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2013年度(前期)指定公募② 「在宅医療推進のための研究会・研修会への助成」 完 了 報 告 書 申請者 独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院 統括診療部長 今野 秀彦 【テーマ】神経・筋疾患の在宅呼吸ケアの普及にかかる研修会 【目 的】神経・筋疾患患者の在宅呼吸ケア・在宅呼吸リハビリテーョンの普及(特に排痰 補助装置を使用した呼吸ケアの必要性について)及び啓蒙 排痰補助装置を使用することにより、喀痰を容易に排出し、窒息の回避や肺炎 の予防効果が期待できる。また気道クリアランスの向上もはかれることから、睡 眠前に使用することで夜間の呼吸回数減少も期待できる。排痰補助装置を含む呼 吸ケアの普及が快適な在宅療養には欠かせないものである。 【実施日時】 平成26年2月23日(日)13:30~16:45 【研修会場】仙台市太白区鈎取本町2丁目11-11 独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院 大講堂 【対象者】往診医・訪問看護事業所・訪問介護事業所・在宅神経・筋疾患患者・家族等 【研修会プログラム】座 長 今野 秀彦統括診療部長 神経筋疾患の呼吸ケアの必要性について(医師)(13:30~14:15) 独立行政法人 国立病院機構 八雲病院 石川悠加先生 別紙資料1 神経筋疾患のリハビリテーションについて(理学療法士)(14:15~14:45) 独立行政法人 国立病院機構 八雲病院 三浦利彦先生 別紙資料2 痰補助装置について(人工呼吸器取扱業者)(14:45~15:05) フィリップレスピロニクス 石川 有紀先生 別紙資料3 痰補助装置を使用した呼吸ケアの実践(理学療法士)(15:05~16:45) 独立行政法人 国立病院機構 八雲病院 三浦利彦先生 添付写真

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2013年度(前期)指定公募②

「在宅医療推進のための研究会・研修会への助成」

完 了 報 告 書

申請者 独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院

統括診療部長 今野 秀彦

【テーマ】神経・筋疾患の在宅呼吸ケアの普及にかかる研修会

【目 的】神経・筋疾患患者の在宅呼吸ケア・在宅呼吸リハビリテーョンの普及(特に排痰

補助装置を使用した呼吸ケアの必要性について)及び啓蒙

排痰補助装置を使用することにより、喀痰を容易に排出し、窒息の回避や肺炎

の予防効果が期待できる。また気道クリアランスの向上もはかれることから、睡

眠前に使用することで夜間の呼吸回数減少も期待できる。排痰補助装置を含む呼

吸ケアの普及が快適な在宅療養には欠かせないものである。

【実施日時】 平成26年2月23日(日)13:30~16:45

【研修会場】仙台市太白区鈎取本町2丁目11-11

独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院 大講堂

【対象者】往診医・訪問看護事業所・訪問介護事業所・在宅神経・筋疾患患者・家族等

【研修会プログラム】座 長 今野 秀彦統括診療部長

① 神経筋疾患の呼吸ケアの必要性について(医師)(13:30~14:15)

独立行政法人 国立病院機構 八雲病院 石川悠加先生 別紙資料1

② 神経筋疾患のリハビリテーションについて(理学療法士)(14:15~14:45)

独立行政法人 国立病院機構 八雲病院 三浦利彦先生 別紙資料2

③ 痰補助装置について(人工呼吸器取扱業者)(14:45~15:05)

フィリップレスピロニクス 石川 有紀先生 別紙資料3

④ 痰補助装置を使用した呼吸ケアの実践(理学療法士)(15:05~16:45)

独立行政法人 国立病院機構 八雲病院 三浦利彦先生 添付写真

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【研修会参加者】医療機関関係者 5病院- 9名

訪問看護ステーション 11事業所-30名

訪問介護事業所 6事業所-19名

行政機関等 3機関- 7名

在宅患者・家族 17名

当院職員 40名

合計 122名

主催者側 講演者 3名

当院地域医療連携室 7名

フィリップス社 5名

アルバイト 7名

合計 22名

総計 144名

【研修会の感想】 今回の研修会は在宅医療の分野では関心の高いものであり、演者が呼

吸リハビリテーションや排痰補助装置の第一人者であったため定員以

上の参加申し込みがあり盛会であった。行政機関の難病担当の保健師か

らは同じ内容で市民公開講座を開催して欲しいとの要望が出された程

であった。特に排痰補助装置を使用しての実習は好評で、かなりの量の

痰が排出されることに対して参加者は一様に驚いていた。

神経・筋疾患の患者は人工呼吸器を使用することにより延命がはかれ

るようになった。その分、長期間人工呼吸器と付き合っていかなければ

ならない。患者本人・家族・支援者にとって排痰補助装置の使用は気道

クリアランスの向上をはかれることから在宅療養には欠かせないもの

となりつつある。

しかし、現在の医療保険制度では排痰補助装置は呼吸器使用者の患者

に限定されるため在宅医療への普及や認知がなかなか進まない現状に

ある。

排痰補助装置が呼吸ケア・排痰ケアが必要な他の疾患にも拡大される

ことが望まれる。今後、在宅医療の分野では必須のものになっていくこ

とが推察される。

「公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成により実施しました。」

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研修会の様子

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神経・筋疾患の在宅呼吸ケアの普及にかかる研修会

に関するアンケート

本日は、お忙しい中ご参加いただき、ありがとうございました。今後の参考にさ

せて頂きますので、以下アンケートにお答え下さい。

1.どちらからの参加ですか

□訪問看護ステーション □ヘルパーステーショ □行政

□本人・家族 □院内職員 □その他( )

2.研修会の内容は参考になりましたか

①講演1「神経筋疾患の呼吸ケアの必要性について」八雲病院 石川悠加 先生

□難しかった □参考になった □ふつう □参考にならなかった

( )

②講演2「神経筋疾患呼吸リハビリテーションについて」八雲病院 三浦利彦 先生

□難しかった □参考になった □ふつう □参考にならなかった

( )

③講演3「排痰補助装置について」フィリップスレスピロニクス社 石川有紀 先生

□難しかった □参考になった □ふつう □参考にならなかった

( )

④実技「排痰補助装置を使用した呼吸ケアの実践」八雲病院 三浦利彦 先生

□難しかった □参考になった □ふつう □参考にならなかった

( )

3.その他今回の講演会に対してご意見等ございましたらご記入ください

( )

4.今後在宅医療に関する取り上げてほしいテーマがございましたらご記入ください

( )

ご協力ありがとうございました

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1.どちらからの参加ですか

2813452716

2.研修会の内容は参考になりましたか①講演1

87830

不参加 4

②講演21

8610

不参加 5

③講演30

8540

不参加 4参考にならなかった普通

その他

難しかった参考になった普通参考にならなかった

難しかった参考になった普通参考にならなかった

難しかった参考になった

院内職員

神経・筋疾患の在宅呼吸ケアの普及にかかる研修会に関するアンケート結果

訪問看護ステーションヘルパーステーション行政本人・家族

30%

14%

4% 6%

29%

17%

訪問看護ステーション

ヘルパーステーション

行政

本人・家族

院内職員

その他

9%

84%

3% 0% 4%

難しかった

参考になった

普通

参考にならなかった

不参加

1%

93%

1% 5% 難しかった

参考になった

普通

参考にならなかっ

た 不参加

92%

4% 4% 難しかった

参考になった

普通

参考にならなかっ

た 不参加

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④実技0

9010

不参加 2

3.その他の意見・資料や画像、映像なども多く理解がしやすかった。・会場内が冷えていた。暖房付けてほしかった。・とても参考になった、勉強になった。9・今後の患者への呼吸ケアに大いに役立つ内容だった 2・筋ジス、ALSなど人工呼吸器の装着に拒否のある方々へ、この装置の説明、普及啓発をしてほしい・カフアシストを初めて目にした。今後さらに適応が広がることを期待している。 2・実際に触れることができてよかった 8・当院でも排痰補助装置をどんどん導入していくと予想されるのでとても参考になった・後ろのブースで聞いた。マイクを使用していなかったため、中央のマイク音に紛れてあまり聞こえな かった 2・動画がほしい・PTの口演は2回目だった。理解を深めることができた。・DMDの方が通所利用中。その方がカフアシストを導入している。実際どういうものか理解を深めるこ とができた。・今後導入を考えたい・実技で効果が実感できた・在宅で実際にどのくらいの方が利用されているのか知りたかった・副作用の気胸等は使い始めてどのくらいで起こる可能性があるのか、気胸等の対応はどうするのか 知りたかった・実技が分かりやすかった 7・在宅で使用する場合の流れ、導入方法の説明があればよかった

