第90号 発行日:令和元年9月18日 発行者:医学研究科広報委員会 印 刷:やまと印刷株式会社 題字 前弘前大学長 遠藤正彦氏筆 1面:「フレイル予防医学研究講座」開設にあたって/「メ タボロミクスイノベーション学講座」開設にあたって :医学研究科長・医学部長寄稿/医学部附属病院長寄稿/ 教授就任の挨拶/平成30年度最終講義 3面:日本神経病 理学会賞を受賞して/ Best Poster Award 受賞して 4面日本内分泌学会学術総会会長賞を受賞して/学生セッション で第1位に選考されて/学生優秀演題賞を受賞して 5面学生・初期研修医Award最優秀賞を受賞して/岩木健康増 進プロジェクト(プロジェクト健診)といきいき健診を終え て 6面:第103回弘前医学会総会/優秀論文賞を受賞して /鵬桜会総会に出席して 7面:FD講演会大学の「見える 化」/入試専門会報告/実験動物慰霊式 8面:成績優秀学 生表彰/青森医学振興会主催市民健康づくり講演会を開催し て/外科手術体験セミナー in五所川原を開催して 9面: 令和元年度科研費補助金採択状況/育成疾患克服等総合研究 事業AMED-BIRTHDAY採択を受けて/小林がん学術振興 会研究助成金採択 10 面:学生だより 弘前大学に入学し て、BSLについて 11 面:学生だより クリクラを終えて /写真コラム 12 面:大学院生だより/若手教員・医師だ より/青森あずまし温泉紀行 13 面:留学だより/ 14 面研究室紹介 法医学講座、消化器外科学講座 15 面:部活 動紹介 硬式庭球部男子部、硬式庭球部女子部/テレビに出 演して 16 面:書籍のおしらせ/人事異動 殿寿 講座概要 「フレイル予防医学研究講座」 共同研究講座 特任教授:中 路 重 之 教  授:伊 東   健 教  授:井 原 一 成 助  教:沢 田 かほり 期  間:2019 年 5 月 1 日~ 2022 年 4 月 30 日 共同研究講座 講座概要 「メタボロミクスイノベーション学講座」 特任教授:中 路 重 之 教  授:伊 東   健 教  授:井 原 一 成 助  教:沢 田 かほり 期  間:2019 年 5 月 1 日~ 2021 年 4 月 30 日

「フレイル予防医学研究講座」...診療講師 板谷 博幸 心臓血管外科 令和元年6月1日~令和4年5月31日 診療講師 工藤 隆司 麻酔科 令和元年6月1日~令和4年5月31日

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Page 1: 「フレイル予防医学研究講座」...診療講師 板谷 博幸 心臓血管外科 令和元年6月1日~令和4年5月31日 診療講師 工藤 隆司 麻酔科 令和元年6月1日~令和4年5月31日

第90号発行日:令和元年9月18日

発行者:医学研究科広報委員会

印 刷:やまと印刷株式会社題字 前弘前大学長 遠藤正彦氏筆

1面:「フレイル予防医学研究講座」開設にあたって/「メタボロミクスイノベーション学講座」開設にあたって 2面:医学研究科長・医学部長寄稿/医学部附属病院長寄稿/教授就任の挨拶/平成30年度最終講義 3面:日本神経病理学会賞を受賞して/ Best Poster Award受賞して 4面:日本内分泌学会学術総会会長賞を受賞して/学生セッションで第1位に選考されて/学生優秀演題賞を受賞して 5面:学生・初期研修医Award最優秀賞を受賞して/岩木健康増進プロジェクト(プロジェクト健診)といきいき健診を終えて 6面:第103回弘前医学会総会/優秀論文賞を受賞して/鵬桜会総会に出席して 7面:FD講演会大学の「見える化」/入試専門会報告/実験動物慰霊式 8面:成績優秀学生表彰/青森医学振興会主催市民健康づくり講演会を開催して/外科手術体験セミナー in五所川原を開催して 9面:令和元年度科研費補助金採択状況/育成疾患克服等総合研究事業AMED-BIRTHDAY採択を受けて/小林がん学術振興会研究助成金採択 10面:学生だより 弘前大学に入学して、BSLについて 11面:学生だより クリクラを終えて/写真コラム 12面:大学院生だより/若手教員・医師だより/青森あずまし温泉紀行 13面:留学だより/ 14面:研究室紹介 法医学講座、消化器外科学講座 15面:部活動紹介 硬式庭球部男子部、硬式庭球部女子部/テレビに出演して 16面:書籍のおしらせ/人事異動

 

さる五月二十九日、医学

研究科大会議室にて、共同

研究講座「フレイル予防医

学研究講座」の開講式(二

〇一九年五月一日開講)が

執り行われました(写真参

照)。出席者は、企業側(株

式会社ファンケル)から

は、炭田康史様(取締役執

行役員総合研究所長)、由

井慶殿(同総合研究所ヘル

スサイエンス研究センター

長)、伊藤幸彦様(同総合

研究所ヘルスサイエンス研

究センター機能性評価グ

ループ課長)、坪川雅哉様

(同総合研究所ヘルスサイ

エンス研究センター機能性

評価グループ)、弘前大学

からは、若林孝一医学研究

科長、井原一成社会医学講

座教授、村下公一COI教

授、そして私(中路)でし

た。

 

フレイル(虚弱状態)と

は医学的には比較的新しい

言葉です。近年の高齢化社

会の到来に伴って全身の機

能低下とその対策の重要性

が注目され定着しました。

最初は、全身の運動器の機

能低下を指すことが多かっ

たのですが、最近では歯科

領域でも口腔フレイルと言

う言葉が取りざたされるよ

うになり、多くの分野の研

究者から熱い視線を浴びて

います。

 

㈱ファンケルは従来より

化粧品製造が主力だったの

ですが、近年は健康食品を

はじめ健康分野にもビジネ

スの幅を広げています。と

くに、フレイルとそれを取

り囲む多くのファクターと

の関係を証明することは、

健康寿命延伸の実現に不可

欠であります。整形外科領

域、脳科学領域、口腔領域

や全身の機能を評価してい

る岩木健康増進プロジェク

トを用いたビッグデータを

用いて解析できることで、

全身の機能・健康との関連

性の中でフレイルの意義が

明らかにできると期待され

ます。

 

とりあえず、一年目の岩

木健康増進プロジェクトで

は、理化学研究所も加わっ

て自律神経機能(交感神経

系と副交感神経系のバラン

スとトータルパワー)を測

定するところから出発する

ことになりました。

 

この分野には詳細不明の

部分が多く存在します。そ

れだけに大きな可能性を有

した共同研究講座だとも言

えます。今後とも、医学部

「フレイル予防医学研究講座」

開設にあたって

の多くの講座の皆様にご助

言いただくことも多いかと

思います。なにとぞご支援

のほどをお願い申し上げま

す。講座概要

「フレイル予防医学研究講座」

 

さる六月七日、医学研究

科大会議室にて、共同研究

講座「メタボロミクスイノ

ベーション学講座」の開講

式(二〇一九年五月一日

開講)が執り行われまし

た(写真参照)。出席者は、

企業側(ヒューマン・メタ

ボローム・テクノロジーズ

㈱)からは、菅野隆二様

(代表取締役社長)、橋爪克

仁様(取締役)、山本博之

様(研究開発本部開発1部

部長)、雀部賢治様(経営

管理本部IR・総務担当部

長)、弘前大学からは、佐

藤敬学長、若林孝一医学研

究科長、伊東健分子生体防

御学講座教授、井原一成社

会医学講座教授、村下公一

COI教授、そして私(中

路)でした。

 

血液メタボローム測定と

は血液内の多くの代謝物を

測定して、その各々や全体

の健康意義の解明につなげ

ようとするものです。しか

し、その意義はまだ十分に

解明されておらず、逆に言

えばその分大きな可能性を

孕む領域でもあります。岩

木健康増進プロジェクトの

ビッグデータは超多項目を

カバーしておりその意味で

は、メタボローム解析の意

義を幅広く明らかにできる

最適のデータであるという

ことができます。

 

講座開設までの交流の道

のりは五年にもおよび、こ

うして今回共同研究講座開

設に至ったのは、メタボ

ローム解析意義の新知見に

対する両者の渇望が大き

かったのは勿論ですが、健

康づくりそのものやそれを

通じての社会貢献という概

念が見事に一致したためで

す。さらには、弘前大学C

OI拠点の統計解析のド

リームチームとの連携が期

待されます。

 

ヒューマン・メタボロー

ム・テクノロジーズ㈱はメ

タボローム解析の聖地とも

呼ばれる山形県鶴岡市に

十五年前に誕生したベン

チャー企業です。実は、こ

のようなベンチャー企業が

共同研究講座を開設するこ

とは非常にまれなことであ

りますが、逆にこの点にこ

そ同社の強い意気込みを感

じることができます。弘前

大学としても何とか応えた

いと意気込んでおります。

 

メタボローム解析の意義

を解明すれば医学の進歩に

大きな貢献ができると思い

ます。解析が多岐にわたる

分だけ多くの専門家のご支

援をいただく場面があると

思います。医学部の多くの

講座の皆様には本研究講座

を温かく見守っていただき

たくお願い申し上げます。

共同研究講座

フレイル予防学研究講座 特任教授 中 路 重 之

特任教授:中 路 重 之教  授:伊 東   健教  授:井 原 一 成助  教:沢 田 かほり期  間:2019年5月1日~ 2022年4月30日

「メタボロミクスイノベーション学講座」

開設にあたって

共同研究講座

メタボロミクスイノベーション学講座 特任教授 中 路 重 之

講座概要「メタボロミクスイノベーション学講座」

特任教授:中 路 重 之教  授:伊 東   健教  授:井 原 一 成助  教:沢 田 かほり期  間:2019年5月1日~ 2021年4月30日

Page 2: 「フレイル予防医学研究講座」...診療講師 板谷 博幸 心臓血管外科 令和元年6月1日~令和4年5月31日 診療講師 工藤 隆司 麻酔科 令和元年6月1日~令和4年5月31日

医学部ウォーカー第 90 号令和元年 9月 18 日 

かつて政治家を目指すた

めに必要なものは「地盤、

看板、かばん(資金)」と

言われました。芸の道で成

功するためには「運、鈍、

根」とも言います。ならば、

学問研究に必要なのは「環

境、研究費、アイデア」で

しょうか。今回は医学研究

科における研究環境や研究

費について考えてみたいと

思います。

 

医学研究科における研究

環境は以前に比べてよく

なっていると思います。健

康未来イノベーションセン

ターが平成三○年四月に完

成し、スーパーコンピュー

ター、次世代シーケンサー

が配備されました。さら

に、質量分析システムやリ

アルタイム形態観察装置、

三次元画像処理ワークス

テーションなど最新の研究

設備を備え、生体試料の測

定、分析を行うことができ

るようになりました。CO

I関連の共同研究講座も現

在十三を数え、複数の講座

と企業との連携が進行しつ

つあります。この秋からは

動物実験施設の改修工事が

スタートし、二年後には完

了の予定です。また、臨床

研究棟を含めた附属病院の

再開発計画もスタートしま

した。

 

現在、一講座あたりの研

研究を進めるために

医学研究科長 若 林 孝 一

医 学 研 究 科 長医 学 部 長 寄 稿

究費(いわゆる校費)は百

数十万円であり、医学研究

を積極的に押し進めるため

の金額としては必ずしも充

分ではないと思います。そ

のためにも、科学研究費を

含めた外部資金を獲得する

ことが必要になります。特

に競争的研究資金を継続し

て獲得する、あるいは、よ

り大型の研究費を獲得する

ことは研究者としての実績

を伸ばすことであり、評価

の一指標ともなっています。

 「田舎の学問より京の昼

寝」ということわざがあり

ます。今は研究環境という

点では都会も地方も差はな

いのであり、要はいかにそ

の気になってやるかでしょ

う。私は弘前を田舎だとは

思っていませんが、弘前に

競争相手がいないくらいに

なって、世界と勝負するよ

うになってほしいと思いま

す。都会の人が通勤に三時

間もかけていることを思え

ば、我々は二時間は余分に

 

医学部附属病院の広報誌

「南塘だより」九十三号で、

附属病院の新病棟整備につ

いて紹介した。今回の新病

棟の新築は、その後の中央

診療棟や外来棟の再整備へ

と続く再開発(第三次)の

スタートでもある。本学

部・本院は、本町五三番地

および在府町五番地という

現状の敷地内で、再開発を

今後も繰り返すことにな

る。本学部・本院の再開発

の歴史を振り返ってみる。

 

昭和十九年、第二次世界

大戦の末期、青森医学専門

学校が青森市に設立され

医学部附属病院の第三次再開発

附属病院長 福 田 眞 作

た。わずか一年後、昭和二

十年の戦災によって校舎が

焼失し、廃校寸前であった

青森医専は、弘前市への移

転を条件に医科大学として

承認(昭和二十三年三月、

東北で二番目)され、今日

の弘前大学医学部、医学部

附属病院への道が開かれ、

そして昭和二十六年一月、

弘前大学医学部の開設が認

可された。医科大学は、旧

朝陽小学校校舎を医学校と

し、隣接する市立病院を附

属病院とするという粗末な

施設整備での船出であっ

た。昭和三十二年の第一病

棟新築着工を皮切りに、昭

和四十六年の臨床研究棟、

附属病院外来診療棟の竣工

をもって、約十五年間の第

一次再開発が終了した。

 

第一病棟が稼働して三十

年、老朽化が進むこの第一

病棟の新築が計画され、昭

和六十年に第二次病院再開

発がスタートした。第一病

棟(平成六十三年竣工)に

始まり、平成二十三年の病

院正面駐車場の完成によっ

て附属病院再開発(第二

次)が終了し、現在に至っ

ている。この間、医学部お

よび臨床研究棟では、改修

工事が実施された。

 

第一病棟が竣工して三十

年以上が経過し、再び、本

院は病院再開発(第三次)

に着手する。「今後も、こ

の狭い敷地の中で、施設環

境を整備し続けることがで

きること」を大前提とし

て、本院経営企画課、本

部施設環境部および文科

省、三者で数年間にわたり

協議を重ねた結果、今年度

の概算要求にて新病棟建設

のための施設整備費が承認

された。国の財政状況もあ

り、新病棟の新築には支援

 

令和元年七月一日付けで

放射線診断学講座教授を拝

命いたしました。長い歴史

を誇る放射線学講座の一翼

を担えることは身に余る光

栄であり、診断学講座の創

設にご尽力下さった皆様に

この場をお借りし感謝申し

上げます。 

 

私は、小説「青春の門」

で知られる筑豊炭田のある

福岡県田川郡に生まれ、ア

メリカ留学を除き、福岡県

を離れることなく暮らして

きました。私が、平成八年

に卒業しました産業医科大

学は、松本清張の生誕地、

競輪・パンチパーマ・焼き

うどん発祥の地でもある福

岡県北九州市にあり、労働

者の健康増進を目的に創立

されました。勤勉とは言い

難い学生生活でしたが、同

大学の放射線科学教室の門

を叩いてからは、初代教授

である中田

肇先生より胸

部を中心とした画像診断を

学び、教室を引き継がれた

興梠征典教授からはIV

R(画像下治療)と神経放

射線学について指導を受け

ました。厳しい修行の日々

でしたが、治療効果をダイ

レクトに感じられるIV

R、形態学のみならず、機

能、時間的な軸も駆使し病

態にせまる画像診断学の魅

力にも助けられ、今日まで

楽しく学んでまいりまし

た。臨床研究では、血管造

影画像を3次元的に観察で

きるコーンビームCTをI

VR領域、特に肝腫瘍や頭

頸部腫瘍における選択的動

注療法へ応用し、腫瘍の検

出能の向上など、その有用

性を報告しました。MRI

研究では、転移性脳腫瘍の

評価について、本学でも採

用されている微小病変も検

出可能な高分解能撮像法を

提案しました。最近では、

脳内鉄の分布から神経変性

疾患を評価するMRI撮像

法の開発や、画像統計解析

を用いて神経精神疾患にお

ける脳構造変化の検出など

を行っています。特に後者

は、撮像後のMRIデータ

でも適応できますので、画

像研究をお考えの際はお気

軽に相談下さい。

 

優先課題に、幅広い知識

をもった放射線診断専門医

の育成を考えています。現

在の青森県の放射線科医

の充足率は十分とはいえ

ず、県内で検査された多く

の画像がインターネットを

介して県外の放射線科医に

より診断されています。一

朝一夕に解決できる課題で

はありませんが、良質の教

育を通して、放射線学の魅

力を伝えていくことが解決

策の一つであると信じてい

ます。私も発展途上の身

でありますので、「共に学

ぶ」を教育のモットーに、

人材の発掘と育成に尽力し

たいと思います。また、優

れた放射線診断医は、診療

科の先生方により育てられ

 

平成三十年度の最終講義

が、平成三十一年二月十八

日に基礎大講堂にて行われ

ました。今年度で退任され

る教授は一名で、東海林幹

夫教授(脳神経内科学講

座)が最終講義「弘前大学

脳神経内科学の展開」を担

当されました。

勉強できます(もちろん遊

ぶことも可)。

 

