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(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果
に関する検討
平成26年度 建築基準整備促進事業
S8. 鉄骨造部材の部材種別判定の合理化に関する検討
東京工業大学 京都大学東京大学 大阪工業大学
事業主体
(独)建築研究所共同研究機関
調査の概要
鉄骨造ブレース構造の構造特性係数の決定においては、ブレースの部材種別とともに柱梁の部材種別を考慮することとされているが、梁端部分がピン接合の引張ブレース構造では、柱梁部材はほぼ弾性状態であるため,このようなブレース構造の合理的な部材種別判定が望まれている。また、鉄骨造ラーメン構造の梁部材の設計に関しては、鉄筋コンクリート床スラブが梁の横座屈を補剛する効果があると考えられ、それらを考慮したより合理的な設計方法の確立が望まれている。そこで、これらの課題について、
(イ)梁端をピン接合とする引張ブレース構造を対象とし、梁端接合部における変形性能確保の条件を検討するとともに、柱梁断面の幅厚比等の違いが架構の耐震性能に及ぼす影響を把握することで、鉄骨造ブレース構造におけるより合理的な部材種別判定を反映した基準案を提案する。
(ロ)床スラブをスタッド等によってH形断面梁に緊結した場合の横座屈挙動を構造実験(要素実験、架構実験)と有限要素解析により確認し、床スラブが梁の曲げ耐力に及ぼす影響や保有耐力横補剛を代替できる条件について検討する。これらの検討に基づいて、床スラブによる横補剛効果を考慮した合理的な基準案を提案する。
引張ブレース構造では梁端部にピンディテールを採用することが多く、構造計算上は柱梁が弾性状態となる。
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
ガセットプレート
柱
梁
ブレース
ブレース
梁端接合部
ブレース端と梁端の兼用接合ディテール
ブレースの偏心設置
梁
柱
接合部の局所曲げ
偏心曲げ
柱、梁、ブレースが1点に集まる接合部は立体的に複雑な形状を有しており、実際に柱梁に作用する応力は必ずしも明確ではない。
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
<目的>梁ウェブのみを高力ボルト摩擦接合したピン接合部において変形性能を確保するための条件を検討する。
<方法>梁端ピン接合部に対して、ブレース軸力の水平成分による圧縮軸力を含めた繰り返しせん断曲げ実験を行う。実験パラメータは、梁せい、梁ウェブ板厚、高力ボルトの軸径・本数・配置、および圧縮軸力の大きさとその与え方(一定or変動)とする。
架構変形に伴う繰り返し曲げせん断
ブレース軸力の水平成分による圧縮力
【接合部ディテール】ボルトプラン
(ピッチ・本数)ガセットの形状梁の形状と幅厚比
ガセットプレート
梁端接合部
梁
ブレース
梁端ピン接合部の繰り返し載荷実験
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
梁ウェブ板厚6.5mm、ボルトピッチ:60mm(M16)
軸力なし
●ボルトピッチ:広、ウェブ板厚:厚 ・・・ 変形性能が向上する
(ただし、ボルトピッチは80mmより狭い範囲)
-15
-10
-5
0
5
10
15
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1
[rad.]
M [kN-m]
-15
-10
-5
0
5
10
15
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1
[rad.]
M [kN-m]
-15
-10
-5
0
5
10
15
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1
[rad.]
M [kN-m]
-15
-10
-5
0
5
10
15
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1
[rad.]
