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概要 1.主題設定の理由 (1)今日的課題 文部科学省は、通常の学級における特別な教育的 支援を必要とする児童(以下、この児童を「要支援 児童」という)について、以下の2点の実態()課題()を挙げている。 通級による指導を受けている者が平成 5 年度の制 度開始以降増加していている こと。 LDADHD、高機能自閉症により学習や生活の 面で要支援児童 は、%程度の割合で通常の学 級に在籍している可能性を示している こと。 LDADHD、高機能自閉症の児童生徒について は、(中略)学習や生活上で困難を抱える子どもの 早期発見、専門家等との連携による適切な指導体 制の確立等の十分な反応が図りきれない こと。 △特殊教育の対象とされる視覚障害、聴覚障害、知 的障害等の児童生徒と分けて考えることなく、人ひとりの教育的ニーズに応じて特別の教育的 支援を行う視点に立ち、教育的対応が必要 なこと。 (2)学級の実態 ・特別な支援を要する児童が2割弱在籍している。 ・学年学級の単学級のため構成員に変化がない。 ・素直であるが、進んで取り組むことに弱さがある。 ・全体的に相手を意識して活動することが難しい。 ・よりよい生活を望むが、自ら改善する力が弱い。 (3)研究主題 特別な教育的支援を要する児童と ともに高まる学級経営の在り方 ~Q-U を活用した学級集団と個の分析をもとにして~ 2.研究仮説 教師が学級の一人一人の学級に対する満足度や学 校生活に対する意欲を適切に知り、個に対応する指 導計画と指導の重点を明確にして指導・助言に当た ることや、児童が互いを理解する場や共に高まるた めの話し合いの場を設定し解決にむけての取り組み の方向を共有できるようにすることができれば、ど の子も満足度や意欲を高めることができる。 3.研究内容 (1)Q-U をもとにした集団と個の理解と指導計画づくり ①集団実態と個の満足度・意欲にかかわる分析 ②個が付ける力と関わって付ける力の成長の見通し ③「関わり」を深めていく指導計画づくり (2)活動の見通しや高まりがわかる教室環境づくり ①学級目標の達成の過程が見える掲示の工夫 ②具体的な活動内容や個のよさをつなぐ掲示づくり ③計画や振り返りがつながるカードの工夫 (3)互いに理解しあえる指導・助言の在り方 ①互いに理解を深めることができる指導・助言 ②学級が高まろうとする力を伸ばす指導・助言 特別な教育的支援を要する児童とともに高まる学級経営の在り方 Q-U を活用した学級集団と個の分析をもとにして~ 大垣市立綾里小学校 教諭 三 輪 章 人 通常学級特別な教育的支援を必要とする児童が、約6%在籍しているといわれている。本年度、担 任した学級には、約 18%在籍している。また、地区に一幼保園と一小学校のため、子どもたちの関係は 閉鎖的で固定化しがちである。また、特別な教育的支援を要する児童も、その他の児童も、かかわりが 希薄であり、学級経営を進めていくには、難しい学級であると感じた。そこで、Q-U(学校生活を楽しく するためのアンケート)の分析から児童の実態をつかみ、今までの経験値で行っている学級経営に客観 的なデータによる裏付けや方向性をもって個に応じた働きかけをしていくことにより、特別な教育的な 支援を要する児童その他の児童も学級で意欲的に活動できると考えた。 また、児童が本来もっている向上心を基盤にしたよりよい自分づくりをしようとする力仲間とかか わり高まり合おうとする力を育てていくために、指導の場や付けたい力を明確にして、適切に指導・助 にあたることが、個の伸長を図るとともに、さらには集団を高めていくと考え研究実践した。

Q-U を活用した学級集団と個の分析をもとにして~ 大垣市立綾里 … · ~q-u を活用した学級集団と個の分析をもとにして~ 大垣市立綾里小学校

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Page 1: Q-U を活用した学級集団と個の分析をもとにして~ 大垣市立綾里 … · ~q-u を活用した学級集団と個の分析をもとにして~ 大垣市立綾里小学校

概要

1.主題設定の理由 (1)今日的課題

文部科学省は、通常の学級における特別な教育的

支援を必要とする児童(以下、この児童を「要支援

児童」という)について、以下の2点の実態(○)と課題(△)を挙げている。 ○通級による指導を受けている者が平成 5年度の制

度開始以降増加していていること。 ○LD、ADHD、高機能自閉症により学習や生活の

面で要支援児童は、約6%程度の割合で通常の学

級に在籍している可能性を示していること。 △LD、ADHD、高機能自閉症の児童生徒について

は、(中略)学習や生活上で困難を抱える子どもの

早期発見、専門家等との連携による適切な指導体

制の確立等の十分な反応が図りきれないこと。 △特殊教育の対象とされる視覚障害、聴覚障害、知

的障害等の児童生徒と分けて考えることなく、一

人ひとりの教育的ニーズに応じて特別の教育的

支援を行う視点に立ち、教育的対応が必要なこと。 (2)学級の実態

・特別な支援を要する児童が2割弱在籍している。 ・学年1学級の単学級のため構成員に変化がない。 ・素直であるが、進んで取り組むことに弱さがある。 ・全体的に相手を意識して活動することが難しい。 ・よりよい生活を望むが、自ら改善する力が弱い。

