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254 The 65th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health 15 16 15 16 栄養と食育 1 P2-066 幼児の発達段階に合わせた食事提供につい ての調査研究 -出生順位の視点から- 堤 ちはる 1 、三橋 扶佐子 2 、北村 洋平 3 清水 隆司 3 1 相模女子大学栄養科学部 健康栄養学科 2 日本歯科大学生命歯学部 共同利用研究センター 3 森永乳業株式会社 健康栄養科学研究所 【目的】 保育園児と保護者の食生活の現状を把握し、家庭環境や発 達段階に合わせた食事提供の支援体制作りを目的とした。 【方法】 関東地方の保育園27園の2、3歳児クラスの保護者739人 に調査概要を説明し、協力申し出の得られた271人に自記 式アンケート調査を29年9 ~ 10月に実施した。本研究は 相模女子大学「ヒトを対象とする研究に関する倫理審査委 員会」の承認を得た(受理番号 1773 号)。 【結果】 調査票は調査協力を申し出た271人全員から回収された。 男児第一子97人(67.8%)、第一子以外46人(32.2%)、女 児 第 一 子 83 人(64.8 %)、 第 一 子 以 外 45 人(35.2 %)に 分 けて分析を行った。「いつも食欲がある」のは、男児第一 子約13%に比べ、第一子以外は約28%と高く、女児も同 様の傾向であった。噛むのが上手なのは、男児第一子約 19%に比べ、第一子以外では約24%と高く、女児も同様 の傾向であった。ご飯を「11回以上」もよく噛んでいるの は、男児第一子約24%、第一子以外では約11%、女児第 一子約29%、第一子以外は約20%であり、第一子の咀嚼 回数が男女共に多かった。夕食の時間が「15 ~ 30分」と 短いのは、男児第一子約34%に比べ、第一子以外では約 44%と高く、女児も同様の傾向であった。好き嫌いが「少 ない」のは、男児第一子約17%に比べ、第一子以外では 約9%、女児第一子約16%に比べ、第一子以外では約9% と低かった。食事中「立ち歩くこと」が、「よくある」「と きどきある」合計は、男児第一子約59%、第一子以外約 74%、第一子女児約47%、第一子以外約69%と第一子以 外が男女共に高かった。食器を押さえることが「上手にで きる」のは、男児第一子約30%、第一子以外約41%、女児 第一子約46%、第一子以外約53%と男女共に第二子が高 かった。 【考察】 第一子に比べ第一子以外は食欲もあり、咀嚼も上手で食具 の扱いの習得も早いことが明らかにされた。一方、噛む回 数が少ない、食事時間が短い、食事中立ち歩くなどについ ては配慮の必要性が示された。通常、保護者への支援は第 一子に比べて、第一子以外へは子育て経験者ということで 簡単に済まされる場合が多いと推察される。しかし本研究 では、第一子以外への複数の配慮点が示されたことから、 男女の特性も含めた家庭環境を考慮した一人ひとりに応じ た栄養士などの専門家による支援が求められていると考え る。 P2-067 乳児用ミルクの栄養設計の妥当性評価  ―乳児の発育の観点から― 神野 慎治、山崎 香枝、中村 吉孝、長田 昌士、 池上 秀二、岡屋 英二 株式会社 明治 研究本部 技術研究所 【目的】 「たんぱく質濃度を2.2 g/100kcal に低減して母乳により近 づけた乳児用ミルク A」の栄養設計の妥当性を乳児の体重 および頭囲で評価した。 【方法】 「乳児の発育および哺乳量等に関する追跡調査」 (UMIN000023110)を2014 年 9 月~ 2017 年 3 月に実施した。 当調査では、管理栄養士/栄養士による1ヵ月健診時の栄 養相談で保護者から参加同意が得られた1,053名について、 自記式質問紙による調査を1 歳になるまで計 4 回実施した。 調査参加者のうち、「出生体重が2500 g未満または4000 g 以上」、「在胎週数が37 週未満または不明」または「先天性 代謝異常有、両親が海外出身の児」のいずれかに該当する 児は解析から除外した。体重評価では、母乳栄養(ミルク 未使用)またはミルク A栄養(母乳の哺乳回数が3割未満) を生後6 か月まで継続し、生後12ヵ月までの体重データに 欠損の無い児のデータを比較した。頭囲評価では、母乳栄 養またはミルク A栄養を生後6か月まで継続した児(ただ し、生後1および4ヵ月ではその時点まで母乳栄養または ミルク A栄養を継続した児)のデータを比較した。統計学 的検定には、反復測定二元配置分散分析またはスチューデ ントの t 検定を用い、有意水準は5% とした。 【結果】 ミルク A栄養児(男児36名、女児33名)の生後12ヵ月まで の体重の推移は、男女とも母乳栄養児(男児104名、女児 95名)と同等で差がなかった(栄養法; N.S.、月齢; p < 0.05、 交互作用; N.S.)。ミルク A栄養児の頭囲は、生後1、4、7 および12ヵ月のそれぞれの時点で男女とも母乳栄養児と同 等で差がなかった。両者の体重と頭囲は WHO や日本の成 長曲線に沿っていた。 【結論】 ミルク A栄養児の生後12ヵ月までの発育は母乳栄養児と 同等で差がないことを確認した。これらの結果は、ミルク A の栄養設計が妥当であることを示している。 Presented by Medical*Online