この十一月三○日には第

一回弘前メディカルサイエ

ンスフォーラム「知の結

集、融合、そして創造的変

革へ」が富田教授を実行委

員長として開催されます。

基礎と臨床との融合、学内

(他学部)、学外、国外と

の共同研究の推進をテーマ

の一つとして企画されまし

た。また、学内の教授には

研究の進め方についてご講

演をいただく予定でおりま

す。学生や研修医の方には

ぜひ会場に足を運んでいた

だきたいですし、若手研究

者の発表、交流の場となる

ことを願っています。

を受けられるが、関連する

すべての事業に国の支援を

受けることはできない。仮

設講義棟の建設(済み)と

臨床講義棟の取り壊し、臨

床研究棟の取り壊しと現第

一病棟の臨床研究棟への改

修工事については、計画で

はいずれも病院の自己財源

で実施することになってい

る。この自己財源の捻出に

あたっては、本院の順調な

経営状況が今後も維持され

ることが不可欠となる。ま

た、これから始まる本格工

事の際には、駐車場の不

足、現臨床研究棟および医

学部から外来棟・病棟への

仮設連絡通路など、長期に

わたり多大なるご迷惑をお

かけすることになる。本学

部・本院の職員の皆様方の

より一層のご理解とご協力

をお願いしたい。

ます。是非、画像診断、検

査、治療への質問や要望を

ダイレクトにお伝えくださ

い。これに対応すること

は、我々のスキルアップだ

けでなく、最新の画像技術

の導入、さらには放射線検

査部門の施設整備につなが

る貴重な機会となります。

 

故郷のシンボルである香

春岳に雪は積もりません。

ただ、香春岳は結晶質石灰

岩からなり、石灰石の採掘

で削られた山肌は白く、ま

るで雪山のようでした。初

めて弘前を訪れた時、まだ

名も知らない岩木山が目に

とまり、真の雪山の荘厳さ

に身震いしました。また同

時に、根拠のない自信と勇

気が温泉のように湧いてき

たことを覚えています。今

後は、この気持ちを根拠の

あるものにすべく、放射線

腫瘍学講座と密に連携し、

地域医療の発展に微力なが

ら努力していく所存です。

どうぞ皆様のご指導ご鞭撻

をよろしくお願いします。

学務委員長 鬼 島   宏(病理生命科学講座 教授)

平成30年度

最終講義東海林幹夫 教授(脳神経内科学講座)

(次ページへ続く)

放射線診断学講座 教授 掛 田 伸 吾

教授就任に際してのご挨拶

Page 3: 「フレイル予防医学研究講座」...診療講師 板谷 博幸 心臓血管外科 令和元年6月1日~令和4年5月31日 診療講師 工藤 隆司 麻酔科 令和元年6月1日~令和4年5月31日

医学部ウォーカー第 90 号 令和元年 9月 18 日(前ページより)

 

東海林先生は、平成十八

年一月一日に弘前大学に着

任されました。当時の弘前

大学医学部附属病院では神

経内科が独立した診療科に

なっておらず、その立ち上

げに尽力されました。附属

病院では、正統の神経内科

の診療や考え方を学生や教

室員に徹底することを目標

として、教育・診療に携わっ

たとのことです。在任され

た十年間には、神経内科領

域の中でも、特に認知症や

脊髄小脳変性症の診療に直

接寄与するのみならず、多

くの啓蒙活動にも精力的に

取り組み、コホート研究へ

の参加・臨床治験の推進も

行ったそうです。研究面で

は、アルツハイマー病のモ

デルマウスによる病態解析

から、治療薬研究に移行す

るなどの多大な業績を重ね

られました。研究はさらに

国際共同研究へと発展し、

弘前大学が世界的な拠点大

学となるまでに発展したそ

うです。

 

このように、神経内科学

の分野において、新たな教

育・研究・診療の専門領域

を立ち上げ、発展させてき

たことが示された、充実か

つ圧巻の講義でした。講義

終了後には多数の花束贈呈

があり、会場を埋めた聴衆

から大きな拍手が送られま

した。最後に医学研究科長

から謝辞があり、最終講義

の幕が閉じられました。

 

弘前大学医学研究科の教

育研究の発展、並びに青森

県を中心とした神経内科診

療に尽力されてきました東

海林先生に感謝を申し上げ

ますとともに、今後とも医

学研究科にお力添えをいた

だきますよう、お願いを申

し上げます。

 

このたび日本神経病理学

会賞を受賞することが決定

し、令和元年七月十四~十

六日に名古屋市で開催され

た第六十回日本神経病理学

会総会において授賞式が行

われました。この賞は二〇

一八年の一年間に日本神経

病理学会の機関誌である

Neuropathology

に掲載され

た全論文から選考委員会の

審査を経て選出されたもの

で、平成二十七年にも同様

の賞をいただいており、今

回で二回目の受賞となりま

した。

 

受賞論文は、「Colocal-

ization of Bunia bodies and T

DP-43 inclusions in a case

of sporadic amyotrophic

lateral sclerosis with Lew

y body-like hyaline inclusions

です。筋萎縮性側索硬化

症(ALS)は上位および

下位運動神経細胞が進行性

に変性する疾患であり、核

内に存在し転写の制御に関

わるT

DP-43

が異常な修飾

を受け細胞質内に蓄積する

ことが病態に大きく関わり

ます。また、残存神経細胞

にブニナ小体、T

DP-43

性封入体(スケイン様封入

体、円形封入体、レヴィ小

日本神経病理学会賞を受賞して

脳神経病理学講座 助教 三 木 康 生

第60回日本神経病理学会総会

体様封入体)を認めること

が病理学的特徴とされま

す。若林孝一教授、森文秋

准教授らは以前よりブニナ

小体とT

DP-43

封入体が同

一神経細胞内に共在するこ

とを観察してきましたが、

両者の間にどのような関係

があるのか充分に分かって

いませんでした。今回の論

文はT

DP-43

封入体の周辺

や辺縁部にブニナ小体が存

在し、T

DP-43

封入体の形

成過程に生じるいわば副産

物の様な構造物であること

を、免疫組織化学と電顕に

より明らかにしました。ス

ケイン様封入体がブニナ小

体を抱え込むように存在し

ている所見、円形封入体や

レヴィ小体様封入体の辺縁

部に小さなブニナ小体がい

くつも存在する所見を見つ

けた時は大変興奮しまし

た。

 

今回の受賞は、若林教授

はじめ教室員の先生方・ス

タッフのご指導があってこ

その受賞ですが、特に森准

教授のお導きがあってこそ

の受賞だと思っています。

今回の研究を通して情熱を

持ち研究を続けることがい

かに大切かということも併

せて学びました。また、病

理生命科学講座

鬼島宏教

授、脳神経内科学講座東

海林幹夫前教

授、現在ジョ

ンズ・ホプキ

ンス大学に留

学中の吉澤忠

司先生にも大

変お世話にな

りました。こ

Best Poster A

ward

受賞して

消化器外科学講座 若 狭 悠 介

28th Annual Conference Asian Pacific Association for the Study of the Liver

 

二〇一九年二月二十日~

二十四日にフィリピンの

マニラで開催されました

APA

SL 2019

(28th A

nnual C

onference of the Asian

Pacific Association for T

he

Study of the Liver

)でBest

Poster Aw

ard

を受賞させ

ていただきましたので報告

いたします。

 「APASL」とは「T

he A

sian Pacific Association

for the Study of the Liver

(アジア太平洋肝臓学会)」

の略語であり、肝臓学研究

に特化した学会として知ら

れております。二十八回

目の開催となった今回の

定期集会でこのような名

誉ある賞を受賞できたこ

とは大変光栄に思います。

受賞した演題は「D

elay in hepatocyte proliferation and prostaglandin D

2 synthase expression for cholestasis due to endotoxin during partial hepatectom

y in rats

」です。今回は私の大

学院研究である、大量肝切

除後に感染が伴った場合に

高ビリルビン血症が遷延し

急性肝不全を発症する病態

と、それに伴い肝再生が遅

延する病態についての内容

をまとめました。

 

大量肝切除後感染性肝

不全ラットモデルを作成

し、肝切除単独群と肝切除

+Lipopolysaccharide

(L

PS)投与群における肝細

胞膜上の有機アニオントラ

ンスポーター(ABCト

ランスポーター)に着目

し、それぞれの遺伝子発現

を解析しました。結果で

すが、RT

-PCR

ではABC

トランスポーターについて

は肝切除単独群と肝切除+

LPS投与群と比較して統

計学的有意差は認められま

せんでした。一方で、DN

A複製に関与するRrm

2

よびPcna

において、70%

肝切除群と比較してLPS

+70%肝切除群では発現の

ピークが遅延し、ピーク値

も低値であることが認めら

れました。免疫組織化学染

色では、リンパ球増殖に関

与するとされるプロスタグ

ランジン系酵素の一種であ

るPtgds2

がLPS+70%

の場をお借りしご指導頂い

た全ての先生方とスタッフ

にお礼申し上げます。今後

さらに研究に邁進していく

所存ですので、ご指導のほ

ど宜しくお願い申し上げま

す。

 

なお私は現在、英国留学

中で、残念ながら授賞式に

は出席できませんでした。

写真は現在お世話になって

いるクイーンスクエア・ブ

レインバンクです。ロンド

ンでは景観を維持するため

新しい建物を建てることが

制限されており、外観から

は研究所とは分かりづらい

です。

肝切除群の術後二十四時間

時点で肝細胞細胞質に強陽

性が確認され、時間経過と

共に染色性が漸減してい

くことが確認されました。

Ptgds2

の産物であるPGD

2

は抗腫瘍効果が知られてお

り、細胞増殖へ負の作用を

もたらすことが報告されて

います。大量肝切除後感染

性肝不全時の胆汁うっ滞は

有機アニオントランスポー

ター障害が原因ではなく、

Ptgds2

の発現増加に伴う

肝再生遅延により惹起され

る可能性が示唆されまし

た。Ptgds2

は肝切除後感

染性肝不全の病態における

key factor

となり得る可能

性があるため、今後も引き

続きPtgds2

が関与する病

態の解明に努めてまいりた

いです。

 

最後になりますが、指導

医であります木村憲央先

生、実験・研究のご指導を

いただきましたゲノム生化

学講座の𡈽田成紀前教授を

はじめとするスタッフの

方々、そして袴田健一教授

に心より厚く御礼申し上げ

ます。本当にありがとうご

ざいました。

Page 4: 「フレイル予防医学研究講座」...診療講師 板谷 博幸 心臓血管外科 令和元年6月1日~令和4年5月31日 診療講師 工藤 隆司 麻酔科 令和元年6月1日~令和4年5月31日

医学部ウォーカー第 90 号令和元年 9月 18 日 

去る二〇一九年五月、「続

発性副腎不全症診断におけ

る負荷試験結果についての

検討」について、第九十二

回日本内分泌学会学術総会

会長賞を拝受しましたので

ご報告申し上げます。

 

副腎不全症は、内分泌領

域のなかでもとりわけ重要

といえる一病態です。ク

リーゼの際に致命的となり

得るだけでなく、副腎皮質

機能低下症の原因や程度を

正確に診断し適切に治療す

ることは、生命予後とQO

Lの改善に肝要です。また

潜在的な機能低下において

は、日常生活では無症候で

も突然有事の際に顕在化し

てクリーゼを発症する可能

性があり、予期して妥当な

補充をすることで未然に防

ぐことができます。

 

一方で、「副腎皮質の機

能を如何に評価するか」「何

を以て機能正常とするか」

は、世界中で熱い議論が重

ね続けられている究極の命

題です。我々は、採血や蓄

尿、そして負荷試験を中心

とした内分泌機能検査を軸

に診断を進めますが、年

齢、性別、人種、時間帯(日

内・日差変動)、摂食、ス

トレスなど多因子に影響さ

れるホルモンに、平明な「基

準値」は存在しません。さ

らにアッセイ間の差異、各

国家をとりまく医療経済事

情なども加わります。

 

本邦では、二〇一五年に

副腎ホルモン産生異常に関

する調査研究班が「副腎不

全症の診断フローチャー

ト」を発表しました。これ

は、欧米のガイドラインや

日本人に関する既報を参考

に考案されたものですが、

当科での実臨床とは検査の

優先性が異なる部分があり

ました。

 

今回は、視床下部・下垂

体性の続発性副腎不全が疑

われる際に、前述フロー

チャートで先行が推奨され

ている迅速ACTH試験で

はなく、CRH負荷試験を

先行した当科症例につい

て、そのACTH頂値を最

初の基準に用いて分類を試

み新フローチャート案に示

して報告しました。現行基

準に異を唱えたとも捉えら

れかねない内容でしたが、

実際に作成に携われた先生

方を含め前向きなご意見を

頂戴し、驚くことに賞まで

いただくことができまし

た。

 

このような栄誉ある賞を

頂戴したことは、入局の春

に古今東西の諸先輩方に背

中を押していただいたよう

な気持ちで、今後の医師人

生においても励みになるこ

と間違いなく、より一層身

の引き締まる思いでおりま

す。微小な単位のさまざま

なホルモンが山谷を成しな

がら細やかに互いに制御し

合いヒトの一生を紡ぐ美し

さや、その歯車の一片がわ

ずかに狂うだけで多様な病

となって姿を現す内分泌の

不思議に毎日魅了されなが

ら過ごせる幸せをこの機会

にひとしおありがたく感じ

ています。

 

最後に、我が道を行く

私にいつも寛大な大門眞

教授や当講座の先生方、

外来や病棟スタッフの皆

様、授業や実習、初期研

修からお世話になってい

る他講座の先生方、試行

錯誤する主治医を見守っ

てくれる過去・現在・未

来の患者様方、そして今

回も含め毎度身の程知ら

ずで小生意気な私に耳を

傾け熱心にご指導くださ

る髙安忍先生に心より御

礼申し上げます。

 

今後も日々無知の知を得

ながら、基礎と臨床の循環

を目指して研鑽を積んで参

ります。皆様、これからも

発人深省賜りますようどう

ぞよろしくお願い申し上げ

ます。

 

この度は第百八回日本病

理学会総会にて学生優秀演

題賞をいただきまして、大

変有り難く思っておりま

す。私は、右記の学会にて、

「ヒト2型糖尿病末梢神経

においてM1マクロファー

ジ浸潤が増加する」という

題でポスター発表をさせて

いただきました。糖尿病性

神経障害は糖尿病の合併症

のひとつであり、高血糖に

よる末梢神経の代謝異常と

血管障害が二大発症因子と

されていますが、正確な発

症機序は未だに分かってい

ません。今回の研究では、

その新しい病態として、末

梢神経におけるマクロ

ファージの浸潤の可能性を

考え、剖検症例で採取され

た腓腹神経を用いて、以下

のような検索を行いまし

た。2重免疫染色によりM

1、M2それぞれのマクロ

ファージの浸潤数を算出

し、qPCR

によってマクロ

ファージマーカー発現の検

索を行ったところ、どちら

の検索においても、ヒト2

型糖尿病腓腹神経では非糖

尿病腓腹神経に比べて、炎

症促進性のM1マクロ

ファージが有意に増加して

いました。M1マ

クロファージの浸

潤とH

bA1c

に正

の相関がみられた

ことから、糖尿病

ではM1マクロ

ファージ浸潤が促

進されることが分

かりました。また、

糖尿病性神経障害

では軸索の変性や

脱落が起こること

が知られていま

す。エポン包埋切

片の腓腹神経を用

いた病理学的検索

より、糖尿病では

腓腹神経線維密度

の低下とM1マク

ロファージの浸潤

学生優秀演題賞を受賞して

に関連があることも分かり

ました。

 

研究には以前から興味が

あったので、今回、実験や

発表を経験させていただい

て、とても充実した時間に

なりました。発表について

は、人前で話すのは得意で

はありませんが、自分が

行った実験の結果を誰かに

伝えたいと思うようになり

挑戦しました。そのため、

一般の先生方や学生の方々

が私の拙い発表を聞いて、

質問までしてくださったこ

とはとても嬉しいことでし

た。また、あのように大き

な学会で発表できたこと

が、自分にとってこれから

の自信になりました。最後

になりますが、御指導いた

だいた水上浩哉教授、分子

病態病理学講座の全ての

方々にこの場を借りて感謝

申し上げます。

日本内分泌学会学術総会会長賞を受賞して

内分泌内科,糖尿病代謝内科 医員 臼 谷 真 理

第92回日本内分泌学会学術総会

学生優秀演題賞を受賞して

第108回日本病理学会総会

医学科四年 山 田 咲季子

 

今回、二〇一九年六月二

十一日から二十二日まで岩

手県盛岡市にて開催された

第百十六回東北整形災害外

科学会に参加させて頂きま

した。学会の二日目に学生

セッションが企画されてお

り、そこで発表させていた

だき、一位を取ることがで

きました。発表内容は「大

学生ラグビー選手を対象と

したハムストリングのト

レーニングの外傷予防効果

の検討」でした。本研究で

は弘前大学医学部ラグビー

部に所属しており四年間経

過観察可能であった十六選

手を対象とし、N

ordic ham

string exercise

(以下

NHE)という、ハムスト

リング伸張性収縮訓練の導

入前後で、H

amstring strain

injury

(以下HSI)及び

HSI以外の外傷件数が減

少するかどうかを検討しま

した。結果は、導入後の体

重、筋肉量、下肢周径、閉

眼片脚立位保持時間が有意

に上昇しており、またHS

学生セッションで第一位に選考されて

医学科六年 小笠原 拳 斗

第116回東北整形災害外科学会

I、HSI以外の外傷発生

率は有意に減少していまし

た。この結果からNHEは

両下肢筋力の不均衡を改善

させるだけではなく、バラ

ンス能力も改善させること

で、HSI以外の外傷の発

生予防に繋がったのではな

いかと考えました。今回の

研究は、私が三年生の時に

研究室研修で行ったテーマ

を基に行われたものであ

り、自分の研究が認められ

たような気持ちで大変嬉し

かったです。研究の楽しさ

を少し感じることができま

した。

 

