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わが国の地方税財政制度と地方分権 地方財政研究会報告用レジュメ 堀場勇夫 平成 29 11 21 目次 1 地方財政におけるマクロとミクロの予算編成過程 2 2 地方税充実による地方分権改革 5 2.1 地方消費税の税率引上げの影響(モデル I.............. 5 モデル I での諸仮定 ............................ 5 図による説明(基準財政需要額不変) (交付団体の増収分を財政健全化に用いるケースに対応) .. 6 図による説明(基準財政需要額を上積みする場合) (交付団体の増収分を地方税の充実に用いるケースに対応) . 7 2.2 地方法人税と偏在是正(モデル II................... 8 モデル II での諸仮定 ........................... 8 図による説明(基準財政需要額不変) (不交付団体の増収分を財政健全化に用いるケースに対応) . 9 図による説明(基準財政需要額を上積みする場合) (不交付団体の増収分を偏在是正に用いるケースに対応) .. 10 3 三位一体改革と地方分権 11 3.1 地方分権からの三位一体改革とモデル分析 ............... 12 モデル III のための仮定 ......................... 12 * 本報告は堀場 (2017) を中心にまとめたものである。 青山学院大学名誉教授 1

わが国の地方税財政制度と地方分権 地方財政研究会報告用 ......7. 税制改正によって地方消費税の税率が引き上げられたとき,それぞれの増収額

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わが国の地方税財政制度と地方分権地方財政研究会報告用レジュメ∗

堀場勇夫 †

平成 29年 11月 21日

目 次1 地方財政におけるマクロとミクロの予算編成過程 2

2 地方税充実による地方分権改革 5

2.1 地方消費税の税率引上げの影響(モデル I) . . . . . . . . . . . . . . 5

モデル Iでの諸仮定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5

図による説明(基準財政需要額不変)(交付団体の増収分を財政健全化に用いるケースに対応) . . 6

図による説明(基準財政需要額を上積みする場合)(交付団体の増収分を地方税の充実に用いるケースに対応) . 7

2.2 地方法人税と偏在是正(モデル II) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

モデル IIでの諸仮定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

図による説明(基準財政需要額不変)(不交付団体の増収分を財政健全化に用いるケースに対応) . 9

図による説明(基準財政需要額を上積みする場合)(不交付団体の増収分を偏在是正に用いるケースに対応) . . 10

3 三位一体改革と地方分権 11

3.1 地方分権からの三位一体改革とモデル分析 . . . . . . . . . . . . . . . 12

モデル IIIのための仮定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12

∗本報告は堀場 (2017)を中心にまとめたものである。†青山学院大学名誉教授

1

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 1

図による説明(改革前の状況) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12

国庫補助金と基準財政需要額 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14

交付団体への影響 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15

不交付団体への影響 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15

3.2 三位一体改革における財政再建とモデル分析 . . . . . . . . . . . . . . 16

交付団体への影響(図 8による説明) . . . . . . . . . . . . . . . . . 17

不交付団体(図 9を参照) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18

4 留保財源のモデル分析 20

4.1 地方税の増収による交付団体一般財源への効果 . . . . . . . . . . . . . 20

基準財政収入額と留保財源について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 20

税収の増額と一般財源総額 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21

留保財源率分の増額と一般財源総額 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22

4.2 留保財源率と財源保障 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22

基準財政需要額一定のもとでの留保財源率の引上げ . . . . . . . . . . 24

一般財源総額一定のもとでの留保財源率の引上げ . . . . . . . . . . . 24

5 義務付けと地方分権改革 26

6 地方分権改革と今後の課題 27

基準財政収入額算定の枠組み . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 29

基準財政収入額の算定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 30

基準財政収入額の算定の具体例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 30

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 2

報告の目的ここ四半世紀の地方財政を振り返るとき,国・地方の政府機能の役割分担や事務

分担あるいは税源配分等からみて,重要な改革が実施されてきた。本報告では,わが国の現行税財政制度である地方財政計画や地方交付税制度等を前提として,この間の地方税財政制度に関する改革を評価する。その分析のために,議論の前提となる,わが国地方財政のマクロとミクロの予算編成過程について概観する。

1 地方財政におけるマクロとミクロの予算編成過程地方財政に関するマクロでの予算編成過程とミクロでの予算編成過程

• 地方財政に関するマクロの予算編成過程とは,国の予算と地方財政計画との均衡を目的として毎年度なされる国と地方の予算に関する調整過程をいう最終的には地方財政対策によって,地方全体での地方財政計画と普通交付税総額が決定(図 1)

• ミクロの予算編成過程とは地方団体での普通交付税額の決定をいう個々の団体で基準財政需要額と基準財政収入額との差額が普通交付税額として算定され,地方財政計画で決められた普通交付税総額と総額が調整された上で,個々の団体への地方交付税の配分がなされる。(図 2)

わが国の地方財政の政策決定過程では,まずマクロの予算編成過程によって,国の予算及び財政政策と整合的な地方財政計画が決定され,次にミクロの予算編成過程によって,マクロで決定された地方財政計画と全体で調整をしつつ,個々の地方団体における地方交付税の額が決定される。その結果,地方財政については,マクロとミクロの二重の意味で財源保障がなされるのである。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 3

図 1: 地方財政計画と地方交付税の決定

マクロでの普通交付税額

当該年度地方財政対策

標準経費分・留保財源分不交付団体水準超経費分への財源配分

基準財政収入額

地方公共団体が通常標準的に徴収しうるであろうと考えられる税収のうち基準財政需要額として算定される標準的な財政支出に対応する財政収入となるべき額(地方財政小辞典)

基準財政需要額

基準財政需要額は地方財政計画の歳出中一般財源対応分を算入するもの(地方交付税のあらまし)

