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地域型コントラクターを核とした飼料イネ・飼料ムギ生産への取り組み 群馬県中部農業事務所普及指導課 主幹 石田 1 地域の概要 中部地域は群馬県のほぼ中央に位置し、3市2町1 村から構成され、「前橋地区」、「渋川地区」、「伊 勢崎地区」の3地区に分けられる。 大消費地である東京及びその周辺地域に近い立地 条件の下、水利や土地基盤の整備が進んだ農地等を活 用し、安全・安心で多彩な農畜産物を生産・供給して いる。 また、消費者や学校給食等と連携した地産地消、直 売所や農園を核とした観光農業、消費者ニーズや環境 等に配慮した農業の実践など、地域農業の維持・強化 に向けた様々な取り組みが行われている。 中部地域の農業産出額は、769億円(平成 18 年)で、県全体2 , 250億円の約34%を 占 め て お り 、農 業 の 特 色 と し て は 、前 橋 地 区 の 中 央 か ら 伊 勢 崎 地 区 に 広 が る 米 麦 二 毛 作 を 基 幹 とした土地利用型農業や赤城山南麓を中心とした県全体の4割以上を占める畜産業、各地域の 特性を活かした新鮮野菜生産及び赤城山麓や渋川市周辺の観光農業が行われている。 割合 割合 群馬県全体 77,000 ha 29,200 ha 38% 47,800 ha 62% 前橋地区 9,361 3,991 43% 5,370 57% 渋川地区 5,404 1,233 23% 4,171 77% 伊勢崎地区 6,035 2,486 41% 3,549 59% 中部全体 20,800 7,710 37% 13,090 63% 資料:第54次群馬農林水産統計(H18~H19) 中部地域における耕地面積(畦畔除く) 田畑計 戸数 頭数 戸数 頭数 戸数 頭数 戸数 千羽数 群馬県全体 850 45,100 860 70,800 402 610,200 121 7,701 前橋地区 236 12,120 173 16,930 125 181,900 34 2,077 渋川地区 59 2,370 114 11,030 58 85,560 21 1,098 伊勢崎地区 91 3,540 58 5,010 23 27,200 7 - 中部全体 386 18,030 345 32,970 206 294,660 62 3,175 (割合) 45% 40% 40% 47% 51% 48% 51% 41% 資料:第54次群馬農林水産統計(H18~H19) 中部地域における畜産農家数及び飼養頭羽数 乳用牛 肉用牛 69

地域型コントラクターを核とした飼料イネ・飼料ムギ生産へ …渋川地区 5,404 1,233 23% 4,171 77% 伊勢崎地区 6,035 2,486 41% 3,549 59% 中部全体 20,800

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Page 1: 地域型コントラクターを核とした飼料イネ・飼料ムギ生産へ …渋川地区 5,404 1,233 23% 4,171 77% 伊勢崎地区 6,035 2,486 41% 3,549 59% 中部全体 20,800

地域型コントラクターを核とした飼料イネ・飼料ムギ生産への取り組み

群馬県中部農業事務所普及指導課

主幹 石田 豊

1 地域の概要

中部地域は群馬県のほぼ中央に位置し、3市2町1

村から構成され、「前橋地区」、「渋川地区」、「伊

勢崎地区」の3地区に分けられる。

大消費地である東京及びその周辺地域に近い立地

条件の下、水利や土地基盤の整備が進んだ農地等を活

用し、安全・安心で多彩な農畜産物を生産・供給して

いる。

また、消費者や学校給食等と連携した地産地消、直

売所や農園を核とした観光農業、消費者ニーズや環境

等に配慮した農業の実践など、地域農業の維持・強化

に向けた様々な取り組みが行われている。

中部地域の農業産出額は、769億円(平成 18 年)で、県全体2 ,250億円の約34%を

占めており、農業の特色としては、前橋地区の中央から伊勢崎地区に広がる米麦二毛作を基幹

とした土地利用型農業や赤城山南麓を中心とした県全体の4割以上を占める畜産業、各地域の

特性を活かした新鮮野菜生産及び赤城山麓や渋川市周辺の観光農業が行われている。

割合 割合

群馬県全体 77,000 ha 29,200 ha 38% 47,800 ha 62%

前橋地区 9,361 3,991 43% 5,370 57%

渋川地区 5,404 1,233 23% 4,171 77%伊勢崎地区 6,035 2,486 41% 3,549 59%

中部全体 20,800 7,710 37% 13,090 63%資料:第54次群馬農林水産統計(H18~H19)