学会以外では、親善野球

大会の応援にも参加させて

いただき、先生方の野球に

対する熱い気持ちに感動し

ました。来年の日本整形外

科学会学術総会での試合も

応援しております。

 

今回このような機会を与

えてくださった石橋恭之教

授をはじめとする弘前大学

整形外科学講座の皆様に深

く感謝申し上げます。

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医学部ウォーカー第 90 号 令和元年 9月 18 日 

二〇一九年五月九日㈭か

ら五月十一日㈯まで東京国

際フォーラムにて行われた

日本病理学会総会の学生ポ

スター発表において、「胎

生期から学童期の膵島内分

泌細胞は各細胞独自の容

積、増殖能を示す」という

テーマで発表し、学生優

秀演題賞を受賞いたしまし

た。三年後期の研究室研究

で分子病態病理学講座にて

研究を行い、病理学会総会

での発表は昨年に引き続き

二回目となりました。

 

今回の研究では、胎生期

から思春期までの剖検症例

の膵臓から病理組織切片を

作成し、膵島と各内分泌細

胞の発生や成熟についての

解析を行いました。成人の

膵島細胞の増殖能は低いこ

と、それに比べて小児期で

はβ細胞の増殖能が高いこ

とはこれまでの研究で明ら

かになっております。今回

の私たちの研究では、α、

δ細胞は胎生期にその増殖

のピークがある一方でβ細

胞は生後の乳児期にその増

殖のピークがある、という

興味深い結果が得られまし

た。β細胞の発生、増殖の

障害は2型糖尿病に深く関

わるとされています。また

近年の研究では2型糖尿病

発症に関係する一塩基多型

が多数報告されています。

今後の研究の目標としまし

ては、β細胞の増殖能が高

い胎生期や乳児期、小児期

の中でもβ細胞の増殖に障

害がある症例において共通

して出現する一塩基多型を

発見することで、2型糖尿

病の発症に関連する遺伝因

子を明らかにすることで

す。

 

昨年も発表のテーマは同

様のものでしたが、一年間

の研究のデータを加えるこ

とでより興味深い発表にす

ることができました。研究

の楽しさというものを味わ

えたと思います。学生であ

りながらこうした発表の場

を与えていただき、水上教

授、遲野井先生をはじめ分

 

この度、二〇一九年六月

一日に開催された日本循環

器学会東北地方会での学

生・初期研修医A

ward

優秀賞受賞の御報告をさせ

ていただきます。私は心電

図学に興味を抱いていたた

め、医学部三年の研究室研

修で不整脈先進治療学講座

を選択しました。研究室研

修では伊藤太平先生のもと

心室頻拍アブレーションの

至適時期の検討を研究テー

マとし、手術見学する機会

に恵まれました。そのご

縁で、実際に経験した症

例が応募要件である上記

Aw

ard

に応募させていた

だき、しかも、初めての学

会発表でこのような受賞の

栄誉に浴し心から感謝して

おります。発表の機会を与

えてくださった富田泰史教

授、ご指導をいただきまし

た伊藤太平先生、外山佑一

先生をはじめ、貴重なアド

バイスを賜りました不整脈

グループの先生方に感謝申

し上げます。

 

演題は、「脚枝間リエン

トリーアブレーション後、

洞調律QRS波が完全左脚

ブロックから完全右脚ブ

ロックへ変化した一例」で

した。脚枝間リエントリー

性心室頻拍はH

is-Purkinje

系の伝導障害が関与し、根

治には右脚の伝導ブロック

を作成する必要がありま

す。本症例も右脚のアブ

レーションによって頻拍は

誘発不能となりました。術

前の洞調律波形は完全左脚

ブロックでしたが、治療の

ため右脚ブロックを作成し

たにも関わらず、術後は完

全房室ブロックに至らず完

全右脚ブロックに変化しま

した。これはlinking

と呼

ばれる電気生理学的現象で

説明可能であり、発表に際

して関連文献を検索し、そ

のメカニズムの理解を深め

ることができました。

 

発表当日は他大学の研修

医の方々の発表を拝見し非

病理学会総会にてポスター発表を行って

医学科五年 一 戸   寛

学生・初期研修医Award

最優秀賞を受賞して

医学科四年 安 藤 桃 子

日本循環器学会東北地方会

 

例年通り、今年も五月二

十五日から六月三日までの

十日間、さらに六月八日か

ら十四日までの七日間、

各々〝岩木健康増進プロ

ジェクトのプロジェクト健

診〟と〝いきいき健診〟を

実施しました。会場は弘前

市岩木地区の、岩木文化セ

ンター〝あそべーる〟と中

央公民館岩木館でした。

【岩木健康増進プロジェク

トのプロジェクト健診】

 

本健診は平成十七年から

毎年実施しているもので、

今年で十五年(回)目とな

ります。短命の主要死因で

ある三大生活習慣病や認知

症がターゲットとなりま

す。これらの疾患はきわめ

て多因子性ですから、必然

測定調査項目も網羅的(現

在では約三千項目)です。

そのため、産官学民多くの

皆さんにそれぞれに〝興味

の場〟を提供し、その結果、

産官学民の皆さんに集結し

ていただく稀なプラット

ホームとなりつつありま

〝岩木健康増進プロジェクト(プロジェクト健診)〟と

〝いきいき健診〟を終えて

社会医学講座 特任教授 中 路 重 之

す。期間内に約千百名の受

診者がありました。壮観な

のはその顔

ぶれで、医

学研究科十

講座に加え

て保健学研

究科、理工

学部、人文

学部、教育

学部の先生

方も参加

し、各々の

学生も教育

の一環とし

て参加いた

しました。

このほか、

弘前市役所

職員、青森

県総合健診センターに加え

約十の企業(毎日百名以

上)や市民(ひろさき健幸

増進リーダー、弘前健康づ

くりサポーター、食生活改

善推進員など毎日二十名)

の参加もありました。期間

中、三菱総研理事長(前東

京大学総長)の小宮山宏先

生、名護市の渡具知武豊市

長のご視察(写真参照)も

受け注目度の高さを実感し

ました。

【いきいき健診】

 

本健診は全国八か所で行

われている一万人コホート

研究(AMED認知症研究

開発事業「健康長寿社会の

実現を目指した大規模認知

症コホート研究」)の一つ

で四年目になります。最初

の二年目でベースライン調

査を終え、昨年と今年は途

中の簡易調査になります。

期間中に約千名の参加者

(六十五~八十歳の弘前市

民)がありました。プロジェ

クト健診よりは測定項目は

少ない(半分程度)のです

が、その分認知症の検査が

充実しています。

 

両健診は今注目されてい

るビッグデータの源です。

健診を見学に来られた多く

の方がその規模の大きさに

驚かれます。しかし、私が

見ていただきたいのは、両

健診に産官学民の皆さんが

集結していることです。そ

の目的は健康づくりに向か

う産官学民の皆さんのプ

ラットホームを作ることで

す。両健診がその役割を果

たしつつあることを強く感

じました。

 

今後とも皆さんのご協力

をお願いいたします。

筆者から、プロジェクト健診の検査の内容や特徴についての説明を受ける小宮山宏先生(左から2 人目)と渡具知武豊市長(その右)

子病態病理

学講座の先

生方に深く

感謝申し上

げます。今

後も時間を

見つけ研究

に携わり、

さらに興味

深いデータ

を加え、ま

た発表を行

うことを目

標に頑張り

たいと思い

ます。

常に緊張しました。初めて

の学外発表の場が学会で発

表内容も専門的でしたの

で、スライドの作成過程で

要領を得ず、ご指導やアド

バイスをもとに何度もスラ

イド校正を要しました。そ

の甲斐もあり準備と練習の

成果を実際の発表で発揮で

き、ご評価いただいたこと

は今後の成長に繋がる体験

になりました。今回の貴重

な経験を、将来に生かして

いきたいと思います。

24 公益

[email protected]

公益社団法人 青森医学振興会

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医学部ウォーカー第 90 号令和元年 9月 18 日

第103回 

弘前医学会総会

弘前医学会庶務幹事 鬼 島   宏

(病理生命科学講座 教授)

 

令和元年六月二十二日㈯

第百三回弘前医学会総会

が、ホテル青森にて総会

長・成田祥耕先生(青森市

医師会長)の下で開催され

ました。当日は多数の参加

者が集い、一般演題・特別

講演と素晴らしい発表が続

き、活発な議論が繰り広げ

られて、「令和」最初の記

念となる総会に相応しい有

意義な会となりました。

 

評議員会・総会開催のの

ち、一般演題九題の発表が

行われました。一般演題発

表後に、優秀発表賞選考委

員会(選考委員長:青森市

医師会・青森県立中央病院

沼尾宏先生)が開催され、

類家英史さん(医学科四年

次学生)が発表した演題

「黄色ブドウ球菌由来の細

胞外小胞は炎症反応を刺激

し宿主細胞死を誘導する」

が選ばれました。類家さん

は、昨年度の研究室研修で

感染生体防御学講座におい

て研究した成果をまとめた

ものです。引き続き、平成

三十年度優秀論文賞の授与

式が行われ、田中奈保子先

生(消化器血液内科学・三

沢市立三沢病院)が雑誌

『弘前医学 H

irosaki Medical

Journal

』に発表した論文

Vitam

in a Deficiency Im

-pairs H

ost Resistance to

Listeria M

onocytogenes

左から沼尾宏先生(優秀発表賞選考委員長・青森県立中央病院)、成田祥耕先生(総会長・青森市医師会長)、類家英史さん(優秀発表賞受賞者・医学科 4 年)連絡先:浅野クリスナ先生、田中奈保子先生(優秀論文賞受賞者・三沢市立三沢病院・消化器血液内科学講座)、若林孝一先生(弘前医学会長)、水上浩哉先生(優秀論文賞選考委員長)

Infection Through E

xces-sive A

poptosis of Macro-

phages

が表彰されました。

 

特別講演では、泌尿器科

学講座・教授 

大山力先生

が「Physician Scientist

の誘い(いざない)」と題

して講演されました。大山

先生が、かねてから実践し

ている「基礎研究の経験は

自分の日常診療に大きな影

響を与え、実臨床での疑問

が基礎研究のテーマとなっ

ている」を熱く語っていた

だき、参加者一同スケール

の大きな講演内容に感銘を

受けました。特別講演後に

は和やかながらも白熱した

質疑応答が交わされ、実り

ある時間となりました。

 

来年の弘前医学会総

会は、上十三医師会の

下で三沢市にて開催予

定です(開催日未定)。

次回も、多くの方々の

ご参加をお願い申し上

げます。

特別講演 大山 力 先生

第103回弘前医学会総会

優秀論文賞を受賞して

三沢市立三沢病院 内科 田 中 奈保子

(消化器血液内科学講座)

 

私は弘前大学大学院医学

研究科消化器血液内科学講

座に所属します田中奈保子

と申します。今回、大学院

学位論文を弘前医学に掲載

していただき、賞をいただ

けたこと、大変感謝しており

ます。論文タイトルはV

i-tam

in A deficiency im

pairs host resistance to L

isteria M

onocytogenes infection through excessive apoptosis of m

acrophages

です。大学

院指導教官であります平賀

寛人先生が長年研究されて

きたビタミンAと免疫の関

与についてという題材を基

に、学生時代から大変お世

話になってきました感染生

体防御学講座

中根明夫先

生(現・生体高分子健康科

学講座)、浅野クリスナ先

生方のお力添えと共に、研

究室研究時代に扱った

Listeria monocytogenes

を用

いた研究を行うこととなり

ましたが、この巡り合わせ

は、ある種仕組まれていた

のではないかという運命的

な何かを感じずにはいられ

ませんでした。ですが、し

かし、そういうことを深く

考える間もなく、あっとい

う間に過ぎた怒涛の三年間

がこの論文に凝縮されてお

ります。学生時代から勉強

が苦手で、自分が内科に進

むなど全く考えずに過ごし

ていた日々から、マウスを

うまく扱えず、ずっと

ぎゃーぎゃーと叫んでいた

ことを思い返せば、よくぞ

ここまできたなあと思わず

にはいられません。

 

さて、それはさておき、

私の所属します消化器血液

内科学講座の免疫グループ

は、潰瘍性大腸炎をはじめ

とした炎症性腸疾患や、関

節リウマチといった膠原病

を扱っています。この分野

は特に基礎研究と結びつき

の強い分野であり、特に当

グループでは腸管免疫を中

心として、マクロファージ

をはじめとした自然免疫に

注目して日々研究を進めて

おります。自己炎症性疾患

などの定義も確立してきた

今、自然免疫への注目はさ

らに高まっているのではな

いかと思います。今後と

も、免疫グループ一丸とな

り、研究を進めていきたい

と思っております。

 

最後になりますが、選考

いただいた弘前医学担当先

生方、ありがとうございま

した。また、本研究を進め

るにあたり、感染生体防御

学講座の先生方、動物施設

の職員さん方、消化器血液

内科学の先生方、皆様には

大変感謝しております。そ

して、手前味噌となってし

まいますが、免疫グループ

各先生方、特に指導教官の

平賀先生、櫻庭先生には多

大なるご支援をいただき、

心より感謝申し上げます。

皆様のますますのご発展を、

心よりお祈りしております。

第103回弘前医学会総会

優秀発表賞を受賞して

医学科四年 類 家 英 史

 

令和元年六月二十二日に

開催された、弘前医学会総

会におきまして、「黄色ブ

ドウ球菌由来の細胞外小胞

は炎症反応を刺激し宿主細

胞死を誘導する」という演

題で発表させていただき、

優秀発表賞をいただくこと

になりました。この場をお

借りして指導してくださっ

た生体高分子健康科学講座

の中根明夫先生、感染生体

防御学講座の浅野クリスナ

先生ならびに同講座の研究

スタッフの皆様に心より御

礼申し上げます。

 

本研究では浅野クリスナ

教授の指導の下、黄色ブド

ウ球菌が産生する細胞外小

胞Extracellular vesicles

(EVs

)の役割について、

宿主応答メカニズムを中心

として解析を行いました。

このEV

s

は生きている細

胞から放出される小胞のこ

とであり、近年細菌が放出

するEV

s

が細菌間のコ

ミュニケーションや免疫応

答に関わることが分かって

きました。しかし、これま

での研究はグラム陰性菌が

主体であり、グラム陽性菌

におけるEV

s

の役割には

スポットライトが当たって

いない状況でした。そこで

私たちはグラム陽性菌であ

り、かつ臨床において重要

な日和見病原菌である黄色

ブドウ球菌に着目しまし

た。本研究では、当初EV

s

に含まれる物質の特定に加

え、EV

s

が黄色ブドウ球菌

感染に対するワクチンとし

て利用できるかどうかの確

認も目的とされていまし

た。ところが実験を行うと

EVs

をワクチン投与したマ

ウスは全て、感染後一日以

内に死亡することが分かり

ました。そこで我々は当初

の目的に追加して、EV

s

宿主細胞への炎症誘導の有

無と細胞傷害性についても

調べることにしました。結

果としてEV

s

は宿主細胞

に炎症を誘導することが判

明し、かつ炎症を誘導する

因子はDNA、リポテイコ

酸、または蛋白質であるこ

とが分かりました。また

EVs

はToll-like receptors

活性化を通じて宿主細胞に

pyroptosis

という細胞死を

誘導することが示唆されま

した。

 

さて今回の研究は学生の

私にとって、本格的な基礎

研究に接する初めての機会

となりました。Silencing

RT-PCR

、ELISA

といった、

基礎研究を行う上で基本中

の基本ともいうべき技術を

実際に自分でプロトコール

を読み、薬品の準備をし、

自分の手で実験を行うとい

う行為は想像よりも遥かに

難しいものだと痛感するの

と同時に、自らの手で未知

なる扉を開いている感覚を

も味わうことができ、とて

も有意義な体験となりまし

た。最後になりますが、私

にこのような機会を与えて

くださった方々に改めて御

礼を申し上げたいと思いま

す。

鵬桜会総会に出席して

医学研究科長 若 林 孝 一

 

一般社団法人である弘前

大学医学部鵬桜会の総会が

令和元年五月二十五日にホ

テルニューキャッスルで開

催されました。柿﨑良樹理

事の司会のもと、物故会員

に対する黙祷を行い、その

後、西澤一治理事長、医学

研究科長の挨拶がありまし

た。五十嵐勝朗先生を議長

に選出し、須藤武行常務理

事から平成三十年度の決算

報告が、澤田美彦常務理事

から事業報告がありまし

た。医学部関係では、新入

生歓迎会、白菊会、総合文

化祭医学展、医師国家試験

対策委員会、弘前医学会、

医学部学術賞、各種学会へ

の助成が行われたことが報

告されました。東医体で優

秀な成績を収めた個人が表

彰を受け、クラブ活動で支

援を受けた学生から御礼の

言葉が述べられました。今

回、任期満了に伴う理事及

び監事の選任があり、新

たに田村一朗先生が理事

に選出され、柿﨑先生が

常務理事となりました。

理事長には西澤先生が再

任されました。その後、

医学科二年次編入学生の

歓迎会へと移りました。

澤田常務理事から弘前大

学医学部の起源と鵬桜会

の歩みについてパワーポ

イントによる紹介があり

ました。引き続き行われ

た懇親会(学士編入学生

歓迎会)では副島薫理事

の司会のもと、西澤先生

(次ページへ続く)

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医学部ウォーカー第 90 号 令和元年 9月 18 日

令和   年度元

FD活動報告

大学の「見える化」

  