4.今後取り上げてもらいたいテーマ・病院↔在宅の連携のケースなど・病気の進行に伴って、介護方法や、福祉用具の選定の見直しが必要になる。本人の意思を尊重 しながらどのようなケアを行えばいいのか教えてほしい。生きる意欲をどう支えればいいのか?・呼吸リハの実践、アンビュー等の緊急時対応等、実技。・呼吸ケア研修会の継続 2・家族支援 ・リスク管理・ポジショニングについて・療育について・災害対策・進行性疾患に対する予防的リハについて。実技や症例を含めた勉強会・今回の応用編、続編・摂食嚥下障害について・ALSの病状や進行状況、ケアなど・在宅での医療・介護で実際に行っているリスク管理について・在宅ーかかりつけ医との関係構築について・医療機器と生活について・在宅生活をどのようにしているのか知りたい(院内職員)・今後もこのような研修会を実施してほしい。在宅ケアについて不安がある。・筋ジスと診断された後,早期に医療と関わる必要性について

難しかった参考になった普通参考にならなかった

97%

1% 2% 難しかった

参考になった

普通

参考にならなかっ

た 不参加

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2014/3/25

1

神経筋疾患の

呼吸ケアの必要性について

平成26年2月23日

国立病院機構仙台西多賀病院 大講堂

国立病院機構八雲病院小児科

石川悠加

神経・筋疾患の在宅呼吸ケアの 普及にかかる研修会

神経筋疾患'neuromuscular disease(と 神経・筋疾患'neurological &neuromuscular disease(

• 神経筋疾患'筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(

:運動機能障害の主因が運動神経核以下

:呼吸機能障害はParalyticな病態が主

'二次性に拘束性換気障害(

• 神経・筋疾患'CNS障害、脳性まひ含む(

:運動機能障害の主因が中枢神経'大脳(も含む

:呼吸機能障害は、複合的な病態のこともある

'不随意運動、緊張、硬直、声帯麻痺など混在(

(Hull J,et al. Thorax 2012;67:i1-i40)

(Schroth M. Pediatrics 2009;123:S245-249)

・呼吸筋や咽頭・喉頭の機能低下

呼吸筋疲労

・胸郭や脊柱の変形・拘縮

・咳が弱く、下気道のクリアランス低下

・睡眠時の低換気

・胸郭と肺のコンプライアンス低下

発育不全

・繰り返す呼吸器感染と、それに伴い

さらに筋力低下と肺実質の健全性喪失

神経筋疾患の呼吸の問題

Normal

な肺

神経筋疾患

の肺

神経筋疾患のケアの国際ガイドライン

• ケアの国際ガイドライン

・ デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)

:The Lancet Neurology 9:177-189, 2009

・ 脊髄性筋萎縮症'SMA(

: J Child Neurol 22:1027-1049,2007

・ 先天性筋ジストロフィー(CMD)

: J Child Neurol 25: 1559-81,2010

・ 先天性ミオパチー

: J Child Neurol 27: 363-382,2012

• 神経筋疾患の呼吸筋機能低下の終末期マネジメント

:国際コンセンサス

'終日NPPVの推奨(

: Bach JR, et al. Am J Phys Med Rehabil 92:267-77,2013

神経筋疾患の呼吸を含めたケアのガイドラインなど

• 筋力低下のある小児の呼吸マネジメントのガイドライン

:小児神経筋疾患について NPPVを主に

'イギリス呼吸学会=BTS(

:Thorax 67:i1-i40,2012

・ カナダ呼吸器学会の在宅人工呼吸ガイドライン

'筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、

筋強直性ジストロフィーの各論も(

:NPPVを主に :Can Respir J 2011;18:197-215

H26年に公表予定の 神経筋疾患の呼吸ケア関連ガイドライン'本邦(

• 「デュシェンヌ型筋ジストロフィーのケア」ガイドライン

:筋ジス研究小牧班・日本神経学会・日本小児神経学会

• 「神経筋疾患・ 脊髄損傷の呼吸リハビリテーション」 ガイドライン

:日本リハビリテーション医学会

• 「NPPVガイドライン」第2版

:日本呼吸器学会

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2014/3/25

2

'Bushby K, Finkel R, Birnkrant DJ, et al, Diagnosis and management of

Duchenne muscular dystrophy part 2, The Lancet Neurology 9:177-189: 2009(

DMDへの呼吸ケアの推奨 :CDCが作成を促進した国際ガイドライン

• 呼吸の評価

: 慢性肺胞低換気症状

: 肺活量(FVC)

: 咳のピークフロー(cough peak flow=CPF)

: 最大強制深吸気量

(maximum insufflation capacity=MIC)

: 覚醒時と睡眠時の

酸素飽和度(SpO2)&

経皮または呼気終末CO2(TcCO2/EtCO2)

疲労 息苦しさ 朝または持続性頭痛 日中のうとうと状態と 頻回の眠気 息苦しさや動悸で 睡眠時に覚醒 嚥下困難 集中力低下 頻回の悪夢 呼吸困難の悪夢 呼吸障害による

心不全徴候や症状

(Bach JR. Guide to the evaluation and management of neuromuscular disease. 1999)

下腿浮腫

イライラ感、不安

尿意による睡眠時に

頻回のarousal

学習障害

学業成績低下

性欲低下

過度の体重減尐

筋肉痛

記憶障害

上気道分泌物の

制御困難

肥満

慢性肺胞低換気症状 :睡眠時NPPVにより改善'=睡眠深度の正常化と関連(

'Bushby K, Finkel R, Birnkrant DJ, et al, Diagnosis and management of

Duchenne muscular dystrophy part 2, The Lancet Neurology 9:177-189: 2009(

DMDへの呼吸ケアの推奨 :CDCが作成を促進した国際ガイドライン

• 呼吸のマネジメント

: 深吸気 : 徒手や機械による咳介助 : 睡眠時と覚醒時のNPPV : 気管切開人工呼吸・・・ 専門委員会のメンバーは全員一致して 「ほとんどの臨床場面においてNPPVが推奨」

神経筋疾患に酸素だけ投与する時は CO2ナルコーシスに注意 :まず換気補助'NPPVや救急蘇生バッグ( :必要に応じてバッグやNPPVに酸素付加 (慎重な意識レベルやCO2モニター)

NPPVって何の略?