(3)研究主題

特別な教育的支援を要する児童と

ともに高まる学級経営の在り方

~Q-U を活用した学級集団と個の分析をもとにして~

2.研究仮説

教師が学級の一人一人の学級に対する満足度や学

校生活に対する意欲を適切に知り、個に対応する指

導計画と指導の重点を明確にして指導・助言に当た

ることや、児童が互いを理解する場や共に高まるた

めの話し合いの場を設定し解決にむけての取り組み

の方向を共有できるようにすることができれば、ど

の子も満足度や意欲を高めることができる。

3.研究内容

(1)Q-U をもとにした集団と個の理解と指導計画づくり

①集団実態と個の満足度・意欲にかかわる分析

②個が付ける力と関わって付ける力の成長の見通し

③「関わり」を深めていく指導計画づくり

(2)活動の見通しや高まりがわかる教室環境づくり

①学級目標の達成の過程が見える掲示の工夫

②具体的な活動内容や個のよさをつなぐ掲示づくり

③計画や振り返りがつながるカードの工夫

(3)互いに理解しあえる指導・助言の在り方

①互いに理解を深めることができる指導・助言

②学級が高まろうとする力を伸ばす指導・助言

特別な教育的支援を要する児童とともに高まる学級経営の在り方 ~Q-U を活用した学級集団と個の分析をもとにして~

大垣市立綾里小学校 教諭 三 輪 章 人

通常学級に特別な教育的支援を必要とする児童が、約6%在籍しているといわれている。本年度、担

任した学級には、約 18%在籍している。また、地区に一幼保園と一小学校のため、子どもたちの関係は

閉鎖的で固定化しがちである。また、特別な教育的支援を要する児童も、その他の児童も、かかわりが

希薄であり、学級経営を進めていくには、難しい学級であると感じた。そこで、Q-U(学校生活を楽しく

するためのアンケート)の分析から児童の実態をつかみ、今までの経験値で行っている学級経営に客観

的なデータによる裏付けや方向性をもって個に応じた働きかけをしていくことにより、特別な教育的な

支援を要する児童もその他の児童も学級で意欲的に活動できると考えた。

また、児童が本来もっている向上心を基盤にしたよりよい自分づくりをしようとする力と仲間とかか

わり高まり合おうとする力を育てていくために、指導の場や付けたい力を明確にして、適切に指導・助

言にあたることが、個の伸長を図るとともに、さらには集団を高めていくと考え研究実践した。

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4.研究実践

(1)Q-U をもとにした集団と個の理解と指導計画づくり

①集団実態と個の満足度・意欲にかかわる分析

図表1 Q-U 結果のまとめ(学級満足度・学校生活意欲)

学級生活満足群 学級内に自分の居場所があり、学

校生活を意欲的に送っている児童 非 承 認 群 いじめや悪ふざけを受けてはい

ないが、学級内で認められることが少ない児童 侵害行為認知群 いじめや悪ふざけを受けている

か、他の児童とトラブルがある可能性の高い児童 学級生活不満足群 耐えられないいじめや悪ふざけ

を受けているか、非常に不安定の傾向が強い児童、

要支援群の児童は、さらにその傾向が強い。

【プロット(図表1の・)からの理解】

・拡散型。学級に対する児童の感情が違っている。 ・子ども同士のかかわりが希薄。学級内共通の行動

規範が崩れかかっている。 【コンサルテーション】(大垣市スーパーバイザー:中谷恵子先生) ・特に承認点の低い児童の特徴を明らかにする。 ・一貫性をもった教師の対応・学級ルールの確立 ・授業や係活動等で必然的なグループをつくり、そ

の中で互いの認め合い活動を仕組む。

【付けたい力◎・高めたい意識☆】

1段階◎責任をもって活動をやりぬく力

☆自分にもできるという自信

2段階◎仲間のよさを助言を取り入れ活動する力

☆仲間への憧れ

3段階◎相手を意識して、よりよい活動をうみだす力

☆仲間の頑張りを認め、さらに高まろうとする意識 図表2 要支援児童のプロフィール(学校生活意欲(Q-U)・担任の見取り・目指す姿等)

