続させ,授業で学んだことを実生活の様々な場面で活用

する力や,様々な課題解決のための構想を立てて実践し評価・改善する力を育成していく。

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【授業実践】

1.研究 1年目の取組

①2年生 3章「1次関数」 〔理由の説明〕

②1年生 5章「平面図形」 〔事柄・事実の説明〕

2.研究2年目の取組

③2年生 1章「式の計算」 〔事柄・事実の説明〕

④1年生 2章「文字と式」 〔理由の説明〕

⑤1年生 4章「比例と反比例」 〔方法・手順の説明〕

⑥2年生 4章「平行と合同」 〔理由の説明〕

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(1.研究 1年目の取組)

①2年生 3章「1次関数」 〔理由の説明〕

第 2学年 数学科学習指導案

平成 29年 11月 8日(水)

日田市立東部中学校 2年 2組 37名

指導者 佐藤 武吉

1.単元名 3章 1 次関数

2.単元設定の理由

私たちが普段何気なく生活している中で,いろいろな場面で数学が使われている。買い物をする際に

足し算を使う,バーゲンセールでいくら割引されているのか割合の計算をする,ニュースの天気予報で

降水確率を知る,など,数学の知識を使って生活しているが,それを意識することは少ない。そこで,

身の周りにある数学を知ることで,数学に対する興味・関心を高めてもらいたいと考えた。本教材では,

身近な題材である水道の使用量に対する料金について考えていってもらう。基本的には使用した分だ

け料金も増えていくのだが,地域によってはその料金体系に差があり,単純な比例の関係ではなく 1次

関数の考えを使うものもある。水道の使用量に対する料金の変化を,いろいろな視点でとらえることが

できるようにさせたい。

本学級は,明るく和気あいあいとした雰囲気があり,活発な生徒が多いが,生活面は比較的落ち着い

ており,その姿勢が授業中も表れている。静かに話を聞くこともできるし,発言・発表を求めると挙手

して自分の考えを述べることができる生徒もいる。その他の生徒も指名すれば前向きに発表しようと

することができる。しかし,6 月に行ったアンケートを見てみると,「数学の授業で学習したことは,

将来,社会に出たときに役に立つと思いますか。」で肯定的な回答をした生徒が 86%いるのだが,「数

学の授業で学習したことを,普段の生活の中で活用できないか考えますか。」で肯定的な回答をした生

徒は 46%にとどまった。

そこで,水道料金という身近な題材を扱うことにした。料金体系の中に関数の関係はたくさん見るこ

とができるのだが,今回は水道料金の中に比例や1次関数の関係が存在することを確認させ,その関係

をグラフなどで表現することにより,ともなって変わる2つの数量を視覚的にとらえさせたい。そし

て,2 つの地域の水道料金をグラフに表しそれを読み取ることによりどちらか得になるかを判断させ,

その理由を説明する活動を通して,自分の考えを数学的に表現する力を身に付けさせたい。

3.単元目標

具体的な事象の中から2つの数量を取り出し,それらの変化や対応を調べることを通して,1次関数

について理解するとともに,関数関係を見いだし表現し考察できるようにする。

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4.評価規準

観点 評価規準

数学への

関心・意欲・態度

様々な事象を 1次関数として捉えたり,表,式,グラフなどで表したりするな

ど,数学的に考え,表現することに関心をもち,意欲的に数学を問題の解決に

活用して考えたり判断したりしようとしている。

数学的な

見方や考え方

1 次関数についての基礎的・基本的な知識及び技能を活用しながら,事象を数

学的な推論の方法を用いて理論的に考察し表現したり,その過程を振り返って

考えを深めたりするなど,数学的な見方や考え方を身に付けている。

数学的な技能

1 次関数の関係を,表,式,グラフを用いて的確に表現したり,数学的に処理

したり,2元 1次方程式を関数関係を表す式とみてグラフに表したりするなど,

技能を身に付けている。

数量・図形などにつ

いての知識・理解

事象の中には 1次関数として捉えられるものがあることや 1次関数の表,式,

グラフの関連などを理解し,身に付けている。

5.単元の指導計画と評価について

(1)指導計画(20時間)

節 項 授業時間

1節 1次関数

1次関数 2時間

1次関数の値の変化 1時間

1次関数のグラフ 4時間

1次関数を求めること 3時間

2節 1次関数と方程式 2元 1次方程式のグラフ 3時間

連立方程式とグラフ 1時間

3節 1次関数の利用

1次関数とみなすこと 1時間

1次関数のグラフの利用 1時間

1次関数と図形 1時間

日常生活の中にある 1次関数 2時間(本時2/2)

章末 章末問題・検証問題 1時間

(2)3 節.1項-②の学習活動及び評価規準と評価方法

時 学習活動 数学への

関心・意欲・態度

数学的な

見方や考え方 数学的な技能

数量・図形などにつ

いての知識・理解

A 市と B 市のどちらに引っ

越した方が水道料金が得だ

と考えたのかを,グラフを

読み取り説明する

自分の考えをも

ち,選んだ理由を

適切な用語を使い

説明(記述)するこ

とができる。

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6.本時案

(1)題目 1次関数の利用

(2)本時の目標 水道の使用量にばらつきがある家庭が,水道料金の算定方法の違う 2 つの地域のどちらに引っ越した

方が得をするのかを,計算や関係を表したグラフを読み取り,説明する力を伸ばす基本形を用いるこ

とにより,説明できるようにする。

(3)展開

学習活動 配時 指導内容及び指導上の留意点 評価・備考

1.前時の確認をす

る。

2.めあてを提示し,

本時の問題を確

認する。

3.本時の課題を確

認する。

5

10

30

○前時に学習した A市,B市それぞれの水道料金の算定方法を確認させ

る。

・計算によって求める方法と,グラフを使って求める方法があったこと

を押さえる。

○めあてを提示し,確認させる。

めあて A 市と B 市のどちらに引っ越した方が水道料金が得するのか

説明しよう。

○問題を提示し,解かせる。

問題 A 市または B 市のどちらかに引っ越そうと考えている一人暮ら

しの西川さん(月におよそ 40m3水道を使用)と,山口さん一家

(月によりばらつきがあるが,およそ 50m3~80m3水道を利用)

