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第2回 インフラメンテナンス大賞 日本大学工学部、工学研究科 における学生の研究の一環として 橋のセルフメンテナンスモデルを構 築し、実践しました。平田村や黒 川高校、郡山市をはじめとする各 自治体や学校との連携により推進 してきました。 団体概要 取組概要 橋の清掃活動 スマートフォン版 橋マップ・ひらた 橋面上の汚れが多いほど暖色 系で、少ないほど寒色系でプロッ トしています。 橋長、竣工年、点検日、点検 結果、点検時の写真が閲覧可能 です。 予防保全として排水桝付近清掃をしている様子 簡易橋梁点検チェックシート チェックシートを用いた点検 国土交通大臣賞 橋マップで確認 チェックシートによる点検 セルフメンテナンスモデル 取組のポイント 「簡易橋梁点検チェックシート」を使えば、市民でも橋の日常点検を行うことができま す。福島県点検調書をベースに、点検項目、表現方法、デザインを見直し、試行を重ね た結果、市民でも実務者と大差のない、信頼できる点検結果を得られることが確認できま した。現在、このチェックシートを使って住民、生徒や学生、インハウスエンジニアによる点 検が行われており、結果はウェブ上の「橋マップ」で確認できます。これは橋面上の土砂 の堆積といった汚れの程度を色別したものであり、地域の橋の予防保全(清掃活動等)を 自発的に行う「セルフメンテナンス」の推進に寄与しています。 橋の老朽化が深刻… 海外では橋が落ちて 死亡事故も… 2014年告示の道路橋定期点検要領では、橋の定期点検 に加え、日常点検の重要性も指摘されています。そこで、地 域の橋を住民でも日常点検が可能なチェックシートを作成 し、住民だけでなく、高校生の課外研究や、インハウスエン ジニアの巡回点検にも活用。これらの点検結果をまとめた 「橋マップ」は、地域の橋の清掃活動等のセルフメンテナン スに活用できるものとして各地に展開されています。 ミネソタ州首都のセントポールとミネアポリスを結び、ミシシッ ピ川に架かるトラス橋が崩落しました。1967年に建設され40が経過していました。死者9名、行方不明者4名、60台以上の 車が巻き込まれ、100人以上が負傷する大事故となりました。 そこで、2015年度、市町村で管理する橋梁に対し、一般市民で も日常的な状態や事故等の損傷がないか点検できるツールが作 れないかと考え、「簡易橋梁点検チェックシート」を制作しました。 当初は住民用に作成したチェックシートでしたが、その後、工業高 校の教材としての活用やインハウスエンジニアによる巡回点検に活用したいとの反響がありました。 橋の劣化は水が作用する箇所で起こります。排水桝や橋面 上に土や泥、コケや草などがあると、雨水を排水できず、橋面 上に水が溜まりやすくなるだけでなく、それらがスポンジの役割 りを果たし、水を吸収し、赤丸の個所で更に劣化が進行する可 能性があります。 橋面上のこれらの汚れは、地域住民でも原因を取り除くことが可能 です。つまり、地域住民でも橋の劣化の進行を防ぐことができます。 そこで、「簡易橋梁点検チェックシート」により点検した結果から、「高 欄の錆」、「排水桝の土・泥のつまり」、「排水桝のコケ・草」、「地覆 と舗装面の間の土・泥のつまり」、「地覆と舗装面の間のコケ・草」汚 れ具合を数値化し、色分けして地図上にプロットした「橋マップ」を作りました。チェックシートの 点検結果だけでなく、竣工年や橋長、点検日も記載し、橋の状態は写真で確認できます。 一括りに道路橋とはいえ、置かれている環境や役割は多種多様です。過疎化が進む地方の 市町村の道路橋と、都市部の道路橋を同様に維持管理することは必ずしも効率的とは言えま せん。 都市部の交通量が多い橋は、費用と技術力をかけて維持管理することができます。しかし、 地方の市町村は限られた財政や技術力の中、橋の維持管理を行っていく必要があり、市民と 協力した維持管理が重要になってくると有識者の間で議論されていました。 近接目視により、詳しく手厚い点検が行われるため、きめ細やかな 維持管理ができるようになります。しかし、我が国の道路橋のうち約7 割は市町村が管理しています。技術力や予算の不足から、近接目視 に加え橋の日常的な状態を把握することが難しい地方の自治体も少 なくありません。 日本全国にある橋梁は高度経済成長期に一 気に建てられました。あれから約50年。人だけ でなく橋も高齢化社会が近づいてきています。 研究員 浅野和香奈/[email protected]  教授  岩城一郎/[email protected] 日本大学工学部土木工学科 コンクリート工学研究室 出展:国土交通省国土技術政策総合研究所資料 第693号 2012 平成23年度道路構造物に関する基本データ集 出展:2007年8月1日 AP/アフロ 毎日新聞平成26年4月15日 5年に1回の頻度で近接目視点検を義務化。 定期点検に加え、日常的な施設の状態の把握をする。 点検結果の見える化へ 2018 7 月現在、 チェックシートを用いた 橋梁点検は住民主導型が福島県平田 村、 山口県周南市(しゅうニャン橋守 隊)、 教育主導型が宮城県大和 町、 富谷市、 大衡村(宮城県 黒川高校)、 東京都世田 谷区(国士舘大学)、 石 川県津幡町 (石川工業 高等専門学校)、インハウ スエンジニア主導型が福島県郡山市で行 われており、全国へ広まっています。 地方の橋に焦点を当て、限られた予算と技術力であっても維持管理が可能なシステムの 構築を目指して研究を進めて参りました。 国土交通省が発表した道路橋定期点検要領概要 2007 年米国ミネアポリス高速道路橋梁崩壊事故 簡易橋梁点検チェックシート 橋マップ それぞれの年度に架設された 橋梁数(橋長15m以上) 平成22年4月1日現在 1970年までに建設された 橋梁数は、約41,000橋 1960年までに建設された 橋梁数は、約13,000橋 2 0 0 5 2 0 0 0 1 9 9 5 1 9 9 0 1 9 8 5 1 9 8 0 1 9 7 5 1 9 7 0 1 9 6 5 1 9 6 0 1 9 5 5 1 9 5 0 1 9 4 5 1 9 4 0 1 9 3 5 1 9 3 0 1 9 2 5 1 9 2 0 年度 箇所数 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 チェックシートと橋マップで地域の橋を予防保全! みんなで守ろう。「橋のセルフメンテナンスふくしまモデル」の構築と実践 日本の橋梁数と架設年 地域の橋は地域で守る。 ふくしまから全国へ 日本でも対策を!点検を強化… 都市部の橋と地方の橋、同じ方法で維持管理できるの…? 排水 伸縮装置 0 お問い 合わせ 福島県平田村 地域住民 福島県郡山市 インハウス エンジニア 宮城県黒川高校 (大和町・富谷市) 地域での予防保全活動 予防保全の必要性を 見える化 高校生 みんなで守る。橋のメンテナンスネット http://bridge-maintenance.net/ Face book TEL024-956-8716 橋のメンテナンスネット