○C

○D

○E

○A

【担任が見取った学級の姿】

・教師の指示を素直に聞くことができる。 ・自分(たち)さえよければよいという活動が多い。

・孤立傾向にある児童がいる。 ・よりよい活動を工夫する意欲が低い。

○F

○B

要支援児童のプロフィール (Q-U より 学校生活意欲プロフィール ①学級満足度尺度 ②学校生活意欲尺度)

障がい 入級・通級 対象 学校生活意欲プロフィール ①学級満足度尺度 ②学校生活意欲尺度 ○見取ったよい姿 ☆目指す姿・指導の方向性

○A ADHD 現状留意

①侵害行為認知群

②「学習意欲」が若干低い。

○関心の高いことには進んで参加できる。

☆次に何をしたらよいか見通しをもって、計

画的に行動することができる。

○B

不特定

高機能

自閉症

特 別 支 援

学 級 入 級

拒否

①不満足群

②「友達関係」「学習意欲」「学

級の雰囲気」の全てが低い。

○自分の考えをもって話すことができる。

☆一人できるかどうかを正しく判断し、助言

を受け入れ、感謝しながら活動ができる。

○C 知的な

遅れ

特 別 支 援

学 級 入 級

拒否

①満足群

②「学級の雰囲気」が低い。

○どの活動にも意欲が高い。

☆仲間の支援を受け入れ、感謝しながら活動

できる。

○D ADHD 現状留意

①不満足群

②「学級の雰囲気」が若干低

い。

○どの活動にも積極的に参加できる。

☆仲間のよさを素直に認め、自分に取り入れ

てよりよい活動をうみだすことができる。

○E 広汎性

発達障害 現状留意

①非承認群

②「学習意欲」が低い。

○仲間と協力して活動できる。

☆仲間のよさを自分に取り入れて、何ごとも

ていねいに活動することができる。

○F 広汎性

発達障害 通級

①不満足群

②「友達関係」「学習意欲」「学

級の雰囲気」の全てが低い。

○仲間と同一行動をとることができる。

☆自分のよさに気付いたり仲間のよさを取

り入れたりして、活動することができる。

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②個が付ける力と関わって付ける力の成長の見通し

図表3 子どもの向上心と付けたい力と指導・助言のかかわり

子どもたちの誰もがよりよい人間関係をつくり

たい、行事で活躍したいという願いを向上心として、

次のように個と学級の仲間とのかかわりや学級全体

の成長の過程をとらえた。〈図表3参照〉

子どもたちは、もっと認められる自分になりたい、

ほめられたいと思い努力をしようと願う向上心をも

っている。その向上心は「よりよい自分づくりをし

ようとする力」と、「仲間とかかわり、高まり合おう

とする力」であると考えた。その力を発揮する中で、

「責任をもって、活動をやりぬく力」「仲間のよさや

助言を取り入れ活動する力」「相手・対象を意識し、

よりよい活動をうみだす力」を付けていくと考えた。

また、責任をもってやりぬくことで「自分にもで

きる」という自信をもつことができ、自信がさらに

高みを目指す意欲をもち、仲間の言動に「憧れる」

ことで、仲間のよさや助言を取り入れることができ

る。それが、よりよい人間関係づくりの礎になると

考えた。そして、努力を重ねる仲間のがんばりを認

めて、ライバルとしてよりよくなろうと努力をする

ことがサイクル化すると、高まり合う仲間関係がで

き、高まり続ける集団へと育っていくと考えた。

その営みが、努力して一つ一つの壁を乗り越えて

いく自分に自信と誇りをもち、共に高まる仲間集団、

学級の凝集力を高めることになると考えた。

③「関わり」を深めていく指導計画づくり

図表4 付けたい力・仲間意識の変容と行事のかかわり(○F児版)

