12
日本のODAの 途上国の開発への貢献 東京大学 新領域創成科学研究科 国際協力学専攻教授・ JICA研究所客員研究員 戸堂康之 20111115外務省第1回援助政策研究会 概要 援助の効果に関する研究の概観 援助が直接投資に与える効果 (戸堂の研究その1) ミクロデータによる援助プロジェクト評価の概観 インドネシアでのJICA技術協力プロジェクトの評価 (戸堂の研究その2エチオピアでのJICA森林保全プロジェクトの評価 (戸堂の研究その3政策提言 2 援助研究概観 援助と 直接投資 ミクロデータに よる援助評価 技術協力プロ ジェクトの評価 森林保全プロ ジェクトの評価 政策提言 マクロデータによる援助の成長効果に関する 研究成果 世銀のダラーらの研究結果 Burnside and Dollar, 2000 [1997年発表]1人当たりGDP 成長率の上昇 ODA(対GDP比) 適切な政策(低インフレ・低財政赤字・高開放度)が 行われているという条件の下では成り立つ 援助研究概観 援助と 直接投資 ミクロデータに よる援助評価 技術協力プロ ジェクトの評価 森林保全プロ ジェクトの評価 政策提言 3 様々な推計手法やサンプルによる追試 Easterly et al. 2004, Rajan and Subramanian, 2008) Burnside & Dollar Easterly & others Aid * Policy Aid * Policy Growth of GDP/capita Growth of GDP/capita 4 政策の質によらず、援助の成長効果は はっきりとは見いだされなかった 援助研究概観 援助と 直接投資 ミクロデータに よる援助評価 技術協力プロ ジェクトの評価 森林保全プロ ジェクトの評価 政策提言

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日本のODAの途上国の開発への貢献

東京大学新領域創成科学研究科国際協力学専攻教授・JICA研究所客員研究員

戸堂康之

2011年11月15日外務省第1回援助政策研究会

概要

• 援助の効果に関する研究の概観

• 援助が直接投資に与える効果(戸堂の研究その1)

• ミクロデータによる援助プロジェクト評価の概観

• インドネシアでのJICA技術協力プロジェクトの評価(戸堂の研究その2)

• エチオピアでのJICA森林保全プロジェクトの評価(戸堂の研究その3)

• 政策提言2

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

マクロデータによる援助の成長効果に関する研究成果

世銀のダラーらの研究結果(Burnside and Dollar, 2000 [1997年発表])

1人当たりGDP成長率の上昇

ODA(対GDP比)

適切な政策(低インフレ・低財政赤字・高開放度)が行われているという条件の下では成り立つ

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

3

様々な推計手法やサンプルによる追試(Easterly et al. 2004, Rajan and Subramanian, 2008)

Burnside & Dollar

Easterly & others

Aid * Policy Aid * Policy

Grow

th of G

DP/capita

Grow

th of G

DP/capita

4

政策の質によらず、援助の成長効果ははっきりとは見いだされなかった

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

Page 2: 日本のODAの 途上国の開発への貢献 - ?????????...日本のODAの 途上国の開発への貢献 東京大学新領域創成科学研究科 国際協力学専攻教授・

なぜ援助の成長効果の推計で様々な結果が得られるのか?

• 経済成長から援助への逆因果関係

(停滞している国に援助が行きやすい)

• 成長と援助の同時決定性

(世界全体の景気が悪いと成長率も援助も減少)

5

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

相関関係

≠因果関係

因果関係を識別するには、

高度な計量経済学的推計手法

を使った研究の蓄積が必要

なぜ援助は成長効果がないのか?Rajan and Subramanian (2011)

ODA/GDP(対数値)

