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29 1.女性の活躍推進の必要性 政府は「すべての女性が輝く社会」「女性の 活躍」を標榜している。2015 年8月には、女 性の職業生活における活躍の推進に関する法 律(女性活躍推進法)が成立した。この法律 は、各地方公共団体に対し、女性の活躍につ いて数値目標や取り組みを定めた特定事業主 行動計画の策定を義務付けている。八女市役 所も男女職員が働く職場として、「女性の職 業生活における活躍」を推進しなければなら ない。 職場での女性活躍の目安とされるのは、や はり管理職に占める女性の割合である。2015 年4月1日現在、八女市の管理職の女性比率 は 14.3%。前年が 10.2%、前々年が 8.3%だ から上昇傾向にあるとはいえ、低い数字であ る。数字上は、女性が十分に活躍できている とは言いがたい。 ただ、その背景にはそもそもの職員数の違 いがある。男女の職員数を5歳ごとに区切っ てみると、管理職の年代にあたる 56 歳以上 では、男性が 65 人いるのに対して女性はわ ずか14人である(図1)。つまり人材が少な い。特に町村部では、職員同士が結婚した場 合に、女性がその時点で、または夫が管理職 になれば退職するといった慣習があったの は、それほど遠い過去のことではないという。 そうした慣習が、この年代の職員数の差につ ながっているのかもしれない。 その下の年代では、全体的に女性が男性の 数を下回るものの、56 歳以上で見られるほど の大きな差はないから、将来的には女性の管 理職も増えてくるはずだ。また、社会情勢の 変化や価値観の多様化、さまざまな地域課題 に柔軟に対応するためにも、政策決定にあた る管理職が一方の性に偏るのは好ましいこと ではない。女性管理職の増加や女性の活躍推 進は、国に言われるまでもなく、地方自治の 確立に向けて必要な取り組みである。 女性が活躍する職場づくりに向けた課題とは ― 昇任等に関する職員意識調査から見えたジェンダー・バイアス ― 自治労八女市職員労働組合 氷室 佐由里 地方自治ふくおか 61 号 <図1 男女別の八女市職員数/5歳区分>

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1.女性の活躍推進の必要性政府は「すべての女性が輝く社会」「女性の

活躍」を標榜している。2015 年8月には、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)が成立した。この法律は、各地方公共団体に対し、女性の活躍について数値目標や取り組みを定めた特定事業主行動計画の策定を義務付けている。八女市役所も男女職員が働く職場として、「女性の職業生活における活躍」を推進しなければならない。

職場での女性活躍の目安とされるのは、やはり管理職に占める女性の割合である。2015年4月1日現在、八女市の管理職の女性比率は 14.3%。前年が 10.2%、前々年が 8.3%だから上昇傾向にあるとはいえ、低い数字である。数字上は、女性が十分に活躍できているとは言いがたい。

ただ、その背景にはそもそもの職員数の違いがある。男女の職員数を5歳ごとに区切っ

てみると、管理職の年代にあたる 56 歳以上では、男性が 65 人いるのに対して女性はわずか 14 人である(図1)。つまり人材が少ない。特に町村部では、職員同士が結婚した場合に、女性がその時点で、または夫が管理職になれば退職するといった慣習があったのは、それほど遠い過去のことではないという。そうした慣習が、この年代の職員数の差につながっているのかもしれない。

その下の年代では、全体的に女性が男性の数を下回るものの、56 歳以上で見られるほどの大きな差はないから、将来的には女性の管理職も増えてくるはずだ。また、社会情勢の変化や価値観の多様化、さまざまな地域課題に柔軟に対応するためにも、政策決定にあたる管理職が一方の性に偏るのは好ましいことではない。女性管理職の増加や女性の活躍推進は、国に言われるまでもなく、地方自治の確立に向けて必要な取り組みである。

