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40 NOVEMBER 2015 今や全世帯の3 軒に1軒となった単身世帯。幅広い世代で一人暮らしをする人が増える中,本稿では40 代と50 代の未婚単身女性に焦点を絞り,テレビとの関与の仕方や番組選択の特徴を定量調査と定性調査の結果からまと めた。定量調査,定性調査ともに,子どもを持つ既婚の女性との比較分析も行った。 定量調査の結果からは,未婚単身女性は「ドキュメンタリー」や「語学・教養番組 」などを好み,知的欲求が高 い傾向がみられた。また,価値観や活動性をもとにクラスター分析を行った結果,活動性が高い人は幅広いジャ ンルの番組を視聴する傾向がみられ,逆に活動性が低い人は多くの話題に拒否感を示す傾向がみられた。 定性調査の結果からは,未婚単身女性は,テレビを長時間視聴しているが,パソコンとの同時視聴で内容をあ まり真剣に見ていない傾向があった。仕事から休息への切り替えができるという理由から,「バラエティー」を視聴 する人が多い一方で,時間的・精神的に余裕がなく「ドラマ」はあまり視聴しなくなっているという人が多くみられ た。また,「バラエティー」「ドラマ」「ドキュメンタリー」「教養番組 」などの各ジャンルの中でも好まれる要素と好まれ ない要素が存在していた。 さらに,成育歴や自分に対する満足感,現在の心理状況などの要素によってタイプ分けをした結果,それぞれ のタイプで異なる番組ニーズを持っている傾向が見受けられた。 「おひとりさま」のテレビライフ ~ 40 代・50 代未婚単身女性への量的・質的調査より~ メディア研究部 宮下牧恵 1 はじめに 2010(平成 22)年度の国勢調査によると,単 身世帯数は1,678万5,000となり,すべての一 般世帯(5,184万2,000)に占める割合は32.4% となった。この割合は,2005(平成 17)年度の 調査と比べ,16.1%の増加である 1) 。その結果, 「標準世帯」と言われる夫婦と子どもから成る世 帯数を上回り,単身世帯が最も多い家族類型と なったのだ。 さらに,単身世帯は今後もしばらく増加して いくと予測されている 2) 。 中でも特に中高年の 増加が多くなるとみられている (図 1) 上記の予測に基づくと,テレビ視聴の傾向 として,今後一人暮らしをしながら,一人でテ レビを見る人が増えていくと考えられる。では, 単身者と,家族と暮らしながらテレビを見る人 図1 単身者数(性・年代別)現状と将来予測 40 ~ 59 歳 60 ~ 79 歳 80 歳以上 40 ~ 59 歳 60 ~ 79 歳 80 歳以上 125 141 32 女性 男性 77 196 185 250 271 307 (万人) 256 291 301 2030(平成42)年 2010(平成22)年 注)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計 (全国推計)2013(平成 25 )年 1月推計」に基づき作成

「おひとりさま」のテレビライフ - NHK · 42 2015 本研究は,以下の2段階に分けて実施した。 1)web調査で「おひとりさま」のテレビ視聴

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40  NOVEMBER 2015

今や全世帯の3 軒に1軒となった単身世帯。幅広い世代で一人暮らしをする人が増える中,本稿では40 代と50代の未婚単身女性に焦点を絞り,テレビとの関与の仕方や番組選択の特徴を定量調査と定性調査の結果からまとめた。定量調査,定性調査ともに,子どもを持つ既婚の女性との比較分析も行った。

定量調査の結果からは,未婚単身女性は「ドキュメンタリー」や「語学・教養番組」などを好み,知的欲求が高い傾向がみられた。また,価値観や活動性をもとにクラスター分析を行った結果,活動性が高い人は幅広いジャンルの番組を視聴する傾向がみられ,逆に活動性が低い人は多くの話題に拒否感を示す傾向がみられた。

定性調査の結果からは,未婚単身女性は,テレビを長時間視聴しているが,パソコンとの同時視聴で内容をあまり真剣に見ていない傾向があった。仕事から休息への切り替えができるという理由から,「バラエティー」を視聴する人が多い一方で,時間的・精神的に余裕がなく「ドラマ」はあまり視聴しなくなっているという人が多くみられた。また,「バラエティー」「ドラマ」「ドキュメンタリー」「教養番組」などの各ジャンルの中でも好まれる要素と好まれない要素が存在していた。

さらに,成育歴や自分に対する満足感,現在の心理状況などの要素によってタイプ分けをした結果,それぞれのタイプで異なる番組ニーズを持っている傾向が見受けられた。

「おひとりさま」のテレビライフ~ 40 代・50 代未婚単身女性への量的・質的調査より~

メディア研究部 宮下牧恵

1 はじめに

2010(平成22)年度の国勢調査によると,単身世帯数は1,678万5,000となり,すべての一般世帯(5,184万2,000)に占める割合は32.4%となった。この割合は,2005(平成17)年度の調査と比べ,16.1%の増加である1)。その結果,

「標準世帯」と言われる夫婦と子どもから成る世帯数を上回り,単身世帯が最も多い家族類型となったのだ。

さらに,単身世帯は今後もしばらく増加していくと予測されている2)。 中でも特に中高年の増加が多くなるとみられている(図1)。

上記の予測に基づくと,テレビ視聴の傾向として,今後一人暮らしをしながら,一人でテレビを見る人が増えていくと考えられる。では,単身者と,家族と暮らしながらテレビを見る人

図1 単身者数(性・年代別)現状と将来予測

40~59歳

60~79歳

80歳以上

40~59歳

60~79歳

80歳以上125

141

32

女性

男性

77

196

185250

271307

(万人)

256

291301

2030(平成42)年2010(平成22)年

注)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2013(平成 25)年 1月推計」に基づき作成

41

とで,テレビとの接触の仕方や見たい番組に違いはあるのだろうか? そう疑問を感じ,先行研究にあたったが,単身者に対象を絞った調査はあまり見当たらなかった 3)。

そこで,これまであまり調査対象として取り上げられることがなかった単身者が,どのようにテレビを視聴し,どのような番組選択を行っているのかを調べるとともに,その背景にある仕事や生活に対する考え方についても調査を行うことにした。

調査を進めていく上では,単身生活をしている男女を「おひとりさま」と呼ぶことにする。そもそも「おひとりさま」という言葉が登場したのは,1999年にジャーナリストの故・岩下久美子氏が「おひとりさま向上委員会」を設立したのがきっかけとされる。「おひとりさま向上委員会」とは,一人客の呼称である「おひとりさま」に新しい意味づけをすることによって,女性が一人で快適に外食をしたり,旅をしたりすることを応援する活動であった。

当時「おひとりさま」に与えられた新しい意味とは,「個」の確立ができている大人の女性というものであり,女性に対して用いる言葉であった4)。しかし近年は,男女を問わず一人で暮らし,行動する人を「おひとりさま」と示す著作も多くみられるようになっている。そのため,本研究でも男女を問わず単身生活をする人を「おひとりさま」と位置づけることにした。

本研究を行うにあたり,幅広い年代で「おひとりさま」が増加している現在,そのライフスタイルやテレビ視聴の実態を一括りに捉えることは難しいと考えた。「おひとりさま」の中には,未婚で一人暮らしをする人もいれば,離別や死別により一人暮らしをする人も,配偶者はいるが単身赴任などの事情により一人暮らしをする

人もいる。それらの様々な条件を一括りにして調査を行っても有意な分析はできないだろうと考えたのである。

そこでまず,男女別で年代も分けて調査を行っていくことを計画した。今回,最初の対象として選んだのは40代・50代の未婚単身女性である。その理由は,以下のようなデータがあるからである。

1990(平成2)年と2010(平成22)年の国勢調査で40代・50代の単身女性の数を比較すると,単身者全体では5割ほど増加しており,中でも未婚単身者は2倍近くになっている。そして2010年には,単身者全体の半数近くを未婚者が占めていることがわかる(図2)。

このように,40 代・50 代の未婚単身女性は確実に増加しており,今後も一人暮らしが続いていく可能性が高いと考えられる 5)。そのためこの層から調査を開始することが適当と判断したのである。

これ以降,本稿で登場する「おひとりさま」という言葉は,特にことわらない限り,40代・50代の未婚単身女性を指すこととする。

図 2 40 代・50 代の単身女性数の変化~ 1990(平成2)年と 2010(平成22)年の比較~

注)平成 2 年・平成 22 年国勢調査(総務省統計局)に基づき作成

(万人)

その他単身女性

未婚単身女性

2010年(平成 22 年)

1990年(平成 2 年)

0.00.20.40.60.81.0

5535

70

136

66

90

その他単身女性未婚単身女性

NOVEMBER 2015

42  NOVEMBER 2015

本研究は,以下の2 段階に分けて実施した。1)WEB 調査で「おひとりさま」のテレビ視聴

時の行動や生活環境,結婚観などを幅広く把握し,その結果を用いて「おひとりさま」のタイプ分け(クラスター化)を行う。

2)そのクラスターごとに「おひとりさま」のグループインタビューを行い,価値観・志向性やテレビとの関わり方や意識を確認する。

また,WEB調査・グループインタビューともに,「おひとりさま」と比較するために,同年代の既婚で子どもを持つ女性(以下,「既婚・子あり」)も同様の調査をした。

2 WEB調査の結果から

今回のWEB調査の概要を表1にまとめた。

【テレビとの関わりにみられる特徴】

結論から先に述べると,「おひとりさま」と「既婚・子あり」は,テレビとの関わり方や興味分野が異なっている傾向がみられた。

WEB調査では,まず「おひとりさま」及び「既婚・子あり」に対して,普段のテレビの見方やその時の気持ちについていくつかの質問を行った。例えば,「テレビは自分にとってなくてはならない」「ストレス発散のためにテレビを思う存分見ることがある」などの項目に対して,

「はい」か「いいえ」で答えてもらった。このうち,「おひとりさま」が「はい」と答えた

割合が,「既婚・子あり」を上回っていた項目について,表2にまとめた。

以上の結果から,「おひとりさま」は「既婚・子あり」に比べて,「家に帰るとテレビをすぐにつけて,しかもずっとついている」状況である人が多いことがわかる。また,「見たいテレビ番組の好みがはっきりしており,一人でテレビを見ることを楽しんでいる」様子もうかがえる。しかし一方で,テレビを一度も見たくない日もあると答えている人の割合も「既婚・子あり」に比べて高い。これは「おひとりさま」には,取捨選択を行って視聴している傾向があるからであろう。