国の予算

義務付けの程度に応じて財源の配分

長期での財源不足額

ミクロでの普通交付税額

地方財政または地方行政にかかる制度の改正または地方交付税率の変更

予算過程の地方財政対策

マクロとミクロの対応マクロとミクロの対応単位費用によるマクロからミクロへの調整

長期・マクロでの財源調整

地方債発行可能額

地方債計画

当該年度地方財政計画

マクロでの決定過程

ミクロでの決定過程

・経済・財政再生計画・当該年度の経済財政運営と 改革の基本方針・当該年度の政策・当該年度概算要求基準

国税税収

地方税税収

地方税税収

国庫支出金額

地方債発行額

留保財源 水準超経費

交付税特会措置

地方財政収支の仮試算と概算要求

地方財政計画

マクロでの一般財源総額

(出所)筆者作成

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 4

図 2: 個別地方団体の基準財政需要額の算定

各項目ごとの基準財政需要額 = 単位費用 × ( 測定単位の数値 × 補正係数 )

標準団体での算定

地方団体の測定単位数値 地方団体の補正係数

個別項目ごとの算定

地方団体の財政需要額(一般財源所要額)

地方団体の基準財政需要額

個別団体の基準財政需要額の算定

個別団体での算定

(出所)筆者作成

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 5

2 地方税充実による地方分権改革しばしば,地方分権のために地方税の充実をなすべきという主張がなされている。

ここでの問題意識は,地方税の充実による地方分権改革が,地方財政にどのような影響を及ぼすのかについて検討することにある。

2.1 地方消費税の税率引上げの影響(モデル I)前述したわが国の地方財政制度を踏まえて,地方税の充実がなされた場合,交付

団体と不交付団体にどのような影響が生じるのかについて,簡単なモデルを用いて考察する。例として,地方消費税の税率引上げによる地方税の充実を取り上げる。なお,地方

消費税は平成 6年の税制改正で創設され,平成 9年 4月 1日より消費税率換算 1%で導入されてから 20年が経過した。この間平成 26年 4月から消費税率が 8%に引き上げられたのに伴い消費税率換算で 1.7%に,また平成 31年 10月からは消費税率換算で 2.2%に引き上げられる予定である。

モデル Iでの仮定

分析のため,以下のように単純化のための諸仮定をおくことにする。

1. 2つの代表的な地方団体を考える。

2. 2つの地方団体の基準財政需要額は等しいものとする。

3. 簡単化のために留保財源率をゼロと仮定する。したがって地方税収と基準財政収入額は等しい。

4. 2つの地方団体では地方税収額に差があり,結果として基準財政収入額も異なっている。

5. 地方税収の多い地方団体は不交付団体に,少ない地方団体は交付団体に属していると仮定する。

6. 国からの国庫補助負担金はないものとする。

7. 税制改正によって地方消費税の税率が引き上げられたとき,それぞれの増収額は等しいと仮定する。

8. 税制改正による地方税の充実にも係わらず,地方財政計画の歳出額を変化させず,基準財政需要額を上積みしない政策が採択される。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 6

図による説明(基準財政需要額不変)(交付団体の増収分を財政健全化に用いるケースに対応)

図 3: 地方税の増収による効果

改正前 改正後 改正前 改正後

(出所)総務省資料を転載

交付団体 図 3の交付団体改正後の図基準財政収入額が地方消費税引上げ分だけ増額するが,基準財政需要額の上積みがない場合には,地方交付税の算定式によって,地方交付税が同額減額するため交付団体の一般財源は変化しない。

不交付団体 不交付団体の場合には地方消費税率引上げ分の税収が増収となる。

影響 基準財政需要額の上積みがない政策のもとでは,交付団体と不交付団体間の一般財源総額で見た財政格差が,地方消費税引上げによる不交付団体の増収分だけ拡大する。それに加え,交付団体の地方交付税額が減額となる分,地方財政対策における折半ルールによって,国の一般会計の地方交付税の増額による補填(臨時財政対策特例加算)と地方の臨時財政対策債の発行(臨時財政対策特例加算相当額)が減額となる1)。

1)堀場 (2017)では,議論を単純化するため,地方での財源不足がない場合を記述している。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 7

わが国の地方税財政制度の大きな枠組みのもとでは,地方税の充実を目指す地方分権改革によって,基準財政需要額を上積みせず,地方財政計画歳出を増額させない場合には,仮に税収の増加額が交付団体と不交付団体において均等としても,地方交付税制度によって意図せざる財政力格差が生じる。

図による説明(基準財政需要額を上積みする場合)(交付団体の増収分を地方税の充実に用いるケースに対応)

地方税の充実によっても,地方財政計画が一定のもとでは,交付団体の一般財源総額が変わらず,交付税の減額分が地方の財源不足の減額に用いられることが示された。地方税の充実分を交付団体の一般財源総額の増額に用いるためには,図 4で示されているように,交付団体の地方消費税引上げ分に対応した地方財政計画歳出の増額と基準財政需要額の上積みが必要となる。このとき地方財政計画歳出に新たな「標準的な財政需要」の増額が必要となり,地方税充実に伴う交付団体と不交付団体間の財政力格差の拡大については,地方財政計画が一定のときよりも改善される。

図 4: 地方税の増収による交付団体への効果

税制改正前基準財政需要額

地方交付税

地方税

地方税

地方交付税

増収額

税制改正後基準財政需要額

地方税

地方交付税

}新たな基準財政需要額の算定

{

税制改革前

{ {

税制改革後

基準財政需要額変更無し

{ 増収額 {

基準財政需要額変更あり

(出所)筆者作成

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 8

2.2 地方法人税と偏在是正(モデル II)地方消費税の税率引上げによる格差の拡大を是正すると同時に,地方法人課税に

よる偏在の是正を目的とした税制改正が,地方法人特別税及び地方法人特別譲与税,また地方法人税の創設と法人住民税法人税割の地方交付税原資化によってなされた。この地方法人税によって,どのような偏在是正がなされたかについて,単純なモデル(モデル II)を用いて分析を行うのがここでの目的である。