女性が活躍する職場づくりに向けた課題とは― 昇任等に関する職員意識調査から見えたジェンダー・バイアス ―

自治労八女市職員労働組合 氷室 佐由里

地方自治ふくおか61号

<図1 男女別の八女市職員数/5歳区分>

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かつて、組合役員だった女性の先輩が繰り返し言っていた言葉がある。「男性はポストを譲る勇気を、女性はそれを受ける勇気を持ちなさい」。これから先、女性にポストが譲られたとき、女性たちは勇気を持ってそれを受け、地域のため、地方自治のために活躍しなければならない。その準備はできているだろうか。

女性が活躍する職場づくりをめぐる状況について、八女市職労が実施した「昇任等に関する職員意識調査」の結果をもとに読み解いていきたい。

2.調査結果から浮かぶ問題点とその背景(1)意識調査の概要

かねてから八女市職労では、昇任に関して男女差があるのではないかという組合員からの疑問が寄せられ、女性部でそれに関する部員の意識調査や女性管理職との意見交換などを行っていた。女性部の取り組みを全体化し

て職員の率直な声を聞き、そこから課題や改善策を発見しようと取り組んだのが、「昇任等に関する職員意識調査」である。調査の主体となったのは、男女がともに担う市職労委員会だった。本委員会は、市職労副委員長を委員長に置き、執行委員、女性部およびユース部から委員を選出して構成している。委員会で調査の内容や実施方法等について協議したのち、執行委員会や中央委員会での確認を経て、2015 年6月、職員に調査用紙を配付した。調査対象には組合員だけでなく管理職も含む。また、現業職員や保育士には回答しづらい設問もあったため、それらの職員は対象から除いた。調査項目は昇任や女性の登用に関する考え方、職場の配置や仕事の分担に関する考え方、家族のケアや残業の状況など、全 17 問である。

7月 10 日の期限までに、424 人から回答があった。回答者の属性は図2のとおりである。

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Chihou Jichi Fukuoka61NO.

<図2-① 回答者の属性/性別>

<図2-② 回答者の属性/性別・年代別>

<図2-③ 回答者の属性/性別・職階別>

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(2)「不満ではない」の根本にあるもの

まず、昇任に関する考え方について見る。「昇任に関して男女の差があると思いますか」との設問に対して、全体で 61.6%の人が「男性のほうが早い」と答えた。「男女差はない」

ここで問題としたいのは、そのことを不満に思っている人が少数派だということである。昇任について「男性のほうが早い」と答えた人に、そのことを不満に思っているか尋ねたところ、男女ともに「不満ではない」が

「不満である」を大きく上回る結果となった。これは「男性が女性よりも昇任が早いことに

「女性のほうが早い」に比して圧倒的に高い割合である。また、男女別では女性のほうが

「男性のほうが早い」と感じている割合が高い(図3)。

対して、女性の多くが不満だとは思っていない」ことを表している。

また、「あなたは、どこまで昇任したいと思いますか」との設問に対し、女性の 47.6%が

「昇任したくない」と答えた。男性では 28.0%だから、昇任への意欲には男女で大きな差がある(図4)。

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<図3 「昇任に関して男女の差があると思いますか」に対する回答>

<図4 「どこまで昇任したいと思いますか」に対する回答>

さらに「女性の役職への登用を進めるべき

だと思いますか」との設問に「積極的に進め

るべき」と答えたのは、男性が 57.1%、女性

は 36.4%。女性の登用に関して、女性自身が

それほど積極的ではないのである(図5)。

これらの回答結果からは、昇任に関して消

極的で、昇任の早さや役職への登用に男女差

があっても、それを不満とも思っていない女

性の姿が浮き彫りになるようである。なぜ、

このような状況が生じるのだろうか。さらに

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見ていくと、その原因としていくつかの問題

点が見えてきた。

その根本にあるのは「ジェンダー・バイアス」

である。ジェンダー・バイアスとは、性差に

よる偏見や、男女の役割について固定的な観

念を持つことを意味する。男女共同参画の取り組み等できまって議論の俎上に上る古くからの課題、人々の意識の問題である。古くからの課題が今も新鮮味をもって、女性活躍推進の前に横たわっていた。

Chihou Jichi Fukuoka61NO.

