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Sales Analytics の可能性
-医薬品営業を例として-
武藤 猛
(MarkeTech Consulting 代表)
On the Possibility of Sales Analytics with Applications to Pharmaceutical Sales
Takeshi MutoPresident, MarkeTech Consulting
要旨:
Sales Analyticsという用語からSFAの分析ツールという枠を外し、
「営業分析学」という意味で活用することを提案する。方法論と事例を説明し、特に営業活動の質的側面の数量化の重要性を指摘する。
キーワード:
営業分析学、Sales Analytics、SFA、医薬品営業、事例による検証
2
3
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ
2.医薬品営業における定式化
3.医薬品営業における検証事例
4.まとめ:Sales Analytics の可能性
参考文献
Sales Analytics の可能性 内容-医薬品営業を例として-
4
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ[1]営業における「サイエンス」対「アート」
[計画・評価]
(データ)
サイエンス[計画・評価]
アート[面談の現場]
営業には「サイエンス(データに基づく科学)」と「アート(技能・スキル)」の二つの側面がある
主として量的側面
(企業側の視点)
コミュニケーション力・心理学などの
質的側面(企業+顧客の視点)
Sales Force Effectiveness (SFE)とも呼ばれる
5
「サイエンス」あるいは「アート」の側面のどちらを重視するかで意見が異なる
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ[2]「営業は科学である」か?
「営業は科学であるはずがない」・営業は科学を適用するには複雑すぎる・営業は極めて人間臭い仕事だ;科学など適用できるはずがない・営業は個人に依存する(例:スーパーセールスマン);科学の適用は無理だ・営業に自然科学のような「実験」や「モデル化」など出来ない・営業が科学であれば、「法則」を使って、誰でも大儲け出来ているはずだ
「営業にも科学的アプローチが成り立つ」・確かに営業は複雑だが、要素に分解すれば単純化できる・人間に関する科学として、心理学や経済学が成り立っている・個人差はあって当然で、それは統計学で取り扱い可能である・営業を要素に分解すれば、「実験」や「モデル化」も可能である・営業を「科学化」して成果を出している会社や個人がいても不思議ではない
6
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ[3]営業の科学に関する研究①:日本における研究
■営業の全体モデルに関する研究・欧米の研究の紹介:-石井淳蔵・嶋口充輝:営業の本質-伝統と革新の相克、有斐閣(1995年)-石井淳蔵:営業が変わる-顧客関係のマネジメント、岩波書店(2004年)-田村正紀:機動営業力-スピード時代の市場戦略、日経新聞社(1999年)-「営業を科学する」特集、一橋ビジネスレビュー、第54巻1号(2006年)-「営業のプロフェッショナル」特集、DHB(2004年1月号)
■事例研究(非常に少ない):-松尾睦・早川勝夫・高嶋克義:改善志向の営業プロセス管理-日本ベーリン
ガーインゲルハイムの事例、季刊マーケティングジャーナル 119号(2011)
■営業活動の数量的研究(非常に少ない):-日経産業消費研究所:営業の革新(1998)-松尾睦:営業組織における文化的特性と業績(1998)-清宮政宏:営業管理様式と営業成果の因果関係に関する研究(2004)-細井謙一・竹村正明:営業生産性尺度の開発(2006年)
7
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ[3]営業の科学に関する研究②:Zoltnersらの研究と実践
(2004年)(2001年) (2009年)
Andris A. Zoltners(ZS社Co-Chairman/Northwestern Univ. Kellogg School名誉教授)
Prabhakant Sinha(ZS社Co-Chairman/元Northwestern Univ. Kellogg School教授)
SFEモデル/SFEドライバー
営業組織の分析・設計
SFEモデル再整理/重要SFEドライバー
SFE/SAの理論-Zoltners-Shinhaの主要著作
(2015年)
SA/理論と事例
8
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ[4]SFAの機能と導入効果①:システム機能