表 1 WEB 調査の概要

表 2 テレビとの関与の仕方(複数回答)〈WEB 調査より〉

1. 調査時期: 2014 年 12 月 15 日(月)~ 19 日(金)

2. 調査方法: WEB 調査

3. 調査対象: 1 都 6 県に在住の 40 ~ 59 歳の 「おひとりさま」と既婚で子どもを持つ女性

※ ビデオリサーチ社に登録した調査モニターから抽出

標本構成40 ~44 歳

45 ~49 歳

50 ~54 歳

55 ~59 歳 計

おひとりさま 104 109 100 103 416

既婚者(同居の夫と子どもあり) 120 118 120 121 479

(人)

(%)

おひとりさま

既婚・子あり

家に帰ったらテレビをすぐつける 61 43

家にいるときにはテレビがずっとついている 47 33

見たい番組の好き嫌いがはっきりしている 88 79

テレビは一人で見る方が楽しめる 75 51

好きな番組は一人でじっくり見たい 85 76

テレビを一度も見たくない日もある 39 28

「おひとりさま」と「既婚・子あり」で差があった項目

N=416 N=479

43

【興味分野からみられる特徴】

次に,「おひとりさま」と「既婚・子あり」が興味を持っている分野が異なるかどうかについて比較した。いくつかのテーマを提示し,「あなたが興味があるものをすべてお選びください」という質問を行った(図3)。「おひとりさま」は,「美術・舞台・コンサート・

芸術」「日本の伝統文化や技術」といった芸術分野や文化に対する興味・関心が高い。また

「海外のニュース」「世界の遺産や名所巡り」についても興味を持つ人が多く,海外の話題への関心が高いこともうかがえた。「既婚・子あり」については,ある意味当然であるが,「育児・教育」「妊娠・出産」について「おひとりさま」よりも関心が高かった。一方,「恋愛」や「結婚」については,「おひとりさま」と「既婚・子あり」でそれほど大きな違いはみられなかった。

テレビ番組の好みも,興味分野についての

傾向と似ており,「既婚・子あり」とは異なっていた。図4は,「あなたはどのようなジャンルの番組をよく見ますか。あてはまるものをすべてお選びください」と質問し,選択してもらった結果である。「既婚・子あり」に最も視聴されているジャン

ルは「日本のドラマ」である。一方で,「おひと

図 3 興味がある分野(複数回答)〈WEB 調査より〉

図 4 よく見る番組ジャンル(「おひとりさま」で多い順・複数回答)

〈WEB 調査より〉

(%)6967

5671

5241

41

40

44

45

33

32

36

31

30

32

30

26

29

29

22

22

24

25

23

21

21

19

1818

1817

10

14

17

27

アニメ・マンガ

海外ドラマ(韓流などのアジアもの)

語学・教養番組(経済・歴史・美術など)

音楽番組

スポーツ番組

自然番組

クイズ番組

グルメ番組

生活・実用番組(料理・住まい・健康など)

ワイドショー

紀行・旅番組(海外)

紀行・旅番組(国内・町歩き)

海外ドラマ(欧米もの)

娯楽系バラエティー(お笑い・トーク・ゲームなど)

情報系バラエティー(時事解説など)

ドキュメンタリー

日本のドラマ

ニュース報道番組

既婚・子あり「おひとりさま」

(%)46

4434

40

39

24

25

25

2118

1210

22

2214

7

3

2

結婚

恋愛

妊娠・出産

育児・教育

キャリアアップ・転職

海外のニュース

日本の伝統文化や技術

世界の遺産や名所巡り

美術・舞台・コンサート・芸術

既婚・子あり「おひとりさま」N=416 N=416N=479 N=479

NOVEMBER 2015

44  NOVEMBER 2015

りさま」は「日本のドラマ」よりも「ニュース報道番組」をよく視聴している。

また,「既婚・子あり」に比べて「おひとりさま」は「ドキュメンタリー」を視聴している。そして,興味分野と同様,美術や文化,海外について扱ったものへの関心がみられ,「紀行・旅番組

(海外)」「語学・教養番組(経済・歴史・美術など)」も「既婚・子あり」より多く視聴している。こうしてみると,「おひとりさま」は知的欲求が高い傾向がうかがえる。「おひとりさま」が「日本のドラマ」を「既婚・

子あり」ほどは好まないという傾向は,グループインタビューでも同様であった。この「おひとりさま」と「既婚・子あり」のドラマニーズの違いについては,章を改めて詳述する。

以上のようにWEB調査の結果,「おひとりさま」と「既婚・子あり」を比較すると興味や関心,テレビとの関わり方,番組のニーズも異なっている傾向がみられた。

【価値観や活動性に関するクラスター分析】

これまで示したのは,WEB調査でみられた,「おひとりさま」全体に共通する傾向である。しかし,「おひとりさま」にも様 な々人がいるため,価値観や活動性によって関心が異なるのではないかと考えた。そこで,グループインタビューを行う際に,価値観や活動性が似た人をまとめたグループを設定し,それぞれのグループによって,テレビとの関わり方や番組ニーズが異なるかどうかを調査できるよう,WEB調査で

「おひとりさま」を分類することにした。まず,「おひとりさま」が持つ価値観や活動性

について因子を析出し 6),クラスターを作った。クラスターは4つに分かれ,活動性をもとに並べると次のようになった。

①「アクティブ・トレンド敏感」タイプ②「女性的・恋とおしゃれ追求」タイプ③「平凡・マイペース」タイプ④「無気力・無関心」タイプ

活動性の違いに注目したのは,ミドル女性の「おひとりさま」は「アクティブ化」し,映画,演劇などを観ることにお金を使うようになっていると指摘されている7)ことから,「活動性が高くなるとテレビ番組に対しても関心が高くなるのではないか」という仮説を立てたためである。

各タイプの構成比は,表3の通りである。

最も活動性が高い①「アクティブ・トレンド敏感」タイプは,他のクラスターに比べて外出の機会が多く,海外旅行に行ったり,コンサートや舞台などをよく鑑賞に行ったりするなど活動的な傾向がある。さらに,いつまでも美しくありたいという意識が高く,恋や結婚にも高い関心を持っていた。

次に活動性が高い②「女性的・恋とおしゃれ追求」タイプは,他のクラスターに比較して,美容やおしゃれに対する関心が高い傾向が強く,恋愛をして結婚をしたいという価値観を持つタイプである。価値観としては「アクティブ・トレンド敏感」タイプに似ているが,外出の機

表 3 「おひとりさま」の各クラスターの比率〈WEB 調査より〉

(%)

①「アクティブ・トレンド敏感」タイプ 20

②「女性的・恋とおしゃれ追求」タイプ 21

③「平凡・マイペース」タイプ 31

④「無気力・無関心」タイプ 28

N =416

45

会はそれほど多くない傾向がみられた。3 番目に活動性が高い③「平凡・マイペース」

タイプは,自分らしさを追求する傾向があり,あまり人と関わることを好まない傾向があった。いくつになっても女性的で美しくあるべきだという価値観は持っている反面,恋愛や結婚に対する意向の質問には「はい」と答えた割合が低く,現実の生活では消極的な面がうかがえる。

最も活動性が低い④「無気力・無関心」タイプは,他のクラスターに比べて外出の機会が少なく,何事にも無関心な傾向がみられた。

この4つのクラスターを比較していくと,活動性に比例して興味分野が幅広くなる傾向が

明らかになる。表4は,クラスター別に,興味があると答えた割合が高いテーマを順に並べたものである。

これを見ると,①「アクティブ・トレンド敏感」タイプは幅広いテーマに興味を持つが,②,③と活動性が低くなるに従ってその幅は狭まり,④「無気力・無関心タイプ」では興味を持つテーマが非常に少ないことがはっきりとわかる。また「妊娠・出産」や「育児・教育」などはすべてのクラスターで興味が薄いが,「ファッション」「アンチエイジング」などはクラスターごとに興味の差が大きい。

さらに,WEB調査では,テレビで見たくないテーマについても質問した。これは先に述べ

表 4 「おひとりさま」クラスター別 興味があるテーマ(多い順・複数回答)〈WEB 調査より〉

(%)