昨今の教育改革について

学務委員長 鬼 島   宏

(病理生命科学講座 教授)

 

大学は、大学設置基準に

より「設置するのに必要な

最低の基準が定められ、設

置基準より低下した状態に

ならないようにすることは

もとより、その水準の向上

を図ることに努めなければ

ならない」と定められてい

ます。大学設置基準は厳格

に定められている一方で、

我国の大学は一度設置され

ると、その後の評価は厳し

くないとも言われてきまし

た。この状態を改善する

きっかけの一つが、国立大

学法人化かと思われます。

国立大学法人法に基づき、

六年ごとの中期目標・中期

計画/年度計画が公表さ

れ、評価が行われるように

なりました。さらに、七年

ごとに文部科学大臣が認証

する評価機関(大学評価・

学位授与機構等)による大

学機関別認証評価と、専門

分野別認証評価を受けるこ

ととなりました。医学科の

専門分野別認証評価は、日

本医学教育評価機構(JA

CME)による医学教育分

野別評価基準となっていま

す。

 

一時代前であれば、教

育・研究・社会貢献という

大学の使命は果たしている

といえば済んだのかもしれ

ません。昨今の大学を取り

巻く環境の変化で、現在は

「どのような計画(Plan

)で、

何を実行(D

o

)して、そ

の評価(Check

)はどのよ

うであり、将来に向けてい

かに改善(A

ct

)するか

(P

DCAサイクル)」をしっ

かり明示しなければなりま

せん。外部の人から、大学

内がよく見えることが大切

で、「大学の見える化」と

いう言葉が好まれて使われ

ています。弘前大学医学部

医学科でも、「医学科の目

的」が定められ、アドミッ

ション・ポリシー(入学者

受入れ方針)、カリキュラ

ム・ポリシー(教育課程編

成・実施の方針)、ディプ

ロマ・ポリシー(卒業認定・

学位授与)という三つの方

針が掲げられています。卒

業時コンピテンシー(修得

しておくべき能力

十領域・

六十六項目)や各学年のア

ウトカム(十領域で、領域

ごとに各学年のアウトカム

を設定)も定められまし

た。これらは、いずれも医

学部医学科(入学案内)の

ホームページに掲載されて

いますので、ぜひ一度ご覧

ください。

 

これらの中でも従来と大

きく変わった事項の一つ

が、教育プログラム(カリ

キュラム)の策定・評価に、

(前ページより)

による開会のご挨拶、藤哲

先生による乾杯のご発声で

宴会が始まりました。医学

部教授や同窓生の先生方の

ご挨拶に加え、編入学生の

一人一人からスピーチがあ

り、これまでの経歴やエピ

ソードについて紹介があ

り、盛り上がりました。全

国最大規模を誇る弘前大学

医学部の学士編入学生の多

彩さと実力を感じました。

最後に蓮尾豊先生による締

めのご挨拶があり、なごや

かな雰囲気の中、全日程が

終了しました。

 

昭和二十四年から平成三

十一年までの弘前大学医学

部医学科の卒業生は六六六

二名を数えます。弘前大学

医学部に対する鵬桜会の多

大なご支援に深謝いたしま

すとともに、今後とも鵬桜

会と同窓生、教員、学生が

一体となった取り組みが継

続してゆくことを願ってお

ります。なお、来年の鵬桜

会総会は五月三十日に開催

の予定です。

学生自身が参加することだ

と思います。これにより、

学生が自分の学修過程に責

任を持ち、学修意欲を刺激

し、生涯にわたって共に学

ぶ姿勢が身につくからで

しょう。令和元年六月五日

には医学部医学科自治会が

主催で、学生と教員が合同

のワークショップも開催さ

れ、教員は若林教授(医学

部長・研究科長)・廣田教

授(副研究科長)・今泉教

授・加藤教授・富田教授・

鬼島が参加しました。

 

最後に、「医学科の目的

を着実に実現することこそ

が私たちの務めでありまた

喜びです。今後も、教職員、

学生一丸となって教育・研

究成果を挙げていきたいと

思います。」

 

平成三十一年度入学者の

内訳は、表1・2に示すと

おり最終確定となりまし

た。入試業務に協力いただ

き深謝いたします。本年五

月一日より令和元年が始ま

り、来年度入試は〝令和二

年度入試〟の表記となり、

さらにいくつかの変更の予

定があります。まず入学定

員について、平成二十年度

以降二十七名の臨時増員が

認められ、現在合計百十二

名となっています。この暫

定措置による増員は、青森

県はまだまだ医師が不足し

ているため、本学では暫定

措置の期間延長を申請する

こととしており、認可後は

内訳の人数が変更になる予

定です。また、入試要件の

変更もあるため、一部名称

変更があります(表3参照)。

 

AO入試から説明します

と、令和二年度は「青森県

内枠」二十七名「北海道・

東北枠」十五名、計四十二

名を募集します。「青森県

内枠」及び「北海道・東北

枠」は、それぞれ従来の「県

内枠」及び「地域枠」に相

当します。「青森県内枠」

の出願資格および要件とし

て、大きな変更点は①青森

県弘前大学医師修学資金の

貸与を受けることが必須で

あること 

②卒業後直ちに

青森県のキャリア形成プロ

グラムにしたがって臨床研

修を含む九年間(内四年間

は医師の不足している地

域)医療に従事することの

二点になります。青森県弘

前大学医師修学資金制度は

青森県からの提供によるも

ので、詳細は青森県庁ホー

ムページにおいて確認、理

解をお願いします。

 

また、青森県内の高校出

身者はすべて「青森県内

枠」での受験となります。

 

一方「北海道・東北枠」

は、従来の「地域枠」の条

件とほぼ同じですが、義務

年限が従来の十二年から九

年に短縮されています。研

修対象病院は弘

前大学医学部医

学科が指定する

関連施設としま

す。

 

一般入試の

「県定着枠」も

義務年限の短縮

以外、条件は従

来と変わりませ

ん。

 

学士編入学に

関して、従来は

最大五名までを

「青森県内枠」

としていました

が、令和二年度

より、「青森県

内枠」をなくし、

二十名すべてを

卒業後、直ちに

弘前大学医学部

附属病院の臨床

研修プログラム

にしたがって臨

表1 平成31年度入試 1年次入学者

入学定員一般入試 (前期日程 ) AO入試Ⅱ全国枠 県定着枠 地域枠 県内枠

112 50 15 17 30

表2 平成31年度入試 2年次学士編入学者

入学定員学士編入学

全国枠 青森県内枠20 18 2

表3 令和2年度 入学者定員および内訳

入学定員一般入試 (前期日程 ) AO入試Ⅱ全国枠 県定着枠 北海道・東北枠 青森県内枠

【予定】112 【予定】50 【予定】20 【予定】15 【予定】27

床研修(二年間)を行うこ

とが確約できることを出願

資格および要件として募集

します。

 

以上の出願資格および要

件、試験日程等の詳細は弘

前大学ホームページに最新

の情報を載せていますので

ご確認ください。

 

さらに令和三年度入試

は、大学入試センター試験

が大学入学共通テストとな

り、記述式問題の導入や、

弘前大学の入試形態もAO

入試から総合選抜の導入な

どの、大きな変革の年とな

ります。そのため本年度よ

り変更内容の予告につい

て、大学ホームページで公

表を順次進めています。今

後とも入試業務へのご協力

をお願いします。

青森県庁ホームページhttps://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/iryo/ishisyugakushikin.html

入試専門委員長 上 野 伸 哉

(脳神経生理学講座 教授)

入試専門委員会報告

平成31年度

入試報告

および

令和2年度

入試変更点について

令和元年度

実験動物慰霊式

附属動物実験施設長 上 野 伸 哉

(脳神経生理学講座 教授)

 

平成から五月一日に元号

が令和となり実験動物慰霊

式を六月二十一日に執り行

いました。多くの方に献花

いただき感謝いたします。

慰霊式の後、弘前大学保健

学科教授 

伊藤巧一先生よ

り「マウス臍帯血移植モデ

ルを用いた免疫系再構築に

関する研究」のタイトルに

て記念講演を行いました。

GFPマウスの臍帯血移植

により導入幹細胞を可視化

に成功し、免疫系の再構築

を形態および機能を経時的

解析と臨床応用への展望を

紹介いただきました。さら

に例年本慰霊式には医学部

三年次学生が参加していま

す。この参加学生のため動

物実験結果をヒトへの応用、

適用させる際の注意点、お

よび動物倫理の原則も具体

的に示され、彼らにとって

も貴重な講演となりまし

た。今後も実験動物慰霊式

に合わせ、動物実験倫理を

中心とした講演会を開催し

ますので、多くの教員の方

にも参加をお願いします。

また本年九月より、動物施

設の改修工事がはじまり、

ご不便をおかけしますが、

工事期間も3R(Reduction,

Replacement, Refinem

ent

を考慮した動物実験の実施

をお願いします。

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医学部ウォーカー第 90 号令和元年 9月 18 日

弘 前 大 学成績優秀学生表彰

学務委員長 鬼 島   宏(病理生命科学講座 教授)

令和元年度

 

成績優秀学生表彰は、各

学部(医学部は医学科・保

健学科)の各学年で前年度

の成績が優秀であった学生

を表彰する取組みで、平成

二十一年度にスタートし、

今年で十一年目となりま

す。

 

学部学生については履修

科目の平均点をもとに選抜

しており、医

学部医学科か

らは五名の学

生(現在二~

六年次)が選

ばれました。

八月七日㈬に

文京キャンパ

スにて表彰式

が行われ、佐

学長か

ら一人一人に

表彰状と副賞

が贈呈されま

した。学長か

らは祝辞とと

もに、今後も

大いに活躍さ

れることを期

待している旨

の励ましの言

葉をいただき

ました。なお、

学部学生(二

年次および三

年次)は夏季または春季休

業期間にオークランド工科

大学(ニュージーランド)

で二週間の語学研修に参加

することができます(滞在

費、渡航費は大学が負担)。

平成三十一年二月に医学科

では、柴田佳奈さん(四年

次・一昨年度表彰)が参加

して、有意義な海外研修を

体験してきました。

 

学生諸君にはこの表彰を

励みにさらなる発展を期待

しています。

令和元年度弘前大学成績優秀学生

医学部医学科2年 太田 理瑚医学部医学科3年 鈴木 咲楽医学部医学科4年 山田 園子医学部医学科5年 神林 美羽医学部医学科6年 吉川小由里

大館・北秋田地域医療推進学講座 

准教授 坂 本 義 之

外科手術体験セミナー

in�

五所川原を開催して

 

去る六月二十九日、つが

る西北五広域連合つがる総

合病院を会場として「高校

生を対象とした外科手術体

験セミナーin五所川原」を

開催いたしました。今回は

五所川原高校、五所川原第

一高校、弘前高校、八戸高

校、田名部高校、三本木高

校から五十六名の高校生が

参加、スタッフは医師・研

修医五十八名に加えて、医

学生十五名、協力企業関係

者と看護師を含めて総勢九

十名を超える皆さんにボラ

ンティアで参加いただきま

した。開会式では五所川原

市を代表して佐々木孝昌市

長からもご挨拶をいただき

ました。高校生に対しては

熱い激励の言葉を、スタッ

フに対しては感謝の言葉を

お話しいただきました。オ

リエンテーションが済み、

術着に着替えて、いよいよ

外科手術体験プログラムの

開始となります。今回も七

つのブースを用意しました

が、いずれのブースも活気

にあふれていました。ロ

ボット手術のシミュレータ

コーナーや人体モデルを

使ってのスーチャリング

コーナーなど、医師とマン

ツーマンでの手技体験もあ

れば、内視鏡外科手術コー

ナーなどのチームでの手術

体験もあります。

 

途中、休憩時間を利用し

てのミニレクチャーでは、

若手医師を代表して弘前大

学医学部附属病院 

消化器

外科・乳腺外科・甲状腺外

科の藤田博陽先生から医学

生生活について、研修医生

活についてのお話をしてい

ただきました。藤田先生の

祖父、父親とも五所川原市

は所縁の地であったそうで

す。プログラムの後半は、

研修医、医学生の皆さんが

中心になって高校生の指導

にあたりました。教える側

も教わる側も程よい緊張感

 

この原稿を書いている今

は、やっと梅雨が明け夏ら

しい日が続いています。多

分この号が発行されること

はもう秋が始まっているこ

ろでしょう。海外からの観

光客に聞くと日本は湿度が

高く自国よりも暑いと思う

人が多いと聞きます。確か

に関東関西の夏の蒸し暑さ

は尋常ではありません。そ

の点、青森は昼は暑くても

夜になると涼しく湿度も低

く、一日中クーラーを稼働

させる必要もなく、冬のこ

とを除けば生活しやすい街

であると思います。さらに

は都会ではないため誘惑も

少なく、勉強のしやすい弘

前は学都としてとても良い

場所ではないかと思う次第

です。今は何でもネットで

買える時代であることを考

えると適度な田舎が経済的

に良いのはないのでしょう

か。青森空港、羽田空港に

行くと必ずと言っていい程

複数人の医学部教授の先生

方にお会いします。皆さん

会議などで都会に出張して

いる訳で早くテレビ会議シ

ステムが出来るとさらに経

済的になるのではないかと

思います。3Dのゴーグル

をすることで、あたかも会

議室にいる感じが出来るの

ではないかと思いますが、

その皆さんがゴーグルを付

けてこっちを見ている姿を

想像するとちょっと興ざめ

します。

があり、見てい

ても微笑ましい

感じがします。

高校生にとって

は身近な目標で

ある研修医や医

学生の皆さんと

のちょっとした

会話が、良い刺

激になるようで

す。四時間に及

ぶセミナーは、

修了証書の授

与、そして自動

縫合器を使う際

の合言葉「ファ

イヤー」の掛け

声で終了となり

ました。

 

この外科手術体験セミ

ナーを最初に企画してか

ら、今年で十一年目(十二

回目の開催)を迎えまし

た。昨年は弘前大学より、

本セミナーの開催・継続が

(次ページへ続く)

 

さる七月一日㈪弘前市民

文化センターにおいて、昨

年に引き続き青森医学振興

会・弘前市共催事業として

市民公開講座が開催されま

した。

 

構成は二部制で、第一部

は、当会理事長で医学研究

科社会医学講座特任教授中

路重之先生の「短命県返上

への次の一手」。第二部は

医学研究科循環器腎臓内科

学講座教授富田泰史先生の

「高血圧は万病のも

と~専門医から学ぶ

最新の血圧管理~」

がテーマとなりまし

た。

 

当日は、ひろさき

健幸リーダー、健康

づくりサポーター、

食生活改善推進員の

皆さんに加え一般の

市民の皆さんも集ま

り約三百名の大聴衆

となり、熱気ある講

演会となりました。

特に健康づくりサ

ポーターの皆さんの

今後の活動に大いに

生かされる講演内容

だったと思います。

第一部は、中路先

生から、青森県は日

本一の短命県であ

り、最長寿の長野県

と二歳半の差がある

こと、そしてその背

景について解説いた

だきました。短命対

策としては、県民一

人ひとりが健康の知

識をつけて、健康づ

くりに取り組むこと

が大切であり、その

ために行われている、「市

町村での健康リーダー育

成」、「学校での健康教育の

取り組み」及び「企業での

健康づくりの取り組み」等

の紹介がありました。

 

次に、講演第二部は富田

先生から最新の「高血圧治

療2019ガイドライン」

についての解説があり、従

来からの高血圧基準は変わ

りないものの、降圧目標が

厳しくなったことについて

詳細に説明がありました。

 

また、高血圧は症状がな

くとも脳・心臓・腎臓が障

害されることがあるため「

サイレントキラー」

と呼ば

れ、脳卒中や心臓病、腎不

全になる可能性が高いこと

について説明がありまし

た。血圧管理、特に減塩の

重要性を理解することがで

きました。

 

講演終了後には参加者か

ら、活発な質疑応答があり

ました。熱心に聴講してい

ただき盛況な会で大変有意

義な内容であったと思いま

す。このような機会を設け

て頂いた弘前市健康福祉部

健康づくり推進課スタッフ

の皆様にこの場を借りて感

謝申し上げます。

公益社団法人青森医学振興会主催

市民公開講座を終えて

青森医学振興会 事務局長 佐々木 陸奥男

中路先生 富田先生

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医学部ウォーカー第 90 号 令和元年 9月 18 日

令和元年度科学研究費補助金採択状況

附属病院で新規採択率が

ほぼ「倍増」の躍進!