モデル IIでの諸仮定

地方法人税による偏在是正や財政調整機能について分析するために,以下の諸仮定をおく。

1. 2つの代表的な地方団体を考える。

2. 2つの地方団体の基準財政需要額は等しいものとする。

3. 簡単化のために留保財源率をゼロと仮定する。したがって地方税収と基準財政収入額は等しい。

4. 2つの地方団体は地方税収額に差があり,結果として基準財政収入額も異なっている。

5. 地方税収の多い地方団体は不交付団体に,少ない地方団体は交付団体に属していると仮定する。

6. 国からの国庫補助負担金はないものとする。

7. 税制改正によって地方消費税の税率が引き上げられたとき,それぞれの増収額は等しいと仮定する。

8. 税制改正による地方税の充実にも係わらず,地方財政計画の歳出額を変化させず,基準財政需要額を上積みしない政策が採択される。

9. 法人住民税法人税割が一部国税化され,新たに地方法人税を創設する。また地方法人税の税収は全額交付税原資とする。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 9

図 5: 交付団体と不交付団体への効果(基準財政需要額不変)

(出所)筆者作成

図による説明(基準財政需要額不変)(不交付団体の増収分を財政健全化に用いるケースに対応)

交付団体 法人住民税が減収となるが,国税の地方法人税を通じて全額が交付税の原資となり,基準財政需要額が不変のもとでは地方交付税が同額増額し,交付団体の一般財源総額は変わらない

不交付団体 法人住民税が国税化されることによって,不交付団体の法人住民税が減収となる。この不交付団体における減収分は,全額地方交付税の原資となるため,地方交付税が不交付団体の法人住民税の減収分だけ増額となる。

影響 地方全体で不交付団体の法人住民税の減収分だけ一般財源が減額となる。また,不交付団体の地方法人税分だけ交付税の原資が増加し,地方財政対策における折半ルールによって,国の一般会計の地方交付税の増額による補填(臨時財政対策特例加算)と地方の臨時財政対策債の発行(臨時財政対策特例加算相当額)が減額となる2)。

2)原論文では,簡単化のため,地方での財源不足がない場合を記述している。

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図による説明(基準財政需要額を上積みする場合)(不交付団体の増収分を偏在是正に用いるケースに対応)

図 6: 交付団体と不交付団体への効果(基準財政需要額増額)

(出所)筆者作成

交付団体 法人住民税の国税化によって Bの減収が生じ,同時に地方法人税が同額増加して地方交付税の原資となる。交付団体の基準財政収入額が Bだけ減額して,上記の増加した原資に見合う地方交付税が Bだけ増額する。法人住民税の減収分がちょうど地方交付税に代わるため,この部分については,一般財源総額に変化は生じない。

不交付団体 不交付団体減収額 Eが交付税財源となることを通じて交付団体に移転され,地方交付税額がCだけ増額する。加えて,偏在是正のために,「まち・ひと・しごと創生事業費」の創設によって地方財政計画歳出の増額をし,基準財政需要額を上積みする。すなわち,図 6のように,地方交付税額Cに等しい,「まち・ひと・しごと創生事業費」Dを地方財政計画の歳出に計上し,基準財政需要額をDだけ増加させることで財源を移転する。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 11

影響 地方法人税による偏在是正では,不交付団体の減収額をまち・ひと・しごと創生事業費によって交付団体に配分する。

地方分権改革を論ずるときに,しばしば地方税の充実が主張されるが,地方分権を達成するために地方税を充実するときには,交付団地と不交付団体のに,地方税収格差の拡大あるいは財源格差の拡大という問題が生じる。またモデル Iで検討したように,基準財政需要額の上積みがなされないときには,交付団体の税収の増収分は,地方財政対策での折半ルールを通じて,国の一般会計の地方交付税の増額による補填分(臨時財政対策特例加算額)及び地方の臨時財政対策債の発行分(臨時財政対策特例加算相当額)の減額に用いられる。この場合,地方税の充実を目指した地方分権改革の視点からみると,交付団体に関しては実質的な地方税の充実がなされないことになる。

地方分権改革の目的である地方税充実の政策に加えて,交付団体と不交付団体間の地方税収の格差を是正するために,追加的に必要な税制改正を検討せねばならない。その場合,これまで議論をしてきたように,追加的な施策によって,交付団体の増収分を財政健全化に用いるケース,交付団体の増収分を地方税の充実に用いるケース,不交付団体の増収分を財政健全化に用いるケース,不交付団体の増収分を地方税の充実に用いるケース等が考えられる。

3 三位一体改革と地方分権• 平成 14年(2002年),片山総務大臣が「地方財政の構造改革と税源移譲について(試案)」を経済財政諮問会議に提出したことに端を発した改革は,当初国庫補助金の廃止と国から地方への税源移譲との組み合わせによる,地方分権を目指した改革であった。しかし,時間の経過とともに,地方分権と財政再建という 2つの目的を同時に達成しようとする,国庫補助金の改革,国から地方への税源移譲,地方交付税改革からなる,三位一体改革と呼ばれる改革に変容した。

• 国庫補助金の廃止によって生み出された財源を用いて税源移譲を行うという当初の地方分権改革について,地方税の充実と財政力格差拡大の是正がどのように考えられていたか,単純なモデルを用いて検討する。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 12

3.1 地方分権からの三位一体改革とモデル分析分析のための簡単なモデルをモデル IIIと呼び,単純化と分析のために以下のよ

うな仮定をする。

モデル IIIのための仮定

1. 2つの代表的な地方団体を考える。

2. 2つの地方団体の基準財政需要額は等しいものとする。

3. 簡単化のために留保財源率をゼロと仮定する。したがって地方税収と基準財政収入額は等しい。

4. 2つの地方団体は地方税収額に差があり,結果として基準財政収入額も異なっている。

5. 地方税収の多い地方団体は不交付団体に,少ない地方団体は交付団体に属していると仮定する。

6. 改革前,総額 4000の国庫補助金が国から地方へ移転されている。補助金は測定単位1単位当たり 10とし,それぞれの団体は 200単位の事業が行われている。したがって,それぞれの団体への国庫補助金額は等しく 2000

である。

7. 地方分権改革によって補助金が廃止され,補助金の財源であった 4000を用いて国から地方に税源移譲を実施する。ただし,税源移譲額は交付団体と不交付団体では異なり,税源移譲によって交付団体では 1000の地方税の増収,不交付団体では 3000の増収が生じると仮定する。

図による説明(改革前の状況)