みんなで守ろう。「橋のセルフメンテナンスふくしまモデル」の … · 研究員 浅野和香奈/[email protected] 教授 岩城一郎/[email protected]

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第2回 インフラメンテナンス大賞

 日本大学工学部、工学研究科における学生の研究の一環として橋のセルフメンテナンスモデルを構築し、実践しました。平田村や黒川高校、郡山市をはじめとする各自治体や学校との連携により推進してきました。

団体概要取組概要

橋の清掃活動スマートフォン版 橋マップ・ひらた

 橋面上の汚れが多いほど暖色系で、少ないほど寒色系でプロットしています。 橋長、竣工年、点検日、点検結果、点検時の写真が閲覧可能です。予防保全として排水桝付近清掃をしている様子

簡易橋梁点検チェックシート

チェックシートを用いた点検

国土交通大臣賞橋マップで確認チェックシートによる点検

セルフメンテナンスモデル

取組のポイント 「簡易橋梁点検チェックシート」を使えば、市民でも橋の日常点検を行うことができます。福島県点検調書をベースに、点検項目、表現方法、デザインを見直し、試行を重ねた結果、市民でも実務者と大差のない、信頼できる点検結果を得られることが確認できました。現在、このチェックシートを使って住民、生徒や学生、インハウスエンジニアによる点検が行われており、結果はウェブ上の「橋マップ」で確認できます。これは橋面上の土砂の堆積といった汚れの程度を色別したものであり、地域の橋の予防保全(清掃活動等)を自発的に行う「セルフメンテナンス」の推進に寄与しています。

橋の老朽化が深刻…

海外では橋が落ちて死亡事故も…

 2014年告示の道路橋定期点検要領では、橋の定期点検に加え、日常点検の重要性も指摘されています。そこで、地域の橋を住民でも日常点検が可能なチェックシートを作成し、住民だけでなく、高校生の課外研究や、インハウスエンジニアの巡回点検にも活用。これらの点検結果をまとめた「橋マップ」は、地域の橋の清掃活動等のセルフメンテナンスに活用できるものとして各地に展開されています。