SFAデータベース(クラウドの場合もある)
商談情報
営業プロセス情報
(営業日報)
売上データ
顧客マスタデータ
商品マスタデータ
共有知識ベース
顧客情報 営業活動分析
売上分析
商談分析(受注予測)
SFA(Sales Force Automation=営業支援システム)のシステムイメージ
営業による入力・参照情報
SA(Sales Analytics)
システム管理者
一般的なSAは、SFAの数量的データを分析するツールである(質的データは、通常範囲外)
営業日報にはテキストデータが含まれる
場合もある
9
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ[4] SFAの機能と導入効果②:導入効果は「効率向上」が中心
11
11
8
7
8
6
15
10
7
2
7
7
0 5 10 15 20
データ入力作業の効率化
顧客・案件管理の標準化
行動管理の精度向上
営業活動の標準化
顧客対応の迅速化・品質向上
営業サポート業務の効率化
社内情報共有による関係者からの支援
データ分析結果の活用
受注期間短縮・売上予測精度向上
顧客との面談時間増加
顧客満足度向上
売上高・成約率向上
SFA(営業支援システム)の導入効果の例
営業
効率向上
関連効果
(86%)
CS向上・
売上高向上
関連効果
(14%)
[注]SFA導入事例33件の導入効果
(複数カウント)を分析
[出典]セールスフォース・ドットコム社が公開している導入事例33件の導入効果を分析した
生産性=成果÷投入
効率(Efficiency):投入を減らして生産性を高める
効果(Effectiveness):成果を増やして生産性を高める
10
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ[5]ITツールとしての Sales Analytics の功罪
■メリット:-適切な計画・データ収集・分析・現場へのフィードバックが可能になる-営業活動の効率化につながる-部門内での情報共有が容易となる-以上の結果として、営業生産性が向上する(場合もある)
■限界:-「量的データとその分析」は企業側の視点であり、顧客視点ではない-対象は数量化が容易なデータがほとんどで、質的データは限られている-「成果モデル」が組み込まれていないので、成果をもたらす要因が不明確-営業活動の効率化は必ずしも顧客満足度向上につながらない-管理優先の場合には、重要性の低いデータまで入力させる傾向がある
11
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ[6]営業への科学的アプローチとしてのSales Analyticsへ
[計画・評価]
(データ)
サイエンス[計画・評価]
アート[面談の現場」
Sales Analytics を「ITツール」という狭い範囲に留めず、「サイエンス(データに基づく科学)」と「アート(技能・スキル)」の共働を目指す、科学的分析方法論(Analytics の原義)として捉えたい;
このため「アート」の領域の数量化にも取り組みたい
12
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ[7]営業分析学としての Sales Analytics
①成果(例:売上、顧客満足度向上)と要因(例:営業活動)との間の因果関係をモデル化する(特に、成果と質的要因の関係を重視する)
②実証的であること(実データの活用)
③体系的であること(統計解析など確立された方法論に基づく)
④実践的であること(営業現場ですぐに適用できる)
⑤IT活用と親和性があること(既存のITを活用できる)
SA(Sales Analytics)とは、顧客満足度・収益力・競争力向上を目的とした、データに基づいた営業生産性アップ方法論である
13
1.Sales Analytics:ITツールから営業分析学へ[8]営業分析学としてのSales Analytics のイメージ
自社売上データ
顧客マスタデータ
SFA(営業支援システム) SFAデータ分析(ITツールとしての
Sales Analytics)
営業関連入力データ群(例)
営業分析学としてのSales Analytics
eディテーリング
講演会・研究会
市場データ
医師アンケート
MRアンケート
レセプトデータ
MRMS
(卸営業)コール
センター講演会
学会セミナー
eディテーリング
製薬企業ウェブサイト
1000001 20 0 0 1 1 0 0
1000002 15 2 0 2 0 1 3
1000003 0 3 3 0 1 3 2
1000004 20 0 0 1 1 0 2
1000005 13 4 0 0 0 1 0
1000006 8 3 1 1 1 2 1
1000007 20 0 0 2 1 0 0
1000008 6 2 2 0 0 3 1
1000009 15 3 0 1 0 1 0
