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Peak Atlas DCA Semiconductor Component Analyser Model DCA55 © Peak Electronic Design Limited 2000/2012 本ガイドの内容は、今後の開発によって予告なく変更されることがあります。 ユーザー・ガイド 参考資料

Peak Atlas DCA - 秋月電子通商 - 電子部品・半導体 【通 …akizukidenshi.com/download/ds/peak/DCA55_u_guide_J_0.3a.pdfPeak Atlas DCA(DCA55)は、優れた機能をもつ半導体アナライザです。各種半導体の諸特性を、簡単な操作で測定することが

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Peak Atlas DCA

Semiconductor Component Analyser

Model DCA55

© Peak Electronic Design Limited 2000/2012

本ガイドの内容は、今後の開発によって予告なく変更されることがあります。

ユーザー・ガイド

参考資料

DCA55 User Guide -J-

- 2 -

DCA55 を使うには まず、このユーザー・ガイドの 4 ページをお読みください。

簡単操作の DCA55 は、どなたにでもすぐに お使いいただけるでしょう。

ユーザー・ガイドの各項目は、測定やメンテナンスなどの 必要に応じて、ご参照ください。

もくじ ページ

はじめに .................................................................... 3 安全にお使いいただくために .................................... 4 各種半導体の測定方法 ............................................... 5 ダイオード...................................................... 7 ダイオードネットワーク ........................... 8 LED ...............................................................9 二色 LED ..................................................... 10 バイポーラ接合型トランジスタ ................... 11 デジタル・トランジスタ ............................. 18 エンハンスメント型 MOSFET ..................... 19 デプレッション型 MOSFET ........................ 20 接合型 FET .................................................. 21 サイリスタ(SCR)とトライアック ................22 DCA55 のお手入れ方法 .......................................... 23 電池交換 ....................................................... 23 セルフテスト................................................ 24 付録 1 - 技術仕様 ................................................ 25 付録 2 - 廃棄について ......................................... 26

DCA55 User Guide -J-

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はじめに

Peak Atlas DCA(DCA55)は、優れた機能をもつ半導体アナライザです。

各種半導体の諸特性を、簡単な操作で測定することができます。 主な特長 測定対象デバイスの自動識別機能 バイポーラトランジスタ ダーリントントランジスタ エンハンスメント型 MOSFET デプレッション型 MOSFET 接合型 FET 小型高感度トライアック 小型高感度サイリスタ 発光ダイオード(LED) 二色 LED ダイオード ダイオードネットワーク

ピン配列自動識別機能 (どのようにつないでも識別します) 保護ダイオード/シャント抵抗の自動識別機能 バイポーラトランジスタの増幅率測定 バイポーラトランジスタの漏れ電流測定 バイポーラトランジスタの半導体識別機能

(シリコン/ゲルマニウム) エンハンスメント型 FET のゲートしきい値電圧測定 各種半導体デバイスの順方向電圧測定

(ダイオード/LED/トランジスタのベース-エミッタ接合) 手動パワーオフ/オートパワーオフ機能

DCA55 User Guide -J-

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安全にお使いいただくために

ご使用に際には次のガイドラインを守ってください。 ・通電中あるいは電力が残留※しているデバイスや機器に、この測定器を

絶対に接続しないでください。この警告に従わない場合には、人的損

傷のおそれがあります。また、測定対象機器や DCA55 にダメージを

与える可能性があります。 (※コンデンサなどに蓄えられている残留電荷など)

・DCA55 は、基板上などの回路内にある半導体を測定することはできま

せん。回路内の諸要因によって誤った測定結果となってしまいます。 ・はげしい衝撃を避け、ていねいに取り扱ってください。 ・この測定器は防水ではありません。濡らさないでください。 ・品質の良いアルカリ電池を使用してください。

DCA55 User Guide -J-

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各種半導体の測定方法

DCA55 は、非通電のディスクリート(個別) デバイスを分析/測定することを目的として 設計されています。測定結果に影響を及ぼす ことがないよう、測定対象デバイスが回路から独立していることを 確認してください。三本のテスト・プローブは、測定対象デバイス の端子にどのように接続してもかまいません。測定対象が二端子の場合には、