の 2組について,それぞれの市での水道料金を求めなさい。

・西川さん:A市 4000円 B市 2000円

・山口さん:A市 5000円~8000 円 B市 3500~9000円

○本時の課題を確認させる。

課題 山口さん一家は,A市と B市のどちらに引っ越した方が得をする

か説明するには,どうすればよいのだろうか。

○「説明する力を伸ばす基本形」について確認させる。

○個人の考えを,説明できるよう,ワークシートに記述させる。

・50~70m3まで使用した場合はB市の方が得。70m3の場合にはA市

もB市も変わらない。70m3を超える場合にはA市の方が得である。

このことを基に,自分の意見を以下の①~③の順に記述する。

①いずれかの市を選ぶ。

②根拠となるもの(グラフ)のことを記述する。

③グラフを読み取り,使用量と料金の関係を記述する。

④使用料と料金の関係を基に,なぜその市を選んだのか理由を記述す

る。

○グループにして,個人の意見を発表,交流させる。

○グループの中で,もっとも納得できる意見をホワイトボードに記入

し,発表させる。

個→学び合い

自分の考えを

もち,選んだ

理由を適切な

用語を使い説

明(記述)する

こ と が で き

る。【数学的な見

方や考え方】

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①いずれかの市を選ぶ。

②根拠となるもの(グラフ)のことを記述する。

③グラフを読み取り,使用量と料金の関係を記述

する。

④使用料と料金の関係をもとに,なぜその市を

選んだのか理由を記述する。

各グループの

ホワイトボード

各グループの

ホワイトボード

各グループの

ホワイトボード

各グループの

ホワイトボード

各グループの

ホワイトボード

各グループの

ホワイトボード

板書計画 2 年生 第 3 章

めあて

A 市と B 市のどちらに引っ越した方が水道料金が得

するのか説明しよう。

「1 次関数(1 次関数の利用)」

問題 A 市または B 市のどちらかに引っ越そうと考えてい

る一人暮らしの西川さん(月におよそ 40m3水道を

使用)と,山口さん一家(月によりばらつきがあるが,

およそ 50m3~80m3水道を利用)の 2 組について,

それぞれの市での水道料金を求めなさい。

西川さん:A 市 4000 円 B 市 2000 円

山口さん:50m3のとき A 市 5000 円 B 市 3500 円

80m3のとき A 市 8000 円 B 市 9000 円

課題 山口さん一家は,A 市と B 市のどちらに引っ越した

方が得をするか説明するには,どうすればよいのだ

ろうか。

以下の条件に合わせて説明しなさい。

まとめ (例)A 市を選んだ方が得をする。A 市と B 市の

水道料金を表したグラフの交点を読み取る

と,70m³を境に B 市の方が料金が高くな

っている。よって 70~80m³使うこともあ

ることを考えると,A 市の方が得である。

(例)B 市を選んだ方が得をする。A 市と B 市の

水道料金を表したグラフの交点を読み取る

と,70m³までは B 市の方が料金が安い。使

用する範囲を考えると 70~80m³より 50~

70m³の方が範囲が広いので,B 市の方が得

である。

「説明する力を伸ばす基本形」

①根拠となる表・式・グラフを

選択し,方針を明確にする。

②取り出した情報を整理し,

計算等を行う。

③答えにつながる計算や説明を

する。

④答え(結論)を導き出す。

4.本時のまとめを

する。

5 ○本時のまとめを確認させる。

まとめ (例)A市を選んだ方が得をする。A市と B市の水道料金を表

したグラフの交点を読み取ると,70m³を境に B 市の方

が料金が高くなっている。よって 70~80m³使うことも

あることを考えると,A市の方が得である。

(例)B 市を選んだ方が得をする。A 市と B 市の水道料金を表

したグラフの交点を読み取ると,70m³までは B 市の方

が料金が安い。使用する範囲を考えると 70~80m³より

50~70m³の方が範囲が広いので,B市の方が得である。

○これから社会人になるにあたり,グラフを読み取り,いろいろな事柄

を判断する場面が増えていくことを踏まえて,振り返りを行わせる。

板書計画

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授業の様子 生徒の反応

前時の学習で与えられた情報をもとに,A

市と B 市の水道料金についてのグラフをか

いた。

これもグループ学習を通して,全員がグラ

フをかくことができた。

グラフをもとに,A 市と B 市のどちらに引

っ越したほうが水道料金が得になるのか,

自分の意見をもたせる。

グループで意見の交流を行い,もっとも納

得できた意見をホワイトボードに記入し,

全体で発表する。

グラフの交点に着目して,自分なりの意見を

記述することができている。

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(1.研究 1年目の取組)

②1年生 5章「平面図形」 〔事柄・事実の説明〕

第1学年 数学科学習指導案

平成29年11月29日(水)