 ミネソタ州首都のセントポールとミネアポリスを結び、ミシシッピ川に架かるトラス橋が崩落しました。1967年に建設され40年が経過していました。死者9名、行方不明者4名、60台以上の車が巻き込まれ、100人以上が負傷する大事故となりました。

 そこで、2015年度、市町村で管理する橋梁に対し、一般市民でも日常的な状態や事故等の損傷がないか点検できるツールが作れないかと考え、「簡易橋梁点検チェックシート」を制作しました。当初は住民用に作成したチェックシートでしたが、その後、工業高校の教材としての活用やインハウスエンジニアによる巡回点検に活用したいとの反響がありました。

 橋の劣化は水が作用する箇所で起こります。排水桝や橋面上に土や泥、コケや草などがあると、雨水を排水できず、橋面上に水が溜まりやすくなるだけでなく、それらがスポンジの役割りを果たし、水を吸収し、赤丸の個所で更に劣化が進行する可能性があります。 橋面上のこれらの汚れは、地域住民でも原因を取り除くことが可能です。つまり、地域住民でも橋の劣化の進行を防ぐことができます。そこで、「簡易橋梁点検チェックシート」により点検した結果から、「高欄の錆」、「排水桝の土・泥のつまり」、「排水桝のコケ・草」、「地覆と舗装面の間の土・泥のつまり」、「地覆と舗装面の間のコケ・草」汚れ具合を数値化し、色分けして地図上にプロットした「橋マップ」を作りました。チェックシートの点検結果だけでなく、竣工年や橋長、点検日も記載し、橋の状態は写真で確認できます。

 一括りに道路橋とはいえ、置かれている環境や役割は多種多様です。過疎化が進む地方の市町村の道路橋と、都市部の道路橋を同様に維持管理することは必ずしも効率的とは言えません。 都市部の交通量が多い橋は、費用と技術力をかけて維持管理することができます。しかし、地方の市町村は限られた財政や技術力の中、橋の維持管理を行っていく必要があり、市民と協力した維持管理が重要になってくると有識者の間で議論されていました。

 近接目視により、詳しく手厚い点検が行われるため、きめ細やかな維持管理ができるようになります。しかし、我が国の道路橋のうち約7割は市町村が管理しています。技術力や予算の不足から、近接目視に加え橋の日常的な状態を把握することが難しい地方の自治体も少なくありません。

 日本全国にある橋梁は高度経済成長期に一気に建てられました。あれから約50年。人だけでなく橋も高齢化社会が近づいてきています。

●研究員 浅野和香奈/[email protected] ●教授  岩城一郎/[email protected]

日本大学工学部土木工学科 コンクリート工学研究室

出展:国土交通省国土技術政策総合研究所資料 第693号2012 平成23年度道路構造物に関する基本データ集

出展:2007年8月1日 AP/アフロ

毎日新聞平成26年4月15日

● 5年に1回の頻度で近接目視点検を義務化。●定期点検に加え、日常的な施設の状態の把握をする。

点検結果の見える化へ

 2018年 7月現在、チェックシートを用いた橋梁点検は住民主導型が福島県平田村、山口県周南市(しゅうニャン橋守隊)、 教育主導型が宮城県大和町、富谷市、大衡村(宮城県黒川高校)、 東京都世田谷区(国士舘大学)、石川県津幡町 (石川工業高等専門学校)、インハウスエンジニア主導型が福島県郡山市で行われており、全国へ広まっています。 地方の橋に焦点を当て、限られた予算と技術力であっても維持管理が可能なシステムの構築を目指して研究を進めて参りました。

国土交通省が発表した道路橋定期点検要領概要

2007年米国ミネアポリス高速道路橋梁崩壊事故

簡易橋梁点検チェックシート

橋マップ

それぞれの年度に架設された橋梁数(橋長15m以上)平成22年4月1日現在

1970年までに建設された橋梁数は、約41,000橋

1960年までに建設された橋梁数は、約13,000橋

2005

2000

1995

1990

1985

1980

1975

1970

1965

1960

1955

1950

1945

1940

1935

1930

1925

1920以前 年度

箇所数6,000

5,000

4,000

3,000

2,000

1,000

チェックシートと橋マップで地域の橋を予防保全!みんなで守ろう。「橋のセルフメンテナンスふくしまモデル」の構築と実践

日本の橋梁数と架設年地域の橋は地域で守る。

ふくしまから全国へ

日本でも対策を!点検を強化…

都市部の橋と地方の橋、同じ方法で維持管理できるの…?

排水

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0

お問い合わせ

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予防保全の必要性を見える化高校生

みんなで守る。橋のメンテナンスネットhttp://bridge-maintenance.net/

Face bookTEL/024-956-8716

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