• 図 7では,交付団体が左図に,不交付団体が右図に示されている。仮定によって,地方団体の基準財政需要額は均等であるが地方税収が異なっている。

• 留保財源率がゼロであるため,基準財政収入額は地方税収に等しい。したがって交付団体では基準財政需要額から基準財政収入額を控除した額の地方交付税が交付されている。むろん不交付団体では基準財政収入額が基準財政需要額を超過しているため地方交付税額はゼロである。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 13

図 7: 補助金の廃止と税源移譲による効果

基準財政需要額

地方交付税

地方税

国庫補助金2,000

基準財政需要額

地方交付税

地方税

基準財政需要額

地方税

基準財政需要額

地方税

国庫補助金の廃止による財源

総額 4,000

地方税増収額 1,000 地方税増収額 3,000

交付団体 不交付団体 ( 単位万円 )

国庫補助金2,000

{

改革前

{

改革前

{

改革後

{改革後

{地方税増収額

{地方税増収額{

基準財政需要額増加額

{基準財政需要額増加額

{交付税増加額

(出所)筆者作成

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 14

• 改革前をみると,国税を財源として総額 4000の国庫補助金が交付団体と不交付団体に均等に 2000ずつ交付されている。ただし,国庫補助金については,補助対象事業は単位費用 10,200単位の事業である3)。

国庫補助金と基準財政需要額4)

地方団体にとって歳出の自由度を高めるために,国庫補助金を廃止して捻出した財源を用いて,国税を地方税に税源移譲する改革を実施した場合の効果について分析する。

• 基準財政需要額とは地方団体のあるべき財政需要額(一般財源所要額)であり,各経費項目ごとに次の式によって算定した額の地方団体の合計額である。

単位費用× (測定単位の数値×補正係数) (1)

• 単位費用は各行政項目ごとの測定単位当たりの一般財源所要額であり,道府県または市町村の行政項目ごとに,通常標準的な条件を備えた団体または標準的な施設について,次の算式によって算定される (石原, 2016, 273頁)。

単位費用 = 標準的な歳出−国庫補助負担金等の特定財源測定単位の数値 (2)

• 補助事業分の基準財政需要額について

図 7では,国庫補助金として,各公共団体に 2000が補助されているため5),(2)式から分母は 200であるが分子がゼロのため補助金の部分の単位費用はゼロとなる。したがって (1)式から当該補助事業分については基準財政需要額はゼロ,図 7の改革前の図のように示される。

• 国庫補助金の廃止とそれを財源とした税源移譲を考える。この改革によって基準財政需要額に関しては,国庫補助金が廃止されたため (2)式から単位費用が 10

(= 2000−0

200

)で与えられる。したがって (1)式から,交付団体及び不交付団

体の基準財政需要額は図 7の改革後基準財政需要額増加額のようにそれぞれ2000増加する。

3)例えば,交付団体,不交付団体とも 200キロの補助対象事業にキロメートル当たり 10の経費に見合う補助率 100分の 100の国庫補助を受けている場合を想定すればよい。

4)ここでの説明は石原 (2016, 272–284頁 II 単位費用) を参照している。5)本来単位費用は標準団体についての概念であり,諸式は標準団体についての算定式である。ここ

では単純化のために当該経費項目について交付団体及び不交付団体の単位費用として議論している。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 15

交付団体への影響

• 税源移譲によって交付団体の地方税は 1000増加したと仮定。留保財源率がゼロであるから基準財政収入額も 1000増加。

• 図 7のように基準財政需要額の増加 2000から基準財政収入額の増加 1000を除くと地方交付税が 1000増加。

• 地方税の増収額と地方交付税の増加額を合わせた一般財源総額の増加額は,それまでの国庫補助金と同額の 2000となる。

• 交付団体に関しては,現行の地方交付税制度を前提とすると,国庫補助金の廃止と税源移譲による改革では,交付団体に留まる限り,どのような額で税源移譲がなされようと国庫補助金と同額の一般財源の増額が生じる。税収の多寡によって,地方交付税と地方税の配分が変化するだけである。

不交付団体への影響

• 税源移譲による不交付団体での増収額が 3000であったと仮定する。このとき図 7が示しているように,不交付団体の地方税の増収額 3000は不交付団体が受け取っていた国庫補助金の額 2000を超えている。

• 地方財政全体では,国庫補助金廃止によって生まれる財源 4000を 1000超える税源移譲が生じている。これは不交付団体では税源移譲あるいは一般財源の増加額が必ずしも国庫補助金の額に等しくなる制度的なメカニズムがないことから生じるのである。

• 交付団体と異なり不交付団体では国庫補助金の廃止額と税源移譲額が一致する保証はない。一致しない場合には,国の財政の均衡が満足されなくなる。

以上の議論から,交付団体と不交付団体への影響については,改めて次のようにまとめることができる。

交付団体

• 補助金の廃止と税源移譲の改革が同時に実施されるとき,交付団体ではマクロでもミクロでも現行の地方交付税制度によってほぼ自動的に調整がなされる。すなわち,税源移譲額が国庫補助金額に一致しない場合でも,税源移譲額に適応して地方交付税の額が増減し,結果として交付団体では税源移譲額と地方

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 16

交付税額の合計である一般財源総額はそれまで受け取っていた国庫補助金の額に等しくなる。また,この改革によって交付団体間の財政力格差に変化は生じない。

• 交付団体に関しては,補助金廃止と税源移譲のみの改革を実施しても,地方交付税制度によって地方交付税額に自動的に変動が生じ,当初の地方分権を目的とした補助金廃止とそれを財源とした税源移譲のみの改革は,わが国の制度において可能であった。

不交付団体

• 不交付団体では,国庫補助金額と税源移譲額は必ずしも一致しない。すなわち交付団体のような地方交付税による自動調整機能は存在しない。

• 不交付団体での国庫補助金の廃止額と税源移譲額が一致するよう調整がなされるとき,国を含め,全体での均衡が達成される。このとき,地方の一般財源増加額(=地方税の増収額+地方交付税増収額)は,国税の減収額に等しい国庫補助金の廃止額と一致する。また改革は,交付団体と不交付団体間の財政力格差について中立となっている。