M [kN-m]
100kN 200kN 250kN
破断せず
ボルト破断
局部座屈局部座屈
●梁せい、ボルト径、ガセットプレートの幅 ・・・ 影響は小さい
●圧縮軸力の与え方: 一定軸力 < 変動軸力(スリップを模擬)
一定軸力下で1%の回転性能≒現実的な応力状態で3%の回転性能
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
0
50
100
150
200
250cr [N/mm2]
40 60 80 40 60 80 60 80 60 80 40 60 60 100 120
tw = 6.5
p =
4.5 6.5 4.5 6.5 4.5
H300, 3-M16 H300, 3-M20 H400, 3-M16
0
50
100
150
200
250
5 340
n = 4 5
tw = 4.5 4.5 6.5 3@60 3@60
H300
2x3 2x3 2x3p = 60 60 60 40 60 80
H400 H300 H400
標準 大 標準 大
H300
4@60
補剛リブ
○ ×
ガセットガセット
ウェブの有効断面(45°の応力伝達)
150~180 N/mm2の範囲で局部座屈が発生して変形性能が不足する
圧縮軸力に対する梁ウェブの有効断面の応力度を150N/mm2以下に抑える
現実的な応力状態において梁端接合部の変形性能を確保する条件
応力度が限界値に達し、局部座屈が発生する
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
引張ブレース付き柱梁架構の実験(架構実験)
接合部の局所曲げ
偏心曲げ
5.0m
4.0m
試験体部分
<目的>接合ディテールに起因する付加応力が架構全体の力学挙動に及ぼす影響を把握するとともに、付加応力の算定方法を検討する。
<方法>ブレースの面外座屈、偏心設置、および接合部の局所曲げがもたらす付加応力の影響をできるだけ忠実に再現できる2層架構の実験を行う。実験パラメータは、柱断面、梁断面、ブレース偏心、ブレース断面、梁端接合部のボルトピッチとする。
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
柱断面、ブレースの偏心が架構全体の履歴挙動に及ぼす影響
偏心 なし 偏心 200mm 偏心300mm
●柱断面の影響は小さい。●偏心距離が大きくなるほど、架構
の保有水平耐力、剛性が低下する。(柱の局所降伏の影響は小さかった)
-200
-100
0
100
200
-0.03 0 0.03
R [rad.]
Q [kN]
-200
-100
0
100
200
-0.03 0 0.03
R [rad.]
Q [kN]
+
柱断面:BH285x170x6x6(FC)、梁端接合部:3-M20@80
-200
-100
0
100
200
-0.03 0 0.03
R [rad.]
Q [kN]
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
-60 -30 0 30 60 -60 -30 0 30 60
柱梁の曲げモーメント分布(+1/50rad.時)の 計算値 vs 実験結果(●)
偏心 300mm偏心 100mm
-30 0 30 -30 0 30
偏心曲げと梁端接合部の曲げ抵抗を考慮することで、実験結果における柱の曲げモーメント分布(●)を十分に説明できる。
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
梁端接合部詳細の違い 梁上の床スラブの有無
-200
-100
0
100
200
-0.03 0 0.03
R [rad.]
Q [kN]
-200
-100
0
100
200
-0.03 0 0.03
R [rad.]
Q [kN]
局部座屈
局部座屈
@40
@80
@60
@60
変形性能確保の条件は、架構においても有効であることが確認できた。
梁上に床スラブがある場合は、耐力の上昇が著しく、弾性状態であることを確かめるのが難しい。
-300
-200
-100
0
100
200
300
-0.03 0 0.03
R [rad.]
Q [kN]-300
-200
-100
0
100
200
300
-0.03 0 0.03
R [rad.]