・略語は 統一されていない:

NPPV 'noninvasive positive pressure ventilation(

NIV (noninvasive ventilation)

NIPPV (noninvasive positive pressure ventilation)

・2006年日本呼吸器学会はNPPVガイドライン公表

'最近の欧米では、NIVが多い(

NPPVにより :症状

:入院

:医療費

QOLは低下しない 'Young HK, et al. Outcome of noninvasive ventilation in children

with neuromuscular disease. Neurology 2007;68:198-201(

小児神経筋疾患の 呼吸不全治療

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2014/3/25

3

NPPVにより 呼吸器感染減尐

'C. Dohna-Schwake, P. Podlewski, T. Voit, U. Mellies. Pediatr Pulmonol, 2008;43:67-71) ドイツ エッセン大学

NPPV前1年'24例( NPPV後1年 NPPV未使用'11例(

外来通院'回/年( 9,2±20,8 3,2±5,3 0,9±1,3

'P<0,005(

呼吸器感染に抗生剤'回/年( 4,1±3,4 1,9±2,2 1,4±1,2

'P<0,005(

呼吸器感染で入院'回/年( 1,6±1,7 0,7±1,3 0,4±0,7

'P<0,005(

NPPV前5年'12例( NPPV後5年'12例(

呼吸器感染で入院'回/年( 0,54±0,41 0,12±0,09

'P<0,005(

小児神経筋疾患35例:24例がNPPV使用'うち16人は器械による咳介助併用( 11例がNPPV未使用

沢山の方々との関わり:看護師、ヘルパー、ボランティア、友人知人

体調を見ながら母や看護師さん ヘルパーさんと外出

学校やコミュニティーに参加

(Schroth M. Pediatrics 2009;123:S245-249)

神経筋疾患におけるNPPVの適応

• 通常の適応

:低換気

:SpO2低下やCO2上昇

:呼吸筋疲労

:閉塞型睡眠時無呼吸症候群

• 神経筋疾患に特異的な適応

:ウイルス感染症

:くり返す肺炎と無気肺

:術後ケア

:胸郭の変形

睡眠時NPPVによる SpO2と経皮CO2の正常化

SpO2と経皮CO2モニターの機器

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2014/3/25

4

NPPV未使用:REM睡眠に同期してSaO2が低下し、覚醒するサイクルが見られる

NPPV導入後: SaO2の低下は解消。睡眠深度も改善

睡眠時NPPV導入後の睡眠深度

21 22 23 24 1 2 3 4 5 6 7

21 22 23 24 1 2 3 4 5 6 7

DMD 15才

デュシェンヌ型筋ジストロフィー'DMD(には 知的障害以外に

発達障害、精神的問題が多い

*発達障害(ADHD、高機能自閉、広汎性発達障害

書字や会話の言語理解、短期記憶

順序だて、パターン認識、固執

*精神的問題(うつ、不安神経症)

*感覚障害

*二次障害加わリ易い

:家族の問題=親のうつ、QOL低下

経済的問題

コミュニティーや子育て環境

:学校で休みがち、お客さん(自己効力感低下) (Bray P, et al. Journal of Child Neurology 25, 1188-94,2010)

救急蘇生バッグ

人工呼吸器

終日NPPV患者が、安全に移動するために・・・ :車いすに 救急蘇生バッグ携帯

救急蘇生バッグを接続し、押して下さい。

押し方など会話で確認して下さい。

人工呼吸器条件

1回換気量 :'480ml( 呼 吸 回数 :'19回/分( I E 比 :'1:1.5(

30

35

40

45

50

55

60

H16.1 H17.1 H18.1 H19.1 H19.6 H20.1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12H21.1 10

H15.10 夜間NPPV開始

H19.6 食後NPPV追加 H20.2 車いす上NPPV延長

H20.6 NPPV下で食事

NPPV時間延長と体重の変化

'Hamada S, Ishikawa Y, et al, Respiratory medicine 105:625-629: 2011(

呼吸筋疲労度の指標

• DMDにおいて、横隔膜のテンション・タイム・インデックス (Tension time index=TTdi)は 侵襲的なため、汎用されなかった

• 肺活量'VC(に 非侵襲的呼吸筋疲労度を組み合わせて NPPV時間検討 ・rapid shallow breathing index(RSBI=RR/TV)

・ 呼吸耐力予備指数'Breathing intolerance index=BITI( (Koga T, et al. Am J Phys Med Rehabil 2006;85:24-30)

・人工呼吸器必要度指数'Ventilator requirement index=VRI( (Bach JR, et al. Am J Phys Med Rehabil 2008;87:285-291( ・非侵襲的な吸気筋のテンション・タイム・インデックス 'tension-time index of the inspiratory muscles=TTmus( 'Hahn A, et al. Am.J.Phys.Med.Rehabil 2009; 88:322-327) ・RR/VC 'Hamada S, Ishikawa Y, et al, Respiratory medicine 2011

105:625-629: 2011(

先天性筋ジストロフィーの書道家 '現在ほぼ終日NPPV(

:書道の高校教師の資格、運転、大学ボランティア介護

「ノーマライゼーション」2012年3月号、 高知新聞2012年3月記事より

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2014/3/25

5

ほぼ終日NPPVの先天性ミオパチーの高校生が 学校で友達や先生と

スイスのデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)35例 (8~33才)の

HRQOLは

全身筋力低下に対する電動車いすなど必要な機器や介助と

呼吸機能障害に対するNPPVなどの

タイムリーで適切な治療選択により維持し得る

NPPV+電動車いすなど機器・介助 QOL維持

Kohler M, et al. Quality of life, physical disability, and respiratory impairement

in Duchenne muscular dyatrophy. Am J Respir Crit Care Med 2005:172;1032-1036

上記論文に掲載写真

DMDにおける 気管切開とNPPVの比較

・ベルギーで、42人のほぼ終日人工呼吸のDMDにおいて 気管切開16人とNPPV26人の健常性と死因を比較した。 ・NPPVとTPPVは、延命効果に差がなかった。 ・気管切開では、NPPVに比べて、気管切開部の創傷 気道分泌物過多、くり返す呼吸器感染、嚥下困難、 社会参加困難が多かった。 ・在宅やリハビリテーション施設'両方の活用(はNPPVの方が 多く、療養介護施設には気管切開が多かった。 ・マウスピースなど昼間のNPPVのインターフェイスを工夫すると 気管切開に多い病的状態を回避して、NPPVでTPPVと同程度 の延命が図られるため、著者らはNPPVを勧める

Soudon P, et al. A comparison of invasive versus noninvasive full-time mechanical ventilation in Duchenne muscular dystrophy. Chronic Respiratory Disease 2009;5:87-93 (Ishikawa Y, Miura T, et al. Neuromuscular Disorders 21.2011:p47-51)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

perc

ent surv

ival

15 20 25 30 35 40 45

age at death

NIV from 1991

no treatment and dead from 1984 to 1991

no treatment dead before 1984

no treatmnet and dead after 1991

tracheotomy from 1984 to 1991

生存分析プロット

1991年以降でNPPV使用

1984~1991年で気管切開

によるIPPV

1991年以降で呼吸器

導入前にDMD心筋症

による重症心不全

1984以前で呼吸器未使

用で死亡:全国の筋ジス病棟で長期人工呼吸未開始

'呼吸不全and/or心不全(

1984~1991年で

呼吸器導入前に死亡 'DMD心筋症による心不全(

デュシェンヌ型筋ジストロフィー187例 (1964-2010年)の治療介入と生存曲線

N 呼吸器使用 咳介助 心保護薬 50%生存年齢 グループ1 人工呼吸導入以前 56 - - - 18.1 yrs '呼吸不全や心不全や

他の死因( (1984年以前) p=0.0001 グループ2 気管切開人工呼吸開始前に 11 - - - 17.2yrs 心筋症による心不全

p=0.0001 気管切開人工呼吸 24 + - - 28.9yrs (1991年以前) 気管切開

グループ3 NPPV開始前に 心筋症による p=0.0002 心不全 8 - + + 21.9yrs

NPPV 88 + + + 39.6yrs (1991年以降) NPPV

(Ishikawa Y, Miura T, et al. Neuromuscular Disorders 21.2011:p47-51)