国庫補助金を廃止することによって生じた財源を用いて,税源移譲による地方税の充実を行い,地方の財源を特定財源から一般財源とすることで,地方団体の政策の自由度を高める地方分権改革については,わが国の地方財政制度を前提としても達成可能であり,地方団体間の財政力格差についても中立であることが明らかとなった。そのとき,必要な条件は不交付団体の補助金廃止額と税源移譲額を等しくすることである。

3.2 三位一体改革における財政再建とモデル分析先述したごとく,実際に実行に移された三位一体改革は,地方分権と財政再建と

いう 2つの目的を同時に達成しようとした改革であったため,地方分権の観点からは決して高い評価が与えられなかった。その主な理由として以下の 2点があげられる。

1. 国庫補助金改革が補助率の引下げによってなされたため,地方団体の自由度は意図した通りには高まらなかった。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 17

2. 地方財政計画の歳出と地方交付税の減額によって,地方の一般財源は大幅に削減され,国の債務の肩代わりが,主に交付団体の財源によってなされた。

そこで,財政再建のために地方財政計画の歳出が減額され,基準財政需要額の削減によって地方交付税が削減されたことによって,交付団体と不交付団体にどのような影響があり,何故交付団体を中心として国の債務の肩代わりをすることとなったかについて,図を用いて検討したい。

交付団体への影響(図 8による説明)

• 三位一体改革では,財政再建のために,給与関係経費が約 1.1兆円,単独の投資的経費が 2.2兆円が減額されるなど,地方財政計画の歳出が抑制され,基準財政需要額が減額された。

• 図 8には三位一体改革の前後における,交付団体の基準財政需要額と一般財源の姿が示されている。

• 三位一体改革による,交付団体での地方交付税への影響については, 1⃝税源移譲による地方税増収の影響, 2⃝地方財政計画の減額による基準財政需要額の削減による影響が考えられる。

• 税源移譲によって生じる地方税増収に伴う地方交付税の減収については,図 8

の地方税増収に伴う地方交付税減収額で示されているように,地方税の増収額が地方交付税額の減額と同額のため,一般財源総額には増減が生じない。

• 基準財政需要額の変更に伴う地方交付税減収額で示されているように,基準財政需要額の減額に伴って生じる地方交付税の減額については同額減収となる。

• 三位一体改革での財政再建による交付団体への影響については,基準財政需要額の減額によって生じる地方交付税減収に伴う一般財源総額の減額に等しくなる。この額が地方財政対策における折半ルールによって,国の一般会計の地方交付税の増額による補填(臨時財政対策特例加算)と地方の臨時財政対策債の発行(臨時財政対策特例加算相当額)が減額となる,あるいは地方の財源不足がない場合には単に国の一般会計からの入口ベースの地方交付税の減額となる。

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図 8: 交付団体への影響

三位一体改革前 三位一体改革後

改革前基準財政需要額

地方交付税

地方税

{ {基準財政需要額変更

地方税

地方交付税

地方税増収に伴う

地方交付税減収額

{

改革後基準財政需要額

基準財政需要額の変更に伴う

地方交付税減収額 {

(出所)筆者作成

不交付団体(図 9を参照)

• 不交付団体については,基準財政需要額が減額となっていることによる影響は無視され,単に地方税の増収によって地方財政計画上の水準超経費が増加する額となる。

• 税源移譲の財源となった国庫補助金の廃止額とも係わるため,全体の影響額については,国庫補助金の影響を含めたより詳細な検証が必要となる。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 19

図 9: 不交付団体への影響

改革前基準財政需要額

地方税

{

三位一体改革前{

三位一体改革後

地方税

改革後基準財政需要額

{地方税の増収

(出所)筆者作成

補助金の廃止額あるいは税源移譲額に較べ,地方財政計画の歳出において大幅な減額がなされていることから,基準財政需要額の削減によって財政再建がなされたと考えられる。また,上述したように,その負担は主に交付団体の地方交付税あるいは一般財源の削減を通じてなされたと思われる。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 20

4 留保財源のモデル分析6)

留保財源率については,財源の自由度が高まり,地方公共団体の税収確保へのインセンティブが高まるという理由から,三位一体改革では留保財源率が 20%から25%に引き上げられた。一方,財政規模の小さな地方公共団体より,地方交付税の財源保障機能が弱まるとの意見が述べられた。本節では,地方税の増収や留保財源率の引上げが,一般財源総額,特に留保財源にどのような効果を有するかについて簡単な図を用いて検証する。

4.1 地方税の増収による交付団体一般財源への効果留保財源がある場合,地方税の増収によって生ずる基準税率分の増加が,地方公

共団体における一般財源総額に及ぼす効果について考える。

基準財政収入額と留保財源について

• 図 10の上図は,交付団体のある時点での,地方税,一般財源総額,基準税率分,留保税率分の関係についてを示している。なお交付団体の基準財政需要額については,税収が増加する前後で変化せず,一定であると仮定する。

• 税収に関して次の式が成り立つ。

税収 =基準税率分+留保財源分 (3)

左辺の税収は前述の標準的な地方税収入を意味し,標準税率に課税客体の数量を乗じた額である。この税収は基準税率分と留保財源分からなるが,基準税率分は税収に算入率を乗じて求められる額で,基準財政収入額の内訳である税目ごとの基準税額を意味している。簡単化のために徴収率については1と仮定している。同様に留保財源分は留保財源率(= 1−算入率)を乗じて求められる額である。

• (3)式から基準税率分と留保財源分は図 10のように示すことができる。ちなみに現在の算入率は,道府県と市町村共,100分の 75,留保財源率は 100分の25である。

6)本節の内容については岡本 (2002)を参照せよ。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 21

• 上で求められた基準税率分の総額,すなわち基準税額を全ての税額について加えた額が基準財政収入額に等しいので,ここでは

基準財政収入額 =基準税率分 (4)

である。

したがって,税収 =基準財政収入額+留保財源額 (5)

である。

• 地方公共団体にとって使途が自由な財源は一般財源総額と呼ばれ7),税収に地方交付税額を加えた額である8)。

一般財源総額 =税収+地方交付税額 (6)

したがって

一般財源総額 =基準財政収入額+留保財源額+地方交付税額 (7)