三本のうち任意の二本を使用してください。

on-test ボタンを押すことによって、

DCA55 は測定対象デバイスの分析

/測定を開始します。 測定対象デバイスによっては、分析が完了し結果が表示されるまで数秒かか

ることがあります。分析/測定結果は、項目ごとに表示されます。scroll-offボタンを押すごとに、各項目が順次表示されます。

左に示すような下向きの矢印シンボルは、表示される項目が複数ある

ということを示しています。scroll-off ボタンを押すことによって、表

示項目は何度でもスクロールできます。 DCA55 はボタン操作がないと、自動的に電源オフになります。

手動で電源をオフにする場合には、scroll-off ボタンを約 1 秒間押

し続けてください。

DCA55 User Guide -J-

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DCA55 のテスト・プローブに何もつ

ながれていない場合には、右のような

表示が出ます。 測定対象外のデバイス、こわれている

部品、回路内にある部品の場合には、

分析結果として右のような表示が出

ます。 測定対象デバイスによっては、二本の

プローブ間が短絡(ショート)されたか

のような状態とみなされ、分析結果と

して右のような表示が出ます。 三本すべてのプローブ間が短絡(ショ

ート)されたかのような状態、または

低レジスタンス(抵抗成分)の場合には、

分析結果として右のような表示が出

ます。

DCA55 は、測定対象外デバイスや故障部品を測定した場合、そ

の内部のダイオード接合や他のデバイス・タイプを分析結果とし

て判定することがあります。これは、多くの半導体が PN(ダイオ

ード)接合で構成されていることによります。詳細については、ダ

イオードとダイオードネットワークの項を参照してください。

DCA55 User Guide -J-

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ダイオードの測定

DCA55 は、多種多様なダイオードの分析/ 測定を行うことができます。三本のテスト・ クリップのうち、任意の二本をダイオード に接続してください。極性はありませんから、 どのように接続しても構いません。単独のダイオードとして 識別された場合、次のようなメッセージが表示されます。

scroll-off ボタンを押すと、ダイオード

のピン配置が表示されます。この表示

例では、ダイオードのアノード(Anod)が赤のテスト・クリップに、カソード

(Cath)が緑のテスト・クリップに接続

されていることを示しています。また、

青のテスト・クリップには何もつなが

れていません。次に、順方向電圧降下

(ダイオードの代表的な電気的特性の

指標 )が表示されます。この表示例

(Vf=0.67V)のダイオードは、シリコン

ダイオードでしょう。ゲルマニウムや

ショットキ・ダイオードでは、順方向

電圧が 0.25V 近傍となるはずです。ダ

イオード測定時のテスト電流も表示さ

れます。

DCA55 は直列接続された二本のダイオードを、一つのダイオー

ドとして識別することがあります(三本目のテスト・クリップを二

本のダイオードの中間点に接続していない場合)。直列接続された

二本のダイオードの和として順方向電圧が表示されます。 DCA55 は、順方向電圧の測定結果が 1.50V 以上であったとき、

測定対象ダイオードを LED として識別することがあります。詳

細については、LED 測定の項を参照してください。

DCA55 User Guide -J-

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ダイオードネットワークの測定

DCA55 は、標準的な三端子のダイオードネットワーク(二本 のダイオードで構成されているデバイス)を識別することが できます。SOT-23 などの三端子デバイスの測定では、三本の テスト・クリップをすべて接続します。極性はありませんから、どのように

接続しても構いません。DCA55 はダイオード構成の接続タイプを自動的に識

別し、その種別を表示します。 両端がアノードで、中間点が

カソードを意味します。 両端がカソードで、中間点が

アノードを意味します。 直列に接続されていることを

意味します。

次のようなデバイス識別情報が表示さ

れ、ダイオード毎に分析/測定結果を確

認することができます。 まず、ピン配置が表示されます。次に、

電気的特性(順方向電圧、測定時のテス

ト電流)が示されます。テスト電流は、

ダイオードの順方向電圧降下によって

変化します。 一番目のダイオード(D1)の全項目が表示されると、次に二番目のダイオード

(D2)の各項目が表示されます。

DCA55 User Guide -J-

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LED の測定

LED は一般のダイオードとは異なった、別のタイプの ダイオードです。DCA55 は、測定対象デバイスの順方向電圧 降下の実測値が 1.5V 以上なら LED および LED ネットワーク として識別します。また、二端子と三端子の二色 LED を識別する ことができます。