グループ 1: 人工呼吸器導入以前に呼吸・循環不全や他の原因で死亡 56例: 全国の筋ジス病棟で長期人工呼吸未使用 の時代'1984年以前( グループ 2: 気管切開24例と、気管切開以前に心筋症による心不全 11例 (1991年以前) グループ 3: NPPV88例と、NPPV以前に心筋症による心不全 8例'1991年以降(

デュシェンヌ型筋ジストロフィー187例の呼吸循環介入と生存率

P=0.0001

(Gordon KE, et al. Impact of Bisphosphonates on Survival for Patients With Duchenne Muscular Dystrophy. Pediatrics 127; e353-e358; 2011) カナダ

デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するステロイド治療と

骨粗しょう症治療剤ビスフォスフェート併用の延命効果

(NPPVも使用):センターによりDMDの50%生存年令に差

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6

米国における人種や経済による 筋ジストロフィーの予後の差

・1986年から2005年まで'20年間(に米国で18,315人の筋ジストロ フィー関連の死亡があった。 ・平均死亡年齢は、白人女性が黒人女性より12才高かった。 ・白人男性で平均死亡年齢は、心筋症を併発していなければ 1.3才ずつ高くなっている。黒人男性では、心筋症の無い患者で 年間0.3才ずつ平均死亡年齢が高くなっている。 ・白人男性では、呼吸不全や呼吸器感染症は著明に年々減尐 ・死亡年齢や合併症の変化は、筋ジス治療の改善を反映。 白人男性は黒人男性に比べて、年々死亡年齢が高くなっている。 ・この違いは、筋ジストロフィーのタイプの違い、遺伝や環境因子の 違い、自然歴、社会経済的因子、治療選択の活用やアクセスの 違いも関係しているかもしれない。

KennesonA, et al: Widening gap in age at muscular dystrophy-associated death between blacks and whites, 1986-2005. Neurology 2010;75:982-9.

米国の筋ジストロフィークリニックにおけるアウトカム改善へ

・1960年代には中間年令が14.4才であったDMDが 30才代まで生きられるようになった。 ・膵嚢胞線維症'cystic fibrosis:CF(患者登録は、 クリニック間で標準のアウトカムの報告を容認し CFのアウトカムの改善につながっている。 ・同様の患者登録は、筋ジストロフィー'muscular dystrophy association: MDA(クリニックのネットワーク でも導入されつつあり、MDAクリニック間のモニター 方法、アウトカム測定を比較することで、患者ケアの 標準化や改善、生命予後の改善につながるかもしれ

ない

Scully MA, et al: Can outcomes in Duchenne muscular dystrophy be improved by public reporting of data? Neurology 2013;80:583-9

神経筋疾患患者の抜管困難

・ 米国ニュージャージー医科歯科大学で、 157人の抜管困難とされた患者'平均 37±21歳)のうち

155人の抜管に成功した。

:135人は神経筋疾患'DMDなど筋ジストロフィー、ALS、 SMA、重症筋無力症、ミオパチー、ポストポリオ症候群、 脊髄損傷、など(の肺炎や術後 :83人は他の病院から転院'ニューヨーク市内からも( ・成功しなかった2例は、咳の最大流量'CPF(が測定不能で 気管切開に移行した。 ・ 口をカバーするインターフェイスを介したNPPV'量調節、

腹部膨満例のみ圧調節、気道内圧または圧差を15以上で

呼吸筋疲労とれる(と、MAC'カフアシスト(を用いて

SpO2を95%以上に維持し、抜管

(Bach JR, Gonçalves MR, Hamdani I, Winck JC.

Extubation of patients with neuromuscular weakness.

A new management paradigm. Chest 2010;137(5): 1033-1039)

神経筋疾患の腹部術後にMI-E

ベルギーで、42人のほぼ終日人工呼吸のDMDにおいて、気管切開16人とNPPV26人の健常性と死因を比較した。NPPVとTPPVは、延命効果に差がなかった。気管切開では、NPPV

に比べて、気管切開部の創傷、気道分泌鵜物過多、くり返す呼吸器感染、嚥下困難、社会参加困難が多かった。在宅やリハビリテーション施設はNPPVの方が多く、療養介護施設に

は気管切開が多かった。マウスピースなど昼間のNIVのインターフェイスを工夫すると、気管切開に多い病的状態を回避して、NIVでTPPVと同じ程度の延命が図られるため、著者らはNIVを勧める。) Soudon P, Steens M, Toussaint M. A comparison of invasive versus noninvasive full-time mechanical ventilation in Duchenne muscular dystrophy. Chronic Respiratory Disease 2009;5:87-93. ●2013年、DMD13名含む筋ジストロフィー18名'平均年令21.1±5.4才(において、自力介助のCPF、すなわちGPBと電動車いすでテーブ

ルに向って胸腹部を当てる方法の効果が報告された。自身で行える咳介助として自律につながる。'Bianchi( )Bianchi C, Carrara R, Khirani S, Tuccio MC. Independent cough flow augmentation by glossopharyngeal breathing plus table thrust in muscular dystrophy. Am J Phys Med Rehabil 2013;92: in press

●カナダで、2013年、ガイドラインに書かれて

いる内容があまり行われていないことから、もっと取り入れることを促している。MICなどが行われていないことは、EBMが乏しいためかもしれないとし、今後、RTCをしようという原動

力につながることを期待するとしている。Katz5) Katz SL, McKim D, et al. Respiratory management strategies for Duchenne muscular dystrophy : Practice variation amongst Canadian sub-speialists. Pediatric Pulmonology 48:59-66,2013

・MI-Eを在宅使用している小児神経筋疾患13例 '0.8~23.1才、平均10.5才(において、MI-Eの陽圧を 20~40cmH2Oかけた際の胃内圧最大値は24cmH2O ・MI-Eにより胃内圧が6 cmH2O以上上昇することはない ・陽圧と陰圧における胃内圧の差は-8.4から5.8 cmH2O ・3例の自力の咳における胃内圧最大値は25cmH2Oで MI-E使用時より高い。 ・MI-Eによりかかる腹部の陽圧は、自力の咳より低く 神経筋疾患の腹部手術後にMI-Eを考慮

Miske LJ, et al. Changes in gastric pressure and volume during mechanical in-exsufflation. Pediatric Pulmonology 2013;48:824-9

'Chatwin M Bush A, Simonds AK, et al, Outcome of goal-directed non-invasive ventilation and

mechanical insufflation/exsufflation in spinal muscular atrophy type 1. Arch Dis Child 96:426-32: 2011(

NPPVとMI-E環境:ロンドン • 1993年以降SMAⅠ型13例がNPPV活用'うち5例死亡(

• 家族が気管切開人工呼吸への移行は希望しない

:NPPVで呼吸維持'挿管はプロトコルで抜管( :フランスでは57%が気管切開人工呼吸へ移行

'MI-Eを活用しないから?(

• 声'泣く、話す(を失わなくて済む、胸郭変形改善、苦痛軽減、生命予後改善

• 経験ある多職種のいる三次専門病院

(他のセンター・病院のSMAⅠ型のNPPVの認識は未知数( :どこの病院でも気管内挿管をプロトコルで抜管して

NPPVに戻せるものではないと 家族が周知

:MI-Eの機械が無い病院が多いので 家族が常備

• NPPVを活用する新環境順応'風土を慣らす(必要

気管切開からの吸引にMI-E使用: 吸引の間隔が伸びて、母が趣味のガーデニング再開

通常の吸引'サクション(より 刺激、不快、痛みが尐なく 効果的な吸引が可能 '脊髄損傷やALSにおける報告(

福山型先天性筋ジストロフィー

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7

'Arias R et al, Palliative care services in families of males with Duchenne muscular dystrophy