1000010 20 0 0 0 1 0 2
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
医師_ID
情報チャネル別訪問・参加・アクセス回数(2016年4月~9月)
SFAデータ
例:マルチ情報チャネルデータベース
観察(含現場)
仮説
モデル
仮説検証
実践(現場)
結果検証
分析用データベース
(クラウドの場合もある)
営業分析のための統合データベース
(クラウドの場合もある)
分析インフラ(統計解析ソフトウェア)
人口動態データ
患者意識調査
14
2.医薬品営業における定式化[1]製薬業界はSales Analyticsの研究と実践に適している
■安全な薬物療法の推進および営業生産性向上が一貫した経営課題である
■製薬企業の営業担当者であるMR(医薬情報担当者)は、この二つの課題に深く関わっている
■グローバル化が進み、「データに基づく経営」が普及している
■研究開発分野では統計解析が必須のツールとして普及している
■社内・社外で入手可能な営業関連データが豊富である
15
2.医薬品営業における定式化[2]要因を絞り込んだ因果関係モデル:売上アップの公式
成果=ターゲ
ティングディテー
リングの質×ディテー
リング回数×販売ポテンシャル
の高い顧客に最適な頻度で 質の高いメッセージ
を届ける
「売上アップの公式」売上アップに対して即効性が大きい3要因にフォーカス
(ただし、現在の製品構成を前提とする)
[注1]これは、「数式」ではなく、「売上を決定する要因は3つに集約される」という意味である[注2]この公式は、MR活動に関して、多くの薬効領域で検証済みである(⇒検証例は後述)[注3]インターネットによるプロモーション(eディテーリングなど)に関しても、この公式が成り立つ[注4]エリアマーケティングでも、この式を応用できる
量的要因であり、データ豊富で、科学的アプローチが比較的容易
質的要因をどこまで科学的に扱えるか?
売上高、生産性、顧客満足度など
16
2.医薬品営業における定式化
[3]顧客バリューマトリックスを用いた量的要因の最適化
重要顧客セグメントに対する営業戦略例
【留意事項】①すべての顧客を割り振る②潜在顧客を含める③量的基準、質的基準ともに
顧客数がほぼ同数になるように区分値を調整する
【効用】①HPに患者数の60%~
70%が集中する②質的基準により、競合
を退け、自社独自の戦略で顧客の信頼を獲得可能となる
60%~70%の患者が集中するHPが、最も重要な顧客セグメントである
SEG31競合製品では対応困難な症例を中心に、徐々に信頼関係を構築していく
SEG32顧客の使用薬剤パターンを分析し、自社製品が効果的に使える症例からアプローチを強めていく
SEG33 自社ファン顧客とのパートナーシップを維持・強化する
患者数が多いということは、重症患者や合併症など高度な治療ニーズが集中していることをも
意味している
量的基準
質的基準LP(少)
MP(中)
HP(多)
自社シェア 小 SEG11 SEG21 SEG31
自社シェア 中 SEG12 SEG22 SEG32
自社シェア 大 SEG13 SEG23 SEG33
販売ポテンシャル(対象疾患領域の患者数)
小
処
方意
欲
大
顧客バリューマトリックス(CVM)
17
2.医薬品営業における定式化[4]質的要因へのアプローチ:「MR活動の質」の定義と測定
MR活動の質の測定
顧客の視点から
社内の視点から
医師満足度調査によるMR評価
上司同行訪問時の観察
MRアンケート調査(営業力診断)
実践項目チェックシート活用
営業日報分析(テキストマイニング)
MR活動の質を高める第一歩は「測定すること」である;なぜなら、「測定できないものは管理できない」(P.F.ドラッカー)からである
最も望ましい測定方法
営業日報の「医師の声」を分析
MRの自己管理用として活用
営業力とインパクト力を算出
同行訪問直後上司がアドバイス
チーム力(営業マネジャー)評価MRアンケート
の一環として評価
「質」の定義が大問題
18
3.医薬品営業における検証事例[1]「売上アップの公式」の検証①:調査の概要
■顧客バリューマトリックス
量的基準
質的基準(X薬)LP
(35人以下)MP
(36~84人)HP
(85人以上)
シェア小(13%以下) SEG11 SEG21 SEG31
シェア中(13~28%) SEG12 SEG21 SEG31
シェア大(28%以上) SEG13 SEG21 SEG31
販売ポテンシャル(月当たり患者数)
小
処
方
意
欲
大
■医師数比率
量的基準
質的基準(X薬)LP
(35人以下)MP
(36~84人)HP
(85人以上)
シェア小(13%以下) 11% 10% 11% 32%
シェア中(13~28%) 9% 11% 13% 34%
シェア大(28%以上) 14% 11% 8% 33%
35% 33% 32% 100%
販売ポテンシャル(月当たり患者数)
小
処
方意