CL ①「アクティブ・トレンド敏感」

タイプ

CL ②「女性的・恋とおしゃれ追求」

タイプ

CL ③ 「平凡・マイペース」

タイプ

CL ④ 「無気力・無関心」

タイプ

健康・体調管理 64 健康・体調管理 55 健康・体調管理 54 美術・舞台・コンサート・芸術 44

ファッション 62 アンチエイジング 52 節約術 50 健康・体調管理 41

インテリア・雑貨 61 美術・舞台・コンサート・芸術 45 アンチエイジング 45 日本の伝統文化や技術 41

アンチエイジング 58 国内スポットやおいしい店 45 美術・舞台・コンサート・芸術 44 世界の遺産や名所巡り 37

世界の遺産や名所巡り 57 海外のニュース 45 世界の遺産や名所巡り 44 節約術 31

海外のニュース 55 インテリア・雑貨 44 インテリア・雑貨 41 海外のニュース 28

美術・舞台・コンサート・芸術 54 日本の伝統文化や技術 44 ダイエット・シェイプアップ 40 掃除など家事について 28

節約術 50 節約術 43 掃除など家事について 40 国内スポットやおいしい店 25

国内スポットやおいしい店 46 世界の遺産や名所巡り 43 国内スポットやおいしい店 36 インテリア・雑貨 22

海外のグルメ 45 ダイエット・シェイプアップ 40 日本の伝統文化や技術 35 ダイエット・シェイプアップ 19

ダイエット・シェイプアップ 45 ファッション 38 海外のニュース 34 海外のグルメ 18

日本の伝統文化や技術 44 掃除など家事について 35 ファッション 33 アンチエイジング 17

恋愛 42 恋愛 32 海外のグルメ 29 キャリアアップ・転職 14

キャリアアップ・転職 41 海外のグルメ 30 金融・投資の情報 18 ファッション 9

掃除など家事について 38 金融・投資の情報 22 恋愛 17 金融・投資の情報 8

金融・投資の情報 32 キャリアアップ・転職 21 キャリアアップ・転職 17 恋愛 3

結婚 24 結婚 17 結婚 9 結婚 2

育児・教育 6 育児・教育 3 妊娠・出産 2 妊娠・出産 0

妊娠・出産 2 妊娠・出産 2 育児・教育 2 育児・教育 0

あてはまるものはない 4 あてはまるものはない 9 あてはまるものはない 6 あてはまるものはない 17※ 網かけ部分は,回答が 40% 以上の項目

NOVEMBER 2015

46  NOVEMBER 2015

表 5 「おひとりさま」クラスター別 テレビで見たくないテーマ(多い順・複数回答)〈WEB 調査より〉

CL ①「アクティブ・トレンド敏感」タイプ

CL ②「女性的・恋とおしゃれ追求」タイプ

家族の破たんが描かれたもの 61 女性が失恋するもの 56女性が失恋するもの 56 家族の破たんが描かれたもの 51家族の介護をしている女性の姿 52 家庭も仕事もほどほどにしている女性の姿 51親の介護をしている人の姿 51 幸せそうな家族を追ったもの 49家庭も仕事もほどほどにしている女性の姿 44 幸せそうな恋人たちの様子や物語 49母親として育児を頑張っている女性の姿 39 子どもの成長物語 49幸せそうな恋人たちの様子や物語 38 母親として育児を頑張っている女性の姿 46子どもの成長物語 38 仲良し夫婦の姿 43幸せそうな家族を追ったもの 37 資格や語学力を生かして活躍している女性の姿 41仲良し夫婦の姿 37 親の介護をしている人の姿 38親子の葛藤を描いたもの 37 親子の葛藤を描いたもの 37労働環境について扱っている話題 30 労働環境について扱っている話題 36仕事をバリバリとこなしている女性の姿 29 家庭と仕事を両立している女性の姿 36資格や語学力を生かして活躍している女性の姿 26 家族の介護をしている女性の姿 35家庭と仕事を両立している女性の姿 25 仕事をバリバリとこなしている女性の姿 32いつまでも美しくいようとする女性の姿 23 作家や漫画家など特殊な才能を持った女性の姿 30お金がなくてもいきいき暮らしている女性の姿 23 趣味に生きる女性の姿 29作家や漫画家など特殊な才能を持った女性の姿 20 いつまでも美しくいようとする女性の姿 29趣味に生きる女性の姿 19 未婚の一人暮らしの人が将来どうなるか論じているもの 26海外で働いている女性の姿 17 お金がなくてもいきいき暮らしている女性の姿 25未婚の一人暮らしの人が将来どうなるか論じているもの 14 将来の目的や夢に向かって努力している女性の姿 24将来の目的や夢に向かって努力している女性の姿 11 海外で働いている女性の姿 22この中にあてはまるものはない 21 この中にあてはまるものはない 24

CL ③ 「平凡・マイペース」タイプ

CL ④ 「無気力・無関心」タイプ

家族の破たんが描かれたもの 60 家族の破たんが描かれたもの 60女性が失恋するもの 59 親子の葛藤を描いたもの 60親子の葛藤を描いたもの 54 女性が失恋するもの 59子どもの成長物語 54 幸せそうな恋人たちの様子や物語 56母親として育児を頑張っている女性の姿 54 いつまでも美しくいようとする女性の姿 55家族の介護をしている女性の姿 53 家族の介護をしている女性の姿 54幸せそうな恋人たちの様子や物語 50 幸せそうな家族を追ったもの 53資格や語学力を生かして活躍している女性の姿 49 親の介護をしている人の姿 53親の介護をしている人の姿 48 子どもの成長物語 53幸せそうな家族を追ったもの 47 仲良し夫婦の姿 53家庭と仕事を両立している女性の姿 47 家庭も仕事もほどほどにしている女性の姿 53仲良し夫婦の姿 45 母親として育児を頑張っている女性の姿 52家庭も仕事もほどほどにしている女性の姿 45 資格や語学力を生かして活躍している女性の姿 49仕事をバリバリとこなしている女性の姿 43 家庭と仕事を両立している女性の姿 48労働環境について扱っている話題 43 仕事をバリバリとこなしている女性の姿 45作家や漫画家など特殊な才能を持った女性の姿 40 海外で働いている女性の姿 40いつまでも美しくいようとする女性の姿 38 労働環境について扱っている話題 39海外で働いている女性の姿 36 未婚の一人暮らしの人が将来どうなるか論じているもの 39趣味に生きる女性の姿 35 趣味に生きる女性の姿 38未婚の一人暮らしの人が将来どうなるか論じているもの 33 作家や漫画家など特殊な才能を持った女性の姿 36将来の目的や夢に向かって努力している女性の姿 28 将来の目的や夢に向かって努力している女性の姿 35お金がなくてもいきいき暮らしている女性の姿 23 お金がなくてもいきいき暮らしている女性の姿 32この中にあてはまるものはない 16 この中にあてはまるものはない 24

(%)

※ 網かけ部分は,回答が 40% 以上の項目

47

た興味分野とは裏返しに,活動性が高い人々は,テレビで視聴する話題について全体的に拒否感が少ない一方,活動性が低い人々はテレビで見たくないものが多くなる傾向があった

(表5)。

3 グループインタビューの結果から

【グループインタビューの概要】グループインタビューの概要を,表6にまとめ

た。前述のように,グループインタビューにおいては,WEB調査で行ったクラスター分析の結果でみられた違いを確かめるために,クラスター別にグループを設定することとし,クラスター①~③の各1グループと,3クラスター混成グループを1グループ作った。しかし,活動性が低い「おひとりさま」はテレビへの関心が低く,どのような番組ニーズを持っているかを聞き

出すことが難しいと判断し,クラスター④の「無気力・無関心」タイプについてはグループインタビューの対象から外した。また,WEB調査の結果,「おひとりさま」の9割近くが有職者だったため,グループインタビューの対象者は有職者とした。

さらに,「おひとりさま」の対照層として,「おひとりさま」と同年代で,夫と同居し子どもを持つ「既婚・子あり」を年代別に2グループ設定した。このグループにおいては仕事の有無は問うていない。

グループインタビューでは,以下のような内容について聞いた。

○「おひとりさま」歴と将来はどうありたいかについて

○価値観・志向性(仕事・友人付き合い・趣味の内容と充実度)

○テレビ視聴について(テレビの見方・その他のメディア接触状況)

○テレビ番組について(好きな番組・テレビ番組に対する不満や要望)

【複雑な「おひとりさま」の事情】

結果について詳述する前に,今回のグループインタビュー全体について総括する。まず,通常のグループインタビューにおいては,グループごとにある程度共通した発言が得られるが,今回は非常に個別で多様な意見が出された。WEB調査では,クラスターごとに興味分野や見たいものが異なる傾向がみられたが,グループインタビューでは,クラスターごとの違いをみつけることは難しかった。むしろ,クラスター分析に用いた価値観や活動性とは異なる要因に影響される傾向があった。

グループインタビューでは,「一人暮らしに

表 6 グループインタビュー調査の概要

1. 調査時期: 2015 年 3 月 20 日(金)~ 22 日(日)

2. 調査方法: グループインタビュー

3. 調査対象: 1 都 3 県に在住の 40 ~ 59 歳の「おひとりさま」 6名× 4グループ(有職者 /パート・アルバイト

含む),40 ~ 49 歳の既婚女性 6 名(夫と子どもと同居,職業の有無は問わない)・50 ~ 59歳の既婚女性 6名(同)× 各1グループ※ ビデオリサーチ社に登録した調査モニターから抽出

(スクリーニングの際,WEB 調査で利用した因子分析に用いた項目を加えメディア関与の低い人は対象から除外し,スクリーニング結果から対象者のクラスター属性についてフラグだてを行った。)

40 ~ 49 歳 50 ~ 59 歳

おひとりさま

クラスター①グループ ×1

クラスター②グループ ×1

クラスター③グループ ×1

クラスター①,②,③混成 ×1

既婚者(同居の夫と子どもあり) 1 1

NOVEMBER 2015

48  NOVEMBER 2015

なったきっかけ」や,「自分にとって仕事とはどのようなものか」「今の自分は何に満足しており何に不満を感じているか」「10年後の自分はどうなっていたいか」など,生い立ちや現在の自分の在り方への満足度,将来への展望やその背景にある不安など,「おひとりさま」の生活に踏み込んだ質問や,現在の心理状況についての質問も行った。その結果,「おひとりさま」が

「おひとりさま」としての人生を選択していく過程や,現在の自分自身に対する評価,未来への展望は,個人によって大きく異なることがわかった。そして,成育歴や自分に対する満足感など,現在の心理状況がテレビとの関与の仕方や番組選択の仕方に影響している傾向がみえてきた。そこで,成育歴などの人生背景に従ってタイプを分け,視聴傾向の分析を進めることにした。

以上から,今回のグループインタビューの報告は以下のような手順でまとめることとした。まず,「おひとりさま」に共通してみられた傾向を発言に即して分析し,続いて「おひとりさま」と「既婚・子あり」とのニーズの違いについて述べる。最後に,タイプ分けに従って分析する。

【共通点がみられた事柄から】 

(1)テレビ関与状況

WEB調査の結果から,「おひとりさま」は自宅にいる時にはテレビをつけっぱなしにしている人が多い傾向がみられたが,グループインタビューでもやはりそうした傾向があった。

つまり,「音がないと寂しい」という理由で,帰宅するとテレビをすぐにつけ,長時間つけている人が多い。しかし,パソコンとの同時利用や食事をしながらの「ながら見」が主流で,内容をあまり真剣に見ていないという事実も浮か

び上がった。さらに,テレビとパソコンの同時利用の際にどちらに意識が向いているかを聞くと,大抵の場合,テレビの音を聞きながら目はパソコンに向いており,興味を引く部分の時だけテレビ画面に注目する,といった見方をしている人が多数いた。

録画視聴については盛んに行われており,気になる番組はひとまず録画されている。しかし未再生のまま消されることも多く,再生する場合も1.5倍速で再生されているケースが少なくない。

「パソコンをしながら」テレビを見ていると話している人がいるが,この傾向は「既婚・子あり」に比べ,「おひとりさま」に顕著であり,テレビよりもパソコンを情報源としている。

「休日は平日に録りためた録画を倍速で見

ている。話の続きがどうなったか知りたい

し,倍速が自分にとってちょうどいい」

 (「おひとりさま」40代)

「深夜の番組は倍速で見ている。みんなテ

ンポが遅すぎるから録画して速く見ないと

面倒くさい」  (「おひとりさま」50代)

「テレビがおもしろくなかったら,パソコン

をしながらテレビを見る。パソコンの左隣

でご飯を食べて,横目でテレビを見ている」 (「おひとりさま」50代)

「テレビに集中することはまずない。パソ

コンではネットを見たり,Skype をやった

り。寂しいから流している BGM という感

じ」  (「おひとりさま」40代)