学級の子どもたちが、6年生の年間行事と学級目

標を達成し、この1年間、この学級で努力を重ね過

ごしてきたことに自信と誇りをもって、卒業のとき

を迎えることが大切だと考えている。そこで、付け

たい力と仲間意識の変容、1年間の行事の見通しと、

その時々の主なねらいを明確にして、年間指導計画

を立てた。〈図表4〉

○F児については、以下のように考えた。

【○F児のよさ(○)と課題(△)】

○計画を立てたことはやりぬこうと努力する。

○計画した順序を守って、行動することができる。

○一指示一行動なら、スムーズに活動できる。

△自分の意見をはっきり話すことが難しい。

△とっさの判断が難しく、活動が停滞することが多

い。

【○F児の重点】〈図表4 「主なねらい」の赤矢印〉

・異学年活動や学級班活動で、交流の範囲を広げる。

・歌声づくりで、表現することを意欲化する。

・掃除や愛校活動で貢献する喜びをもつ。

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(2)活動の見通しや高まりがわかる教室環境づくり

図表5 学級目標達成へ向けての営みと力のかかわり

①� 学級目標の達成の過程が見える掲示の工夫

個と仲間とのかかわりは、上記の図表5のように、

スパイラルに絡まっていると考える。だからこそ、

できる限り単純化して、子どもたちが見通しをもっ

たり、行事がつながっていることを示したりする掲

示が重要であると考え、以下のように工夫した。

②具体的な活動内容や個のよさをつなぐ掲示づくり

Q-U の結果を見てみると、学級の32%が非承認群

(全国平均18%)にいる。また、学級生活不満足群

(全国平均18%)も大半が、非承認群によっている

ことを考えると、自分が認められる場を設定するこ

とが、よりよい学級のリレーションをつくることに

なると考えた。

自分の向上心を明確にし、努力の足跡を積み重ね

ていく場とよさを互いに認め合う場を掲示に位置付

けることにした。

○F児の書いた「よさカード」を紹介する。仲間と

共に活動した行事も、4月は自分との関わりを意識

できず人事のようにとらえていた。しかし、12月に

は自分の弱さを素直に認め、自信をもって演奏でき

るようになったことに喜びを感じ、支えてくれた仲

間に感謝を示すことができるようになった。

月の重点 行事やその行事で付けたい力を、月の初

めに掲示する。

道徳掲示 学期ごとに大切にしたい道徳の重点を

授業後に掲示する。

学級目標 学級目標の3つの柱を月ごとに重点を

決め、色分けをして月初めに掲示する。

取組の証 主な行事を通して感じたことを代表児

童の言葉、写真、教師の価値付け、方向

付けを朱書きで行い、掲示する。

自 画 像 自分自身を掲示に残すことで、学級に

いる存在感を示す。

月の重点 めあては「…になるために、~をがん

ばる」という文型を示し、「…」に目

指す姿、「~」にはその姿に迫るため

に行う重点活動を具体的に書くよう

にしている。

よさカード 月の重点を視点として、努力したよさ

を認められる場とする。

○○さんへ 4月 20 日

班の子をいろいろまと

めたり、1 年生の子には

優しく教えたりしていま

した。結構いろいろ気の

つかい方が上手にできて

いてよかったです。

△△さんへ 12 月 2 日

綾っ子フェスティバ

ルでお囃子のリーダー

で、ぼくはあまりリコー

ダーができていなかっ

たけど、リーダーがサポ

ートをしてくれました。

ありがとう。

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③計画や振り返りがつながるカードの工夫

図表6 掲示や学習プリントの構想図

学習プリントや掲示などで、自分や学級の高まり

が分かり、取組ごとのつながりがもてるようにした。

以下のようにカードに工夫をした。〈図表7参照〉

①3つの場の設定

・自分のよさと課題を明確にする場

・仲間のよさ(手本にしたい姿)を明確にする場

・達成した姿から一般化する場

②見方の統一化

・掲示と同じように取組ごとに高まる様子がわかる

ように下から上に記入していくようにした。

この工夫により、以下のような変化が現れた。

【要支援児の変容】

○仲間のよさを見つける視野が広がってきた。

○自分の課題を明確にもつことができ、達成した充

実感を味わえるようになってきた。

○行事でできたことを日常生活につなぐ意識が芽生

えてきた。

図表7 D児のジュニア音楽会・大垣市小・中学校音楽会の取組プリント抜粋

図表7のような個人カードは、下の写真のように

廊下に常時掲示した。

【学級の変容】

○取り組む姿に積極性が出てきた。

○意図的に具体的に要支援児のよい姿を価値付ける

ことで、偏った見方がなくなってきている。

○仲間や教師から認められることを励みに、仲間の

よい姿を積極的に取り入れるようになってきた。

綾っ子フェスティバル(学習発表会)本番の発表を見て

くださった4年生時担任と学校長の言葉を紹介する。

ソーランを踊る姿を見て、涙が出ました。一人一人が全力を出して、心

をあわせると素晴らしい踊りや演奏ができるすばらしさを感じました。き

っとグループで家でたくさん練習したのでしょうね。綾里の最高学年とし

て、よく成長しましたね。すてきな6年生の姿を見せてくれてありがとう。

皆さんがどんな姿で卒業していくのか、ますます楽しみです。これからの

成長を期待しています。(4年生時担任)

「さすが6年生」というすばらしい発表でした。6年生のみなさんの気

迫が体育館中に伝わり、全員が目を凝らして、耳を澄まして6年生の発表

にひきつけられていましたよ。私たちの住んでいる綾里に残る代表的な2

つの祭りを題材にして、皆さんが曲作りをしたことのレベルの高さ、リコ

ーダー演奏の美しさ、太鼓のリズムのよさと響きなど、自信をもって堂々

と発表しているひとりひとりの姿に感動しました。しっかりと目に焼きつ

いています。耳の奥に残っています。(学校長)