中部地域における耕地面積(畦畔除く)

田畑計 田 畑

戸数 頭数 戸数 頭数 戸数 頭数 戸数 千羽数

群馬県全体 850 45,100 860 70,800 402 610,200 121 7,701

前橋地区 236 12,120 173 16,930 125 181,900 34 2,077

渋川地区 59 2,370 114 11,030 58 85,560 21 1,098伊勢崎地区 91 3,540 58 5,010 23 27,200 7 -

中部全体 386 18,030 345 32,970 206 294,660 62 3,175

(割合) 45% 40% 40% 47% 51% 48% 51% 41%資料:第54次群馬農林水産統計(H18~H19)

中部地域における畜産農家数及び飼養頭羽数

鶏乳用牛 肉用牛 豚

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Page 2: 地域型コントラクターを核とした飼料イネ・飼料ムギ生産へ …渋川地区 5,404 1,233 23% 4,171 77% 伊勢崎地区 6,035 2,486 41% 3,549 59% 中部全体 20,800

2 取り組みの背景

畜産農家においては、年々規模拡大が進み、購入飼料への依存率が高まってきたが、昨今

の飼料価格高騰や口蹄疫等の発生、国の食料自給率向上施策等により、自給飼料の必要性が

再認識されている。また、規模拡大に伴い生産される堆肥の適正利用も求められている。一

方、農家の高齢化・労働力不足等から休耕田等が増加し、水田の利活用は重点的に取り組む

べき課題となっている。

このような中、新たな転作作物として飼料イネが注目され、群馬県では平成 8 年度から飼

料作物の作付け拡大や水田の有効利用を目的として推進してきた。

飼料イネの栽培においては、収穫作業が大きな問題であるが、群馬県では群馬県農業公社

が専用収穫機を導入し、平成 14 年度から収穫・調製作業を担う作業受託(コントラクター)

が開始された。しかし、その後の作付面積の増加に伴い、農業公社の作業受託に限界が生じ

てきていたことから、新たな作業受託組織として地域型コントラクターの育成とそれを中心

とした飼料イネ等の生産体系の構築が必要となった。

3 取り組み内容

1)前橋市における取り組み

ア)取り組みの経過

前橋市は、赤城南麓を中心とした畜産と、

平地での米麦二毛作が盛んな地域である。

飼料イネについては、平成 9 年度から一部

地域で畜産農家による作付けが始まり、平成

16 年まで徐々に面積が増えたが、その後、面

積は減少していた。

しかし、平成 20 年の飼料高騰のあおりを

受けて自給飼料への取り組みが再認識され、

荒砥地域を中心に酪農家と耕種農家の連携

による飼料イネ生産に取り組み始めたこと

から、自給飼料の増産や耕作放棄地対策、水田の有効利用や転作推進を図るため、荒砥地域

を重点地区に選定し支援を行った。平成 22 年度からは、それ以外の地域でも飼料イネへの

関心が高まってきため前橋市全域を対象に支援を行っている。

(ha)

年度 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23群馬県 124.5 131.8 150.9 164.6 177.7 204.6 289.2 391.2前橋市 47.3 51.3 26.4 26.8 34.6 58.3 118.2 166.9

※H23の面積は8月1日現在

飼料イネ作付け面積の推移

荒砥地域

宮城地域

南部地域

木瀬地域

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イ)推進体制(関係機関の連携と課題別プロジェクトの設置)

前橋市では、関係機関で組織する前橋市担い手育成総合支援協議会の中で課題別プロジェ

クトを立ち上げ、前橋市における農業の課題、推進方法等について協議を行い、課題の共有

化と連携を図っている。

自給飼料生産については、耕畜連携プロジェクトの中で堆肥の流通も含めた検討を行って

いる。特に、専用収穫機を利用した飼料イネ生産等については、生産者である耕種農家と利

用者である畜産農家との需給調整や収穫作業調整等も必要なことから専門部会の中で調整

を図っている。

前橋市担い手育成

総合支援協議会・前橋市

・前橋市農業委員会

・前橋市農業協同組合

・土地改良区

・群馬県中部農業事務所

課題別プロジェクト・耕畜連携

(自給飼料生産)

(耕作放棄地対策)