49

一方,「既婚・子あり」は,速報はまずテレビで確認して,テレビを通してまんべんなく情報を入手している。

このように,「既婚・子あり」と比較すると,「おひとりさま」はテレビがついている時間は長いものの,求めている役割は「静寂を埋めてくれる」というものである。また,情報の入り口もテレビよりパソコンという傾向がみられ,インターネットをアクティブに使用している。以下の発言からもそうした様相がうかがえる。

ただし,インターネットから情報を入手し,さ

らにテレビでそのニュースについて確認するという人や,インターネットでは自分の興味分野の情報を「深く」,テレビでは興味範囲外も含めて「広く」インプットしているという人もみられた。しかし,「既婚・子あり」に比べると,「おひとりさま」はテレビとの距離がやや遠い傾向が確認できた。

(2)テレビ番組の好みやニーズ

「おひとりさま」が選択する番組には以下の3つの特徴があった。

① 真剣に見なくてもよい気楽な番組② 重い・暗い気分にならない番組③ 視聴後に明確なベネフィットが得られる番組

グループインタビューで聞き取った,「おひとりさま」が好きなテレビ番組を以下に列挙する

(こちらが作成した番組リストの中で,選んだ人が多いもの上位15番組)。

・月曜から夜ふかし(日本テレビ)・Youは何しに日本へ?(テレビ東京)・幸せ!ボンビーガール(日本テレビ)・出没!アド街ック天国(テレビ東京)・ワールドビジネスサテライト(テレビ東京)・和風総本家(テレビ東京)・有吉ジャポン(TBS)・世界ふしぎ発見!(TBS)・情熱大陸(TBS)・マッサン(NHK総合)・櫻井有吉アブナイ夜会(TBS)・美の巨人たち(テレビ東京)・THE世界遺産(TBS)・NEWS ZERO(日本テレビ)・ダウンタウンDX(日本テレビ)

「先に情報を知るのはパソコンから」(「おひとりさま」40代)

「私の場合はむしろ情報源はパソコンと新

聞。3.11 のあとのいろいろなことも一番

頼りになったのは Twitter」(「おひとりさま」50代)

「テレビはつけっぱなし。速報があると大

変だから。事件があると,一応知っては

おかないと,と思う」 (「既婚・子あり」50代)

「午後はずっとテレビをつけている。情報

を把握しておきたい。世界の動き,日本の

動き,交通情報や天気など,自分で把握

しておきたい」  (「既婚・子あり」50代)

「テレビのドラマもワイドショーもつまらな

いから,パソコンで次から次に(無料動画

を)掘り出している」  (「おひとりさま」50代)

「パソコンで動画を見たり,ドコモの d ビ

デオを見ている」  (「おひとりさま」50代)

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50  NOVEMBER 2015

これらの番組の中でドラマは『マッサン』の1本だけだった。またテレビ東京の番組を支持する傾向もあった。これはWEB調査の結果からもみられた特徴である。支持する理由としては,グループインタビューの中で「テレビ東京はやることが奇抜というか,あまり制約がなさそう」という発言があった。「おひとりさま」は,アンケートの結果からも

発言からも,バラエティーを好む傾向があるが,これは「おひとりさま」が求める上記3つの番組要素のうち,特に,気楽さや重い気分にならないという要素のためであろう。しかし,グループインタビューで詳細に聞いていくと,バラエティーの中でも,「おひとりさま」の気分に合っているものとそうではないものがあった。これはバラエティーに限らず,ドラマ,ドキュメンタリーやインタビューなどのリアリティー系番組,教養番組,ニュース・情報番組にもみられる傾向であった。そのため,それぞれのジャンルでどのようなものが好まれてどのようなものが好まれないのかを分析した。以下にその結果を記述していく。

① バラエティーに対するニーズ

「おひとりさま」はバラエティーを好むが,これは「おひとりさま」が有職者であり,日々張りつめた気分で日中を過ごして,家ではホッとしたい気分でいることに起因していると思われる。

仕事で張りつめた気持ちを「笑い」によりリフレッシュしたいという,上記のような意識が働いている。頭を仕事モードから休息モードに切り替えるリセット効果も期待されている。

「おひとりさま」が,バラエティーを見ることによって得ている明確なベネフィットとは,癒される,リフレッシュできるという心理性ベネフィットであり,これは働く「おひとりさま」にとって重要な要素であるようだ。

また,一人暮らしをしていると家で笑う機会が少ないため,バラエティーを見て笑い,楽しい気分になりたいという「おひとりさま」も多かった。

では,どのようなバラエティー番組が好まれているのかを聞いてみた。すると,「おひとりさま」は,やや毒気の強い笑いや,奇抜な企画がある番組を好んでいる傾向がみられた。

「(バラエティーは)仕事でぐ~っと緊張し

ているのが,ぱ~っとほぐれるのがいい。

集中して見なくていいから,つけたまま家

事をやっていてもいいし,自分の時間を束

縛されないで癒してくれる」(「おひとりさま」50代)

「仕事でものすごいプレッシャーでうわ~っ

となっていたことがあるけど,どんなに遅く

帰っても録画した明石家さんまの番組を見

てひと笑いしないと寝られないという時が

あった。(中略)仕事で頭が興奮しているし,

疲れ果てているし,そのまま寝ようとしても

どきどきして寝られなかったのが,1度違う

世界でひと笑いしておいて,それから休め

るようになった」 (「おひとりさま」50代)

「(平日家に帰ってきて見たいと思うのは)

気分が下がらないもの。仕事が楽しけれ

ばいいけど,必ずしもそうではないので,

楽しい気分になりたい。単純に笑えるとか

おもしろいものがいい」(「おひとりさま」50代)

51

「おひとりさま」はネガティブな感情をもたらすような内容に対しては拒否感を持つ傾向があり,「毒気」を好むが,過度なお笑い芸人いじりや他人を痛めつけるような内容は受け付けない人が多い。「毒気」の中にも「愛」を感じさせられるものを求めているようである。そうした

「毒気」と「愛」を兼ね備えているという理由で,マツコ・デラックスを支持する発言も多くみられた。

このような「おひとりさま」が持つネガティブな感情に対する拒否感については,別途詳述する。

さらに,「おひとりさま」は,芸能人ではなく一般人の本音やリアクションが見られるバラエ

ティー番組を好む傾向もあった。

一般人とのかけあいや,反応を観察して楽しむ番組への興味がみられる。これはあくまでも筆者の推察となるが,「おひとりさま」は自宅で他者との接点がなく,テレビに映し出される一般の人の何気ない発言やリアクションに人間味を感じたり,温かさを感じたりして癒しを得たいのだと考えられる。リアリティーのあるものを見たい,作りものを好まないという傾向が,こうした一般人の反応に興味を持たせるのではないだろうか。

一方で,「おひとりさま」は本物志向が高く,笑いに対しても極めた芸を求めている。これは,

「しっかりと笑って癒されたい,リフレッシュしたい」という,心理性ベネフィットを得たい気持ちの表れであるようだ。

「おひとりさま」は,仕事で話術を求められる人も多いため,会話の妙について観察して取り入れたいという気持ちもあるようだ。

以上のように,「おひとりさま」は帰宅するととりあえずバラエティーを視聴し,ホッとしたいという傾向がみられたが,これは仕事を持つサラリーマンの傾向と似ており8),やはり一人で働いて生き抜かねばならないというプレッシャー

「今は大きい局のバラエティーはおもしろ

いものがない。テレビ東京はやることが

奇抜というか,あまり制約がなさそうな雰

囲気。東京 MX もおもしろい」 (「おひとりさま」40代)

「ゴールデンに行くと守りに入って,それで

ターゲット層を広げているけど,深夜だと

コアなファンだけでいい感じで,突拍子も

ないところがあっておもしろい」(「おひとりさま」50代)

「『You は何しに日本へ?』(テレビ東京・

月曜日 18 時 57 分)は素人の本音の部分

が見える」  (「おひとりさま」40代)

「タレントさんの会話の力がすごくて,奇想

天外な答えが返ってくるから,それに笑っ

たりして癒される」  (「おひとりさま」40代)

「マツコさんの捉え方とかは,すべてに対し

て愛があるつっこみで,笑いもあるけど,見

ていてすがすがしい」  (「おひとりさま」40代)

「『マツコの知らない世界』(TBS・火曜日

21 時)は毎回録画している。おもしろい。

素人さんにも愛がある。ためにもなる」(「おひとりさま」40代)

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や日々の繁忙感が影響していると考えられる。

② ドラマに対するニーズ

続いて「おひとりさま」のドラマニーズについてみられた傾向を記述していく。今回のグループインタビューで目立ったのは,ドラマの話題になると口をつぐむ人が多くいたことである。40 代・50 代の「おひとりさま」の多くは,20 代まではトレンディードラマなどを中心にドラマを見ていたが,現在はあまり視聴していない。「おひとりさま」がドラマから離れていく要因を発言とともにまとめる。

第一に,「おひとりさま」は,ライフスタイル上,ドラマを見る時間的・精神的余裕がないということが挙げられる。ドラマは番組形態として,「ながら見」に適さないため,毎週専念して見続けることが難しい「おひとりさま」には,内容以前の段階で敬遠されている面がある。

第二に,ドラマコンテンツが「おひとりさま」の関心を引かなくなってきたことが挙げられる。

まず,登場人物の年代や設定が自分たちとかけ離れているという声が目立った。

また,規制が厳しくなったことにより違和感のある表現が増えたことも挙げられた。

こうした背景から,「おひとりさま」はドラマに不自然さを感じるようになってきたという声が挙がった。

第三に,「おひとりさま」の心理的な要因が考えられる。以前はドラマの中に描かれた憧れの世界が自分にも訪れるのかもしれないという淡い期待を持って見ることができたが,年代が高くなるにつれ現実との乖離が大きくなり,絵空事にしか感じられないという事情である。特に恋愛ドラマと絡めた発言が多かった。

「ドラマは出ている人たちの年齢が下がっ

てしまって,自分の子どもくらいになって

しまっているので」  (「おひとりさま」40代)

「大人になったらあんな生活ができるのか

なと思いながらトレンディードラマを見て

「会話がわざとらしい。間がいや」(「おひとりさま」40代)

「すべてがわざとらしい。日本のドラマは

自然じゃない」  (「おひとりさま」50代)

「自分が年をとってきたから,ドラマで若

い子たちが恋愛していてもおもしろくない」

 (「おひとりさま」50代)

「放送の倫理基準が厳しいし,(中略)昔は

タバコ,お酒を飲んでいてもよかったけど,

今はダメ。不良なら飲むのに,ドラマ性が

おかしい」  (「おひとりさま」50代)