日田市立東部中学校 1年4組29名

指導者 江藤 寛朗

1.単元 平面図形

2.単元設定の理由

私たちの身のまわりでは,様々な形をした具体物を目にしたり操作したりしているものの,それらを数

学的な対象として見たり,考察したりすることは少ない。しかし,それら身の回りの事象を「形」「大き

さ」「位置関係」という観点から考察できるように,図形の基礎的な概念や性質についての理解を深め,

それを活用して考えたり判断しようとしたりしようとする態度を育てることが大切である。また,直感的

な見方や考え方および図形の性質を論理的に考察し表現する能力を伸ばすことも大切なねらいである。

小学校では線対称な図形や点対称な図形について学んでいるが,これは1つの図形についての特徴に

着目したものであるのに対して,この単元で扱う移動は移動前と移動後というように2つの図形の関係

に着目している。図形の移動を考えるということは,図形を構成している頂点や辺に着目することであ

り,図形についての見方や考え方を豊かにし,後の図形指導の大切な基礎となる。

本学級において数学の学習に関わるアンケートを行った結果,『数学の授業やテストの中で,理由を説

明したり,書いたりすることができますか』の項目に対して,当てはまると答えた生徒が40%であっ

た。しかし,定期テストでは記述して答える問題の正答率は十分とは言えない。また,同アンケートにお

いて,『数学の授業の中で,「一発言・一表現」できていますか』の項目に対して,当てはまると答えた生

徒は20%と低い。

平成29年度全国学力・学習状況調査B問題大問1設問(2)において本校の結果は全国平均正答率を上

回る結果となったが,完全正答率では大きな差が見られた。また,無回答率が高いことからも数学的な表

現を用いて説明する力を育むことが必要であると考えており,本学級においても必要な能力であると考

える。

本題材は,平成29年度全国学力・学習状況調査B問題大問1「事象を図形的に解釈すること(万華

鏡)」の類題である。前時では日本の伝統的な模様である『麻の葉』模様を図形として捉え,敷き詰めら

れた合同な図形において,もとになる図形を平行移動,対称移動,回転移動をおこなうことでもう一つの

合同な図形に重ねることができることを学んだ。本時ではその中から正六角形に焦点をあて,図形の移動

を数学的な表現を用いて説明することをねらいとしている。その手だてとしてワールドカフェ方式の話

し合い活動を取り入れ,自分の考えに対して指摘されたり他者の考えを指摘することを通して,発言した

り自分の考えを表現したりする場を設けている。また,『説明の基本形』を提示し論理的に考察し表現す

るための手だてとする。

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3.単元目標

観察,操作や実験などの活動を通して,見通しをもって作図したり図形の関係について調べたりして平

面図形についての理解を深めるとともに,論理的に考察し表現できるようにする。

4.単元の評価規準

数学への

関心・意欲・態度

様々な事象を平面図形で捉えたり,それらの性質や関係を見いだしたりする

など,数学的に考え表現することに関心をもち,意欲的に数学を問題の解決

に活用して考えたり判断したりしようとしている。

数学的な見方や考え方

平面図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を活用しながら,事象を

見通しをもって論理的に考察し表現したり,その過程を振り返って考えを深

めたりするなど,数学的な見方や考え方を身に付けている。

数学的な技能 図形の移動や基本的な作図をしたり,図形の計量をしたりするなど,技能を

身に付けている。

数量,図形などについて

の知識・理解

平面図形についての性質や関係,基本的な作図の方法,平行移動や対称移動

及び回転移動,図形の計量の仕方などを理解し,知識を身に付けている。

5.単元の指導計画と評価について

(1)指導計画(16時間)

節 項 授業時間

導入 しきつめ模様をつくってみよう 1時間

1節 図形の移動 1.図形の移動 5時間(本時5/5)

2節 基本の作図

1.作図のしかた 1時間

2.基本の作図 4時間

3.いろいろな作図 2時間

3節 おうぎ形 1.おうぎ形 2時間

章末 基本の問題・章末問題 1時間

(2)1節.1項‐⑥の学習活動及び評価規準と評価方法

時 学習活動 数学への

関心・意欲・態度

数学的な

見方や考え方 数学的な技能

数量・図形などにつ

いての知識・理解

しきつめ模様から抜

き出した正六角形に

おいて,もとになる

二等辺三角形の移動

を,話し合い活動を

通して,数学的な表

現を用いて説明す

る。

○平行移動,対称

移動及び回転移動

に関心をもち,移

動後の図形の位置

を考えようとして

いる。

(生徒の発言)

(机間巡視)

◎移動前と移動後

の二つの図形の関

係を調べ,その図形

の移動を,数学的な

表現を用いて説明

することができる。

(各班の完成した説

明)(ワークシート)

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6.本時案

(1)題目 しきつめ模様を考察しよう

(2)本時の目標 2つの図形の関係を観察,操作などの活動を通して対称移動,回転移動に着目して捉

え,数学的な表現を用いて説明することができるようにする。

(3)展開

学習活動 配

時 指導上の留意点・支援 評価・備考

1. 前時の確認を

する。

2.めあてを確認す

る。

7 ○いろいろな図形を基にして図形の移動で敷き詰められることを確認し

た後,本時は下図の正六角形を扱うことを伝える。

●「△AGHを1回移動させることで重ねることができる図形はどれか

な?」

【生徒の反応の予想】

・△PGH(対称移動) ・△POH(回転移動)