・新規就農者支援

・野菜振興

・集落営農法人支援

・地産地消・六次産業化

ウ)地域型コントラクターの設立状況

荒砥地域の泉沢地区では、農家の高齢化や後継者不足により耕作放棄地が増え、土地の有

効活用が課題となっていた。また、近隣の畜産農家では輸入飼料価格の高騰で安定した自給

飼料確保が必要であったことから、耕種農家と畜産農家の意見交換会や飼料イネ利用につい

てのアンケート調査等を行い、耕畜連携による飼料イネの取り組みについて合意が得られ、

平成 20 年に県内初の地域型コントラクター「荒砥北部粗飼料生産機械化組合」が設立され

た。翌 21 年には同じく荒砥地域内の二之宮地区で集落営農組合(現 農事組合法人二之宮)

が飼料イネ栽培へ取り組み初め、その後3地区で地域型コントラクターが設立され現在では

5組織が活動している。

機械 規格等 導入

荒砥荒砥北部粗飼料生産機械化組合

任意組合

20.11.26

耕畜

21

2

人人

専用収穫機ロールキャリアラッピングマシングローブ運搬車

ヤンマーYWH1400

トラクター牽引式

(自己)

11111

台台台台台

H20H21H20H20H18

飼料イネ飼料ムギ

46.07.0

haha

荒砥 (農)二之宮集落主体

(法人)22.08.31

耕畜

115 3

18

人人

専用収穫機ロールキャリアラッピングマシングローブホイルローダー

スターMBG1031

タカキタSW1100W(リース・自己)

11121

台台台台台

H21H21H21H21H21

飼料イネ 26.2 ha

木瀬 木瀬WCS利用組合任意組合

22.07.30

耕畜

23

10

法人

専用収穫機ラッピングマシングローブ運搬車

タカキタWB1030タカキタSW1100W(畜産農家)トレーラー(5t)

1131

台台台台

H22H22

H22

飼料イネ飼料ムギ

20.00.5

haha

宮城(農)鼻毛石

機械利用組合

集落主体

(法人)18.05.30

耕畜

45

5

人人

専用収穫機ラッピングマシングローブ運搬車

スターJCB1500TTWN1560

TMT5020S

1111

台台台台

H23H15H23H23

飼料イネ 8.6 ha

南部上陽

コントラクター任意組合

23.05.31

耕畜

51

7

人人

専用収穫機ラッピングマシンフロントローダーグローブ

ヤンマーYWH1500タカキタSW1110WYK380(自己)

1113

台台台台

H23H23H23

飼料イネ 19.8 ha

JA支所

組織名組織形態

設立年月日

構成員オペレーター

所有機械栽培面積(H23)

台数

- 71 -

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エ)地域型コントラクターの作業形態と役割

作業形態は、コントラクター組織が主体となって栽培管理や需給調整、収穫作業・運搬等

を行うものと集落組織(法人)が栽培から収穫・運搬作業までを行う2形態である。

耕種農家(集落) 畜産農家

コントラクター組織

作業形態(コントラクター主体)

集落組織

・飼料イネ等の栽培・収穫作業◎◎◎◎

畜産農家

作業形態(集落主体)

オ)生産体制(荒砥北部粗飼料生産機械化組合の事例)

①栽培・管理体系

(耕畜連携による堆肥の活用)

当組合では、堆肥を有効活用し化成肥料は全く使用していない。

前橋市は畜産経営が多いが、地域内で堆肥の活用が十分でなかったが、地域型コントラク

ターの設立により、自給飼料生産を基盤とした水田二毛作体系による堆肥の流通と利用が図

られるようになった。

(飼料イネ)

・収穫作業の幅を広げるため、品種選択や移植時期をずらした栽培を行う。

・効率的な収穫作業と品質向上のため、強めの中干しと早めの落水を行う。

・すべてのロールに乳酸菌添加を行い、廃棄ロスの低減を図る。

・土地の集積(団地化)により、効率的な作業体系を図る。

(飼料ムギ)