(3)互いに理解しあえる指導・助言の在り方

①互いに理解を深めることができる指導・助言

子どもたち同士が障がいを含めて互いに理解し合

うためには、以下の条件が必要だと考えた。

㋐要支援児の実態の把握

㋑要支援児について、学級の児童との生活にかかわ

ることを学級全体で共有すること

㋒どの子もよりよく育てていこうとすることへの保

護者の理解

取り組み始めの時点でのよさと課題

達成したこと、日常に生かすこと

できたこと

よさ

次のステップのめあて

修正しためあて

できたこと

よさ

課題・取り入れ

たいよさ

課題・取り入れ

たいよさ

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㋐について、教師は学校生活の様子をもとに仲間

関係にかかわる課題を判断している。しかし、それ

は教師の主観的な見方によるものであり、個のもっ

ている力とずれることがある。客観的な診断や検査

が、その個が学級で仲間関係の困難さに直面した時

の適切な指導・助言ができることへとつながると考

え、該当児童の保護者に提案した。

本年度は、要支援児6人が、WISC-Ⅲを受けた。

検査を実施できたのは、保護者自身の願いと、担任

や学校全体の「㋒どの子もよりよく育てていこうと

すること」に対して「保護者の理解」が、得られた

からだと考えている。

保護者と懇談を重ねていく中で「障がい」そのも

のは他の児童に伝えなくても、「~しにくさ」を一人

ひとりがそれぞれもつ特徴的な性格として、他の児

童の理解を得られるように話すことには同意してい

ただいた。そこで、「㋑要支援児について、学級の児

童との生活にかかわることを学級全体で共有するこ

と」の3つの条件を満たすことができた。

②学級が高まろうとする力を伸ばす指導・助言

学級の実態として、教師の指示は聞くことができ

るが、自分たちでより良い活動を見出すことに弱さ

があった。例えば、6年生の段階でも、図画工作の

授業で絵画に取り組んだとき、下書きが終わると何

も言わずに座って待っている。机間指導をしている

教師に「終わりました」とアピールすることなく、

いつまでも待っている児童が、学級の90%以上いた。

広汎性発達障害やADHDなどの児童が多くいた

ため、「一指示一行動」の原則があったと考える。し

かし、6年生という立場や発達段階で他の児童まで

もが、この状態では発展的な活動は生まれないと考

えた。子どもたちは日常生活や行事にむけての取組

と授業の両輪があってこそ、個が高まり、学級が高

まっていくことを考えると、授業のユニバーサル化

も必要となってくる。

まず、研究実践(1)の指導計画をもとに、特別活

動領域での実践を紹介する。

子どもたちが自分たちの力で解決できる内容を

決めだし、教師が下準備や子どものよさをもとにし

た方向付け、価値付け、位置付けを行いながら、子

どもたち自身でやりぬくことができるように行事を

仕組むこととした。

【○F児の成長と変容、指導・助言】

○F児のプロフィール

・広汎性発達障害(通級で個別指導を受けている)