欲
大
計
計
■患者数比率
量的基準
質的基準(X薬)LP
(35人以下)MP
(36~84人)HP
(85人以上)
シェア小(13%以下) 3% 7% 22% 32%
シェア中(13~28%) 3% 8% 29% 40%
シェア大(28%以上) 3% 7% 16% 27%
9% 23% 68% 100%
計
計
販売ポテンシャル(月当たり患者数)
小
処
方
意
欲
大
あるスペシャリティ領域に関する医師アンケート
・2011年10月実施・N=900・製薬企業数:11
19
3.医薬品営業における検証事例[1]「売上アップの公式」の検証②:検証結果
①売上高(処方患者数)=f1(ターゲティング精度)・f2(ディテーリング回数)・f3(ディテーリングの質)
②ディテーリング生産性=g1(ターゲティング精度)・g2(ディテーリング回数)・g3(ディテーリングの質)
y = 33.005x - 10014R² = 0.5336
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
35,000
40,000
0 200 400 600 800 1,000 1,200
処方患者数
ディテーリング回数
ディテーリング回数対処方患者数
N=11
y = 88954x - 28511R² = 0.0368
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
35,000
40,000
0.38 0.40 0.42 0.44 0.46 0.48
処方患者数
ターゲティング精度(HPセグメントへの集中度)
ターゲティング精度対処方患者数
N=11
y = 11789x - 28573R² = 0.1076
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
35,000
40,000
2.50 3.00 3.50 4.00
処方患者数
MRの総合評価(質)
ターゲティング精度対処方患者数
N=11
y = 0.021x + 2.5549R² = 0.2027
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
0 200 400 600 800 1,000 1,200
ディテーリング生産性
ディテーリング回数
ディテーリング回数対ディテーリング生産性
N=11
y = 198.36x - 70.232R² = 0.1721
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
0.38 0.40 0.42 0.44 0.46 0.48
ディテーリング生産性
ターゲティング精度(HPセグメントへの集中度)
ターゲティング精度対ディテーリング生産性
N=11
y = 4.9907x - 1.1055R² = 0.0181
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
2.50 3.00 3.50 4.00
ディテーリング生産性
MRの総合評価(質)
ターゲティング精度対ディテーリング生産性
N=11
20
3.医薬品営業における検証事例[2]MRアンケートによる「質」の把握①:流れ
①準備 ②実施
③分析
基本集計問題構造の把握
営業力の分析
まとめ
●欠損値チェック●回答分布チェック●社歴区分値●目標達成率区分値●回答一次集計
(選択肢別回答数)●コメント分類
●業績データ統合●営業構造把握
・相関係数・重回帰分析
●コメント分析●問題構造の把握
●営業力抽出・グルーピング
(因子分析)・偏差値化
●インパクト力計算●個人別比較●組織別比較
●営業力診断●MR生産性アップの
ために何が必要か?
ヒアリングアンケート
原案アンケート
最終案
●ヒアリングに基づくアンケート原案
●原案精査●修正内容検討●アンケート最終案
●営業戦略●優秀MRの行動内容
アンケート実施
●社内Webにより実施●社内Webにより集計
21
3.医薬品営業における検証事例[2]MRアンケートによる「質」の把握②:営業力の数量化
MR行動要因(アンケート)
営業力1
営業力2
営業力n
・・・
営業力
営業力1(偏差値)
営業力2(偏差値)
営業力n(偏差値)
・・・
偏差値化
営業力とは、MRの主要行動パターンである;回答の
分布を調べ類似したものをグルーピングして求める
(因子分析による)
[注]質問事項は、製薬企業での診断実績を踏まえ、「優秀なMRであれば実践している可能性の高い行動パターン」 の候補をほぼ網羅している。このため、「営業力」には、各社の組織文化特性を反映した「優秀MR像」が抽出される。
平均値50 標準偏差10の正規分布と仮定
インパクト力
インパクト力とは、MR別達成売上高を
最も良く説明するMRの総合力である(重回帰分析による)
営業力を総合
ドクター
処方獲得のためのMRの総合力
達成売上高に貢献している営業力は?