「服装も若い子たちはちゃんとしていて,す

ごい不良が出てこない。昔だと制服もだら

しなく着ていたけど」 (「おひとりさま」50代)

「なかなか毎週見続けられないし,録画し

忘れると一気に見る気が失せたり」(「おひとりさま」40代)

「前より集中力がなくなってきた。前と同じ

ようには見られていない」(「おひとりさま」50代)

53

このようにドラマ離れが進む「おひとりさま」であるが,ドラマ視聴を喚起させる可能性があるものもみられた。以下の2つの要素を持つものが大きいと考えられる。

◯a 医療・刑事もの・社会派ドラマなど◯b 短時間のドラマ

まず,◯a の医療・刑事もの・社会派ドラマが選択されやすい理由として,このジャンルのドラマは1話完結ものが多く,ドラマを見続ける余裕がない「おひとりさま」にも見やすい形態であることが挙げられる。 

また,もはや噓くさく感じるようになってしまった恋愛の要素が少ない点も好まれやすい。さらに,社会で働いている「おひとりさま」にとって全く切り離された世界の話題ではなく,自分の職業と関連があったり,周囲で話題になったりする要素が含まれていると視聴のフックになり得るためである。

  

ただし,医療・刑事ものや社会派ドラマであっても,暗い,重い気分になる番組への拒否感が強くあるため,軽めの雰囲気のドラマが好まれる。

また,◯b の短時間のドラマについては,時間や精神的に余裕がない「おひとりさま」にも視聴される可能性はあると考えられる。

以上のように,「おひとりさま」はあまりドラマを好まなくなっており,視聴するジャンルも限られてきている。このドラマニーズについては,

「既婚・子あり」とは対照的な結果となっているが,それは改めて詳述する。また,中には脚本や演技のクオリティーが高いものは視聴するという人や,海外ドラマは視聴する人もいるため,その点についてはタイプ分けをして分析した章で別途詳述する。

③ ドキュメンタリーやインタビューなどの  リアリティー系番組ニーズ

「おひとりさま」は,ドキュメンタリーを視聴し

「『Doctor-X~外科医・大門未知子~』(テ

レビ朝日・木曜日 21 時)は職業が医療系

だから,こんなことないとわかりながらも

見ていた」     (「おひとりさま」40代)

「『半沢直樹』(TBS・日曜日 21時)は日曜

夜にやったというのはよかったと思う。私は

金融関係だったから,あれでみんな気持ち

よく会社に行けた」  (「おひとりさま」50 代)

いた。そんなに子どもじゃなかったけど,

あの年齢になったらこんな生活になるの

かなと思って」  (「おひとりさま」40代)

「昔は『東京ラブストーリー』9)とか『君の

瞳に恋してる!』10)とか見ていたけど,こ

の年代になってくると,そんなのまずない

よ,こんな出会いはまずないよと思ってし

まう」  (「おひとりさま」40代)

「なぜか『マッサン』(NHK 総合・月曜日~

土曜日 8 時)は見ている。15分で短いか

ら,『マッサン』だけは録画したものを見て

いる。平日録画したのを見るなら,1 時間

は耐えられないから,15分の『マッサン』か,

30分で終わる番組を見ている」(「おひとりさま」40代)

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ている人が多かった。作りものを好まず,リアリティーを重視する傾向が強い「おひとりさま」は,実在の人間の様々な生き方を見て,興味や親近感を抱く人が多い。一方,バラエティーに対するニーズの節でも記述したが,「おひとりさま」はネガティブな感情を抱くようなものを受け付けない人が多く,悲しみや不安といった感情に結びつくような重い題材は受け付けない。

「おひとりさま」が話題にしたドキュメンタリーのテーマとその受容性についてまとめる。

まず,〈不特定多数の一般人のドキュメンタリー〉についての話題が挙げられた。「おひとりさま」は,バラエティーの好みにおいても一般人が登場するものを視聴する傾向があったが,こうした傾向はドキュメンタリーにもみられた。

「おひとりさま」は市井の人々の様々な暮らしや人生に興味を持っている。

また,〈特定の著名人の素顔に迫ったドキュメンタリーやインタビュー〉にも関心を寄せていた。「おひとりさま」は人間の本質や素顔に対する関心が高く,他者をよく観察する傾向がみられる。

さらに,〈日本の高い技術や商業の成功までの軌跡を描いたドキュメンタリー〉の話題が多く挙がった。

もいて,いろんな人たちのお昼風景が見ら

れるのがすごく楽しい」(「おひとりさま」40代)

「トーク番組とか『ボクらの時代』(フジテ

レビ・日曜日 7 時)などはその人の本質が

わかるので結構見ている」

 (「おひとりさま」50 代)

「私は『SWITCH インタビュー 達人達(た

ち)』(NHK E テレ・土曜日 22 時)とか

好き。この前の『暗殺教室』の作者の人な

んかおもしろかった。全然ジャンルが違う

人を対談させると,違っていながら同じこ

とがあったり,違うからこそ見えるものが

あるから結構おもしろい」 (「おひとりさま」50代)

「ドキュメンタリーで成功した人が出ていた

り,何かを作り上げる番組も好き。スカイ

ツリーができるまでとか,ああいうのが好

き。そういうのを見て,私も頑張らなきゃ

と思う」       (「おひとりさま」40代)

「『情熱大陸』(TBS・日曜日 23 時)は大

好き。『ガイアの夜明け』(テレビ東京・火

「『ドキュメント72 時間』(NHK 総合・金

曜日 22 時 55分)も見ている。おもしろい。

いろんな人がいるんだなと,知らない世界

のことをやっているのがすごくおもしろい。

知らない世界だけど,現実の世界,本当の

ことというのがおもしろい」(「おひとりさま」40代)

「『サラメシ』(NHK 総合・月曜日22時55分)

は見ている。録画して土日に見ている。サ

ラリーマンのお昼風景,社食だとかお弁当

とか,働いている人たちのお昼ご飯が出て

きて,それを見て,世の中の人たちはこう

いうものを食べているんだと思いながら幸

せな気分になる。自分とは違う世界が垣間

見られてすごく楽しい。愛妻弁当が出てき

たり,会社の人,農家,工場で働いている人

55

このように,「おひとりさま」は自分が未来に向けて頑張るエネルギーを得られるものや,社会に明るい展望が期待できるようなドキュメンタリーを好んでいる。一方で,〈社会問題や戦争など重い題材を扱ったドキュメンタリー〉は敬遠される傾向がみられた。

前述のように,「おひとりさま」は,暗い気持ちになったり,ネガティブな感情を喚起させられたりするようなドキュメンタリーを避ける傾向がみられた。この背景には,「おひとりさま」の中に,現状や未来に不安を抱えている人が少なからず存在していることがある。また,挫折を経験している人も多く,せめて未来は明るいと思いたいという願望が反映された結果であると考えられる。以下で,「おひとりさま」が置かれている状況についての発言をみていく。

以上のように,「おひとりさま」の中には仕事やプライベートにおいての不安を抱えている人も多く,そうした不安を直視させられたり,未来が暗く感じられたりするような内容を嫌悪するのであると考えられる。以下の発言にもそうした心理が示されている。

筆者も今一人暮らしをしているが,大きな不安や心配ごとを抱えている時には,それに触れるような内容に接触したくないという気持ちになる。また,自分が置かれている状況についてネガティブな感情が引き起こされることも当

曜日22 時)もいい。それらは録画している。

メイドインジャパンをよく取り上げていて,

世界に発信するのを見ていると,日本頑張

れと思う」      (「おひとりさま」40代)

で,仮面をかぶって仕事をしている状態。

でも一応生活のために働いているサラリー

マンという感じ。なかなか一歩踏み出す勇

気がない」    (「おひとりさま」40代)

「あと 20年働かないといけないんだなと

思っている。65 歳からしか年金をもらえな

いので,まだ 20年近くあるので,それを

考えるとまだまだ道は遠くという感じ。今

までも 20年以上働いて,さらに 20年働く

と思うと暗い気分」  (「おひとりさま」40代)

「暗い気分になるものはいや。職を失った

人とか,ネットカフェ難民とか,気分が暗

くなるから見たくない」

 (「おひとりさま」40代)

「基本的には見終わったあと,暗くなりた

くないし,明るい感じで終わりたい。(戦

争体験とかを見たりすると)暗くなるかも

しれないけど勉強になる。でも今の気分だ

と見ない。(今より)低い気持ちにはなり

たくないので」  (「おひとりさま」50代)

「私は病気の時はテレビが見られなかった。

情報番組では,この人は何々病だったけど

立ち直ったというネタが多い。本当に体の

具合が悪いと,軽々しく聞き流せないんで

すよ。テレビはそういう話題がものすごく

多くて,見られなかった時期があった」 (「おひとりさま」50代)

「自分と似た年代の女の人がさみしく暮らし

ていますというのがあったら,絶対に見た

くない」       (「おひとりさま」40代)

「今の仕事の内容,会社が私と合わないの

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然避けて通りたい事態である。こうした不安や心配ごとを共有できる他者が身近にいない「おひとりさま」は,それを一人で抱えなければならないのだ。「おひとりさま」がドキュメンタリーを好みながらも,重いテーマは避けて通ろうとするのは,こうした不安定な心理を少なからず抱えて生活しているためではないだろうか。

④ 教養系番組に対するニーズ

「おひとりさま」が視聴している教養系番組で挙げられたものは以下の2つであった。

◯a 「美術・世界遺産」番組◯b 「料理・食事」に関する番組

まず,◯a の「美術・世界遺産」番組については,WEB調査の結果においても「おひとりさま」の好む番組ジャンルである傾向がみられたが,グループインタビューにおいても視聴している人が多くいた。「新しい知識・情報を得たい」という情報性ベネフィットと,旅気分を味わえるリフレッシュ効果,「実際に見に行きたい」という明日への活力アップ効果といった心理性ベネフィットの両面が得られるためである。

また,◯b の「料理・食事」に関する番組はグルメの視点ではなく,「温かさ」を求めて視聴している人が見受けられた。

「美術・世界遺産」番組,「料理・食事」に関する番組に共通しているのは「疑似体験」ができるという点であろう。行きたいと思っている場所に行った気分になれる,触れたいと思っている温もりに触れたような気分になれる,ということが視聴につながっている。今回のグループインタビューに集まった「おひとりさま」は,仕事をしている関係で疲労感が強く,あまり積極的に活動するような趣味を持っている人はいなかった。そのため,実際には体験できなくても,体験したような気分を得られるタイプの番組を見ることで,「リフレッシュ」や「癒し」といった心理性ベネフィットを得ていると考えられる。