<図5 「女性の役職への登用を進めるべきだと思いますか」に対する回答>

<図6 「どこまで昇任したいと思いますか」に対する回答/10~20歳代>

(3) 根強い「男らしさ、女らしさ」の意識意識の問題として今回の調査で目を引いた

のは、若い世代における昇任への意欲の男女差だった。10~20 歳代において、先の「昇任に関して男女の差があると思いますか」の問いに「昇任したくない」と答えたのは、男性

19.1%に対して女性は 44.4%。25.3 ポイントの開きがある。この年代の男性で最も多かった回答は「部長級」並びに「課長級」で、あわせると半数を超える。一方で女性は「部長級」0.0%、「課長級」7.4%だから、男女間の意識の違いが顕著である(図6)。

「昇任したくない」と答えた人にその理由を尋ねたところ、「自分の能力や経験に不安があるから」が最多であった。男性に比べ、女性にはそうした不安を抱えている人が多いということだ。しかし、10~20 歳代といえば入庁して間もなく、職場での経験や研修等による能力開発の機会はほぼ横並びのはずであ

る。にもかかわらず、昇任に関する意識にこれだけの男女差が出るのは、もともとの自己評価に差があるからではないか。入庁に至るまでの環境に、すでにその要因があるのではないだろうか。

そこで、八女市男女共同参画・生涯学習課が 2015 年5月、満 20 歳以上の市民 3,000 人

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を対象に実施した「男女共同参画のまちづくりに関するアンケート」の結果を参照したい。

このアンケートで「男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく育てるのがよい」という考え方に対する賛否を尋ねたところ、賛成派が 68.5%、反対派が 19.9%で、賛成派が圧倒的に多かった。2010 年に実施された前回の調査結果と比較すると、賛成派は 5.1 ポイント増加し、反対派は 3.3 ポイント減少している。

また同アンケートでは、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に対する賛否も尋ねている。結果は反対派が 49.5%で、賛成派の 35.1%を上回ったが、前回調査から反対派が 2.0 ポイント減少したのに対して、賛成派は 2.7 ポイント増加している。

ここから、八女市における「男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく」という考え方や、性別役割分担意識の根強さがうかがえる。

「男らしさ、女らしさ」の捉え方はさまざまだが、たとえば男性には決断力や責任感、女性には細やかな気配りや優しさが求められる。管理職などリーダーに求められるリーダーシップは、一般的に「男らしさ」の特性とされることが多い。「男らしさ、女らしさ」を重視する家庭や地域の環境が、「男らしい」男性と「女らしい」女性を育て、リーダーシップなどに関する自己評価の違いにつながっているとはいえないだろうか。

(4)経験年数を重ねても残る不安もともとの男女の意識にそのような違いが

あったとしても、入庁後の人材育成・能力開発によって自信をつけさせていけばいい。しかし調査結果からは、職場にもジェンダー・バイアスがあることが見えてくる。

女性で「昇任したくない」と答える人の割

合が高いのは、10~20 歳代に限ったことではない。30 歳代、40 歳代、50 歳代以上と、全ての年代で「昇任したくない」の割合が最も高い。その理由も全ての年代で「自分の能力や経験に不安があるから」が最多である。特に50 歳代以上では 85.0%にもなる。

また、「女性の昇任を妨げているものがあるとすれば、それは何だと思いますか」との設問に「女性には経験が不足しているから」と回答した割合も、年代が上がるにつれて高くなる。この傾向は男女に共通している。年代が上がれば仕事の経験値も当然上がるが、逆に女性の経験不足が強く意識されるようになっていく。何年たっても能力や経験に不安を抱えたままなのはなぜか。

「各職場の配置や仕事の分担などで男女の差があると思いますか」との設問に対する回答がヒントになる。全体で 44.8%が「ある」と答え、「ない」の 27.4%を大きく上回っている。実際に 2015 年 10 月現在、防災安全課や環境課、土木災害復旧室は全員が男性、監査事務局は全員が女性など、職場の配置には男女の偏りが見られる。しかし、男女の差が「ある」と答えた人のうち、全体の 54.7%、女性では 62.5%と多数が、そのことについて「不満ではない」と答えている。