分子生体防御学講座 教授 伊 東   健

○平成30-令和元年度科研費 研究種目別内定状況(新規)

研究種目名 医学研究科 医学部附属病院 全体H30 R1 H30 R1 H30 R1

基盤研究(S) 0 0基盤研究(A) 1 1 0基盤研究(B) 1 1 0基盤研究(C) 20 20 6 7 26 27特定領域研究 0 0新学術領域研究 0 0挑戦的萌芽研究 0 0挑戦的研究 0 0若手研究(S) 0 0若手研究(A) 0 0若手研究(B) 0 0若手研究 11 10 9 18 20 28研究活動スタート支援 0 0特別研究促進費 0 0研究成果公開促進費 0 0特別研究員奨励費 0 0奨励研究 0 0

合計 33 30 15 25 48 55

○令和元年度科研費 申請・内定状況(新規)部 局 名 申請件数 採択件数 採択率(%) 交付内定額(千円)

医学研究科 147 30 20.4% 46,150医学部附属病院 121 25 20.7% 34,320

計 268 55 20.5% 80,470

○平成30年度科研費 申請・内定状況(新規)部 局 名 申請件数 採択件数 採択率(%) 交付内定額(千円)

医学研究科 158 33 20.9% 63,310医学部附属病院 134 15 11.2% 21,970

計 292 48 16.4% 85,280

 

医学研究科および附属病

院における令和元年度の科

学研究費採択状況が公表さ

れました。まずは付表をご

覧下さい。今回は新規採択

の実績を昨年度のものと共

に表で示させていただきま

した。医学研究科において

は、採択率は例年並みです

が、中・大型科研費の新規

採択がなかったためか、交

付内定額においては二割ほ

ど落ち込んでいます。一

方、附属病院においては前

年度の新規採択率一一・

二%から二〇・七%とおよ

そ二倍に迫る勢いで伸び、

採択額も一・五倍に増えま

した。若い方のご活躍が伺

え、将来に明るい兆しがあ

ります。関係各位のご努力

に敬意を表します。是非、

このレベルを持続していた

だければと思います。た

だ、医学研究科・附属病院

を合わせると五百万円ほど

交付内定額が減少する結果

となりました。いつも書い

ていることですが、新規採

択率の全国平均は例年約二

五%です。まずはこの値に

到達できるように、来年度

に向けて少しずつでも改善

していくことが大切だと思

います。また、これと同時

に基盤B以上の中・大型科

研費を獲得することが全体

的な交付内定額を増やすこ

とに重要です。来年度は医

学研究科教員の奮起に期待

したいと思います。

 

この度、弘前大学大学院

医学研究科附属子どものこ

ころの発達研究センターが

推進している児童思春期の

前向きコホート調査「心の

サポートアンケート」の

データを活用した研究が、

国立研究開発法人日本医療

研究開発機構(AMED)

の公募「成育疾患克服等総

合研究事業─BIRT

HD

AY

学童・思春期の心身の健全

育成を支援する医療との連

携システムの開発」(研究

期間二〇一八年十月一日~

二〇二二年三月三十一日)

に採択されましたので、ご

報告申し上げます。

 

少子高齢化による家族構

造の変化、インターネット

やスマホの普及等、社会構

造の変化によって子どもを

取り巻く環境は劇的に変化

をしています。不登校は一

九九七年度に十万人を越え

て以降、二十年間にわたっ

て十万人を下回ることなく

推移しており、二〇一七年

度には統計開始以降、初め

て十四万人を越えました。

また、日本全体の自殺者数

は二〇一三年をピークとし

て減少傾向に転じた一方、

子ども(小中校生)の自殺

者はこの十年減少の兆しが

ありません。これらの統計

は大人たちが子どものメン

タルヘルスの問題に十分に

対処しきれてこなかったこ

とを浮き彫りにしていま

す。

 

今回採択された課題は、

このような問題の抜本的な

解決に向け、三つの研究課

題を遂行するものになって

います。一つ目は、子ども

たちのメンタルヘルスの状

態の現状把握です。青森、

愛知、静岡、東京といった

多地点で大規模な縦断調査

を行い、子どものメンタル

ヘルスについて抑うつを代

表としたさまざまな指標の

現状を把握します。二つ目

は、子どものメンタルヘル

スを簡便に把握できるツー

ル開発です。子どものメン

タルヘルスの経年推移から

メンタルヘルスに影響を及

ぼす重要な指標を明らかに

し、支援の必要性・方向性

をスクリーニングして、そ

の後の支援に繋げられる

ツール開発を目指します。

三つ目は、必要な子どもた

ちを小児医療に接続する仕

組み作りです。これには二

つ目の課題で開発したツー

ルを利用することを検討し

ており、どこでも誰でも客

観的な指標に基づいた支援

が展開できる仕組みについ

て検討をしていく計画を立

てています。

 

我々の取り組みの長期的

なゴールは、学校で行われ

ている身体の健康調査と同

様に、心の健康調査が当た

り前に実施されるようにな

り、子どものメンタルヘル

スの不調を掬い上げ、支援

に繋げる仕組みが社会実装

されることにあります。こ

成育疾患克服等総合研究事業AMED-BIRTHDAY採択を受けて

(前ページより)

医学部および地域社会への

貢献に値するとの趣旨で、

「弘前大学表彰」をいただ

きました。今回もセミナー

を開催するにあたり、形成

外科学講座、胸部心臓血管

外科学講座をはじめ多数の

先生方、五所川原市のス

タッフのみなさまにご協力

いただいております。心か

ら感謝申し上げます。この

セミナー参加者から多数の

医学生が誕生することを

願っております。

神経精神医学講座 教授弘前大学大学院医学研究科附属子どものこころの発達研究センター センター長

 中 村 和 彦

れには「メンタルヘルスの

不調は誰しもがなり得るも

のであり、その支援を受け

ることは特別なことではな

い」という社会の側の価値

観の変化が求められるもの

と思われ、この本課題だけ

で完結できるものではあり

ません。身体不調と同様

に、子どものメンタルヘル

スの問題について早期に支

援が行われる社会の実現が

望まれます。本課題はその

ゴールに向けて与えられた

チャンスであると捉え、そ

ういった社会の実現に向け

た一助とできるよう取り組

んで参る所存です。

 

この度は、公益財団法人

小林がん学術振興会の「公

益目的事業4 

がんの予防

及び診断と治療に関する基

礎的研究に対する研究助

成」(本年度応募総数六十

二件、採択数六件)に採択

されましたのでご報告申し

上げます。小林がん学術振

興会は、がんの解明と薬物

療法に関する先駆的学術研

第13回 

小林がん学術振興会

研究助成金採択

究並びに革新的学術研究に

対する助成及び表彰を行う

ことにより、当該分野の学

術および科学技術の振興を

図り、がん治療成績の向上

及び進展に寄与することを

目的とし、大鵬薬品工業株

式会社からの寄付金により

運営されています。採択さ

れた研究は、「前立腺癌診

断、悪性度評価に有用な

LacdiNA

c

糖鎖修飾PSA

の生合成機構の解明および

その糖鎖構造の前立腺癌環

境における分子生物学的機

能に関する研究」です。

 

前立腺癌は本邦でも二〇

一六年度に発症頻度が男性

の癌で第一位となり、急増

している疾患の一つです。

血清マーカーである前立腺

特異抗原(PSA)検査の

特異度が低く、過剰診断や

過剰治療が問題となってお

ります。この問題を解決す

るために、私たちの講座で

は、PSAの糖鎖変異によ

る前立腺癌診断・悪性度評

価マーカーの臨床応用を進

めています。コニカミノル

タ社と本学

泌尿器科学講

座とのAMED先端計測機

器開発プロジェクト(H27

~H30)により、癌特異的

糖鎖であるLacdiN

Ac

構造

を持つPSA(LD

N-PSA

を高感度に定量するLD

N-

PSA

検査法を開発しまし

た。国内外多施設後ろ向き

臨床研究から血清LD

N-

PSA

検査値が高悪性度前

立腺癌で上昇し、手術や放

射線療法などの積極的治療

介入を要する症例を鑑別可

能な検査として、従来検査

に導入することで十倍程度

の前立腺針生検低減効果を

示すことを発表しました

(Yoneyam

a T. et al., Cancer

Sci. 2019, PMID

31145522

)。

この度、採択された研究

は、なぜ血清LD

N-PSA

査値が高悪性度前立腺癌で

上昇するかを基礎的研究に

より明らかにし、LD

N-

PSA

検査の悪性度指標と

しての臨床的価値に対する

科学的裏付けを与えるもの

として評価され、研究助成

を獲得できたことは大変喜

ばしいことであります。一

日でも早い臨床応用を目指

して粛々と研究を進めたい

と考えております。最後に

なりましたが、本研究のご

指導を頂きました泌尿器科

学講座の大山

力教授、他

様々な面でサポートして頂

いた教室の皆様、共同研究

者であるコニカミノルタの

開発チームの皆様にこの場

をお借りして厚く御礼申し

上げるとともに引き続きご

指導賜りたく存じます。

先進移植再生医学講座 助教 米 山   徹

附属病院泌尿器科 講師 畠 山 真 吾

 

泌尿器科の畠山真吾と申

します。この度、応募して

おりました第十三回小林が

ん学術振興会研究助成金が

採択されましたのでご報告

させていただきます。採択

研究課題名は「固形腫瘍の

腫瘍血管内皮細胞を標的と

したがん特異的中性子補足

療法の開発」です。まずは

本研究にお力添えを頂いて

いる皆様に、この場を借り

て深く御礼申し上げます。

 

本研究は、腫瘍の血管に

ホウ素を集め、腫瘍に中性

(次ページへ続く)

Page 10: 「フレイル予防医学研究講座」...診療講師 板谷 博幸 心臓血管外科 令和元年6月1日~令和4年5月31日 診療講師 工藤 隆司 麻酔科 令和元年6月1日~令和4年5月31日

医学部ウォーカー第 90 号令和元年 9月 18 日

学生だより

弘前大学に入学して

医学科一年  笠 井 真 愛

弘前大学に入学して

学生だより

 

弘前大学に入学して早く

も前期が終わりました。伝

統ある弘前大学医学部医学

科に入学できたことをとて

も嬉しく思います。

 

大学に入学して、一年生

は教養教育が多いため、医

学生になったと実感する機

会は少ないだろうと思って

いました。しかし、先輩方

やユーモアあふれる教授の

方々が開催してくださった

新入生歓迎パーティーや青

森県知事との懇親会を通

し、自分が医学生になった

という実感を持ちました。

基礎ゼミナールでは、臨床

弘前大学に入学して

医学科一年  千 葉 雄 介

 

弘前の第一印象は「親し

みのある町」です。これは

おそらく私の地元と人口の

規模が同じくらいのが理由

なのではないかと考えてい

ます。よくいくご飯屋さん

では店員さんがとても気さ

くに話しかけてくれたり、

常連さんとも仲良くなるな

ど、慣れない津軽弁に苦労

しながらも一人暮らしには

うれしい暖かみも感じさせ

てくれます。大学生活では

部活動にも所属し先輩にア

ドバイスをもらいながら大

学生としての生活を楽しん

でいます。また授業面では

今はまだ医学の専門講義は

少ないのですが、その中で

も毎回医学の御教授方は熱

意を持って医学の概要につ

いて講義していただいた

り、医者としてあるべき姿

についてのディスカッショ

ンを授業として取り入れる

など、医学知識だけでな

く、それ以前に必要な覚悟

について学んでいます。

医学科五年 石 田   航

BSLで感じたこと

BSLについて

学生だより

 

私たちの学年はカリキュ

ラムの変更があり、今年の

三月から実習を開始してい

ます。その三月から早五ヶ

月が経とうとしています。

最初は誰しもだと思います

が、教室での座学から病院

での実習という環境の変化

に対応するところから苦労

しました。今までの生活と

は全く違う非日常に放り出

されたような感覚でした。

しかし、これから国家試験

を合格し、晴れて医師とし

て働くとなるとこの生活が

日常になるんだなと気持ち

を新たにしたことを今でも

覚えています。そんな中で

五ヵ月過ごした私が一番大

切だと感じたことを書かせ

ていただきます。

 

それは、医師(実習生)

として患者のことを最優先

に行動しなくてはいけない

ということです。何のため

に医療があるのかと言われ

れば、患者のために医療が

あるのであり、患者を一番

に考えることが最も大事に

医学科五年 髙 野 寛 明

BSLについて

 

私は、三月から七月まで

五ヶ月間、臨床実習(BS

L)をさせていただきまし

た。はじめは、BSLでは

座学で学んだ知識を臨床で

実践することが目的か、と

思っていました。しかし、

実際にはテキストに載って

子を照射する

ことで「癌だ

け」を攻撃す

る画期的な

「狙い撃ち」

中性子補足療

法の開発で

す。医学の進

歩により癌治

療は日々進歩

しておりま

す。最近では

免疫療法が臨床応用するに

至りました。免疫療法が効

く患者さんは末期がんから

完全治癒に至ることもあま

すが、実際には七〇%以上

の無効例が存在します。更

に癌以外の免疫関連有害事

象(皮疹、間質性肺炎、副

腎不全、腸炎など)がみら

れ、時としておこる致命的

な副作用が大きな課題で

す。やはり癌だけを治療す

る癌標的療法が理想です。

癌の標的療法として有効性

(前ページより)

が示唆されているのは中性

子補足療法です。手術困難

な頭頚部癌での有効性が報

告され現在臨床試験も行わ

れてます。ホウ素は中性子

を補足し放射線を発生する

ため、癌標的療法として有

望な分子です。しかし、癌

だけにホウ素を高濃度に届

けるのは容易では無く、こ

れがホウ素を用いた中性子

補足療法の大きな課題でし

た。そこで我々は癌周囲の

血管に集まる分子を用いて

高濃度なホウ素を

癌に集められない

かと考えました。

我々の研究グルー

プは腫瘍血管内皮

細胞に特異的に発

現する分子(アネ

キシン)を標的と

したペプチド(I

F7ペプチド)を

開発していました

ので、そのIF7

ペプチドにホウ素

分子を結合させ、

癌特異的中性子補

足療法の開発を試

みました。まずI

F7ペプチドとホ

ウ素の結合を行

い、実験に必要な

薬剤の生成に成功

しました。現在、

マウスモデルを用

いた基礎的な動物

実験を行っており

ますが、有効性を示唆する

結果が得られつつありま

す。さらに原子炉を必要と

しない小型化中性子発生装

置の開発も進んでおり、臨

床応用までの道のりはそう

遠くないものと思われま

す。本研究の成果を患者さ

んにお返しできるよう、精

一杯開発に努める所存で

す。今後ともご支援いただ

ければ幸いです。

 

最後になりましたが、本

研究のご指導を頂きました

泌尿器科学講座の大山力教

授、多大なるご尽力をいた

だいた教室・関係者の皆様

にこの場をお借りして厚く

御礼申し上げます。

医学の道に進むことしか考

えていなかった私ですが、

ゲノム生化学講座に配属さ

れ、ラットの解剖やDNA

の電気泳動を経験させてい

ただき、研究や基礎医学の

楽しさを学びました。ま

た、岩木健康増進プロジェ

クトに参加させていただ

き、この取り組みの規模の

大きさや産官学民の連携に

驚きました。これから本格

的に始まる専門教育が楽し

みです。

 

部活動は、女子バレー

ボール部に入部しました。

バレーボールは中高と続け

てきて、最近では審判もす

るほど大好きです。これを

書いている時点では、東医

体の練習の最中です。同じ

チームの先輩方は、優しい

だけでなく、一年生の私が

思い切りプレー出来るよう

技術面でも精神面でも支え

てくださります。そのよう

な素晴らしい先輩方と一緒

に部活動が出来る幸せを噛

みしめながら、先輩方のよ

うになれるよう頑張ります。

 

大学生活での私の目標

は、医師になってたくさん

の人の役に立ちたいという

初心を忘れず、学業はもち

ろん、部活動や自分の興味

のあることなど、大学生の

うちにしかできないことに

挑戦することです。特に、

高校から下宿暮らしをして

きたのにも関わらず、大学

に入学してから初めてした

自炊は、人並みにはできる

ようにしたいと思います。

 

最後に、私は下北郡大間

町の出身です。大学に入学

してから、授業で地域医療

の例としてほぼ毎回取り上

げられるほど地元は医師不

足の影響を受けています。

地元や、同じような状況の

地域の医療の役に立てるよ

う、これからの大学生活で

さまざまなことに一生懸命

取り組んでいきます。よろ

しくお願いします。

 

私の夢について話すと、

私は将来整形外科医になり

たいと考えています。弘前

大学附属病院では整形外科

講座に力を入れており、私

はそこに強く心を惹かれ、

弘前大学に入学しました。

特にこれまでスポーツをし

ていたということもあり、

スポーツ整形外科という分

野に興味があります。これ

からは弘前大学で医学につ

いて学び、ゆくゆくは医師

として「自分の夢」と「医

師が社会から求められてい

ること」の両方を追い求め

ていくことになると思いま

す。このどちらも実現させ

ていくためには自分の中に

強い芯を持ち、正確かつ膨

大な知識や確かな技術が必

要です。この六年間でまず

はしっかりと知識と技術を

身につけ、弘前大学という

恵まれた環境で学べること

に感謝しながら、自分が理

想とする医師に近づけるよ

う、同じ志を持つ仲間と切

磋琢磨しながら努力してい

きたいと思います。

なります。そのためには知

識や技術がなくてはいけま

せん。知識とは勉強で、私

たちが勉強しているのは近

い将来では国家試験を受か

るためという目的があるか

もしれませんが、全ては患

者のために勉強しているん

だという意識を忘れてはい

けないと思います。自分の

ために勉強しているという

考えから患者のために勉強

していると考えられるよう

になれば、勉強に対する姿

勢・見え方も変わってくる

はずです。技術は手術の手

技などは学生の私たちには

まだ早いですが、患者の話

を聞く技術は今のうちに身

に付けておくべきだと思い

ます。正確に現病歴を把握

する、医療面接を的確に行

うといった技術は実際に現

場で繰り返し練習すること

で修得されるものだと思い

ます。今の私たちは患者か

ら正確に聞き取る力が一番

求められていると思いま

す。患者から話を聞くこと

を考えると、どのような態

度や話し方で患者に接する

べきか自ずと見えてくると

思います。

 

これからも実習は続いて

いきますが、自分が医師に

なった時に患者のために力

になれるように学生のうち

にやるべきことはしっかり

と身に付け、努力していき

たいと思います。

いないことの学びの方が多

いことを、いま実感してい

ます。

 