⑤ ニュース・情報番組に対するニーズ

「おひとりさま」がよく見ていると発言したニュース・情報番組にはいくつかの特徴があった。

一つは,経済情報や世界動向などを扱うニュースである。これは,男性サラリーマンの嗜好性と似ている11)。「おひとりさま」の中にはインターネットで気になるニュースや情報を深く調べて,テレビでは興味がない情報もまんべんなく薄く得ている傾向の人もいるが,仕事をしている関係上,経済情報や世界動向については注視して視聴している。

笑ってしまう」  (「おひとりさま」40代)

「『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東

京・月曜日~金曜日 23 時)は,他のニュー

スとは切り口が違っていた。経済方面に

偏っているので,普段触れることがないか

ら逆に新鮮に感じておもしろかった」

 (「おひとりさま」40代)

「『きょうの料理』(NHK Eテレ・月曜日

~木曜日 21 時)。それを見ながら,おい

しそ~誰かつくって~と思う。仕事で失敗

した…という気持ちが,食べたい!という

欲求に変わる。料理研究家の人とアナウン

サーのかけあいがおもしろくて,ニコッと

57

また,ニュースや情報番組の伝え方については「バイアスのかかっていない事実」をそのまま伝えることを期待している人もみられた。仕事を持ち,自立している「おひとりさま」は,自分なりの考えや解釈を持っているようだ。

以上,グループインタビューで「おひとりさま」のテレビとの関与の仕方や番組ニーズに共通して言えそうな事柄をまとめた。では,こうした傾向は「既婚・子あり」とどのように異なっていて,それがどのような要因からきているのか。

「おひとりさま」と「既婚・子あり」で大きく意見が異なったドラマニーズを中心に,以下に詳述していく。

4 「既婚・子あり」との  コンテンツニーズ比較

「おひとりさま」と,「既婚・子あり」がテレビに求めるベネフィットは異なっている。「おひとりさま」は,テレビに「癒し」「リフレッシュ効果」を求めているが,「既婚・子あり」は,「ワクワク・ドキドキできる刺激・非日常感」を求めている。

こうした求めるベネフィットの違いが大きく表れたのは,ドラマに対する発言であった。前述したように,「おひとりさま」ではドラマ離れが進んでいるが,「既婚・子あり」はドラマから与えられる刺激や夢を求めている。その中の一つとして,「不倫もの」を見るという意見が出た。

「既婚・子あり」がドラマに「非日常感」を求める背景には,「おひとりさま」に比べて現状や未来に対する不安感が少なく,安定した日々を送っていることが考えられる。「既婚・子あり」の発言には,家族関係が良好で,生活に安心感を持っていることをうかがわせるものが多かった。日常を穏やかに送っている「既婚・子あり」は,ドラマから与えられる「非日常感」や普段は触れることがない「ドロドロ感」にむしろ興味をそそられるようである。

一方で「おひとりさま」は,前述したように,ネガティブな感情が引き起こさせられるような

「非日常というか,普段自分が体験できな

いことがドラマであると(思う)。(中略)

不倫も,日常にある方もいるかもしれない

が,私にはないのでドキドキする感覚とか」(「既婚・子あり」50代)

「NHK が『ガラスの家』というのをやってい

て,NHKなのに不倫ものが多い。あとは(同

じ枠の)広末涼子主役の『聖女』(NHK 総

合・火曜日 22 時)。それも男を手玉に取っ

て殺してお金を奪っていくみたいな話」(「既婚・子あり」50代)

「遊園地に行った時のようにワクワクドキ

ドキ楽しいと感じられる番組を見たい」(「既婚・子あり」50代)

「この番組はこんな感じなんだろうなじゃ

なくて,何が入っているのかな? どんな番

組なのかな? と,ワクワクテカテカする

ような気持ちになる番組を見たい」(「既婚・子あり」50代)

「出ている人のフィルター越しではなく,事

実をそのままぽんと伝えている番組がほし

い。今世界でこういうことが起きているとそ

のまま出してくれればいい。それをもとに自

分でものを考えたい」 (「おひとりさま」50代)

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ものに対する拒否感が強いようだ。

ただし,「おひとりさま」の一部にはこうしたドロドロしたドラマを好んで見る層もあり,それについては次の章で改めて述べたい。

また,恋愛ものについて,「既婚・子あり」は,「おひとりさま」と同じように最近のドラマは主人公の年代が自分たちとかけ離れていると感じているが,恋愛もの自体に抵抗はない。特に

「同年代の恋愛もの」は,希少な分野のため,需要がある。

なお,「既婚・子あり」の中には,「ファミリードラマは現実的すぎる」という発言もあり,

「ファミリーもの」のドラマにはあまり興味を持てない人もみられた。

以上のように,「既婚・子あり」と「おひとりさま」には,見たいものに違いがあったが,この結果は,家族とともに生活しているか単身生活をしているかという要素に加え,職業を持っているか持っていないかという要素に起因する部分もあると考えられる。

5 「おひとりさま」タイプ別の  価値観・志向性

前述したように,今回のグループインタビューは,WEB調査で行ったクラスター分析の結果をもとにグループを構成したが,「おひとりさま」からは,あまりにも多様な発言があったため,クラスターごとの特徴はみられなかった。

むしろ,成育歴や自分に対する満足感,現在の心理状況などの要素によって,クラスターとは別のタイプに分類できることがわかった。そのタイプとは,以下の5つである。

① 「結婚にメリットなし」― 早期決定型② 「仕事が楽しい !」―仕事・キャリア重視型③ 「成し遂げたい夢がある」

― 目標達成努力型④ 「こんなはずではなかった」

「篠原涼子と三浦春馬がやっていたドラマ

『ラスト・シンデレラ』(フジテレビ・木曜日

22 時)は美容師の話だったが,同僚の同

い年の人とくっつくか,若い人とくっつくか

というのがあった。最後は好きな若い男性

にプロポーズされるという話。すごく見て

いて楽しかった」  (「既婚・子あり」50代)

「小泉今日子の『最後から二番目の恋』(フ

ジテレビ・木曜日 22 時)が大好きだっ

た。おもしろかった。50歳前後,行き残っ

ちゃったのが 2 人いて今度結婚するみた

いな。(中略)恋愛ばかりじゃなくて,健

康診断のこととか,血圧の数値やコレステ

「ドロドロは見ない。女の人の,いやな会

社にありそうな昼ドラ的ないじめとかは見

ない。一切見ない。(中略)不倫とかも興

味がない」  (「おひとりさま」40代)

「(ドラマを見ない理由は)私たちくらいの

年代だと爽やかな恋愛ものがない。(内容

が)ドロドロにいっちゃうから」

 (「おひとりさま」40代)

ロールが高いとか,明日検査だから今日は

いっぱい飲んでタバコを吸いまくるとか,

自分たちの年代の話題も出てくる。あのく

らいの年代のドラマをやってくれると見る」

(「既婚・子あり」50代)

59

― 独身不本意・結婚志望型⑤ 「あの頃は輝いていた」

― バブル期巻き込まれ型

各タイプで,それぞれの特徴を最も顕著に表している人の発言を表7にまとめた。

この分類に基づいてグループインタビューの発言を分析すると,同じタイプの人は,テレビとの関わり方や,番組ニーズが似通っていることがみえてきたのだ。

ここからは,それぞれのタイプがどのような来歴であり,どのようにテレビと関与し,どのような番組ニーズを持っているかを各番組ジャンルについて述べていく。バラエティーについ

ては,どのタイプの人もあまり傾向が変わらなかったため割愛した。

なお,①「結婚にメリットなし」― 早期決定型と,②「仕事が楽しい!」― 仕事・キャリア重視型については,来歴は異なるが価値観やテレビの関与については似たような傾向を持っていたため,まとめて記述する。

(1)「結婚にメリットなし」― 早期決定型 /「仕事が楽しい !」― 仕事・キャリア重視型のテレビライフ

《来歴について》

「結婚にメリットなし」― 早期決定型の人は,子どもの頃から結婚する意思がなく,一人で生

タイプ 特徴的な発言例

「結婚にメリットなし」早期決定型

「小学生くらいから結婚しないと思っていて,それは親も知っていた。36 ~ 37 歳まで親と小さいマンションに住んでいたが,いい物件を見つけたので,それから一人暮らしを始めた。両親とも元気で,彼もいて,家もあるし,仕事はすごく合っているが,給料も安いので 100%にはならない。でも基本的に今の生活には満足している」(50 代)

「仕事が楽しい!」仕事・キャリア重視型

「結婚をしかけたことは何度かあって,6か月くらい一緒に暮らしたことも何度かあるが,『結婚して』『好き』と言われるといやになってしまう。そういうことが 3 回あった。仕事がおもしろいし,相手の面倒を見るのがいやだし,相手も自分の面倒が見られる人がいい。『仕事はやってもいいけど,家事は全部やってくれ』と言われて,それは割に合わないから一人でもいいやと思った」(50 代)

「成し遂げたい夢がある」目標達成努力型

「今は給料が安いポジションで働いているが,これから給料の高いポジションにチャレンジする。(やりたい仕事とは?)就業支援。仕事ができなくて困っている人の助けをやりたいので。将来的に,経験を積んでいった時に,定年後ボランティアになっていても仕事はしていける。世の中と関わっていける」(40 代)

「こんなはずではなかった」独身不本意・結婚志望型

「実家が茨城で,高校を卒業して,神奈川に就職が決まったので,最初は妹と一緒に住んでいたが,6 年前に妹が結婚したのでそれから一人暮らしになった。うちの父親が学校の先生で結構厳しかったし,家の造りも古くて,快適に住めるところではないから,いつか家を出たいなと思っていた。 結婚したい。相手がいれば安心。私がいつ会社を辞めても,片方が働いていたら安心かなと」(40 代)

「あの頃は輝いていた」バブル期巻き込まれ型

「(一人暮らしは)進学で東京に来たのがきっかけ。就職したのがバブル時代で,今の子たちみたいに全然就職に苦労しないで,就職課の先生にどこがいいか選んでもらったくらい苦労していない。今は状況が暗いにもかかわらず社会をなめたところがある。私の夢は株主優待の桐谷さんみたいな生活をしたい。自分で何かを生み出してお金を稼ぐというよりは,もらえるもので何となく生活をしていけたらいいなと思う」(40 代)

表 7 「おひとりさま」各タイプの特徴的な発言例〈グループインタビュー調査より〉

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きていく覚悟を決めている。そのため,一人で暮らしていくことができるように人生設計をしてきている。両親を見て結婚はしたくないと感じた人や,病気を経験して悩みがある人もいるが,現在の幸福感は低くなく,自己肯定感,未来への展望,対人関係も良好な状態である。