製造業のシェア

(対

数値

援助賃金上昇

製造業での競争力↓ 成長↓

6

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

最新の援助研究の動向

マクロデータ研究の深化

• 成長効果のための条件を探る

–Kimura, Mori, Sawada (2011)援助の氾濫(aid proliferation)↓成長効果

• 経済成長以外に対する効果

–Kimura and Todo (2010) 日本からの援助日本からの直接投資↑

7

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

ミクロデータによる効果分析の発展

• 個々のプロジェクトの効果の定量的な分析

援助は直接投資の流入を促すか?Kimura and Todo (2010)

• 援助直接投資の経路

8

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

• インフラ効果(+)

• レント・シーキング効果(-)

• 賃金上昇効果(-)

先兵効果(援助国からの直接投資のみ+)• 情報伝達• 疑似的国家保証• ビジネス習慣移植

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A国への援助総額

A国への直接投資総額

日本からA国への援助

日本からA国への直接投資

日本以外の主要援助国からA国への

援助

その国からA国への直接投資

9

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

Kimura and Todo (2010)の主要な結果 日本の援助は途上国の経済成長に貢献しているか?

10

日本からの援助

途上国の経済成長↑

日本からの直接投資↑

条件が整えば成り立つ

• 教育レベル(Borensztein et al. 1998)

• 金融制度(Hermes and Lensink, 2003)• 研究開発を伴う投資(Todo and Miyamoto, 2006)

日本に独特な先兵効果

(アジアへの投資の6%を援助が誘引)

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

• 参加者の評価指標の事前・事後の比較

例:JICAのある技術協力プロジェクトの事後評価報告

対象となった企業の平均返品率が11.3%から8.7%に

「目標達成の兆しが現われてきていることの証左ともいえ、高く評価されるべきである」

• 参加者と非参加者の比較

例:JICAのある教育関連プロジェクトの事後評価報告

参加州は非参加州と比べてより就学率を上げた

インパクトが「非常に大きい」

ミクロデータによる援助プロジェクトの評価

これではプロジェクトの成果を正確には測れない11

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

プロジェクトの効果?

プロジェクトの効果+

経済全体の成長

なぜミクロデータによる援助プロジェクトのインパクト評価は困難なのか?

アウトカム(技術レベルなど)

時間

プロジェクト

プロジェクト参加者の平均

経済全体が成長していたら

12

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

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プロジェクトの効果?

プロジェクトの効果+

参加者・非参加者の潜在的な違い

アウトカム(技術レベルなど)

時間

プロジェクト

プロジェクト参加者の平均

非参加者の平均

潜在的な能力の

高い(低い)者だけ参加できるとすれば

なぜミクロデータによる援助プロジェクトのインパクト評価は困難なのか?

13

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

時間

プロジェクト

プロジェクト参加者の平均

非参加者の平均

参加者と潜在的には同様の性質をもつ非参加者の平均

プロジェクトの効果

アウトカム(技術レベルなど)

無作為実験や計量経済学のマッチングの

手法によって選抜

なぜミクロデータによる援助プロジェクトのインパクト評価は困難なのか?

14

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

無作為実験(RCT)による評価

参加者母集団

非参加者

このイメージは、現在表示できません。

プロジェクトの参加者・非参加者を無作為に選別 参加者・非参加者は平均的に同じ性質 両者のアウトカム(の増減)を比較することで

プロジェクトの効果を推計(医薬品の効果の推計方法と同様)

15

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

無作為実験による開発援助・貧困削減プログラムの

インパクト評価• J‐PAL (Jameel Poverty Action Lab)

– 先駆者

– 保健、教育、行政、マイクロクレジットなど多岐の分野で終了済・進行中合わせて302件(J‐PALウェブサイト)