ダイオードの分析と同様に、ピン配

列、順方向電圧降下とテスト電流が

表示されます。 左の図は、LED のカソードが緑のテ

スト・クリップに、アノードが青に

それぞれ接続されていることを示し

ています。 左の図は、順方向電圧降下 1.92V の

緑色 LED の例です。 測定時のテスト電流は、順方向電圧

降下に依存しています。この例では、

3.28mA です。

青色 LED や白色 LED の中には、DCA55 では識別できないよう

な高い順方向電圧を必要とするものがあります。

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二色 LED の測定

二色 LED は、自動的に識別されます。三端子の LED の場合 には、三本のテスト・クリップをすべて接続します。極性はあ りませんから、どのように接続しても構いません。 二端子の二色 LED の場合には、LED のボディー内部で二つの素子が逆並列

に接続されています。三端子の二色 LED は、アノードコモンあるいはカソー

ドコモンで構成されています。

二端子の LED を識別し

た場合の表示です。 三端子の LED を識別し

た場合の表示です。 LED ごとに各項目が表示されます。 (ダイオードネットワークの測定と 同じような表示方式です) まず、一番目の LED(D1)の各項目が

表示されます。右の表示例では、二

つの LED のうちの一つの LED(D1)のピン配置を意味しています。 二色 LED を構成する LED の発光色

によって、順方向電圧降下の電圧値

が異なります。したがって、デバイ

ス内の LED の各発光色とピン配列

を類推することができます。順方向

電圧降下の低いほうから列挙すると、

赤色→黄色→緑色→青色の順となり

ます。

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バイポーラ接合型トランジスタ(BJT)の測定

バイポーラ接合型トランジスタは、とてもポピュラーな

トランジスタです。しかし、ダーリントン、保護ダイオ

ード内蔵、シャント抵抗内蔵、またはそれらの組み合わ

せなど、多種多様です。DCA55 はそれらを自動的に識別

することができます。 バイポーラ接合型トランジスタは、

NPN と PNP に大別することができま

す。右の例は、シリコン PNP トランジ

スタを測定したときに表示されます。 ベース-エミッタ間電圧降下の実測値

が 0.4V より低い場合には、ゲルマニウ

ムトランジスタと識別します。左の例

は、ゲルマニウム PNP トランジスタを

測定したときに表示されます。 測定対象デバイスがダー

リントントランジスタ

(二つの BJT で構成され

ている)の場合には、右の

ように表示されます。

DCA55 は下記に示す値によって、測定対象のトランジスタをダ

ーリントン型として識別します。 1) ベース-エミッタ・シャント抵抗成分 60kΩ以上/

ベース-エミッタ間電圧降下 1.00V 以上のトランジスタ 2) ベース-エミッタ・シャント抵抗成分 60kΩ以下/

ベース-エミッタ間電圧降下 0.80V 以上のトランジスタ ベース-エミッタ間電圧降下の詳細については、16 ページを参照

ください。

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scroll-off ボタンを押すと、トランジスタのピン配列が表示されます。 右の例では、トランジスタのベースが

赤色のテスト・クリップ、コレクタが

緑色、エミッタが青色にそれぞれ接続

されていることを示しています。 特殊なトランジスタの測定 BJT のなかには、追加的な機能を内蔵したトランジスタがあります。DCA55はそれらの特別な機能を識別することができます。この場合、トランジスタ

のピン配列が表示された後に scroll-off ボタンを押すことによって、その機能

が表示されます。特別な機能が識別されなければ、トランジスタの電流増幅

率が表示されます。 CRT 偏向コイル駆動用トランジスタ

や、電力用ダーリントントランジスタ

などには、パッケージ内に保護ダイオ

ードが内蔵されているものがあります。 その接続は、コレクタ-エミッタ間にあります。

保護ダイオードは、通常コレクタ-エミッタ間に逆バイ

アスがかかるように接続されています。

NPN トランジスタでは、ダイオードのアノードがトランジスタの

エミッタに接続されています。PNP トランジスタでは、ダイオー

ドのアノードがトランジスタのコレクタに接続されています。

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さらに、多くのダーリントン型やダーリントンでないトランジスタでも、デ

バイスのベース-エミッタ間をつなぐような構成でシャント抵抗が内蔵されて

います。

DCA55 は、分析時に 60kΩ以下の抵抗成分を実

測すると、シャント抵抗を内蔵したトランジスタ

であると識別します。典型的なダーリントントラ

ンジスタの場合、内部抵抗はベース-エミッタ間

に接続されています。 ベース-エミッタ間に抵抗成分のシャン

トがあると識別した場合、右のような表

示をします。 さらに、電流増幅率(HFE)の測定確度が

シャント抵抗の影響を受ける可能性が

あることを、右のような表示でお知らせ

します。

ベース-エミッタ間にシャント抵抗接続があると、DCA55 が電流増

幅率(HFE)測定をするとき、テスト電流が減少してしまいます。こ

れは、ベース電流がシャント抵抗を通じてエミッタ側に分流されこ

とによります。以上の点を十分にご留意ください。しかしながら、

類似タイプのトランジスタの比較や増幅率ごとの分類などに際し

ては、DCA55 が表示する増幅率の数値は役に立ちます。

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故障または増幅率が著しく低いトランジスタの測定 著しく電流増幅率が低く、動作が良好でないト