・△ULO(平行移動) 等

*生徒の反応に対して,「どのような対称移動なの?」と投げかけること

で,それぞれの移動について数学的に説明していくことが必要である

ことを意識付ける。

平行移動,対称

移動及び回転移

動に関心をも

ち,移動後の図

形の位置を考え

ようとしてい

る。

【関心・意欲・

態度】

めあて正六角形が二等辺三角形を使ってどのようにしきつめられる

か,図形の移動を使って説明しよう。

A B

D E

P Q

S T

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3.本時の課題を確

認する。

4.課題を考え,まと

める。

①個人

②班

③交流

【交流の方法】

基本は5人1班。

2人または3人が他

の班に出向き,説明

を受ける。

説明を聞いた生徒は

過不足を指摘する。

いくつかの班から説

明を聞いて自分たち

の班に戻る。

④班で再検討

38 ●「△AGHが 1 回の移動で重ねることができないと思う三角形はあ

る?」

【予想される生徒の反応】

・△CIJ ・△TLO ・△SJO 等

○「実は,ほとんどの二等辺三角形が 1回の移動で重ねることができる。」

ことを伝える。

*△TKLと△RIJはこの図形のなかでは 1 回の移動で重ねることが

できない。

*前時で扱った図のように範囲が広くなれば 1 回の移動で重ねることが

できる。

*△CIJと△EKLが生徒の反応にあればどちらかを課題に設定す

る。反応がなければ△CIJを指定する。

○扱う正六角形を生徒にも配布する。

○二等辺三角形の色紙も配布する。

○事実を説明する場合,《方針(見通し)→情報の整理→答えにつながる

計算や説明→答え(結論)》の手順を基本形として,まずは個人で考え

させる。

◎机間指導を行いながら見通しが持てない生徒については「三つの移動

のうちどの移動が使えそうなのか」を問う。また,見通しが持てた生

徒には「どのような移動なのか」を問うことで考えの助けとする。

○各班にホワイトボードを用意し,個人の考えを班で交流させ,説明を

書かせる。

◎交流の際,スムーズに進行できるように助言をする。

○再検討して加筆,修正をしたところは赤のペンを使わせる。

○各班の説明を黒板に掲示し,数学的な表現を用いて説明するための要

点を確認し,まとめをする。

【数学的な見方

や考え方】

移動前と移動後

の二つの図形の

関係を調べ,そ

の図形の移動

を,数学的な表

現を用いて説明

することができ

る。

(各班の完成し

た説明)

(ワークシート)

6.振り返りをする 5 ○個人で考えていた説明と班での話合いや交流をする中で気付いたとこ

ろや,自分の説明に足りなかったところを書かせて振り返りとする。

課題 △AGHを△CIJに 1 回の移動で重ねるにはどうしたらよ

いだろうか。

まとめ(例)①△AGHをOBを対称の軸として折り返し対称移動

すると重ねることができる。

②四角形AGOHを点Oを回転の中心として時計回り

に 120°回転移動させると重ねることができる。

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板書計画

授業の様子 生徒の反応

めあて 正六角形が二等辺三角形を使ってどの

ようにしきつめられるか,図形の移動を使って説

明しよう。 課題 △AGHを△CIJに 1 回の移動で重ね

るにはどうしたらよいだろうか。

各班の説明

交流のしかた

についての

確認事項 まとめ

生徒の書いたホワイトボ

ードでまとめとなるもの

を掲示する

ホワイトボード

説明の基本

形を表示

操作活動を通して,どのような移動ができ

そうか,見通しをもたせる。

(個の考えをもつ場面)

グループ同士で意見交流を行い,説明に不

十分なところがあれば,指摘してもらう活

動を行った。 対称移動と回転移動のどちらの説明も出てき

た。

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(2.研究2年目の取組)

③2年生 1章「式の計算」 〔事柄・事実の説明〕

第 1学年 数学科学習指導案

平成30年6月29日(金)