全くその通
り
その通り
どち
らとも言え
ない
そうではな
い
全くそ
うではな
い
Q01私が訪問するのは、原則として会社から指定されたターゲット施設・ドクターのみである。
5 4 3 2 1
Q02私が担当する重要施設に対して、活動計画を作成し、実行している。
5 4 3 2 1
・・・ ・・・
・・・ ・・・
Q40 私は当社に満足している。 5 4 3 2 1
Q41MR活動の生産性を高めるため、建設的なご意見があれば、以下に、自由に記入してください。
22
3.医薬品営業における検証事例[2]MRアンケートによる「質」の把握③:インパクト力の測定事例
F01_ドクターの信頼獲得
F02_営業所マネジメント
F03_積極的な知識・スキル獲得
F04_会社の仕組みへの満足
F05_アクションプランの作成実行
F06_効果的なターゲット先訪問
F07_活動実績報告
MRの営業力 MRの本来の潜在的な営業力が
一部、活かされていない
インパクト力
処方獲得のためのMRの総合力
ドクター
インパクト力を高めるのに貢献(統計的に有意)
インパクト力には影響していない(有意でない)
[注]対象事例は、実際の実施例を基に作成した、仮想的なものである
23
3.医薬品営業における検証事例[2]MRアンケートによる「質」の把握④:インパクト力と売上高との関係
【売上高対インパクト力の近似式】y = 1.9807x + 91.406
R² = 0.145
0
50
100
150
200
250
300
350
400
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
売上高
MR活動の質(インパクト力の偏差値)
MRのインパクト力(MR活動の質)と売上高との関係の例
相関係数=0.381
24
3.医薬品営業における検証事例[2]MRアンケートによる「質」の把握⑥:「MR活動の質」への示唆
HP(High Performer)に特徴的な行動要因(例)
HPは毎回の面談の事前準備を十分行う
HPは事前にドクター情報を収集する
HPは患者数を把握する
HPは製品や症例説明のプレゼンに工夫する
HPは一度断られてもあきらめない
HPはドクターの話を傾聴する
HPは訪問回数にメリハリをつける
これは、当社の優秀MRを特徴づける、一種の「コンピテンシーモデル」といえる
「MR行動チェックシート」として全MRに配布し、日常の活動の質を自ら点検し、改善に活用する
(サイエンスからアートへ)
25
3.医薬品営業における検証事例[3]営業日報のテキストマイニング①:データ分析の流れ
営業日報(数値、
カテゴリー値、テキスト)
キーワード分析
クラスター分析
データ+テキスト
マイニング
度数分析 クロス分析
医師の反応や満足度・副作用の兆候検出
医師の満足度・MR活動の質
ターゲット医師カバー率 医師訪問回数分布
SFA(営業日報)のデータ分析の流れと主要アウトプット
MR生産性を高めるのに最も
効果的なMR活動の「量と質」の分析
テキストデータ
数値、カテゴリー値データ
SFAの分析ツールとしての
Sales Analytics
26
3.医薬品営業における検証事例[3]営業日報のテキストマイニング②:テキストデータの分類
テキストマイニング
クラスタ番号クラスタ名称
CL01 挨拶
CL02 説明・講演・勉強会へのお誘い
CL03 接待
CL04 質問や相談事
CL05 サンプル紹介
CL06 代理店との同行による訪問
CL07 資料類の配布
CL08 ディテーリング
CL09 処方依頼
CL10 処方お礼
CL11 PMS関連
CL12 追加処方依頼
CL13 処方確認
CL14 その他フォローアップ
営業ステップ
番号営業ステップ名称
対応クラスタ番号
GR1 顧客ニーズ把握 4,6
GR2 製品紹介 2,5,7
GR3 ディテーリング 8
GR4 クロージング 9
GR5 フォローアップ 10,11,12,13,14
GR6 人間関係構築・維持 1,3
営業日報テキストデータ
・MRの働きかけ内容と医師の反応・データ件数:20,000件・医師-売上高の対応可能データ(開業医)
[注]テキストマイニングにはVextMiner 使用
27
3.医薬品営業における検証事例[3]営業日報のテキストマイニング③:「質」を広く捉える必要性