ランジスタが測定対象デバイスであった場合、

DCA55 は一つまたは複数のダイオード接合と

識別します。これは、NPN トランジスタの構

造がアノードコモンのダイオード構成と類似

していることによります。PNP トランジスタ の場合には、カソードコモンの様相を呈

します。コモン接続点は、ベース端子と

なります。DCA55 が使用するテスト電

流で測ることができないような著しく

低い電流増幅率のトランジスタの場合

には、これは正常な識別結果です。

コレクタ-エミッタ間に接続された保護ダイオードなど、パッケージ

内部の等価的なダイオード構造を正確に弁別することはできません。

これは、複数の pn 接合を個別に識別できないことによります。 測定対象デバイスを分析するにあたって、何のてがかりも得られないような

場合には、DCA55 は下のような表示をします。

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電流増幅率(HFE)の測定 直流(DC)電流増幅率(HFE)は、「特殊なトランジスタ」 の項目のあとに表示されます。 直流(DC)電流増幅率は、コレクタ電流

とベース電流の比を意味します。

DCA55 は、コレクタ電流 2.50mA、

コレクタ-エミッタ間電圧 2V~3V の

条件で HFEを測定します。トランジス

タの電流増幅率は、コレクタ電流、コ

レクタ電圧、温度を考慮する必要があ

ります。

表示された電流増幅値の数値は、コレ

クタ電流/電圧が異なる条件では変動

することがあります。これは、電力デ

バイスに顕著な傾向があります。

ダーリントントランジスタは電流増幅

率がとても高く、数値は大きくばらつ

きます。 さらに同一タイプのトランジスタでも、電流増幅率の値は広い範囲にわたっ

ているのが通例です。このためトランジスタ回路は、電流増幅率の絶対値に

依存しないような使い方で設計されます。 表示された電流増幅率の数値は、同一タイプのトランジスタの比較や、電流

増幅率が同じデバイスの選別、不良品の抽出などの際には、大いに利用でき

ます。

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ベース-エミッタ間電圧降下の測定 ベース-エミッタ接合の直流(DC)特性が表示

されます。ベース-エミッタ間順方向電圧降

下と、この測定に使用したベース電流が表示

されます。

ベース-エミッタ間電圧降下は、測定

対象のトランジスタがシリコンなの

かゲルマニウムなのかを識別するた

めに測定します。ゲルマニウムトラン

ジスタは、ベース-エミッタ間電圧が

0.2V と低く、シリコントランジスタ は 0.7V 程度となります。また、ダーリントントランジスタは、約 1.2V です。

これは、二直列のベース-エミッタ間接合を測定することになるからです。

注: DCA55 は、電流増幅率測定の際に用いたベース電流とは異なる電

流でベース-エミッタ電圧降下の測定をしています。この点をご留意く

ださい。

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コレクタ漏れ電流の測定 ベース電流がゼロの時に流れてしまうコレクタ電流を、 漏れ電流といいます。 現在のトランジスタの漏れ電流は非常にすくなく、 コレクタ-エミッタ間に高い電圧が印加されていても、 1μA 以下です。

旧来のゲルマニウムタイプのトランジ

スタは、コレクタ電流の漏れが顕著で

す。特に高温条件下では、増大します。 シリコンタイプのトランジスタの場合、不良品でない限り、漏れ電流の測定

結果は 0.00mA にきわめて近い値が表示されます。

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デジタル・トランジスタの測定 デジタル・トランジスタは、正確にはデジタルデバイス ではありません。リニア領域でも、on/off のスイッチング 領域でも動作します。電流制限抵抗を使わずに デジタル出力に直接つなげることから、デジタル・ トランジスタと呼ばれています。

表面実装パッケージが主流で、多くの電気製品に使用さ

れています。

ベース抵抗とベース-エミッタ間の

シャント抵抗がデバイス内部でトラ

ンジスタに接続されているので、利

得(HFE)を測定することはできませ

ん。デバイスの極性(NPN/PNP)と、

ピン配列が表示されます。

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エンハンスメント型 MOSFET の測定 MOSFET という名称は(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor: 金属酸化膜半導体電界効果トランジス