日田市立東部中学校 2年3組 34名

指導者 岩本 康隆

1.単元名 1章 式の計算

2.単元設定の理由

本題材は平成 27年度全国学力・学習状況調査数学 Bの大問2「構想を立てて説明し,発展的にとらえ

ること(連続する整数の和)」の類題である。

第1学年では,数量の関係や法則などを,文字を用いて式に表したり,式の意味を読み取ったり,文字

を用いた式の計算をしたりして,文字を用いることのよさについて学習してきた。第 2学年では,その学

習をさらに深めて,文字を用いた式で数量及び数量の関係をとらえ説明できることを理解し,文字を用い

て式に表現したり式の意味を読み取ったりする能力を養いたい。そのためには,数量の関係を予想させ,

それを文字を用いた式を使って一般的に説明することの必要性と意味を理解させる。なお,これらのこと

は徐々に時間をかけて学習されると考えられるので,第3学年での文字を用いた式の活用の学習も見通

して,次第に理解を深められるように指導する。

本学級の生徒は,授業に真剣に取り組むことができている。一方,指名すれば発表するが,自ら発言を

する生徒は限られている。また,平成 29年度日田市学力調査において説明する問題に対しての正答率が

全国平均 23%,校内平均 20%,と下回っており,無解答率も 34%だったことからグループワークの際に

自分の考えを持ち説明したり,筋道を立てて表現したりする力は不十分であると考えられる。

文字式の内容の理解については平成 29年度日田市学力調査の結果で文字式の内容では正答率が全国平

均 51.9%に対して校内平均 54.9%と全国平均を上回る結果となったが,文字式の基礎的な計算について

課題が見られた。

指導に当たっては,自分の意見を伝えることが苦手な生徒が多いことから数学班をつくり,グループワ

ークを実施していく。また,筋道を立てて表現する力を伸ばしていくために「説明する力を伸ばす基本

形」をグループの仲間と作り上げ,説明を発表させていく。

本単元では,第1学年での文字式の復習を適宜入れながら,文字を2種類以上含む式の計算や単項式ど

うしの乗法,除法の計算,2種類以上の文字を含んだ式の値を求める計算の習熟を図る。そして説明で

は,事象に対してはじめから文字を用いて捉えることには抵抗感を持つ生徒が多いと考えられる。そこ

で,具体的な数を用いて例示しながら段階的に文字を用いて事象を捉えられるようにしていく。また,文

字を使った等式の変形についても,単なる等式の性質を利用した変形を行うだけでなく,目的に応じた変

形をすることの意味やよさを実感させながら習熟を図っていく。

本時では,導入で身近にあるカレンダーを用いたクイズをすることで生徒の興味・関心を持たせて取り

組ませたい。「カレンダーで縦3つに並んだ数の和は真ん中の数の3倍になる」ことを示した後,自分で

カレンダーの規則性を予想させる。予想させた規則性を班で話し合い,教えあいながら説明を完成させ,

発表させることで考えの交流や支援が必要な生徒への手立てとしていきたい。

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3.単元目標

2種類以上の文字を含む式の計算を,具体的な数の計算や第1学年で学習した文字を用いた式の計算

と関連付けて考えることを通して,文字を用いた式の四則計算や式の値を求めることができるようにす

る。また,文字を用いた式を活用する場面で,数量及び数量の関係を帰納や類推によって規則性を発見し

たり,数学的な表現を用いた説明をしたり,目的に応じた式の変形ができたりするようにする。

4.単元の評価規準

数学への関心・意欲・

態度

様々な事象を文字を用いた式で捉えたり,それらの性質や関係を見いだしたり

するなど,数学的に考え表現することに関心を持ち,意欲的に数学を問題の解

決に活用して考えたり判断したりしようとしている。

数学的な見方や考え

文字を用いた式などについての基礎的・基本的な知識及び技能を活用しなが

ら,事象を数学的な推論の方法を用いて論理的に考察し表現したり,その過程

を振り返って考えを深めたりするなど,数学的な見方や考え方を身につけてい

る。

数学的な技能

文字を用いた式で表現したり,その意味を読み取ったり,簡単な整式の加法や

減法の計算をしたり,単項式の乗法や除法の計算をしたり,簡単な式の変形を

したりするなどの技能を身につけている。

数量,図形などについ

ての知識・理解

文字を用いた式で数量及び数量の関係を捉え説明できることを理解し,知識を

身に付けている。

5.単元の指導計画と評価について

(1)指導計画

節 項 授業時間

1節 式の計算

単項式と多項式 2時間

多項式の計算 3時間

単項式の乗法と除法 3時間

式の値 1時間

2節 文字式の利用

式による説明 2時間

等式の変形 2時間

文字を使い数量の関係を捉える 2時間

文字式の利用 1時間(本時 1/1)

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(2)2節.4項の学習活動及び評価規準と評価方法

時 学習活動 数学への

関心・意欲・態度

数学的な

見方や考え方 数学的な技能

数量・図形などにつ

いての知識・理解

カレンダーの数の性質

が成り立つわけを話し

合い活動を通して,数学

的な表現を用いて使っ

て説明する。

カレンダーの数

を文字を用いて

表現したり,計

算したり,その

意味を読み取っ

たりして,真ん

中の数の3倍に

なることが成り

立つことを説明

することができ

る。

(ワークシート)

カレンダーの

数を文字を用

いた式で表す

ことができ,

その式の意味

を読み取るこ

とができる。 (ワークシート)

6.本時案

(1)題目 カレンダーの数の性質(文字式の利用)

(2)本時の目標 カレンダーで見つけた規則性を,文字を使って式で表し,その式の意味を捉えること

によって,説明することができるようにする。

(3)展開

学習活動 配

時 指導上の留意点・支援 評価・備考

1.カレンダー

を見せ,め

あ て を 確

認する。

5 ○数当てゲームでカレンダーの中にある数で,縦に3つ並んだ

数を生徒に計算させる。教師はもとの3つの数を当てていく。

○生徒から出た具体例を板書し,何か性質がありそうであるこ

とを予想させ,めあてを確認する。

めあて カレンダーの数の性質を見つけ,それが成り立つ理由

を説明しよう。

○どのような性質があるか考えさせ,発表させる。

予想される答え

・カレンダーで縦に並んだ3つの数の和は真ん中の数の3倍に

なる。

・カレンダーで縦に並んだ3つの数の和は3の倍数になる。

○並んだ数が3の倍数になると答えた生徒には,3つの数のう

ちどれかの3倍になっていないか聞く。

○「カレンダーで縦に並んだ3つの数の和は真ん中の数の3倍

になる」について考えていくことを伝える。

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2.課題を確認

する。

4 課題 カレンダーで縦に並んだ3つの数の和は真ん中の数の

3倍になるのはなぜか

○いつでも成り立つことを説明するにはどうすれば良いか問

う。

予想される答え

・全部確かめる。 →もっと効率的なものがないか問う。

・文字を使って考える。

○説明の力を伸ばす基本形をもとに個人で説明を考えさせる。

数学班でホワイトボードに説明を書かせ,発表させる。

予想される生徒の答え(3パターン)