WISC-Ⅲ結果(泓弘子先生分析:よさ○課題△)より

○一人で物語をつくって何時間でも話せる。

・会話の始めを「ぼくは…」にする

○詳しく指示をすればできる

・二者択一ならできる

△話すことは慎重

△言葉でとらえることが苦手

課題に対する教師の手立て

・何をどんな順序で話したらよいかを助言する

・話す前に発言を予告したり内容を確認したりする

・図や絵、身体を用いて説明して活動内容を理解で

きるようにする

4月 綾っ子ふるさとめぐり

《ねらい》担当す

る下学年の子とオ

リエンテーリング

や遊びを楽しむこ

とができる。

《事前の指導》

事前の準備の段階で下学年(特に1年生)が困りそう

なことを想定し、どんな声かけをするかシュミレー

ションする。

《当日の様子》ぎこちなさはあるものの、下学年の

子を気遣い「歩ける?大丈夫?」と声をかけることが

できた。

○F 児の振り返り(抜粋):綾っ子ふるさとめぐりで、班

の子を安全に連れていけた。(中略)ぼくは、初めて会

う子と話すのが苦手なので、なかなか遊ぶことがで

きなかった。

5月 修学旅行

《ねらい》仲間と共に旅をしながら、共に活動する

楽しさが分かる。

《事前の指導》未経験の場所での学習や集団行動に

なるため、準備の段階で、自分のしたいことは何か、

仲間にどう伝えればよいかをシュミレーションした。

《事前の助言》代表的なお土産を紹介し、何を買え

ばよいかをお家の方と相談してくるようにした。

《当日の様子》施設を細かく観察することや話をメ

モすること等は積極的であるが、買い物の時間にな

ると表情が硬くなり、言葉が出なくなっていた。

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《仲間の関わり》○Fさんが、お土産を買わない。困

っているみたいだけど、はっきり言ってくれない。

《担任の助言》「買い物しないの。」と尋ねるのでは

なく「何が買いたいのか。」聞くといいよ。

《○F児の話(抜粋)》お母さんから頼まれた漬物と八

橋を買わなくてはいけない。

《仲間の話》八橋と漬物を買ったら、元気になりま

した。頼まれていたものを買わなきゃ心配だったの

ですね。お土産も買えたし、元気になってくれてう

れしかった。

《○F児の話(抜粋)》班長さんが、ぼくのことを心配

してくれて、よかった。

10月 ジュニア音楽会・綾っ子フェスティバル

《ねらい》表現に

対して臆病にな

らずに発表する

ことができる。み

んなで表現する

喜びを感じ、自信

をつけていく。

《仲間との関わり》○F児の歌っているときの様子や

リコーダーのがんばりをよさカードで認めたり振り

返りで認めたりしている児童が13人いた。

11月 愛校活動の見直し

《ねらい》全校や地域に貢献している実感をもって

愛校活動に取り組むことができる。

《様 子》朝掃除はし

ているが、学校に貢献

していることを意気

に感じて活動するこ

とができない。

《解決の方法を見出

す場の設定》掃除に取り組む写真や地域の方の感謝

の言葉を紹介して、自分がしている掃除は感謝され

るに値するそうじか考える学活をもつ。

《○F児の日記(抜粋)》玄関や校門のあたりがきれい

になると気持ちいい。今までは、しっかりばっちり

やっていなかったから、今日からは地域の人や学校

に来る人のためにがんばって、しっかり掃除します。

○F児の意識の変容を波線で示した。仲間の変容を

二重線で示した。

【学級の変容】

○自分たちでよりよい活動にする意欲が出てきた。

○仲間のよい姿を認め、そのよさを取り入れること

で高まってきている。

○課題を明確にして、仲間とアイディアを出し合い

ながら試行錯誤を繰り返しながら活動をつくって

いる。

1月、新たな班編成を終えて、H児は○F児と同じ

班になった。H児は Q-U の結果で「友達関係」で全

国平均よりもかなり低い値を示していた。友達関係

は範囲が狭く閉ざし、要支援児に否定的な状態であ

った。しかし、以下のような日記を書いてきた。

(1月13日)今日、学活で係や班が決まった。私は班長がG児さん

で○D児さんと○F児さんと私の班になり、どうなるんだろうなあと

思いました。○F児さんとはあまりしゃべらないし、○D児さんはい

つもパニックを起こしてどなっているのでイライラしてしまうけ

ど、G児さんはがんばっているので、私もなるべくイライラおこ

らないよう仲良くやっていきます。

(1月16日)今日は初めて新しい班での活動でした。○F児さんも意

外と話すし、周りの人も話しかけてくるので、まあまあ楽しいで

す。もっと仲良くなれるようにがんばります。

《通級担任の話(取り組み始め)》陸上大会の取組

で、先生が言った通りに足を上げてつま先で走っ

たら走るのが速くなったし、リレーの選手に選ば

れて、自信をもったみたいで、音楽会も頑張るっ

て言っていました。リコーダーの練習を通級でも

している。

《取組中の指導》目指す姿を絵と言葉で掲示。そ

の絵のようにがんばる○F児の姿を学級の中で価値

付ける。

《取組中の助言》リコーダーが苦手なので、○F児

誰がうまいと思っているか聞いて、「その子に教え

てもらおう。」と話した。相手(G児)には○F児が頼

りにしていることを伝え、一緒に練習することを

依頼する。

《○F児の振返(抜粋)》G児さんから教えてもらっ

たらうまくなった。ふけるようになったからうれ

しい。フェスティバルもG児さんに教えてもらっ

てがんばります。

《通級担任の話(事後)》あんなに堂々と大きな口

をあけて歌っている○F児さんってすごい。恥ずか

しいとかなくて、本当に自信をもっている。リコ

ーダーもいつの間にか弾けるようになっていたし

…陸上大会から何事にも意欲的です。

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「個の支援が全体の支援につながる。」要支援児に

片寄った学級経営にならないために大切なことであ

る。また、特別活動だけでなく「学業指導の場=授

業」もユニバーサル化していかなければならない。

授業のユニバーサル化の研究実践について、○B児

の変容で紹介していく。

【○B児の成長と変容、指導・助言】

○B児のプロフィール

・不特定高機能自閉症(特別支援学級入級対象 拒否)