まずコミュニケーション

能力が大切だということを

学びました。先生方は一日

の大半を一緒に過ごし、治

(次ページへ続く)

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医学部ウォーカー第 90 号 令和元年 9月 18 日

療方針を相談して決めてい

きます。また、看護師やコ

メディカルと情報を共有

し、日々の管理をしておら

れました。手術において

は、狭い術野で肩を寄せ

合って、あうんの呼吸で

次々と手技を進めていきま

す。たとえ、当直明けでも

忙しくても、安定した応対

をしていらっしゃる先生方

の姿はとても印象的でし

た。PreBSL

の講義での『ま

ずは挨拶が大事。決して感

情的な発言をしてはいけな

いよ』という先生の言葉通

り、信頼関係を築き維持す

ることこそ、医療を行う上

で最も基本的なスキルなの

だと分かりました。

 

また、チームワークがな

ぜ大切なのかも理解できま

した。四年生までの間に、

様々なグループ実習があり

ましたが、毎回メンバーが

入れ替わっていました。こ

れは、臨床では複数の診療

科とチームを組んで治療を

進めることがあるため、誰

とでも即座にチームを組む

ためのトレーニングだった

ということが分かりまし

た。ご講義で、ある先生が

おっしゃった『いつでも、

どこでも、誰とでもチーム

を組んで、最大のパフォー

マンスを発揮できなければ

いけない』という言葉の意

味を初めて理解できたよう

な気がします。また、ある

先生は、十時間近い執刀の

最中でも、手術に集中しつ

つ周囲のスタッフの疲れま

で気遣っていらっしゃいま

した。その精神力には感服

させられました。

 

さらに、患者さんの心に

共感する力、言葉の力の大

切さを目の当たりにしまし

た。ある先生の『患者さん

を励ますことは治療をする

医学科五年 廣 兼 正 明

病院実習について

 

病院実習が始まりまし

た。五年生からは、病院の

スケジュールに即した生活

になり、四年生までの講義

と試験の生活から大きく変

わりました。実習当初は、

体力的にきついときもあり

ましたが少しずつ実習に慣

れ、今は充実した日々を

送っています。

 

実習が始まって五カ月し

か経ってないですが、振り

返ると多くの経験ができま

した。実習に参加し、実際

に自分の体で体験すること

で、授業で学べなかった多

くのことを学びました。今

まで学んできた医学知識が

実際の臨床現場で役立つこ

とを実感し、勉強へのモチ

ベーションが高まりまし

た。一方で、患者さんに上

手く問診できなかったり、

結紮が上手くできなかった

り、何度も悔しい思いをし

ました。自分に足りないこ

とが多すぎて、医師になる

ことに不安を覚えました。

自分が患者さんと接するこ

とが患者さんの不利益にな

るのではと自問自答しまし

た。でも、その度に、一歩

一歩自分のできることから

進めるしかないと思い、実

習に取り組みました。

 

今年から、五年生で外

科、小児科、産婦人科は市

中病院での病院実習ができ

るようになりました。私は

大学病院と市中病院の小児

科を回りました。頻度の高

い疾患から低い疾患まで

様々な疾患を幅広く診るこ

とができました。また、入

院管理、外来、健診、予防

接種など小児科医の様々な

業務を体験することができ

ました。五年生から市中病

院を回るのは、色々な経験

ができ、良いと思いました。

 

病院実習は六年生の十月

まで続きます。長いようで

短いです。様々な科を短期

間で回るので、以前回った

科で学んだことを忘れがち

です。ですので、学んだこ

とを着実に自分のものにす

るために、定期的に回った

科の復習をしたいと思いま

す。そして、病院実習の中

で患者さんのために自分が

できることを着実に増や

し、患者さんが幸せになる

ようにしたいです。

(前ページより)

上でとても大事なことなん

だ』という言葉が印象的で

した。実際に『がんばって

いますね。良くなってきて

いますよ』、『いい治療法が

沢山ありますからね』と声

をかけながら診察され、患

者さんの本当に嬉しそうな

笑顔が心に響きました。

 

半年を終えて思ったこと

は、患者さんを治すのは医

療技術であると同時に、医

師のもつ〝人の力〟ではな

いか、ということです。今

後も、BSLという貴重な

実践の場でしか感じられな

いことをできるだけ多く学

ばせていただき、医学的知

識はもとより、人としての

力を高めていきたいと思い

ます。最後になりました

が、実習にご理解をいただ

きました患者様とご家族に

は心から感謝申し上げま

す。また、お忙しい中、丁

寧にご指導をしてくださっ

た先生、看護師の皆様に重

ねて感謝申し上げます。

学生だより

クリクラを終えて

医学科六年 米 田 晃 士

クリクラを終えて

 

四か月間のクリクラの中

で、最も指導してもらい勉

強に励んだ公立野辺地病院

と、手技の難しさを痛感し

た国立弘前病院麻酔科を中

心に述べさせていただきま

す。

 

四月にまわった公立野辺

地病院整形外科では、先生

方だけでなく看護師・医療

事務さんの補助のもと、初

めて初診をしました。患者

さんから抜け漏れなく情報

を得るためには、整形外科

やその周辺領域の知識が必

要なことに気づかされまし

た。鑑別疾患を頭の中で上

げながら、問診をしようと

しました。しかし臨床の知

識や経験が足りないため、

最初は難しかったです。な

おかつ、外来は混んでおり

問診を素早く終え、次の患

者さんの問診を行わなけれ

ばならず、難渋しました。

 

また地域の患者さんが

多いので、com

mon disease

を見れました。自分が研修

医になった時、どのような

知識や手技が要求されるの

か想像でき、帰宅後の学習

意欲がわきました。それら

を習得できるように卒業ま

での半年間、国家試験を通

して習得していくべきこと

へのモチベーションも高

まったと思います。

 

一方で、知識面だけでな

くコミュニケーション能力

も求められました。患者さ

んは様々な性格の方がおら

れ、個別の問診の仕方や気

遣いを学習しました。

 

六月にまわった国立弘前

病院麻酔科では、マスク換

気、気管挿管を麻酔科医の

先生方の指導のもと、行い

ましたが上手くできません

でした。教科書を読んでい

ましたが全く役に立たな

かったです。手技は先生方

の指導のもと、経験しない

と劇的に上達しないと思い

ました。また指導後にも練

習を繰りかえさないと、臨

床で通用するレベルに達し

ないと痛感しました。一か

月間、マスク換気をさせて

いただきましたが、患者さ

んの肺に適切な量を適切な

頻度で酸素や空気を送りこ

めているようには感じるこ

とができませんでした。研

修医で麻酔科を回った時、

次は適切に行えるようにし

たいです。

 

クリクラでは、習得すべ

き手技や勉強すべきことが

多く、四か月間はすぐに過医

学科六年 加 藤 憲一郎

クリクラを終えて

 

四ヶ月のクリニカル・ク

ラークシップ(以下クリク

ラ)を振り返り、クリクラ

は自分が将来何科に進みた

いか、どのような医師にな

りたいのかを考える上でと

ても重要な期間であったと

感じています。クリクラ

の実習先を選ぶにあたっ

て、「BSLで経験できな

かったことをする」という

のが自分の中のテーマでし

た。大学病院と異なる規模

の病院、大学病院で実習が

短かった科や、クリクラで

しか回れない科で実習をし

ようと考えていました。ま

た、BSLでは班での行動

今泉忠淳今泉忠淳今泉忠淳

が多く、自分の勉強不足や

行動力不足を優秀な班員に

甘えてしまうことが多かっ

たです。そのため、外の病

院では一人で実習が行える

施設と科を選び、四月はと

きわ会病院の内科、五月は

大学病院の病理診断科、六

月は法医学講座、七月は野

辺地病院の整形外科で実習

させていただきました。ど

のクールでもたくさんの学

びを得ることができ、充実

した実習をすることができ

ました。それぞれの科で全

く違うところもあれば、共

通することもあり、医師と

しての働き方の多様性と、

医学の面白さを改めて感じ

ることができました。クリ

クラを通じて、手技や医学

知識は勿論ですが、様々な

環境、考え方、働き方、そ

して何より自分を知ること

ができたのが一番の収穫で

はないかと思います。一~

写真コラム (5)

「スズカケノキ」

脳血管病態学講座教授 今 泉 忠 淳

 基礎医学校舎の玄関を出てすぐ左側に、「ヒポクラテスの木」があり、そのことを記した碑が設置されています。ヒポクラテスは、ここで紹介するまでもなく、紀元前のギリシア・コス島の医師で、「医学の父」とも呼ばれています。私たちが学ぶ西洋医学は、もとをただせばヒポクラテスにさかのぼります。ヒポクラテスは、プラタナスの巨木の下で、弟子たちに医学を教えたと言われていて、そのプラタナスが「ヒポクラテスの木」と呼ばれています。本学の「ヒポクラテスの木」は、コス島のヒポクラテスの木の子孫です。詳細は設置されている碑に記載されています。プラタナスは、日本語では「スズカケノキ」といいます。漢字では、「篠懸の木」または「鈴懸の木」と書くようです。落葉広葉樹で、冬に葉が落ちると、鈴を懸けたような実を見ることができます(写真)。インフルエンザウイルスの構造模式図に似ていると思いませんか?普段はこの木や碑を気に留めることもありませんが、たまには、立ち止まって、医学を志した初心を思い出してみるのもよいと思います。

ぎました。臨床の入り口に

でさえ、たててないことを

思いしらされました。

 

最後ですが、日常の多忙

な業務中に指導していただ

いた先生方に感謝していま

す。卒業後は先生方からの

恩を、患者さんや社会に還

元できる医師になれるよう

頑張りたいです。

二週間のBSLでは何をや

るにしても初めてで新鮮

で、そこで自分の向き不向

きはあまり分りませんでし

た。しかし、一ヶ月間同じ

科で、実際に働いている

方々と同じようなリズムで

実習をしてみると、自分が

何に対して楽しいと感じる

のか、きついと思うのかと

いうことや、ストレスを感

じるところ、ノーストレス

でできることが少しずつで

すが分かってきたように思

います。働く場所について

も、中規模の病院と大学病

院の違いを実際に感じるこ

とができ、将来を考える上

でとても良い経験をするこ

とができました。最後に、

実習先でお世話になりまし

た先生方、医療スタッフの

方々、患者さんに心より御

礼申し上げます。ありがと

うございました。

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医学部ウォーカー第 90 号令和元年 9月 18 日

大学院生だより

大学院三年 馬 場 啓 介

(呼吸器内科学講座、ゲノム生化学講座)

大学院生だより

 

令和最初の夏も終わり、

実りの秋を迎えようとして

いますが、いかがお過ごし

でしょうか。青森県立中央

病院呼吸器内科で研修して

いた平成二十八年に、私は

当時の部長から勧められて

翌年度から田坂定智教授の

弘前大学大学院呼吸器内科

学講座に大学院一年生とし

て入りました。呼吸器内科

学講座は田坂先生の就任以

降続々と医局員が増えつつ

あり、充実した臨床に加え

て臨床から基礎まで多様な

発展を可能にする研究熱

心、指導熱心な上級医たち

が在籍しています。私の様

な駄馬ですら、田中寿志先

生の御鞭撻により英文誌に

ケースレポートが載りまし

たから、手厚く有意義な指

導を頂けたことを実感して

います。

 

大学院二年目から弘前市

に移り、藤井穂高教授のゲ

ノム生化学講座で基礎研究

の手習いをさせて頂きまし

た。ゲノム生化学講座には

海外からの留学生を含めて

多彩で有為の人材が集まっ

ています。遺伝子座特異的

クロマチン免疫沈降法の特

許取得や株式会社設立な

ど、現代の基礎研究者とし

ての最適解である藤井ラボ

は、学部生にも門戸が開か

れており、令和元年から博

士課程に入ったとても面倒

研究室紹介

大学院四年 佐 竹 杏 奈

(歯科口腔外科学講座)

大学院生だより

 

大学院の歯科口腔外科学

講座で研究を始めて早四年

が経とうとしています。

 

私の研究テーマは加齢に

伴い要介護状態に移行する

全身の虚弱であるフレイル

と口腔との関連性について

です。毎年岩木健康増進プ

ロジェクトに参加し口腔内

診査および舌圧や発音の検

査などを行い約千人のデー

タを収集し統計解析を行っ

ています。当初はデータ解

析の参考書を熟読するも理

解できず非常に苦慮しまし

たが、現在は参考書を時折

開いて確認をする程度にな

りました。また、統計を用

いた論文を理解できるよう

になり勉強になっていま

す。近年、口腔内細菌と全

身疾患の関連性が多数報告

されているため、私はフレ

イルと歯周病原菌との関連

呼吸器内科学講座

ゲノム生化学講座

見の良いプロ大学院生もい

ますし、試験に苛まれるこ

と大なる弘前大学医学部生

のオアシスになるでしょう。

 

ちなみに私は、藤井ラボ

でオリゴリボヌクレオチド

干渉ポリメラーゼ連鎖反応

による肺癌EGFR遺伝子

変異検出法の一端を学び、

ゲノム生化学講座の藤田敏

次先生の綿密な御指導によ

り翌年の春には実験結果を

論文にまとめる機会を頂く

ことができました。(doi:

10.3390/ijms20164020.

より、逐次データを見なが

ら研究全体のストーリーを

描く作業を通じて、基礎研

究者の洞察に感銘を受ける

とともに、学習と研究のサ

イクルという臨床医学にも

通底する作法を見つめ直す

良い機会になりました。

 

呼吸器内科学講座、ゲノ

ム生化学講座の皆様の更な

るご活躍を祈念しつつ、本

稿を閉じます。藤井穂高先

生には、この様な貴重な機

会を頂き、改めて御礼申し

上げます。ありがとうござ

いました。

性を研究しています。歯周

病原菌から放出される炎症

性サイトカインと高齢者の

もつ軽微な慢性的な炎症状

態であるinflam

maging

重なることにより筋力低下

を助長していると予測され

ます。今後、口腔機能の重

要性についてより周知され

ることを望み、日々研究を

重ねて参ります。

産婦人科の魅力

若手教員・医師だより

 

まず自己紹介をさせて頂

きます。動物が大好きで北

海道大学獣医学部に進学し

ました。学生時代にネコと

ウサギのアレルギーにな

り、卒後は獣医師として青

森県職員となり公衆衛生関

係の仕事に十年間勤務しま

した。この間、二児の母と

なりましたが、産婦人科医

不足に関するニュースや記

事を見るたびに悲しくな

り、三十代の私でもお役に

たてればと、長女が五歳、

長男が二歳の時に一念発

起。産婦人科医を目指して

弘前大学医学部に学士編入

地域医療支援学講座 助手 横 山 美奈子

(産科婦人科学講座)

しました。さすがに育児と

勉学の両立は大変でした

が、医学部を四年で卒業

し、二〇一四年に産婦人科

教室に入室しました。

 

さて、産婦人科の仕事

は、想像していたとおり忙

しいですが充実していま

す。お産は神秘的です。そ

して一人の生命の誕生が、

母親・父親・親戚・分娩に

関わった多くの人達を幸せ

にしてくれます。大学病院

に勤務していると、悲しみ

や苦悩を持つ妊婦に寄り添

わなければならない場面も

多くありますが、お産には

ずっと関わっていきたいと

思っています。そのため最

近では特に産科救急疾患へ

の対応を学ぶべく、講習会

に参加したり実習指導医側

として勉強会に参加したり

しています。

 

産婦人科の魅力はもちろ

んお産だけではありませ

ん。婦人科腫瘍の分野で

は、診断から手術・化学療

法・緩和ケアまで関わるこ

とができます。また、不妊

治療を始めとした生殖医療

もありますし、さらに最近

では産婦人科第四の専門領

域として思春期から老年期

にわたる全ての女性の健康

に携わる女性医学という分

野も確立されました。私や

家族の趣味は硬式テニス

で、スポーツドクターにも

とても興味があるのです

が、スポーツ医学は女性医

学と強い関連のある分野で

もあり、今年から資格を取

 

先日(令和元年七月三十日)

の文化審議会世界文化遺産部

会で、「北海道・北東北の縄

文遺跡群」が令和元年度の世

界文化遺産推薦候補に選定さ

れたニュースが入ってきまし

た(文化庁HP参照)。十七

の考古学的遺跡群で三内丸山

遺跡などが有名ですが、全国

でも数少ない縄文時代晩期の

環状列石を中心とした大森勝

山遺跡(弘前市)もその一つ

であるので、この機会に紹介

したいと思います。岩木山北

東で、大森川と大石川に囲ま

れた舌状丘陵の先端にある大

森勝山遺跡は、冬至に太陽が

岩木山山頂へと沈む地点に立

地し、環状列石・大型竪穴建

物・岩木山が直線状に並んで

います(写真手前が列石部、

奥が建物跡)。現在は遺跡保

北小苑温泉

谷地温泉

猿倉温泉

鬼 島   宏

(病理生命科学講座・教授)

護のため土で埋めなおされて

いますが、令和三年の世界遺

産登録に向けて、遺跡の復元

等が行われる予定です。とい

うことで周囲を緑に囲まれ

て、静寂で縄文の息吹が感じ

られる「今」足を運ぶのも一

考かと思います。

 

北小苑温泉(第八十五湯

東岩木山温泉

弘前市百沢字

北岩木山

二十一時迄)は、

県道三十号岩木環状線を挟ん

で大森勝山遺跡の南東に位置

するナトリウム・炭酸水素

塩・塩化物泉です。コテージ

などもあるようですが、地元

の入浴客に愛されている雰囲

気が漂い、わずかに塩味を感

じる褐色透明の湯はとても温

まります。あたご温泉(第十

四湯

ウォーカー第七十二

号)とともに、遺跡訪問後の

ひと風呂に好都合です。

 