そこには「男女にはそれぞれ向き不向きの仕事がある」という考え方がある。「『女性にとっては負担が重い』と思う業務はありますか」と尋ねたところ、「ある」が全体で 48.8%、

「ない」が 25.2%だった。「女性にとっては負担が重い仕事」と思われているのは防災・災害関係が最多で、そのほか戸別訪問・ケースワーカー、交渉・折衝などがあがった。体力・腕力や交渉力が必要な仕事には男性が向いており、逆に、接客や細やかな気配りが必要な仕事には女性が向いているという意識があるようだ。したがって「男性向き」の職場に男

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性が、「女性向き」の職場に女性が配置され、結果として偏りが生じることは悪いことではないと捉えられている。人事当局も含めて、市役所という職場全体にそのような風潮があるのではないだろうか。

配置される職場が偏れば経験も偏る。一般の係員のうちはよくても、ポストの数は限られるため、それまで経験したことのない職場に責任ある立場で配置される場合もある。そうなれば、いくら年数を重ねていても能力や経験に不安を感じ、それ以上の昇任を望まない状況につながるだろう。

また、こうした配置は「男らしさ、女らしさ」を職場でも是認し、さらにその意識を育てることにもなる。男女ともに配置される職場には偏りがあっても、能力や経験に不安を感じて昇任を望まないのは女性のほうが多いのは、そうした意識の強化にも一因があるのかもしれない。

(5)性別役割分担による妨げ職場での女性の活躍を推進するうえで、避

けては通れないのが家庭責任の問題である。「あなたには育児・介護・看護などケアの

必要な家族はいますか」と尋ねたところ、「いる」と答えた人は全体で 45.0%だった。「いる」と答えた人に、その家族を主に誰がケアしているのか尋ねたところ、「自分」と答えた人は女性では 76.6%にのぼった。男性では19.2%だから対照的な結果である(図7)。

また、平日に家事・育児・介護に関わる平均時間を尋ねた設問では、男性では「1時間未満」が 61.5%であるのに対し、女性では「2~3時間」が 36.4%、「4時間以上」が 30.8%だった(図8)。その一方で、1か月の残業時間の平均を尋ねたところ、男性では「20~30時間」が 8.0%、「30 時間以上」が 2.9%あったのに対し、女性では「20~30 時間」が 3.5%、

「30 時間以上」は 0.0%だった(図9)。

Chihou Jichi Fukuoka61NO.

<図7 「ケアの必要な家族を主にケアしているのは誰ですか」に対する回答>

<図9 「1か月の残業時間は平均するとどのくらいですか」に対する回答>

<図8 「平日に家事・育児・介護に関わる平均時間はどのくらいですか」に対する回答>

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家事・育児等の時間は女性のほうが長く、残業時間は男性のほうが長い。「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担が垣間見える。この場合では女性は市職員として働いているのだから、「男は仕事、女は仕事も家庭も」という、いわゆる「新・性別役割分担」である。女性の残業時間が男性より短いのは、家事や育児のために帰宅する必要があるため、仕事を効率よく終わらせているということもあるだろう。

当然、女性の負担感は重くなる。女性が昇任したくない理由で最多なのは「能力や経験に不安があるから」だと先述したが、次に多いのが「仕事と家庭の両立が難しそうだから」だった。また、「女性の昇任を妨げているものがあるとすれば、それは何だと思いますか」との設問でも、「家庭責任を主として女性が担っているから」との回答が圧倒的に多かった。

さらに、家庭責任の重さが女性の能力開発の機会を奪うことも懸念される。「会議や研修への参加に男女の差があると思いますか」との設問に「男女差はない」と答えた人は、ケアの必要な家族がいる女性では 65.6%、いない女性では 79.2%と 13.6 ポイントの開きがある。宿泊を伴う研修などで、家族のケアのために参加を諦める場合などがあるとすれば、そのような女性にとっては、機会は平等