3.課題につい

て 方 針 を

立てる。

○説明の力を伸ばす基本形をもとに個人で説明を考えさせる。

数学班でホワイトボードに説明を書かせ,発表させる。

予想される生徒の答え(3パターン)

【技能】

カレンダーの数を

文字を用いた式で

表すことができ,

その式の意味を読

み取ることができ

る。

(ワークシート)

4.生徒に規則

性 を 見 つ

けさせ,説

明 を 完 成

させる。

17 ○個人で規則性を見つけさせ,「~は…になる」の形で表現させ

る。その後,班で規則性を交流させ,考える規則性を決めさ

せる。

○各班(4人)で考えた規則性について考えさせ,説明の力を

伸ばす基本形を完成させる。

○各班の考えを書いたホワイトボードを黒板に掲示し発表させ

る。その説明で良いか,過不足はないかを問い考えの交流を

行わせる。

【見方や考え方】

カレンダーの数を

文字を用いて表現

したり,計算した

り,その意味を読

み取ったりして,

自分で見つけた規

則性が成り立つこ

との説明ができ

る。

(ワークシート)

5.振り返りを

する。

4 ○個人の考えていた説明を班での話し合いや交流をし,問題解

決をする過程で,友達に説明して分かってもらえた言葉や,

友達から印象に残った質問,気づいたところや,自分の説明に

足りなかったところを書かせて振り返りをする。

まとめ 縦に囲まれた3つの数の和を文字を使って表し,和

を計算すると(真ん中の数)×3となるからである。

方針 3 つの数を文字で表し計算していき,3✕(真ん中の数)の形に表せばよいで

す。

情報の

整理

3つの数のうち最も小

さい数をnとすると

3つの数は n,n+7,n+14

と表すことができる

3つの数のうち真ん中

の数をnとすると

3つの数は n-7,n,n+7と

表すことができる

3つの数のうち最も大

きい数をnとすると

3つの数は n-14,n-7,n

と表すことができる 答えにつ

ながる計

算や説明

n+(n+7)+(n+14)

=3(n+7)

n+7は真ん中の数

3(n+7)は真ん中の数の

3 倍である。

(n-7)+n+(n+7)

=3n

nは真ん中の数なので

3nは真ん中の数の 3倍で

ある。

(n-14)+(n-7)+n

=3(n-7)

n-7は整数なので 3(n-7)

は真ん中の数の 3 倍であ

る。

答え カレンダーで縦に 3つ囲まれた数の和は真ん中の数の 3倍になる

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板書計画

授業の様子 生徒の反応

グループの代表者がどのように書いたのか

発表し,説明に過不足がないか確認する。

グループの中で交流することにより,

自分の記述に不足する部分はないか確

認することができた。

「説明する力を伸ばす基本形」を使っ

て説明することができた。

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(2.研究2年目の取組)

④1年生 2章「文字と式」 〔理由の説明〕

第1学年 数学科学習指導案 平成 30年 9月 20日(木)

日田市立東部中学校 1年 1組 25名

指導者 佐藤武吉

1.単元名 2章 文字と式

2.単元設定の理由

小学校では第 4 学年までに数量の関係や法則を数の式やことばの式で簡潔に表したり,式の意味を読

んだりすることや,公式を用いることができるようになっている。また,第 5学年では簡単な式で表され

ている関係について,その関係の見方や調べ方を学び,第 6学年では数量を表す言葉や□,△などの代わ

りに aや xなどの文字を用いて式に表したり,文字に数を当てはめて調べたりすることを学習している。

文字や文字式を用いることの意義は,数量やその関係を簡潔・明瞭に,しかも一般的に表現し,その後

目的に合うように形式的に処理できるようにすることである。これらを踏まえ,本単元では今後の数学の

学習全般に関わる基礎的な知識及び技能の習得を図るこ

とはもちろんだが,文字を使って数量の関係や法則など

を式に表したり,式の意味を読み取ったりする中で,文

字を使う有用性を知ることができるようにする。

本学級の生徒は,活発に発言・発表する生徒と静かに

授業に取り組む生徒が二極化している様子が見られる。

しかし,ペア・グループ学習や学び合い学習の場を設定

すると,自分の意見を述べたりわかっていることを教え

あったりすることができる。

1学期末に行った数学の学習に関わるアンケートで

は,数学の勉強がいやだと思う生徒と授業内容に難しさを感じている生徒が一定数いるが,全員が数学の

勉強は大切で,将来社会に出た時に役に立つと思うと答えた。数学は苦手だが,自分の将来のためには大

切だと考えて取り組んでいることがわかる。また,夏休みの課題テストにおいて単元ごとの平均正答率を

分析すると,「正負の数」に比べ「文字と式」の正答率が低いことがわかった。評価の観点別に見ると,

「文字と式」の中でも見方や考え方に関する正答率が非常に低いことが明らかになった。

単元の指導にあたっては,身の回りの簡単な事象を扱い具体的な数値の式の構造を考える中で一般的

な文字の式を導いたり,文字の式を具体的な場面を考え読み解いたりと,生徒の思考過程を考慮して十分

な理解が得られるよう,具体と抽象を行き来する丁寧な指導を心がけたい。

本時の指導においても,事象の中の数量の関係や法則などを見いだす場面では,いくつかの具体例で確

かめさせ,数量の関係を帰納的に見つけさせる。そして,文字を用いた式に表す場面では,まず,数量の

関係を具体的な数の式で表させ,次に文字を用いた式で表させるというスモールステップで指導する。終

末の意見交流の場面では,図と言葉と文字を用いた式を関連付ける等させながら,説明することができる

ようにさせたい。

質問項目 肯定的回答

数学の勉強は好きですか 63%

数学の授業内容はよく分かりますか 91%

数学の勉強は大切だと思いますか 100%

数学の授業で学習したことは,将来,社

会に出たときに役に立つと思いますか 100%

分類 平均正答率

単元 正負の数 74%

文字と式 47%

「文字と式」

の評価の観点

知識・理解 67%

技能 39%

見方や考え方 19%

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この過程で「説明する力を伸ばす基本形」を用いる。「方針を明らかにする」「情報を整理する」「整理