が導出され,基準財政需要額も含めて,図 10の上図のように示すことができる。

税収の増額と一般財源総額

図 10の上図で示される,わが国の制度を前提として,何らかの理由によって地方税に増収が生じた場合,その効果が図 10の下図に示されている。基準税率と留保財源率に変化がないとすると,(3)式より地方税の増収額に基準税率と留保財源率を乗じた額がそれぞれ基準税率分と留保財源分の増収額であるが,図 10の下図ではそれぞれ基準税率分増収額,留保財源分が留保財源増収額として示されている。

• 地方税の増収に伴う基準税率分の増加については,基準税率分増加額に等しい基準財政収入額が増加する9)。

7)一般的に地方税,地方譲与税及び地方交付税を一般財源といい,またその他使用料・手数料等も含めて一般財源等という。地方譲与税は全額基準財政収入額に算入されて留保財源分が存在しないため,ここでの議論に影響しないことから,地方譲与税を除いて説明を加えている。したがって,ここでは地方税と地方交付税を一般財源またその合計額を一般財源総額としている。

8)正確には一般財源総額は地方税,地方譲与税,地方特例交付金,地方交付税,臨財債を加えた額であるが,ここでは議論を単純化するため地方税と地方交付税を加えた額としている。

9)ここでは税目あるいは徴収率については考慮していないため,基準税額と基準財政収入額は同じ意味で用いられる。これらの関係については参考1及び図 13を参照せよ。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 22

• 地方交付税制度によって地方交付税額は

地方交付税額 =基準財政需要額−基準財政収入額  (8)

あるいは変形すると

基準財政需要額 =地方交付税額+基準財政収入額  (9)

地方税の増収の基準税率分については,基準財政需要額が地方税の増収によって変化しない場合,(8)式あるいは (9)式より基準財政収入額が増加しても同額だけ地方交付税額が削減される。

• 図 10 で示されているように,地方税の増収の基準税率分に係わる増額に関しては,地方税の増収額が地方交付税の削減によって相殺されるため一般財源総額に変化は生じない。これは図 3に対応している。

留保財源率分の増額と一般財源総額

• 図 10のように地方税の増収によって留保財源分も留保財源分増収額だけ増額し,地方公共団体の一般財源総額は増加する。

• 一般的に一般財源総額に占める地方税の割合が大きい地方公共団体は,地方税収額の増加額が多くなるため一般財源総額の増加も大きい。一方,地方税の割合が低い地方公共団体でも留保財源分の増額は生ずるが,基準財政需要額が変化しない限りその増収額が少ない。

地方税が何らかの理由によって増収となる場合,留保財源を考慮した場合でも,交付団体間の一般財源の格差は拡大する。

4.2 留保財源率と財源保障三位一体改革では,留保財源率が引き上げられたが,この留保財源率の引上げは,

地方公共団体,特に交付団体にどのような影響を及ぼしたのであろう。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 23

図 10: 地方税の増収と留保財源

税収

基準税率分 留保財源分

地方交付税額 基準財政収入額

基準財政需要額

税収

増収額 増収額

基準税率分増収額 留保財源分増収額

地方交付税額 基準財政収入額

基準財政収入額増加分

基準財政需要額

一般財源総額

一般財源総額

一般財源総額増加額

(出所)岡本 (2002, 図 2-12)をもとに筆者作成

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図 11: 留保財源率と財源保障

変更後基準財政需要額

変更後交付税額 変更後基準財政収入額 変更後留保財源額

変更前基準財政需要額

変更前交付税額 変更前基準財政収入額変更前留保財源額

変更後交付税額 変更後基準財政収入額 変更後留保財源額

基準財政需要額縮減

基準財政需要額不変

(出所)筆者作成

基準財政需要額一定のもとでの留保財源率の引上げ

• 税収一定のもとで,留保財源率の引上げがなされたときの効果を検討すると,税収の基準税率分の割合が減少し,留保財源分の割合が増加することが分かる。

• 基準財政収入額が減少するため,基準財政需要額が一定の下では,地方交付税額が基準財政収入の減額分だけ増額し,一般財源総額は留保財源分の増収額だけ増額する。(図 11)

一般財源総額一定のもとでの留保財源率の引上げ

一方,通常想定される一般財源総額が一定のもとでは,留保財源率の引上げがなされると,交付団体にどのような影響があるか検討する。

• 留保財源率が引き上げられたときの影響

1. 留保財源率が引き上げられると基準財政収入額は減額するため,一般財源総額を一定に保つためには,基準財政需要額を同額減額せねばならない。このとき基準財政収入額と基準財政需要額は同額減額されるため地方交付税の額は変化しない。

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2. 基準財政需要額が減額されるため,交付団体の地方交付税による財源保障の範囲が縮小される。すなわち,拡大した留保財源分の分だけ基準財政需要額による財源保障の対象から除かれる。

• 地方税収が何らかの理由によって減収となった場合には,留保財源分が減額され,この分については地方交付税による財源保障がなされない。確かに,この部分についても,地方財政計画上のマクロでの保障はなされているが,マクロでの保障は必ずしもミクロでの保障を意味していない。

• 留保財源率の程度については,本来どの程度の財源保障を,地方交付税によって必要とするかの視点からみるべきであり,標準的な財政需要である基準財政需要額の問題に関連している。

• 基準財政需要額のうち義務付け等の割合が高い場合,一般財源総額が一定の下で留保財源率を引き上げることは,本来一般財源であるべき地方交付税制度において一般財源としての割合を縮減する効果を有し,地方公共団体の自由度を小さくする効果を有する。

• 税収確保を努力することによって留保財源分も増加し,一般財源総額が増加するため,徴税に対するインセンティブを増加する効果もあるが,一方上記のような効果も生じることには注意が必要である。

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5 義務付けと地方分権改革わが国の地方歳出の大半が,国の法令等で基準を設定しているもの(警察官や高

校教職員数等),国が法令でその実施を義務付けているもの(戸籍,保健所,ごみ処理等),国庫補助関連事業であることが指摘されている。この問題について,財政力が異なる地方公共団体にどのような影響があるのか,図を用いて検討する(図 12)。