P2-066 P2-067P2-067 乳児用ミルクの栄養設計の妥当性評価 ―乳児の発育の観点から― 神野 慎治、山崎 香枝、中村 吉孝、長田 昌士、 池上

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    一般演題・口 

    演 

    6月15日㊎

    一般演題・口 

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    6月16日㊏

    一般演題・ポスター 

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    一般演題・ポスター 

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    栄養と食育1

    P2-066幼児の発達段階に合わせた食事提供についての調査研究 -出生順位の視点から-

    堤ちはる1、三橋扶佐子2、北村洋平3、清水隆司31相模女子大学栄養科学部健康栄養学科2日本歯科大学生命歯学部共同利用研究センター3森永乳業株式会社 健康栄養科学研究所

    【目的】保育園児と保護者の食生活の現状を把握し、家庭環境や発達段階に合わせた食事提供の支援体制作りを目的とした。

    【方法】関東地方の保育園27園の2、3歳児クラスの保護者739人に調査概要を説明し、協力申し出の得られた271人に自記式アンケート調査を29年9 ~ 10月に実施した。本研究は相模女子大学「ヒトを対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得た(受理番号1773号)。

    【結果】調査票は調査協力を申し出た271人全員から回収された。男児第一子97人(67.8%)、第一子以外46人(32.2%)、女児第一子83人(64.8%)、第一子以外45人(35.2%)に分けて分析を行った。「いつも食欲がある」のは、男児第一子約13%に比べ、第一子以外は約28%と高く、女児も同様の傾向であった。噛むのが上手なのは、男児第一子約19%に比べ、第一子以外では約24%と高く、女児も同様の傾向であった。ご飯を「11回以上」もよく噛んでいるのは、男児第一子約24%、第一子以外では約11%、女児第一子約29%、第一子以外は約20%であり、第一子の咀嚼回数が男女共に多かった。夕食の時間が「15 ~ 30分」と短いのは、男児第一子約34%に比べ、第一子以外では約44%と高く、女児も同様の傾向であった。好き嫌いが「少ない」のは、男児第一子約17%に比べ、第一子以外では約9%、女児第一子約16%に比べ、第一子以外では約9%と低かった。食事中「立ち歩くこと」が、「よくある」「ときどきある」合計は、男児第一子約59%、第一子以外約74%、第一子女児約47%、第一子以外約69%と第一子以外が男女共に高かった。食器を押さえることが「上手にできる」のは、男児第一子約30%、第一子以外約41%、女児第一子約46%、第一子以外約53%と男女共に第二子が高かった。

    【考察】第一子に比べ第一子以外は食欲もあり、咀嚼も上手で食具の扱いの習得も早いことが明らかにされた。一方、噛む回数が少ない、食事時間が短い、食事中立ち歩くなどについては配慮の必要性が示された。通常、保護者への支援は第一子に比べて、第一子以外へは子育て経験者ということで簡単に済まされる場合が多いと推察される。しかし本研究では、第一子以外への複数の配慮点が示されたことから、男女の特性も含めた家庭環境を考慮した一人ひとりに応じた栄養士などの専門家による支援が求められていると考える。

    P2-067乳児用ミルクの栄養設計の妥当性評価 ―乳児の発育の観点から―

    神野慎治、山崎香枝、中村吉孝、長田昌士、池上秀二、岡屋英二株式会社明治研究本部技術研究所

    【目的】「たんぱく質濃度を2.2 g/100kcal に低減して母乳により近づけた乳児用ミルク A」の栄養設計の妥当性を乳児の体重および頭囲で評価した。

    【方法】「 乳 児 の 発 育 お よ び 哺 乳 量 等 に 関 す る 追 跡 調 査」(UMIN000023110)を2014年9月~ 2017年3月に実施した。当調査では、管理栄養士/栄養士による1ヵ月健診時の栄養相談で保護者から参加同意が得られた1,053名について、自記式質問紙による調査を1歳になるまで計4回実施した。調査参加者のうち、「出生体重が2500 g未満または4000 g以上」 、「在胎週数が37週未満または不明」または「先天性代謝異常有、両親が海外出身の児」のいずれかに該当する児は解析から除外した。体重評価では、母乳栄養(ミルク未使用)またはミルク A栄養(母乳の哺乳回数が3割未満)を生後6か月まで継続し、生後12ヵ月までの体重データに欠損の無い児のデータを比較した。頭囲評価では、母乳栄養またはミルク A栄養を生後6か月まで継続した児(ただし、生後1および4ヵ月ではその時点まで母乳栄養またはミルク A栄養を継続した児)のデータを比較した。統計学的検定には、反復測定二元配置分散分析またはスチューデントの t 検定を用い、有意水準は5% とした。

    【結果】ミルク A栄養児(男児36名、女児33名)の生後12ヵ月までの体重の推移は、男女とも母乳栄養児(男児104名、女児95名)と同等で差がなかった(栄養法; N.S.、月齢; p <0.05、交互作用; N.S.)。ミルク A栄養児の頭囲は、生後1、4、7および12ヵ月のそれぞれの時点で男女とも母乳栄養児と同等で差がなかった。両者の体重と頭囲は WHO や日本の成長曲線に沿っていた。

    【結論】ミルク A栄養児の生後12ヵ月までの発育は母乳栄養児と同等で差がないことを確認した。これらの結果は、ミルクA の栄養設計が妥当であることを示している。

    Presented by Medical*Online

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