WISC-Ⅲ結果(泓弘子先生分析:よさ○課題△)より

○知的には高く、博士的なところがある

○与えられたことはできる

○細かなことをするのは得意

△決められていないことは難しい

△自分で決めるのが苦手

△小・中学校では友達づくりが難しい

課題に対する教師の手立て

・保護者と連携を密にして、学習面や生活面のつま

ずきを把握する

・細かな指示を事前にしたり、適宜補ったりするこ

とで活動を円滑に進められるようにする

・パニックになったり仲間とトラブルを起こしたり

した際、相手の気持ちと自分の気持ちを説明し、

気持ちの理解につなげる。

【家庭科「野菜炒めをつくろう」】

《ねらい》食べやすい大きさに野菜を切って、野菜

のもっている甘みやシャキシャキ感をいかした野

菜炒めをつくることができる。

《ユニバーサル化の工夫》

調理が未経験の場合、何をしてよいのか分からず

に活動が停滞する。そこで、自分の家の「野菜炒め」

を題材にして調理実習の計画を立てた。

【要支援児への対応と期待する効果】

○わが家流の野菜の選び方、野菜の切り方、味付

けの仕方を事前学習として調べてくる。このこ

とで、未知ではなくなる。

○家庭には事前に一度調理体験をお願いする。

【通常の児童への対応と期待する効果】

○グループの人数分の種類の野菜の選び方、切り

方、味付けの仕方を知ることができる。

○調理に対して抵抗のある児童は、家で事前に学

習することができる。

【○B児の変容】

【通常の児童の授業後の振返り】

この後、グループで1食分のメニューをつくる調

理実習を行った。○B児は計画のときに、意欲を高め、

こう話していた。

《調理計画前の対話から》

野菜炒めは食べたことあるけど、どんなふうに切

ってあるかは分からないし、今日授業で聞いた切り

方も家の野菜炒めにあったようななかったような…

できるかどうか分からない。だから、お父さんに聞

いて確かめてくる。

《調理実習前の対話から》

お父さんと日曜日に野菜炒めを作ったと

きにはうまくいったけど…お父さんがたく

さんやっていたので、自分でできるかは…ウ

ーン…でも、切り方とか炒める順番とかはノ

ートに書いてきたので、大丈夫だと思う。味

付けが一番難しいかもしれない。早くやって

みたい。

《調理実習後の振り返りから》

お父さんと作ったようにできたし、班の子もおい

しいと言ってくれた。ちゃんとできたので、よかっ

た。今日、他の人の野菜炒めも見ていたので、家で

やってみて家族に食べさせたい。

いろんな家の野菜炒めがあって、おもしろかっ

た。野菜の切り方で、ぼくの家はにんじんを短冊に

切っていたけど、○○さんの家では扇形に切ってい

た。扇形だと他の野菜と切り方が違うので、彩りが

きれいでよかった。家でまねして作ってみたら、「き

れいだね。」とほめてもらえた。

味付けも、オイスターソースを隠し味に入れるの

をまねしたら、「こくが出ていいね。」とお父さんに

ほめてもらった。

いろんな家の味が知れたのでよかった。

野菜炒めのときに、野菜を短冊に切ることが

できたし、短冊に切ると食べやすいから、スー

プに入れるにんじんは短冊に切りたいし、ぼく

がやりたい。やってもいい?

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5.成果と課題

(1)Q-U をもとにした集団と個の理解指導計画づくり

①集団実態と個の満足度・意欲にかかわる分析

○B児について

学級生活満足度について

○4月に比べ、承認得点が大きく伸びている。認めてほ

しい感情の表れである。

学校生活意欲について

○「友達関係」は得点が若干下がったものの「学習意欲」

「学級の雰囲気」は伸びた。

考察・今後の方向

意図的な価値付けや仲間のよさ見つけが、功を奏した。

仲間とのリレーションづくりの方法を指導していく。

要支援児童の変容 (Q-U より 学校生活意欲プロフィール 学級満足度 学校生活意欲)

学校生活意欲プロフィール 障がい

4月 1月

学級満足度

(上 4 月 下 1 月)