ここでようやく前号で予告

した十和田・八甲田界隈を訪

れたいと思います。

 

谷地温泉(第八十六湯

和田市法量谷地

日帰り十七

時迄)は、日本三秘湯(温泉

紀行④

ウォーカー第七十二

号)の宿として知られるよう

に八甲田山中の素朴な温泉で

す。単純硫黄温泉・硫化水素

型で三十八度の「下の湯」(霊

泉)と四十二度で白濁した「上

の湯」、さらに上がり湯と異

なる泉源を堪能できます。谷

地温泉のHPを見ると浴場は

従来のままですが、客室は改

装された様です。

 

猿倉温泉(第八十七湯

和田市奥瀬猿倉

日帰り十五

時迄

冬期休業)は、単純硫

黄温泉・硫化水素型ですが

さっぱり系の湯です。五つの

源泉があり、そのうち二つを

猿倉で使用し、残り三つを十

和田湖畔焼山温泉郷へと送湯

しているという。猿倉温泉旅

館も改築されて洋間ベッドと

なったようですが、温泉とし

ての風情は十分に残されてい

ます。

 

国道百三号沿いは、酸ヶ湯

から笠松峠を越え猿倉・谷

地・蔦(第六十七湯

ウォー

カー第八十五号)と最高の温

泉が並んでいます。

(次ページへ続く)

Page 13: 「フレイル予防医学研究講座」...診療講師 板谷 博幸 心臓血管外科 令和元年6月1日~令和4年5月31日 診療講師 工藤 隆司 麻酔科 令和元年6月1日~令和4年5月31日

医学部ウォーカー第 90 号 令和元年 9月 18 日 

二〇一七年三月に初期研

修を修了後、同年四月より

麻酔科で専門医研修を開始

して、三年目を迎えまし

た。今回このような場を頂

きましたので、麻酔科の仕

事と私個人が日々思うこと

をご紹介させていただきま

す。今年の春には標榜医と

認定医申請が通り、晴れて

麻酔科医ですと名乗れるよ

うになりましたが、まだま

だ多くのことを先輩方に学

びながら手術場で悪戦苦闘

しています。多くの麻酔症

例を経験し、医療に従事す

るやりがいと面白さを実感

しています。麻酔科学は特

定の臓器の疾患に限定され

ず、人間の生命活維持のシ

ステムに対してアプローチ

していく分野であり、ヒト

という生物に詰め込まれ

た、緻密なシステムの存在

を目の当たりにする機会が

多く、興味が尽きません。

患者さんに必要な手術も麻

酔がなければ、とてもつら

るための勉強も始

めました。

 

また大学院三年

生として、ゲノム

生化学講座で実験

をさせて頂いてい

ます。日々の実験

では簡単に結果が

出ないこともあり

ますが、ゲノム生

化学講座の先生方

が懇切丁寧にご指

導くださり、少し

ずつではあります

が前に進んでいま

す。期待した結果

が出た時の達成感

は日々の臨床で感

じるものとはまた

違った嬉しさがあ

ります。

 

こんな感じで毎

日が本当にあっと

いう間に過ぎていきます。

「充実しすぎ」と家族には

言われますが、これからも

無理をしない程度にコツコ

ツ学んでいこうと思ってい

ます。産婦人科に興味があ

る学生の方、獣医関係で何

か聞きたいことがある方、

いつでも話しかけてくださ

い。大歓迎です。

若手教員・医師だより

若手教員・医師だより

附属病院 麻酔科

助手 緑 川 陽 子

(麻酔科学講座)

(前ページより)

い治療になってしまいま

す。大学病院では毎日多く

の手術が行われています、

時には臨時手術も入り目ま

ぐるしい時もありますが、

その後日に日に回復してい

く患者さんをお見掛けする

機会があると、ほっとした

気持ちになります。

 

麻酔科の仕事というと、

手術麻酔がイメージされる

と思いますが、大学病院で

は集中治療管理やペインク

リニックについても学ぶ機

会があります。両分野とも

学生での臨床実習の際は時

間が比較的短く、概要を知

るところで終了していまし

た。その後、地域実習での

外来診療において、高齢者

の方々の慢性疼痛による家

事や農作業のやりにくさの

訴えが多いこと、完治が難

しい疾患の場合は、痛みの

緩和も必要とされているこ

とを知りました。他にも外

傷後の痛みの訴えがなかな

か改善しない方や、救急搬

送され全身管理が長期に

渡って必要だった方など

様々な患者さんに出会いま

した。様々な悩みを抱える

患者さんと出会ったこと

で、痛みのつらさを少しで

も軽減できる方法や重症な

方の全身管理について学ぶ

必要があることを痛感しま

した。患者さんが病気を乗

り越えていく過程で、様々

な角度からサポートしてい

くことができるのが麻酔科

の魅力ではないかと思いま

す。

 

人体は小宇宙と例えられ

ることがありますが、日々

の麻酔管理を通してそのシ

ステムの緻密さと不思議さ

を目の当たりにします。ヒ

トという生命体の魅力の多

くに触れることのできる麻

酔科に興味を持っていただ

ける方が増えていくよう、

日々の業務を精進していき

たいと思います。

留学だより

テニュア教員 助教 飛 澤 悠 葵

 

はじめに、留学へ送り出

していただいた泌尿器科学

講座・大山力教授、先生方、

学務の皆様に心より感謝申

し上げます。

 

現在、私はアメリカ合衆

国、カリフォルニア州の南

部サンディエゴにある

Sanford Burnham

Prebys M

edical Discovery Institute

にてY

u Yam

aguchi

教授の

もとで研究留学をさせてい

ただいております。サン

ディエゴは非常に治安も良

く、気候も一年を通して気

温差は少なく穏やかでとて

も過ごしやすい環境です。

現在のラボはスタッフが全

員日本人であり、コミュニ

ケーションに英語を使う事

はほとんどありません。さ

らにサンディエゴという土

地柄のせいか、日本のスー

パーマーケット、ブックオ

フなどもあり日本人もそれ

なりにいるため、英語に自

信が無くてもほとんど生活

に困ることはありません。

こちらでの生活は車がほぼ

必須であり、カリフォルニ

ア州免許の取得が必要です

が、試験自体も日本語で受

けられるため非常に容易で

す。

 

こちらでは、生体内に存

在する糖鎖の一つであるヒ

アルロン酸の機能を解明す

ることを目標に研究を行っ

ています。ヒアルロン酸は

主に間質細胞(皮膚でいう

ならば表皮ではなく真皮の

領域)で産生され、七〇kg

の成人においては生体内に

一五gのヒアルロン酸が存

在し、その三分の一は一日

で入れ替わると考えられて

います。このヒアルロン酸

の非常に速い代謝に関して

種々のヒアルロン酸分解酵

素が発見されていました

が、その多くは細胞内に取

り込まれたヒアルロン酸を

分解するものでした。

Yam

aguchi

研究室では、

2017

年に細胞表面におい

て機能する新規のヒアルロ

ン酸分解酵素である

Transm

embrane protein 2

(Tm

em2

を発見、報告し

ました。本酵素は中性pH

領域、細胞外で機能するた

め現在私は、ヒアルロン酸

の生体内における機能およ

び代謝機構に関して遺伝子

欠損マウスを用いて解明を

試みております。

 

研究所が建つLa Jolla

Torrey Pines

というエリア

はノーベル賞受賞者を多数

輩出しているスクリプス研

究所、ソーク研究所やUC

SDが集中しており研究交

流も盛んに行われているた

め研究には最適な環境で

す。また全米ゴルフのPG

Aツアーが開催されるゴル

フ場もあるためゴルフが好

きであれば息抜きも適度に

出来、また断崖の上にある

ため景色も最高でとても良

いところです。

 

サンディエゴはクラフト

ビールの聖地と言っていい

くらいビールも豊富でおい

しく、沢山の研究者と研究

所主催の懇親会でそのビー

ルを飲みながら研究や文化

について語り合い、刺激を

受けています。残りの留学

生活もこの貴重な経験を今

後に生かせるよう研究や交

流に力を入れていきたいと

思っています。

セコイア国立公園にて

留学だより整

形外科学講座 千 葉 大 輔

 

医学部ウォーカーをご覧

の皆様、はじめまして。整

形外科学講座の千葉大輔と

申します。石橋教授、並び

に講座の先生方から機会を

頂き、私は二〇一八年三月

より米国Pennsylvania

Pittsburgh

にあるU

niversity of Pittsburgh, D

epartment

of Orthopaedic Surgery

て研究留学中です。今回は、

読者の皆様にPittsburgh

私の研究について、簡単に

紹介させて頂ければと思い

ます。

 

Pittsburgh

は米国北東部

のPennsylvania

州西部にあ

る都市です。五大湖に近く、

車でN

ew Y

ork, Philadelphia, W

ashington D.C.

と言った

大都市やナイアガラの滝に

アクセスが可能です。

Pittsburgh

は以前、〝Steel

City

〟として鉄鋼で栄えて

おりましたが、現在はその

面影は殆どありません。現

在、市街地には、U

niversity of Pittsburgh

とCarnegie

Mellon U

niversity

を中心に

幾つかの大学がひしめく、

弘前と同じ〝学都〟です。

治安も良く、全米の住みや

後援会のご案内会長 石戸谷 忻 一

 弘前大学後援会では、学生の学業、課外活動への助成、学生の進路指導に必要な助成等学生生活の多岐にわたる分野の助成を行っております。つきましては、何卒本会の趣旨にご賛同頂きまして、各位の格別のご高配、ご支援を賜りますよう、切にお願い申し上げます。 なお、入会方法等の詳細については、弘前大学総務部総務広 報 課(Tel:0172-39-3012、E-mail:[email protected])までご連絡いただくか、弘前大学後援会ホームページ(http://www.hirosaki-u.ac.jp/kouen/index.html)をご覧ください。

弘前大学

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医学部ウォーカー第 90 号令和元年 9月 18 日

法医学講座 教授 高 橋 識 志

 

法医学講座は昭和二十三

年に開講され、初代 

引田

一雄教授、二代 

赤石英教

授、三代 

村上利教授、四

代 

池田典昭教授、五代 

田直人教授の時代を経て、

平成二十七年より高橋が担

当しております。現在は教

員一名、技術補佐員二名、

事務補佐員一名の小所帯で

活動しております。

 

法医学講座に課せられた

第一の社会的要請は法医実

務であり、その中心となる

のが解剖です。法医解剖数

は全国的に増加傾向にあり

ますが、警察の死体取り扱

い数が多く、しかも一県一

医科大学である本学ではそ

の傾向が顕著です。昭和の

頃は年間平均で五〇件ほ

ど、平成に入ってもしばら

くは一〇〇件前後だったの

が、ここ最近は平成二十八

年 

一八四件、平成二十九

年 

二三七件、平成三十

年 

三一〇件と急増してい

ます(現在、本学の司法解

剖の件数は、全国でも五本

の指に入っております)。

これは決して犯罪死が増加

しているからではなく、自

殺や事故、果ては病死ま

で、少しでも疑問が残る死

亡は徹底的に調べよう、と

いう県警の積極的な姿勢が

反映されたものでしょう。

 

とはいえ、異状死のすべ

てを解剖するのは人員・予

算上、現実的ではありませ

ん。幸いなことに青森県の

北地方は特に状況が深刻と

なっております。東北六県

の現役法医医師はトータル

でたった十四名、このうち

私(四十一歳)よりも年下

の医師は三名しかおりませ

ん。当講座では学部四年に

対する系統講義のほか、

学部三年の希望者(最大

三名)に対する研究室研

修、さらに学部六年の希

望者(最大十二名)に対

するクリニカルクラーク

シップを通じて、解剖の

見学や実習、症例検討な

どを通じて法医学への関

心を深められるよう、尽

力しております。ただ、

学部学生や、他大学に入

局した若手法医医師をみ

ておりますと、法医学に

強い興味・関心を抱く者

は決して少なくないので

すが、キャリアパス上の不

安から、門を叩くこと自体

を断念する、あるいは中途

で臨床に戻る傾向が、かつ

てよりもさらに強まってい

るのを感じます。さらに東

北地方に限っていうと、法

医学を志しはするけれど、

入局は関東・近畿あるいは

九州、という「地元志向・

都会志向」のケースも無視

できません(私の着任以来

の弘前大学の卒業生で、少

なくとも三名おります)。

一筋縄ではいかない状況で

すが、青森県における死因

究明システムの構築・発展

のため、さらには法医学の

進歩のため、努力・貢献は

惜しまない所存でおりま

す。ご指導・ご鞭撻のほど、

どうかよろしくお願い申し

上げます。

消化器外科学講座

消化器外科学講座 准教授 石 戸 圭之輔

 

消化器外科学講座は、袴

田健一教授をはじめ約三十

名のスタッフおよび大学院

生で構成されております。

青森県内の消化器外科分野

の発展のため日々努力を重

ねております。

 

消化器外科が担当する診

療範囲は食道・胃・大腸等

の消化管、肝臓・胆道・膵

臓等の実質臓器、および乳

腺・甲状腺等の体表臓器と

幅広いことが特徴です。年

間の全身麻酔下手術件数

は、約六百五十件と多くの

手術を担当しております。

多くの疾患を扱うため、

当講座は上部消化管グルー

プ、下部消化管グループ、

肝胆膵・移植グループ、お

よび乳腺・甲状腺グループ

の四つの診療グループに分

かれて治療を担当しており

ます。それぞれのグループ

で、日々進歩する医療技術

や診療内容を積極的に取り

入れて診療にあたっており

ます。

 

消化器外科の診療では、

特に癌診療が中心となりま

す。近年の検査技術の発展

に伴って、これまで見つけ

られなかった癌を検出する

ことが可能になっておりま

す。「二人に一人は癌と診

断される」という時代にな

り、外科治療を必要とされ

る患者さんも増えておりま

す。手術は少なからず患者

さんに負担を強いるもので

あります。その負担をなる

べく少なくさせ、より早く

社会復帰していただくこと

を当講座の目標としており

ます。その方法として、腹

腔鏡手術の積極的な導入や

周術期の早期復帰プログラ

ムの導入などが挙げられま

す。以前に比べ患者さんの

負担は格段に減っていると

思われますが、現状に満足

することなくさらなる改善

を目標に努力を継続してい

きたいと考えております。

 

日々進歩する治療法に対

応していくために、当講座

では研究活動も積極的に

行っております。癌の進展

や転移のメカニズムという

能です。そのデータから、

膝の靭帯再建術をどのよう

に行えば、より健常な膝に

近い動きを再現できるのか

検証しています。言えば易

しですが、実際に生身の患

者さんの膝の動きを精度の

高い方法で計測できる実験

室は日本国内には殆どあり

ません。〝日本にいては、

なかなか知ることが出来な

い新しい発見をする〟と言

う経験は、とても貴重で

す。勿論、米国という異国

の生活の中で、言葉や文化

の違いを感じながら、新し

い自分自身の発見もしてい

ます。

(前ページより)

ものを病理学的、生化学

的、および解剖学的等の多

方面の視点から研究してお

ります。また、弘前大学内

にとどまらず国内外の研究

室に多くの留学生を出し、

講座として大きな研究成果

が出せるように努めており

ます。また新しい手術方法

や化学療法などの治療法に

対する臨床研究も、自施設

のものから全国規模のもの

まで多く参加し進めており

ます。癌に苦しむ患者さん

にとって、たとえ小さくて

も光となり得る治療法を見

つけ出すことも、当講座の

大きな目標の一つです。

 

消化器外科学講座は、

多くの部門の支援があって

機能することができる科で

す。今後ともご支援のほど

どうぞよろしくお願い申し

上げます。

すい街ランキングで上位で

す。若者が多い、活き活き

とした街の中で、毎日研究

を楽しんでいます。

 

私の研究を一文にまとめ

ますと、〝膝関節の靭帯再

建手術を行った後の患者さ

んをトレッドミルの上で歩

いたり、走ってもらい、

その間に生じる膝のグラ

つきを健常な反対側の膝

と比較する〟です。その

ために、レントゲン装置

をトレッドミルの両脇に

設置し、走行・歩行中の

膝関節の骨の動きを透視

画像で記録します。患者

さんのCT画像から骨の

立体モデルを作成し、透

視画像へ同期させた上

で、患者さんの膝のグラ

つきを前後方向、内外側

方向、ねじれと言った六

方向で計測することが可

場合は、救急病院の先生方

のご協力はもちろんのこ

と、警察医会の先生方が熱

心に死後診断の領域に関

わってくださっており、特

にCTを用いた死後画像診

断については、臨床医のみ

ならず、司法・消防関係者

を交えて定期的に勉強会・

症例検討会を開催するな

ど、先駆的な取り組みもな

されています。このような

全県的な体制があればこ

そ、死因究明の質を維持・

向上できているものと考え

ます。

 

一方で、ハード面の整備

も死因究明には必要不可欠

です。着任以来、解剖室空

調システム・解剖台・ガス

クロマトグラフなど、設備

の新調を少しずつ行い、平

成三十一年三月には、当講

座が日本法医学会法医認定

医研修施設Aとして認定さ

れました。今後は、病理組

織検査・薬毒物中毒検査の

設備をさらに充実させる予

定です。

 