• 世銀

– 終了済233件(Poverty Impact Evaluations Database)• JICA

– インド森林プロジェクト・ブルキナファソでの教育プロジェクトなどで実施中 16

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

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機関 分野 国 内容

J‐PAL 保健 ケニア学校をランダムに分け、虫下し薬を投与。

投与校・周辺校で、健康状態・出席率が向上。

J‐PAL 農村

開発ケニア

農民組織をランダムに分け、市場の情報や輸送手段、融資を与え、その効果を検証。

J‐PAL 教育 コロンビア

一定以上の出席率の児童の親に現金を供与するプログラムで、ランダムに分けて異なる方法(毎月か一括かなど)を試し、それぞれの効果を検証。

J‐PAL 金融 南アフリカ消費者金融において各顧客にランダムに決められた利子率を提示し、金融市場における逆選択やモラルハザードについて検証。

世銀公共セクター

インドネシア農村道路を造る際に、各村に対してランダムに決められた数字を国の監査が行われる確率として伝えておき、腐敗に対する効果を検証。

17

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

無作為実験による評価の欠点• 医薬品の効果推計と違い、ダブルブラインドなど完璧な実験の設計が不可能 推計に偏り

• 実験結果は、必ずしも一般化できない例:企業研修に対する効果あり(Bloom et al., 2011)vsなし(Karlan and Valdivia, 2011)

• 倫理的・政治的問題から実験ができないことも(大規模インフラ、金融支援など)

非実験的なデータを統計学的手法で処理し、偏りの(少)ない推計を得ることも一つの評価法

18

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

マッチングによる評価

参加者 非参加者

参加者と潜在的能力が等しい非参加者

2グループのアウトカムの差

||プロジェクトの効果

恣意的な選抜により潜在的能力に差

同じ性質(潜在的

能力が等しい)もの同士をマッチ

19

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

プロペンシティ・スコア・マッチングの場合

1. 多数の潜在的要因がプロジェクトへの参加に与える効果を定量的に推計

2. その結果を利用して、各企業(個人)の参加確率の予測値を推計

3. 各参加者を参加確率の予測値の最も近い非参加者とマッチ

いずれにせよ、参加の潜在要因に何らかのウェイトをつけて一つの指標として、その指標によってマッチ

参加者と「同じ性質」の非参加者の決め方

20

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

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マッチングによる評価

• 政策評価の手法として広く用いられている

– 労働経済学分野:職業訓練プログラムの効果

– 世銀の援助評価:終了済128件(<無作為実験)

• 例:灌漑設備修復の効果(ベトナム)

• 欠点

– 参加者・非参加者の平均的性質を一致させるために様々な指標に関するデータが必要

– プロジェクト前後での変化を計測するために複数時点のデータが必要

– 実験的なデータに比べてより多くの標本が必要

21

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

操作変数法

• 非実験的データを利用してインパクト評価を行うもう一つの統計学的・計量経済学的推計手法(世銀データベースで34件)

• 伝統的な2段階最小2乗法に加え、GMMなどのよりよい手法が続々と開発

• 欠点 PSMと同様、多くのデータが必要

• 利点参加・不参加の2分法だけではなく、供与額の差など参加の程度の差がある場合には程度に応じた効果が推計できる(例:プログラムが効果的な条件も推計可能) 22

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

インドネシア鋳造産業における日本の技術援助のPSMによる評価(Todo, 2011)

インドネシア鋳造産業の概要

• 中小企業中心

• 日系企業を中心とする電機・電子・自動車産業などに部品を供給

23

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

インドネシア鋳造産業での日本の技術援助

• JICAによる『鋳造技術分野裾野産業育成計画』

– 現地企業に技術指導(3つの形態:巡回指導、短期研修、1日セミナー)

– 現地カウンターパート機関の技術者に技術指導(JICAプロジェクト終了後も現地機関が技術指導)

– 2004年終了済

• AOTSによる研修

• JODCによる専門家派遣

• JICAシニアボランティアによる専門家派遣

24

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

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• 2006年に実施した独自調査により企業レベルのデータを収集(200社にサーベイ、150社回答)