また,「仕事が楽しい!」― 仕事・キャリア重視型の人は,幼い頃から一人で暮らしていくと決めていたわけではないが,仕事に充実感があり,ある時期から結婚はしないと決めて,一人で生活していくことを選択している人である。仕事のプレッシャーが強く悩みを持つ人,転職をして収入が少なくなり思っていた生活とは違う現状にある人もいるが,今の仕事に邁進するエネルギーが強い。早期決定型の人と同様に,幸福度が高く,自己肯定感,未来への展望,対人関係も良好な傾向がある。

《テレビ関与状況》

この2つのタイプの人は,テレビ視聴において独自のスタンスを持っており,好き嫌いがはっきりしている傾向がある。

発言としては,「19時から21時のファミリー層のゴールデンの番組はつまらないから見ない

(50代)」というものや,「本物の事件を追うものやミステリーなどの,衝撃や普段見られない刺激のあるものが好きで,番組に癒しや笑いは求めていない(50代)」という人,「民放は見ず,有料チャンネルで動物番組やディスカバリーチャンネルを見ている(40代)」などがあった。

早期決定型,仕事・キャリア重視型の人々は,基本的に自分で選択した人生を受け入れて生きており,寂しさや不安を全く持っていないというわけではないものの,ある程度それを自分で消化できている。そのため,「おひとりさ

ま」の中で強く求められている「癒し」という心理性ベネフィットはそれほど求められていない。むしろ,情報性を重視している。加えてテレビの情報には,公平性,自分の知識を高められるようなクオリティーを求める傾向がみられた。

《ドキュメンタリー・教養番組ニーズ》

このタイプの人からは,『ドキュメント72時間』(NHK総合・金曜日22時55分)や『サラメシ』(NHK総合・月曜日22時55分)といった「不特定多数の人の生活」を垣間見ることができる番組の話題が挙がった。   

また,「『NHKスペシャル』(NHK総合)で,地震や細胞,科学などテーマがおもしろそうなら見ている(50代)」という人や,「『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』(テレビ東京・金曜日21時)など,新しいことを学べるが,気楽に見られるものがいい(50代)」という発言が出され,知識を得たいというニーズもあった。

  《ドラマニーズ》

早期決定型,仕事・キャリア重視型の人からは,「作りものが好きではないので,ドラマもアニメも見ない(50 代)」「ドラマはトレンディードラマが流行った時代でも何も見たことがない(40 代)」といった発言が出され,好きな俳優の演技が見たいなどの特別な場合を除いて,連続ドラマはほとんど見ていなかった。

前述した通り,このタイプの人は,情報性を求める傾向が強いため,ドラマとは距離がある。また,自分の人生にそれなりに満足感があり,他者に合わせて生きていこうというよりも独立独歩で生きていくことを望んでいるため,

「周りと話を合わせるためにあえてドラマを見ようとは思わない(40 代)」という発言もあった。

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(2)「成し遂げたい夢がある」―目標達成努力型のテレビライフ

《来歴について》

このタイプには,主に現在の仕事やボランティアに生きがいを感じている人々をまとめた。このタイプの人には,結婚については決めていないという人が多い。自己評価がシビアな傾向があるが,夢に向かって頑張るパワーを持っており,地域の人や友人とのつながりも大事にしている傾向がある。早期決定型や仕事・キャリア重視型に比べると現状の幸福感や自己評価はやや低いものの,目標を持っているため未来に希望を持っている。対人関係は社交的だが,趣味活動はそれほどアクティブではない様子である。

《テレビ関与状況》

目標達成努力型の人は,テレビに対しては,自分なりのスタンスを持ちながら接触しているが,比較的多様なジャンルの番組を見ている傾向があった。

発言としては,「情報番組は東京MXしか見ず,バラエティーはテレビ東京が多く,『Youは何しに日本へ?』(テレビ東京・月曜日18時57分)や『和風総本家』(テレビ東京・木曜日21時),

『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京・日曜日18時30分)などを見ている。旅番組もちょこちょこ見ている(40代)」「帰宅して順番に番組を見て,おもしろそうなら選んで見ている。バラエティーが多いが,最近は『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京・月曜日20時)など,健康に関するものも見る(50代)」などがあった。

このタイプの人は,人とつながって働いていきたい,地域の人の役に立ちたいという意識があり,基本的に人間が嫌いではないため,幅広

いものに受容性がある。毒気や奇抜さも好むと同時に,日常の疲れを癒してくれるものも求めている。

《ドキュメンタリー・教養番組ニーズ》

目標達成努力型の人は,どちらかと言えば,バラエティーを好む人が目立ち,ドキュメンタリーや教養番組についての言及はそれほど多くはなかった。しかし,「その人の生き方を追っているドキュメンタリーを見るといいなと思う(50代)」という人や「『ボクらの時代』(フジテレビ・日曜日7時)や『another sky-アナザースカイ』

(日本テレビ・金曜日23時)は興味がない人の時も見て,こういうところが嫌いなんだと再確認したり,自分と似たところがあるから嫌いなんだなと思ったり観察するのがおもしろい(40代)」という人がみられ,特定の人間の本質に迫るインタビューやドキュメンタリーには興味があるようだ。

また,「絵が好きなので『美の巨人たち』(テレビ東京・土曜日22時)は見る(50 代)」という人や,「『THE世界遺産』(TBS・日曜日18時)などは,旅行に行ったところが出ていると懐かしくもなるし,行こうと思っているところが出ると見ている(50 代)」という発言があり,美術番組や世界遺産についての番組を視聴している人もみられた。

《ドラマニーズ》

このタイプの人は,刑事ものや社会派などのドラマを視聴する傾向がある。また,「夜中の海外ドラマは録画して見る(40代)」など,海外ドラマ好きな傾向もみられた。

このタイプの人たちからは,「夢があるドラマを見たい。こういう人になりたい,こういう生き

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方をしたいと思うドラマがない(50代)」といった発言もあり,基本的にドラマが嫌いなわけではないが,今の自分には合うドラマが少ないという意見も持っていた。

(3)「こんなはずではなかった」― 独身不本意・結婚志望型のテレビライフ

《来歴について》

このタイプには,できれば結婚したいという気持ちを持っている人をまとめた。現在の生活から抜け出したいと感じている人が多く,幸福感も自己評価も低い人が多い。人付き合いはあるが,熱中している趣味もあまりなくプライベートは充実していない傾向がある。このタイプの人は,ほとんどが40代であり,バブルを知らない人もいるので堅実に生きているが,どこか満たされない状況を結婚によって打開したいという気持ちがある。あまり強く自分の主張を持たない傾向もみられた。

《テレビ関与状況》

独身不本意・結婚志望型の人は,おもしろそうであればジャンルを問わず見る傾向がある。「いろいろな情報を見たり,つらい時も笑えるものを見ると元気になるため,テレビがないとつまらなすぎる。刺激にもなるし,笑わせてくれる(40代)」など,テレビに精神的な救いや現状打破のヒントを求める姿勢がうかがえ,ややテレビに依存的である。

また,友人付き合いが多く,ある程度の趣味・関心はあるが,自分に対して自信がない人が多いため,自分の意見を持って番組を見ているというよりも,与えられた情報を享受するという態度がみられた。

《ドキュメンタリー・教養番組ニーズ》

独身不本意・結婚志望型の人が見たいものは,一つは「成功」の話を描いたものである。

「ドキュメンタリーで成功した人が出ているものが好き(40代)」「成功者の話が好き。何気ない日常でぱっと気がついて,そこから大成功したという話だと結構希望が持てる。私も何かアンテナを張って何かで成功しないかなといつも思っているので,そういうドキュメンタリーが見たい。何もないところに一手間加えて芽が出て,そこから大成功するような話(40代)」といった発言があった。

また,「健康」についての番組を見ているという人もいた。「結婚できないならせめて健康でいようと思って,健康番組を見る。職場で独身だった人が一人で死んだということがあって,一人はやっぱり怖いなと思って,それから健康番組を見るようになった(40 代)」「『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京・月曜日20時)は,一人暮らしで自分の体に年齢的に不安を感じるようになっていくので,とりあえず見ている(40 代)」など,一人でいることへの不安から健康番組を視聴している傾向がみられた。

このタイプの人が番組に求めているものを端的に表しているのが,「こうやったらお金がたまります,こうやったら健康になりますとか,自分にとって夢につながる番組があるといい(40代)」というものであった。

《ドラマニーズ》

独身不本意・結婚志望型の人が,「おひとりさま」の中で最もドラマを見ている人々であった。「『美しき罠~残花繚乱~』(TBS・木曜日21時)は昔懐かしいドロドロした感じで見ていた(40 代)」「『○○妻』(日本テレビ・水曜日22

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時)とかこんなのないだろうと思う。契約妻なんて,1年更新って普通はないよって思う。でも見ている(40 代)」などの発言があった。多くの

「おひとりさま」が恋愛要素のある作品や家族ドラマを視聴していない中で,このタイプの人はそうしたものも視聴していた。

このタイプの人は,他のタイプの人に比べテレビ番組に対する批判や批評が少なく,比較的素直にコンテンツを楽しむ傾向があるため,ドラマについてもかつてほどはおもしろくないと言いながらも視聴はしている。また,現在の暮らしが不本意であり,結婚を希望していることから,深層心理において別の人生を見せてくれるドラマにそうした「夢」を重ねていることも可能性として挙げられる。

(4)「あの頃は輝いていた」―バブル期巻き込まれ型のテレビライフ

《来歴について》

このタイプには,バブル期に青春を謳歌し,バブル崩壊後に挫折を経験した人をまとめた。過去の華やかな時代をピークと捉えており,経済低迷期を前向きに生きるパワーがあまりない傾向がある。現在は満たされない日 を々送る人が多く,自己評価も低めであり,インドア傾向が強い。しかし,バブル期には外資系企業で働いていた人や,自分で飲食店を経営していた人などがおり,人生経験が豊富であるためか鋭い意見を持つ人が多かった。

《テレビ関与状況》

テレビよりもインターネットに重きを置いている傾向がみられる。「テレビよりパソコンの方が

(見るものの)種類も多いし,早いし,好きなものが選べるし,無料だし,テレビよりメリット

が大きい(50代)」「最近テレビをつけなくなって,ほとんどパソコンばかりしている。テレビのドラマもワイドショーもつまらない。アメリカのYahoo!,Googleに英語で入っていくと無料動画があってそちらを見ている(50代)」などの発言があった。パソコンでの海外ドラマや映画,動画コンテンツ視聴にはまっており,あらゆるメディア接触をパソコンで済ませている傾向がみられる。