Q [kN]
158.2 N/mm2
164.3 N/mm2
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
現行基準への適用の提案(鉄骨造のルート2の計算) 幅厚比規定
柱及びはりに炭素鋼(平成12 年建設省告示第2464 第1 に規定する基準強度が1 平方ミリメートルにつき205ニュートン以上375ニュートン以下であるものに限る。)を用いる場合にあつては、次の表の(い)欄に掲げる柱及びはりの区分に応じ、幅厚比(円形鋼管にあつては、径厚比とする。)が同表(ろ)欄に掲げる数値以下の数値となることを確かめること。ただし、特別な調査又は研究の結果に基づき、鋼材の断面に構造耐力上支障のある局部座屈を生じないことが確かめられた場合にあつては、この限りでない。
<解説(基準解説書)>
(2)変形能力確保のための規定ⅱ) 柱及びはり材の幅厚比
部材の塑性変形能力は、部材の形状及び寸法に影響される。・・・ここでは制限値は部材種別をFAとして計算した数値である。ただし、架構の崩壊メカニズム時に弾性状態に留まることが明らかな場合には、当該幅厚比は、部材種別をFB又はFCとして計算した数値以下の値とすることができる。
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
例えば,以下の条件のすべてを満たせば,架構の崩壊メカニズム時に柱及びはりが弾性状態に留まると考えることができる。
1)はりの材端部をウェブのみを高力ボルト摩擦接合するなどして曲げモーメントを伝えないとみなせるような構造が採用されていること
2)筋かいの偏心、はりの材端部における接合状況に応じた付加曲げモーメントを考慮し、柱及びはりに作用する応力度の短期許容応力度に対する比が、その構面の筋かい材に作用する軸力の軸部降伏耐力に対する比以下であること
3)軸力伝達を期待するはりの材端部については,材端部が軸力を保持しながら十分に回転できる有効断面積が確保されていること
※解説に具体的な例・条件を追加する
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
現行基準への適用の提案(鉄骨造のルート3の計算) Ds値
四 各階のDsは、前号の規定に従って求めた当該階の筋かい並びに柱及びはりの部材群としての種別に応じ、次の表に掲げる数値以上の数値とすること。
A B C D
0.25 0.3 0.35 0.4
0 < u < 0.3の場合 0.25 0.3 0.35 0.4
0.3 < u < 0.7の場合 0.3 0.3 0.35 0.45
u > 0.7の場合 0.35 0.35 0.4 0.5
0 < u < 0.3の場合 0.3 0.3 0.35 0.4
0.3 < u < 0.5の場合 0.35 0.35 0.4 0.45
u > 0.5の場合 0.4 0.4 0.45 0.5
柱及びはりの部材群としての種別
筋かいの部材群としての種別
A 又は u =0の場合
B
C
※表の脚注に追加条件を加える
=
=
=
=
(イ)ブレース構造の柱梁の部材種別の設定方法に関する検討
この表において、buは、筋かい(耐力壁を含む。)の水平耐力の和を保有水平耐力の数値で除した数値を表すものとする。
また、はりの材端部が曲げモーメントを伝えないとみなせるような筋かいの水平力負担率の高い構造については、柱及びはりが架構の崩壊メカニズム時に弾性状態に留まることが明らかな場合に、柱及びはりの部材群としての種別が B 又は C であっても表中の A に該当する数値を用いても良い。
A B C D
0.25 0.3 0.35 0.4
0 < u < 0.3の場合 0.25 0.3 0.35 0.4
0.3 < u < 0.7の場合 0.3 0.3 0.35 0.45
u > 0.7の場合 0.35 0.35 0.4 0.5
0 < u < 0.3の場合 0.3 0.3 0.35 0.4
0.3 < u < 0.5の場合 0.35 0.35 0.4 0.45
u > 0.5の場合 0.4 0.4 0.45 0.5
柱及びはりの部材群としての種別
筋かいの部材群としての種別
A 又は u =0の場合
B
C
=
=
=
=
(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果に関する検討
H形断面梁の横座屈性状確認実験
目的:横座屈によって終局状態を迎えるH形断面梁の横座屈性状に及ぼす床スラブの仕様や頭付きスタッドの仕様の影響を確認し、床スラブによる横座屈補剛効果が得られるための仕様を把握する。
実験パラメータ: 床スラブの有無・梁の細長比(材長)・曲げモーメント分布・スタッドの配置・スラブの形状や配置
実験の様子
梁:BH-400x150x6x16
1.8m
スタッドの仕様
床スラブの仕様
完全合成梁 完全合成梁 不完全合成梁