• 技術レベルの指標:不良品率

• マッチングのための企業の性質:1人当たり生産重量,従業員数,高卒以上の従業員数,外国人従業員数等

4つの集積地

25

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

‐0.8

‐0.6

‐0.4

‐0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

-1 0 1 2

不良品率の変化率

PSMによる分析結果のまとめ

参加企業

参加企業とマッチさせた非参加企業

平均

平均

15%=プロジェクトの平均的効果

不良品率の変化率

26

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

• 何らかの日本の技術援助プログラムに参加

同様の性質をもつ非参加企業に比べて、1年間に不良品率が平均で約15%多く減少

• 一方で不良品率は平均で年率2.5%減少

援助は参加企業に6年分の技術進歩

日本の技術援助は量的にも大きな効果

• 反面、参加企業と(PSM前の)全非参加企業の技術進歩率の差はない

P11のような単純な比較では誤った推計結果に

分析結果と政策的含意

27

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

分析結果と政策的含意

時間

プロジェクト

非参加者全体の平均

PSMによってマッチさせた、潜在的には参加者と

同様の潜在的成長力をもつ非参加者の平均

PSMによって推計された

プロジェクトの効果

不良品率

プロジェクト参加者の平均

参加者・非参加者の単純比較ではプロジェクトの

効果はないように見えるが…

参加者だけを見ると不良品率は

下がっているが…

潜在的成長力の劣った企業が

選抜されて参加し、技術力を上昇

28

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• JICA撤退後に現地カウンターパート機関が行った技術指導プログラムの効果はない(少なくとも短期的には)

現地機関への技術移転には改善の余地あり

• 参加企業が集中する中部ジャワの非参加企業は他の地域の非参加企業と同様の技術進歩 参加企業から非参加企業へ技術の波及なし

波及効果があれば、より大きな援助効果だが、どうすれば波及が促進されるか?

分析結果と政策的含意

29

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

分析結果の留意点

• よりレベルの高い製品を作ると不良品率は上昇

この分析手法では、技術援助プログラムの効果を過小評価している可能性

• データの時間軸が短く、長期的効果が測定不能

長期的にはカウンターパート機関の技術指導プログラムの効果や非参加企業への波及効果がある可能性も

• 複数の種類の技術援助を受けている企業が多い

各々の種類の効果を独立して測るのは難しい30

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

エチオピアにおける著しい森林減少

• 森林の国土全体に対するシェア

20世紀初頭35%→1950年16%→2005年13%– 境界線があいまい農地拡大

– 貧困薪伐採

31

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

プロジェクト対象地域での森林面積の減少(衛星画像データより)

32

森林(緑の部分) 40%の森林エリアが消失

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

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33

森林管理組合設立

農民学校 森林コーヒー認証

「ベレテ・ゲラ参加型森林管理計画」プロジェクト概要

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

森林と居住の境界にマーク

34

森林と居住の境界を確定

モニタリング

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

35

WaBuBフィールド・スクール

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

2種類のインパクト評価• 農民学校が住民の生計向上に与える効果

(Todo and Takahashi, 2011a)

–貧困が森林伐採の主因の一つ

–農村世帯調査によるデータ利用

–PSMによる推計

• 森林管理組合の設立が森林保全に与える効果(Todo and Takahashi, 2011b)

–衛星画像をリモートセンシングによって加工したデータを利用

–操作変数法による推計36

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

プロジェクトによって

収集

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2008年期の農民学校の効果推計

37

2008‐2010年の増加量

参加者の平均

マッチ後の非参加者の平均

平均の差=

平均的効果

標準誤差

標本数

名目所得(ブル) 6956 4718 2237* 1287 106実質所得(ブル) 2892 1538 1355* 802 1061人当たり名目所得 2646 950 1696*** 568 1061人当たり実質所得 1210 172 1037*** 355 106

*=10%,***=1%水準で有意1ブル=約8円(当時)

農民学校に参加することで1人当たり実質所得は8000円増加

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

森林組合が森林面積増加率に与える効果

森林面積変化率に

対する効果WaBuB設立期間 ‐0.1199**WaBuB設立後:1年目 0.1685*WaBuB設立後:2年目 0.24862007年設立WaBuBの周辺エリア ‐0.09652008年設立WaBuBの周辺エリア 0.0310

38

*, **, ***は,それぞれ10%,5%,1%レベルで有意

設立前後に12%減駆け込み伐採の可能性

設立1年目に17%増

森林組合は周辺の森林伐採を促さない

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

結果のまとめ

時間

プロジェクト

プロジェクトがなかった場合(3.3%減)

プロジェクトがあった場合(1.5%増)

推計されたプロジェクトの効果(4.8%)

森林面積

39

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

• 生計向上?