Muscle & Nerve 44:93-101: 2011(

米国の筋ジストロフィー緩和ケア'CDC研究( • 緩和ケア'Palliative care(について、DMD 48家族のうち

85%が聞いたことが無い 'オーストラリアでも同様( :若い神経筋疾患、長期にわたる慢性疾患のため、認めたくないという思い :終末期ケア'end of life care(のイメージにとらわれる傾向

• 緩和ケアの活用率 呼吸ケア 68% ケアマネージャー 50%

熟練した訪問看護・介護 44% 宗教家・教師による指導 27% レスパイト 18%

外出介助 13% ペイン・マネジメント 12% ホスピス・サービス 6%

食事サービス 3% ※事前指示書、リビングウィル、後見人制度などはわずか '苦痛や不快( • 呼吸ケアを含めた緩和ケアはQOL維持向上に大事

• 小児期の緩和ケアは、アクセスと利用に多面的要素 '個人、介護者、医療者、医療システム自体(

町のお祭りで英語サークル仲間とパレード

自宅やスカイプで 子ども英会話教室

キャンプ場で天体望遠鏡

器械による咳介助

36歳DMD : 終日NPPV 両親と暮らす

父母によるケア

手動換気で入浴

終日NPPV使用患者でも、カープ呼吸で 呼吸器離脱し、約20分水泳を楽しむ。

障害児のためのハロウィック水泳法 (八雲養護学校にて年2回実施)

プール学習の前に関係者に 救急蘇生講習 (MI-E含めて)

水でむせた時のために 咳介助の方法指導

(咳の弱い患者さんと周囲の人々の安全と安心のために)

水泳授業当日 場所:当院より車で5分程の町民プールを利用

障害者用更衣室を救護室として使用し機器を設置

・カフアシスト

・救急蘇生バッグ

・口腔内吸引用 吸引器 など

※医療者が作動確認を実施

養護学校からタクシーとストレッチャー、車いすを使用しプールへ移動。 プールサイドまでストレッチャーが入ることが出来る。 9年間の実施において、誤飲などによる緊急対応事例は無し。

医師'研修医1~2名(、理学療法士1名が同行

スカイプで英語授業

え!

体調の心配があっても、 skypeでOK!

「今日から僕が、 OT室にいって授業します!」

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8

神経筋疾患ガイドラインに推奨される 呼吸ケアの新環境順応を

スポーツ&NPPV

気道クリアランス

&深吸気

仕事&NPPV

睡眠時NPPV

外出&NPPV

ハロウィック水泳法

学習&NPPV

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1

神経筋疾患のリハビリテーションについて

神経筋疾患の呼吸リハビリテーションの目的

Tzeng AC, Bach JR, Chest 2000;118:1390-6

気管切開や窒息を回避してQOLを維持しやすいNPPVを有効に使用できるように、肺と胸郭の可動性と弾力を維持し、肺の病的状態を予防すること。

American Thoracic Society Documents

Respiratory Care of the Patient with Duchenne Muscular Dystrophy

デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者の呼吸ケア

ATS Consensus Statement 2004

気管切開や窒息を回避してQOLを維持しやすいNPPVを有効に使用できるように

気道クリアランスと肺や胸郭の可動性を維持するテクニックを積極的に使用する!

咳のピークフロー(CPF)評価 徒手と機械による咳介助 深呼吸による微小無気肺予防と 最大強制吸気量(MIC)の維持

喀出=咳 NPPVでは特に重要!

移動・分離=換気や体交・活動

NPPVと習慣的な 車いす活動 深呼吸(カフアシストも)

徒手や器械による咳の介助 カフアシストなど

RTX IPV バイブレーションベスト

AARC 入院を要するあらゆる病態に対する気道クリアランスのガイドライン AARC Clinical Practice Guideline: Effectiveness of Nonpharmacologic Airway Clearance Therapies in Hospitalized

Patients. Shawna L Strickland, et al. Respilatory Care December 2013;58: 2187-93 (Dean R Hessらによる )

入院を要する病態の成人・小児で ➣膵嚢胞線維症以外 (膵嚢胞線維症は2009年のAARCのACTガイドライン.Resp Care 2009;54:733-50) ➣神経筋疾患、呼吸筋力低下または咳機能低下 ➣術後

気道クリアランス治療(ACT)が、入院を要するあらゆる病態の成人・小児に対して、呼吸メカニズムの改善や無気肺、肺浸潤影の改善、ICU滞在期間の減尐、人工呼吸管理時間の減尐、酸素化の改善などの効果があるかどうかを検討した文献のシステマティックレビューからガイドラインを作成。

気道クリアランス療法の種類 略語 定義

アクティブサイクル呼吸法

Active cycle breathing techniqe

ACBT 咳の指導;リラックスした深呼吸や横隔膜呼吸サイクルの後に、強制的に呼出する

胸部理学療法

Chest physiotherapy

CPT 胸郭外からの徒手による手技;パーカッション、

バイブレーション、体位ドレナージ

(単独 or 組み合わせ or 全て)

強制呼出手技

Forced exhalation technique

FET 声門を開いた咳の指導;ハフィングとも呼ばれる

高頻度胸壁圧迫

High-frequency chest wall

compression

HFCWC 患者が装着したベストや体幹周囲に巻きつけた袋状の物に接続した機械からエアが噴出し、胸郭周囲を高頻度で圧迫する

肺内パーカッションベンチレータ

Intrapulmonary percussive ventilation

IPV 機械から圧縮された高頻度の短いガスが噴出し、 口鼻マスク、マウスピース、気管切開チューブを介して開いた気道に吹きつける

機械による咳介助

Mechanical insufflation-exsufflation

MI-E 機械により、陽圧呼吸の後に開いた気道に 陰圧を加える

呼気陽圧療法

Positive expiratory pressure

PEP 気道に圧を加えることで作り出す一定の抵抗に対する呼気:振動性のPEP機器である フラッター(Flutter)やアカペラ(Acapella)

AARC Clinical Practice Guideline: Effectiveness of Nonpharmacologic

Airway Clearance Therapies in Hospitalized Patients.

Shawna L Strickland, et al. Respilatory Care December 2013;58: 2187-93 (Dean R Hessらによる )

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2

➣膵嚢胞線維症以外の入院を要する病態の成人、小児

1)胸部理学療法(CPT)は、単純な肺炎のルーチンな治療としては、推奨されない。 2)ACTは慢性閉塞性肺疾患(COPD)のルーチンな使用は推奨されない。 3)痰貯留の症状があるCOPDにおいて、患者が好み、治療に耐えることができ、 効果的である場合は使用を考慮してもよい。 4)ACTは、もし患者が咳によって痰の移動が可能な時は推奨されない。 しかし、有効な咳の指導は有益である。

AARC Clinical Practice Guideline: Effectiveness of Nonpharmacologic

Airway Clearance Therapies in Hospitalized Patients.

Shawna L Strickland, et al. Respilatory Care December 2013;58: 2187-93 (Dean R Hessらによる )

AARC Clinical Practice Guideline: Effectiveness of Nonpharmacologic

Airway Clearance Therapies in Hospitalized Patients.