した数値を計算する」「最終的な答えを求め記述する」という思考の流れを,様々な数学の課題を解く際

に設定し,考える際の指針とするものである。既習事項を活用する力や,自分の考えを説明,記述する力

が必要とされるこれからの社会に対応するために,本校の研究の柱の一つとして取り入れている。

3.単元目標

文字を用いて数量の関係や法則などを式に表現したり式の意味を読み取ったりする能力を培うととも

に,文字を用いた式の計算ができるようにする。

4.評価規準

観点 評価規準

数学への

関心・意欲・態度

様々な事象を文字や文字を用いた式などで捉えたり,それらの性質や関係を見

いだしたりするなど,数学的に考え表現することに関心を持ち,意欲的に数学

を問題の解決に活用して考えたり判断したりしようとしている。

数学的な

見方や考え方

文字や文字を用いた式などについての基礎的・基本的な知識及び技能を活用し

ながら,事象を見通しをもって論理的に考察し表現したり,その過程を振り返

って考えを深めたりするなど,数学的な見方や考え方を身に付けている。

数学的な技能

文字を用いた式で表現したり,その意味を読み取ったり,文字を用いた式で乗

法や除法を表したり,簡単な 1次式の加法と減法の計算をしたりするなど,技

能を身に付けている。

数量・図形などにつ

いての知識・理解 文字を用いることの必要性と意味などを理解し,知識を身に付けている。

5.単元の指導計画と評価について

(1)指導計画(16時間)

節 項 授業時間

1節 文字を使った式

1.文字の使用 2時間

2.文字を使った式の表し方 3時間

3.代入と式の値 1時間

2節 文字式の計算 1.1 次式の計算 6時間

3節 文字式の利用

1.数量の表し方 3時間

2.文字を使った式の表し方 2時間

3.文字式の利用 2時間(本時 1/2)