両側スラブ 片側スラブ デッキプレート
0
0.5
1
1.5
0 1 2 3 4 5 60
0.5
1
1.5
0 1 2 3 4 5 60
0.5
1
1.5
0 2 4 6 8 10 120
0.5
1
1.5
0 2 4 6 8 10 12
頭付きスタッドの仕様 床スラブの仕様
(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果に関する検討
H形断面梁の横座屈性状確認実験
➢ 正曲げ時に頭付きスタッドが破断すると、十分な補剛効果が得られない。
→ 完全合成梁の条件を満たすようにスタッドの本数を決定する。
➢ スラブが薄い場合や片側スラブの場合、早期にスタッドが抜出してしまう。
→ 両側スラブで、かつスラブ厚は梁せいの1/10以上とする。
骨格曲線
累積塑性変形倍率0 20 40 60 80 100
不完全剛性梁
完全合成梁Mp劣化までMmaxまで
累積塑性変形倍率0 5 10 15 20 25
片側スラブ
両側スラブMp劣化までMmaxまで
θ/θp
M/M
p
完全合成梁
不完全剛性梁
骨格曲線
θ/θp
M/M
p
両側スラブ
片側スラブ
(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果に関する検討
床スラブによるH形断面梁の上フランジ拘束効果確認実験
目的:横座屈発生時のH形断面梁のねじれや構面外変形に対する床スラブの拘束効果を確認し、モデルのばね剛性と耐力の評価方法を提案する。
実験パラメータ: スタッドの配置・スタッドの長さ・スラブの形状や配置
頭付きスタッド
構面外の水平変位と材軸まわりのねじれを拘束
水平ばね 回転ばね
➢ 頭付きスタッドが抜出すときの耐力と剛性の計算結果は、実験結果と概ね対応している。
スラブのモデル化
実験方法
回転剛性 ねじり耐力
(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果に関する検討
有限要素解析による横座屈性能定量化の検討
目的:有限要素解析によるパラメトリックスタディにより、床スラブの座屈補剛効果を定量的に把握し、その評価方法を提案する。
解析モデル概要
(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果に関する検討
有限要素解析による横座屈性能定量化の検討
弾性座屈解析結果 (1)細長比と座屈耐力の関係
➢床スラブにより弾性座屈耐力が向上する。
➢その効果は曲げモーメント分布に依存し、逆対称曲げでは効果が高く、片曲げでは効果が低い。
➢スラブがある場合は梁長さ(座屈長さ)を実際より短いものとして設計できる。
(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果に関する検討
有限要素解析による横座屈性能定量化の検討
弾性座屈解析結果 (2) 細長比の低減による床スラブ効果の評価式
➢同じ弾性座屈耐力となる細長比(座屈長さ)評価式を提案した。
➢床スラブの効果を梁長さの短縮として評価できる。
➢ 曲げモーメント分布の影響を適切に考慮した式となっている。
= 1− 0.0018 + 0.2 1 −
(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果に関する検討
有限要素解析による横座屈性能定量化の検討
弾塑性解析結果 (1) 細長比と変形能力の関係
➢床スラブ効果により変形能力が向上する。
➢曲げモーメント分布に依存し、逆対称曲げでは効果が高いが、片曲げでは効果が低い。
➢ 逆対称曲げでは、細長比が170を超えていても、保有耐力横補剛程度の変形能力を確保できる。
逆対称曲げ
片曲げ
(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果に関する検討
有限要素解析による横座屈性能定量化の検討
弾塑性解析結果 (2)細長比の低減による床スラブ効果の評価式
(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果に関する検討
床スラブの座屈補剛効果を考慮する方法の提案
床スラブの座屈補剛効果を考慮できる条件
(ロ)横座屈する梁の塑性変形性能と床スラブの座屈補剛効果に関する検討
有限要素解析による横座屈性能定量化の検討
床スラブの座屈補剛効果を考慮する方法
➢許容応力度算出時の座屈長さに下記の低減倍率を乗ずることができる。
➢低減倍率=
➢ただし、 < 0⁄ の場合および中間部の曲げモーメントの大きさがを超える場合は低減できない。
➢逆対称曲げをうける合成梁では、下記の細長比の範囲では保有耐力横補剛がなされているものとできる。
➢400N級の場合 : ≤ 205➢490N級の場合 : ≤ 155
1− 0.0018 + 0.2 1 −