Shawna L Strickland, et al. Respilatory Care December 2013;58: 2187-93 (Dean R Hessらによる )

➣術後の成人、小児 1)インセンティブスパイロメトリーのルーチンで予防的な使用は推奨されない。 2)早期離床や歩行は、術後の合併症を減らし、気道クリアランスを 促進するために推奨される。 3)気道クリアランス手技はルーチンな術後ケアとして推奨されない。 利用できる高いレベルのエビデンスが不足しており、治療の適切な役割を 決定するために良くデザインされた研究が必要。

AARC Clinical Practice Guideline: Effectiveness of Nonpharmacologic

Airway Clearance Therapies in Hospitalized Patients.

Shawna L Strickland, et al. Respilatory Care December 2013;58: 2187-93 (Dean R Hessらによる )

➣神経筋疾患、呼吸筋力低下または咳機能低下のある 入院を要する病態の成人、小児 1) 咳介助手技は、神経筋疾患の患者、特に咳のピークフロー(CPF)が 270L/min以下の時には使用するべきである。 2) PEP、IPV、HFCWCは、エビデンスの不足により推奨することができない。

咳のピークフロー(cough peak flow:CPF)

◇CPF<270 L/minになると・・・

かぜをひいた時やムセた時などに、痰詰まりや窒息を起す危険がある。

◇CPF<160 L/minになると・・・

日常的に気道を空気の通り道として確保できないため、痰詰まりなどで気管内挿管や気管切開になる危険性がある。

通常ではCPF 360~960L/minの流量で約2300mlの呼気が排出される。

高校生のDMD患者 夜間NPPV使用

VC:470ml

自力咳のCPF:120l/min

徒手による咳介助(吸気と呼気の介助)

高校生DMD、夜間NPPV使用、VC:470ml、自力咳のCPF:120l/min

徒手による胸部圧迫呼気介助

CPF:220l/min

救急蘇生バッグにより息溜め (エアスタッキング)をして

MICまで吸気介助。 その後、自力の咳

CPF:280l/min

吸気介助にてMICを得てから、 徒手による呼気介助を併用。

CPF:360l/min

Guideline for respiratory management of children with neuromuscular weakness

筋力低下のある小児の呼吸管理のためのガイドライン

BTSガイドライングループ Thorax 2012;67:i1-i40

・基本的な呼吸理学療法:パーカッション・バイブレーション

・肺内パーカッション療法(IPV)

・高頻度胸壁圧迫法(HFCWO)

・インセンティブスパイロメトリー(IS)

・咳の増強(Augmented Cough)

➣息溜め(Air-stacking):最大強制吸気量(MIC)を得てCPFを増強

➣徒手の咳介助:胸腹部圧迫介助

➣Air-stackingと徒手介助の併用

➣機械による咳介助(MI-E)

呼吸理学療法手技

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3

➣効果的ではない咳(12歳以上でCPF<270L/min)の小児、特に呼吸器感染による増悪のエピソードがある場合、咳を増強させる手技を導入する。 ➣徒手の咳介助と最大強制吸気量(MIC)を得るための息溜め(深吸気)は、咳の効率を改善する効果的な手段であり、適切に使用されるべき。 ➣MI-Eは、喉頭・咽頭機能低下、徒手介助や息溜めに協力できないか、それらが効果的ではない重症患者に考慮されるべき。 ➣HFCWOやIPVなどの振動法は、他の気道クリアランステクニックを使用したにも関わらず、分泌物の移動が困難な場合や、もしくは持続的な無気肺がある場合に考慮する。 ➣呼吸器感染時はルームエアーでSpO2<95%のとき、気道クリアランス手技を使用する。もしこれらの手技でもSpO2が95%に改善しない場合は、入院にて他の治療を要する可能性がある。

➣神経筋疾患患者の治療を行う全ての病院で、急性期には挿管や人工呼吸管理の必要性や急性増悪の予防目的のための気道クリアランス手技として、MI-Eを使用可能にすること。

Guideline for respiratory management of children with neuromuscular weakness

筋力低下のある小児の呼吸管理ガイドライン

勧告:ステートメント

BTSガイドライングループ Thorax 2012;67:i1-i40

通常 咳介助は不要 (進行性疾患ではCPFのモニター:年1~2回)

徒手による咳介助のCPF

0

160

270

自力のCPF (L/min)

270L/min以上

270L/min未満 感染、術後にMI-E

感染、術後に徒手による咳介助

徒手による咳介助のCPF 160/min以上 270L/min未満

270L/min以上

160/min以下

普段から徒手による咳介助

普段から徒手による咳介助 感染・術後にMI-E

普段からMI-E

※VC低下例の 急な排痰困難や頻回の徒手による咳介助の際、CPFにかかわらずMI-E適応

咳のピークフロー(CPF)に基づく咳介助の適応(12 才以上標準値)

Mechanical Insufflation-Exsufflation(MI-E)とは?

機械的な強制吸気による肺の拡張と、強制呼気による 気道クリアランス(咳介助)を目的とした治療法

MINI PEGASO (Dimla Italia, Bologna:Italy)

Pulsar (Siare:Italy)

Cough Assist (Philips Respironics:USA)

Comfort Cough (seoil pacific:Korea)

Cough Assist E70 (Philips Respironics The Netherlands)

MAC(mechanically assisted coughing)=徒手介助併用の機械による咳介助

Toussaint, M. Respir Care 2011;56:1217-1219

MI-Eに関する文献数

Cough Assist E70

➣ CPF、一回換気量のモニター ➣ In-Exsufflationに連動したオッシレーション ➣ Cough-Trak(吸気トリガー)

2013年11月薬事承認

16~24歳までのMICとVCの経時的変化

1800

1710 1600 1630 1700 1700

1550

850 670

400 470 360 360 400

0200400600800

100012001400160018002000

H16.05.12 H18.04.14 H20.05.07 H21.05.20 H22.07.14 H23.05.18 H24.04.03

MIC(bagging) VC

NPPVや咳介助を効果的に活用するための 肺や胸郭の可動性と喉頭や咽頭機能の維持

最大強制吸気量:Maximum insufflation capacity(MIC)

陽圧換気による強制吸気を肺に溜め、数秒保持できる吸気量

強制吸気の方法:①救急蘇生バッグ②従量式NPPV③MI-E④GPB

肺の健常性・胸郭の可動性・喉頭と咽頭機能の総合的な指標

舌咽頭呼吸 GPB: glossopharyngeal breathing

(カエル呼吸・カープ呼吸)

自分ひとりでも深吸気を得ることができ、使用頻度も高く、早期からの継続的な微小無気肺予防として最も効果的

1951年にDailらが、ポリオの流行で肺活量がゼロになった患者が鉄の肺(体外式陰圧人工呼吸器) をはずす間に、自力での換気補助として行っていたものを観察、記載し報告したもの。

カエル呼吸のコツ☝

アゴから喉仏にかけての部分を膨らます

口唇で周りの空気を掴み取るように動かす

フーセンガムの中の空気を吸うように

おぇ~ってなるときの筋肉・・・??

大きな声を出す、咳をする、日常ケアのちょっとした呼吸器離脱、もちろん緊急時対応にも活用

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Independent Cough Flow Augmentation by Glossopharyngeal Breathing Plus Table Thrust in Muscular Dystrophy

Bianch C, et al. Am. J. Phys. Med. Rehabil. Jun 4, 2013

カウンターテーブルを利用した自己排痰介助

カエル呼吸とテーブルでもCPFがアップ!

Guideline for respiratory management of children with neuromuscular weakness

筋力低下のある小児の呼吸管理のための指針

➣神経筋疾患患者において咀嚼と嚥下の問題は一般的で、頬、口唇、 舌、咽頭の筋力低下を反映し、また高い頻度で栄養不良の原因となる。 ➣重度の脊髄性筋萎縮症(SMA)の子供では摂食嚥下問題は早期より 起こることもあるし、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)では疾病経過 のかなり後期に起こる。 ➣口腔と咽頭の機能低下は誤嚥性肺疾患を増加させ、呼吸不全増悪の 原因となる。

Feeding and swallowing difficulties:摂食嚥下困難

気管切開人工呼吸によって嚥下障害が改善する?