• 基準の設定,義務付け,国庫補助関連事業のため,地方自治体の歳出の自由度が減少することは容易に想像がつく。

• 基準財政需要額は等しいが,税収の大きさに違いがある自治体 Aと自治体 B

を想定する。

• 自治体Aの税収Aは自治体Bの税収Bよりも多く,留保財源Aは留保税源B

よりも多い。したがって,当初の義務的経費の状況(図で当初の義務的経費)のもとでは,自由になる財源が自治体Aの方が自治体Bよりも大きい。(変更前の自由になる財源A>変更前の自由になる財源B)

• 自治体Aと自治体Bの変更前の自由になる財源を比較すると,税収の少ない自治体ほど,義務的経費のために財源が用いられるため,住民の需要に即した事業のための財源はそれだけ少なくなる。

• 図 12の変更後によって示されるように,義務的経費が国の政策によって,自治体Aと自治体 Bに等しい額の義務的経費が増加した場合(図の義務的経費増加分),それに見合う基準財政需要額の増額がなされなければ,財政の厳しい交付団体 Bにより大きな影響が及び,住民の需要に即した公共サービスの提供が減額され,公共部門の効率的な運営に支障が生ずる。

義務的経費増加分変更前の自由になる財源A

<義務的経費増加分

変更前の自由になる財源B(10)

変更後の自由になる財源A

変更前の自由になる財源A>変更後の自由になる財源B

変更前の自由になる財源B(11)

義務的経費増加分変更後の自由になる財源A

<義務的経費増加分

変更後の自由になる財源B(12)

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図 12: 義務付けと地方分権

基準財政需要額

基準財政収入額額 A

基準財政収入額額 B

税収額 A

税収額 B留保財源 B

留保財源 A

自治体 A

自治体 B

義務的経費増加分

変更後の自由になる財源 B

当初の義務的経費

変更後の自由になる財源 A地方交付税 A

地方交付税 B

変更前の自由になる財源 A

変更前の自由になる財源 B

(出所)筆者作成

6 地方分権改革と今後の課題地方分権について検討するときには,論ずべき改革がわが国の地方財政制度,す

なわち図 1や図 2で示した地方財政計画,地方財政対策,地方交付税制度等の地方財政制度全体に係わる国のあり方を踏まえた制度の抜本的改革を目指すのか,あるいは現行の制度的枠組みを維持して改革を目指すのかによって大きく議論が異なってくる。したがって地方財政改革に関する議論の枠組みとして以下のようにまとめることができると思われる。

1. 図 1や図 2の枠組み自体を見直す改革で,例えば,完全な地方分権ともいえる地方財政制度を目指し,公共経済学的アプローチで議論されているように,住民の移動を前提として「地方分権化定理」を満足するような地方財政制度を検討対象とする。制度改革については,上記の地方財政計画,地方財政対策,地方交付税制度等の地方財政制度を抜本的に見直すことが検討課題となる。

2. 図 1や図 2の枠組み自体は維持するが,より地方分権的な地方財政制度に改革する。例えば,本稿で議論したような,国庫補助金等を廃止して特定財源を一般財源化することで予算編成過程での国の関与を縮小し,地方団体の自由度を高める改革等を検討対象とする。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 28

3. 図 1や図 2の枠組み自体は維持し,枠組みを構成している各要素を検討する。例えば,基準財政需要額や基準財政収入額の算定方法等の見直し等。

これまで述べてきたように,マクロでの地方分権改革は必ずしもミクロで好ましい結果を生み出すとは限らない。地方分権改革を論ずる際には,わが国の独特の地方税財政制度を十分踏まえて検討すべきである。例えば,わが国の地方財政制度,特に地方財政計画及び地方交付税制度を踏まえると,単純な税源移譲は地方団体間の財政格差の拡大を生じるであろう。この点からみると,地方税の充実による地方分権では,新たな地方法人税の創設等による偏在是正策が必要となる。

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参考:基準財政収入額の算定10)

留保財源率の分析のために基準財政収入額の算定について概説する。地方交付税額は基準財政需要額と基準財政収入額とによって算定されているが,その基本的な枠組みは標準的な財政需要と標準的な税収を把握することにある。ここでは標準的な税収である基準財政収入額を具体的にどのように捉えているかについて簡潔に説明を加えたい。

基準財政収入額算定の枠組み

基準財政収入額は「各地方団体の財政力を合理的に測定するために、当該地方団体について第十四条の規定により算定した額」と地方交付税法第 2条第 4号に規定され,普通交付税の算定に際し,地方公共団体の財政力を合理的に測定するために用いられる標準的に徴収される税収入の一定割合をいう。この基準財政収入額は

基準財政収入額 =標準的な地方税収入× 75

100+地方譲与税 (13)

のように,標準的な地方税収入と地方譲与税の合計として算定される。ここで,標準的な地方税収入は,基準財政需要額と同様に,標準的な税目・税率によって徴収される収入見込額であり,超過税率もしくは軽減税率を採用した地方公共団体にあってはそれにかかる税収は算入されない。また地方譲与税に関しては全額が基準財政収入額に算入される。

(13)式での基準財政収入額の対象となる税目は,法定普通税を中心として,都道府県では法定普通税の全て,地方譲与税,都道府県交付金,交通安全対策特別交付金等,市町村では法定普通税の全て,利子割交付金,地方譲与税,市町村交付金,事業所税,交通安全対策特別交付金等である。別言すれば,法定外普通税,法定外目的税,都市計画税等は対象から除かれている。基準財政収入額の各地方公共団体の算定基礎として,地方税では課税実績,地方

譲与税と税交付金では譲与実績と交付実績が用いられる。しかし,地方税で課税実績を基礎として算定されるといっても,必ずしも当該地方公共団体の地方税収の実績がそのまま基準財政収入額となるわけではない。(13)式で示されるように,算定の基礎となるのは「標準的な地方税収入」である。前述の対象となる地方税目ごと,それぞれ客観的な課税客体の数量を把握し,その客体の単位当たりの税額を求めて

10)基準財政収入額の考え方と具体的な算定については地方交付税制度研究会 (2017b, 36–39頁),地方交付税制度研究会 (2017a, 444–446頁),中井他 (2010, 26–27頁) 等を参照せよ。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 30