また,テレビ番組については,キャスティングのワンパターン化やいじめに近いお笑いの表現など,テレビ番組の在り方に不満を抱く人が多い。「みんながテレビを見る時代ではない。趣味が多様化していて,他に楽しいことがあるし,テレビがおもしろくない。放送の倫理基準が厳しいし,うさんくささもある(50代)」「自分はこういうキャラだからこうするとかパターン化されているのがうんざり。視聴者の視点ではなく,作る人の視点で作っている(50代)」「よくバラエティーやお笑いのいじめっぽいのがあるじゃないですか。熱湯に入れるとか,他人を叩くとか,ああいうのがいや(50代)」などの発言があった。

《ドキュメンタリー・教養番組ニーズ》

バブル期巻き込まれ型の人は,「特定の人間の内面」が浮き彫りになるトーク番組・ドキュメンタリーをよく見ている。前に挙げた「『ボクらの時代』(フジテレビ・日曜日7時)などはその人の本質がわかるので結構見ている(50代)」や,「『SWITCHインタビュー 達人達(たち)』

(NHK Eテレ・土曜日22時)が好き。それぞれの違いとか同じところがわかって結構おもしろい(50代)」はこのタイプの人の発言である。しかし,トーク番組に関して言えば,それほど

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深く重いテーマについて語り合うような番組ではなく,雑談形式で対談しているようなものが挙げられた。

ドキュメンタリーや教養番組については,他のタイプの人に比べると自分なりの意見や視点を持って考えたいという理性的な態度で視聴している傾向がみられた。他のタイプの人と同様に「希望」を与えてくれるようなものを見たい

という人が多かったが,「考えさせられるもの,歴史もの,自分の好きなジャンルで知らないことを教えてくれる,少しは頭を使う番組がいい。一人の人物をずっと紹介する『ザ・プロファイラー~夢と野望の人生~』(NHK BSプレミアム・水曜日21時)は好きだった(50 代)」「盛り上げよう,結論を幸せにしようと作っているのが見えている番組は嫌い。ドキュメンタリー

タイプ

現状の幸福感

自己肯定度

未来への展望

対人関係

趣味・関心ごと

テレビ関与状況 テレビに対するスタンス

ドキュメンタリー・教養番組ニーズ ドラマニーズ

「結婚にメリットなし」早期決定型

「仕事が楽しい!」仕事・キャリア重視型

◎ ◎ ◎ ◎ ◎

・テレビ視聴において独自のスタンスを持っている

・ファミリー向け番組に興味なし

・刺 激のある映像・ドキュメンタリーに興味あり

・新しい知識・知らない世界などについての情報性を重視

・偏りのない報道を求める

・「不特定多数の人の生活」が見られるヒューマンドキュメンタリーに興味あり

・知識を得られる番組にも興味あり

・連続ドラマはほとんど見ない(好きな俳優の演技は視聴)

「成し遂げたい夢がある」目標達成努力型 ○ △ ○ ○ △

・テレビに対しては自分なりの意見を持つ

・比較 的多様なジャンルの番組を視聴

・目標に向けて頑張る活力となるような心理性ベネフィットを求める

・「特定の人間の内面」が浮き彫りになるトーク番組・ドキュメンタリーを好む

・美術系番組に興味あり

・刑事もの・社会派ドラマなどを好む

・海外ドラマ好きも存在

「こんなはずではなかった」独身不本意・結婚志望型

× × △ ○ △

・おもしろそうであればジャンルを問わず見る

・提供された情報を素直に受け入れる

・「成 功」や「夢」の実現につながるような番組を望む

・成功者のドキュメンタリーを好む傾向

・健康番組に興味あり

・最もドラマ好き

・恋愛要素のある作品・家族ドラマを見る人が存在

「あの頃は輝いていた」バブル期巻き込まれ型 × × × △ △

・テレビ番組の在り方に不満を抱く傾向

・真実を多面的に理路整然と伝える番組を好む

・押しつけを嫌い自分の価値観で理性的に考える

・人の本質がわかるようなトーク番組を好む

・歴史ものや人物ドキュメンタリーに興味あり

・海外ドラマ好きが多い

・非 現実 的なストーリーの日本のドラマも視聴

表 8 「おひとりさま」各タイプの特徴まとめ〈グループインタビュー調査より〉

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でも明るい結論があるんだと導く番組は,一面的な論理で構成されている。いろいろな問題点があるというプロセスをちゃんと示して考えさせる番組のほうが好き(50 代)」などの発言があり,自分の視点や考え方を持っている人がみられた。

《ドラマニーズ》

バブル期巻き込まれ型の人は,日本のドラマについてはほとんど視聴していない傾向があった。しかし,海外ドラマを視聴している人はおり,「『ダウントン・アビー』(NHK総合・日曜日23時)を見ている。貴族の生活が大好きで,イギリスのドラマが好き(40代)」や「パソコンで,アメリカのドラマを見ている(50代)」といった発言があった。

日本のドラマについては,「最近少ないけど時代劇を見たい。現実逃避じゃないけど,違う世界の話として見られるから(50代)」など,「時代劇」や「非現実的」な内容のドラマを話題にした人もいた。

このタイプの人は,日本のドラマは視聴しなくなっているが,やや現実逃避ができる要素がある物語には興味を持っているようである。違う世界の話として楽しめるドラマであればある程度の需要はあるようである。

以上,各タイプの特徴を表 8に一覧にまとめた。

6 まとめと今後の課題

今回の調査対象とした40 代・50 代の未婚単身女性「おひとりさま」のテレビライフについて,力の及ぶ限りで一応の整理を試みた。し

かし,決してこれで「おひとりさま」がどのようにテレビに接しているかについて確かな実態が得られたとは思っていない。むしろ,見落とした部分や見誤っている点,また仕事の有無との関連など,やり残した課題の方が大きいのではないかと感じている。調査の実感として,「おひとりさま」は波乱万丈な人生を歩んでいる人や個性的な人が多く,実像を把握するのが困難な対象であると感じている。

調査を開始した当初,「おひとりさま」は一人の生活を楽しみ,人生を謳歌している人も多いのではないかと考えていた。なぜなら,WEB調査で,「あなたは,一人の生活を楽しんでいるか,楽しんでいないかと言われれば,楽しんでいますか」という質問をしたところ,「とても楽しんでいる」「楽しんでいる」「どちらかといえば楽しんでいる」のいずれかを選択した人が,83%であったからである。

しかし,実際にグループインタビューを行うと,不安を抱えた生活をしている人が多く見受けられた。WEB調査で,一人の生活を楽しんでいない17%の人にその理由を聞いている。

「なぜ一人の生活が楽しくないと感じるか教えて下さい」という質問に,「お金に余裕がないから」と答えた人が70%だった。また,「自分の将来に夢や希望を持つことができないから」と答えた人が56%であった。グループインタビューの実感として,実際にはこうした人の方が多いのかもしれないという感触がある。

本研究は,そうしたシビアな状況に置かれている人が今後対象になっていく可能性がある。テレビがそうした人々にとってどのような役割を担っていくことができるのか,今後はより細やかな調査を目指したい。

          (みやした まきえ)

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注:1) 平成 22 年国勢調査「人口等基本集計結果 結

果の概要」より2) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数

の将来推計(全国推計)2013(平成 25)年 1月推計」より

3) 「テレビ視聴を“ライフステージ”で紐解く」 (「Video Research Digest」2013 年 3 月)では,単身者と同居家族がいる人でのテレビ視聴量の違いについて触れている。

4) 岩下久美子は,「おひとりさま」について,以下の 5 つの意味を持たせている。①「個」の確立ができている大人の女性。②“自他共生”していくための,ひとつの知恵。③仕事も恋もサクセスするために,身につけるべき生き方の哲学。④ individual。⑤通常は,一人客に対する呼称。-岩下久美子『おひとりさま』(中央公論新社,2001 年)

5) 国立社会保障・人口問題研究所「平成 22 年 第 14 回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)第Ⅱ報告書 わが国独身層の結婚観と家族観」によると,「一生結婚するつもりはない」と回答した未婚者の割合は 20 ~ 24 歳では 5.4% であるが,年齢が高くなるにつれその割合は高まり,45 ~ 49 歳では 45.1% となっている。こうした数値からみても,年齢が高くなるにつれて結婚せずに一人暮らしを続ける人が多くなると考えられる。

6) 価値観,活動性などを聞いた 31 の設問を用いて因子分析を行った。その結果,5 つの因子が析出された。その概要は以下の通り。第 1 因子は,「年をとっても女性らしさを保ち続けたい」「いくつになっても恋がしたい」などの設問の因子負荷量の大きいもので,「キラキラ願望」因子。

第 2 因子は,「女性同士の旅行やイベントを企画するのが好き」「しばしば女子会をする」などの設問の因子負荷量の大きいもので,「イベント好き」因子。第 3 因子は,「良いと思ったことは積極的に情報発信したい」「コンサートや舞台などをよく見に行く」などの設問の因子負荷量の大きいもので,「ミーハー因子」。第 4 因子は,「あまり目立たず平凡な人生を送りたい」「人と関わらずに静かに自分のペースで生きていきたい」などの設問の因子負荷量の大きいもので,「平凡コンサバ」因子。第 5 因子は,「服装・持ち物・化粧品などはブランドにこだわる」「服装・持ち物・化粧品などは値段が安く実用的なものであれば良い」などの設問の因子負荷量の大きいもので,「こだわり重視」因子。なお,本文中でも述べた通り,これらの因子によるクラスターを軸に分析を進めるというプランをその後断念したので,詳細については割愛する。

7) 三浦展『日本人はこれから何を買うのか?「超おひとりさま社会」の消費と行動』(光文社新書,2013 年)より

8) 男性が仕事から帰宅し,テレビを見始めるとすぐに“リラックス”する傾向があることについては,中野佐知子・小林利行・諸藤絵美「テレビは他のメディア以上に“リラックス”~生活時間調査「テレビと気分」から~」『放送研究と調査』2009 年 4 月号に詳しく書かれている。

9) フジテレビ系列・月曜日 21 時(1991 年) 10) フジテレビ系列・月曜日 21 時(1989 年) 11) 政治・経済・社会番組が 40 代以上の男性によ

く見られていることは,大和千春「夜間のライフスタイルとテレビ視聴」『放送研究と調査』1995 年 12 月号に書かれている。