・除草剤を使用しないため、播種は適期(11 月下旬)に行い雑草を抑える。

・収量確保のため播種量を多めにし、麦踏みで土砂の飛散を防ぎ耐寒性を高める。

・排水不良の水田では、比較的耐湿性の高い六条オオムギを栽培している。

・二条オオムギの方が六条オオムギに比べ登熟が約 1 週間程度早くいため2品種を組み合

わせることで収穫時期の調整を行っている。

- 72 -

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②収穫調製作業

当組合では、飼料イネWCSや飼料ムギW

CSを「商品」として考え、取り扱いには特

に留意している。

例えば、ロールがフレール収穫機から排出

される際には、必ずシートを敷いた「排出場」

で排出し、圃場の土砂がロールに付着しない

ようにしている。

また、ラップフィルムの巻き数は早めに給

与するロールでは6層巻き、翌年春に給与す

るロールについては8層巻きで梱包し、保存

性の向上と品質保持に努めている。

収穫作業料金は、概ね 25,000 円/10a である。

③輸送・保管体系

収穫調製後は圃場で保管(1段静置)し、収穫した

時期が早いロールから先に使用できるようにすべて

の圃場の収穫調製が終了した後、収穫が遅い順に各畜

産農家の指定場所へ運搬する。

指定場所への運搬までが集落営農組織等の責任、そ

の後の保管管理に関しては畜産農家側が責任を持つ

体制となっている。

当組合では、1圃場を1ロットとし、各ロールに、

ロットナンバー、収穫日、圃場地番、品種、ロール重

量および添加剤の種類を記載し、栽培管理や収穫調製

などを確認できるトレサビリティーシステムを構築している。

流通価格は、助成金等を考慮し、概ね 3,000 円/ロール(200kg)である。(長距離の場合は運

賃別途)

カ)収穫期の拡大と組織連携による収穫作業の効率化

前橋市は、米麦二毛作体系のため飼料イネの栽培は、6月下旬に移植し10月下旬までに

収穫・運搬作業を終了する必要がある。

飼料イネの品質や栄養価を考えると、糊熟から黄熟期に収穫する必要があるが、専用収穫

機の能力は概ね1ha/日が限度である。飼料イネの面積拡大に対応するために、複数品種の

組み合わせや飼料ムギとの組み合わせにより収穫適期の拡大を図っている。

また、5つの地域型コントラクターが設立されたことにより、今年度から一部で組織連携

による収穫作業の効率化を図っている。

(土砂の混入を防ぐためシート上に排出)

(ロールごとにラベルを貼付)

- 73 -

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○熟期の異なる複数品種の導入

上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下

○飼料ムギの導入(中生品種の場合)

上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下

飼料イネ収穫期の拡大対策

播種収穫飼料ムギ

飼料イネ

(早植) 移植 収穫

(遅植) 移植 収穫

収穫

収穫

収穫

作物5月 6月 7月 8月 9月

収穫

小麦

大麦

食用稲

収穫

収穫 播種

播種

飼料イネ

移植

移植

移植

(早生品種)

(中生品種)

(晩生品種)

移植

作物

10月 11月

8月 9月 10月 11月5月 6月 7月

◎現状 ◎目標

組織連携による機械の効率利用と収穫作業の効率化(案)