地方公共団体の数量に乗ずることでその税目の税収を標準的な税収として求めている11)。

基準財政収入額の算定

基準財政収入額の算定では,実際の税収が用いられず,標準的に徴収される税収入の一定割合として算定されることについては前述したとおりである。したがって基準財政収入額は,図 13で示されているように,税目ごとの特徴を反映して税目ごとに算定される基準税額を全て加えることで,地方公共団体の税収見込額として求められる。また税目ごとの基準税額は,地方税等においては課税客体の数量や課税実績等を,譲与税や交付金等においては譲与または交付の実績を基礎として算定される12)。地方税の場合,基準税額を求めるための算定基礎として課税客体の数量や課税実

績が用いられるが,例えば市町村民税均等割や所得割では算定の基礎として前年度の納税義務者数が用いられている。図 13には,算定基礎として課税客体の数量が用いられている場合の算定のイメージが示されている。地方税の場合には,課税客体の数量に乗ずる単位額は,すなわち基礎となる課税

客体 1単位当たりの標準的な地方税収入額は,図 13で示されているように,まず地方税法上の標準税率に算入率 100分の 75を乗じて基準税率が計算され,次にこの基準税率に徴収率を乗じて求められる。また,当該税目の標準的な地方税収である基準税額は,税目の算定で用いられる課税客体の数量に求められた単位額を乗じて算定される。なお「「標準的な地方税収」とは,地方税法に基づき標準的な税目・税率で年度内に見込まれる税収額」(中井他, 2010, 26–27頁)である。地方公共団体の基準財政収入額は,これらの全ての税目に関する基準税額を加えることによって算定される。

基準財政収入額の算定の具体例

基準財政収入額における算定はそれぞれの税目ごとに異なっているが,例えば市町村民税個人均等割は以下のような手順でなされている。市町村民税個人均等割では,客観的な課税客体として納税義務者数が用いられて

いる。したがって納税義務者数を基礎として,それぞれの地方公共団体での市町村

11)地方税の算定に関して,ここでの算定の他に,地方団体の課税努力に左右されないものについては,課税実績を基礎として算定している (地方交付税制度研究会, 2017b, 38頁)。12)基準財政収入額の算定の基礎については地方交付税制度研究会 (2017b, 38頁)を参照せよ。また算定の基礎の詳細については地方交付税制度研究会 (2017a)の基準財政収入額欄や地方交付税法第14条第 3項を参照せよ。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 31

図 13: 地方税収分の算定

基準税率 × 徴収率=単位額

基準税額 = ×課税客体の数量 単位額

個々の税目での税収見込額

基準財政収入額 = 基準税額

基準財政収入額の算定

標準税率 × 算入率=基準税率

(出所)筆者作成

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 32

民税個人均等割の収入見込額が算定されるが,納税義務者一人当たりの税収見込額を求めるために,図 14のように算定がなされている。第 1に標準的な地方税収を求めるために基準として,地方税法に基づく 3,500円の標準税率が用いられる。地方税に関しては,この標準税率に算入率を乗じることで基準税率が求められるが,現在の都道府県及び市町村の地方税の算入率は 75%となっている。また地方譲与税に関しては算入率は 100%である。このため (13)式において,地方税は 75/100,地方譲与税は譲与額が基準財政収入額の算定額となっているのである。

図 14: 単位額の考え方

3,500 円

2,625 円

2,575 円

100

75

75 X 0.981

留保財源

留保財源

標準税率(地方税法に基づくもの)

基準税率(標準税率×75/100)

単位額(基準税率×徴収率(0.981))

(出所)地方交付税制度研究会 (2017b, 39頁)を転載

つまり,図 14で示されているように,平成 28年度の市町村民税個人均等割では,基準税率は 2,625円,単位額は基準税率に徴収率 0.981を乗じて 2,575円となっている13)。地方公共団体の市町村民税個人均等割の基準税額はこの 2,575円にそれぞれの地方公共団体の納税義務者数を乗じて求められる。最終的に,基準財政収入額が,それぞれの税目ごとの算式にしたがって算定された基準税額を全ての税目について加えることで求められる。

13)この場合単位当たりの留保財源は 925円 (=3,500円-2,575円)である。

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 33

参考文献石原信雄 (2016) 『新地方財政調整制度論 改訂版』,ぎょうせい.

岡本全勝 (2002) 『地方財政改革論議 –地方交付税の将来像–』,ぎょうせい.

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(2016) 「経済財政運営と改革の基本方針 2016~600兆円経済への道筋~」(2016年 6月 2日閣議決定).

財務省 (2016) 『平成 29年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について』(平成 28年 8月 2日閣議了解).

地方交付税制度研究会(編) (2017a) 『平成 28年度地方交付税制度解説(補正係数・基準財政収入額篇)』,地方財務協会.

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地方財務協会 (2016) 『平成 28年度 改正地方財政詳解』,地方財務協会.

内藤尚志 (2007) 「総説第 2節三位一体改革の経緯」,瀧野欣彌・岡本保(編集代表)・佐藤文俊(編著)(編)『三位一体の改革と将来像-総説・国庫補助負担金-』,ぎょうせい.

中井英雄・齊藤愼・堀場勇夫・戸谷裕之 (2010) 『新しい地方財政論』,有斐閣.

堀場勇夫 (2017) 「地方法人課税改革とその課題–偏在是正・成長戦略・応益性の視点から–」,『地方税』2月号,地方財務協会.

(2017) 「わが国の地方税財政制度と地方分権」,『地方財政』9月号,地方財務協会.

前田雅晴 (2017)「平成 29年度の国の予算と地方財政対策」,『地方財政』2月号,地方財務協会.

和田雅晴 (2016b) 「「経済財政運営と改革の基本方針 2016~600兆円経済への道筋~」の解説」,『地方財務』9月号,ぎょうせい.

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「わが国の地方税財政制度と地方分権」地方財政研究会報告用レジュメ 34

(2016c) 「平成 29年度地方交付税の概算要求について」,『地方財政』10月号,地方財務協会.