タ)の略称です。バイポーラトランジスタと同様に、MOSFETも N チャネルと P チャネルの二種類のタイプがあります。

現在の MOSFET はエンハンスメント型で、N チャネルの場 合にはゲート-ソース間のバイアス電圧はポジティブ(正)となります。ディプ

レションタイプのMOSFETについては、

次の項で説明します。 MOSFET は、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor: ゲート絶縁型

電界効果トランジスタ)として知られています。この呼称は、デバイスの主要

な特性を表現しています。つまり、絶縁されたゲート領域によって、ゲート-ソース間電圧がポジティブ(正)であろうとネガティブ(負)であろうと、ゲート

電流はきわめて微小なものとなります(ゲート-ソース間最大電圧は、通常±

20V 程度です)。 計測結果の第一項目として、DAC55 が

識別したMOSFETのタイプが表示され

ます。 scroll-off ボタンを押すと、

MOSFET のピン配列が表示されます。

ゲート、ソース、ドレインの各端子が判

別されます。 その後に、MOFSFET の主要な特性の

一つである、ゲート-ソース間スレッシ

ョルド(しきい値)電圧が表示されます。

これは、ソース-ドレイン間に電流が流

れ始める電圧のことです。 DAC55 は、ドレイン-ソース間に流れる電流が 2.50mA に達したときの電圧

を測定します。

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ディプレション型 MOSFET の測定 ディプレション型 MOSFET は、ゲート端子と他の二つの

端子が絶縁されているという点を除いて、従来の接合型

FET(JFET)と類似しています。このデバイスの入力抵抗

は、ゲート-ソース間電圧の正負にかかわらず、通常 1000MΩ以上です。

ディプレション型デバイスは、ドレイン-ソース電流を制御するゲート-ソース電

圧によって特性が決まります。 現在のディプレション型デバイスは、一般的に N チャネルのみが用いられて

います。このデバイスは、ゲート-ソース間がゼロ・ボルトでもドレイン-ソー

ス間に電流が流れます。このデバイスをターンオフさせるには、ゲート電圧

をソース電圧よりも低く(約マイナス 10V 程度に)しなければなりません。 scroll-off ボタンを押すと、 まずピン配列が表示されます。

DCA55 User Guide -J-

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接合型 MOSFET の測定 接合型 FET は、一般的な電界効果トランジスタです。 ゲート-ソース間の印加電圧によって、ドレイン-ソース間に 流れる電流を制御します。N チャネル JFET は、ソースに 対してゲート電圧はネガティブ(負)です。ゲート電圧が負に なればなるほど、ドレイン-ソース間の電流は流れにくくなります。 ディプレション型 FET とは異なり、JFET にはゲート絶縁層がありません。

ゲート-ソース間の入力抵抗は 100MΩ

以上と高く、ゲート-ソース間、または

ゲート-ドレイン間の半導体接合が順

方向にバイアスされるとゲート電流が 流れます。N チャネルの場合には、ゲート電圧が、ドレインまたはソース電

圧より 0.6V 以上高くなると、ドレイン-ソース間に電流がながれます。P チャ

ネルの場合には、0.6V より低くなるとドレイン-ソース間に電流がながれます。

JFET の内部構造は、ゲート端子を中

心として対称(シンメトリー)となって

いるため、DCA55 はドレインとソース

を区別することができません。したが

って、JFET のタイプと、ゲート端子

だけが識別されます。

DCA55 User Guide -J-

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サイリスタ(SCR)とトライアックの測定 DCA55 は、小電力用高感度サイリスタ(SCR: シリ