日常の会話や日記や作文、

授業の様子より 個の成長

侵害行為

認知群 ○A ADHD

学級生活

満足群

仲間の動きを見ながら、合わ

せて活動できるようになっ

てきた。5年生をリードして

委員会活動ができる。

自分の世界に入りがちだっ

たが、仲間を意識できるよ

うになり、行動のスピード

が速くなってきた。

学級生活

不満足群 ○B

不特定

高機能

自閉症

非承認群

体育の授業「バスケットボー

ル」では、ボールや仲間の動

きを見て、パスが要求できる

ようになった。

仲間外れになると感じていたが、仲間

がやさしく声をかけてくれたり仲間に

積極的に関わったりすることで、遊び

が楽しめるようになった。

学級生活

満足群 ○C

知的な

遅れ

学級生活

満足群

小学校最後の運動会で、全校

の役に立てたことが、一番う

れしかったし、心に残りまし

た。【卒業文集より】

自分が学級や学校で役に立ってい

ることを実感でき、授業中の助言も

素直に聞き、粘り強く努力できるよ

うになってきた。

非承認群

○D ADHD

学級生活

満足群

この頃イライラしてキーっ

てなることが少なくなりま

した。みんな頑張っているの

が分かります。【本人談】

仲間と課題を共有することで、自分

だけが苦しんでいるのではないと

理解し、助言や指導も素直に聞ける

ようになった。

非承認群

○E 広汎性

発達障害

非承認群

5人6脚を最初は無理だとか

思っていたけど、努力をした

ら楽しくできました。【運動会

の振り返りより】

仲間と共に活動する喜びを

感じ始め、人のために役立

つ活動を進んでできるよう

になってきた。

学級生活

不満足群 ○F

広汎性

発達障害

非承認群

中学へ行くまでに、自分の意

見をちゃんとみんなの前で

発表できるようになります。

【3学期のめあてより】

努力すれば自分がよくなるこ

とや認められことを実感し、何

事に対しても意欲的に活動で

きるようになってきた。

図表8 要支援児童の変容(学校生活意欲(Q-U)の変化・個の成長等)○F児について

学級生活満足度について

○4月に比べ、承認得点が大きく伸びている。認めてほ

しい感情の表れである。

学校生活意欲について

○「友達関係」は得点が大きく伸びた。「学習意欲」「学

級の雰囲気」についても若干伸びた。

考察・今後の方向

意図的な認めと努力の仕方を明確にしたことで自分の

頑張りも仲間の認めも感じられるようになった。

クラスで活動するよさを実感し、肯定的に活動できるよ

うにしたい。

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個々の伸長に差はあるものの、学級満足度の結果

では、拡散型であった4月から分布が満足群を中心

としたものになっており、学級全体として学級に居

場所をもち安定した生活を送っている。

図表9 Q-U の結果のまとめ(上段1月・下段4月)

②個が付ける力と関わって付ける力の成長の見通し

○発達の見通しをもつことで、個がどの段階にいる

のかを明確にし、手立てを適切に考え、講じるこ

とができた。

●個の願いを理解するとき、カードに記入をしたこ

とをもとにするため、書くことに対して抵抗を感

じている児童の願いを適切に把握することが難

しかった。

③「関わり」を深めていく指導計画づくり

○○F児については、効果的に指導に役立てることが

できた。その結果として、学級生活満足度につい

ても学校生活意欲尺度についても伸びている。

●○F児の気持ちや特徴を優先するあまりに、他の児

童の活動が停滞することがあった。前もって、ど

んな活動をするのか伝えておく必要がある。

(2)活動の見通しや高まりがわかる教室環境づくり

①学級目標の達成の過程が見える掲示の工夫

○月のめあてを明確にもつことや掲示で今目指して

いることを確かめる時間をもつことで、継続的に

めあてに向かった取り組みができてきた。

②具体的な活動内容や個のよさをつなぐ掲示づくり

○よさ見つけカードや行事に対する思いを平等に書

くようにしたので、誰もが何度も掲示を見直して

喜びを味わったり仲間の気持ちにふれたりする

ことができている。

●毎月取り組む内容が変化しなかったり、いつも同

じ視点でのほめ言葉になったりするので、視点を

もたせる工夫が必要である。

③計画や振り返りがつながるカードの工夫

○掲示も学習カードも同じ見方で見ることができる

ので、混乱が少なく行事や授業を重ねるごとに、

短時間で振り返りやめあてをたてることができ

るようになってきた。

●広汎性発達障害や自閉症をもっている児童は、課

題はすぐにかけるものの自分のよさや仲間のよ

さを見つけることが難しくインタビューしなが

ら書くことになり、時間外での活動になってしま

うことが多い。

(3)互いに理解しあえる指導・助言の在り方

①互いに理解を深めることができる指導・助言

○今年度は保護者の理解も得られたため、WISC-Ⅲを

特別な教育的支援を要する児童全員が受けるこ

とができ、専門家の助言を指導にいかすことがで

きた。

●「発達障害」からくる、その個の「~しにくさ」

を子どもたちが理解し、常に意識した対応になる

までかかわり続けていける体制をつくらないと

その時限りで終わってしまうことがある。

②学級が高まろうとする力を伸ばす指導・助言

○歌声づくりで仲間に認められたり、愛校当番活動

のように感謝されたりする場面をもつことで、実

際に自分が活動していることに意味があり役に

立っていることが実感でき、よさを見つけたり取

り入れたりするかかわりがもて高まりあえた。

●指導の言葉を平易でストレートに伝わるものと考

えているが、他人とのかかわりや貢献に関するこ

とを伝えるには言葉が複雑に絡まってしまって、

理解を遅らせ、意欲を減退させることがある。

《参考文献》 Q-U による学級経営スパーバイズガイド小学校編

図書文化社 2004 年

中央教育審議会答申 2003 年

○F

○F ○B

○B