第2章の振り返り,検証問題の実施 1時間

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(2)3節.3項の学習活動及び評価規準と評価方法

時 学習活動 数学への

関心・意欲・態度

数学的な

見方や考え方 数学的な技能

数量・図形などにつ

いての知識・理解

正方形の 1 つの辺にn

人配置する場合,全部で

何人必要になるか表す

式をどのように求めた

のかをペア活動で説明

する。

自分の考えを持

ち,求め方を説

明する(記述す

る)ことができ

ている。

5.本時案

(1)題目 文字式の利用

(2)主眼 正方形の応援隊形を作るため1辺にn人配置するときに必要な人数の求め方を,説明する力

を伸ばす基本形を使うことにより,説明することができる。

(4)展開

学習活動 配

時 指導上の留意点・支援 評価・備考

1.本時めあてと問題

を確認する。

15 ○本時のめあてを提示し,確認させる。

めあて 正方形の応援隊形をつくるために必要な人数の求め方を,

他の人に説明できるようになろう。

○問1を提示し,設定場面を確認させる。

問1 白団では,東翔祭の応援合戦で正方形の応援隊形を作ること

にした。最初は,「1つの辺に5人配置するので,16人必要。」

ということだったが,人数が少なすぎるので,「1つの辺に

10人ずつ配置する。」ということになった。この場合,全部

で何人必要になるか求めなさい。

○1辺に5人配置する場合の人数を確認させる。

○ワークシートに言葉や数,文字,式,図等をかき込ませ,1辺に1

0人配置する場合の人数を求めさせる。

〈生徒の予想〉・10×4-4=36 ・9×4=36 ・8×4+4=36 等

○自分の求め方をペアの人とお互い説明し合わせる。

個→ペア

2.本時の課題を確認

し,問題を解決す

る。

20

○問2を提示し,問題内容を確認させる。

問2 1つの辺にn人配置する場合,全部で何人必要になるかを表

す式を求めなさい。

○本時の課題を確認させる。

課題 自分の考えた求め方を,他の人に上手に説明するにはどうす

ればよいだろうか。

「努力を要する

状況の生徒」に

は,ヒントカード

を与える。

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3.本時のまとめを確

認する。

4.本時の学習の振り

返りをする。

10

5

○「説明する力を伸ばす基本形」のワークシートを使い,考えを整理

させる。

方針 どんな囲み方をするのか決める。

情報の

整理

・囲んでいる部分はいくつあるか。

・囲んでいない部分や,重なっている部分は

いくつあるか。 等を確認する。

答えにつながる

計算や説明

nを使って囲んでいる部分を表し,囲んでい

ない部分や重なっている部分を考え,式をつ

くる。

答え ×の記号を省略し,考え方がわかるよう文字

式で表す。

○説明する際に必要な言葉を書き込ませ,他の人に説明する準備を

させる。

〈生徒の予想〉

・4n-4 囲んだ部分の人数がn人で,それが4列ある。

重なった部分が 4ヵ所あるので,4をひく。

・4(n-2)+4 四方の隅を除いて囲んだ部分の人数が(n-2)人で,それが 4列

ある。余った四方の隅の 4人をたす。

○自分の求め方をペアの人とお互い説明し合わせる。自分とはちが

う求め方をしている場合は,ワークシートに記入させる。

○学級全体で求め方を交流させる。

○人数を求める式が,正しいのかを確認させる。

・どの求め方であっても,計算すると 4n-4と表せる。

○本時のまとめを確認させる。

まとめ ① 図を利用し,囲んだ部分をnを使って表す。

② 囲んだ部分と,囲んでない部分や重なっている部分が

いくつあるか考慮し文字式に表す。

③ ①②の内容を入れて説明する。

○自分なりの考えが持てたかどうか,持てた場合はペアの生徒にう

まく伝わったのかどうかを振り返らせる。持てなかった場合は,ペ

アの生徒のどんな説明がわかりやすかったのかを振り返らせる。

・1つの辺にn人配置する場合を式に表すと,1つの辺の人数を変え

てもその式に数を代入すれば,容易に求めることができることも

確認する。(文字式の有用性を感じさせる)

「十分満足でき

る状況」の生徒に

は,他の考え方を

考えさせる。

【数学的な見方

や考え方】自分の

考えを持ち,求め

方を説明する(記

述する)ことがで

きている。

個→ペア

全体

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≪板書計画≫ 1年生 第2章 「文字と式(文字式の利用)」 平成 30年 9月 20日(木)

日田市立東部中学校 1 年 1組

めあて 正方形の応援隊形をつくるために必要な人数の

求め方を、他の人に説明できるようになろう。

問1 白団では、東翔祭の応援合戦で正方形の応援隊形を作ること

にした。最初は、「1つの辺に5人配置するので、16人必要。」

ということだったが、人数が少なすぎるので、「1つの辺に1

0人ずつ配置する。」ということになった。この場合、全部で

何人必要になるか求めなさい。

・10×4-4=36 ・9×4=36 ・8×4+4=36

問2 1つの辺にn人配置する場合、全部で何人必要になるかを

表す式を求めなさい。

課題 自分の考えた求め方を、他の人に上手に説明するにはどうす

ればよいだろうか。

方針 どんな囲み方をするのか決める。

情報の

整理

・囲んでいる部分はいくつあるか。

・囲んでいない部分や、重なっている部分は

いくつあるか。 等を確認する。

答えにつながる

計算や説明

nを使って囲んでいる部分を表し、囲んでいない部分や重なって

いる部分を考え、式をつくる。

答え ×の記号を省略し、考え方がわかるよう文字式で表す。

「基本形」をもとに自分の求め方を整理しよう。

4n-4 囲んだ部分の人数がn人で、それが4列ある。

重なった部分が 4 ヵ所あるので、4 をひく。

4(n-2)+4 四方の隅を除いて囲んだ部分の人数が

(n-2)人で、それが 4 列ある。

余った四方の隅の 4 人をたす。

4(n-1) 囲んだ部分の人数が(n-1)人で、

それが4列ある。

確認:どの求め方も計算すると、最終的に 4n-4になる。

まとめ ① 図を利用し、囲んだ部分をnを使って表す。

② 囲んだ部分と、囲んでない部分や重なっている部分が

いくつあるか考慮し文字式に表す。

③ ①②の内容を入れて説明する。

板書計画

授業の様子 生徒の反応

説明の見通しをもたせるために,どんな囲み

方があるかを考えさせた。

「説明する力を伸ばす基本形」のワ

ークシートを利用し,どのように考

えて答えを導いたのか説明できるよ

うになった。

多くの生徒が「説明する力を伸ばす

基本形」を使った方が上手く説明で

きた,という感想をもった。

このように発展的に考える生徒もい

た。

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(2.研究2年目の取組)

⑤1年生 4章「比例と反比例」 〔方法・手順の説明〕

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板書計画

授業の様子 生徒の反応

前時に作成したガソリン車とハイブ

リッド車のグラフを1つにまとめる

と,ガソリン料金の差が分かること

に気づいた。

個で考えたことを持ち寄り,グルー

プで話し合う。説明する際にどうす

ればうまく伝わるのか,足りない言

葉は何かについて練り合った。

グループで練り合った説明を全体で

交流し,「x=900のときのy座標

の差を求める」といった数学用語を

適切に使うように確認できた。

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(2.研究2年目の取組)

⑥2年生 4章「平行と合同」 〔理由の説明〕

この授業の中に出てくる「凸角と

凹角」については、生徒との確認で

「図形の内側から見て外側に飛び出

た角を凸角。図形の外側から見て内

側に引っ込んだ角を凹角。」として、

授業を行った。

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板書計画

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板書計画

授業の様子 生徒の反応

生徒から

「∠a+∠b+∠d+∠f=∠c+∠e」

という予想が出てきた。

これをもとに、課題を設定した。

課題解決に向けて,既習の図形の性

質をどう使うのか,グループで考察

を進めた。

補助線を引き,くさび形が 2 つある

ことに気付いたグループの一つは,

このようにくさび形の性質を使って

説明した。

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【単元の指導計画】

〔1年生〕

1 章 「正負の数」

2 章 「文字と式」

3 章 「方程式」

4 章 「比例と反比例」

5 章 「平面図形」

6 章 「空間図形」

7 章 「資料の分析と活用」

〔2年生〕

1 章 「式の計算」

2 章 「連立方程式」

3 章 「1次関数」

4 章 「平行と合同」

5 章 「三角形と四角形」

6 章 「確率」