コン制御型整流器)とトライアックの分析および測

定のために、ゲートに対して 5mA の電流をながし、

これを保持します。

サイリスタの端子は、アノード、カソー

ド、ゲートの三種類です。テスト対象サ

イリスタのピン配列は、scroll-off ボタ

ンが押されるまで表示され続けます。

トライアックの端子は、MT1(MT とは

主要端子のことを意味します)、MT2、ゲートの三種類です。MT1 は、ゲート

電流が流れ込む/流れ出す端子です。

1. トライアックの動作には、4 つのモードがあります。サイリスタ

の動作は、一つしかありません。動作モード 1(正のゲート電流、正

のアノード電流)のみです。交流(AC)制御などでは、トライアックは

動作モード 3 またはモード 4 でも使用されます。 2. DCA55 のテスト電流は 5mA 以下です。これは、測定対象デバイ

スにダメージを与えないようにするためです。サイリスタやトライ

アックによっては、少ない電流では動作しないものがあり、その種

別を判別できないことがあります。また測定対象トライアックが動

作モード 1 トリガテストのみに反応した場合、サイリスタとして識

別される可能性があります。この点に、留意してください。詳細に

ついては技術仕様の項を参照してください。

DCA55 User Guide -J-

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DCA55 のお手入れ方法

このユーザー・ガイドでご説明した範囲内でお使いいただければ、DCA55 は

長くお使いいただけるでしょう。高温の場所での使用や保管、強い衝撃、水濡

れなどに注意してください。また、電池の液漏れによる不具合のリスクをさけ

るため、12 ヶ月ごとに交換してください。 電池電圧の低下をお知らせする左の

ような警告表示が出た場合、ただち

に電池を交換してください。電池電

圧が低下しても、ある程度は動作し

続けますが、測定結果などの確度は

保証されません。

電池の種類:品質のよい 12V アルカリ電池を使ってください。適合する電池

は、23A、V23A、GP23A、MN21 などです。電池サイズは直径 10 ミリ・長

さ 28 ミリです。 電池交換方法:電池を交換するために、裏面にある 3 本のネジを外してくだ

さい。そして裏ブタを開けます。古い電池をホルダー部から取り外し、新しい

電池の極性を確認してからセットしてください。その後、裏ブタを元のように

閉めてください。このときに、ネジを強く締めすぎないようご注意ください。

また電池交換の際には、基板にある他の部品に損傷を与えないよう慎重に取り

扱ってください。

DCA55 User Guide -J-

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セルフテスト DCA55 は起動ごとに、内部機能をセルフテストします。電池電圧、デバイス

テスト用電圧・電流、アンプ、アナログ-デジタル・コンバータ、テストリー

ド入力マルチプレクサ部などの内部機能が、自動的にチェックされます。これ

らの機能テストでいずれかが異常な場合には、エラー・メッセージが表示され、

自動的に電源がオフになります。 測定中に異常な電圧がテスト·ク

リップにかかったときなど、一時

的なエラーが出る場合がありま

す。そのような場合、テスト・ク

リッ プに なに も つな がず 、

DCA55 を再起動してください。

“*Low Battery*”が表示されている状態では、一部の内部テストを

実行することができません。したがって、“*Low Battery*”メッセ

ージが表示されたら、なるべく早く電池を交換してください。

DCA55 User Guide -J-

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付録 1 ― 技術仕様

温度条件 25℃での仕様です(動作温度範囲の項目は除く)。 注: 1. 3 本のテスト・クリップうちどの組み合わせでも 2. コレクタ電流 2.50mA 利得 2,000 以上は、目安としての数値表示となります 3. ベース-エミッタ間抵抗 60kΩ以上の場合 4. ベース-エミッタ間抵抗 60kΩ以下の場合 5. ドレイン-ソース間電流 2.50mA 6. コレクタ-エミッタ間電圧 5.0V 7. サイリスタはモード 1、トライアックはモード 1・モード 3 8. シャント抵抗なき BJT 追補: S/C ショート・サーキット(閉回路) O/C オープン・サーキット(開回路)

DCA55 User Guide -J-

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日本語ユーザー・ガイドについて

付録 2 ― 廃棄について 本製品を廃棄する場合には、お住まいになっている地域の条例などに準拠した

方法で処分してください。 このたびは、Atlas DCA (Model DCA55)をお買い求めいただき、誠にありが

とうございます。 この日本語ユーザー・ガイドは、DCA55 を活用していただくことを目的に、

参考資料として秋月電子通商が翻訳いたしました。 製品に添付されている英文のユーザー・ガイドを基に作成していますが、部品

名などは、日本で一般的に用いられている技術用語を使っています。 オリジナルの英語(単語)の表記と異なる場合がありますので、ご了承ください。 例として: [ 英単語 ] [ 日本語 ] capacitor(s) コンデンサ resistor(s) 抵抗器 component(s) デバイス、測定対象デバイス、コンポーネント

この参考資料に関するお問い合わせは、秋月電子通商までお願いいたします。

2012 年 12 月 株式会社秋月電子通商 AKIZUKI DENSHI TSUSHO CO.,LTD.

http://akizukidenshi.com

(ref : Atlas DAC User Guide April 2012-Rev 8)