• 参加型森林組合?

よりよい援助評価のために定量的データ収集を

• これまでの多くの研究成果から、必要なデータを収集すれば定量的な評価が可能であることは明らか

• データ収集の留意点

–プロジェクト前後の少なくとも2時点で、できればプロジェクト後長期間にわたってデータ収集プロジェクト計画時点でデータも計画

–参加者ばかりでなく、非参加者も含めて調査 40

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

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参加者の募集

抽選によって選別

プロジェクト前調査

第一

フェーズに

参加

不参加

プロジェクト後調査

第二

フェーズに

参加

参加者の選抜

• 第1フェーズの参加者と非参加者は無作為に選抜 インパクト評価が可能

• 無作為に参加者を選抜することの倫理的問題を回避

• 将来の参加を保障より信頼できる調査

無作為実験をより広範に実施

41

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

適切なインパクト評価にむけた提言

42

• 無作為に選ばれたプロジェクトに対して、無作為実験やデータ収集を実施

• インパクト評価のためには専門知識が必要• 恣意的な結果を排除

• オペレーションから独立した専門家集団• 収集したデータは公開• 結果は査読付き学術誌に掲載

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

43

JICA

世銀 IMF

評価部門

JICAの評価部の独立性は低い

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

理想的な評価のあり方

44

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言

評価部門の専門性の強化

プロジェクトの評価をわかりやすく提示

(定量的評価を基にした費用便益分析も可能)

効果的なプロジェクト実施方法を提言

(将来の同種のプロジェクトに対して、もしくはプロジェクトの途中において)

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45

正しいインパクト

評価

効果的な援助の実施

国民の支持

援助研究概観援助と

直接投資ミクロデータによる援助評価

技術協力プロジェクトの評価

森林保全プロジェクトの評価

政策提言参考文献

Borensztein, E., J. De Gregorio, and J.‐W. Lee (1998), “How Does Foreign Direct Investment Affect Economic Growth?” Journal of International Economics, 45(1), 115‐135. 

Burnside, C. and D. Dollar (2000), “Aid, Policies, and Growth,” American Economic Review, 90(4), 847‐868.Easterly, William, Ross Levine, and David Roodman (2004), “Aid, Policies, and Growth: Comment,” American Economic 

Review, 94(3), 774‐780. Hermes, Niels and Robert Lensink (2003), “Foreign Direct Investment, Financial Development and Economic Growth,” 

Journal of Development Studies, 40(1), 142‐163. Kang, Sung Jin, Hongshik Lee, and Bokyeong Park (2010), “Does Korea Follow Japan in Foreign Aid? Relationships between 

Aid and Foreign Direct Investment,” Japan and the World Economy, 23(1), 19‐27.Karlan, Dean and Martin Valdivia (2011), “Teaching Entrepreneurship: Impact of Business Training on Microfinance Clients 

and Institutions,” Review of Economics and Statistics, 93(2), 510‐527. Kimura, Hidemi and Yasuyuki Todo (2010), “Is Foreign Aid a Vanguard of FDI? A Gravity‐Equation Approach,” World 

Development, 38(4), pp. 482‐497.Bloom, Nicholas, Benn Eifert, Aprajit Mahajan, David McKenzie, and John Roberts (2011), “Does Management Matter? 

Evidence from India,” NBER Working Paper, No. 16658. Rajan, Raghuram G. and Arvind Subramanian (2008), “Aid and Growth: What Does the Cross‐Country Evidence Really 

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