Impact of tracheostomy on swallowing performance in Duchenne muscular dystrophy

Nicolas Terzi. Helene Prigent et al Neuromuscular Disorders 20 (2010) 493-498

7名のDMD(平均年齢25±4)患者において、気管切開を行うと、 有意に嚥下時間と嚥下回数が改善し、嚥下機能が改善した。 改善理由の考察 気管切開を行うことにより 吸気量増加・高CO2血症改善・呼吸仕事量軽減 呼吸と嚥下の調整する必要がなくなり、嚥下に集中できた 全例気管切開前にNPPVを施行(平均60±32m)していたが・・・・。

食事中にはNPPV除去・咳介助(徒手や機械)による 気道クリアランスを行っていない!

嚥下障害における呼吸器罹患の予測因子としてのCPF Cough peak flow as a predictor of pulmonary morbidity in patients with dysphagia

Bianch C, et al. Am. J. Phys. Med. Rehabil. Vol.91, No.9, September 2012

嚥下障害患者55名 67.4±11.7歳 男性44 女性11

診断名 脳血管障害 23名 他の神経学的障害 5名

頭蓋低手術後遺症 11名 喉咽頭部手術後遺症 16名

Group 1:肺合併症あり18名 固形物誤嚥 94% 液体誤嚥 89% 流動物誤嚥 89%

Group 2:肺合併症なし37名 固形物誤嚥 97% 液体誤嚥 81% 流動物誤嚥 70%

CPF L/min

VC L

VC%

PEF L/min

PEF%

SpO2 %

202.2±68.8

2.36±0.91

64.1±25.9

228.8±138.4

60.3±31.2

94.4±1.9

303.9±80.7

3.05±0.94

85.1±14.6

282.0±86.2

64.8±17.7

95.8±1.6

P<0.001

0.03

0.01

NS

NS

0.01

CPF<242L/minでは肺合併症が予測される(感度77% 特異性83%) 強い咳介助を可能にすることで、誤嚥性肺炎を予防する事が出来る

福岡県在住のDhuchenne型筋ジストロフィー患者 22歳

肺活量(VC):240ml

最大強制吸気量(MIC) 650ml

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5

上気道のクリアランス能力(咳機能)

自力咳のCPF:75L/min 介助咳のCPF:180L/min

気道内分泌物や異物の侵入に対する喀出は困難

徒手と機械による咳介助(Mchanical assisted cough : MAC)の導入

オートマチックモード In-time 1.5 Ex-time 1.5 Pause 1.0 設定圧:-40~+40cmH2O

呼気に合わせて徒手による胸腹部圧迫介助併用

NPPV使用下での食事

➣NPPVは従量式、もしくはEPAPを0cmH2Oに設定できる従圧式で行う ➣インターフェイスは食事がしやすいよう、鼻マスクか鼻プラグを使用 ➣誤嚥の時、もしくは食後にMACを使用。(MACがなければ食事は禁)

マウスピースによるNPPV

食事の時にも使用可能で、呼吸器のタイミングに関係なく嚥下ができる利点も

DMDにおける脊柱変形へのマネージメント

・理学療法: 関節可動域訓練

歩行訓練 起立訓練

■ 外科的治療法

■ 保存療法

体幹装具(胸腰椎伸展位)

電動車いすの早期導入

脊椎後方矯正固定術

・座位保持:

椎間関節をロック

側屈や回旋が制限

・装具療法: 下肢装具

脊柱伸展位を誘導?

骨盤後傾を作らない姿勢を奨励

車いす座位姿勢での対応は。。

過度な前彎は心肺機能、 嚥下機能を低下させるの で要注意!!

Wilkins& Gibsonの脊柱変形5分類

八雲病院でのDMD入所者の脊柱変形

3%

15% 25% 20%

38%

DMD61名

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2014/3/25

6

八雲病院における座位保持適合手段

■標準電動車いすにクッション等 のスペーサーの導入 ■モールド

■張り調整フレーム型電動車椅子

(1997年~2007年)

Group.Ⅱ Group.Ⅴ

Group.Ⅳ

Group.Ⅲ

Group.Ⅲ

Group.Ⅴ

■モールド+張り調整シート ■体幹装具との併用

八雲病院における座位保持適合手段 (1997年~2007年)

Group.Ⅴ

Group.Ⅲ

Group.Ⅱ

Group.Ⅳ

体幹変形と活動内容にあった アクティブバランスシーティング(ABS)

3Dシート

ネックサポート

胸郭サポート

骨盤サポート

アンカーサポート

頚部の回旋や手指の動きが可能に!

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2014/2/23

1

排痰補助装置について

フィリップス・レスピロニクス合同会社

営業・マーケティング本部

看護師 呼吸療法認定士

石川有紀

MI-E(Mechanical In-Exsufflation)とは ~器械による咳介助~ フェイスマスクあるいは気管挿管チューブ・気管切開チュー

ブに接続して気道に陽圧を加えた後、急速に陰圧にシフト

することにより高い呼気流量を生じさせるもの

咳嗽の補強(もしくは代用)となり気道内分泌物を排出する

のを助ける

診療報酬

排痰補助装置加算 1800点

注 人工呼吸を行っている入院中の患者以外の神経筋疾患

等の患者に対して、排痰補助装置を使用した場合に、

第1款(在宅療養指導管理料)の所定点数に加算する。

(1)排痰補助装置加算は、在宅人工呼吸を行っている患者で

あって、換気能力が低下し、自力での排痰が困難と医師が認めるものに対して、排痰補助装置を使用した場合に算定

できる。

(2)注に規定する神経筋疾患の患者とは、筋ジストロフィー、

筋萎縮性側索硬化症、脳性麻痺、脊髄損傷等の患者をさす。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの呼吸器ケア

:ATSのコンセンサス・ステートメント

2001年5月ATS年次総会で発足

多くの小児呼吸器科医と小児神経医、看護師それぞれ1名で構成

医療従事者の教育目的

DMD以外の神経筋疾患にも適応可

勧告

臨床経過によって気道クリアランスが難しいことが示唆された患者、

PCFが 270 L/min未満の患者、最大呼気圧が 60cmH2O未満の患者で

は咳介助のテクニックを使用すること

コンセンサス委員会はDMD患者に器械による強制吸気と呼気を使用す

ることを強く支持し、今後MI-Eを用いた様々な研究を進めることを推

奨する

Am J Respir Crit Care Med. 170. p456-465, 2004

ALSにおけるカフアシストの位置づけ

肺の弾性を維持する手技

息止め

スプリンギング

蘇生バッグ

舌咽頭呼吸

MAC(Mechanically assisted coughing:機械的な咳介助)

人工呼吸の使用

排痰法・咳の介助(体位排痰法と加湿が基本)

体位排痰法

スクウィージング

蘇生バッグ使用

MAC

パーカッショネア

厚生労働省難治性疾患克服研究事業平成17年度~19年度「特定疾患患者の生活の質(QOL)の向上に関する研究」. 筋委縮性側策硬化症の包括的呼吸ケア指針-呼吸理学療法と非侵襲陽圧換気療法(NPPV) 第一部:2007 : 34-36より引用一部改変