■ある製品に関する営業プロセス別データの重回帰分析結果(営業所別データ半年分)
・目的変数=納入高、説明変数=テキストマイニングの結果抽出された営業ステップ(GR1~GR6)
①分析の要約
R2乗 0.998
自由度調整R2乗 0.998
誤差の標準偏差(RMSE) 1208256
Yの平均 5777851
オブザベーション(または重みの合計) 94
②パラメータ推定値
項 推定値 標準誤差 t値 p値(Prob>|t|)
切片 -2921 127303 -0.02 0.982
GR1_顧客ニーズ把握 -13611 12173 -1.12 0.267
GR2_製品紹介 21217 12842 1.65 0.102
GR3_ディテーリング 57896 23357 2.48 0.015
GR4_クロージング 73941 33536 2.20 0.030
GR5_フォローアップ 25710 5243 4.90 <.0001
GR6_人間関係構築・維持 9812 1578 6.22 <.0001
ディテーリングはもちろんであるが、フォローアップや人間関係構築・維持の重要性は、「MR活動の質」を広く捉える必要性を示している
統計的に有意な営業
ステップ
28
4.まとめ:Sales Analytics の可能性[1]Sales Analytics活用のための今後の課題
■顧客・企業・営業担当者が「三方良し」となる営業活動のために:-売上至上主義の営業活動は、顧客に迷惑がられ、かつ不正の温床ともなる-顧客・企業・営業担当者が「三方良し」となる営業活動のためには、既存の
数量データ(売上、シェア等)だけに頼るのでなく、質的データにも着目する必要がある
-「あるべき営業活動の質」は、各社独自に決める必要がある-質的データの取り扱いには、実地の営業活動の観察や営業担当者のインタ
ビューに基づくモデル化とその数量化など、創造的な方法論とその分析が必要である
■これからのSales Analyticsのあり方:-AnalyticsをITツールという狭い範囲に留めるのはあまりにももったいない-既存の数量データだけを前提のSales Analyticsは真の問題解決にならない-営業における「サイエンス」と「アート」という両側面の共働を目指すための
インフラとして、 Sales Analyticsを活用すべきではないだろうか-マルチ情報チャネル時代への対応
29
4.まとめ:Sales Analytics の可能性[2]「サイエンス」と「アート」の共働の例
■「アート」から「サイエンス」へ:-「営業活動の質」を多角的に研究する(心理学、コミュニケーション学を含め)-さらに今後は、営業担当者だけでなく、営業マネジャーの役割がキーとなる-特に、「チーム力」が組織の業績に及ぼす影響の研究が重要となる-分析手法の例
・営業アンケートとその多変量解析・営業日報のテキストマイニング(「顧客の声」の分析)
■「サイエンス」から「アート」へ:-従来からの数量データの分析は基本中の基本として継続する-それに加えて、科学的根拠のある営業教育を再構築する
・単に製品知識だけでなく、顧客(チーム)との信頼関係構築を含めるべき-営業現場で取り入れやすい分析結果の例
・分析で得られた結果を、営業所単位で少数の実践項目に絞る・現場の経験を盛り込んだ「営業活動チェックリスト」に落し、活用する
30
4.まとめ:Sales Analytics の可能性[3]まとめ:Sales Analyticsを成功させるために
■Sales Analyticsを成功させるための要因:-「営業を科学化する」ことへの経営者の強い、持続的な意志が不可欠-分析スタッフとデータ収集のITインフラの整備-自社の「営業-成果モデル」構築-市場・顧客・営業活動の多種多様なデータのデータベース化-効果的な営業教育・コーチングと投資効果の測定
■留意事項:-営業における「アート」の側面の重要性を忘れない⇒「サイエンス」の側面を強調しすぎると、顧客も営業現場も疲弊する
-自社の優秀な営業担当者をよく観察する⇒「センターピン」の把握と活用
-営業現場が考慮すべき指標の数は最小限にする⇒3つ以内を目標とする
-ITは万能ではなく、その機能が営業現場から乖離すると投資は無駄になる⇒ITを営業管理の道具にすると、ほとんどの場合、失敗する⇒ITが営業現場から見て役立つと評価されることが不可欠である