B地区

品種:早生、中生、晩生

コントラクタ組織

A地区

品種:早生、中生

コントラクタ組織

C地区

品種:晩生

コントラクタ組織

A地区

品種:早生

B地区

品種:中生

C地区

品種:晩生

収穫順①

収穫順②

コントラクタ組織

コントラクタ組織

コントラクタ組織

キ)今後の課題

前橋市では、今後も飼料イネ等の面積拡大が予想されるため、耕畜連携プロジェクトが中

心となりコントラクター組織の連携等を図りながら下記の推進を行う。

①栽培及び収穫技術の向上による品質の向上と均一化

②生産コスト低減と流通単価等の検討

③栄養価の高い品種の導入と畜産農家への給与技術の普及

④機械の更新も含めた作業体系の見直し

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2)玉村町における取り組み

ア)玉村町の概要

玉村町は、群馬県南部に広がる関東平野の

西部に位置しており、町の北部に利根川、南

部に烏川が流れている。

水田は耕地面積の約 70 パーセントを占め、

米麦二毛作の農業生産活動が展開されてい

るが、兼業農家が多く、農家総数の約8割を

占めている。

平成5年に設立した(財)玉村町農業公社

による農地保有合理化事業により、認定農業

者や中核的農家を中心とした生産集団への

農地の利用集積が進むとともに作業受託も

多く見られるようになっている。

集落営農組織は、11組織が設立され、平成21年度に2組織、22年度に2組織が法人

化されたが、構成員の平均年齢が70才前後という組織がほとんどで、集落内に米麦生産を

委託できる認定農業者がいない地区もあり、今後も集落営農組織が水田農業の担い手とな

り、農地を維持していく必要がある。

イ)取り組みの経過

平成 22 年度から導入された戸別所得補償制度を受け、新たな転作作物として飼料イネ生

産への取り組みが開始された。

飼料イネ生産では、通常、畜産農家やコントラクター組織が収穫作業等を請け負う場合が

多いが、玉村町内には畜産農家がほとんどいないため(財)玉村町農業公社が、専用収穫機

を導入して収穫作業を行っている。

生産されたロールは公社が買い上げ、K飼料(株)に発酵TMRの原料として供給してい

る。

栽培面積は、平成 22 年度が約 12ha、平成 23 年度は約 27ha となっている。

ウ)生産体制

農業公社が中心となり栽培面積等の調

整、収穫及び運搬、販売等を行い、栽培管

理は各集落が行っている。

①栽培管理

町内には、畜産農家が少ないことから堆

肥がほとんど利用できないため、化成肥料

のみで施肥を行っている。

集落ごとの作業スケジュールを考慮し、

K飼料(株)

(財)K牧場

耕種農家(集落) K飼料(株)

玉村町農業公社

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Page 8: 地域型コントラクターを核とした飼料イネ・飼料ムギ生産へ …渋川地区 5,404 1,233 23% 4,171 77% 伊勢崎地区 6,035 2,486 41% 3,549 59% 中部全体 20,800

(フロントローダーに直接排出) (軽トラックで保管場所へ運搬)

(梱包して一時保管)

収穫適期が集中しないように移植時期を変えたり食用品種も含めた複数品種を組み合わせ

たりして収穫時期を調整している。特に排水の悪い地区については、中干しの徹底と早めの

落水を心掛けている。

②収穫作業体系及び保管と運搬方法

収穫作業以降の作業は、すべて農業公社が請け

負っている。平成 22 年度は町内の業者に収穫と

運搬作業を委託していたが、期間契約であるため

作業コストが予想以上に高くなってしまった。そ

のため、平成 23 年度は各集落からオペレーター

を出してもらい収穫作業を行った。

また、運搬は運送会社の大型トラックを利用す

るため、作業効率を考慮して、今年度は各JA支

所及び道路に面した空き地を確保し一時保管を行っている。

収穫作業では、土砂等の混入による品質の低下防止のためロールの排出時に圃場に落とさ

ず、フロントローダーで直接軽トラックに乗せて保管場所まで運搬している。また、保管場

所が比較的圃場の近くに確保できたことから、梱包作業は保管場所へ運搬後に行っている。

保管場所でも、土砂の混入を防ぐためシートの上に落とし、自走式ラッピングマシンによ

り梱包作業をして保管している。ロールには圃場 No と製品の通し No を記載し、一覧表を作

成して製品管理を行っている。

(オペレーター講習会)

(一時保管場所)

- 76 -

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(乾田直播栽培の生育状況)(麦播き機による播種作業)

③販路の拡大

平成 22 年度は生産されたロールをK飼料(株)に発酵TMRの原料として全量販売した

が、輸入乾牧草並の単価であり予定よりも安い価格であった。そのため平成 23 年度は、以

前から飼料イネを希望していた、K牧場に約 130 ロールを試験的に販売した。

また、両方とも遠距離であるため運送賃もかかることから隣接する伊勢崎市等の近隣の畜

産農家も視野に入れた販路拡大を検討中である。

④低コスト生産技術の検討

生産コスト低減と作業の省力化を図るため試験的に乾田直播栽培に取り組んだ。

移植栽培と比較して雑草が繁茂することが心配されたが、予想以上に雑草の発生が抑えら

れ生育も概ね順調だったことから、栽培方法の一つとして今後も検討していく予定である。

エ)今後の課題

玉村町は担い手が減少しており、水田等をどのように維持管理していくかが大きな問題で

ある。そのため、意欲ある担い手を中心に集落営農組織による飼料イネ等を取り入れた作業

体系を今後も検討していく。

4 まとめ

水田における飼料イネ等への取り組みは、自給飼料の増産や堆肥の流通促進、担い手不足に

よる耕作放棄地解消等の問題解決の一助となっている。

その中でコントラクター組織の役割は非常に大きく、今後も耕畜連携による自給飼料生産や

水田等の維持管理等、地域の担い手として期待されている。

しかし、現在の取り組みは、戸別所得補償制度等による助成金に依存している状況であり、

制度の変更等によって生産体制が崩れてしまう不安定要素を抱えている。

地域農業の維持発展のためには、関係機関や地域が一体となって情勢等に左右されない体制

を構築していく必要がある。

- 77 -