であっても結果として平等とは思えないだろう。

(6)漂う諦めと不信感女性の昇任への意欲が少なく、昇任の男女

差を不満に感じていないことについて述べてきたが、そこには女性の「諦め」ムードも漂う。

「女性の昇任を妨げているものがあるとすれば、それは何だと思いますか」との設問に、女性の 18.9%が「男性のほうが期待されているから」と答えた(図 10)。特に 40 歳代と 50歳代以上では、20%を超える女性が「男性のほうが期待されている」と感じている。その背景として、自由意見に「男性のほうが能力が高いとの思い込み」「男性のほうが家庭的な役割から見て扱いやすいから」などとあるように、ここでもジェンダー・バイアスの影響がうかがえる。「人事当局が男性だから」

「人事当局の考え方」など組織の方針に対する不信感は、そのまま男性の意識に対する不信感である。

逆に男性から女性に対しても、「女性は覚悟が足りない」「大変な仕事は男性がやると思っている人が多い」などといった不信の声がある。男女が互いに、その意識や仕事への取り組み方に対して不信感を持っているとすれば、職場として不幸なことである。

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<図10 「女性の昇任を妨げているものがあるとすれば、それは何だと思いますか」に対する回答(複数回答)>

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Chihou Jichi Fukuoka61NO.

3.課題解決に向けて何ができるか以上のとおり、昇任等に関する職員意識調

査から、ジェンダー・バイアスが女性の活躍する職場づくりに向けた課題であることが見えてきた。ジェンダー・バイアスという意識の変革は非常に困難な取り組みではあるが、女性活躍推進法に基づく特定事業主行動計画の策定が義務化されたことは、課題や方策を職場全体で考え直す好機でもある。

女性の意欲を引き出し、自信をつけさせるためには、人材育成・能力開発のあり方について見直す必要があるだろう。「八女市人材育成計画」には、若手層、中堅層など階層別のプログラムはあるが、ジェンダーの視点はない。とりわけ公務職場では、男女の差別や区別は「ないはず」という前提なのかもしれない。しかし今の実態を見ると、職場にジェンダー・バイアスが「ある」と率直に認めたうえで、取り組みを検討することが有効なのではないだろうか。

たとえば研修制度についてである。職場外研修には盛んに取り組まれているが、能力や経験に関する女性の不安を払しょくするには、むしろ職場研修(OJT)こそが重要であろう。同時にジョブ・ローテーションに関しても、異なる職務分野を男女がともにバランスよく経験できるよう、より意識的な異動を行うべきではないか。調査結果で「女性には負担が重い」と感じている人が多かった防災関係でも、求められるのは腕力や体力だけではないはずだ。

さらに、八女市では 2016 年度から人事評価制度がスタートする。この制度の最大の目的は人材育成である。評価者と被評価者が面

談し、目標設定やその達成度について話し合い、評価の結果を被評価者にフィードバックして、長所を伸ばし短所を克服しながら人材育成を図る。この制度がうまく機能すれば、昇任に関する不透明感や、「男性のほうが期待されている」といった不信感を取り除くことができるだろう。

仕事と生活の両立支援に関しては、次世代育成支援対策推進法に基づく特定事業主行動計画がすでに策定されており、まずそれを着実に実施していかなければならない。「家事や育児、介護をしながら仕事を続けられる」という環境整備は当然のこととして、今後は

「家事や育児、介護をしながらキャリアアップできる」環境を整えていくべきである。

市職労としては、今回の調査結果の分析も活用しながら、それらのさまざまな制度設計に意見反映し、実効性を高めていかなければならない。また、社会全体の意識を高めていくためには、男女共同参画行政に対する政策提言などにも取り組む必要があるだろう。

実は今回の調査では、「組合が一番男女差別をしている」「組合が取り組んでいる姿が見えない」などの厳しい意見もあった。家庭責任を担う女性が参加しづらく、女性役員が少ないという点で、市職労も職場と同じ問題を抱えている。活動のあり方を見直し、女性が活躍できる組合活動を実現することは、女性が活躍できる職場づくりにもつながるはずだ。市職労の本気度が問われている。

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