このように、質の高い法

医実務、またそのための環

境作りに注力しております

が、教員一名では将来性と

いう面でも限界があり、人

材の育成が急務です。法医

医師の不足という点で、東

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医学部ウォーカー第 90 号 令和元年 9月 18 日

部活動紹介

硬式庭球部男子部

医学科二年 赤 野 智 彦

硬式庭球部女子部

医学科三年 青 木 佐由美

 

弘前大学医学部硬式庭球

部女子部は、現在二十四人

が所属しており、外でテニ

スのできるシーズンは週四

回、雪の降る季節には体育

館で週二~三回活動してい

ます。練習メニューは男子

と異なりますが、テニス

コートまでの移動やその他

の行事は男女一緒に行って

おり、男子部も合わせると

計四十人以上の大所帯で、

仲良く活動

しておりま

す。保健学

科の学生も

在籍してい

る部活も多

い中、医学

科の学生の

みで活動し

ているのも

硬式庭球部

の大きな特

徴だと思い

ます。

 

在籍して

いる部員の

多くは大学

からテニス

を始めた初

心者です

が、皆が向

上心を持っ

て部活中熱心に練習に取り

組むため、一年間で大きく

成長します。そしてその練

習の成果は、部内でのラン

キング戦や他大学との定期

戦、青森県内の大会などを

通して、各部員が発揮する

ことができます。

 

年間を通して私たちが大

きな目標としている大会

は、五月行われる北医体

と、八月に行われる東医体

 

二〇一八年九月八日、大

坂なおみ選手が全米オープ

ンテニス女子シングルスで

優勝という歴史的な偉業を

達成しました。大坂選手の

活躍によりテニス人気に火

が付き、競技人口が増加の

一途を辿っています。その

ような中で、今回は我々弘

前大学医学部硬式庭球部が

日々どのような活動をして

いるのかご紹介させて頂き

たいと思います。

 

硬式テニス部男子は現

在、部員が二十一名いま

す。練習自体は基本的に男

女別で行いますが、部活と

しての活動はほぼ男女合同

となっています。その女子

を合わせると部員数は約四

十名とかなりの大所帯で、

医学部の部活ではトップク

ラスの人数が在籍していま

す。練習は基本的に屋外の

テニスコート、冬場は体育

館で行っています。

 

参加する大きな大会とし

ては、五月に北医体、八月

に東医体があ

り、この大会で

優勝することを

目標に日々練習

に励んでいま

す。それ以外に

も秋田大学や岩

手医科大学と毎

年定期戦を行っ

ており、他校と

の交流も盛んで

す。また、弘前

大学全学の硬式

庭球部との交流

も盛んです。

 

さて、先ほど

述べた東医体、

北医体について

です。これらの

大会ですが、男

子はシングルス

三本、ダブルス

二本の五ポイン

トのうち三ポイ

ントとった大学

が勝つという団

体戦のみ行われます。この

シングルス、ダブルスは選

手の重複ができません。つ

まり、各大学を代表する七

人のみがこの公式戦に出場

できるわけです。各大学で

本当に実力のある選手のみ

が選ばれ、大学を背負って

戦っています。各大会とも

全部員がその七人を全力で

応援しています。まさに一

致団結というものを肌で感

じることができる大会を毎

年全部員が楽しみにしてい

ます。そして七人に選ば

れ、あの場に立って戦いた

いという思いで皆必死に練

習をしています。日々の努

力が実を結ぶことを信じ、

これからも練習に励んでい

きたいと思います。

です。どちらも団体戦で、

シングルス二つ、ダブルス

一つの計四人が選手として

出場します。これらの大会

では部員全員が試合に出場

できるわけではありません

が、だからこそ、これらの

大会に出場することを目指

して多くの部員が互いに切

磋琢磨しながら向上心を

持って練習に取り組んでい

ます。試合本番では部員み

んなで選手を応援し、選手

はその応援に応えるべく全

力で試合に臨みます。勝っ

た時の喜びも負けた時の悔

しさも部員みんなで共有す

ることで、また次に向かっ

て部員一丸となって強く

なっていくことができます。

 

テニス以外には、お花見

やキャンプなど、部員みん

なで楽しめる行事も行なっ

ています。練習には真剣に

取り組み、楽しむ時は全力

で楽しむ、そんなところも

硬式庭球部の魅力だと思い

ます。

 

硬式庭球部での活動では、

思うように練習の成果が出

せず悔しい思いをすること

も勿論あります。しかしだ

からこそ、日々努力が実っ

た際の喜びは格別です。そ

の瞬間に向かい、これから

も部員一丸となって頑張っ

ていきたいと思います。

テレビに

出演して

ATVテレビ診察室に

出演して

消化器外科学講座 准教授 石 戸 圭之輔

 

先日、ATVテレビ診察

室という番組の収録に参加

いたしました。この番組は

各医学領域の専門家が、最

新の情報を紹介する内容で

す。今回は、消化器領域に

おける腹腔鏡手術およびロ

ボット手術がテーマとなっ

ておりました。私は「肝胆

膵領域における腹腔鏡手術

およびロボット手術」を担

当いたしました。同内容は

分かりやすそうで、実は分

かりづらい分野でもありま

す。視聴者の方々になるべ

く分かりやすくお伝えする

ために、以下の内容で紹介

を行いました。

 

現代の医療工学の目覚ま

しい発展により、これまで

不可能と考えられていた医

療が現実化されるように

なっております。外科の世

界においては、腹腔鏡手術

やロボット手術が、その医

療の代表的なものと言えま

す。消化器外科ではこれま

で、肝臓、胆嚢、または膵

臓疾患の手術を行う際に比

較的大きな開腹創を必要し

ておりました。肝臓、胆嚢、

および膵臓は腹腔内の深い

場所や到達が難しい場所に

位置しているため、開腹の

創を大きくする必要があり

ました。大きな創は、手術

を行う医師が繊細な指先を

使って臓器などを認識でき

るため、安全な手術を可能

にします。しかしその反

面、大きな創は術後回復や

社会復帰までに時間がかか

る原因となる場合も少なく

ありません。その開腹手術

の欠点を補う目的で、腹腔

鏡手術が登場しました。

 

一方で、二〇〇〇年に入

り腹腔鏡をさらに進化させ

たロボット手術というもの

が開発されました。腹腔鏡

手術は傷も小さく、患者さ

んへの侵襲は少なくて済み

ます。しかし、棒状の鉗子

を用いて手術を行うため、

あまり複雑な内容の手術や

非常に繊細な作業には向い

ていません。その欠点を補

う目的で開発されたものが

ロボット手術です。ロボッ

ト手術では、患者さんの腹

腔内に留置した専用の鉗子

をロボットに接続します。

執刀医はその鉗子を、患者

さんとは少し離れたコン

ソールと呼ばれるロボット

を操縦する機械の中で動か

します。執刀医の手や指の

動きを、腹腔内の鉗子を用

いて極めて精巧に再現させ

ることができます。その結

果、これまで腹腔鏡手術で

は不能と思われていた手技

や術式が可能となりまし

た。国内では二〇一八年に

五領域十二種のロボット手

術術式が保険収載を受けま

した。しかしながら、肝臓、

胆嚢、および膵臓のロボッ

ト手術はまだ保険診療下に

はできない状況です。弘前

大学を含めた全国の限られ

た施設で臨床研究が行われ

ております。近い将来、同

領域のロボット手術も保険

診療下に行う事ができるよ

うになることが期待されて

います。

 

以上、ATVテレビ診察

室の収録内容をご紹介いた

しました。説明する難しさ

を改めて知ることができ、

私にとってとても貴重な経

験となりました。もしAT

Vテレビ診察室出演の依頼

があった時には、どうぞ私

にご連絡ください。いろい

ろなノウハウをお伝えいた

します。

「ATVテレビ診察室」に

出演して

消化器外科学講座 助教 室 谷 隆 裕

 

このたび、四月二十一日

にATVテレビ診察室に

「胃癌・食道癌に対する腹

腔鏡・ロボット手術」とい

うテーマで出演させていた

だきました。

 

胃癌に対する手術は古く

から開腹手術が中心となり

行われてきました。低侵襲

手術としての腹腔鏡手術は

一九九一年に日本で初めて

施行され、年々増加傾向で

あり、全国的にみても開腹

手術と腹腔鏡手術は半々く

らいの割合になってきてい

ます。腹腔鏡手術のメリッ

トとして、疼痛軽減、術後

早期回復などがあげられま

すが、鉗子操作に制限があ

るなどのデメリットもあり

ます。ロボット手術では関

節機能を持った鉗子を使う

ことで腹腔鏡手術では操作

が困難であったことが可能

となり、より繊細で緻密な

手術操作が可能となる手術

であり、胃癌では二〇一八

(次ページへ続く)

Page 16: 「フレイル予防医学研究講座」...診療講師 板谷 博幸 心臓血管外科 令和元年6月1日~令和4年5月31日 診療講師 工藤 隆司 麻酔科 令和元年6月1日~令和4年5月31日

医学部ウォーカー第 90 号令和元年 9月 18 日

「ATVテレビ診察室」に

出演して大

館・北秋田地域医療学講座 

准教授 坂 本 義 之

 

この度、平成三十一年四

月二十八日にATVテレビ

診察室で、大腸癌の鏡視下

手術についてお話させてい

ただきました。

 

従来、大腸癌手術は開腹

手術が標準とされてきまし

たが、最近は開腹術と腹腔

鏡手術とのさまざまな比較

試験の結果が世界で報告さ

れ、腹腔鏡手術が標準治療

になりつつあります。日本

でも第Ⅲ相試験の結果を受

けて、大腸癌手術全体の約

七割が腹腔鏡下に行われて

いる現状です。腹腔鏡手術

の利点は何と言ってもその

傷の小ささと痛みの少な

さ、拡大視効果による機能

温存(神経や血管の視認)、

教育的効果であります。そ

してその利点は、狭い骨盤

を有する特に男性の直腸手

術において発揮されます。

 

今回は、その広く普及し

始めた腹腔鏡手術の他に、

さらに腹腔鏡手術での欠点

を補えるロボット手術につ

いても解説させていただき

ました。ロボット支援下大

麻酔科学講座 教授 廣 田 和 美

最新主要文献とガイドラインでみる麻酔科学レビュー 2019

書籍発刊 

昨年に続き二〇一九年度

版として、今年五月二十五

日に総合医学社から、私と

(前ページより)

年に保険適応となってい

ます。

 

食道癌に対する鏡視下

手術は一九九五年から日

本に導入されました。食

道癌手術はリンパ節郭清

を伴う食道亜全摘術自体

が過大侵襲手術であり、

胸腔鏡手術は胸壁破壊の

軽減による低侵襲化と拡

大視効果による精度の高

いリンパ節郭清が可能と

なることで、全国的に増

加傾向です。また、肺炎

などの術後呼吸器合併症

が少なく、早期回復にも有

用性が認められています。

 

以上の内容を放送でお話

しさせていただきました。

九分という尺の中に胃癌、

食道癌の二つの話を詰め込

むのはなかなか難しく、ま

た、初めてのことでしたの

で収録中は終始緊張しまく

りでしたが、千葉アナウン

サーのスムーズな進行で滞

りなく収録を終えることが

できました。

 

ローカル放送の日曜早朝

の放送とはいえ、オンエア

後は外来、入院患者さんか

ら放送を見たと少なからず

声を掛けられ、改めてメ

ディアの威力を感じまし

た。胃癌、食道癌ともに青

森県は死亡率上位の常連県

となっており、視聴者の皆

様が番組を通して胃癌・食

道癌に対する理解を深め、

短命県返上のための少しで

もお役に立てることを願っ

ております。

腸切除術でありますが、大

腸外科領域では①繊細なハ

イビジョン三次元画像と拡

大視効果、②鉗子の多関節

機能、③手振れの防止など

従来の鏡視下手術の欠点を

補充することができる一

方、保険診療となったのは

二〇一八年四月とつい最近

でありました。その時点で

施設基準、術者基準をす

べて満たしており、前述

した利点が生かせる狭骨

盤内の特に直腸癌手術を

適応とし、五十症例を超

すロボット支援下直腸癌

手術を行ってきておりま

す。難易度の高い両側側

方郭清も行っております

が、我々消化器外科医が

最も恐れる術後合併症の

一つである縫合不全が一

例もありません。安全性

の面からもまた機能温存

の面からも有効であると

考えております。

 

青森県の大腸癌の治療成

績はここ数年全国最下位と

なっております。市民へ向

けた啓蒙活動という観点か

らも、このようなメッセー

ジを伝える機会を与えてく

ださった青森県医師会の諸

先生方、収録に尽力してく

ださったATVのスタッフ

の皆様に感謝申し上げます。

札幌医大麻酔科学講座の山

蔭教授との共同監修で出版

しました。最初に刊行され

たのは一九九六年であり、

実に二十四年のロングセ

ラーとなっています。本書

は、麻酔科学領域として、

麻酔、集中治療、救急医療、

ペインクリニック・緩和領

域もカバーしています。そ

れぞれの分野のエキスパー

トが概説しており、内容が

理解しやすく、最近の動向

をどう読み解くかもわかる

と思います。麻酔科学領域

だけでも四十誌近くある学

術誌に目を通し、最近の趨

勢を正確に把握することは

時間的にも難しいと思いま

す。そういう意味でも、周

術期管理、疼痛・緩和医療

に関わる方々のお役に立て

る著書と思います。

⃝医学研究科【昇任】

発令日 所   属 職 名 氏  名 前 所 属R1.7.1 脳神経内科学講座 准教授 村上 千恵子 脳神経内科 助教

【採用】発令日 所   属 職 名 氏  名 前 所 属

R1.6.1整形外科学講座 助手 大山 哲司 整形外科 医員アイソトープ総合実験室 技術職員 成田 竜兵 アイソトープ総合実験室 非常勤職員

R1.7.1 放射線診断学講座 教授 掛田 伸吾 産業医科大学 講師

R1.8.1フレイル予防学研究講座 助教 和田 啓二 ヘルスケアマネジメント学講座 助教整形外科学講座 助教 佐々木 英嗣 大館市立総合病院

【配置換】発令日 所   属 職 名 氏  名 前 所 属

R1.8.1食と健康 科学講座 准教授 神田 晃 QOL推進医学講座 准教授フローラ健康科学講座 助手 杉村 嘉邦 食と健康 科学講座 助手

【辞職】発令日 所   属 職 名 氏  名 異 動 先 等R1.7.31 整形外科学講座 助手 大山 哲司 高度救命救急センター 医員

R1.8.31生体構造医科学講座 助教 髙橋 一人 福島県立医科大学放射線診断学講座 准教授 小野 修一 一般財団法人厚生会 仙台厚生病院

人 事 異 動(R1.6.1 ~ R1.8.31)

⃝附属病院【昇任】

発令日 所   属 職 名 氏  名 前 所 属R1.7.1 病理部 助教 明本 由衣 病理部 助手

【採用】発令日 所   属 職 名 氏  名 前 所 属

R1.6.1整形外科 助手 附田 愛美 整形外科 医員麻酔科 助手 緑川 陽子 麻酔科 医員

R1.7.1眼科 助教 安達 功武 青森県立中央病院歯科口腔外科 助手 小山 俊朗 歯科口腔外科 医員

R1.8.1 整形外科 助手 山内 大生 青森労災病院

【任命】発令日 所   属 職 名 氏  名 異 動 先 等R1.7.1 放射線診断科 科長 掛田 伸吾

【辞職】発令日 所   属 職 名 氏  名 異 動 先 等R1.6.15 消化器内科,血液内科,膠原病内科 助教 速水 史郎 青森労災病院R1.6.30 眼科 助教 毛内 奈津姫 青森県立中央病院R1.7.31 整形外科 助手 附田 愛美 整形外科 医員

診療教授等新規称号付与者(R1.6~ R1.8)称  号 氏  名 所   属 期   間

診療准教授 近藤 慎浩 心臓血管外科 令和元年6月1日~令和4年5月31日診療講師 三上 珠希 神経科精神科 令和元年6月1日~令和4年5月31日診療講師 板谷 博幸 心臓血管外科 令和元年6月1日~令和4年5月31日診療講師 工藤 隆司 麻酔科 令和元年6月1日~令和4年5月31日

 

日中の暑さも日に日に和

らぎ、澄んだ空に秋の訪れ

を感じる季節になりました

が、今回も医学部ウォー

カー第九十号を無事に発刊

することが出来ました。新

たな講座の開講をはじめ、

医学部長・病院長のご寄

稿、新任教授のご挨拶、数々

の受賞報告、学生・大学院

生・医師だよりや部活動の

報告などなど、盛りだくさ

んで充実した内容となりま

した。お忙しい中、原稿を

お寄せいただいた学生・教

職員の皆様に、この場をお

借りして厚く御礼申し上げ

ます。

 

さて、夏休みを終えた学

生たちの元気な姿が医学部

に戻ってまいりました。東

医体に参加して真っ黒に日

焼けした人、将来の進路を

見据えて病院見学に行った

人、追試の勉強で夏休みど

ころではなかった人など、

皆さん有意義な夏休みを過

ごされたことと思います。

ところで、学生の皆さんが

夏休みの間、臨床講義棟の

机と椅子やプロジェクター

が撤去されたのはご存知で

しょうか。長年慣れ親しん

だ講義室の伽藍とした姿を

目にすると一抹の寂しさを

感じますが、病院長の「医

学部附属病院の第三次再開

発」にもあるように、臨床

講義棟の取り壊しを皮切り

に、病棟の新築、臨床研究

棟の移転、続いて中央診療

棟、外来棟などの工事が順

次進められていきます。新

しく生まれ変わる弘前大学

医学部の将来が今から楽し

みですね。

(青木 

記)