神経筋疾患におけるNPPV導入基準

肺活量、咳の最大流速(PCF)、SpO2、呼気終末PCO2、を定期的に測定する。

進行性疾患や肺活量低下例では定期的に(年1回程度)睡眠時呼吸モニター(SpO2、可能なら

呼気終末PCO2も)を行う。

肺活量が2000mL以下(または%肺活量<50%)になったら、救急蘇生バッグとマウスピースや鼻

マスク・口マスクを用いて強制吸気による息溜め(エア・スタック)を用い、MIC(最大強制吸気量)を測定する。

PCFが270L/min以下に低下したら、徒手による介助咳(吸気筋と呼

気筋の)を習得する。風邪をひいたときは、パルスオキシメータを

用意し、SpO2<95%になるときはNPPVと徒手や器械による介助咳

を行って、SpO2≧95%に維持する。酸素を付加しないと

SpO2≧95%にならないときは、肺炎や無気肺を考慮する。 気管内挿管を要した場合は、酸素を付加しなくてもSpO2が正常化し高二酸化炭素血症を認めなく

なってから、抜管する。抜管の際に一時的にNPPVへ以降する必要が生じることがある。抜管後に睡眠時NPPVを中止してしばらくすると症状や高二酸化炭素血症が増悪する例や、肺炎や急性呼吸

不全増悪を繰り返す例では、長期NPPVの適応を考慮する。

慢性肺胞低換気症状を認める場合や、定期的な昼間や睡眠時の呼吸モニターによりPaCO2(または呼気終末PCO2か経皮PCO2 )≧45mmHg、あるいはSpO2<90%が5分以上続くか全モニター時

間の10%以上であれば、夜間のNPPVを徐々に追加する。

介助によりPCF<160L/min(エア・スタック利用しても)になったり、気道確保が困難(咳が不十分、嚥下機能低下や慢性的な誤嚥、分泌物過多)である場合は、風邪をひいたときや気管内切開を

考慮するときにインフォームドコンセントを行って気管内挿管する。

日本呼吸器学会NPPVガイドライン作成委員会編. NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン.南江堂 2006:85

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2014/2/23

2

カフアシスト文献

〜一般病院における無作為化比較試験〜

内容 対象

2007~2009年 大学病院18歳以上のgeneral ICU患者

48時間以上の機械換気を受け、SBTに成功した患者

SBT成功後、抜管前に以下の2群に割付

MI-E群 MI-E+必要時のNPPVを含めた抜管後の標準的治療

コントロール群 必要時のNPPVを含めた抜管後の標準的治療

エンドポイント

再挿管率、ICU総滞在日数、抜管後のICU滞在日数、NPPV失敗率

結果

MI-E群では、有意に再挿管率が低かった 痰の貯留による再挿管が少なかった

ICU総滞在日数は有意差なし

MI-Eは、NPPVが必要とされた患者における、再挿管予防の効果が高かった

結語

痰の貯留は、抜管後呼吸不全の主要な原因の一つである

MI-Eは、ICUにおける呼吸不全患者の咳を補助する効果的な方法であり気管チューブ

経由、マスク経由の両方で使用できる

MI-Eは、再挿管予防の目的で、多量の分泌物を管理する方法として有効でありうる。

また、抜管後に呼吸不全を悪化させている患者に対して、NPPVの有効性を改善する

ためにも有効でありうる

抜管後48時間以内の再挿管を避ける、抜管成功のためのプロトコルは、呼吸器患者

の抜管後のICU滞在日数を短縮するために、プラスのインパクトがある

[呼吸機能低下をきたす神経筋疾患]

筋ジストロフィー 筋萎縮性側索硬化症(ALS) 高位脊髄損傷

脊髄性筋萎縮症(SMA) 多発性硬化症 両側性の横隔膜麻痺

ギラン・バレー症候群 ポリオ後症候群 重症筋無力症

[閉塞性肺障害]

肺気腫 気管支喘息 嚢胞性肺線維症 など

適応

咳が上手くできない患者

上気道感染時や、頭部や胸腹部などの術後で

麻痺的な呼吸障害により咳が弱くなっている患者

石川悠加 監修「MACを用いた排痰介助・咳介助」より引用一部改変

石川悠加 監修「MACを用いた排痰介助・咳介助」より引用一部改変

効果

神経筋疾患などの上気道感染時や、頭部や胸腹部などの術後で咳が弱くなっている時、短時間で労力や痛みが少なく効果的に

排痰できるため、肺炎や無気肺になったり、気管挿管になるのを防ぐ

適切な呼吸リハビリテーションとの併用によりNPPVから気管切

開への移行を遅らせる

気管切開チューブを通しての排痰にも有用で、通常の吸引のみ

より苦痛が少なく一度に多量の痰を吸引でき、また吸引の頻度が減り、肺炎になりにくい

在宅人工呼吸者において緊急介助者でも使え、緊急入院の頻度

が減る

ICUやリカバリールームで、気管内挿管を通しての排痰にも効果があり、抜管を助ける

新機能: Cough-Trak(吸気トリガ) 振動換気(オシレーション)機能

着脱式バッテリーモジュール

CoughAssist E70

フットペダルや SpO2モジュールが

接続可能

大きなカラー画面& 直観的なインターフェイス

コンパクトなボディ

データマネジメント CPF・Vtiのモニタリング

内部メモリーとSDカードで記録

カフトラック(吸気トリガ)

Pressure

time

設定 吸気時間

設定 呼気時間 ポーズ時間

設定なし

Cough-Trak ON

患者トリガー

Pressure 設定 吸気時間 設定

呼気時間

トリガー タイミング

ポーズ 時間設定

time

Cough-Trak OFF

ポーズ 時間設定

ポーズタイムは一つのサイクルから、他のサイクルで変化する。

同調性を向上させる

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2014/2/23

3

新機能: Cough-Trak(吸気トリガ)

振動換気(オシレーション)機能

着脱式バッテリーモジュール

CoughAssist E70

フットペダルや SpO2モジュールが

接続可能

大きなカラー画面& 直観的なインターフェイス

コンパクトなボディ

データマネジメント CPF・Vtiのモニタリング

内部メモリーとSDカードで記録

オシレーションで治療効果を高める

設定

吸気相、呼気相またはその両方の相に使用可能

振動数 : 1-20 Hz

振幅 : 1-10 cmH2O

初期設定 : 患者さんが快適に思えるように

高い周波数 (20 Hz) 低い振幅 (1-2 cmH2O)でスタートし、

効果がでるまで設定を微調整

オシレーション無しの場合と比較し追加すべき禁忌はない

刺激が少ない設定を希望する場合

:高い周波数と小さな振幅

刺激が強い設定を希望する場合

:小さい周波数と高い振幅

新機能: Cough-Trak(吸気トリガ)

振動換気(オシレーション)機能

着脱式バッテリーモジュール

CoughAssist E70

フットペダルや SpO2モジュールが

接続可能

大きなカラー画面& 直観的なインターフェイス

コンパクトなボディ

データマネジメント CPF・Vtiのモニタリング 内部メモリーとSDカードで記録

データマネジメント

オキシメトリとの連動

(オプション)

パルスレートとSpO2データ

は、他の治療パラメータと一緒に表示される

モニタリング

ピークカフフロー(PCF)と 吸気1回換気量 (Vti) を1サイクル毎に表示

介助方法

①分泌物の性状変化

②分泌物の

中枢気道への

移動促進

③咳のサポート

④分泌物の

直接的除去 ⑤嚥下訓練

気管内吸引 気管支鏡

気管挿管/気管切開

体位ドレナージ 徒手的理学療法 器械的呼吸療法 加温加湿

薬剤

MI-Eの副作用(相対的禁忌)

嚢胞(のうほう)(ブラ)のある肺気腫の既往

気胸

気縦隔の疑い

人工呼吸による肺障害

不整脈や心不全のある患者には原則的には行なわないが、どうしても行なう場合は心電図モニター酸素飽和度を見ながら慎重に行なう