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16 INNERVISION ( 30・9 ) 2015 MRI は撮像条件として TR,TE,TI な どのパラメータを撮像前に設定し,それに 応じたコントラストの画像を取得する。つ まり 1 スキャンで 1 種類のコントラストの 画像を取得するため,複数のコントラスト の画像を得る場合には撮像条件を変更し て複数回撮像する必要があり,長いスキャ ン時間を要している。しかし,今回紹介す るSynthetic MRIおよびMR fingerprint- ing(以下,MRF)は従来の撮像法と異なり, 一連のスキャンによって組織の定量値を 取得し,複数のコントラストの画像を得る ことが可能である。両者は定量値の取得 方法が異なり,Synthetic MRIは古典的 なcurve fittingで,MRFはデータベース との比較および推定から取得する。また, 一連のスキャンのみの撮像であるので,収 集時間の短縮が可能である。本稿では, 当院においてすでに 200 例以上の臨床経 験のあるSynthetic MRIを中心に,撮像 法と臨床例を示す。 Synthetic MRI の技術 Synthetic MRIは,一連のスキャン データより対象の T 1 値,T 2 値,プロ トン密度(以下,PD)を定量することで, 任意のコントラストの画像を合成するこ とができる。異なるコントラストの画像 を得る場合でも再度撮像する必要がない。 合成後でも自由に TR,TE,TI を調整 することが可能であり,調整過程でもそ の条件でのコントラストの画像をリアル タイムで表示することができる。 Synthetic MRIの撮像には,QRAP MASTER(quantification of relaxation times and proton density by multiecho acquisition of a staturation-recovery using turbo spin- echo readout)と呼ばれる FSE 系のシー ケンスが用いられている (図 1) 。QRAP MASTER は multi-delay,multi-echo の 構造を含んでおり,各スライスで 4 種類 の TI,2 種類の TE(16 ~ 22 ms/ 82 ~ 86ms),real/imaginaryの16枚の画像 を収集する (図 2) 。Synthetic MRIでは, 複数の TI の画像から T 1 緩和曲線を取 得し,曲線から T 1 値および PD を算出 する。同様に複数の TE の画像から T 2 値を算出し,これらの定量値を基に任意 のコントラストの画像を合成する。 現在,当院ではデータの撮像から合成 までには 12 ~ 14 分(撮像 5 ~ 7 分,転 送 6 分,取り込み 1 分)の時間を要して いる。このうち転送の 6 分に関しては, セキュリティのために撮像データを一度 ディスクに書き込み,Synthetic MRI 用 の汎用コンピュータに移すという過程が 大きく影響していると考えられ,今後デー タをSynthetic MRIへ直接転送できる ようになれば短縮可能である。 〈0913-8919/15/¥300/ 論文 /JCOPY〉 図2 Synthetic MRI撮像データ 各スライスで4種のTI,2種のTE,real/imaginaryの 16 枚を撮像する。 撮像データ real real imaginary imaginary TI 1 TE 1 TE 2 TI 2 TI 3 TI 4 図1 QRAPMASTERシーケンス multi-delay,multi-echoの構造を含む。 (参考文献 1)より引用改変) Gm Gp Gs RF Echo 1 120° 90° 180° 180° Echo 2 Acquisition Saturation 5.Synthetic MRIと MR fingerprinting 中澤 美咲 首都大学東京大学院人間健康科学研究科 / 順天堂大学医学部放射線診断学講座 椛沢 宏之 GE ヘルスケア・ジャパン(株)技術本部研究開発部 MR 研究室 青木 茂樹 順天堂大学大学院医学研究科放射線医学 臨床応用のための撮像技術の現状と課題 Step up MRI 2015

Step up MRI 5.Synthetic MRIと 2015 MR fingerprinting · 16 innervision (30・9) 2015 mriは撮像条件としてtr,te,tiな どのパラメータを撮像前に設定し,それに

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16  INNERVISION (30・9) 2015

 MRIは撮像条件としてTR,TE,TIなどのパラメータを撮像前に設定し,それに応じたコントラストの画像を取得する。つまり1スキャンで1種類のコントラストの画像を取得するため,複数のコントラストの画像を得る場合には撮像条件を変更して複数回撮像する必要があり,長いスキャン時間を要している。しかし,今回紹介するSynthetic MRIおよびMR fingerprint-ing(以下,MRF)は従来の撮像法と異なり,一連のスキャンによって組織の定量値を取得し,複数のコントラストの画像を得ることが可能である。両者は定量値の取得方法が異なり,Synthetic MRIは古典的なcurve fittingで,MRFはデータベースとの比較および推定から取得する。また,一連のスキャンのみの撮像であるので,収集時間の短縮が可能である。本稿では,当院においてすでに200例以上の臨床経験のあるSynthetic MRIを中心に,撮像法と臨床例を示す。

Synthetic MRIの技術

 Synthetic MRIは,一連のスキャンデータより対象のT1値,T2値,プロトン密度(以下,PD)を定量することで,任意のコントラストの画像を合成することができる。異なるコントラストの画像を得る場合でも再度撮像する必要がない。合成後でも自由にTR,TE,TIを調整することが可能であり,調整過程でもその条件でのコントラストの画像をリアルタイムで表示することができる。 Synthetic MRIの撮像には,QRAPM A S T E R(q u a n t i f i c a t i o n o f relaxation times and proton density b y m u l t i e c h o a c q u i s i t i o n o f a staturation-recovery using turbo spin-echo readout)と呼ばれるFSE系のシーケンスが用いられている(図1)。QRAP

MASTERはmulti-delay,multi-echoの構造を含んでおり,各スライスで4種類のTI,2種類のTE(16~22ms/82~86ms),real/imaginaryの16枚の画像を収集する(図2)。Synthetic MRIでは,複数のTIの画像からT1緩和曲線を取得し,曲線からT1値およびPDを算出する。同様に複数のTEの画像からT2値を算出し,これらの定量値を基に任意のコントラストの画像を合成する。 現在,当院ではデータの撮像から合成までには12~14分(撮像5~7分,転送6分,取り込み1分)の時間を要している。このうち転送の 6 分に関しては,セキュリティのために撮像データを一度ディスクに書き込み,Synthetic MRI用の汎用コンピュータに移すという過程が大きく影響していると考えられ,今後データをSynthetic MRIへ直接転送できるようになれば短縮可能である。

〈0913-8919/15/¥300/ 論文 /JCOPY〉

図2 Synthetic MRI撮像データ各スライスで4種のTI,2種のTE,real/imaginaryの16枚を撮像する。

撮像データ

real

real

imaginary

imaginary

TI 1

TE 1

TE 2

TI 2 TI 3 TI 4

図1 QRAPMASTERシーケンスmulti-delay,multi-echoの構造を含む。

(参考文献1)より引用改変)

Gm

Gp

Gs

RFEcho1120° 90° 180° 180° Echo2

AcquisitionSaturation

5. Synthetic MRIとMR fingerprinting

中澤 美咲 首都大学東京大学院人間健康科学研究科/順天堂大学医学部放射線診断学講座

椛沢 宏之 GEヘルスケア・ジャパン(株)技術本部研究開発部MR研究室

青木 茂樹 順天堂大学大学院医学研究科放射線医学

臨床応用のための撮像技術の現状と課題ⅡStep up MRI 2015